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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 62/10 20250101AFI20241223BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20241223BHJP
   H10D 30/66 20250101ALI20241223BHJP
   H10D 12/00 20250101ALI20241223BHJP
   H10D 64/20 20250101ALI20241223BHJP
【FI】
H01L29/06 301F
H01L29/91 D
H01L29/06 301V
H01L29/78 652P
H01L29/78 655F
H01L29/44 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021045947
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144785
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100200104
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 実
(72)【発明者】
【氏名】松下 憲一
(72)【発明者】
【氏名】安原 紀夫
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209983(JP,A)
【文献】特開2014-003200(JP,A)
【文献】特開2005-005443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/861
H01L 29/739
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル領域と、前記セル領域を囲む終端領域と、が設定された半導体装置であって、
第1電極と、
前記第1電極上に設けられた半導体部と、
前記終端領域において前記半導体部上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられ、上方から見て前記半導体部の中心から外周に向かう第1方向に並び、相互に離隔した複数の第2電極と、
前記絶縁膜中に設けられ、前記複数の第2電極のうちの隣り合う一対の第2電極の隙間と前記第1方向と直交する第2方向において重なり、前記絶縁膜を介して、前記一対の第2電極のうちの一方と対向する第1浮遊電極と、
前記第1浮遊電極から離隔するように前記絶縁膜中に設けられ、前記隙間内において前記第1浮遊電極と前記第2方向において重なり、前記第1浮遊電極と重なる部分が、前記第1浮遊電極において前記隙間と重なる部分の下方に位置し、前記絶縁膜を介して、前記一対の第2電極のうちの他方と対向する第2浮遊電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1浮遊電極の外周は、前記隙間と前記第2方向において重なる、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1浮遊電極は、
前記第2浮遊電極よりも内側に位置し、前記第1方向において前記第2浮遊電極と隣り合う第1部分を有する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1浮遊電極は、
前記第2浮遊電極の上方に位置する第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に位置し、前記第1部分及び前記第2部分に連なる第3部分と、
をさらに有する請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体部は、
前記第1電極上に設けられた第1導電形の第1半導体層と、
前記第1半導体層の上層部に設けられ、上方から見て前記第1半導体層の外周よりも内側に位置する第2導電形の第2半導体層と、
を有し、
前記絶縁膜は、前記第2半導体層の外周部及び前記第1半導体層において前記第2半導体層よりも外側に位置する部分と前記第2方向において重なり、
前記複数の第2電極のうちの最も内側に位置する第2電極は、前記第2半導体層のうち前記絶縁膜よりも内側に位置する部分に接続されており、
前記複数の第2電極のうちの最も外側に位置する第2電極は、前記第1半導体層のうち、前記絶縁膜よりも外側に位置する部分に接続されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1半導体層は、
前記第1電極上に設けられた第1半導体領域と、
前記第1半導体領域上に設けられ、不純物濃度が前記第1半導体領域の不純物濃度よりも低い第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の前記上層部のうちの外周部に設けられ、不純物濃度が前記第2半導体領域の不純物濃度よりも高い第3半導体領域と、
を有し、
前記最も外側に位置する第2電極は、前記第3半導体領域に接続されている、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1浮遊電極及び前記第2浮遊電極は、ポリシリコンを含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオード又はトランジスタ等の素子が設けられたセル領域と、セル領域を囲む終端領域と、が設定された半導体装置が知られている。このような半導体装置においては、終端領域に空乏層の広がりを抑制するような構造を設け、耐圧を向上させることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-38937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性が高い半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、セル領域と、前記セル領域を囲む終端領域と、が設定された半導体装置であって、第1電極と、前記第1電極上に設けられた半導体部と、前記終端領域において前記半導体部上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜上に設けられ、上方から見て前記半導体部の中心から外周に向かう方向に並び、相互に離隔した複数の第2電極と、前記絶縁膜中に設けられ、前記複数の第2電極のうちの隣り合う一対の第2電極の隙間と前記第1方向と直交する第2方向において重なり、前記絶縁膜を介して、前記一対の第2電極のうちの一方と対向する第1浮遊電極と、前記第1浮遊電極から離隔するように前記絶縁膜中に設けられ、前記隙間内において前記第1浮遊電極と前記第2方向において重なり、前記第1浮遊電極と重なる部分が、前記第1浮遊電極において前記隙間と重なる部分の下方に位置し、前記絶縁膜を介して、前記一対の第2電極のうちの他方と対向する第2浮遊電極と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図2図1のA-A’線における断面図である。
図3】第1の実施形態に係る半導体装置の半導体部を示す上面図である。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置の半導体部及び絶縁膜を示す上面図である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の半導体部、絶縁膜、上部電極、EQPR電極、及び複数の中間電極を示す上面図である。
図6】第1の実施形態に係る半導体装置において、各浮遊電極が設けられた領域を示す上面図である。
図7】第1の実施形態に係る半導体装置の終端領域の動作を示す模式図である。
図8】参考例に係る半導体装置の終端領域を示す断面図である。
図9】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図10】参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
図11】横軸に保護膜の表面に生じた電荷をとり、縦軸に耐圧をとり、第2の実施形態に係る半導体装置及び参考例に係る半導体装置の耐圧と電荷の関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12】第2の実施形態に係る半導体装置において、保護膜の表面に正電荷及び負電荷が生じた状態における等電位線を示すシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。更に、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
また、以下では、説明をわかりやすくするために、XYZ直交座標系を用いて、各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交している。またX軸が延びる方向を「X方向」とし、Y軸が延びる方向を「Y方向」とし、Z軸が延びる方向を「Z方向」とする。また、説明をわかりやすくするために、Z方向のうち矢印の方向を上方、その逆方向を下方とするが、これらの方向は、重力方向とは無関係である。
【0009】
また、以下において、n、nの表記は、n形の半導体における不純物濃度の相対的な高低を表す。具体的には、「+」が付されている表記は、「-」が付されている表記よりも不純物濃度が相対的に高いことを表す。ここで、「不純物濃度」とは、それぞれの領域にドナーとなる不純物とアクセプターとなる不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が相殺した後の正味の不純物濃度を表す。
【0010】
<第1の実施形態>
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す上面図である。
図2は、図1のA-A’線における断面図である。
半導体装置100の形状は、本実施形態では略直方体形状である。ただし、半導体装置の形状は、上記の形状に特に限定されない。
【0011】
半導体装置100おいては、図1に示すように、セル領域CEと、セル領域CEの周囲を囲む終端領域ENと、が設定されている。図1では、一番内側の太い2点鎖線で囲まれた領域がセル領域CEであり、半導体装置100においてセル領域CEよりも外側の領域の全域が終端領域ENである。
【0012】
セル領域CEには、ダイオード又はトランジスタ等の素子が1種類以上、設けられている。セル領域CEに設けられるトランジスタとしては、例えば、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)又はIGBT等(Insulated Gate Bipolar Transistor)が挙げられる。終端領域ENの構造については、後述する。
【0013】
半導体装置100は、図2に示すように、下部電極110と、半導体部120と、絶縁膜130と、上部電極140と、EQPR(EQuivalent-Potential Ring)電極150と、中間電極161、162と、複数の第1浮遊電極171、173、175と、複数の第2浮遊電極172、174、176と、を備える。本実施形態では、下部電極110が第1電極に相当し、上部電極140、EQPR電極150、及び中間電極161、162が、それぞれ第2電極に相当する。以下、半導体装置100の各部について詳述する。
【0014】
下部電極110は、半導体装置100の下面の概ね全域に設けられている。すなわち、下部電極110は、セル領域CEの概ね全域、及び、終端領域ENの概ね全域に設けられている。下部電極110の形状は、平板状である。上方から見た下部電極110の形状は、図1に示すように本実施形態では略矩形である。ただし、下部電極の形状は、上記の形状に限定されない。
【0015】
セル領域CEにダイオードが設けられている場合、下部電極110は例えばダイオードのカソード電極として機能する。セル領域CEにMOSFETが設けられている場合、下部電極110は、例えばMOSFETのドレイン電極として機能する。セル領域CEにIGBTが設けられている場合、下部電極110は、例えばIGBTのコレクタ電極として機能する。
【0016】
下部電極110上には、図2に示すように、セル領域CEから終端領域ENに亘って半導体部120が設けられている。
【0017】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の半導体部を示す上面図である。
なお、図3では、説明をわかりやすくするために、終端領域ENにおいて、半導体部120の上面のうち、後述するn形のストッパー領域121cが設けられている領域、及びp形半導体層122が設けられている領域を相互に異なるドットのパターンで示している。
【0018】
半導体部120は、例えば、シリコン(Si)を含む。半導体部120の形状は、本実施形態では略直方体形状である。本明細書では、上方から見て構成要素Aが構成要素Bよりも半導体部の中心C側に位置することを、「構成要素Aは、構成要素Bよりも内側に位置する」という。同様に、上方から見て構成要素Aが構成要素Bよりも半導体部の外周120e側に位置することを、「構成要素Aは、構成要素Bよりも外側に位置する」という。中心Cは、本実施形態では、外周120eの対角線の交点上に位置する。ただし、半導体部の形状は、上記の形状に限定されない。
【0019】
半導体部120は、図2に示すように、n形半導体層121及びp形半導体層122を有する。本実施形態では、n形半導体層121が第1半導体層に相当し、p形半導体層122が第2半導体層に相当する。
【0020】
n形半導体層121は、n形の領域121a、n形の領域121b、及びn形のストッパー領域121cを有する。本実施形態では、n形の領域121aが第1半導体領域に相当し、n形の領域121bが第2半導体領域に相当し、n形のストッパー領域121cが第3半導体領域に相当する。
【0021】
形の領域121aは、セル領域CEから終端領域ENに亘って設けられている。n形の領域121aは、終端領域ENにおいて下部電極110上に設けられており、下部電極110に接している。これにより、n形の領域121aは、下部電極110に電気的に接続されている。
【0022】
セル領域CEにダイオードが設けられている場合、セル領域CEのうちダイオードが設けられている部分においては、n形の領域121aは、下部電極110上に設けられ、下部電極110に接している。セル領域CEに、MOSFETが設けられている場合、セル領域CEのうちMOSFETが設けられている部分においては、n形の領域121aは、下部電極110上に設けられ、下部電極110に接している。セル領域CEにIGBTが設けられている場合、セル領域CEのうちIGBTが設けられている部分においては、下部電極110上にはp形半導体層が設けられており、n形の領域121aの少なくとも一部は、このp形半導体層上に設けられる。
【0023】
形の領域121bは、セル領域CEから終端領域ENに亘ってn形の領域121a上に設けられている。n形の領域121bの不純物濃度は、n形の領域121aの不純物濃度よりも低い。
【0024】
形のストッパー領域121cは、終端領域ENにおいて、n形の領域121bの上層部のうちの外周部に設けられている。n形のストッパー領域121cの不純物濃度は、n形の領域121bの不純物濃度よりも高い。上方から見たn形のストッパー領域121cの形状は、図3に示すように略矩形の環状である。
【0025】
p形半導体層122は、図2に示すように、n形半導体層121の上層部、より具体的には、n形の領域121bの上層部に設けられている。p形半導体層122は、終端領域ENからセル領域CEに亘って設けられている。p形半導体層122は、n形のストッパー領域121cよりも内側に位置し、n形のストッパー領域121cから離隔している。上方から見たp形半導体層122の外周122eの形状は、図3に示すように、角部を丸めた略矩形である。
【0026】
セル領域CEにダイオードが設けられている場合、p形半導体層122は、セル領域CEにおいてダイオードのアノード電極に接続されるp形半導体層として機能してもよい。また、セル領域CEにMOSFETやIGBTが設けられている場合、p形半導体層122は、セル領域CEにおいてMOSFETやIGBTのゲート電極と絶縁膜を介して隣り合うp形半導体層として機能してもよい。
【0027】
図2に示すように、終端領域ENにおいて、半導体部120上には、絶縁膜130が設けられている。
【0028】
図4は、本実施形態に係る半導体装置の半導体部及び絶縁膜を示す上面図である。
なお、図4では、説明をわかりやすくするために、終端領域ENにおいて絶縁膜130が設けられた領域をドットのパターンで示している。
【0029】
絶縁膜130は、特に限定されないが、例えばシリコン酸化膜等の酸化物、又はシリコン窒化物等の窒化物等の絶縁材料からなる。上方から見た絶縁膜130の形状は、本実施形態では、角部を丸めた略矩形の環状である。ただし、絶縁膜の形状は、上記の形状に限定されない。
【0030】
絶縁膜130の内周130e1は、本実施形態では、上方から見てp形半導体層122の外周122eよりも内側に位置する。絶縁膜130の外周130e2は、本実施形態では、上方から見てn形のストッパー領域121cの内周121ceよりも、外側に位置する。したがって、絶縁膜130は、本実施形態では、上方から見てp形半導体層122の外周部と重なり、かつ、n形半導体層121においてp形半導体層122よりも外側に位置する部分と部分的に重なっている。
【0031】
図2に示すように、絶縁膜130上には、上部電極140、EQPR電極150、及び複数の中間電極161、162が設けられている。
【0032】
図5は、本実施形態に係る半導体装置の半導体部、絶縁膜、上部電極、EQPR電極、及び複数の中間電極を示す上面図である。
なお、図5では、終端領域ENにおいて、上部電極140、EQPR電極150、及び複数の中間電極161、162が設けられた領域を相互に異なるドットのパターンで示している。以下、上部電極140、EQPR電極150、及び複数の中間電極161、162について説明する。
【0033】
先ず、上部電極140について説明する。
上部電極140は、特に限定されないが、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料からなる。上部電極140は、図2に示すように、セル領域CEから終端領域ENに亘って設けられている。具体的には、上部電極140は、p形半導体層122の上面の一部、絶縁膜130の内周面、及び絶縁膜130の上面のうちの内側の領域を覆っている。上部電極140は、p形半導体層122に接しており、これにより、p形半導体層122に電気的に接続されている。
【0034】
セル領域CEにダイオードが設けられている場合、上部電極140は、セル領域CEにおいてダイオードのアノード電極として機能してもよい。また、セル領域CEにMOSFETが設けられている場合、上部電極140は、セル領域CEにおいてMOSFETのソース電極として機能してもよい。また、セル領域CEにIGBTが設けられている場合、上部電極140は、セル領域CEにおいてIGBTのエミッタ電極として機能してもよい。
【0035】
上方から見た上部電極140の外周140eの形状は、図5に示すように本実施形態では角部を丸めた略矩形である。上部電極140の外周140eは、上方から見て、絶縁膜130の内周130e1及びp形半導体層122の外周122eよりも外側に位置する。
【0036】
次に、EQPR電極150について説明する。
EQPR電極150は、特に限定されないが、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料からなる。EQPR電極150は、上方から見て、上部電極140よりも外側に設けられており、上部電極140から離隔している。EQPR電極150は、図2に示すように、絶縁膜130の上面のうちの外側の領域、絶縁膜130の外周面、n形のストッパー領域121cの上面のうち、絶縁膜130から露出した領域を覆っている。EQPR電極150は、n形のストッパー領域121cに接しており、これによりn形のストッパー領域121cに電気的に接続されている。
【0037】
上方から見たEQPR電極150の形状は、図5に示すように本実施形態では、略矩形の環状である。EQPR電極150の外周は、上方から見て、概ね半導体部120の外周120eと一致している。EQPR電極150の内周150eは、上方から見て、絶縁膜130の外周130e2及びn形のストッパー領域121cの内周121ceよりも内側に位置する。
【0038】
各中間電極161、162は、特に限定されないが、例えばアルミニウム(Al)等の金属材料からなる。複数の中間電極161、162は、絶縁膜130上に設けられている。複数の中間電極161、162は、上部電極140とEQPR電極150との間に位置する。具体的には、中間電極161は、上方から見て、上部電極140よりも外側に設けられており、上部電極140から離隔している。中間電極162は、上方から見て、中間電極161よりも外側及びEQPR電極150よりも内側に設けられており、中間電極161及びEQPR電極150から離隔している。
【0039】
このように、上部電極140、複数の中間電極161、162、及びEQPR電極150は、上方から見て半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向に並んでおり、相互に離隔している。上部電極140と中間電極161は、本実施形態では、隣り合う一対の第2電極に相当する。同様に、中間電極161と中間電極162も、本実施形態では隣り合う一対の第2電極に相当する。同様に、中間電極162とEQPR電極150も、本実施形態では隣り合う一対の第2電極に相当する。
【0040】
上方から見た各中間電極161、162の形状は、本実施形態では、角部を丸めた略矩形の環状である。本実施形態では、半導体装置100に、中間電極161、162が2つ設けられているが、半導体装置に設けられる中間電極の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、半導体装置には、中間電極が設けられていなくてもよい。この場合、上部電極とEQPR電極が、隣り合う一対の第2電極に相当する。
【0041】
したがって、本実施形態では図2及び図5に示すように、上部電極140と中間電極161との間に、環状の隙間S1が設けられている。また、2つの中間電極161、162の間に、環状の隙間S2が設けられている。また、中間電極162とEQPR電極150との間に、環状の隙間S3が設けられている。
【0042】
絶縁膜130中には、図2に示すように、複数の第1浮遊電極171、173、175と、複数の第2浮遊電極172、174、176と、が設けられている。
【0043】
図6は、本実施形態に係る半導体装置において、各浮遊電極が設けられた領域を示す上面図である。
なお、図6では、終端領域ENにおいて、第1浮遊電極171、173、175が設けられた領域と、第2浮遊電極172、174、176が設けられた領域と、を相互に異なる斜線のパターンで示している。
【0044】
各浮遊電極171~176は、特に限定されないが、不純物を含むポリシリコン又は金属材料等の導電性材料からなる。上方から見た各浮遊電極171~176の形状は、角部を丸めた略矩形の環状である。複数の浮遊電極171~176は、図2に示すように、相互に離隔している。各浮遊電極171~176は、その全体が絶縁膜130に被覆されている。
【0045】
以下、各浮遊電極171~176の位置について詳述する。
先ず、第1浮遊電極171の位置について説明する。
第1浮遊電極171は、図2及び図6に示すように上方から見て、隙間S1及び上部電極140と重なる。第1浮遊電極171は、絶縁膜130を介して上部電極140と対向している。本明細書において、「上方から見て、AとBが重なる」とは、A及びBを上方から適宜透過させてみた場合に、Aの少なくとも一部とBの少なくとも一部が重なることを意味する。
【0046】
第1浮遊電極171の内周171e1は、図6に示すように上方から見て、絶縁膜130の内周130e1よりも外側及びp形半導体層122の外周122eよりも内側に位置する。第1浮遊電極171の外周171e2は、本実施形態では上方から見て、隙間S1内に位置する。
【0047】
次に、第2浮遊電極172の位置について説明する。
第2浮遊電極172は、図2及び図6に示すように上方から見て、隙間S1内において第1浮遊電極171と重なる。また、第2浮遊電極172は、上方から見て中間電極161と重なる。第2浮遊電極172は、絶縁膜130を介して中間電極161と対向している。
【0048】
第2浮遊電極172の内周172e1は、図6に示すように上方から見て、上部電極140の外周140eよりも内側に位置する。第2浮遊電極172の外周172e2は、上方から見て中間電極161の内周161e1の外側に位置する。
【0049】
次に、第1浮遊電極173の位置について説明する。
第1浮遊電極173は、上方から見て、浮遊電極171、172の外側に位置する。第1浮遊電極173は、図2及び図6に示すように上方から見て、隙間S2及び中間電極161と重なる。第1浮遊電極173は、絶縁膜130を介して中間電極161と対向している。
【0050】
第1浮遊電極173の内周173e1は、図6に示すように上方から見て、第2浮遊電極172の外周172e2よりも外側及び中間電極161の外周161e2よりも内側に位置する。第1浮遊電極173の外周173e2は、本実施形態では上方から見て、隙間S2内に位置する。
【0051】
次に、第2浮遊電極174の位置について説明する。
第2浮遊電極174は、図2及び図6に示すように上方から見て、隙間S2内において第1浮遊電極173と重なる。また、第2浮遊電極174は、上方から見て中間電極162と重なる。第2浮遊電極174は、絶縁膜130を介して中間電極162と対向している。
【0052】
第2浮遊電極174の内周174e1は、図6に示すように上方から見て、中間電極161の外周161e2よりも内側に位置する。第2浮遊電極174の外周174e2は、上方から見て中間電極162の内周162e1の外側に位置する。
【0053】
次に、第1浮遊電極175の位置について説明する。
第1浮遊電極175は、図2及び図6に示すように上方から見て、浮遊電極173、174の外側に位置する。第1浮遊電極175は、上方から見て、隙間S3及び中間電極162と重なる。第1浮遊電極175は、絶縁膜130を介して中間電極162と対向している。
【0054】
第1浮遊電極175の内周175e1は、上方から見て第2浮遊電極174の外周174e2よりも外側及び中間電極162の外周162e2よりも内側に位置する。第1浮遊電極175の外周175e2は、本実施形態では上方から見て、隙間S3内に位置する。
【0055】
次に、第2浮遊電極176の位置について説明する。
第2浮遊電極176は、図2及び図6に示すように上方から見て、隙間S3内において浮遊電極175と重なる。また、第2浮遊電極176は、上方から見てEQPR電極150と重なる。第2浮遊電極176は、絶縁膜130を介してEQPR電極150と対向している。
【0056】
第2浮遊電極176の内周176e1は、図6に示すように上方から見て、中間電極162の外周162e2よりも内側に位置する。第2浮遊電極176の外周176e2は、上方から見てEQPR電極150の内周150eよりも外側及びn+形のストッパー領域121cの内周121ceよりも内側に位置する。
【0057】
以上、各浮遊電極171~176の外周や内周の位置について説明したが、各浮遊電極171~176の外周や内周の位置は、上記の位置に限定されない。
【0058】
次に、浮遊電極171~176の具体的な形状について説明する。
第1浮遊電極171は、本実施形態では図2に示すように、第2浮遊電極172よりも内側に位置し、半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向において第2浮遊電極172と隣り合う第1部分P1と、第2浮遊電極172の上方に位置する第2部分P2と、第1部分P1と第2部分P2との間に位置し、第1部分P1及び第2部分P2に連なる第3部分P3と、を有する。
【0059】
第1部分P1及び第2部分P2は、本実施形態では、それぞれ半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向に延びている。第3部分P3は、本実施形態では第1部分P1の外側の端部から第2部分P2の内側の端部に向かって、Z方向に延びている。第2部分P2の一部が、上方から見て隙間S1と重なる。第1部分P1、第2部分P2の他の一部、及び第3部分P3が、上方から見て上部電極140と重なる。他の第1浮遊電極173、175も、それぞれ、第1浮遊電極171と同様に第1部分P1、第2部分P2、及び第3部分P3を有する。
【0060】
各第2浮遊電極172、174、176の形状は、本実施形態では、半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向に延びた平板状である。
ただし、浮遊電極171、172、173、174、175、176の形状は、上記の形状に限定されない。
【0061】
次に、半導体装置100の終端領域ENの動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る半導体装置の終端領域の動作を示す模式図である。
【0062】
終端領域ENにおいて、下部電極110の電位が上部電極140の電位よりも高くなるような電圧、すなわち逆バイアスの電圧が下部電極110と上部電極140との間に印加された場合、空乏層がp形半導体層122から半導体部120の外周面に向かって広がる。半導体部120の外周面がダイシング等の切削により形成されたものである場合、外周面には、欠陥が存在する。そのため、半導体部120の外周面の近辺は、空乏層によって生じる強電界に耐えられない可能性がある。本実施形態では、EQPR電極150と下部電極110との間は、n形の領域121a、n形の領域122b、及びn形のストッパー領域121cによって電気的に接続されている。そのため、EQPR電極150と下部電極110は、概ね等電位となる。これにより、空乏層が半導体部120の外周面に到達することを抑制できる。
【0063】
また、p形半導体層122から半導体部120の外周面に向かって広がる空乏層により、p形半導体層122とn形のストッパー領域121cとの間には、電界が生じる。p形半導体層122とn形のストッパー領域121cとの間において、電位が急激に変化するような個所が存在した場合、すなわち等電位線が密集するような個所が存在した場合、その個所でアバランシェ降伏が生じる可能性がある。
【0064】
図8は、参考例に係る半導体装置の終端領域を示す断面図である。
参考例に係る半導体装置800は、浮遊電極171~176及び中間電極161、162が設けられておらず、上部電極140とEQPR電極150との隙間に、半絶縁膜890が設けられている点で本実施形態に係る半導体装置100と相違する。半絶縁膜890は、例えば水素が添加されたシリコン窒化膜等である。
【0065】
参考例に係る半導体装置800においては、電気抵抗等の特性が均一な半絶縁膜890を設け、半絶縁膜890により、上部電極140からEQPR電極150に向かって電位を徐々に変化させることが期待される。これにより、半導体部120において上部電極140とEQPR電極150との間に位置する部分に、電位が急激に変化するような個所が生じることを抑制できる。しかしながら、実際には半絶縁膜890の電気抵抗等の特性が均一にならず、上記のような効果が十分に得られない場合がある。また、セル領域CEに半絶縁膜が設けられていない場合、終端領域ENに半絶縁膜890を形成するために、新たな専用装置が必要となる可能性がある。
【0066】
これに対して、本実施形態では図7に示すように、上部電極140と第1浮遊電極171とが容量結合しており、第1浮遊電極171と第2浮遊電極172とが容量結合しており、第2浮遊電極172と中間電極161とが容量結合している。なお、図7では、説明をわかりやすくするために、2つの電極が容量結合されていることを、2つの電極の間をキャパシタの回路記号で結ぶことにより、示している。ここで「電極Aと電極Bが容量結合している」とは、電極Aと電極Bが絶縁体を介して対向しており、電極A、電極B、その間の絶縁体がキャパシタとして機能することを意味する。このように、上部電極140と中間電極161との間には、複数のキャパシタが介在している。そのため、上部電極140から中間電極161までの間で電位を段階的に変化させることができる。
【0067】
同様に、本実施形態では、中間電極161と第1浮遊電極173とが容量結合しており、第1浮遊電極173と第2浮遊電極174とが容量結合しており、第2浮遊電極174と中間電極162とが容量結合している。そのため、中間電極161から中間電極162までの間で電位を段階的に変化させることができる。
【0068】
同様に、本実施形態では、中間電極162と第1浮遊電極175とが容量結合しており、第1浮遊電極175と第2浮遊電極176とが容量結合しており、第2浮遊電極176とEQPR電極150とが容量結合している。そのため、中間電極162からEQPR電極150までの間で電位を段階的に変化させることができる。
【0069】
また、複数の中間電極161、162は、上部電極140の電位とEQPR電極150の電位の間の任意の電位をとることが可能な浮遊電極である。そのため、上部電極140からEQPR電極150までの間で、電位を段階的に変化させることができる。その結果、半導体部120において上部電極140とEQPR電極150との間に位置する部分に、急激に電位が変化するような個所が生じることを抑制できる。また、中間電極161、162及び浮遊電極171~176は、セル領域CEで用いられる一般的な材料からなるため、これらを形成するための専用装置を用意する必要がない。
【0070】
なお、上部電極140と中間電極161との間、中間電極161と中間電極162との間、及び中間電極162とEQPR電極150との間も、容量結合されていてもよい。また、第1浮遊電極171と中間電極161との間、第1浮遊電極173と中間電極162との間、及び第1浮遊電極175とEQPR電極150との間も、容量結合されていてもよい。また、p形半導体層122と第1浮遊電極171との間も、容量結合されていてもよい。
【0071】
また、図8に示すように、参考例に係る半導体装置800をリードフレームや基板等に実装し、樹脂材料等からなる封止部材で封止した場合、封止部材に含まれる陽イオンが上部電極140に引き寄せられ、半絶縁膜890の表面の付近に正電荷Q1が生じる場合がある。同様に、封止部材に含まれる陰イオンがEQPR電極150に引き寄せられ、半絶縁膜890の表面の付近に負電荷Q2が生じる場合がある。
【0072】
このように半絶縁膜890の表面の付近に電荷Q1、Q2が生じた場合、半絶縁膜890により、正電荷Q1の影響により半導体部120の上層部に負電荷Q3が生じこと、及び、負電荷Q2の影響により半導体部120の上層部に正電荷Q4が生じることを抑制することが期待される。しかしながら、実際には半絶縁膜890の電気抵抗等の特性が均一にならず、上記のような効果が十分に得られない場合がある。
【0073】
これに対して本実施形態では図7に示すように、上部電極140とEQPR電極150との間に、複数の中間電極161、162が設けられている。また、隙間S1の下には、2つの浮遊電極171、172が重なるように設けられており、隙間S2の下には、2つの浮遊電極173、174が重なるように設けられており、隙間S3の下には、2つの浮遊電極175、176が重なるように設けられている。そのため、複数の中間電極161、162及び重なり合う浮遊電極171~176がシールドとして機能することにより、電荷Q1、Q2の影響により半導体部120の上層部に電荷Q3、Q4が生じることを抑制できる。
【0074】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態に係る半導体装置100においては、終端領域ENにおいて半導体部120上に絶縁膜130が設けられている。絶縁膜130上には、上部電極140、複数の中間電極161、162、及びEQPR電極150が設けられている。これらの電極140、161、162、150は、上方から見て半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向に並び、相互に離隔している。
【0075】
また、絶縁膜130中には、第1浮遊電極171及び第2浮遊電極172が設けられている。第1浮遊電極171は、上方から見て、これらの電極140、161、162、150のうち、隣り合う一対の電極140、161の隙間S1と重なり、絶縁膜130を介して、隣り合う一対の電極140、161のうちの一方の電極140と対向している。第2浮遊電極172は、第1浮遊電極171から離隔するように絶縁膜130中に設けられ、上方から見て、隙間S1内において第1浮遊電極171と重なる。第2浮遊電極172は、絶縁膜130を介して隣り合う一対の電極140、161のうちの他方の電極161と対向している。第2浮遊電極172において第1浮遊電極171と重なる部分は、第1浮遊電極171において隙間S1と重なる部分の下方に位置する。
【0076】
そのため、隣り合う一対の電極140、161のうちの一方の電極140と第1浮遊電極171とが容量結合し、第1浮遊電極171と第2浮遊電極172とが容量結合し、第2浮遊電極172と、隣り合う一対の電極140、161のうちの他方の電極161とが容量結合する。これにより、終端領域ENにおいて、半導体部120の隣り合う一対の電極140、161の間に位置する部分の電位を段階的に変化させることができる。その結果、半導体部120において隣り合う一対の電極140、161の間に位置する部分において、電位が急激に変化する個所が生じることを抑制できる。これにより、アバランシェ降伏を抑制できるため、半導体装置100の耐圧を向上させることができる。他の第1浮遊電極173、175と他の第2浮遊電極174、176によっても同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、隙間S1の下方において重なり合う第1浮遊電極171と第2浮遊電極172が、半導体装置100の表面の付近に生じた電荷Q1、Q2に対してシールドとして機能することより、半導体部120の上層部に電荷Q3、Q4が生じることを抑制できる。他の第1浮遊電極173、175と他の第2浮遊電極174、176によっても同様の効果を得ることができる。
以上より、信頼性が高い半導体装置100を実現できる。
【0078】
また、本実施形態では、第1浮遊電極171は、上方から見て、隣り合う一対の電極140、161のうち、内側に位置する電極140と重なり合っている。また、第2浮遊電極172は、上方から見て、隣り合う一対の電極140、161のうち、外側に位置する電極161と重なる。そのため、半導体部120の終端領域ENにおいて、等電位線を分散させ易い。他の第1浮遊電極173、175と他の第2浮遊電極174、176についても同様に構成されており、同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、第1浮遊電極171は、第2浮遊電極172よりも内側に位置し、半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向において第2浮遊電極172と隣り合う第1部分P1と、第2浮遊電極172の上方に位置する第2部分P2と、第1部分P1と第2部分P2との間に位置し、第1部分P1及び第2部分P2に連なる第3部分P3と、を有する。そのため、半導体部120の終端領域ENにおいて、等電位線を分散させ易い。他の第1浮遊電極173、175と他の第2浮遊電極174、176についても同様に構成されており、同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、半導体部120は、下部電極110上に設けられたn形半導体層121と、n形半導体層121の上層部に設けられ、n形半導体層121の外周よりも内側に位置するp形半導体層122と、を有する。絶縁膜130は、上方から見て、p形半導体層122の外周部と重なり、n形半導体層121においてp形半導体層122よりも外側に位置する部分と重なる。そして、複数の電極140、161、162、150のうち、最も内側に位置する電極140は、p形半導体層122のうち絶縁膜130よりも内側に位置する部分に接続されている。また、複数の電極140、161、162、150のうち、最も外側に位置する電極150は、n形半導体層121のうち、絶縁膜130よりも外側に位置する部分に接続されている。そのため、EQPR電極150、n形半導体層121の外周部、及び下部電極110を概ね等電位にし、空乏層が半導体部120の外周面に到達することを抑制できる。その結果、半導体装置100の耐圧を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、n形半導体層121は、下部電極110上に設けられたn形の領域121aと、n形の領域121a上に設けられ、不純物濃度がn形の領域121aの不純物濃度よりも低いn形の領域121bと、n形の領域121bの上層部のうちの外周部に設けられ、不純物濃度がn形の領域121bの不純物濃度よりも高いn形のストッパー領域121cと、を有する。そして、最も外側に位置する電極150は、n+形のストッパー領域121cに接続されている。そのため、EQPR電極150、n形半導体層121の外周部、及び下部電極110を概ね等電位にし、空乏層が半導体部120の外周面に到達することを抑制できる。
【0082】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
本実施形態に係る半導体装置200の終端領域ENの構造は、下部電極110及び半導体部120以外の構成が、第1の実施形態に係る半導体装置100の終端領域ENの構造と相違する。
なお、以下の説明においては、原則として、第1の実施形態との相違点のみを説明する。以下に説明する事項以外は、第1の実施形態と同様である。
【0083】
本実施形態における絶縁膜230の形状は、第1の実施形態における絶縁膜130の形状と異なる。第1の実施形態では、絶縁膜130の上面は、平坦面でありX方向及びY方向に平行であった。これに対して、本実施形態における絶縁膜230の上面において直下に第1浮遊電極271及び複数の第2浮遊電極272が設けられている領域は、上方向に盛り上がっている。
【0084】
また、本実施形態における上部電極240及びEQPR電極250の形状は、第1の実施形態における上部電極140及びEQPR電極150の形状と異なる。第1の実施形態では、上部電極140及びEQPR電極150において絶縁膜130上に位置する部分の形状は、平板状であった。これに対して、本実施形態における上部電極240及びEQPR電極250は、絶縁膜230の上面において上方向に盛り上がった部分に乗り上げている。そのため、上部電極240の外側の端部及びEQPR電極250の内側の端部は、絶縁膜230の上面に沿って湾曲している。
【0085】
また、第1の実施形態では、半導体装置100に2つの中間電極161、162が設けられている例を説明したが、本実施形態では、半導体装置200に、6つの中間電極260が設けられている。このように、半導体装置に設ける中間電極の数は、特に限定されない。半導体装置に設ける中間電極の数は、例えば半導体装置の要求耐圧に応じて設定できる。半導体装置の要求耐圧が大きいほど、半導体装置に設ける中間電極の数を多くすることが好ましい。
【0086】
複数の中間電極260は、絶縁膜230上において、上部電極240とEQPR電極250との間に設けられている。複数の中間電極260は、上方から見て半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向に並んでおり、相互に離隔している。また、複数の中間電極260のうち、最も内側に位置する中間電極260は、上部電極240から離隔している。また、複数の中間電極260のうち、最も外側に位置する中間電極260は、EQPR電極250から離隔している。
【0087】
したがって、上部電極240と最も内側に位置する中間電極260との間には、隙間S21が形成されている。また、隣り合う中間電極260の間には、隙間S22が形成されている。また、EQPR電極250と最も外側に位置する中間電極260との間には、隙間S23が形成されている。
【0088】
また、第1の実施形態では、各中間電極161、162の形状は、平板状であったが、本実施形態では、各中間電極260の形状は、絶縁膜230の上面に沿って、中央部が下方に凹んだ形状である。このように、各中間電極の形状は、上部電極、他の中間電極、又はEQPR電極との間に隙間が形成されるような形状である限り、特に限定されない。
【0089】
また、本実施形態では、各隙間S21、S22、S23の直下に、第1浮遊電極271及び第2浮遊電極272が設けられている。本実施形態では、隙間S21、S22、S23の総数は、7つであるため、半導体装置200には、第1浮遊電極271も7つ設けられている。同様に、半導体装置200には、第2浮遊電極172も7つ設けられている。このように、終端領域において絶縁膜上に形成される隙間の数は、1以上であれば特に限定されない。終端領域には、隙間の数に応じた数だけ、第1浮遊電極及び第2浮遊電極を設けることが好ましい。
【0090】
各浮遊電極271、272は、第1の実施形態と同様に、ポリシリコン等の半導体材料、又は金属材料からなる。上方から見た各浮遊電極271、272の形状は、第1の実施形態と同様に、角部を丸めた略矩形の環状である。複数の浮遊電極271、272は、相互に離隔している。各浮遊電極271、272は、その全体が絶縁膜230に被覆されている。
【0091】
以下、複数の第1浮遊電極271及び複数の第2浮遊電極272のうち、上部電極240と最も内側に位置する中間電極260との隙間S21の直下に設けられた第1浮遊電極271及び第2浮遊電極272の構成について説明する。他の第1浮遊電極271及び他の第2浮遊電極272は、同様に構成されるため、説明を省略する。
【0092】
第1浮遊電極271は、上方から見て、隙間S21及び上部電極240と重なる。第1浮遊電極271は、絶縁膜230を介して上部電極240と対向している。第1の実施形態では、第1浮遊電極171の内周171e1は、p形半導体層122の外周122eよりも内側に位置していたが、本実施形態では、第1浮遊電極271の内周271e1は、p形半導体層122の外周122eよりも外側に位置している。このように、内周271e1の位置は、絶縁膜230の内周よりも外側であって、上部電極240の外周よりも内側である限り、特に限定されない。
【0093】
第1浮遊電極271は、本実施形態では、第2浮遊電極272よりも内側に位置し、半導体部120の中心Cから外周120eに向かう方向において第2浮遊電極272と隣り合う第1部分P21と、第2浮遊電極272の上方に位置する第2部分P22と、第1部分P21と第2部分P22との間に位置し、第1部分P21及び第2部分P22に連なる第3部分P23と、を有する。第1の実施形態では、第3部分P3はZ方向に延びていたが、本実施形態では、第3部分P23はZ方向に対して傾斜した方向に延びている。このように第3部分の延伸方向は、第1部分と第2部分とを接続できる限り、特に限定されない。
【0094】
第2浮遊電極272は、上方から見て、隙間S21内において第1浮遊電極271と重なる。また、第2浮遊電極272は、上方から見て中間電極260と重なる。第2浮遊電極272は、絶縁膜230を介して中間電極260と対向している。
【0095】
第1の実施形態では、第2浮遊電極172の内周172e1は、上方から見て、上部電極140の外周140eよりも内側に位置していたが、本実施形態では、第2浮遊電極272の内周272e1は、上方から見て、上部電極240の外周240eよりも外側に位置する。このように、内周272e1の位置は、上方から見て中間電極260の内周及び第1浮遊電極271の外周よりも内側であればよい。
【0096】
本実施形態に係る半導体装置200においては、複数の電極240、260、250のうち隣り合う一対の電極のうちの一方の電極と、第1浮遊電極271と、が容量結合する。また、第1浮遊電極271と第2浮遊電極272とが容量結合する。また、第2浮遊電極272と、隣り合う一対の電極のうちの他方の電極と、が容量結合する。
【0097】
また、本実施形態に係る半導体装置200は、上部電極240、EQPR電極250、複数の中間電極260、及び絶縁膜230においてこれらの電極240、250、260から露出した部分を覆う保護膜280が更に設けられている点でも、第1の実施形態と相違する。このように、半導体装置200には、保護膜280が設けられていてもよい。保護膜280は、樹脂材料等の絶縁材料からなる。
【0098】
図10は、参考例に係る半導体装置を示す断面図である。
図11は、横軸に保護膜の表面に生じた電荷をとり、縦軸に耐圧をとり、本実施形態に係る半導体装置及び参考例に係る半導体装置の耐圧と電荷の関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12は、本実施形態に係る半導体装置において、保護膜の表面に正電荷及び負電荷が生じた状態における等電位線を示すシミュレーション結果である。
【0099】
参考例に係る半導体装置900は、図10に示すように、本実施形態に係る半導体装置200と同様に、下部電極110と、半導体部120と、絶縁膜930と、上部電極940と、EQPR電極950と、保護膜980と、を備える。参考例に係る半導体装置900は、絶縁膜930上の上部電極940とEQPR電極950の間の隙間に、中間電極が設けられていない点及び絶縁膜930中に第1浮遊電極及び第2浮遊電極が設けられていない点で、本実施形態に係る半導体装置200と相違する。
【0100】
本実施形態では、前述したように、複数の電極240、260、250のうち隣り合う一対の電極のうちの一方の電極と、第1浮遊電極271と、が容量結合し、第1浮遊電極271と第2浮遊電極272とが容量結合し、第2浮遊電極272と、隣り合う一対の電極のうちの他方の電極と、が容量結合している。そのため、図12に示すように、上部電極240とEQPR電極250との間で、電位を段階的に変化させることができる。具体的には、図12に示すように、隙間S21内の等電位線は、上部電極240と第1浮遊電極271と間、第1浮遊電極271と第2浮遊電極272との間、及び第2浮遊電極272と中間電極260との間に分散される。このように、半導体部120の終端領域ENにおいて等電位線が密集することを抑制する、すなわち半導体部120の終端領域ENにおいて電位が急激に変化するような箇所が生じることを抑制することで、アバランシェ降伏が生じることを抑制できる。その結果、半導体装置200の耐圧を向上させることができる。したがって、図11に示すように、本実施形態に係る半導体装置200の耐圧は、参考例に係る半導体装置900の耐圧よりも高くなる。
【0101】
特に、本実施形態では図12に示すように、第1浮遊電極271は、第2浮遊電極272よりも内側に位置する第1部分P21と、第2浮遊電極272の上方に位置する第2部分P22と、第1部分及び第2部分に連なる第3部分P23と、を有する。そのため、隙間S21内の等電位線は、上部電極240と第1浮遊電極271と間、第1浮遊電極271と第2浮遊電極272との間、及び第2浮遊電極272と中間電極260との間に分散されつつ、隙間S21から半導体部120を通って、半導体部120の中心C側に延びる。そのため、半導体部120内において、等電位線を分散させ易い。他の隙間S22、S23の直下の第1浮遊電極271及び第2浮遊電極272についても同様である。
【0102】
また、図10及び図11に示すように、参考例に係る半導体装置200において、保護膜980の表面に正電荷Q21及び負電荷Q22が生じた場合の耐圧は、保護膜980の表面に正電荷Q21及び負電荷Q22が生じてない場合の耐圧と比較して小さい。また、正電荷Q21や負電荷Q22の絶対値が大きくなるほど、耐圧は低下する。
【0103】
本実施形態に係る半導体装置200においても同様の傾向を示す。参考例に係る半導体装置900においては、図10に示すように、上部電極940とEQPR電極950との間に、電荷Q21、Q22が半導体部120に与える影響をシールドするような部材が設けられていない。これに対し、図12に示すように、本実施形態に係る半導体装置200においては、上部電極940とEQPR電極950との間に複数の中間電極260が設けられており、各隙間S21、S22、S23の直下では、第1浮遊電極171と第2浮遊電極172とが重なり合っている。そのため、本実施形態に係る半導体装置200では、電荷Q21、Q22が半導体部120に与える影響をシールドできる。したがって、図11に示すように、本実施形態に係る半導体装置200において、電荷を所定量ΔQ変化させた場合の耐圧の減少量ΔV21は、参考例に係る半導体装置900において、電荷を所定量ΔQ変化させた場合の耐圧の減少量ΔV22よりも小さい。すなわち、本実施形態は、参考例よりも、電荷Q21、Q22に起因する耐圧の低下が少ない。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置200においても、複数の電極240、260、250のうち隣り合う一対の電極のうちの一方の電極と、他方の電極との間の電位を段階的に変化させることができる。これにより、アバランシェ降伏を抑制できるため、半導体装置200の耐圧を向上させることができる。
【0105】
また、本実施形態においても、隙間S21、S22、S23の下方において重なり合う第1浮遊電極171と第2浮遊電極172が、半導体装置200の表面に生じた電荷Q21、Q22に対してシールドとして機能する。そのため、半導体部120の上層部に、負電荷Q3や正電荷Q4が生じることを抑制できる。
以上により、信頼性が高い半導体装置200を実現できる。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したもの
であり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
100、200:半導体装置
110 :下部電極(第1電極)
120 :半導体部
120e :外周
121 :n形半導体層(第1導電形の第1半導体層)
121a :n形の領域(第1半導体領域)
121b :n形の領域(第2半導体領域)
121c :n形のストッパー領域(第3半導体領域)
121ce :内周
122 :p形半導体層
122b :n形の領域
122e :外周
130、230:絶縁膜
130e1 :内周
130e2 :外周
140、240:上部電極(第2電極)
140e :外周
150、250:EQPR電極(第2電極)
150e :内周
161、162、260:中間電極
161e1、162e1:内周
161e2、162e2:外周
171、173、175、271:第1浮遊電極
171e1、173e1、175e1、271e1:内周
171e2、173e2、175e2:外周
172、174、176、272:第2浮遊電極
172e1、174e1、176e1、272e1:内周
172e2、174e2、176e2:外周
280 :保護膜
C :中心
CE :セル領域
EN :終端領域
P1、P21:第1部分
P2、P22:第2部分
P3、P23:第3部分
Q1、Q2 :電荷
Q3、Q4、Q21、Q22:電荷
S1、S2、S3、S21、S22、S23:隙間
ΔQ :所定量の電荷
ΔV21、ΔV22:耐圧の減少量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12