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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】コネクタ・ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/53 20110101AFI20241223BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20241223BHJP
【FI】
H01R12/53
H01R12/71
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021081890
(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公開番号】P2022175488
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】木内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】黒木 佳英
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】根本 隆
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-524876(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141800(WO,A1)
【文献】特開2013-114999(JP,A)
【文献】実開昭61-161763(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0221604(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0181570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、
前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、
前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、
少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、
前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、
前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、
前記中継用基板表面のGND導体層は、前記コネクタのコンタクトおよび前記接続部の直下まで延長され、
前記接続部の直下のGND導体層は切り欠かれていることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【請求項2】
中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、
前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、
前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、
少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、
前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、
前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、
前記コネクタのコンタクトおよび前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体の直下の前記中継用基板は切り欠かれていることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【請求項3】
中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、
前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、
前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、
少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、
前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、
前記コネクタのコンタクトは絶縁性のコネクタモールドに保持され、
前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、
前記コネクタモールドは、前記コネクタのコンタクトおよび前記接続部の直下まで延びていることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコネクタ・ケーブルであって、
前記絶縁部材は、GND導体層の表面に塗布されたレジストであることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のコネクタ・ケーブルであって、
前記コネクタには、非シールド・ケーブルが接続されており、
少なくとも1本の前記非シールド・ケーブルは、前記中継用基板の導体を介して、前記コネクタのコンタクトと接続されていることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のコネクタ・ケーブルであって、
前記中継用基板は、裏面側にもGND導体層を有しており、
表面側と鏡像対称となるように、前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルと前記GND導体層が配置されていることを特徴とするコネクタ・ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ・ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルが公知である。例えば、下記特許文献1には、図27図30に示されるように、中継用基板(4)を介して電気コネクタ(1)のコンタクト(3)と同軸ケーブル(5)を接続する高速コネクタ・ケーブルの従来例が開示されている。特許文献1に開示される高速コネクタ・ケーブルでは、同軸ケーブル(5)が、芯線(51)と中間絶縁体(52)と編組シールド(53)によってインピーダンス整合されており、また、中継用基板(4)が、表面のシグナルパターン(43)と表面側グランドパターン(44)および絶縁部(42)を挟んだ裏面側グランドパターン(45)によりインピーダンス整合されている。
【0003】
なお、先行技術文献の説明に関する符号については、括弧を付けることで本願発明の実施形態と区別した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-167457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、同軸ケーブル(5)の編組シールド(53)を除去して芯線(51)と中間絶縁体(52)を露出させた部分は(図30参照)、表面側グランドパターン(44)と裏面側グランドパターン(45)のどちらからも離れているため、インピーダンスが増大してしまう。ここで、インピーダンス増大を抑制するための対策としては、編組シールド(53)を除去して芯線(51)と中間絶縁体(52)を露出させた部分の直下まで表面側グランドパターン(44)を延長することが考えられる。しかし、この対策では、延長した表面側グランドパターン(44)が、隣接するシグナルパターン(43)に半田付けする芯線(51)と短絡する虞があるので、表面側グランドパターン44を延長することは難しいと考えられる。すなわち、特許文献1に開示された高速コネクタ・ケーブルに代表される従来技術には、同軸ケーブル(5:シールド・ケーブル)の編組シールド(53:シールド部材)を除去して芯線(51:内部導体)と中間絶縁体(52:誘電体)を露出させた部分のインピーダンスの増大抑制と短絡防止が両立できないという課題が存在していた。
【0006】
よって本発明は、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルにおいて、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立したコネクタ・ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタ・ケーブルは、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、前記中継用基板表面のGND導体層は、前記コネクタのコンタクトおよび前記接続部の直下まで延長され、前記接続部の直下のGND導体層は切り欠かれていることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、本発明のコネクタ・ケーブルでは、シールド・ケーブルのシールド部材が除去された部分の直下の中継用基板表面に絶縁部材とGND導体層が存在するので、インピーダンスの増大は効果的に抑制されている。また、本発明のコネクタ・ケーブルにおいて、コネクタのコンタクトとシールド・ケーブルの内部導体とは、直接的に接続される。したがって、本発明では、内部導体を基板表面まで曲げる加工(フォーミング)は不要であり、シールド部材を除去した部分の直下に配置された配線基板表面のGND導体層とシールド・ケーブルの内部導体とは隣接することなく上下方向に隔てられており、間には絶縁部材が介在するので短絡し難い。
【0009】
本発明の他のコネクタ・ケーブルは、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、前記コネクタのコンタクトおよび前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体の直下の前記中継用基板は切り欠かれていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の更に他のコネクタ・ケーブルは、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルであって、前記シールド・ケーブルは、内部導体と、前記内部導体を覆う誘電体と、前記誘電体を覆うシールド部材と、を少なくとも含み、前記シールド部材と前記誘電体を除去して露出させた前記内部導体は、前記コネクタのコンタクトに接続されており、少なくとも前記シールド部材を除去して露出させた前記誘電体の直下には、前記中継用基板表面のGND導体層が配置されており、前記シールド部材を除去した部分の直下に配置された前記中継用基板表面のGND導体層は、絶縁部材によって覆われており、前記コネクタのコンタクトは絶縁性のコネクタモールドに保持され、前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルの露出した前記内部導体との接続部は、半田付けにより接続されており、前記コネクタモールドは、前記コネクタのコンタクトおよび前記接続部の直下まで延びていることを特徴とするものである。
【0011】
すなわち、本発明のコネクタ・ケーブルでは、コネクタのコンタクトとシールド・ケーブルの露出した内部導体との接続部は、半田付けにより局所的にインピーダンスが減少するが、本発明では、接続部直下にはGND導体層が存在しない構成が採用されているので、局所的なインピーダンス減少を抑制でき、よりインピーダンス整合ができるといった利点を得られる。
【0012】
本発明のコネクタ・ケーブルにおいて、前記絶縁部材は、GND導体層の表面に塗布されたレジストとすることができる。
【0014】
また、本発明のコネクタ・ケーブルにおいて、前記コネクタには、非シールド・ケーブルが接続されており、少なくとも1本の前記非シールド・ケーブルは、前記中継用基板の導体を介して、前記コネクタのコンタクトと接続することができる。
【0015】
さらに、本発明のコネクタ・ケーブルにおいて、前記中継用基板は、裏面側にもGND導体層を有しており、表面側と鏡像対称となるように、前記コネクタのコンタクトと前記シールド・ケーブルと前記GND導体層を配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルにおいて、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図2】第1の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図3】第1の実施形態のコネクタ・ケーブルの左側面図である。
図4図2におけるA-A線断面を示す縦断面図である。この図の紙面左上には、図中の符号B-Bで示した2つの矢印の範囲を拡大した断面図が示されている。
図5】第1の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の分解斜視図である。
図6】第2の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図7】第2の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図8図7におけるD-D線断面を示す縦断面図である。
図9】第3の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図10】第3の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図11図10におけるF-F線断面を示す縦断面図である。
図12】第3の実施形態のコネクタ・ケーブルの底面図である。
図13】第4の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図14】第4の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図15図14におけるG-G線断面を示す縦断面図である。
図16】第5の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図17】第5の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図18図17におけるH-H線断面を示す縦断面図である。
図19図17におけるI-I線断面を示す縦断面図である。
図20図17におけるJ-J線断面を示す縦断面図である。
図21】第6の実施形態のコネクタ・ケーブルを背面左上方から見た場合の斜視図である。
図22】第6の実施形態のコネクタ・ケーブルの上面図である。
図23】第6の実施形態のコネクタ・ケーブルの右側面図である。
図24図22におけるK-K線断面を示す縦断面図である。
図25】本発明のコネクタ・ケーブルが取り得る多様で具体的な実施例を示す図である。
図26】本発明のコネクタ・ケーブルが取り得る多様で具体的な別の実施例を示す図である。
図27】特許文献1の発明に係る高速コネクタ・ケーブルの分解状態を示した斜視図である。
図28】特許文献1の発明に係る高速コネクタ・ケーブルを構成するハウジングおよび中継用基板を示した斜視図である。
図29】特許文献1の発明に係る高速コネクタ・ケーブルの中継用基板を構成する基板単体の正面図(A)と、(A)におけるIII-III線に沿って切断した場合の矢視断面図である。
図30】特許文献1の発明に係る高速コネクタ・ケーブルの中継用基板と同軸ケーブルとを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
[第1の実施形態]
図1図5を用いて、本発明のコネクタ・ケーブルが取り得る一実施形態である第1の実施形態についての説明を行う。
【0020】
図1図5に示されるように、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100は、コネクタ10と、シールド・ケーブル20と、中継用基板30を有しており、中継用基板30を介してコネクタ10とシールド・ケーブル20を接続する構成を有する。
【0021】
コネクタ10は、前方側に不図示の嵌合部を備えており、後方側に結線部である導電金属製のコンタクト11を有している。第1の実施形態のコネクタ10では、不図示の嵌合部に対して相手側コネクタを嵌め込むことで、コネクタ10と相手側コネクタとの電気通信又は光通信からなる接続を行うことができる。また、第1の実施形態のコネクタ10には、コンタクト11が4個設置されている。図2に示されるように、4個のコンタクト11は、中央に配置された2個のコンタクト111が高速信号用の結線部として使用され、左右両端に配置された2個のコンタクト112がGND(グランド)用の結線部として使用される。
【0022】
シールド・ケーブル20は、内部導体21と、内部導体21を覆う誘電体22と、誘電体22を覆うシールド部材23とを備えている。第1の実施形態の内部導体21は、高速信号を伝送する導体として用いられる。第1の実施形態の誘電体22は、例えばポリエチレンなどの絶縁材料によって構成されており、内部導体21の全周を取り囲むように覆って内部導体21を保護する。第1の実施形態のシールド部材23は、誘電体22の全周を更に取り囲むように覆う部材であり、例えば網組み銅線などから形成された編組線やアルミ剥片によって形成される。シールド部材23は、電磁シールドの役割を果たすことで、高速信号を伝送する内部導体21を外部から到来する電磁波などの影響から保護する。
【0023】
なお、図1図5に示される第1の実施形態のシールド・ケーブル20では、2本の内部導体21の夫々を誘電体22が覆い、これら2本の誘電体22に覆われた内部導体21を1つのシールド部材23で覆う構成が例示されている。ただし、本発明に適用可能なシールド・ケーブルの形態は、図1図5に示されるものには限られない。本発明のシールド・ケーブルについては、例えば、1本の内部導体を誘電体とシールド部材で覆った同軸ケーブルや、細線同軸ケーブル、さらには、STP(シールドツイストペア)ケーブルやSPP(シールドパラレルペア)ケーブルと呼ばれる形式の高速信号用ケーブルを採用することができる。また、本発明のシールド・ケーブルは、ケーブル全長にわたってドレイン線と呼ばれるワイヤが内蔵されたものや、ワイヤが内蔵されていないものも含まれる。
【0024】
中継用基板30は、図4に示されるように、底面部に2枚の基板を貼り付けた基板層33が形成されており、基板層33の表面にはGND導体層32が形成されている。また、基板層33の表面に形成されたGND導体層32の上面には、絶縁材料からなる絶縁部材31が形成されている。
【0025】
第1の実施形態の基板層33には、例えばフェノール樹脂系の樹脂材料やエポキシ樹脂系の樹脂材料、エポキシ樹脂を含浸させたガラス不織布、アルミニウム系の板材を用いたものなど、従来公知のあらゆる形式の基板材料を用いることができる。また、第1の実施形態の絶縁部材31は、GND導体層32の表面に塗布されるレジストが採用されている。第1の実施形態の絶縁部材31であるレジストは、ソルダーレジストとも呼ばれる塗料材料であり、半田付けを行うときに不必要な部分に半田が付着するのを防止すると同時に、永久保護膜として、塵芥や熱、湿気などから中継用基板30を保護し、絶縁性を維持する機能を発揮する。
【0026】
第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100は、以上説明したコネクタ10と、シールド・ケーブル20と、中継用基板30を有しており、中継用基板30を介してコネクタ10とシールド・ケーブル20を接続することで構成されている。そして、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100では、図1図4に示されるように、シールド・ケーブル20は、シールド部材23と誘電体22を除去して内部導体21を露出させた状態とし、この露出させた内部導体21がコネクタ10の高速信号用のコンタクト111に直接接続される構成が採用されている。なお、内部導体21と高速信号用のコンタクト111との接続は、半田付けによって行われる。内部導体21と高速信号用のコンタクト111との接続を直接接続とすることで、従来行われていた基板を介した接続に比べて、基板配線ロスを無くすことができる。
【0027】
なお、コネクタ10が備えるGND用のコンタクト112については、図5に示すように、中継用基板30表面のGND導体層32の一部にレジストからなる絶縁部材31を塗布しないGND導体層露出部34を設け、このGND導体層露出部34の位置にGND用のコンタクト112を配置して半田付けすることで、GND用のコンタクト112とGND導体層32とを接続することができる。
【0028】
また、第1の実施形態では、図4に示すように、シールド部材23を除去して露出させた誘電体22の直下の位置には、中継用基板30表面のGND導体層32が配置されており、かつ、シールド部材23を除去した部分の直下に配置された中継用基板30表面のGND導体層32は、レジストからなる絶縁部材31によって覆われているという構成が採用されている。さらに、第1の実施形態では、図4に示すように、中継用基板30表面のGND導体層32は、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111およびシールド・ケーブル20の露出した内部導体21の直下の位置まで延長されており、かつ、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111およびシールド・ケーブル20の露出した内部導体21の直下の位置まで延長した中継用基板30表面のGND導体層32も、レジストからなる絶縁部材31によって覆われた構成が採用されている。
【0029】
さらに、第1の実施形態では、図4に示すように、シールド・ケーブル20のシールド部材23の直下の位置では、中継用基板30表面のGND導体層32が剥き出しの状態となっており、レジストからなる絶縁部材31には覆われていない。そして、シールド・ケーブル20のシールド部材23と中継用基板30表面のGND導体層32は、半田41によって固定接続されている。
【0030】
ここで、図4を参照して第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100の詳細構造を説明すると、シールド・ケーブル20のシールド部材23は中継用基板30表面のGND導体層32に半田付けされることで、ノイズ対策などの効果が得られる。つまり、シールド部材23の直下の位置には、中継用基板30表面のGND導体層32がレジストからなる絶縁部材31に覆われていない状態で配置される。
【0031】
一方、シールド・ケーブル20のシールド部材23が除去されて誘電体22が露出した箇所では、誘電体22に被覆がないことからインピーダンスが上昇することになる。この対策として、露出した誘電体22の直下の位置には、中継用基板30表面のGND導体層32がレジストからなる絶縁部材31に覆われた状態で配置されることで、インピーダンスを下げる効果を得られる。
【0032】
つまり、中継用基板30表面のGND導体層32は、図4中の符号Cで示される位置を境界として、コネクタ10配置側にはレジストからなる絶縁部材31が塗布されており、シールド・ケーブル20のシールド部材23が存在する側にはレジストからなる絶縁部材31が塗布されていない構成となっている。これらの対策によって、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100では、インピーダンス整合が図られている。
【0033】
すなわち、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100では、シールド・ケーブル20のシールド部材23が除去された部分の直下の中継用基板30表面に絶縁部材31とGND導体層32が存在するので、インピーダンスの増大は効果的に抑制されている。また、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100において、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111とシールド・ケーブル20の内部導体21とは、半田付けによって直接的に接続されるので、例えば内部導体21を基板表面まで曲げる加工(フォーミング)が不要となり、シールド部材23を除去した部分の直下に配置された中継用基板30表面のGND導体層32とシールド・ケーブル20の内部導体21とは隣接することなく上下方向に隔てられており、両部材の間には絶縁部材31が介在するので短絡することが無い、といった効果を得ることができる。以上から、第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100によれば、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【0034】
以上、図1図5を用いて、本発明のコネクタ・ケーブルが取り得る一実施形態である第1の実施形態についての説明を行った。ただし、本発明の技術的範囲は上記第1の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第1の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。そこで、本発明のコネクタ・ケーブルが取り得る多様な実施形態例を以下に説明することとする。なお、以下で説明する各実施形態において、上述した第1の実施形態と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略することとする。
【0035】
[第2の実施形態]
図6図8を用いて、第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200を説明する。
【0036】
第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200では、上述した第1の実施形態の場合と同様に、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111とシールド・ケーブル20の露出した内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されている。そして更に、第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200では、図8においてより詳細に示されるように、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部の直下に位置する中継用基板30表面のGND導体層32は、図8中の符号Eで示される矢視の範囲で切り欠かれており、GND導体層32が存在しないGND切欠領域321が形成されるという構造上の特徴を備えている。
【0037】
ここで、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されているので、この箇所だけインピーダンスが低下してしまうといった現象が発生することになる。この現象を解消するために、第2の実施形態では、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部の直下において、中継用基板30表面のGND導体層32を切り欠き、GND導体層32が存在しないGND切欠領域321を形成することでインピーダンスを上昇させた。その結果、第2の実施形態では、コネクタ・ケーブル200全体としてのインピーダンス整合を図ることができた。つまり、第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200によれば、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立するとともに、より好適なインピーダンス整合を実現したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【0038】
[第3の実施形態]
図9図12を用いて、第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300を説明する。
【0039】
第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300では、上述した第1の実施形態の場合と同様に、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111とシールド・ケーブル20の露出した内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されている。そして更に、第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300では、図9図12に示されるように、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部の直下に位置する中継用基板30自体が切り欠かれており、中継用基板30自体が存在しない基板切欠領域35が形成されるという構造上の特徴を備えている。
【0040】
ここで、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されているので、この箇所だけインピーダンスが低下してしまうといった現象が発生することになる。この現象を解消するために、第3の実施形態では、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部の直下において、中継用基板30自体を切り欠き、GND導体層32を含む基板が存在しない基板切欠領域35を形成することでインピーダンスを上昇させた。その結果、第3の実施形態では、コネクタ・ケーブル300全体としてのインピーダンス整合を図ることができた。つまり、第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300によれば、上述した第2の実施形態と同様に、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立するとともに、より好適なインピーダンス整合を実現したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【0041】
[第4の実施形態]
図13図15を用いて、第4の実施形態のコネクタ・ケーブル400を説明する。
【0042】
第4の実施形態のコネクタ・ケーブル400では、上述した第1の実施形態の場合と同様に、コネクタ10の高速信号用のコンタクト111とシールド・ケーブル20の露出した内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されている。そして更に、第4の実施形態のコネクタ・ケーブル400では、図13図15に示されるように、コンタクト11が設置されることでコネクタ10を構成するコネクタモールド14が、コネクタ10のコンタクト11および接続部の直下まで延びるコネクタモールド延長部15を備えている。
【0043】
ここで、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部は、半田付けにより接続されているので、この箇所だけインピーダンスが低下してしまうといった現象が発生することになる。この現象を解消するために、第4の実施形態では、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との接続部の直下の位置までコネクタモールド14の一部であるコネクタモールド延長部15を形成し、GND導体層32を含む基板が存在しない領域を形成することでインピーダンスを上昇させた。その結果、第4の実施形態では、コネクタ・ケーブル400全体としてのインピーダンス整合を図ることができた。つまり、第4の実施形態のコネクタ・ケーブル400によれば、上述した第2および第3の実施形態と同様に、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立するとともに、より好適なインピーダンス整合を実現したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【0044】
よって、第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200と第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300と第4の実施形態のコネクタ・ケーブル400では、局所的なインピーダンス減少を抑制でき、より好適なインピーダンス整合ができるといった利点を得ることができる。
【0045】
[第5の実施形態]
図16図20を用いて、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500を説明する。
【0046】
第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500では、上述した第1の実施形態の場合に対して、コネクタ10のコンタクト11の種類が多様であって複数種類のコンタクト11が混在している場合の構成例が示されている。
【0047】
すなわち、第5の実施形態のコネクタ10には、コンタクト11が5個設置されている。図17に示されるように、5個のコンタクト11は、左端から右端に向けて、1個のGND(グランド)用のコンタクト112、2個の高速信号用のコンタクト111、1個のGND(グランド)用のコンタクト112、1個の電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト113の順で配置されている。
【0048】
一方、シールド・ケーブル20の設置位置については、上述した第1~第3の実施形態と同様の配置構成が取られており、適切なインピーダンス整合が図られている。ただし、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500には、電源用ケーブルや低速信号用ケーブルなどの非シールド・ケーブル25が存在しており、非シールド・ケーブル25と電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト113を接続する必要がある。ただし、コネクタ・ケーブル500の仕様や使用条件等によっては、図17等で示すように、非シールド・ケーブル25と電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト113が離れた位置に配置される場合がある。
【0049】
この場合の対策として、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500では、中継用基板30に2個のビア(via)36,37を形成するとともに、これら2個のビア36,37を接続する基板内部導体38を中継用基板30の内部に設けることとした。このような構成を採用することで、非シールド・ケーブル25は、中継用基板30の内部に設けられた基板内部導体38を介して、コネクタ10の電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト113と接続することができる。つまり、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500によれば、高速信号用のコンタクト111とシールド・ケーブル20の露出した内部導体21とのインピーダンス整合のとれた接続状態を阻害することなく、コネクタ10の電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト113に非シールド・ケーブル25を接続することができる。よって、第5の実施形態によれば、ケーブル配策が容易なコネクタ・ケーブル500を提供することができる。
【0050】
なお、第5の実施形態のビア36,37と基板内部導体38は、中継用基板30の内部に設けられた本発明の導体を構成する。また、本発明の導体であるビア36,37については、スルーホールやブラインドホール、埋込みホールなど、異なる回路層の間を接続するものであれば、どのようなものでも本発明の範囲内に含まれる。
【0051】
[第6の実施形態]
図21図24を用いて、第6の実施形態のコネクタ・ケーブル600を説明する。
【0052】
図21図24に示される第6の実施形態のコネクタ・ケーブル600は、上述した第1の実施形態のコネクタ・ケーブル100を2つ用意し、2つのコネクタ・ケーブル100の中継用基板30底面同士を貼り付けるとともに、2つのコネクタ・ケーブル100のうち、裏面側に配置されるコネクタ・ケーブル100と表面側に配置されるコネクタ・ケーブル100とが鏡像対称となるように配置されたコネクタ・ケーブル600である。
【0053】
つまり、第6の実施形態のコネクタ・ケーブル600では、中継用基板30が裏面側にもGND導体層32を有する構成となっており、コネクタ10のコンタクト11とシールド・ケーブル20とGND導体層32が、裏面側と表面側とで鏡像対称となるように配置されている。このような配置構成を有する第6の実施形態のコネクタ・ケーブル600によっても、インピーダンスの増大抑制と短絡防止を両立したコネクタ・ケーブルを提供することができる。
【0054】
以上、図1図24を用いることで、本発明が取り得る多様な形態例としての第1~第6の実施形態のコネクタ・ケーブル100,200,300,400,500,600を説明した。これらの実施形態については、種々の組み合わせを行うことで、本発明のコネクタ・ケーブルの適用範囲を拡大することができる。そのような具体的な実施例として、図25図26を示す。なお、本発明の中継用基板には各種の電子部品が搭載される場合もあり、その場合には、非シールド・ケーブルとコンタクトとは各種の電子部品を介して接続されていてもよい。
【0055】
[実施例1]
図25に示す実施例については、第2の実施形態のコネクタ・ケーブル200と、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500を組み合わせた実施例である。この実施例のコネクタ・ケーブルによれば、コネクタ10のコンタクト11の種類が多様であって複数種類のコンタクト11が混在している場合であっても、ケーブル配策が容易である。したがって、拡張性の高いコネクタ・ケーブルを実現することができる。また、シールド・ケーブル20の内部導体21がコネクタ10の高速信号用のコンタクト111に直接接続されるので、中継用基板30での伝送ロスが低減できるとともに、中継用基板30を奥行方向で小さくすることができるので、適用範囲の拡大効果やコストの低減効果を得ることができる。
【0056】
[実施例2]
図26に示す実施例については、第3の実施形態のコネクタ・ケーブル300と、第5の実施形態のコネクタ・ケーブル500を組み合わせた実施例である。この実施例のコネクタ・ケーブルによれば、図25に示す実施例が発揮する効果と同様の効果が得られるのに加えて、例えばコネクタ10のコンタクト11が上下方向にズレを生じた場合であっても、基板切欠領域35が存在することから、高速信号用のコンタクト111と内部導体21との位置補正が容易であり、接続の自由度が高いという利点が得られる。さらに、高速信号用のコンタクト111と基板切欠領域35との形状調整によって、インピーダンスのマッチング調整ができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、中継用基板を介してコネクタとシールド・ケーブルを接続したコネクタ・ケーブルに関するものであって、特に、高速信号の伝送を行うコネクタ・ケーブルに有用である。
【符号の説明】
【0058】
100 (第1の実施形態の)コネクタ・ケーブル
200 (第2の実施形態の)コネクタ・ケーブル
300 (第3の実施形態の)コネクタ・ケーブル
400 (第4の実施形態の)コネクタ・ケーブル
500 (第5の実施形態の)コネクタ・ケーブル
600 (第6の実施形態の)コネクタ・ケーブル
10 コネクタ
11 コンタクト
14 コネクタモールド
15 コネクタモールド延長部
111 高速信号用のコンタクト
112 GND用のコンタクト
113 電源用(もしくは低速信号用)のコンタクト
20 シールド・ケーブル
21 内部導体
22 誘電体
23 シールド部材
25 非シールド・ケーブル
30 中継用基板
31 絶縁部材
32 GND導体層
321 GND切欠領域
33 基板層
34 GND導体層露出部
35 基板切欠領域
36,37 ビア(導体)
38 基板内部導体(導体)
41 半田
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図30