(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】車両状態特定装置並びに同方法、車両用灯具の光軸制御装置並びに同方法、車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/115 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
B60Q1/115
(21)【出願番号】P 2021086433
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 成克
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 陸
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173143(JP,A)
【文献】特開平11-257981(JP,A)
【文献】特開2019-043471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を特定する装置であって、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラを含み、
前記コントローラは、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の一定期間における加速度変化量を求めるともに、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得して当該角速度の前記一定期間における角速度変化量を求め、
前記加速度変化量が第1閾値以上であり、かつ前記角速度変化量が第2閾値より大きい場合に前記車両を第1状態と特定し、前記加速度変化量が第1閾値より小さく、かつ前記角速度変化量が第2閾値以下である場合に前記車両を前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力する
ものであり、
前記加速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記加速度を用い、第1時期の前記加速度と当該第1時期以前の第2時期の前記加速度との差分を前記一定期間分積算したものであり、
前記角速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記角速度を用い、前記第1時期の前記加速度と前記第2時期の前記角速度との差分を前記一定期間分積算したものである、
車両状態特定装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記加速度変化量が前記第1閾値より小さくて第3閾値より大きく、かつ前記角速度変化量が前記第2閾値以下である場合に前記車両を前記第2状態と特定する、
請求項1記載の車両状態特定装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記加速度が前記第1閾値を超えた状態が前記一定期間よりも短い第1期間以上継続しておらず、かつ当該加速度が前記第1閾値以下である状態が前記一定期間よりも長い第2期間以上継続していない場合に、前記加速度変化量及び前記角速度変化量を用いて前記車両が前記第1状態と前記第2状態のいずれであるかを特定する、
請求項1又は2に記載の車両状態特定装置。
【請求項4】
車両の状態を特定する装置であって、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラを含み、
前記コントローラは、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の現在値と前回値との差分である第1差分を求めるとともに、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得し、当該角速度に基づいて前記ロール軸又はピッチ軸における正弦方向ベクトルの現在値と前回値との差分である第2差分を求め、
前記第1差分
を前記第2差分
で除算することによって得られる
比率である状態監視パラメータが所定の閾値以上である場合に前記車両を第1状態と特定し、前記状態監視パラメータが前記閾値より小さい場合に前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力する、
車両状態特定装置。
【請求項5】
前記正弦方向ベクトルは、-9.8×sin(θg)と表され、当該θgに前記単位時間毎の角速度を代入して求められる、
請求項4に記載の車両状態特定装置。
【請求項6】
前記第1状態は前記車両が走行中の状態に対応し、前記第2状態は前記車両が停車中であって振動を有する状態に対応する、
請求項1~5の何れか1項に記載の車両状態特定装置。
【請求項7】
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラにより実行され、車両の状態を特定する方法であって、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の一定期間における加速度変化量を求めること、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得して当該角速度の前記一定期間における角速度変化量を求めること、
前記加速度変化量が第1閾値以上であり、かつ前記角速度変化量が第2閾値より大きい場合に前記車両の状態を第1状態と特定し、前記加速度変化量が第1閾値より小さく、かつ前記角速度変化量が第2閾値以下である場合に前記車両を前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力すること、
を含み、
前記加速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記加速度を用い、第1時期の前記加速度と当該第1時期以前の第2時期の前記加速度との差分を前記一定期間分積算したものであり、
前記角速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記角速度を用い、前記第1時期の前記加速度と前記第2時期の前記角速度との差分を前記一定期間分積算したものである、
車両状態特定方法。
【請求項8】
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラにより実行され、車両の状態を特定する方法であって、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の現在値と前回値との差分である第1差分を求めること、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得し、当該角速度に基づいて前記ロール軸又はピッチ軸における正弦方向ベクトルの現在値と前回値との差分である第2差分を求めること、
前記第1差分
を前記第2差分
で除算することによって得られる
比率である状態監視パラメータが所定の閾値以上である場合に前記車両を第1状態と特定し、前記状態監視パラメータが前記閾値より小さい場合に前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力すること、
を含む、車両状態特定方法。
【請求項9】
車両に備わった前照灯の光軸を制御する装置であって、
請求項1~6の何れかに記載の車両状態特定装置によって得られる前記車両の状態の特定結果が前記第1状態の場合には第1処理を選択し、前記第2状態の場合には前記第1処理とは異なる第2処理を選択して前記車両の姿勢角度を求め、当該姿勢角度を用いて前記前照灯の光軸を制御するための制御信号を出力する、
光軸制御装置。
【請求項10】
車両に備わった前照灯の光軸を制御する方法であって、
請求項7又は8に記載の車両状態特定
方法によって得られる前記車両の状態の特定結果が前記第1状態の場合には第1処理を選択し、前記第2状態の場合には前記第1処理とは異なる第2処理を選択して前記車両の姿勢角度を求め、当該姿勢角度を用いて前記前照灯の光軸を制御するための制御信号を出力する、
光軸制御方法。
【請求項11】
請求項9に記載の光軸制御装置と、
前記光軸制御装置から出力される前記制御信号に基づいて光軸を可変に設定可能な前照灯と、
を含む、車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両状態特定装置並びに同方法、車両用灯具の光軸制御装置並びに同方法、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-032591号公報(特許文献1)には、ジャイロセンサを用いて車両の走行開始や停車を検出する技術が記載されている。また、特開2018-062185号公報(特許文献2)には、加速度センサを用いて車両の使用状態(走行開始、駐車)を判定する技術が記載されている。また、特許第4968841号公報(特許文献3)には、ドア等の開閉部の開閉状態が「開状態」となっているときにのみ前照灯の光軸調整を行うように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-032591号公報
【文献】特開2018-062185号公報
【文献】特許第4968841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る具体的態様は、車両状態をより精度良く特定することを目的の1つとする。
本開示に係る具体的態様は、車両状態に応じた光軸制御を行うことを他の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本開示に係る一態様の装置は、
車両の状態を特定する装置であって、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラを含み、
前記コントローラは、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の一定期間における加速度変化量を求めるともに、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得して当該角速度の前記一定期間における角速度変化量を求め、
前記加速度変化量が第1閾値以上であり、かつ前記角速度変化量が第2閾値より大きい場合に前記車両を第1状態と特定し、前記加速度変化量が第1閾値より小さく、かつ前記角速度変化量が第2閾値以下である場合に前記車両を前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力するものであり、
前記加速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記加速度を用い、第1時期の前記加速度と当該第1時期以前の第2時期の前記加速度との差分を前記一定期間分積算したものであり、
前記角速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記角速度を用い、前記第1時期の前記加速度と前記第2時期の前記角速度との差分を前記一定期間分積算したものである、
車両状態特定装置である。
[2]本開示に係る一態様の装置は、
車両の状態を特定する装置であって、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラを含み、
前記コントローラは、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の現在値と前回値との差分である第1差分を求めるとともに、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得し、当該角速度に基づいて前記ロール軸又はピッチ軸における正弦方向ベクトルの現在値と前回値との差分である第2差分を求め、
前記第1差分を前記第2差分で除算することによって得られる比率である状態監視パラメータが所定の閾値以上である場合に前記車両を第1状態と特定し、前記状態監視パラメータが前記閾値より小さい場合に前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力する、車両状態特定装置である。
[3]本開示に係る一態様の方法は、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラにより実行され、車両の状態を特定する方法であって、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の一定期間における加速度変化量を求めること、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得して当該角速度の前記一定期間における角速度変化量を求めること、
前記加速度変化量が第1閾値以上であり、かつ前記角速度変化量が第2閾値より大きい場合に前記車両の状態を第1状態と特定し、前記加速度変化量が第1閾値より小さく、かつ前記角速度変化量が第2閾値以下である場合に前記車両を前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力すること、
を含み、
前記加速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記加速度を用い、第1時期の前記加速度と当該第1時期以前の第2時期の前記加速度との差分を前記一定期間分積算したものであり、
前記角速度変化量は、前記単位時間毎に得られる前記角速度を用い、前記第1時期の前記加速度と前記第2時期の前記角速度との差分を前記一定期間分積算したものである、
車両状態特定方法である。
[4]本開示に係る一態様の方法は、
角速度センサ及び加速度センサと接続されたコントローラにより実行され、車両の状態を特定する方法であって、
前記車両の前後方向に対応する軸における単位時間毎の加速度を前記加速度センサから取得して当該加速度の現在値と前回値との差分である第1差分を求めること、
前記車両のロール軸又はピッチ軸の何れかにおける前記単位時間毎の角速度を前記角速度センサから取得し、当該角速度に基づいて前記ロール軸又はピッチ軸における正弦方向ベクトルの現在値と前回値との差分である第2差分を求めること、
前記第1差分を前記第2差分で除算することによって得られる比率である状態監視パラメータが所定の閾値以上である場合に前記車両を第1状態と特定し、前記状態監視パラメータが前記閾値より小さい場合に前記第1状態とは異なる第2状態と特定して当該特定結果を出力すること、
を含む、車両状態特定方法である。
[5]本開示に係る一態様の装置は、
車両に備わった前照灯の光軸を制御する装置であって、
前記[1]又は[2]の車両状態特定装置によって得られる前記車両の状態の特定結果が前記第1状態の場合には第1処理を選択し、前記第2状態の場合には前記第1処理とは異なる第2処理を選択して前記車両の姿勢角度を求め、当該姿勢角度を用いて前記前照灯の光軸を制御するための制御信号を出力する、
光軸制御装置である。
[6]本開示に係る一態様の方法は、
車両に備わった前照灯の光軸を制御する方法であって、
前記[3]又は[4]の車両状態特定方法によって得られる前記車両の状態の特定結果が前記第1状態の場合には第1処理を選択し、前記第2状態の場合には前記第1処理とは異なる第2処理を選択して前記車両の姿勢角度を求め、当該姿勢角度を用いて前記前照灯の光軸を制御するための制御信号を出力する、
光軸制御方法である。
[7]本開示に係る一態様のシステムは、
前記光軸制御装置と、
前記光軸制御装置から出力される前記制御信号に基づいて光軸を可変に設定可能な前照灯と、
を含む、車両用灯具システムである。
【0006】
上記構成によれば、車両状態をより精度良く特定することができる。また、上記構成によれば、車両状態に応じた光軸制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態の車両用灯具システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、車両用灯具システムのコントローラを実現するコンピュータの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、車両の状態遷移とそれに伴う加速度、ロール角速度及び車速の変化例を示す図である。
【
図4】
図4は、X軸加速度とロール角速度の変化の特徴と車両状態との関係をまとめた表を示す図である。
【
図5】
図5は、ジャイロセンサ及び加速度センサの各々から出力されるデータに基づいて、車両状態の特定に用いるパラメータを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、コントローラにおける車両状態の特定並びにそれを用いた光軸制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、独自パラメータに用いられるベクトル量について説明するための図である。
【
図8】
図8は、ジャイロセンサ及び加速度センサの各々から出力されるデータに基づいて、車両状態の特定に用いるパラメータを生成する処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、コントローラにおける車両状態の特定並びにそれを用いた光軸制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両用灯具システムの構成を示す図である。この車両用灯具システムは、自車両の姿勢に応じて光軸を可変に設定して光照射を行うものであり、コントローラ10、ジャイロセンサ11、加速度センサ12、一対のランプユニット30L、30Rを含んで構成されている。
【0009】
コントローラ10は、車両用灯具システムの動作制御を行うためのものであり、例えば所定の動作プログラムを実行可能なコンピュータを用いて構成される。ここでは、コントローラ10により実現される機能を理解しやすくするために機能ブロックを用いて説明する。コントローラ10は、振動検出部21、走行/停車検出部22、車両状態出力部23、光軸制御部24を有する。また、コントローラ10には、車両の車速を示す信号ないしデータが入力されている。車速は車両に備わった図示しないセンサ等によって検出されて、例えば車速パルス信号又は車速データという形で得られる。
【0010】
なお、コントローラ10の振動検出部21、走行/停車検出部22、車両状態出力部23を含んで本開示に係る「車両状態特定装置」が構成されており、また「車両状態特性方法」が実行される。また、コントローラ10の振動検出部21、走行/停車検出部22、車両状態出力部23および光軸制御部24を含んで本開示に係る「光軸制御装置」が構成されており、また「光軸制御方法」が実行される。
【0011】
ジャイロセンサ11は、角速度を検出してその大きさに応じたデータ又は信号を出力するセンサ(角速度センサ)である。本実施形態のジャイロセンサ11は、少なくとも車両のロール角又はピッチ角のいずれかに対応する角速度を検出できればよい。例えば、本実施形態のジャイロセンサ11は、ロール角及びピッチ角のそれぞれに対応する角速度を検出可能であるとする。ジャイロセンサ11は、車両の所定位置(例えばグローブボックスの裏側等)に設置されている。
【0012】
加速度センサ12は、加速度を検出してその大きさに応じたデータ又は信号を出力するセンサである。本実施形態の加速度センサ12は、少なくとも車両の前後方向と上下方向のそれぞれに対応した加速度を検出することが可能である。なお、加速度センサ12の各軸自体は、必ずしも車両の前後方向と上下方向のそれぞれと必ずしも完全に一致していなくてよく、その場合には適宜検出値に対して補正処理を行えばよい。
【0013】
振動検出部21は、ジャイロセンサ11又は加速度センサ12から出力されるデータ(又は信号。以下同様)に基づいて車両の振動を検出し、その大きさに応じたデータ(又は信号。以下同様)を出力する。具体的には、振動検出部21は、「走行中」、「停車中(安定)」、「不確定」の何れかに対応するデータを生成し出力する。ここでいう「不確定」とは、「走行中」又は「停車中(不安定)」の何れかに対応する状態であることを示す。
【0014】
走行/停車検出部22は、振動検出部21から「不確定」に対応するデータが生成されている場合に、更に、ジャイロセンサ11及び加速度センサ12の各々から出力されるデータに基づいて得られるパラメータを用い、当該パラメータに応じて「走行中」に対応するデータまたは「停車中(不安定)」に対応するデータ(又は信号。以下同様)を生成する。
【0015】
車両状態出力部23は、振動検出部21及び走行/停車検出部22の各検出結果のデータに基づいて車両状態を決定し、当該車両状態を示すデータ(又は信号。以下同様)を光軸制御部24へ供給する。本実施形態では、車両状態出力部23は、車両状態として少なくとも「走行中」、「停車中(安定)」、「停車中(不安定)」の3つの状態の何れかを用いる。
【0016】
光軸制御部24は、加速度センサ12によって検出される加速度に基づいて車両の姿勢角度(路面と車両前後方向軸とのなす角度)を求め、この姿勢角度に応じて各ランプユニット30L、30Rの照射光の光軸を制御するための制御信号を生成し、各ランプユニット30L、30Rへ供給(出力)する。このとき、光軸制御部24は、車両状態出力部23から出力される車両状態に応じて演算方法を適宜選択し、当該選択した演算方法を適用して車両の姿勢角度を求める。具体的には、車両状態が「走行中」の場合と「停車中(安定)」の場合では異なる演算方法が用いられる。各々における演算方法としては公知の方法を用いることができる。また、車両状態が「停車中(不安定)」である場合には、姿勢角度を求める処理が一時停止され、光軸制御が中止される。
【0017】
各前照灯30L、30Rは、車両の前部の左右に1つずつ設けられ、車両の前方に光照射を行うためのものである。各ランプユニット30L、30Rとしては、公知の種々のランプユニットを採用することができる。例えば、光源や反射鏡等を有して構成される光源部と、光源部から放射される光の光軸(主進行方向)を車両のピッチ方向にて上下に調整するために光源部の向きを上下に調整するアクチュエータを有しており、機械的に光照射範囲を制御可能なランプユニットを用いることができる。また、例えば、光源と液晶素子を組み合わせて光照射範囲を制御可能な構成のランプユニット、複数のLEDを選択的に点灯/消灯させることで光照射範囲を制御可能な構成のランプユニット、レーザ素子からの光を可動反射板によって走査してその際にレーザ素子を高速に点消灯させることで光照射範囲を制御可能な構成のランプユニットなど、電子的に光照射範囲を制御可能なランプユニットを用いることもできる。
【0018】
図2は、車両用灯具システムのコントローラを実現するコンピュータの構成例を示す図である。図示のコンピュータは、相互に通信可能に接続されたCPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203、記憶装置204、外部インタフェース(I/F)205を含んで構成されている。CPU201は、ROM202から読み出される基本制御プログラムをベースにして動作し、記憶装置204に格納されたプログラム(アプリケーションプログラム)206を読み出してこれを実行することにより、上記したコントローラ10の機能を実現する。RAM203は、CPU201の動作時に使用させるデータを一時的に記憶する。記憶装置204は、例えばハードディスク、ソリッドステートドライブなどの不揮発性の記憶装置であり、プログラム206など種々のデータを格納する。外部インタフェース205は、CPU201と外部装置を接続するインタフェースである。
【0019】
図3は、車両の状態遷移とそれに伴う加速度、ロール角速度及び車速の変化例を示す図である。
図4は、X軸加速度とロール角速度の変化の特徴と車両状態との関係をまとめた表を示す図である。ここで、X軸加速度とは、車両の前後方向に対応する軸(以後「X軸」という。)の加速度である。ロール角速度とは、車両のロール角(X軸回りの回転角度)に対応する角速度である。本実施形態では、ここに示されるようなX軸加速度とロール角速度の変化の特徴を利用して車両状態を特定する。
【0020】
具体的には、荷物が載せられた際には、X軸加速度が変化を示し、かつロール角速度も変化を示す(図中(1)のイベント)。このときの車両状態は「停車(不安定)」に相当する。また、車両状態が「安定的な停車」の状態の際には、X軸加速度、ロール角速度ともにほぼ変化しない(図中(2)のイベント)。
【0021】
少しずつ加速(あるいは減速)を始めた状態の際には、X軸加速度は少しずつ変化するが、ロール角速度はほぼ変化せず0dps付近である(図中(3)のイベント)。また、加速中の際には、X軸加速度は大きく変化し、ロール角速度も変化する(図中、(4)のイベント)。
【0022】
定速での走行中の際には、X軸加速度は変化せず、例えば走行開始時の値を維持し、ロール角速度はほぼ変化せず0dps付近である(図中(5)のイベント)。このときの車両状態は「走行中(加速中)」に相当する。また、減速中の際には、X軸加速度は大きく変化し、ロール角速度も変化する(図中、(6)のイベント)。このときの車両状態は「走行中(減速)」に相当する。
【0023】
また、減速が完了する間際には、X軸加速度が変化を示し、かつロール角速度も変化を示す(図中(7)のイベント)。このときの車両状態は「停車(不安定)」に相当する。また、減速が完了して車両の振動が落ち着いた状態の際には、X軸加速度、ロール角速度ともにほぼ変化しない(図中(8)のイベント)。このときの車両状態は「安定的な停車」に相当する。
【0024】
図5は、ジャイロセンサ及び加速度センサの各々から出力されるデータに基づいて、車両状態の特定に用いるパラメータを生成する処理手順を示すフローチャートである。これらの処理は、コントローラ10の走行/停車検出部22によって繰り返し実行される。なお、いずれの動作手順においても、情報処理の結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて適宜処理順序を入れ替えることも可能であり、またここで言及しない他の処理を追加してもよく、それらの実施態様も排除されない。
【0025】
具体的には、走行/停車検出部22は、ジャイロセンサ11からロール角速度のデータを取得するとともに(ステップS1)、加速度センサ12からX軸加速度のデータを取得する(ステップS2)。例えば本実施形態では、ロール角速度のデータ、X軸加速度のデータのそれぞれが100ms毎に取得される。
【0026】
取得された各データを用い、走行/停車検出部22は、1秒間毎のX軸加速度の変化量ΔX1sを算出する(ステップS3)。1秒間毎のX軸加速度の変化量ΔX1sは、100ms毎に得られるX軸加速度を用い、ある時期のX軸加速度の値X(n)と、その1つ前の時期のX軸加速度の値X(n-1)との差分X(n)-X(n-1)を、例えば1秒間分積算することよって得られる。具体的には、以下の式で表される。
ΔX1s=ΣX(n)-X(n-1)
【0027】
また、走行/停車検出部22は、1秒間毎のロール角度の変化量Gx_A(n)を算出する(ステップS4)。1秒間毎のロール角度の変化量Gx_A(n)は、100ms毎に得られるロール角速度を用い、ある時期のロール角速度θgx(n)と、その1つ前の時期のロール角速度の値θgx(n-1)との差分θgx(n)-θgx(n-1)を、例えば1秒間分積算することよって得られる。具体的には、以下の式で表される。
Gx_A(n)=Σθgx(n)-θgx(n-1)
【0028】
以上のようにして求められる各パラメータ(ΔX1s及びGx_A(n))は、以下に示すように、車両状態の特定に用いることができる。
【0029】
図6は、コントローラにおける車両状態の特定並びにそれを用いた光軸制御の処理手順を示すフローチャートである。ここに示す処理手順は、例えば100ms毎に繰り返し実行される。なお、いずれの動作手順においても、情報処理の結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて適宜処理順序を入れ替えることも可能であり、またここで言及しない他の処理を追加してもよく、それらの実施態様も排除されない。
【0030】
コントローラ10の振動検出部21は、加速度センサ12により検出されるX軸加速度が10mGを超えた状態を0.5秒間以上継続した場合には(ステップS11;YES)、「走行中」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「走行中」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS12)。なお、本ステップにおける振動検出にはX軸加速度に代えてロール角速度を用いてもよいし、両者を用いてもよい。
【0031】
他方、コントローラ10の振動検出部21は、X軸加速度が10mGを超えた状態を0.5秒間以上継続しない場合に(ステップS11;NO)、X加速度が10mG以下の状態を2.0秒間以上継続した場合には(ステップS13;YES)、「停車中(安定)」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「停車中(安定)」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS14)。
【0032】
他方、コントローラ10の振動検出部21は、X軸加速度が10mG以下の状態を2.0秒間以上継続しない場合には(ステップS13;NO)、「不確定」に対応するデータを生成する。ここでいう不確定とは、「走行中」又は「停車中(不安定)」の何れかに対応する状態であることを示す。
【0033】
この場合に、走行/停車検出部22は、上記した各パラメータについて、ΔX1s≧10mGであるか、又はGx_A(n)>0.2dpsであれば(ステップS15;YES)、「停車中(不安定)」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「停車中(不安定)」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS16)。
【0034】
また、走行/停車検出部22は、上記した各パラメータについて、ΔX1s<10mGであるか、又はGx_A(n)≦0.2dpsである場合に(ステップS15;NO)、10mG>ΔX1s>5mgであり、かつGx_A(n)≦0.2dpsであれば「走行中」に対応するデータを生成する(ステップS17;YES)。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「走行中」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS18)。
【0035】
なお、走行/停車検出部22は、10mG>ΔX1s>5mgという条件、又はGx_A(n)≦0.1dpsという条件の何れか1つでも満たさない場合には(ステップS17;NO)、「停車中(不安定)」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「停車中(不安定)」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS19)。
【0036】
車両状態出力部23から車両状態が出力されると、その車両状態に応じて、光軸制御部24は、車両の姿勢角度を求め、この姿勢角度に応じて各ランプユニット30L、30Rの照射光の光軸を制御するための制御信号を生成し、各ランプユニット30L、30Rへ出力し、又は制御信号の出力を停止する(ステップS20)。
【0037】
なお、上記した実施形態においてロール角を用いていた部分をピッチ角に置き換えてもよい。ここで、ピッチ角とは、車両の左右方向軸回りの回転角度である。具体的には、まず、上記した
図5のステップS4における処理を1秒間毎のピッチ角度の変化量Gy_A(n)の算出に置き換える。1秒間毎のピッチ角度の変化量Gy_A(n)は、100ms毎に得られるピッチ角速度を用い、ある時期のピッチ角速度θgy(n)と、その1つ前の時期のピッチ角速度θgy(n-1)との差分θgy(n)-θgy(n-1)を、例えば1秒間に相当する期間で積算することよって得られる。具体的には、以下の式で表される。
Gy_A(n)=Σθgy(n)-θgy(n-1)
【0038】
また、
図6のステップS15、S17において、Gx_A(n)を用いていた部分をGy_A(n)に置き換える。具体的には、ステップS15では、ΔX
1s≧10mGであるか、又はGy_A(n)>0.1dpsであれば(ステップS15;YES)、「停車中(不安定)」に対応するデータを生成する。また、ステップS17では、ΔX
1s<10mGであるか、又はGy_A(n)≦0.1dpsであって(ステップS15;NO)、10mG>ΔX
1s>5mgであり、かつGy_A(n)≦0.1dpsであれば「走行中」に対応するデータを生成する(ステップS17;YES)。
【0039】
以上のような第1実施形態並びにその変形実施例によれば、車両状態をより精度良く特定することができる。また、特定された車両状態に応じた光軸制御を行うことができる。
【0040】
詳細には、極低速の走行中には車両の傾きも小さいことから、ジャイロセンサにより検出される角速度だけを用いた場合にはその変化を検出するのが難しいと考えられる。また、加速度センサにより検出される加速度だけを用いた場合には、特に検知時間を短くしようとすると、荷重による車両の姿勢変化と加減速による車両の姿勢変化とを切り分けるのが難しいと考えられる。さらに、ドア等の開閉状態を用いる場合には停車状態を把握できたとしてもそれ以外の状態を切り分けらず、開閉状態を示す信号を得られない場合には対応できず、荷台を有するような車両にも対応しづらいと考えられる。第1実施形態等によればこれらの不都合を解消し得る。後述する第2実施形態等並びにその他の変形実施例においても同様である。
【0041】
なお、第1実施形態やその変形実施例において場合分けの基準に用いた各数値は例示であってそれらに限定されず、車種やその他諸条件に応じて実験などで適切な数値を設定することが望ましい。例えば、ΔX1sに関して、10mG>ΔX1s>5mGという数値例を挙げていたが、下限の5mGについては加速度センサ12自身のノイズを考慮して適宜設定すればよく、また上限の10mGについては荷物の積載等による振動に対応した数値よりも低い数値で適宜設定すればよい。また、Gx_A(n)やGy_A(n)に関しても、荷物の積載等による振動に対応した数値よりも低い数値で適宜設定すればよい。
【0042】
(第2実施形態)
上記した第1実施形態ではロール角(又はピッチ角)の角速度とX軸加速度のそれぞれの変化量を所定の基準値と比較して車両状態の場合分けを行っていたが、以下で説明する独自のパラメータを用いて車両状態の場合分けを行うこともできる。なお、車両用灯具システムの構成は第1実施形態と同様であり、走行/停車検出部22による情報処理の内容のみが異なるので、以下では相違点のみ詳細に説明する。
【0043】
図7は、独自パラメータに用いられるベクトル量について説明するための図である。ここでは車両を前面側から見た様子が模式的に示されている。図示のように、車両のX軸(車両前後方向軸)回りの角度であるロール角θgの単位時間当たりの角速度をベクトル量表現とすると、ロール角のsin方向ベクトルGy_Vx(n)は以下のように表せる。
Gy_Vx(n)=-9.8sin(θg)
【0044】
また、加速度センサ12から得られるX軸加速度をGA_xとし、その現在値をGA_x(n)と表し、1つ前の値をGA_x(n-1)と表す。
【0045】
ここで、nは単位時間であり、例えば100ms毎に計算することを示す。例えば、Gy_Vx(n)に対してGy_Vx(n-1)は100ms前に得られた値である。同様に、GA_x(n)に対して、GA_x(n-1)は100ms前に得られた値である。
【0046】
このとき、状態監視パラメータScを以下のように定義する。
Sc=(Gy_Vx(n)-Gy_Vx(n-1))/(GA_x(n)-GA_x(n-1))
【0047】
この状態監視パラメータScは、ロール角のsin方向ベクトルの変化量とX軸加速度の変化量との比率を示すものである。この状態監視パラメータは、上記
図4に示したようなX軸加速度とロール角速度の特徴をより強く反映したパラメータである。具体的には、停車中、車両の姿勢角度に変化が生じた場合には、ロール角速度の変化量もX軸加速度の変化量も同じように変化し、他方で車両の姿勢角度に変化がない場合には両者とも変化がない。また、低速走行中にはロール角速度はほぼ変化しないので、sin方向ベクトルを算出してもその値はほぼ変化しない。これに対してX軸加速度は低速走行中であっても変化がある。低速走行中といっても惰性だけでは走行の維持ができないため多少なりとも加速や減速が発生するので、一定速走行となることはほとんどないからである。
【0048】
以上のことから、状態監視パラメータScを上記のように定義すると、その分子にロール角速度、分母にX軸加速度を利用していることから、走行中かつ低速走行中にはScが非常に小さい値となる。他方で、停車中はロール角速度もX軸加速度も同様に変動することから、Scの値は相対的に大きい値になる。すなわち、車両状態の特徴をはっきりと示すパラメータとして用いることができる。また、一例として100ms毎に算出可能であるように、比較的短い時間毎に状態監視パラメータを得ることが可能であるので、車両状態の特定に要する時間をより短くすることができる。
【0049】
図8は、ジャイロセンサ及び加速度センサの各々から出力されるデータに基づいて、車両状態の特定に用いるパラメータを生成する処理手順を示すフローチャートである。これらの処理は、コントローラ10の走行/停車検出部22によって繰り返し実行される。なお、いずれの動作手順においても、情報処理の結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて適宜処理順序を入れ替えることも可能であり、またここで言及しない他の処理を追加してもよく、それらの実施態様も排除されない。
【0050】
具体的には、走行/停車検出部22は、ジャイロセンサ11からロール角速度のデータを取得するとともに(ステップS31)、加速度センサ12からX軸加速度のデータを取得する(ステップS32)。例えば本実施形態では、ロール角速度のデータ、X軸加速度のデータのそれぞれが100ms毎に取得される。
【0051】
取得された各データを用い、走行/停車検出部22は、ロール角のsin方向ベクトルGy_Vx(n)を算出する(ステップS33)。そして、走行/停車検出部22は、状態監視パラメータScを算出する(ステップS34)。
【0052】
その後、走行/停車検出部22は、GA_x(n)及びGy_Vx(n)をメモリに一時記憶させる。ここで記憶されるGA_x(n)及びGy_Vx(n)は、次回演算時にGy_Vx(n-1)として用いられるものである。なお、初回演算時などにおいて前回値であるGA_x(n)、Gy_Vx(n)が存在しない場合には、走行/停車検出部22は、例えば予め定められた初期値を用いるなど慣用された手法によりステップS34、S35の演算を行うとよい。
【0053】
図9は、コントローラにおける車両状態の特定並びにそれを用いた光軸制御の処理手順を示すフローチャートである。ここに示す処理手順は、例えば100ms毎に繰り返し実行される。なお、いずれの動作手順においても、情報処理の結果に矛盾や不整合を生じない限りにおいて適宜処理順序を入れ替えることも可能であり、またここで言及しない他の処理を追加してもよく、それらの実施態様も排除されない。
【0054】
ステップS41~S44は上記した第1実施形態のフローチャートにおけるステップS11~S14と同様の処理が実行されるので、ここでは説明を省略する。
【0055】
走行/停車検出部22は、上記した状態監視パラメータScが0.5より大きい場合には(ステップS45;YES)、「停車中(不安定)」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「停車中(不安定)」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS46)。
【0056】
また、走行/停車検出部22は、上記した状態監視パラメータScが0.5以下である場合には(ステップS45;NO)、「走行中」に対応するデータを生成する。この場合には、車両状態出力部23は、車両状態を「走行中」と決定してその旨を示すデータを光軸制御部24へ出力する(ステップS47)。
【0057】
車両状態出力部23から車両状態が出力されると、その車両状態に応じて、光軸制御部24は、車両の姿勢角度を求め、この姿勢角度に応じて各ランプユニット30L、30Rの照射光の光軸を制御するための制御信号を生成し、各ランプユニット30L、30Rへ出力し、又は制御信号の出力を停止する(ステップS48)。
【0058】
なお、上記した実施形態においてもロール角を用いていた部分をピッチ角に置き換えることができる。具体的には、まず、上記した
図8のステップS33における処理をピッチ角度のsin方向ベクトルGy_Vy(n)の算出に置き換える。Gy_Vy(n)は以下のように表される。なお、ここでのθgは、車両のY軸(車両左右方向軸)回りの角度であるピッチ角であるとする。
Gy_Vy(n)=-9.8sin(θg)
【0059】
また、
図8のステップS34において、状態監視パラメータScを以下のように定義する。
Sc=(Gy_Vy(n)-Gy_Vy(n-1))/(GA_x(n)-GA_x(n-1))
そして、
図9のステップS47においては、例えばScが1.0より大きい場合にはステップS46へ進み、Scが1.0以下の場合にはステップS47へ進むようにする。
【0060】
以上のような第2実施形態並びにその変形実施例によれば、車両状態をより精度良く特定することができる。また、特定された車両状態に応じた光軸制御を行うことができる。
【0061】
なお、第2実施形態やその変形実施例において場合分けの基準に用いた各数値は例示であってそれらに限定されず、車種やその他諸条件に応じて実験などで適切な数値を設定することが望ましい。
【0062】
(その他の変形実施例)
なお、本開示は上記した各実施形態等の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した各実施形態等では四輪車両を例にして説明を行っていたが、本開示の名用を二輪車両や三輪車両あるいはそれ以外の種々の車両に適用することができる。四輪車両では搭乗者の乗降時や荷物の積載時に車両の左右方向への傾きを生じやすい傾向にあることから、ロール角速度を用いた実施形態ないしその変形実施例がより好適に用いられるとも考えられる。他方、例えば二輪車両では車両の前後方向への傾きを生じやすい傾向にあることから、ピッチ角速度を用いた実施形態ないしその変形実施例がより好適に用いられる場面が多いとも考えられる。ただし、車両の状況等にもよるので何れの実施形態等を適用するかは特に限定されない。
【0063】
また、上記した実施形態等では本開示に係る車両状態特定装置並びに同方法を車両用灯具の光軸調整に用いる場合を例示していたが当該装置及び方法の適用範囲はこれに限定されない。例えば、カーナビゲーションシステムにおいて車両状態に応じた制御を行う場面に適用してもよいし、車両の自動運転制御を行う場面に適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10:コントローラ、11:ジャイロセンサ、12:加速度センサ、21:振動検出部、22:走行/停車検出部、23:車両状態出力部、24:光軸制御部、30L、30R:ランプユニット