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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】通信装置及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/06 20060101AFI20241223BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20241223BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20241223BHJP
   H04B 5/45 20240101ALI20241223BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20241223BHJP
   H04B 5/77 20240101ALI20241223BHJP
   H04L 27/10 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H04L27/06 Z
G06K7/10 104
H04B1/59
H04B5/45
H04B5/48
H04B5/77
H04L27/10 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021014487
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117789
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】槌田 直
(72)【発明者】
【氏名】大石 禎利
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/012891(WO,A2)
【文献】特開2007-110611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0112885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/06
G06K 7/10
H04B 1/59
H04B 5/45
H04B 5/48
H04B 5/77
H04L 27/10
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4,6
CT WG1,4
IEEE 802.11
15
16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグと通信する通信装置であって、
第1のI信号及び第1のQ信号を用いて搬送波を直交変調して変調波を出力する直交変調部と、
前記直交変調部から出力される変調波を無線送信する送信部と、
前記送信部からの送信波を前記無線タグがバックスキャッタし、振幅偏移変調した無線信号を受信して受信信号を出力する受信部と、
前記受信部から出力された受信信号を、前記搬送波を用いて検波し、第2のI信号及び第2のQ信号を出力する直交検波部と、
前記直交検波部から出力された第2のI信号及び第2のQ信号の少なくとも一方を検波し、前記無線タグから振幅偏移変調されて送信された第1のデータを復調する第1の復調部と、
前記第1の復調部で復調された第1のデータを復号する第1の復号部と、
前記直交検波部から出力された第2のI信号及び第2のQ信号を検波し、周波数偏移変調された第2のデータを復調する第2の復調部と、
前記第2の復調部で復調された第2のデータを復号する第2の復号部と、
前記搬送波を所定の変調データで周波数偏移変調させる信号として前記第1のI信号及び前記第1のQ信号を生成し、前記直交変調部に入力する生成部と、
前記第2の復号部で復号された第2のデータと前記変調データとを比較する比較部と、
前記第2の復号部で復号された第2のデータと前記変調データとの一致が前記比較部により確認された場合に、前記第1の復号部により復号された第1のデータを対象としたデータ処理を実行する処理部と、
を具備した通信装置。
【請求項2】
前記直交検波部から出力された第2のI信号及び第2のQ信号のうちのカットオフ周波数より高い周波数成分を通過させるフィルタ部と、
前記フィルタ部を通過した第2のI信号及び第2のQ信号を増幅する増幅部と、
をさらに具備し、
前記生成部は、前記周波数偏移変調の周波数偏移量を前記カットオフ周波数よりも大きくするように前記第1のI信号及び前記第1のQ信号を生成する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記変調データを予め定められたデータとするように前記第1のI信号及び前記第1のQ信号を生成する、
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記変調データをランダムなデータとするように前記第1のI信号及び前記第1のQ信号を生成する、
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
無線タグとの通信方法であって、
第1のI信号及び第1のQ信号を用いて搬送波を直交変調して変調波を出力し、
前記変調波を無線送信し、
無線送信による送信波を前記無線タグがバックスキャッタし、振幅偏移変調した無線信号を受信して受信信号を出力し、
前記受信信号を、前記搬送波を用いて検波し、第2のI信号及び第2のQ信号を出力し、
前記第2のI信号及び第2のQ信号の少なくとも一方を検波し、前記無線タグから振幅偏移変調されて送信された第1のデータを復調し、
前記復調された第1のデータを復号し、
前記第2のI信号及び前記第2のQ信号を検波し、周波数偏移変調された第2のデータを復調し、
復調された第2のデータを復号し、
前記搬送波を所定の変調データで周波数偏移変調させる第1のI信号及び第1のQ信号を生成し、
復号された第2のデータと前記変調データとを比較し、
比較により復号された第2のデータと前記変調データとの一致が前記比較により確認された場合に、復号された第1のデータを対象としたデータ処理を実行する、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグが、送信周波数帯が同一である複数のリーダの通信範囲が重複する位置にあるとき、当該無線タグからの反射波は、複数のリーダのいずれからの送信信号に関するものであるかを識別することができない。
このような問題の対策として、どのリーダに対するデータ送信であるかをリーダで識別可能とするように、無線タグの側でのデータ送信を工夫することが考えられる。しかしながら、このような手法では、無線タグに必要とされる機能が高度となり、無線タグの構成が複雑化してしまう。
そこで、無線タグの構成を複雑化させることなしに、他のリーダに向けた無線タグからの送信データを誤って受信することを防止できることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-112987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線タグの構成を複雑化させることなしに、他のリーダに向けた無線タグからの送信データを誤って受信することを防止できる通信装置及び通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の通信装置は直交変調部、送信部、受信部、直交検波部、第1の復調部、第1の復号部、第2の復調部、第2の復号部、生成部、比較部及び処理部を備える。直交変調部は、第1のI信号及び第1のQ信号を用いて搬送波を直交変調して変調波を出力する。送信部は、直交変調部から出力される変調信号を無線送信する。受信部は、送信部からの送信波を無線タグがバックスキャッタし、振幅偏移変調した無線信号を受信して受信信号を出力する。直交検波部は、受信部から出力された受信信号を、搬送波を用いて検波し、第2のI信号及び第2のQ信号を出力する。第1の復調部は、直交検波部から出力された第2のI信号及び第2のQ信号の少なくとも一方を検波し、無線タグから振幅偏移変調されて送信された第1のデータを復調する。第1の復号部は、第1の復調部で復調された第1のデータを復号する。第2の復調部は、直交検波部から出力された第2のI信号及び第2のQ信号を検波し、周波数偏移変調された第2のデータを復調する。第2の復号部は、第2の復調部で復調された第2のデータを復号する。生成部は、搬送波を所定の変調データで周波数偏移変調させる信号として第1のI信号及び第1のQ信号を生成し、直交変調部に入力する。比較部は、第2の復号部で復号された第2のデータと変調データとを比較する。処理部は、第2の復号部で復号された第2のデータと変調データとの一致が比較部により確認された場合に、第2の復号部により復号された第1のデータを対象としたデータ処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に係る読取装置の要部回路構成を示すブロック図。
図2図1に示す読取装置の送受信に関する各種信号の波形を表す図。
図3図1に示す読取装置でのタグデータの受信処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態の一例について図面を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る読取装置100の要部回路構成を示すブロック図である。
【0008】
読取装置100は、RFID(radio frequency identification)タグ200が記憶しているデータを、バックスキャッタ通信によりRFIDタグ200から読み取る。つまり読取装置100は、上記のRFIDタグ200からのデータ読み取りに際してRFIDタグ200と無線通信を行う通信装置としての機能を備えている。
読取装置100は、発振器1、DA(digital to analog)変換器2、直交変調器3、バラン4、SAW(surface acoustic wave)フィルタ5、電力増幅器6、アンテナ共用器7、アンテナ8、バラン9、直交検波器10、HPF(high pass filter)11、2つのVGA(variable gain amplifier)12、AD(analog to digital)変換器13、ベースバンドプロセッサ14、CPU(central processing unit)15及びメモリ16を含む。
【0009】
発振器1は、予め定められた周波数flocalの正弦波を搬送波として生成する。
DA変換器2は、ベースバンドプロセッサ14からディジタル状態で出力される2系統の信号(以下、送信I信号及び送信Q信号と称する)をそれぞれアナログ化する。
直交変調器3は、DA変換器2でアナログ化された送信I信号及び送信Q信号を変調波として入力する。直交変調器3は、発振器1により生成された搬送波と、当該搬送波を90°移相した搬送波とを、それぞれI系統及びQ系統の搬送波として入力する。そして直交変調器3は、直交変調により送信信号を得る。本実施形態では、直交変調器3としては、移相器、2つのミキサ及び加算器を含んだ周知の構成のデバイスを用いる。しかしながら、構成の異なる別の周知のデバイスを用いてもよい。例えば、直交変調器3は移相器を含まず、発振器1から出力される搬送波を直交変調器3の外部に備えられた移相器により90°移相して得られた搬送波が、発振器1から出力される搬送波とは別に直交変調器3に入力されるのでもよい。送信I信号及び送信Q信号は、第1のI信号及び第1のQ信号に相当し、直交変調器3は変調部の一例である。
【0010】
バラン4は、直交変調器3から出力された平衡信号を不平衡信号に変換する。
SAWフィルタ5は、バラン4から出力される送信信号から、不要放射の制限のために低周波成分及び高周波成分を除去する。
電力増幅器6は、SAWフィルタ5を通過した送信信号を、無線送信に適するレベルまで電力増幅する。
【0011】
アンテナ共用器7は、電力増幅器6から出力された送信信号をアンテナ8に供給する。アンテナ共用器7は、アンテナ8で受信した受信信号をバラン9へと出力する。
アンテナ8は、アンテナ共用器7を介して供給される送信信号に応じた電波を放射する。アンテナ8は、到来する電波を受信する。つまりアンテナ8は、RFID200からの反射波が到来すると、当該反射波に応じた信号を受信する。
【0012】
以上のように、SAWフィルタ5、電力増幅器6及びアンテナ8により、送信信号は無線送信される。つまりSAWフィルタ5、電力増幅器6及びアンテナ8により、変調部としての直交変調器3から出力される変調波を無線送信する送信部が構成される。また、アンテナ8は、無線タグであるRFIDタグ200からバックスキャッタ方式で送信された振幅偏移変調(ASK:amplitude shift keying)波である反射波に応じた信号を受信する受信部として機能する。
【0013】
バラン9は、アンテナ共用器7を介して入力される不平衡信号を平衡信号の状態に変換する。
直交検波器10は、バラン9から出力される受信信号を、発振器1により生成された搬送波と、当該搬送波を90°移相した搬送波とを用いて直交検波する。直交検波器10は、直交検波により得られる2系統の信号(以下、受信I信号及び受信Q信号と称する)を並列に出力する。本実施形態では、直交検波器10としては、分配器、移相器及び2つのミキサを含んだ周知の構成のデバイスを用いる。しかしながら、構成の異なる別の周知のデバイスを用いてもよい。例えば、直交検波器10は移相器を含まず、発振器1から出力される搬送波を直交変調器3の外部に備えられた移相器により90°移相して得られた搬送波が、発振器1から出力される搬送波とは別に直交変調器3に入力されるのでもよい。直交検波器10は、直交検波部の一例であり、受信I信号及び受信Q信号は第2のI信号及び第2のQ信号に相当する。
【0014】
HPF11は、直交検波器10から出力された受信I信号及び受信Q信号のそれぞれのうち、予め定められたカットオフ周波数fcutよりも高周波な成分を通過させる。HPF11は例えば、受信I信号及び受信Q信号にそれぞれ対応する2つのDC(direct current)カットコンデンサを含む。HPF11は、フィルタ部に相当する。
2つのVGA12は、HPF11を通過した受信I信号及び受信Q信号のそれぞれを、後述する検波及びデータ復号に適するレベルまで増幅する。この2つのVGAにより、増幅部が構成される。
AD変換器13は、VGA12で増幅された受信I信号及び受信Q信号のそれぞれを、ディジタル化する。
【0015】
ベースバンドプロセッサ14は、ベースバンド信号に関わる信号処理のための情報処理を実行する。ベースバンドプロセッサ14は、情報処理の実行により実現される機能として、信号生成機能141、ASK復調機能142、ASK復号機能143、リミット増幅機能144、FSK復調機能145、FSK復号機能146及びデータ比較機能147を備える。信号生成機能141は、CPU15からの指示の下に、直交変調器3により、所定の変調データ(以下、FSK変調データと称する)で周波数偏移変調(FSK:frequency shift keying)するための送信I信号及び送信Q信号を生成し、並列にDA変換器2に与える。ASK復調機能142は、AD変換器13から出力される受信I信号及び受信Q信号に基づいて、直交検波器10に入力される受信信号に含まれていたASK変調信号を復調したASK復調信号を得る。ASK復号機能143は、ASK復調信号を復号し、RFIDタグ200から送信されたデータを得る。リミット増幅機能144は、AD変換器13から出力される受信I信号及び受信Q信号のそれぞれをリミット増幅する。FSK復調機能145は、リミット増幅機能144によって増幅した後の受信I信号及び受信Q信号に基づいて、直交検波器10へと入力される受信信号に含まれていたFSK変調信号を復調したFSK復調信号を得る。FSK復号機能146は、FSK復調信号を復号し、FSK復号データを得る。データ比較機能147は、FSK復調機能145により得られるFSK復号データがFSK変調データと一致する場合に、ASK復号機能143により復号されたデータを有効な受信データとしてCPU15へと出力する。なお、ASK復号機能143により復号されたデータは第1のデータに、またFSK復号データは第2のデータにそれぞれ相当する。
かくしてベースバンドプロセッサ14は、信号生成機能141により生成部として、ASK復調機能142により第1の復調部として、ASK復号機能143により第1の復号部として、リミット増幅機能144により増幅部として、FSK復調機能145により第2の復調部として、FSK復号機能146より第2の復号部として、また、データ比較機能147により比較部として、それぞれ機能する。
【0016】
CPU15は、RFIDタグ200との通信時には、予め定められたシーケンスに従って、送信I信号及び送信Q信号を出力するようにベースバンドプロセッサ14を制御する。CPU15は、ベースバンドプロセッサ14で復号されるデータを対象として、予め定められたデータ処理を行う。つまりCPU15は、FSK変調データとFSK復号データとの一致がデータ比較機能147により確認された場合に、ASK復号機能により復号されたデータを対象としたデータ処理を実行するのであり、処理部の一例である。
メモリ16は、CPU15に実行させる情報処理について記述された情報処理プログラムを記憶する。メモリ16は、CPU15が各種の情報処理を実行する上で必要となる各種のデータを記憶する。メモリ16は、CPU15が各種の情報処理を実行する際に生成又は取得された各種のデータを記憶する。
【0017】
次に以上のように構成された読取装置100の動作について説明する。
読取装置100の動作において、RFIDタグ200との通信に関して周知の読取装置と異なるのは、RFIDタグ200からデータを受信する期間における動作である。そこで以下においては、この動作に関して詳細に説明し、その他の周知の動作に関する説明は省略する。
【0018】
CPU15は、RFIDタグ200からのデータ読取を開始すべきタイミングになると、読取開始をベースバンドプロセッサ14に指示する。この指示に応じてベースバンドプロセッサ14は信号生成機能141により、直交変調器3が出力する送信信号が所要の変調波となるようも送信I信号及び送信Q信号の生成、出力を開始する。
【0019】
ベースバンドプロセッサ14は、発振器1が出力する周波数flocalの搬送波を所定の変調データであるFSK変調データでFSKした送信信号が直交変調器3から出力されるように送信I信号及び送信Q信号を生成する。具体的にはベースバンドプロセッサ14は、送信I信号及び送信Q信号を、周波数がflocal+fdevである単位期間と、周波数がflocal-fdevである単位期間とがFSK変調データに基づいたパターンで生じる信号を送信信号として生じさせる信号とする。ベースバンドプロセッサ14は例えば、送信I信号及び送信Q信号の周波数をいずれもfdevとする。そして送信I信号と送信Q信号との位相差を異ならせることで、搬送波に+fdevの又は-fdevの周波数偏移を生じさせる。周波数fdevは、例えば読取装置100の設計者などにより任意に定められてよい。ただし、周波数fdevは、周波数fcutよりも高い。
【0020】
FSK変調データは、例えば読取装置100の設計者などにより任意に定められてよい。本実施形態では、FSK変調データを「10110101」の繰り返しによりなるデータとし、データ「1」の場合に単位期間の周波数がflocal+fdev、データ「0」の場合に単位期間の周波数がflocal-fdevとなるように変調する。なお、複数の読取装置100に関して、それぞれの通信範囲が重複し、その重複範囲に1つのRFIDタグ200が位置する可能性がある場合は、上記の複数の読取装置100でそれぞれ異なるようにFSK変調データが定められる。従って上記のFSK変調データは、送信信号を送信した読取装置100を識別するための識別データである。
【0021】
図2は読取装置100の送受信に関する各種信号の波形を表す図である。
波形WAは、発振器1が出力する搬送波の波形である。波形WBは、識別データによりFSKした信号の波形である。波形WCは、RFIDタグ200からの反射波の波形である。ただし図2は、各信号での周波数の増減のイメージを表しており、波形WAと波形WB,WCとの周波数の関係は、実際の周波数の関係を正しく表してはいない。
【0022】
RFIDタグ200は、読取装置100からの送信信号を受けると、読取装置100に読み取らせるべきデータ(以下、タグデータと称する)に応じてその反射率を変化させる。この結果、RFIDタグ200からの反射波は、読取装置100からの送信信号をタグデータによってASKした信号となる。つまり、送信信号が波形WBであるならば、反射波は波形WCとなる。なお、RFIDタグ200からの反射波における1ビット期間はTbであり、fdev>1/Tbなる関係にある。RFIDタグ200の送信ビットレートが遅い場合には、fcut>1/Tbとなるから、fdev>fcut>1/Tbなる関係が成り立つ。
【0023】
図3は読取装置100でのタグデータの受信処理を説明するための図である。
図2に示される波形WCの受信信号が直交検波器10により直交検波されることで、図3に示す波形WDの受信I信号及び波形WEの受信Q信号がそれぞれ得られたとする。
これらの受信I信号及び受信Q信号の周波数はfdevであり、HPF11におけるカットオフ周波数fcutよりも大きい。このため、受信I信号及び受信Q信号は、HPF11を通過する。
【0024】
ベースバンドプロセッサ14では、HPF11を通過し、さらにVGA12により増幅された上でAD変換器13によりディジタル化された受信I信号及び受信Q信号が入力されると、ASK復調機能142により検波をして、復調を行う。これにより、周波数fdevの成分が取り除かれて、タグデータに応じたベースバンド信号が得られる。そしてベースバンドプロセッサ14はASK復号機能143によって、復調結果から、タグデータDAAを復号する。この復号のための処理は、例えば既存の別の読取装置で行われているのと同様であってよい。
【0025】
ベースバンドプロセッサ14では、AD変換器13によりディジタル化された受信I信号及び受信Q信号が入力されると、リミット増幅機能144によりリミット増幅波をそれぞれ行う。つまりベースバンドプロセッサ14は、受信I信号及び受信Q信号にASK変調により生じている振幅変動を除去し、振幅の均一化を図るべく、振幅の最大値を制限しながら受信I信号及び受信Q信号をそれぞれ増幅する。
図2中の波形WF,WGは、波形WD,WEの受信I信号及び受信Q信号をリミット増幅した後の波形を表す。
【0026】
これらのリミット増幅後の受信I信号及び受信Q信号の間には、RFIDタグ200からの反射波の周波数に応じた位相のずれが生じる。FSK復調機能145により、この受信I信号及び受信Q信号を検波し、FSK変調のI信号及びQ信号として復調することで、FSK変調のベースバンド波形が得られる。そして、このFSK変調のベースバンド波形をFSK復号機能により復号することで、RFIDタグ200からの反射波にFSK変調により含まれている識別データDABを得る。なお、識別データでFSK変調した送信信号を送信する機能を持たない別の読取装置からの送信信号に基づく反射波が受信された場合には、ベースバンドプロセッサ14は識別データを復号することができない。
【0027】
ベースバンドプロセッサ14は、ASK復号機能143により、FSK復調機能145により復号した識別データDABが、信号生成機能141により生成した送信I信号及び送信Q信号に応じた識別データと一致する場合に、ASK復号機能143により復号されたタグデータDAAをCPU15へと出力する。ベースバンドプロセッサ14は、復号した識別データと送信した識別データとが一致しない場合、あるいは識別データを復号できない場合は、ASK復号機能143により復号されたタグデータDAAを無効なものとして破棄する。
ただし、信号生成機能141による送信I信号及び送信Q信号の出力を開始し、送信データによるFSK変調信号が送信信号として送出されるようになってから、RFIDタグ200が反射波を送信するようになるまでにはタイムラグが生じ、送信データの一部は反射波に含まれない。そこでデータ比較機能147は、識別データのうちで送信開始からの一定期間に送信した部分に関しては、生成したデータとの比較を行わない。
【0028】
CPU15は、タグデータがベースバンドプロセッサ14から与えられると、このタグデータを対象として予め定められたデータ処理を実行する。このデータ処理は、例えばタグデータに含まれる商品コードを商品リストに追加する処理などである。ただし、データ処理の内容は、例えば読取装置100の設計者又は使用者などにより任意に定められてよい。
かくして読取装置100は、当該読取装置100が自ら送信した送信信号に基づくRFIDタグ200からの反射波から得たタグデータのみを対象としたデータ処理を行う。従って、他の読取装置100に対してRFIDタグ200から送信されたタグデータをデータ処理することがない。つまり読取装置100は、他の読取装置に向けて送信されたタグデータを誤って受信することがない。
そしてRFIDタグ200は、どの読取装置に対する応答であるかを識別可能とするための特別な処理を行う必要がないので、そのための構成を追加することでの構成の複雑かを回避できる。RFIDタグ200としては、例えばバックスキャッタ方式の既存デバイスをそのまま適用することができる。
【0029】
そして読取装置100は、FSK変調及びFSK復調を直交変調器3及び直交検波器10とベースバンドプロセッサ14との協働により実現しているため、ベースバンドプロセッサ14での処理の変更により、ハードウェア構成は変更することなしに実現することが可能である。
【0030】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
上記の実施形態ではFSKに用いるデータを、「1」「0」「1」「1」「0」「1」「0」「1」なるパターンの繰り返しによりなるデータとしている。しかしながら、FSKに用いるデータは、何ら限定されない。例えば、「0」又は「1」がランダムに生じるデータであってもよい。例えば、RFIDタグ200の送信データの受信が完了するまでの間のパターンが予め定められていてもよい。なお、「0」又は「1」がランダムに生じるデータを用いるならば、そのパターンを信号生成機能141からデータ比較機能147に通知するようにする。例えば、信号生成機能141で生成したFSK変調データをベースバンドプロセッサ14の内蔵メモリに保存しておき、これをデータ比較機能147により参照すればよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1…発振器、2…DA変換器、3…直交変調器、4,9…バラン、5…SAWフィルタ、6…電力増幅器、7…アンテナ共用器、8…アンテナ、9…バラン、10…直交検波器、13…AD変換器、14…ベースバンドプロセッサ、141…信号生成機能、142…ASK復調機能、143…ASK復号機能、144…リミット増幅機能、145…FSK復調機能、146…FSK復号機能、147…データ比較機能、15…CPU、16…メモリ、100…読取装置、200…RFIDタグ。
図1
図2
図3