(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
B65H 20/02 20060101AFI20241223BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20241223BHJP
B65H 7/04 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
B65H20/02 A
B41J11/42
B65H7/04
(21)【出願番号】P 2021133421
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】熊▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮太
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043692(JP,A)
【文献】特開2020-040306(JP,A)
【文献】特開2017-030157(JP,A)
【文献】特開2000-198573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00-7/20,20/00-20/40,
43/00-43/08
B41J 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体に対して画像を描くヘッド部と、
前記媒体を搬送する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記制御部は、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ
、
かつ、前記制御部は、前記一つの媒体のうち、前記搬送方向において前記搬送ローラよりも上流側にある前記媒体の残量に基づき、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記媒体の残量を検知する媒体残量検知部と、
前記媒体の残量と前記押圧力とを対応付けたデータである押圧力調整用データを保持するデータ保持部と
を更に備え、
前記制御部は、前記媒体残量検知部が検知する前記媒体の残量と、前記データ保持部に保持されている前記押圧力調整用データとに基づき、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体に対して画像を描くヘッド部と、
前記媒体を搬送する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部の動作を制御する制御部と、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部
と
を備え、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記制御部は、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ、
前記搬送駆動部は、前記連続してつながる一つの前記媒体を搬送する動作として、前記主走査動作の合間に前記媒体を搬送することで、間欠的に前記媒体を搬送し、
前記制御部は、前記媒体を間欠的に搬送する動作における前記媒体が移動していないタイミングで前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴と
する印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記主走査動作の合間において、前記媒体が移動していないタイミングで、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする請求項
3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記主走査動作において前記媒体に対して相対的に前記ヘッド部が移動している間に、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする請求項
3に記載の印刷装置。
【請求項6】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体に対して画像を描くヘッド部と、
前記媒体を搬送する搬送駆動部と、
前記搬送駆動部の動作を制御する制御部と、
予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記ヘッド部に行わせる主走査駆動部
と
を備え、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記制御部は、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ、
前記搬送駆動部は、前記連続してつながる一つの前記媒体を搬送する動作として、前記主走査動作の合間に前記媒体を搬送することで、間欠的に前記媒体を搬送し、
前記制御部は、前記媒体を間欠的に搬送する動作における前記媒体が移動しているタイミングで前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴と
する印刷装置。
【請求項7】
前記搬送方向において前記ヘッド部よりも上流側でロール状に巻かれた前記媒体を保持する繰出側媒体保持部を更に備え、
前記搬送駆動部は、前記搬送ローラと前記対向ローラとの間に前記媒体を挟んで前記搬送ローラを回転させることで、前記繰出側媒体保持部に保持されているロール状の前記媒体から前記媒体を繰り出すことを特徴とする請求項1
から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、単位時間あたりの前記媒体の搬送量を所定の基準量に近づけるように、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする請求項1から
7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記押圧力調整部は、
前記対向ローラの軸に対して一端が固定されており、所定の支点を中心として回転することで前記対向ローラを前記搬送ローラに押し当てる押当部材と、
前記搬送ローラに前記対向ローラを押し当てる向きに前記押当部材を付勢するバネと、
前記押当部材の他端の位置を変化させることで前記バネの伸縮量を変化させて、前記押圧力を調整する調整部材と
を有することを特徴とする請求項1から
8のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項10】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
搬送駆動部によって前記媒体を搬送して、ヘッド部により、前記媒体に対して画像を描き、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ
、
かつ、前記一つの媒体のうち、前記搬送方向において前記搬送ローラよりも上流側にある前記媒体の残量に基づき、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする印刷方法。
【請求項11】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
搬送駆動部によって前記媒体を搬送して、予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作をヘッド部に行わせることで、前記ヘッド部により、前記媒体に対して画像を描き、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ、
前記搬送駆動部により、前記連続してつながる一つの前記媒体を搬送する動作として、前記主走査動作の合間に前記媒体を搬送することで、間欠的に前記媒体を搬送し、
前記媒体を間欠的に搬送する動作における前記媒体が移動していないタイミングで前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
搬送駆動部によって前記媒体を搬送して、予め設定された主走査方向へ前記媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作をヘッド部に行わせることで、前記ヘッド部により、前記媒体に対して画像を描き、
前記搬送駆動部は、
前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、
前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部と
を有し、
前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させ、
前記搬送駆動部により、前記連続してつながる一つの前記媒体を搬送する動作として、前記主走査動作の合間に前記媒体を搬送することで、間欠的に前記媒体を搬送し、
前記媒体を間欠的に搬送する動作における前記媒体が移動しているタイミングで前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置において印刷対象の媒体(メディア)を搬送する搬送機構に関し、搬送ローラとピンチローラ(対向ローラ)との間に媒体を挟んで搬送ローラを回転させる構成が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、複数のピンチローラを用いる構成に関し、それぞれのピンチローラによって媒体を押圧するか否かを個別に制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送ローラ及びピンチローラを用いる構成において、ピンチローラを搬送ローラに押し当てるクランプ圧(押圧力)が不適切であると、例えば、媒体の搬送量に誤差が生じる場合がある。また、その結果、印刷の品質が低下する場合がある。そのため、より高い品質での印刷を適切に行うためには、より適切なクランプ圧でピンチローラを搬送ローラに押し当てることが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、搬送ローラ及びピンチローラを用いて媒体を搬送する構成に関し、鋭意研究を行った。そして、ピンチローラを搬送ローラに押し当てるクランプ圧について、印刷の動作の途中で変更することが好ましい場合があることを見出した。より具体的に、例えば、搬送ローラ及びピンチローラを用いて媒体を搬送する場合、媒体のうち、搬送ローラ及びピンチローラに対して搬送方向の上流側にある部分の割合と、下流側にある割合とが、印刷の動作の進行に応じて徐々に変化することになる。そして、この場合、上流側及び下流側のそれぞれに存在する媒体の重量の比率が変化することで、好ましいクランプ圧が変化する場合がある。また、その結果、例えばクランプ圧を一定にしていることが原意で、媒体の搬送量に誤差が生じること等が考えられる。これに対し、本願の発明者は、印刷の動作の途中でクランプ圧の調整を行うことで、より適切なクランプ圧でピンチローラを搬送ローラに押し当てることを考えた。また、実際に様々な実験等を行うことで、このような構成によって、より高い精度で媒体の搬送を行い得ることを確認した。
【0006】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、前記媒体に対して画像を描くヘッド部と、前記媒体を搬送する搬送駆動部と、前記搬送駆動部の動作を制御する制御部とを備え、前記搬送駆動部は、前記媒体と接触しつつ回転することで所定の搬送方向へ前記媒体を移動させる搬送ローラと、前記搬送ローラとの間に前記媒体を挟む対向ローラと、前記搬送ローラに向けて前記対向ローラを押し当てる押圧力を調整する押圧力調整部とを有し、前記搬送方向において連続してつながる一つの前記媒体を前記搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、前記制御部は、前記押圧力調整部に前記押圧力の調整を行わせることで、前記押圧力を変化させる。
【0007】
このように構成した場合、例えば、搬送ローラに向けて対向ローラを押し当てる押圧力について、一つの媒体に対して印刷を行っている途中で適切に調整することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、印刷の動作の各タイミングにおいて、より適切な押圧力で対向ローラを搬送ローラに押し当てることができる。また、これにより、例えば、より高い精度で媒体の搬送を行い、より高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0008】
このような押圧力の調整については、例えば、媒体の搬送方向において搬送ローラよりも上流側にある媒体の残量の変化による重量の変化量が大きい構成において特に好適に実行することができる。また、このような構成としては、例えば、ロール状に巻かれた媒体を用いる構成等を考えることができる。この場合、印刷装置は、例えば、搬送方向においてヘッド部よりも上流側でロール状に巻かれた媒体を保持する繰出側媒体保持部を更に備える。そして、搬送駆動部は、例えば、搬送ローラと対向ローラとの間に媒体を挟んで搬送ローラを回転させることで、繰出側媒体保持部に保持されているロール状の媒体から媒体を繰り出す。このような構成においては、例えば、印刷の動作の進行による媒体の残量の変化が特に大きくなると考えることができる。また、媒体がロール状に巻かれている部分の径が徐々に変化することで、例えば媒体のテンションへの影響が徐々に変化すること等も考えられる。そして、これらの影響により、媒体の残量によって、好ましい押圧力に差が生じやすくなる。これに対し、上記のように押圧力の調整を行う場合、印刷の動作の各タイミングにおいて、対応ローラをより適切に搬送ローラへ押し当てることができる。また、これにより、例えば、高い精度での媒体の搬送をより適切に行うことができる。媒体の残量の変化による重量の変化量が大きい構成としては、ルール状の媒体を用いる場合に限らず、厚みの大きな媒体(例えば、非可撓性の板状の媒体等)を用いる構成等も考えられる。
【0009】
また、この構成において、制御部は、例えば、一つの媒体のうち、搬送方向において搬送ローラよりも上流側にある媒体の残量に基づき、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、押圧力の調整を適切に行うことができる。より具体的に、この場合、印刷装置は、例えば、媒体の残量を検知する媒体残量検知部と、押圧力調整用データを保持するデータ保持部とを更に備える。押圧力調整用データとしては、例えば、媒体の残量と押圧力とを対応付けたデータを用いることが考えられる。また、制御部は、例えば、媒体残量検知部が検知する媒体の残量と、データ保持部に保持されている押圧力調整用データとに基づき、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、押圧力の調整をより適切に行うことができる。また、制御部は、例えば、単位時間あたりの媒体の搬送量を所定の基準量に近づけるように、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、押圧力の調整により、高い精度での媒体の搬送を適切に行うことができる。
【0010】
また、この構成において、押圧力調整部は、例えば、押当部材、バネ、及び調整部材を有する。この場合、押当部材は、例えば、対向ローラの軸に対して一端が固定されており、所定の支点を中心として回転することで対向ローラを搬送ローラに押し当てる。押当部材としては、例えば支点を中心として回転するアーム状の部材等を好適に用いることができる。また、バネは、例えば、搬送ローラに対向ローラを押し当てる向きに押当部材を付勢する。調整部材は、例えば、押当部材の他端の位置を変化させることでバネの伸縮量を変化させて、押圧力を調整する。このように構成すれば、例えば、押圧力の調整を適切に行うことができる。
【0011】
また、この構成において、印刷装置は、例えば、主走査駆動部を更に備える。主走査駆動部は、例えば、予め設定された主走査方向へ媒体に対して相対的に移動しつつインクを吐出する主走査動作をヘッド部に行わせる。また、ヘッド部は、例えば、インクジェット方式でインクを吐出するインクジェットヘッドを有する。この場合、ヘッド部に主走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部におけるインクジェットヘッドに主走査動作を行わせること等と考えることができる。また、この場合、搬送駆動部は、例えば、連続してつながる一つの媒体を搬送する動作として、主走査動作の合間に媒体を搬送することで、間欠的に媒体を搬送する。また、搬送駆動部は、媒体を搬送することで、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的に移動する副走査動作をヘッド部に行わせる。
【0012】
また、この場合、制御部は、例えば、媒体を間欠的に搬送する動作における媒体が移動していないタイミングで押圧力調整部に押圧力の調整を行わせることで、搬送方向において連続してつながる一つの媒体を搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、媒体を搬送する動作への影響をより低減しつつ、押圧力の調整を適切に行うことができる。また、より具体的に、この場合、制御部は、例えば、主走査動作の合間において、媒体が移動していないタイミングで、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、印刷の動作への影響をより低減しつつ、押圧力の調整を適切に行うことができる。
【0013】
また、押圧力の調整については、例えば、主走査動作の実行中に行うこと等も考えられる。この場合、制御部は、例えば、主走査動作において媒体に対して相対的にヘッド部が移動している間に、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、主走査動作及び副走査動作の繰り返しによって行う印刷の動作の中で、効率的に押圧力の調整を行うことができる。また、印刷装置の構成によっては、例えば、副走査動作の実行中に押圧力の調整を行うこと等も考えられる。この場合、制御部は、例えば、媒体を間欠的に搬送する動作における媒体が移動しているタイミングで押圧力調整部に押圧力の調整を行わせることで、搬送方向において連続してつながる一つの媒体を搬送駆動部が搬送している途中のタイミングにおいて、押圧力調整部に押圧力の調整を行わせる。このように構成した場合も、例えば、印刷の動作の中で、効率的に押圧力の調整を行うことができる。
【0014】
また、本発明の構成として、例えば、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10の本体部12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。
【
図2】本体部12における押圧力調整部208の具体的な構成について説明をする図である。
図2(a)は、本体部12の側面図及び背面図である。
図2(b)、(c)は、本体部12の斜視図である。
【
図3】押圧力調整部208の要部のより詳細な構成の一例を示す図である。
図3(a)は、押圧力調整部208の一部を示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)に示した部分に対する所定の平面による断面図である。
【
図4】押圧力調整部208の要部のより詳細な構成の一例を示す図である。
図4(a)は、媒体の幅方向と平行な方向から見た押圧力調整部208の一部を示す平面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示した部分に対する所定の平面による断面図である。
【
図5】押圧力調整部208における駆動機構の構成の一例を示す図である。
図5(a)は、押圧力調整部208の駆動機構の構成の一例を示す斜視図及び平面図である。
図5(b)は、
図5(a)と反対の側から見た押圧力調整部208の駆動機構の構成の一例を示す斜視図及び平面図である。
【
図6】押圧力を調整する動作について更に詳しく説明をする図である。
図6(a)は、データ保持部112が保持する押圧力調整用データの一例を示す。
図6(b)は、押圧力調整用データに基づいて実行する押圧力を調整する動作の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10の本体部12におけるヘッド部102の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、本例の印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、図示した構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に有してもよい。
【0018】
本例において、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してシリアル方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ロール状に巻かれた媒体50を順次繰り出しつつ、印刷を行う。また、印刷装置10は、本体部12、繰出側媒体保持部14、及び巻取側媒体保持部16を備える。本体部12は、印刷装置10の本体部分であり、繰出側媒体保持部14から供給される媒体50に対して印刷の動作を行い、印刷がされた媒体50を巻取側媒体保持部16へ供給する。この場合、繰出側媒体保持部14から供給される媒体50に対して印刷の動作を行うことについては、例えば、搬送方向においてつながった状態で繰出側媒体保持部14から順次供給される媒体50のうち、本体部12における所定の位置に来た部分に対して印刷を行うこと等と考えることができる。
【0019】
また、本例において、本体部12は、ヘッド部102、プラテン104、主走査駆動部106、搬送駆動部108、媒体残量検知部110、データ保持部112、及び制御部120を有する。ヘッド部102は、媒体50に対して画像を描く部分である。また、本例において、ヘッド部102は、
図1(b)に示すように、インクジェット方式でインクを吐出する複数のインクジェットヘッド200y~kを有する。この場合、複数のインクジェットヘッド200y~kのそれぞれは、互いに異なる色のインクを吐出する。より具体的に、インクジェットヘッド200yは、Y色(イエロー色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド200mは、M色(マゼンタ色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド200cは、C色(シアン色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド200kは、K色(ブラック色)のインクを吐出する。また、本例において、複数のインクジェットヘッド200y~kのそれぞれは、搬送方向と平行な方向における位置を互いに異ならせて並ぶ複数のノズルを有する。そして、複数のインクジェットヘッド200y~kは、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。この場合、副走査方向は、印刷装置10における媒体50の搬送方向と平行な方向である。また、主走査方向は、搬送方向と直交する方向である。本体部12の変形例において、ヘッド部102は、上記以外の色のインクジェットヘッドを更に有してよい。また、複数のインクジェットヘッド200y~kの並べ方について、上記と異ならせてもよい。
【0020】
プラテン104は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッド200y~kと対向させて媒体50を保持する台状部材である。本例において、プラテン104は、繰出側媒体保持部14から供給される媒体50を上面に保持することで、複数のインクジェットヘッド200y~kと媒体50とを対向させる。主走査駆動部106は、ヘッド部102に主走査動作を行わせる駆動部である。この場合、主走査動作については、例えば、主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。また、本例において、ヘッド部102に主走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド200y~kに主走査動作を行わせること等と考えることができる。また、本例において、主走査駆動部106は、主走査方向における媒体50の位置を固定して、インクジェットヘッド200y~kを移動させることで、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。
【0021】
搬送駆動部108は、媒体50を搬送する駆動部であり、繰出側媒体保持部14においてロール状に巻かれている媒体50を順次繰り出して、主走査動作においてインクの吐出の対象となる部分をヘッド部102と対向させる。本例において、搬送駆動部108は、主走査動作が行われる毎に所定の搬送量だけ媒体50を搬送することで、各回の主走査動作においてヘッド部102と対向する媒体50の部分を順次変更する。また、これにより、搬送駆動部108は、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。この場合、副走査動作については、例えば、媒体50に対して相対的に副走査方向へ移動する動作等と考えることができる。また、本例において搬送駆動部108が媒体50を搬送する動作については、例えば、主走査動作の合間に媒体50を搬送することで間欠的に媒体50を搬送する動作等と考えることができる。ロール状に巻かれた媒体50を繰り出して搬送する動作については、例えば、連続してつながる一つの媒体50を搬送する動作の一例と考えることができる。
【0022】
また、本例において、搬送駆動部108は、搬送ローラ202、複数の対向ローラ204、ローラ駆動部206、押圧力調整部208、及び複数の従動ローラ210を有する。搬送ローラ202は、媒体50と接触しつつ回転することで搬送方向へ媒体50を移動させるローラである。本例において、搬送ローラ202は、媒体50の搬送方向においてヘッド部102と繰出側媒体保持部14との間に配設されており、複数の対向ローラ204との間に媒体50を挟んだ状態で所定の方向へ回転することで、搬送方向へ媒体50を移動させる。また、この場合、搬送ローラ202は、媒体50の幅方向と平行な方向を軸方向とする向きで配設される。搬送ローラ202としては、例えば、媒体50の幅よりも軸方向の長さが長いローラ等を用いることが考えられる。また、搬送ローラ202は、例えば、プラテン104の上面から外周面の一部が突出するように配設されることで、プラテン104の上面に沿って媒体50を移動させる。
【0023】
複数の対向ローラ204は、搬送ローラ202との間に媒体50を挟むローラ(ピンチローラ)である。本例において、対向ローラ204は、媒体50の移動に従って回転可能な状態で、押圧力調整部208によって調整される押圧力で搬送ローラ202に押し当てられる。また、これにより、押圧力調整部208は、押圧力に応じたクランプ圧で、搬送ローラ202との間に媒体50を挟み込む。また、本例において、複数の対向ローラ204のそれぞれは、媒体50の幅方向における互いに異なる位置において、搬送ローラ202に押し当てられる。
【0024】
ローラ駆動部206は、搬送ローラ202を回転させる駆動部である。本例において、ローラ駆動部206は、制御部120の指示に応じて搬送ローラ202を回転させることで、主走査動作の合間に媒体50を移動させる。押圧力調整部208は、搬送ローラ202に向けて対向ローラ204を押し当てる押圧力を調整する構成である。押圧力調整部208の具体的な構成や動作等については、後に更に詳しく説明をする。複数の従動ローラ210は、媒体50の搬送の経路を調整するためのローラである。本例において、複数の従動ローラ210のそれぞれは、例えば搬送ローラ202と繰出側媒体保持部14との間や、搬送ローラ202と巻取側媒体保持部16との間に配設されることで、それぞれの従動ローラ210の位置において、媒体50の搬送の経路を規定する。
【0025】
媒体残量検知部110は、印刷がされる前の媒体50の量である媒体50の残量を検知する検知部である。媒体50の残量については、例えば、搬送ローラ202の位置を通過する前の媒体50の量等と考えることもできる。また、本例において、媒体50の残量については、例えば、搬送方向においてつながった状態でヘッド部102と対向する位置を通過するように順次搬送される媒体50において搬送ローラ202よりも搬送方向における上流側にある部分の量と考えることができる。また、媒体50の残量を検知することについて、例えば、繰出側媒体保持部14においてロール状に巻かれている媒体50の径(例えば、直径)に対応する量を検知していると考えることもできる。媒体残量検知部110は、例えば、印刷を開始する時点で繰出側媒体保持部14に保持されている媒体50の量と、その後の印刷の動作で搬送ローラ202の位置を通過した媒体50の量とに基づき、媒体50の残量を検知する。この場合、搬送ローラ202の位置を通過した媒体50の量については、例えば、搬送ローラ202が回転した回転量に基づいて検知すること等が考えられる。また、媒体残量検知部110は、上記以外の方法で媒体50の残量を検知してもよい。例えば、媒体残量検知部110は、繰出側媒体保持部14においてロール状に巻かれている媒体50の径を測定することで、媒体50の残量を検知してもよい。
【0026】
データ保持部112は、印刷の動作の制御に用いるパラメータ等を保持する記憶部である。本例において、データ保持部112は、このようなパラメータの少なくとも一部として、押圧力調整部208での押圧力の調整に用いる押圧力調整用データを保持する。また、押圧力調整用データとして、媒体50の残量と押圧力とを対応付けたデータを用いる。データ保持部112としては、例えば、半導体記憶装置(例えば、ROM等)を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、データの書き換えが可能な半導体記憶装置を用いることが好ましい。
【0027】
制御部120は、例えば印刷装置10のCPU等を含む部分であり、印刷装置10の各部の動作を制御する。より具体的に、印刷装置10は、例えば、印刷すべき画像を示すデータに基づいてインクジェットヘッド200y~kにインクを吐出させることで、媒体50に対する画像の描画をインクジェットヘッド200y~kに行わせる。また、制御部120は、例えば、主走査駆動部106及び搬送駆動部108の動作を制御することで、主走査動作及び副走査動作の制御を行う。更に、本例において、制御部120は、搬送駆動部108における押圧力調整部208の動作を制御することで、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てる押圧力の調整を押圧力調整部208に行わせる。この場合、制御部120は、媒体残量検知部110が検知する媒体50の残量と、データ保持部112に保持されている押圧力調整用データとに基づき、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。また、これにより、制御部120は、連続して搬送される一つの媒体50のうち、搬送方向において搬送ローラ202よりも上流側にある媒体50の残量に基づき、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、押圧力調整部208において行う押圧力の調整の制御を適切に行うことができる。また、この場合、連続して搬送される一つの媒体50については、例えば、搬送方向においてつながっている一連の部分によって構成される媒体50等と考えることができる。押圧力を調整する動作の例については、後に更に詳しく説明する。
【0028】
繰出側媒体保持部14は、媒体50において印刷がされる前の部分を保持する構成であり、本体部12におけるヘッド部102及び搬送ローラ202よりも搬送方向の上流側で、ロール状に巻かれた媒体50を保持する。また、この場合、上記においても説明をしたように、本体部12における搬送駆動部108は、搬送ローラ202と対向ローラ204との間に媒体を挟んで搬送ローラ202を回転させることで、繰出側媒体保持部14に保持されているロール状の媒体50から媒体50を繰り出す。巻取側媒体保持部16は、媒体50において印刷がされた後の部分を保持する構成であり、本体部12におけるヘッド部102及び搬送ローラ202よりも搬送方向の下流側で、本体部12から供給される媒体50を巻き取って保持する。本例によれば、例えば、ロール状に巻かれた媒体50に対し、適切に印刷を行うことができる。
【0029】
尚、上記においても説明をしたように、印刷装置10は、図示した構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に有してもよい。例えば、印刷装置10は、インクを定着する定着手段等を更に備えることが好ましい。この場合、例えば、使用するインクに合わせた定着手段を用いることが考えられる。より具体的に、例えば蒸発乾燥型のインクを用いる場合、定着手段として、インクを乾燥させるための加熱手段と用いることが考えられる。また、例えば紫外線硬化型のインクを用いる場合、定着手段として、紫外線光源を用いることが考えられる。
【0030】
続いて、搬送駆動部108における押圧力調整部208の構成や動作等について、更に詳しく説明をする。
図2は、本体部12における押圧力調整部208の具体的な構成について説明をする図である。
図2(a)は、本体部12の側面図及び背面図である。
図2(b)、(c)は、本体部12の斜視図である。本体部12の背面図については、例えば、媒体50の搬送方向の上流側から本体部12を見た図等と考えることができる。また、
図2(a)~(c)においては、押圧力調整部208の一部の構成である取付部302、駆動軸304、駆動カム306、及び従動カム308について、本体部12における位置の例を示している。また、図中に丸囲みで示す拡大図により、これらの構成の具体的な形状の例を示している。
【0031】
押圧力調整部208におけるこれらの構成のうち、取付部302は、押圧力調整部208の各構成を本体部12の筐体に対して固定するための構成である。より具体的に、本例において、取付部302は、媒体の幅方向(主走査方向)に延伸するYバー部に対して、押圧力調整部208の各構成を固定する。この場合、Yバー部については、例えば、主走査動作時にヘッド部102(
図1参照)の移動をガイドするガイドレール等を有する部分等と考えることができる。また、取付部302について、例えば、Yバーの一部と考えることもできる。駆動軸304は、駆動カム306を駆動するための軸部材(シャフト)であり、媒体の幅方向へ延伸する向きで配設される。駆動カム306は、駆動軸304の回転によって駆動されるカムである。従動カム308は、駆動カム306の回転に従って回転するカムである。また、後に更に詳しく説明をするように、本例の押圧力調整部208では、従動カム308を回転させることで、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力を変化させる。
【0032】
ここで、
図1に関連して上記においても説明をしたように、本例において、本体部12は、複数の対向ローラ204(
図1参照)を有する。そして、複数の対向ローラ204のそれぞれは、媒体50の幅方向における互いに異なる位置において、搬送ローラ202に押し当てられる。そのため、本例の押圧力調整部208は、複数の搬送ローラ202に対応するように、複数の駆動カム306及び複数の従動カム308を有する。この場合、例えば、駆動軸304を回転させることで、複数の駆動カム306を同時に回転させる。また、これにより、複数の駆動カム306に対応する複数の従動カム308を同時に回転させる。このように構成すれば、例えば、複数の対向ローラ204に対し、押圧力の調整を適切に行うことができる。
【0033】
また、この場合、より具体的に、押圧力調整部208は、それぞれの対向ローラ204(一つの対向ローラ204)に対応する位置において、例えば、
図3及び
図4に示す構成を有する。
図3及び
図4は、押圧力調整部208の要部のより詳細な構成の一例を示す図であり、それぞれの対向ローラ204に対応して押圧力調整部208が有する構成の一例を搬送ローラ202及び対向ローラ204と共に示す。
図3(a)は、押圧力調整部208の一部を示す斜視図である。
図3(b)は、
図3(a)に示した部分に対する所定の平面による断面図である。
図4(a)は、媒体の幅方向と平行な方向から見た押圧力調整部208の一部を示す平面図である。
図4(b)は、
図4(a)に示した部分に対する所定の平面による断面図である。本例において、押圧力調整部208は、複数の対向ローラ204に対して共通に、取付部302、及び駆動軸304を有する。また、押圧力調整部208は、一つの対向ローラ204に対応して、駆動カム306、従動カム308、クランプ310、バネ312、及びバネ314を有する。また、本例の押圧力調整部208は、離間機構316を更に有する。離間機構316の一部は、それぞれの対向ローラ204に対応して設けられている。離間機構316の他の部分は、複数の対向ローラ204に対して共通に設けられている。また、
図3及び
図4では図示を省略しているが、本例の押圧力調整部208は、駆動軸304を回転させる駆動機構を更に有する。
【0034】
本例において、駆動カム306は、駆動軸304を回転軸として回転するように、駆動軸304に対して固定されている。また、これにより、駆動カム306は、駆動軸304の回転に従って、回転する。また、この場合、上記においても説明をしたように、従動カム308は、駆動カム306の回転に従って回転する。より具体的に、本例において、従動カム308は、駆動軸304に対して固定されない状態で、駆動軸304を回転軸として回転するように配設されている。この場合、従動カム308が駆動軸304に対して固定されない状態については、例えば、駆動軸304に対して自由に回転可能なように駆動軸304が従動カム308に通されている状態等と考えることができる。また、本例において、従動カム308は、バネ314によって駆動カム306とつながれることで、駆動カム306の回転に連動する。また、これにより、従動カム308は、駆動カム306の回転に従って回転する。この場合、駆動軸304に対して従動カム308が自由に回転可能なことについては、例えば、バネ314によって駆動カム306と従動カム308とをつながない場合に駆動軸304に対して従動カム308が自由に回転可能になること等と考えることができる。また、本例において、従動カム308は、調整部材の一例である。
【0035】
クランプ310は、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てる押当部材の一例である。本例において、クランプ310は、対向ローラ204の軸に対して一端が固定されているアーム状の部材であり、支点となる回転軸322を中心として回転することで、バネ312の付勢力に応じて、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てる。この場合、回転軸322については、例えば、クランプ310の回転の支点となる軸等と考えることができる。より具体的に、本例のクランプ310は、回転軸322に対して対向ローラ204と反対の側においてクランプ310を上側へ持ち上げる付勢力をバネ312から受けることで、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てる。この場合、上側については、例えば、媒体から離れる側等と考えることができる。また、本例において、クランプ310については、例えば、対向ローラ204の配置を制御する部材等と考えることもできる。
【0036】
バネ312は、搬送ローラ202に対向ローラ204を押し当てる向きへクランプ310を付勢するバネである。本例において、バネ312は、コイルバネであり、一端がクランプ310に対して固定される。そして、バネ312の他端は、クランプ310の回転軸322に対する相対位置が固定されている所定の位置に対して固定される。このように構成すれば、例えば、バネ312の付勢力を利用して、搬送ローラ202へ対向ローラ204を適切に押し当てることができる。また、バネ314は、上記においても説明をしたように、駆動カム306の回転に従って従動カム308が回転するように駆動カム306と駆動カム306とをつなぐバネである。
【0037】
離間機構316は、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てるか否かを切り替えるための機構である。本例において、離間機構316は、複数の対向ローラ204に対して共通に設けられる駆動軸(シャフト)と、それぞれの対向ローラ204毎に設けられる駆動カムとを有する。離間機構316における駆動軸は、例えば、駆動カム306を駆動する駆動軸304と平行に、媒体の幅方向へ延伸するように設けられる。また、離間機構316における駆動カムは、駆動軸の回転に従って回転するカムであり、例えば、一部の回転角度においてクランプ310の回転軸322に対して対向ローラ204と反対の側でクランプ310と接触する。また、これにより、離間機構316の駆動カムは、所定の回転位置において対向ローラ204が搬送ローラ202から離れ、他の所定の回転位置において対向ローラ204が搬送ローラ202へ押し当てられるように、クランプ310の他端の位置を変化させる。このように構成すれば、例えば、複数の対向ローラ204に対して一括して、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てるか否かを適切に切り替えることができる。また、この場合、クランプ310について、例えば、搬送ローラ202に対して近接及び離間可能に対向ローラ204を保持していると考えることもできる。
【0038】
以上のような構成の押圧力調整部208において、対向ローラ204を保持している側と反対の側であるクランプ310の他端側の位置は、従動カム308と接触することで、従動カム308によって規制される。また、クランプ310と従動カム308とが接触する位置は、従動カム308の回転角度によって変化する。そのため、本例において、少なくとも所定の角度の範囲で従動カム308が回転した場合、クランプ310の他端の位置は、従動カム308の回転角度に応じて変化することになる。また、この場合、図示した構成等から理解できるように、クランプ310の他端の位置の変化に応じて、バネ312の伸縮量が変化する。また、バネ312の伸縮量が変化することで、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力も変化する。より具体的に、
図3及び
図4に図示した構成の場合、従動カム308を図中の右回りに回転(回動)させると、バネ312の付勢力が段階的に弱まることになる。
【0039】
このように、本例において、従動カム308は、クランプ310の他端の位置を変化させることでバネ312の伸縮量を変化させて、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力を調整する。そのため、本例によれば、例えば、従動カム308を回転させることで、押圧力の調整を適切に行うことができる。また、本例においては、複数の対向ローラ204に対して共通に設けられている駆動軸304を回転させることで、それぞれの対向ローラ204に対応する駆動カム306及び従動カム308を回転させることができる。また、これにより、複数の対向ローラ204に対し、同時に押圧力の調整を行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、複数の対向ローラ204に対し、容易かつ適切に押圧力の調整を行うことができる。
【0040】
また、本例の押圧力調整部208については、例えば、対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てるか否かを切り替えるための構成である離間機構316とは別に、押圧力の調整用の構成を有していると考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例の押圧力調整部208は、駆動軸304を回転させる駆動機構を更に有する。このような駆動機構としては、例えば、
図5に示す構成を用いることが考えられる。
【0041】
図5は、押圧力調整部208における駆動機構の構成の一例を示す。
図5(a)は、
図3及び
図4に示した部分がある側から見た押圧力調整部208の駆動機構の構成の一例を示す斜視図及び平面図である。
図5(b)は、
図5(a)と反対の側から見た押圧力調整部208の駆動機構の構成の一例を示す斜視図及び平面図である。
【0042】
本例において、押圧力調整部208は、例えば
図3及び
図4に図示した構成以外に、駆動機構の構成として、モータ332、ギア334、原点センサ336、及びドグ338を有する。モータ332は、駆動軸304を回転させる動力を発生する駆動源である。ギア334は、モータ332の動力を駆動軸304へ伝達する動力伝達機構である。また、本例において、ギア334は、互いに噛み合う複数の歯車402、404、406を有し、歯車402、404、406を介して、モータ332が発生する動力に応じて、駆動軸304を回転させる。また、より具体的に、本例において、歯車402は、モータ332の回転軸に取り付けられており、モータ332の回転軸の回転に従って回転する。歯車404は、歯車402と歯車406との間をつなぐ歯車であり、歯車402の回転に従って回転し、かつ、自身の回転に従って歯車406を回転させる。歯車406は、駆動軸304に取り付けられており、歯車404の回転に従って回転し、自身の回転に従って駆動軸304を回転させる。原点センサ336及びドグ338は、駆動軸304の回転量の制御に用いる構成である。本例において、押圧力調整部208は、原点センサ336及びドグ338により、駆動軸304に取り付けられている歯車406に対し、回転量の制御を行う。このように構成すれば、例えば、駆動軸304の回転量の制御を適切に行うことができる。
【0043】
このような構成により、本例の押圧力調整部208において、モータ332は、印刷装置10における制御部120(
図1参照)の指示に応じて、駆動軸304を回転させる。この場合、制御部120は、例えば、データ保持部112(
図1参照)に保持されている押圧力調整用データに基づき、モータ332に対する駆動の制御を行う。また、これにより、搬送ローラ202(
図3参照)へ対向ローラ204(
図3参照)を押し当てる押圧力について、例えばユーザの操作等によらず、自動的に調節することができる。そこで、以下、押圧力を調整する動作の例について、更に詳しく説明をする。
【0044】
図6は、押圧力を調整する動作について更に詳しく説明をする図である。
図6(a)は、データ保持部112が保持する押圧力調整用データの一例を示す。上記においても説明をしたように、本例において、データ保持部112が保持する押圧力調整用データは、媒体の残量と押圧力とを対応付けたデータである。また、
図3及び
図4等を用いて説明をしたように、本例においては、クランプ310(
図3参照)の他端の位置に応じて、押圧力が変わることになる。そのため、押圧力調整用データにおいて、押圧力を示すパラメータとしては、例えば図中にアーム位置として示すように、クランプ310の他端の位置を示すパラメータを用いることが考えられる。また、本例において、クランプ310の他端の位置は、従動カム308(
図3参照)の回転角度に応じて変化する。また、従動カム308の回転角度は、駆動軸304(
図3参照)の回転角度に応じて変化する。そのため、クランプ310の他端の位置を示すパラメータとしては、例えば、駆動軸304の回転角度を示すパラメータを用いることが考えられる。
【0045】
また、印刷装置10(
図1参照)においては、例えば、様々な素材の媒体(メディア)を用いることが考えられる。そして、この場合、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力について、使用する媒体によって好ましい強さが異なることが考えられる。そのため、押圧力調整用データとしては、例えば、媒体の種類と対応付けて押圧力を示すデータを用いることが好ましい。また、この場合、押圧力調整用データとして、例えば図中に示すように、媒体の種類毎に媒体の残量と押圧力とを対応付けたデータを用いることが考えられる。
【0046】
尚、
図6(a)においては、図示の便宜上、媒体の種類について、簡略化して図示をしている。しかし、媒体の素材が同じであっても、媒体の厚さ等が異なると、好ましい押圧力も異なると考えられる。そのため、実際の押圧力調整用データでは、媒体の種類について、素材のみではなく、厚さの違い等も考慮して種類を区別することが好ましい。また、この場合、媒体の種類について、例えば、媒体の型番毎に区別すること等が考えられる。また、上記のように、本例の押圧力調整用データでは、押圧力について、媒体の残量と対応付けている。より具体的に、
図6(a)に示す例では、塩化ビニルの媒体について、媒体の残量R1、R2、R3等に対し、押圧力に対応するクランプ310の他端の位置(アーム位置)を示す値A1、A2、A3等を対応付けている。また、ターポリンの媒体について、媒体の残量R1、R2、R3等に対し、クランプ310の他端の位置を示す値B1、B2、B3等を対応付けている。
【0047】
ここで、本例のように、搬送ローラ202よりも上流側でロール状に巻かれた媒体を用いる場合、印刷の動作の進行に応じて、媒体がロール状に巻かれている部分の径が徐々に変化することになる。また、その結果、例えば、繰出側媒体保持部14(
図1参照)で保持されている媒体によって生じる媒体のテンション等への影響についても、徐々に変化すること等が考えられる。そして、この場合、好ましい押圧力について、例えば、媒体の残量によって変化することが考えられる。また、ロール状に巻かれた媒体を用いる場合、連続してつながる大量の媒体に対して印刷を行うことになるため、印刷の動作の進行による媒体の残量の変化についても、特に大きくなる。また、その結果、好ましい押圧力について、媒体の残量が少ない場合と、多い場合とで、大きく異なることが考えられる。
【0048】
これに対し、本例においては、媒体の残量と押圧力とを対応付けた押圧力調整用データを用い、押圧力調整用データに基づいて押圧力を調整することで、媒体の残量に合わせて押圧力を調整することができる。また、これにより、例えば、印刷の動作の各タイミングにおいて、対向ローラ204をより適切に搬送ローラ202へ押し当てることができる。そのため、本例によれば、例えば、高い精度での媒体の搬送をより適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷をより適切に行うことができる。
【0049】
また、この場合、印刷装置10の制御部120(
図1参照)は、押圧力調整用データに基づき、例えば、単位時間あたりの媒体の搬送量を所定の基準量に近づけるように、押圧力調整部208(
図3参照)に押圧力の調整を行わせる。この場合、搬送量の基準量については、例えば、副走査動作での媒体の移動量の設計値に応じて決まる搬送量等と考えることができる。また、媒体の搬送量を所定の基準量に近づけることについては、例えば、調整前の押圧力よりも調整後の押圧力で対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てる方が媒体の搬送量の誤差が小さくなるように押圧量の調整を行うこと等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、押圧力の調整により、媒体の搬送量のバラツキを低減することができる。また、これにより、例えば、高い精度での媒体の搬送を適切に行うことができる。
【0050】
また、このような押圧力調整用データを用いて行う押圧力の調整は、例えば
図6(b)に示すように実行することが考えられる。
図6(b)は、押圧力調整用データに基づいて実行する押圧力を調整する動作の一例を示す図であり、塩化ビニルの媒体を用い、
図6(a)に示す押圧力調整用データに基づいて押圧力の制御を行う場合について、押圧力を調整する動作の一例を示している。また、
図6(b)においては、図示の便宜上、押圧力について、押圧力に対応する圧力であるクランプ圧によって示している。クランプ圧については、例えば、単位面積あたりの押圧力等と考えることができる。
【0051】
図示した場合において、媒体の残量R1は、印刷を開始する時点での残量である。この時点において、制御部120は、クランプ310の他端の位置(アーム位置)がA1になるように、押圧力調整部208を動作させる。より具体的に、制御部120は、押圧力調整部208における駆動軸304(
図3参照)の回転角度を所定の初期位置に合わせることで、従動カム308(
図3参照)の角度を調整する。また、これにより、制御部120は、クランプ310の他端の位置についても、クランプ310の初期位置A1に合わせる。この場合、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てるクランプ圧は、クランプ310の他端の位置がA1になっている状態での押圧力に対応するクランプ力P1になる。
【0052】
また、印刷の動作が進行し、媒体の残量がR2になった時点で、制御部120は、クランプ310の他端の位置をA2に変化させるように、押圧力調整部208を動作させる。この場合、制御部120は、押圧力調整部208におけるモータ332に駆動軸304を回転させることで、従動カム308を回転させて、クランプ310の他端の位置を動かす。これにより、クランプ圧は、クランプ310の他端の位置がA2になっている状態での押圧力に対応するクランプ力P2になる。そして、印刷の動作が更に進行し、媒体の残量がR3になった時点で、制御部120は、クランプ310の他端の位置をA3に変化させるように、押圧力調整部208を動作させる。この場合も、制御部120は、押圧力調整部208におけるモータ332に駆動軸304を回転させることで、従動カム308を回転させて、クランプ310の他端の位置を動かす。これにより、クランプ圧は、クランプ310の他端の位置がA3になっている状態での押圧力に対応するクランプ力P3になる。また、更なる印刷の動作の進行に応じて、制御部120は、上記と同様にして、クランプ310の他端の位置を更に変化させる。また、これにより、クランプ圧を更に変化させる。
【0053】
このように、本例において、制御部120は、媒体の搬送の途中のタイミングで、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。また、これにより、制御部120は、例えば、印刷の動作の進行に応じて、押圧力を変化させる。この場合、媒体の搬送の途中のタイミングについては、例えば、搬送方向において連続してつながる一つの媒体を搬送駆動部108(
図1参照)が搬送している途中のタイミング等と考えることができる。また、連続してつながる一つの媒体を搬送する動作の途中のタイミングについては、例えば、主走査動作の合間に副走査動作を行うことで間欠的に媒体を搬送する一連の動作の中でのいずれかのタイミング等を考えることができる。本例によれば、例えば、搬送ローラ202に向けて対向ローラ204を押し当てる押圧力について、一つの媒体に対して印刷を行っている途中で適切に調整することができる。また、これにより、例えば、印刷の動作の各タイミングにおいて、より適切な押圧力で対向ローラ204を搬送ローラ202に押し当てることができる。また、この場合、押圧力の調整を行うことで、例えば、より高い精度で媒体の搬送を行い、より高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0054】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置10は、主走査動作の合間に副走査動作を行うことで、間欠的に媒体を搬送する。この場合、押圧力を変化させる動作については、例えば、媒体が移動していないタイミングで行うことが考えられる。より具体的に、この場合、制御部120は、搬送方向において連続してつながる一つの媒体を搬送駆動部108が搬送している途中において、媒体を間欠的に搬送する動作における媒体が移動していないタイミングで、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このような動作については、例えば、副走査動作の実行中以外のタイミングで押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる動作等と考えることができる。また、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせることについては、例えば、駆動軸304を回転させる動作を押圧力調整部208に行わせること等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、媒体を搬送する動作への影響を適切に低減しつつ、押圧力の調整を適切に行うことができる
【0055】
また、この場合、例えば、主走査動作及び副走査動作のいずれも行われていないタイミングで、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせることが考えられる。この場合、制御部120は、主走査動作の合間において、媒体が移動していないタイミングで、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、印刷の動作への影響を適切に低減しつつ、押圧力の調整を適切に行うことができる。また、押圧力の調整については、例えば、主走査動作の実行中に行うこと等も考えられる。この場合、制御部120は、例えば、主走査動作において媒体に対して相対的にインクジェットヘッド200y~k(
図1参照)が移動している間に、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このように構成すれば、例えば、主走査動作及び副走査動作の繰り返しによって行う印刷の動作の中で、効率的に押圧力の調整を行うことができる。また、印刷装置10の構成によっては、例えば、副走査動作の実行中に押圧力の調整を行うこと等も考えられる。この場合、制御部120は、例えば、媒体を間欠的に搬送する動作における媒体が移動しているタイミングで、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このように構成した場合も、例えば、印刷の動作の中で、効率的に押圧力の調整を行うことができる。
【0056】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明等を行う。上記においても説明をしたように、本例において、制御部120は、押圧力調整部208におけるモータ332(
図4参照)の動作を制御することで、ユーザが手動で機械的な機構等を操作することなく、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力の調整を行う。この点に関し、例えば、ユーザが手動で機械的な機構を操作することで押圧力を調整する場合、感覚的に押圧力を調整することが必要になるため、再現性の高い調整を行うことが難しくなる。また、機構上の制限等により、詳細な押圧力の調整を行うことが難しくなること等も考えられる。また、この場合、通常、印刷の動作の途中で押圧力を調整することも困難になる。これに対し、本例においては、上記のように押圧力の調整を行うことで、再現性の高い客観的な調整を適切に行うことができる。また、押圧力調整部208におけるモータ332及びギア334(
図4参照)等の構成により、詳細な押圧力の調整をより適切に行うことや、印刷の動作の途中で押圧力を変化させること等も可能になる。そのため、本例によれば、例えば、押圧力の調整を高い精度でより適切に行うことができる。また、これにより、例えば、利便性の高い印刷装置10を適切に提供することができる。
【0057】
また、上記においても説明をしたように、本例において、押圧力調整部208は、クランプ310において対向ローラ204を保持する一端と反対の側の端である他端に対して従動カム308を接触させることで、押圧力の調整を行う。この場合、従動カム308について、例えば、回動可能に設けられた付勢力調整部材等と考えることができる。また、従動カム308においてクランプ310と接触する部分について、例えば、クランプ310の他端と係合する係合部等と考えることができる。押圧力調整部208の動作については、例えば、付勢力調整部材を回動させて押圧力を調整する動作等と考えることができる。また、この場合、付勢力調整部材について、例えば、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる向きにクランプ310を付勢するバネの付勢力に抗するモーメントを付与する部材等と考えることができる。押圧力調整部208の変形例においては、付勢力調整部材として、例えば、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる向きにクランプ310を付勢するバネの付勢力を強めるモーメントを付与する部材を用いること等も考えられる。
【0058】
また、上記の説明等から理解できるように、本例によれば、例えば、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力について、簡便な機構によって適切に調整することができる。この場合、押圧力について、例えば、予め設定された複数段階(多段階)での調整を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、従動カム308の回転角度を複数段階で異ならせることで、押圧力を多段階で調整することができる。また、この場合、例えば、多段階の押圧力に対応する回転角度をデータ保持部112(
図1参照)に記憶していくことで、押圧力調整部208により、所望の押圧力への調整を適切に行うことができる。押圧力については、例えば、強い、中程度、及び弱いの3段階程度での調整を行うことが考えられる。また、データ保持部112に記憶しておくデータを拡充させることで、5段階、7段階、又はそれ以上の更に詳細な多段階での調整を行うこともできる。
【0059】
また、押圧力については、例えば、媒体の残量の減少に応じて、段階的に徐々に弱くすること等が考えられる。この場合、所定の初期値の押圧力で印刷を開始する。そして、その後、媒体の残量が所定の量に減った時点で、押圧力調整部208は、押圧力を小さくするように、押圧力を調整する。また、媒体の残量が次の所定の量に減った時点で、押圧力調整部208は、押圧力を更に小さくするように、押圧力を調整する。また、押圧力についての好ましい変化のさせ方は、印刷装置10の構成等によって異なることも考えられる。そのため、印刷装置10の構成によっては、押圧力について、例えば、媒体の残量の減少に応じて、段階的に徐々に強くすること等も考えられる。
【0060】
また、ロール状に巻かれた媒体を用いる構成に関し、印刷後の媒体を巻き取って保持する場合、好ましい押圧力について、印刷後の媒体の量に応じて変化すること等も考えられる。そして、この場合、必ずしも押圧力を徐々に一方向に変化させるのではなく、より柔軟の押圧力を変化させることが好ましい場合もある。また、この場合、印刷後の媒体の量については、例えば、印刷前の媒体の残量が減るほど、多くなると考えることができる。そのため、この場合も、媒体の残量に基づいて押圧力の調整を行うことで、印刷の動作の各時点での好ましい押圧量への調整を適切に行うことができる。
【0061】
また、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力については、例えば、媒体の残量以外のパラメータに基づいて調整を行うこと等も考えられる。この場合、押圧力調整部208において、例えば、媒体の搬送量に基づき、搬送量が一定になるように押圧力の調整を行うことが考えられる。より具体的に、この場合、印刷装置10は、例えば、媒体の搬送量を検知する搬送量検知部を更に備える。また、搬送量検知部は、例えば、副走査動作時に媒体が移動している間での単位時間あたりの媒体の搬送量を検知する。そして、制御部120は、単位時間あたりの媒体の搬送量を所定の基準量に近づけるように、押圧力調整部208に押圧力の調整を行わせる。このように構成した場合も、例えば、高い精度での媒体の搬送を適切に行うことができる。
【0062】
また、上記において説明したように、本例においては、対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力について、搬送方向において連続してつながる一つの媒体の搬送中に調整を行っている。また、これにより、例えば、媒体の搬送量の誤差を低減して、より高い品質での印刷を行うことを可能にしている。この点に関し、例えば十分に強い押圧力で対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てていれば、このような調整を行わなくても、搬送量の誤差が生じにくいようにも思われる。しかし、押圧力を強くしている場合でも、印刷の動作の進行によって媒体の残量が変化すると、例えば、搬送ローラ202の位置において媒体が受ける力の合計において、搬送方向の成分に変化が生じることが考えられる。そして、この場合、強い押圧力で対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てていても、搬送量に誤差が生じることが考えられる。特に、本例のように、ロール状に巻かれた媒体を用いる場合、このような媒体の残量の変化の影響が大きくなると考えられる。また、押圧力を過度に強くした場合、例えば、媒体に皺や破れ等が生じやすくなること等も考えられる。そのため、現実的な範囲の押圧力で対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる場合、押圧力を強くすることのみでは、搬送量の誤差が生じやすくなる。従って、押圧力を強くすることを考慮した場合にも、本例のように押圧力の調整を行うことが好ましいと考えることができる。
【0063】
また、搬送ローラ202の位置において媒体が受ける力に関し、搬送方向の成分の変化を生じにくくするためには、例えば、搬送方向における搬送ローラ202の上流側で媒体のテンション(張力)の調整を行うこと等も考えられる。また、このような構成としては、例えば、媒体と接触することで媒体にテンションを付与するテンションバー等を用いることが考えられる。しかし、本例のようにロール状に巻かれた媒体を用いる場合、このような構成によって媒体のテンションの調整を行ったとしても、通常、媒体がロール状に巻かれている部分の径の変化の影響を完全に打ち消すことは困難である。そのため、媒体のテンションの調整を行う場合であっても、本例のように押圧力の調整を行うことが好ましいと考えることができる。また、例えば幅の広い媒体(例えば、幅が1m以上の媒体等)を用いるワイドフォーマット型の印刷装置の場合、媒体の幅方向に亘って同一のテンションを付与することは、難しい。そのため、ワイドフォーマット型の印刷装置においては、媒体の残量に応じて押圧力の調整を行うことが特に好ましい。
【0064】
また、テンションバー等によるテンションの調整を行わない印刷装置10においては、媒体の残量に応じた押圧力の調整を行うことが特に好ましい。この場合、押圧力の調整を行うことで、例えば、テンションの調整を行わない場合でも、媒体の搬送をより安定して行うことができる。また、媒体の残量に応じた押圧力の調整については、テンションバー等によるテンションの調整と併用してもよい。この場合、印刷装置10は、例えば、搬送方向における搬送ローラ202よりも上流側に、テンションを調整するための構成を更に備える。このように構成すれば、例えば、媒体がロール状に巻かれている部分の径の変化の影響をより適切に低減することができる。
【0065】
また、上記の説明等から理解できるように、押圧力の調整については、例えば、媒体の搬送方向において搬送ローラ202よりも上流側にある媒体の残量の変化により重量の変化量が大きい場合に特に有用である。そして、このような観点で考えた場合、ロール状に巻かれる媒体以外の構成の媒体を用いること等も考えられる。より具体的に、媒体の残量の変化による重量の変化量が大きい構成としては、例えば、厚みの大きな媒体(例えば、非可撓性の板状の媒体等)を用いること等が考えられる。
【0066】
また、厚みの大きな媒体を用いる場合等において、媒体の厚さが位置によって異なっていると、押圧力の調整を適切に行うことが難しくなる。そのため、媒体としては、例えば、搬送方向において連続している各位置での厚さが実質的に同一な媒体を用いることが好ましい。厚さが実質的に同一なことについては、例えば、設計上の厚さが同一であること等と考えることができる。設計上の厚さが同一であることについては、例えば、基準の厚さとの差が予め設定された誤差の範囲内になっていること等と考えることができる。また、厚みの大きな媒体を用いる場合等において、例えば対向ローラ204を搬送ローラ202へ押し当てる押圧力によって媒体の厚さが大きく変化すると、搬送量の誤差の原因になること等も考えられる。そのため、対向ローラ204と搬送ローラ202との間にある部分での押圧力による媒体の厚さの変化については、押圧力を受けていない状態での媒体の厚さの10%以下(好ましくは5%以下)にすることが好ましい。また、この場合、押圧力を変化させる範囲について、例えば、媒体の厚さの変化が10%以下(好ましくは5%以下)になる範囲にすることが好ましいと考えることもできる。
【0067】
また、上記においては、制御部120が押圧力調整部208に行わせる押圧力の調整について、主に、データ保持部112に保持されている押圧力調整用データに基づいて自動的に調整を行う動作について、説明をした。これに対し、押圧力の調整については、例えば、ユーザの操作等を印刷装置10が受け付けることで、ユーザの指示に応じて調整を行ってもよい。この場合、制御部120は、例えば、ユーザの指示に応じて、データ保持部112に保持されている押圧力調整用データに基づき、押圧力調整部208に押圧力を調整させる。また、この場合、押圧力調整用データとしては、例えば、ユーザから受ける指示と押圧力とを対応付けたデータを用いることが考えられる。また、このような押圧力調整用データについては、例えば、クランプ310の他端の位置に対応する押圧力と、ユーザに示す押圧力の強度情報とを関連付けた複数の関連付けデータからなるデータ等と考えることもできる。また、この場合、押圧力調整部208の動作について、例えば、ユーザからの押圧力の強度指定に基づいてクランプ310の他端の位置を変化させる動作等と考えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば印刷装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
10・・・印刷装置、102・・・ヘッド部、104・・・プラテン、106・・・主走査駆動部、108・・・搬送駆動部、110・・・媒体残量検知部、112・・・データ保持部、12・・・本体部、120・・・制御部、14・・・繰出側媒体保持部、16・・・巻取側媒体保持部、200・・・インクジェットヘッド、202・・・搬送ローラ、204・・・対向ローラ、206・・・ローラ駆動部、208・・・押圧力調整部、210・・・従動ローラ、302・・・取付部、304・・・駆動軸、306・・・駆動カム、308・・・従動カム、310・・・クランプ、312・・・バネ、314・・・バネ、316・・・離間機構、322・・・回転軸、332・・・モータ、334・・・ギア、336・・・原点センサ、338・・・ドグ、402・・・歯車、404・・・歯車、406・・・歯車、50・・・媒体