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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
F25D11/00 101B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034391
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134908
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180732(JP,A)
【文献】特開2012-021655(JP,A)
【文献】特開2020-094711(JP,A)
【文献】国際公開第2018/033968(WO,A1)
【文献】特開2017-026184(JP,A)
【文献】特開2018-151109(JP,A)
【文献】特許第7349327(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 - 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返す制御が実行される場合に、第1指標に基づき前記低温冷却制御から前記高温冷却制御への移行時期を決定し、前記第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき前記高温冷却制御から前記低温冷却制御への移行時期を決定する制御部と、
前記貯蔵部に関する温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記第1指標は、移行時期の決定対象である前記低温冷却制御の期間と当該低温冷却制御の直前の前記高温冷却制御の期間とを含む第1温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標であり、
前記第2指標は、移行時期の決定対象である前記高温冷却制御の期間を含む第2温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標であり、
前記第2温度検出期間は、前記移行時期の決定対象である前記高温冷却制御の期間と当該高温冷却制御の直前の前記低温冷却制御の期間との合計期間よりも短い、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記第1指標は、前記第1温度検出期間に前記温度検出部により検出される前記温度の平均値に基づく指標であり、
前記第2指標は、前記第2温度検出期間に前記温度検出部により検出される前記温度の積算値に基づく指標である、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第1指標は、前記低温冷却制御の結果と前記高温冷却制御の結果とに基づいて算出される指標であり、
前記第2指標は、少なくとも前記高温冷却制御の結果に基づいて算出される指標であり、
前記第2指標が前記低温冷却制御の結果から受ける影響は、前記第1指標が前記高温冷却制御の結果から受ける影響よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第2指標が前記低温冷却制御の期間に前記温度検出部により検出される温度の検出結果から受ける影響は、前記第1指標が前記高温冷却制御の期間に前記温度検出部により検出される温度の検出結果から受ける影響よりも小さい、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記貯蔵部を前記第1冷却制御よりも高い気圧帯のもとで冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す制御が実行される場合に、第1指標に基づき前記第1冷却制御から前記第2冷却制御への移行時期を決定し、前記第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき前記第2冷却制御から前記第1冷却制御への移行時期を決定する制御部と、
前記貯蔵部に関する気圧を検出する気圧検出部と、
を備え、
前記第1指標は、移行時期の決定対象である前記第1冷却制御の期間と当該第1冷却制御の直前の前記第2冷却制御の期間とを含む第1検出期間に前記気圧検出部により検出される気圧に基づく指標であり、
前記第2指標は、移行時期の決定対象である前記第2冷却制御の期間を含む第2検出期間に前記気圧検出部により検出される気圧に基づく指標であり、
前記第2検出期間は、前記移行時期の決定対象である前記第2冷却制御の期間と当該第2冷却制御の直前の前記第1冷却制御の期間との合計期間よりも短い、
冷蔵庫。
【請求項6】
貯蔵部を含む筐体と、
前記貯蔵部を冷却する冷却部と、
前記貯蔵部を第1温度帯で冷却する低温冷却制御と、前記貯蔵部を前記第1温度帯よりも高い第2温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返す制御が実行される場合に、第1指標に基づき前記低温冷却制御から前記高温冷却制御への移行時期を決定し、前記第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき前記高温冷却制御から前記低温冷却制御への移行時期を決定する制御部と、
前記貯蔵部に関する温度を検出する温度検出部と、
を備え、
前記第1指標は、移行時期の決定対象である前記低温冷却制御の期間を含む第1温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標であり、
前記第2指標は、移行時期の決定対象である前記高温冷却制御の期間と当該高温冷却制御の直前の前記低温冷却制御の期間とを含む第2温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標であり、
前記第1温度検出期間は、前記移行時期の決定対象である前記低温冷却制御の期間と当該低温冷却制御の直前の前記高温冷却制御の期間との合計期間よりも短い、
冷蔵庫。
【請求項7】
前記第1指標は、前記第1温度検出期間に前記温度検出部により検出される前記温度の積算値に基づく指標であり、
前記第2指標は、前記第2温度検出期間に前記温度検出部により検出される前記温度の平均値に基づく指標である、
請求項6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記第1指標と前記第2指標とのうち一方は、前記温度検出部により検出される温度を0℃から離すように補正する補正処理が行われ、前記補正処理により得られる値が積算された積算値に基づく指標である、
請求項1または請求項6に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵部を低温温度帯で冷却する低温冷却制御と貯蔵部を高温温度帯で冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返す制御を実行可能な冷蔵庫が知られている。冷蔵庫は、より適切な冷却制御を行うことが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-180732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より適切な冷却制御を行うことができる冷蔵庫を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷蔵庫は、筐体と、冷却部と、制御部と、温度検出部とを持つ。前記筐体は、貯蔵部を含む。前記冷却部は、前記貯蔵部を冷却する。前記制御部は、前記貯蔵部を冷却する第1冷却制御と、前記貯蔵部を前記第1冷却制御よりも高い温度帯または高い気圧帯のもとで冷却する第2冷却制御とを交互に繰り返す制御が実行される場合に、第1指標に基づき前記第1冷却制御から前記第2冷却制御への移行時期を決定し、前記第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき前記第2冷却制御から前記第1冷却制御への移行時期を決定する。前記温度検出部は、前記貯蔵部に関する温度を検出する。前記第1指標は、移行時期の決定対象である前記低温冷却制御の期間と当該低温冷却制御の直前の前記高温冷却制御の期間とを含む第1温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標である。前記第2指標は、移行時期の決定対象である前記高温冷却制御の期間を含む第2温度検出期間に前記温度検出部により検出される温度に基づく指標である。前記第2温度検出期間は、前記移行時期の決定対象である前記高温冷却制御の期間と当該高温冷却制御の直前の前記低温冷却制御の期間との合計期間よりも短い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の冷蔵庫を示す正面図。
図2図1中に示された冷蔵庫のF2-F2線に沿う断面図。
図3】第1実施形態の冷凍サイクル装置の構成を示す図。
図4】第1実施形態の冷蔵庫の機能構成の一部を示すブロック図。
図5】第1実施形態の特別チルドが実行される場合のチルド室温度の変化を示す図。
図6】第1実施形態の冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図。
図7】第1実施形態の第1指標および第2指標を用いた判定処理を示す図。
図8】第1実施形態の特別チルドに関する制御の流れを示すフローチャート。
図9】第1実施形態の変形例の冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図。
図10】第2実施形態の冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の冷蔵庫を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0008】
(第1実施形態)
[1.冷蔵庫の全体構成]
図1から図8を参照し、第1実施形態の冷蔵庫1について説明する。まず、冷蔵庫1の全体構成について説明する。
【0009】
図1は、冷蔵庫1を示す正面図である。図2は、図1中に示された冷蔵庫1のF2-F2線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、冷蔵庫1は、例えば、筐体10、複数の扉11、複数の棚12、複数の容器13、流路形成部品14、冷却部15、および制御基板16を備えている。
【0010】
筐体10は、上壁21、下壁22、左右の側壁23,24、および後壁25を有する。
上壁21および下壁22は、略水平に広がる。左右の側壁23,24は、下壁22の左右の端部から上方に起立し、上壁21の左右の端部に繋がる。後壁25は、下壁22の後端部から上方に起立し、上壁21の後端部に繋がる。
【0011】
図2に示すように、筐体10は、例えば、内箱10a、外箱10b、および断熱部10cを有する。内箱10aは、筐体10の内面を形成する部材である。外箱10bは、筐体10の外面を形成する部材である。外箱10bは、内箱10aよりも一回り大きく形成されており、内箱10aの外側に配置されている。内箱10aと外箱10bとの間には、発泡ウレタンのような発泡断熱材を含む断熱部10cが設けられている。
【0012】
筐体10の内部には、複数の貯蔵室27が設けられている。複数の貯蔵室27は、例えば、冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを含む。本実施形態では、最上部に冷蔵室27Aが配置され、冷蔵室27Aの下方に野菜室27Bが配置され、野菜室27Bの下方に製氷室27Cおよび小冷凍室27Dが配置され、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの下方に主冷凍室27Eが配置されている。
【0013】
チルド室27AAは、冷蔵室27Aの内部において、冷蔵室27Aの一部の下方に設けられている。チルド室27AAは、棚や壁などにより少なくとも部分的に冷蔵室27Aの他領域に対して区画されている。チルド室27AAは、冷蔵室27Aよりも下方に位置して冷たい冷気が流入しやすいことや、冷蔵室27Aと比べて後述する冷蔵用冷却器41の近くに位置することで、冷蔵室27Aよりも低い温度に冷却される。チルド室27AAは、「貯蔵部」の一例である。
【0014】
筐体10は、第1および第2の仕切部28,29を有する。第1および第2の仕切部28,29は、それぞれ略水平方向に沿う仕切壁である。第1仕切部28は、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間に位置し、冷蔵室27A(チルド室27AA)と野菜室27Bとの間を仕切っている。一方で、第2仕切部29は、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間に位置し、野菜室27Bと、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dとの間を仕切っている。第2仕切部29は、例えば発泡断熱材を含み、断熱性を有する。第1仕切部28は、例えば合成樹脂などで形成されており、第2仕切部29よりも断熱性が小さい。
【0015】
複数の貯蔵室27の開口は、複数の扉11によって開閉可能に閉じられる。複数の扉11は、冷蔵室27Aの開口を閉じる左右の冷蔵室扉11Aa,11Ab、野菜室27Bの開口を閉じる野菜室扉11B、製氷室27Cの開口を閉じる製氷室扉11C、小冷凍室27Dの開口を閉じる小冷凍室扉11D、および主冷凍室27Eの開口を閉じる主冷凍室扉11Eを含む。冷蔵室扉11Aa,11Abは、チルド室27AAを含む冷蔵室27Aを開閉可能に閉じる扉である。
【0016】
複数の棚12は、冷蔵室27Aに設けられている。
複数の容器13は、チルド室27AAに設けられたチルド室容器13A、野菜室27Bに設けられた第1および第2の野菜室容器13Ba,13Bb、製氷室27Cに設けられた製氷室容器(不図示)、小冷凍室27Dに設けられた小冷凍室容器13D、および主冷凍室27Eに設けられた第1および第2の主冷凍室容器13Ea,13Ebを含む。チルド室容器13Aの前壁13aaは、チルド室27AAを開閉可能に閉じる扉として機能する。
【0017】
流路形成部品14は、筐体10内に配置されている。流路形成部品14は、第1風路部品31と、第2風路部品32とを含む。
【0018】
第1風路部品31は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第1風路部品31は、例えば、野菜室27Bの下端部の後方から冷蔵室27Aの上端部の後方まで延びている。第1風路部品31と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第1空間D1が形成されている。第1風路部品31は、複数の冷蔵室冷気吹出口31aと、チルド室冷気吹出口31bと、冷気戻り口31cとを有する。複数の冷蔵室冷気吹出口31aは、冷蔵室27Aに開口している。第1空間D1を流れる冷気は、冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27に吹き出される。チルド室冷気吹出口31bは、チルド室27AAに開口している。第1空間D1を流れる冷気は、チルド室冷気吹出口31bからチルド室27AAに吹き出される。冷気戻り口31cは、野菜室27Bに開口している。野菜室27Bを通った冷気は、冷気戻り口31cから第1空間D1に戻る。
【0019】
第2風路部品32は、筐体10の後壁25に沿って設けられ、鉛直方向に延びている。第2風路部品32は、例えば、主冷凍室27Eの後方から製氷室27Cおよび小冷凍室27Dの上端部の後方まで延びている。第2風路部品32と筐体10の後壁25との間には、冷気(空気)が流れる通路である第2空間D2が形成されている。第2風路部品32は、冷気吹出口32aと、冷気戻り口32bとを有する。冷気吹出口32aは、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに開口している。第2空間D2を流れる冷気は、冷気吹出口32aから製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに吹き出される。冷気戻り口32bは、主冷凍室27Eに開口している。主冷凍室27Eを通った冷気は、冷気戻り口32bから第2空間D2に戻る。
【0020】
冷却部(冷却ユニット)15は、複数の貯蔵室27(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27E)を冷却する。冷却部15は、例えば、第1冷却モジュール40と、第2冷却モジュール45と、圧縮機49と、冷凍サイクル装置50(図3参照)とを含む。
【0021】
第1冷却モジュール40は、例えば、冷蔵用冷却器41と、冷蔵用送風機43とを含む。冷蔵用冷却器41は、第1空間D1に配置されている。冷蔵用冷却器41は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第1空間D1を流れる冷気を冷却する。冷蔵用冷却器41は、例えば、チルド室27AAに対応する高さに配置されている。
【0022】
冷蔵用送風機43は、例えば、第1風路部品31の冷気戻り口31cに設けられている。冷蔵用送風機43が駆動されると、野菜室27Bの空気が冷気戻り口31cから第1空間D1内に流入する。第1空間D1内に流入した空気は、第1空間D1内を上方に向けて流れ、冷蔵用冷却器41によって冷却される。冷蔵用冷却器41によって冷却された冷気は、複数の冷蔵室冷気吹出口31aから冷蔵室27Aに吹き出され、チルド室冷気吹出口31bからチルド室27AAに吹き出される。冷蔵室27Aおよびチルド室27AAに吹き出された冷気は、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAをそれぞれ流れた後、例えば野菜室27Bを経由して、再び冷気戻り口31cに戻る。これにより、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、冷蔵室27A、チルド室27AA、および野菜室27Bの冷却が行われる。
【0023】
第2冷却モジュール45は、例えば、冷凍用冷却器46と、冷凍用送風機48とを含む。冷凍用冷却器46は、第2空間D2に配置されている。冷凍用冷却器46は、後述する圧縮機49により圧縮された冷媒が供給され、第2空間D2を流れる冷気を冷却する。
【0024】
冷凍用送風機48は、例えば、第2風路部品32の冷気戻り口32bに設けられている。冷凍用送風機48が駆動されると、主冷凍室27Eの空気が冷気戻り口32bから第2空間D2内に流入する。第2空間D2内に流入した空気は、第2空間D2内を上方に向けて流れ、冷凍用冷却器46によって冷却される。冷凍用冷却器46によって冷却された冷気は、冷気吹出口32aから製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eに流入する。製氷室27Cおよび小冷凍室27Dに流入した冷気は、製氷室27Cおよび小冷凍室27Dを流れた後、主冷凍室27Eを経由して、再び冷気戻り口32bに戻る。これにより、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eを流れる冷気が冷蔵庫1内で循環され、製氷室27C、小冷凍室27D、および主冷凍室27Eの冷却が行われる。
【0025】
圧縮機49は、例えば、冷蔵庫1の底部に設けられている。圧縮機49は、貯蔵室27の冷却に用いられる冷媒ガスを圧縮する。圧縮機49により圧縮された冷媒ガスは、後述する凝縮器51などを経由して、冷蔵用冷却器41および冷凍用冷却器46に送られる。
【0026】
なお本明細書において「冷却する」とは、冷蔵用送風機43や冷凍用送風機48が駆動される場合に限定されない。例えば、「冷却する」とは、冷蔵用送風機43の駆動が停止された状態で圧縮機49から冷蔵用冷却器41に冷媒が送られ、冷蔵用冷却器41とチルド室27AAとの間の伝熱によりチルド室27AAの温度が低下する場合なども含む。
【0027】
制御基板16は、例えば、筐体10の上壁21に設けられている。本実施形態では、筐体10の上壁21の上面は、下方に向けて窪んだ凹部21aを有する。制御基板16は、凹部21aに配置されている。
【0028】
[2.冷凍サイクル装置]
上述のように構成された冷蔵庫1は、後述する制御部100によって制御される冷凍サイクル装置50によって冷却される。
【0029】
図3は、冷凍サイクル装置50の構成を示す図である。冷凍サイクル装置50は、冷媒の流れ順に、圧縮機49と、凝縮器51と、ドライヤ52と、三方弁53と、キャピラリーチューブ54,55と、冷蔵用冷却器41と、冷凍用冷却器46とが環状に接続されることにより構成される。圧縮機49の高圧吐出口には、凝縮器51とドライヤ52とが順に接続パイプ56を介して接続されている。ドライヤ52の吐出側には、三方弁53が接続されている。三方弁53は、ドライヤ52が接続される1つの入口と、2つの出口とを有している。三方弁53の2つの出口のうち、一方の出口には冷蔵側キャピラリーチューブ54と冷蔵用冷却器41とが順に接続されている。冷蔵用冷却器41は、接続配管である冷蔵側サクションパイプ57を介して圧縮機49に接続されている。
【0030】
三方弁53の2つの出口のうち、他方の出口には、冷凍側キャピラリーチューブ55と冷凍用冷却器46とが順に接続されている。冷凍用冷却器46は、接続配管である冷凍側サクションパイプ58を介して圧縮機49に接続されている。なお、冷凍用冷却器46と圧縮機49との間には、冷蔵用冷却器41からの冷媒が冷凍用冷却器46側に逆流しないための逆止弁59が設けられている。
【0031】
次に、冷凍サイクル装置50の冷媒の流れを説明する。まず、冷凍サイクル装置50を循環する冷媒は、圧縮機49により圧縮されて、高温、高圧のガス状冷媒となり、流路Aを流れる。このガス状冷媒は、凝縮器51により放熱されて、中温、高圧の液状冷媒となる。その後、ドライヤ52を通ることで汚れや水分などの不純物が取り除かれた液状冷媒は、三方弁53により絞り制御されながら、冷蔵側キャピラリーチューブ54(または冷凍側キャピラリーチューブ55)に入る。このとき、冷蔵側キャピラリーチューブ54(または冷凍側キャピラリーチューブ55)内の中温、高圧の液状冷媒は、冷蔵側サクションパイプ57(または冷凍側サクションパイプ58)内の冷媒と熱交換されながら減圧される。そして、減圧された冷媒は、冷蔵用冷却器41(または冷凍用冷却器46)を通過しながら蒸発することで、冷蔵用冷却器41(または冷凍用冷却器46)が冷却される。
【0032】
その後、低温、低圧のガス状となった冷媒は、冷蔵側サクションパイプ57(または冷凍側サクションパイプ58)に流入する。冷蔵側サクションパイプ57(または冷凍側サクションパイプ58)に流入した直後の冷媒ガスの温度は、-10℃前後と低温である。この冷媒ガスは、サクションパイプ57(またはサクションパイプ58)を通る間に、キャピラリーチューブ54(またはキャピラリーチューブ55)内の冷媒と熱交換されて、最終的には室温程度にまで昇温される。そして、この冷媒ガスが、圧縮機49に再び吸入されて、冷媒の循環が完了する。
【0033】
上記の冷凍サイクル装置50において、三方弁53は、制御部100(図4参照)によって制御され、流路Bおよび流路Cのうち例えば一方を選択する。流路Bは、冷媒を冷蔵用冷却器41に供給する流路である。流路Cは、冷媒を冷凍用冷却器46に供給する流路である。これら2つの流路B,Cは、合流点Dにおいて合流する。冷媒は、合流点Dから矢印Eの方向に流れて圧縮機49へと戻る。
【0034】
[3.制御]
[3.1 制御に関する機能構成]
図4は、冷蔵庫1の機能構成の一部を示すブロック図である。制御基板16は、マイコンやタイマなどを有したコンピュータで構成される制御部100を備える。制御部100は、冷蔵庫1の全体を制御する。制御部100には、冷蔵用送風機43、冷凍用送風機48、圧縮機49、三方弁53、冷蔵室温度センサ110、チルド室温度センサ111、冷凍室温度センサ112、記憶部116、および操作パネル部150が接続されている。
【0035】
冷蔵室温度センサ110は、冷蔵室27Aに設けられ、冷蔵室27Aの空気温度を検出する。チルド室温度センサ111は、チルド室27AAに設けられ、チルド室27AAの空気温度を検出する。冷凍室温度センサ112は、例えば主冷凍室27Eに設けられ、主冷凍室27Eの空気温度を検出する。本明細書では、冷蔵室27Aの空気温度を「冷蔵室温度」と称し、チルド室27AAの空気温度を「チルド室温度」と称し、主冷凍室27Eの空気温度を「冷凍室温度」と称する場合がある。チルド室温度センサ111は、「貯蔵部(チルド室27AA)に関する温度を検出する温度検出部」の一例である。
【0036】
なお、冷蔵庫1は、チルド室温度センサ111を省略し、冷蔵室温度センサ110の検出結果と、冷蔵室温度とチルド温度との相関関係とに基づきチルド室温度を推定してもよい。この場合、冷蔵室温度センサ110は、「貯蔵部(チルド室27AA)に関する温度を検出する温度検出部」の一例である。以下の説明における「チルド室温度センサ111により検出された温度」は、「冷蔵室温度センサ110の検出結果に基づいて推定された温度」と読み替えられてもよい。
【0037】
記憶部116は、冷蔵庫1の運転に必要な情報を記憶する。記憶部116は、例えば、後述する閾値や補正処理を行うための関数式が記憶されている。操作パネル部150は、各貯蔵室27の設定温度帯の切り替えや制御モードの切り替えを指示するユーザの操作を受け付けるとともに、それらの設定内容や現在の運転状況を表示させる。
【0038】
[3.2 基本運転]
次に、冷蔵庫1の基本運転について説明する。制御部100は、冷蔵庫1の基本運転として、「冷蔵運転」および「冷凍運転」を実行する。「冷蔵運転」とは、三方弁53が切り替えられて圧縮機49から冷蔵用冷却器41に液体冷媒が供給される運転を意味する。上述したように、「冷蔵運転」は、冷蔵用送風機43が駆動される場合に限定されず、冷蔵用送風機43が停止している場合や、非常に低速で駆動される場合なども含む。一方で、「冷凍運転」は、三方弁53が切り替えられて圧縮機49から冷凍用冷却器46に液体冷媒が供給される運転を意味する。
【0039】
制御部100は、例えば、冷蔵運転と冷凍運転とを交互に行うことにより、冷蔵温度帯の貯蔵室27(冷蔵室27A、チルド室27AA、野菜室27B)と、冷凍温度帯の貯蔵室27(製氷室27C、小冷凍室27D、主冷凍室27E)とがそれぞれの設定温度帯に保たれるように、冷却部15を制御する。例えば、制御部100は、第1所定時間(例えば20分)に亘り冷蔵温度帯の貯蔵室27を冷却し、第2所定時間(例えば40分)に亘り冷凍温度帯の貯蔵室27を冷却することを交互に繰り返す。制御部100は、例えば、冷蔵室温度(またはチルド室温度)や冷凍室温度に基づくPID制御(Proportional Integral Differential Control)のようなフィードバック制御を行うことで、温度管理の主対象となる貯蔵室27の空気温度を設定温度帯の上限値と下限値との間に収める。
【0040】
制御部100は、冷蔵運転中に、冷蔵室温度が冷蔵室27Aの設定温度帯の下限値に達した場合(または、チルド室温度がチルド室27AAの設定温度帯の下限値に達した場合)や、冷凍室温度が主冷凍室27Eの設定温度帯の上限値に達した場合などに、第1所定時間の途中であっても冷蔵運転を終了して冷凍運転を開始してもよい。制御部100は、冷凍運転中に、冷凍室温度が主冷凍室27Eの設定温度帯の下限値に達した場合や、冷蔵室温度が冷蔵室27Aの設定温度帯の上限値に達した場合(または、チルド室温度がチルド室27AAの設定温度帯の上限値に達した場合)などに、第2所定時間の途中であっても冷凍凍転を終了して冷蔵運転を開始してもよい。
【0041】
冷蔵運転が行われる間は、冷蔵温度帯の貯蔵室27の空気温度は低下するが、冷凍温度帯の貯蔵室27の空気温度は上昇する。一方で、冷凍運転が行われる間は、冷凍温度帯の貯蔵室27の空気温度は低下するが、冷蔵温度帯の貯蔵室27の空気温度は上昇する。このため、冷蔵温度帯の貯蔵室27の空気温度と、冷凍温度帯の貯蔵室27の空気温度は、それぞれ鋸歯状に上下することを繰り返す(図5参照)。
【0042】
[3.3 チルド室に関する制御モード]
次に、制御部100が実行可能なチルド室に関する制御モードについて説明する。
【0043】
<通常チルド>
「通常チルド」の制御モードは、例えば、基本運転における冷蔵室27Aの冷却に付随してチルド室27AAの冷却が行われる制御モードである。すなわち、「通常チルド」の制御モードでは、検出された冷蔵室温度と、冷蔵室27Aの設定温度帯とに基づいて冷却部15が制御され、冷蔵室27Aおよびチルド室27AAの冷却が行われる。「通常チルド」の制御モードでは、チルド室温度は、例えば0~1℃を平均温度とする一定の温度帯に収まる。
【0044】
<特別チルド>
「特別チルド」の制御モードでは、チルド室27AAが低温温度帯で冷却される時間と、チルド室27AAが高温温度帯で冷却される時間とが交互に繰り返される。以下このような「特別チルド」について説明する。「特別チルド」の制御モードは、例えば、冷蔵室27Aの設定温度帯および冷蔵室温度に代えて、チルド室27AAの設定温度帯およびチルド室温度に基づいて冷却部15が制御される。
【0045】
図5は、「特別チルド」の制御モードが実行される場合のチルド室27AAの空気温度の変化を示す図である。制御部100は、「特別チルド」の制御モードでは、チルド室27AAを第1温度帯Taで冷却する低温冷却制御と、チルド室27AAを第1温度帯Taよりも高い第2温度帯Tbで冷却する高温冷却制御とを交互に繰り返す。低温冷却制御は、「第1冷却制御」の一例である。高温冷却制御は、「第2冷却制御」の一例である。
【0046】
第1温度帯Taは、低温冷却制御時のチルド室27AAの設定温度帯である。第1温度帯Taの平均温度(すなわち設定温度帯の中心温度)は、例えば-5℃である。第1温度帯Taの平均温度は、氷点以下の温度であり、0℃未満の温度である。本実施形態では、第1温度帯Taの最大値は、0℃未満の温度である。第1温度帯Taは、チルド室27AAの食品の表面を微凍結させる温度である。第1温度帯Taは、「通常チルド」の温度帯よりも低い温度帯である。第1温度帯Taは、チルド室27AAの食品の真ん中のほうまで氷結させるのではなく、表面のみに氷結した層を作ることができる温度帯である。低温冷却制御は、後述する第1指標に基づいて決定される実施時間Sa(例えば約2時間)に亘り実施される。
【0047】
第2温度帯Tbは、高温冷却制御時のチルド室27AAの設定温度帯である。第2温度帯Tbの平均温度(すなわち設定温度帯の中央温度)は、例えば+1℃である。第2温度帯Tbの平均温度は、氷点よりも高い温度であり、0℃以上の温度である。本実施形態では、第2温度帯Tbの最大値は、0℃以上の温度である。第2温度帯Tbは、「通常チルド」の温度帯よりも高い温度帯である。第2温度帯Tbは、チルド室27AAの食品の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる温度である。高温冷却制御は、後述する第2指標に基づいて決定される実施時間Sb(例えば約7時間)に亘り実施される。本実施形態では、例えば冷蔵室扉11a,11bが開閉されない場合(すなわち、チルド室温度が安定的である場合)、低温冷却制御と比べて高温冷却制御を相対的に長い時間に亘り実行されるように、後述する第1閾値および第2閾値が設定されている。
【0048】
ここで、上述した冷蔵運転および冷凍運転における「冷却(冷凍サイクルにおける冷却)」は、冷却器(冷蔵用冷却器41または冷凍用冷却器46に冷媒が供給されることを意味する。これに対し、低温冷却制御および高温冷却制御における「冷却」は、第1温度帯Taまたは第2温度帯Tbに温度を維持するように冷蔵庫1を運転することを意味する。「低温冷却制御(第1冷却制御)と、高温冷却制御(第2冷却制御)とを交互に繰り返す」とは、低温冷却制御(第1冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転および冷凍運転が行われ、その後、高温冷却制御(第2冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転および冷凍運転が行われ、その後に、低温冷却制御(第1冷却制御)の実施中に複数回の冷蔵運転および冷凍運転が行われる場合なども含む。
【0049】
[3.4 低温冷却制御と高温冷却制御の切り替え時期の決定]
次に、低温冷却制御と高温冷却制御の切り替え時期の決定方法について説明する。
図6は、低温冷却制御と高温冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図である。本実施形態では、制御部100は、第1指標に基づき低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定し、第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定する。以下、この内容について説明する。
【0050】
[3.4.1 第1指標と第2指標の違い]
本実施形態では、制御部100は、所定周期(例えば1分毎)に、チルド室温度センサ111により検出された温度値T(T,T,T,…)を取得する。制御部100は、取得した温度値Tに基づき、第1指標および第2指標を算出する。
【0051】
第1指標は、低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定するために用いられる指標(指数)である。「低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定する」とは、例えば、低温冷却制御を終了させ、高温冷却制御を開始する時期(すなわち、チルド室27AAの設定温度帯を第1温度帯Taから第2温度帯Tbに変更する時期)を決定することを意味する。ただし、「低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定する」とは、上記例に限定されず、低温冷却制御の終了時点を決定すること、または高温冷却制御の開始時点を決定することのうち少なくとも一方であればよい。
【0052】
一方で、第2指標は、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定するために用いられる指標(指数)である。「高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定する」とは、例えば、高温冷却制御を終了させ、低温冷却制御を開始する時期(すなわち、チルド室27AAの設定温度帯を第2温度帯Tbから第1温度帯Taに変更する時期)を決定することを意味する。ただし、「高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定する」とは、上記例に限定されず、高温冷却制御の終了時点を決定すること、または低温冷却制御の開始時点を決定することのうち少なくとも一方であればよい。
【0053】
第1指標と第2指標とは、互いに評価方法が異なる指標である。「評価方法が異なる」とは、例えば、指標の算出方法が異なること、または算出に用いる物理量の取得期間が異なることを意味する。「算出に用いる物理量の取得期間が異なる」とは、例えば、移行期間の決定対象である冷却制御(実行中の冷却制御)の開示時点から現在までに検出された物理量(例えば温度)に加え、1つ以上前に実行された冷却制御の期間に検出された物理量(例えば温度)も評価対象に含めるか否かが異なることを意味する。
【0054】
第1指標は、例えば、チルド室温度センサ111により検出された温度の平均値に基づく指標である。一方で、第2指標は、チルド室温度センサ111により検出される温度の積算値に基づく指標である。
【0055】
第1指標は、例えば、低温冷却制御の結果と高温冷却制御の結果とに基づいて算出される指標である。「低温冷却制御の結果に基づく」とは、低温冷却制御の期間に検出される物理量に基づくこと(その物理量を第1指標の算出に反映させること)を意味する。同様に、「高温冷却制御の結果に基づく」とは、高温冷却制御の期間に検出される物理量に基づくこと(その物理量を第1指標の算出に反映させること)を意味する。
【0056】
第2指標は、例えば、少なくとも高温冷却制御の結果に基づいて算出される指標である。第2指標が低温冷却制御の結果から受ける影響は、第1指標が高温冷却制御の結果から受ける影響よりも小さい。「第2指標が低温冷却制御の結果から受ける影響」とは、第2指標の値が低温冷却制御の期間に検出される物理量によって影響されて変わる変動量を意味する。同様に、「第1指標が高温冷却制御の結果から受ける影響」とは、第1指標の値が高温冷却制御の期間に検出される物理量によって影響されて変わる変動量を意味する。本明細書で「受ける影響が小さい」とは、影響を全く受けない場合も含む。例えば、第2指標は、高温冷却制御の結果のみに基づいて算出される。
【0057】
本実施形態では、第1指標は、低温冷却制御の期間および高温冷却制御の期間に検出される温度に基づく指標である。一方で、第2指標は、少なくとも高温冷却制御の期間に検出される温度に基づく指標である。そして、第2指標が低温冷却制御の期間に検出される温度の検出結果から受ける影響は、第1指標が高温冷却制御の期間に検出される温度の検出結果から受ける影響よりも小さい。
【0058】
本実施形態では、第1指標は、移行時期の決定対象である低温冷却制御(すなわち実行中の低温冷却制御)の期間および当該低温冷却制御の直前の高温冷却制御の期間に検出される温度の平均値に基づく指標である。一方で、第2指標は、移行時期の決定対象である高温冷却制御(すなわち実行中の高温冷却制御)の期間のみに検出される温度の積算値に基づく指標である。
【0059】
[3.4.2 第2指標に関する補正処理]
制御部100は、第2指標を算出する場合、チルド室温度センサ111により検出される温度を0℃から離すように補正する補正処理を行い、この補正処理により得られる値を積算した積算値を第2指標として算出する。
【0060】
本実施形態では、制御部100は、チルド室温度センサ111により検出される温度値Tに対して一定の補正量ΔTを加算し、それを積算した積算値を第2指標として算出する(式(1)参照)。ΔTは、第2温度帯Tbの平均温度(すなわち設定温度帯の中心温度)が+1℃である場合、例えば+4℃に設定される。すなわち、制御部100は、第2指標として、実際に検出された温度値Tに対して+4℃の嵩上げを行い、積算値を算出する。
【0061】
【数1】
【0062】
[3.4.3 移行時期の判定]
図7は、第1指標および第2指標を用いた判定処理を示す図である。なお、図7は説明の便宜上、冷蔵運転と冷凍運転による温度変動を省略して模式的に示している。本実施形態では、制御部100は、低温冷却制御が実行中である場合、所定の周期(例えば1分毎)で第1指標を算出し、算出した第1指標を第1閾値と比較する。制御部100は、第1指標が第1閾値を下回った場合に、低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期が到来したと判定する。第1閾値は、実行中の低温冷却制御と直前の高温冷却制御における温度の平均値の目標値であり、例えば-1℃である。
【0063】
例えば、図7における時点P2において高温冷却制御から低温冷却制御に移行した後、制御部100は、所定の周期(例えば1分毎)に第1指標(すなわち、実行中の低温冷却制御と直前の高温冷却制御における温度の平均値)を算出する。第1指標は、低温冷却制御の開始時点(時点P2)では、直前の高温冷却制御における温度の平均値となり、例えば+1℃に近い温度である。そして、第1指標は、低温冷却制御の開始時点(時点P2)から時間が経過するに伴い徐々に低下する。そして、制御部100は、第1指標が第1閾値(例えば-1℃)を下回った場合に、低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期が到来したと判定する。
【0064】
一方で、制御部100は、高温冷却制御が実行中である場合、所定の周期(例えば1分毎)で第2指標を算出し、算出した第2指標を第2閾値と比較する。制御部100は、第2指標が第2閾値を上回った場合に、高温冷却制御から低温冷却制御の移行時期が到来したと判定する。第2閾値は、実行中の高温冷却制御における温度に対して補正処理が行われた補正結果の積算値の目標値であり、例えば1500[℃・分](=((1℃+4℃)×300分)である。
【0065】
例えば、図7における時点P1において低温冷却制御から高温冷却制御に移行した後、制御部100は、所定の周期(例えば1分毎)に第2指標(すなわち、実行中の高温冷却制御における補正後の温度の積算値)を算出する。第2指標は、高温冷却制御の開始時点では、ゼロである。そして、第2指標は、高温冷却制御の開始時点(例えばP1)から時間が経過するに伴い徐々に上昇する。そして、制御部100は、第2指標が1500[℃・分]を上回った場合に、高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期が到来したと判定する。
【0066】
[4.制御の流れ]
次に、特別チルドに関する制御の流れを説明する。
図8は、特別チルドに関する制御の流れを示すフローチャートである。制御部100は、例えば、特別チルドの制御モードを開始させるユーザの操作が操作パネル部150により受け付けられた場合、本フローの処理を開始する。
【0067】
まず、制御部100は、低温冷却制御を開始する(S101)。制御部100は、初回の低温冷却制御については固定の実施時間に基づいて管理する。このため、制御部100は、所定の周期で、低温冷却制御の開始時点から所定時間(例えば2時間)が経過したか否かを判定する(S102)。制御部100は、低温冷却制御の開始時点から所定時間が経過していない場合(S102:NO)、S102の処理を繰り返す。一方で、制御部100は、低温冷却制御の開始時点から所定時間が経過した場合(S102:YES)、低温冷却制御を終了し、高温冷却制御を開始する(S103)。
【0068】
次に、制御部100は、高温冷却制御が開始される場合、所定周期(例えば1分毎)でチルド室温度センサ111により検出された温度を記憶部116に記録する(S111)。また、制御部100は、チルド室温度センサ111により検出された温度に対して補正処理が行われた値を積算した積算値を第2指標として算出する(S112)。次に、制御部100は、算出した第2指標が第2閾値を上回ったか否かを判定する(S113)。制御部100は、算出した第2指標が第2閾値を上回っていない場合(S113:NO)、S111からS113の処理を繰り返す。一方で、制御部100は、第2指標が第2閾値を上回った場合(S113:YES)、高温冷却制御を終了し、低温冷却制御を開始する(S114)。
【0069】
次に、制御部100は、低温冷却制御(2回目以降の低温冷却制御)が開始される場合、所定周期(例えば1分毎)でチルド室温度センサ111により検出された温度を記憶部116に記録する(S121)。そして、制御部100は、記憶部116に記憶された前回の高温冷却制御の期間および実行中の低温冷却制御の期間に検出された温度に基づき、前回の高温冷却制御の期間と実行中の低温冷却制御の期間とを合わせた期間における温度の平均値を第1指標として算出する(S122)。次に、制御部100は、算出した第1指標が第1閾値を下回ったか否かを判定する(S123)。制御部100は、算出した第1指標が第1閾値を下回っていない場合(S123:NO)、S121からS123の処理を繰り返す。一方で、制御部100は、第1指標が第1閾値を下回った場合(S123:YES)、低温冷却制御を終了し、高温冷却制御を開始する(S124)。
【0070】
以降、高温冷却制御と低温冷却制御とが上記処理に基づき繰り返される。制御部100は、例えば、特別チルドの制御モードを終了させるユーザの操作が操作パネル部150により受け付けられた場合、本フローの処理を終了する。
【0071】
[5.利点]
比較例として、低温冷却制御と高温冷却制御とを一定の時間の経過に伴い切り替える制御モードについて考える。このような制御モードでは、扉開閉などにより実際のチルド室温度が変化した場合、食品の状態が仕様を満足できない(表面の凍結が十分に進まない、または表面の凍結の融解が十分に進まない)可能性がある。
【0072】
そこで本実施形態では、制御部100は、低温冷却制御と高温冷却制御との切り替えを検出された温度に関する指標に基づいて行う。これにより、チルド室温度が外的または内的の要因により変化したとしても、実行中の冷却制御を継続する時間を調整することができ、チルド室27AA内の食品の鮮度の低下を抑制することや凍結を抑制することができる。そして本実施形態では、制御部100は、第1指標に基づき低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定し、第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定する。このような構成によれば、低温冷却制御および高温冷却制御の特性にそれぞれ対応した2つの指標に基づき、冷却制御を行うことができる。これにより、適切な冷却制御を行うことができる。
【0073】
ここで、低温冷却制御の終了時点は、低温冷却制御の目的を達成する時間に亘り低温冷却制御が行われた時点である。このため、低温冷却制御の終了時点をより正確に判定するためには、実行中の低温冷却制御の直前に行われた高温冷却制御の結果を反映させることが重要になる。このため、低温冷却制御の終了時点は、実行中の低温冷却制御の期間および直前の高温冷却制御の期間に検出される温度の平均値に基づく指標であるとよい。
【0074】
同様に、高温冷却制御の終了時点は、高温冷却制御の目的を達成する時間に亘り高温冷却制御が行われた時点である。このため、高温冷却制御の終了時点をより正確に判定するためには、実行中の高温冷却制御の直前に行われた低温冷却制御の結果を反映させることが重要になる。このため、高温冷却制御の終了時点は、実行中の高温冷却制御の期間および直前の低温冷却制御の期間に検出される温度の平均値に基づく指標であるとよい。
【0075】
しかしながら、制御部100による低温冷却制御と高温冷却制御との切り替えは、指標と閾値とを比較し、指標が閾値を上回るまたは下回ることが検出されることで行われる。このため、制御部100による低温冷却制御と高温冷却制御との切り替えは、指標が閾値を実際に上回ったまたは下回った時点に対して遅れが生じる。このため、低温冷却制御の終了時点を判定する指標として、実行中の低温冷却制御の期間および直前の高温冷却制御の期間に検出される温度の平均値が用いられ、高温冷却制御の終了時点を判定する指標として、実行中の高温冷却制御の期間および直前の低温冷却制御の期間に検出される温度の平均値が用いられると、各切り替え時期の遅れが累積し、低温冷却制御の実施時間および高温冷却制御の実施時間がそれぞれ徐々に長くなる。この場合、適切な冷却制御が難しくなる場合がある。
【0076】
そこで本実施形態では、第1指標は、低温冷却制御の結果と高温冷却制御の結果とに基づいて算出される指標である。第2指標は、少なくとも高温冷却制御の結果に基づいて算出される指標である。第2指標が低温冷却制御の結果から受ける影響は、第1指標が高温冷却制御の結果から受ける影響よりも小さい。このような構成によれば、低温冷却制御の結果と高温冷却制御の結果の両方を反映させた第1指標に基づき低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期をより正確に判定することができるとともに、各切り替え時期の遅れが累積することを抑制し、低温冷却制御の実施時間および高温冷却制御の実施時間がそれぞれ徐々に長くなることを抑制することができる。これにより、より適切な冷却制御を行うことができる。
【0077】
ここで上述したように、チルド室27AAは、冷蔵室扉11Aa,11Abの開閉など外的または内的な要因により温度が変化する。この温度変化は、チルド室温度の上昇を伴う場合が、チルド室温度の低下を伴う場合と比べて多い。このため、冷蔵庫1では、食材の表面の凍結状態を仕様に近付けるため、食材の温度を上昇させる高温冷却制御と比べて、食材の温度を低下させる低温冷却制御をより精度良く行うことが好ましい。
【0078】
そこで本実施形態では、低温冷却制御の判定に用いられる第1指標として、低温冷却制御の結果と高温冷却制御の結果の両方を反映させた精度が良い指標を用いる。このような構成によれば、より適切な冷却制御を行うことができ、食材の表面の凍結状態を精度良く仕様に近付けることができる。
【0079】
別の観点では、制御部100は、冷蔵室扉11Aa,11Abが開閉されない場合に、低温冷却制御と比べて高温冷却制御を相対的に長い時間に亘り実行する。そして、相対的に長い高温冷却制御の終了時期を決定する指標は、温度の積算値に基づく指標である。一方で、相対的に短い低温冷却制御の終了時期を決定する指標は、温度の平均値に基づく指標である。このような構成によれば、相対的に短い低温冷却制御の判定に用いられる第1指標として、低温冷却制御の結果と高温冷却制御の結果の両方を反映させた精度が良い指標を用いる。これにより、相対的に短い低温冷却制御の実施時間をより精度良く判定することができる。一方で、相対的に短い低温冷却制御の実施時間は、多少の誤差があっても、全体として大きな影響が出にくい。このため、相対的に長い高温冷却制御の判定に用いられる第2指標として、主として高温冷却制御の結果を反映させた指標が用いられる。
【0080】
ここで、積算値に関する指標を計算する場合において、検出される温度が0℃近辺である場合、いつまで経ってもり積算値が閾値まで達せずに、対象となる冷却制御が終了されない場合がある。
【0081】
そこで本実施形態では、積算値に関する指標は、検出される温度を0℃から離すように補正する補正処理が行われ、補正処理により得られる値に基づいて算出される。このような構成によれば、検出される温度が0℃である場合でも着実に積算値が閾値に近付き、適切な時期に対象となる冷却制御の終了判定が行われる。これにより、より適切な冷却制御を行うことができる。なお補正処理は、所定の数値(ΔT)を加算することに限定されず、検出される温度を数倍(例えば2倍)するような補正処理でもよいし、他の関数を用いた補正処理でもよい。
【0082】
(変形例)
図9は、変形例の冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図である。本変形例では、第1指標と第2指標との関係が第1実施形態と逆である。すなわち、第1指標(低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定するために用いられる指標)は、少なくとも低温冷却制御の期間に検出される温度に基づく指標である。そして、第1指標が高温冷却制御の期間に検出される温度の検出結果から受ける影響は、第2指標が低温冷却制御の期間に検出される温度の検出結果から受ける影響よりも小さい。例えば、第1指標は、移行時期の決定対象である低温冷却制御(すなわち実行中の低温冷却制御)の期間に検出される温度の積算値に基づく指標である。
【0083】
一方で、第2指標(高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定するために用いられる指標)は、高温冷却制御の期間および低温冷却制御の期間に検出される温度に基づく指標である。例えば、第2指標は、移行時期の決定対象である高温冷却制御(すなわち実行中の高温冷却制御)の期間および当該高温冷却制御の直前の低温冷却制御の期間に検出される温度の平均値に基づく指標である。
【0084】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、特別チルドの制御モードが温度に代えて/加えて気圧の制御により実現される点で、第1実施形態とは異なる。以下に説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0085】
図10は、第2実施形態の冷却制御の切り替え時期の決定方法を説明するための図である。上述した第1実施形態では、特別チルドの制御モードにおいて、第1冷却制御は低温冷却制御であり、第2冷却制御は高温冷却制御である。これに代えて/これに加えて、制御部100は、チルド室27AAを第1気圧帯のもとで冷却する第1冷却制御(低圧冷却制御)と、チルド室27AAを第1気圧帯よりも高い第2気圧帯のもとで冷却する第2冷却制御(高圧冷却制御)とを交互に繰り返してもよい。チルド室27AAの気圧は、例えば冷却部15の一部としてチルド室27AAに設けられた真空ポンプを駆動させることで調整することができる。低圧冷却制御は、実施形態の低温冷却制御と同様に、チルド室27AAの食材の表面を微凍結させることができる冷却制御である。一方で、高圧冷却制御は、実施形態の低温冷却制御と同様に、チルド室27AAの食材の表面を作られた微凍結の層を融解させることができる冷却制御である。
【0086】
本実施形態では、制御部100は、所定周期(例えば1分毎)に、チルド室27AAに設けられた気圧センサ160(図4参照)により検出された気圧値を取得する。制御部100は、取得した気圧値に基づき、第1指標および第2指標を算出する。
【0087】
第1指標は、低温冷却制御の期間および高温冷却制御の期間に検出される気圧に基づく指標(例えば気圧の平均値)である。一方で、第2指標は、少なくとも高温冷却制御の期間に検出される気圧に基づく指標(例えば気圧の積算値)である。第2指標が低温冷却制御の期間に検出される気圧の検出結果から受ける影響は、第1指標が高温冷却制御の期間に検出される気圧の検出結果から受ける影響よりも小さい。このような構成によっても、より適切な冷却制御を実現することができる。
【0088】
以上、いくつかの実施形態および変形例について説明したが、実施形態および変形例は上述した例に限定されない。例えば、第1指標または第2指標は、実行中の冷却制御の期間および直前の別の冷却制御の期間に検出された温度の平均値に限定されず、1つ以上前の冷却制御の開始時点から現在(すなわち判定時点)までの温度の平均値でもよい。同様に、第1指標または第2指標は、実行中の冷却制御の期間に検出された温度の積算値に限定されず、1つ以上前の冷却制御の開始時点から現在(すなわち判定時点)までの温度の積算値でもよい。
【0089】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、冷蔵庫は、第1指標に基づき低温冷却制御から高温冷却制御への移行時期を決定し、第1指標とは評価方法が異なる第2指標に基づき高温冷却制御から低温冷却制御への移行時期を決定する制御部を有する。このような構成によれば、より適切な冷却制御を行うことができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…冷蔵庫、10…筐体、15…冷却部、27A…冷蔵室、27AA…チルド室(貯蔵部)、27E…主冷凍室、41…冷蔵用冷却器、43…冷蔵用送風機、46…冷凍用冷却器、48…冷凍用送風機、49…圧縮機、100…制御部。
図1
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