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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/02 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
D06F58/02 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021183012
(22)【出願日】2021-11-10
(65)【公開番号】P2023070744
(43)【公開日】2023-05-22
【審査請求日】2024-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 諒
(72)【発明者】
【氏名】川村 圭三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡凜
(72)【発明者】
【氏名】門傳 陽平
(72)【発明者】
【氏名】宗野 義徳
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-55191(JP,A)
【文献】特開2014-16081(JP,A)
【文献】特開昭52-81792(JP,A)
【文献】特表2018-526607(JP,A)
【文献】実公昭46-7839(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0250822(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102918198(CN,A)
【文献】特開2018-94110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容され、吹出部と吸気部とを備える外槽と、
前記外槽に収容される内槽と、
前記内槽を回転駆動させる駆動部と、
前記筐体に収容され、前記内槽内に乾燥風を吹き出す送風部と、
前記外槽と前記内槽との間に形成され、前記吹出部と前記吸気部を連通する送風路と、
を備え、
前記送風路と異なる風路である副路を有し、
前記副路の吐出部は、前記送風路の流路方向の流れに対し、垂直以上の角度で吐出されるように接続することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記副路の流路断面積は、前記副路の流入部から前記吐出部に向けて小さくなることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機であって、
前記副路は、前記流入部の流路断面積が、前記送風路の流路断面積より大きいことを特徴とするとする洗濯機。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の洗濯機であって、
前記送風路は、前記流入部の対向面に、凸部が形成されていることを特徴とするとする洗濯機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記外槽は槽カバーを備え、
前記吐出部は前記槽カバーに設けられていることを特徴とするとする洗濯機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記内槽はバランスリングを備え、
前記吐出部は前記バランスリングに設けられていることを特徴とするとする洗濯機。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の洗濯機であって、
前記副路は前記内槽の回転軸との距離が異なった位置に複数設けられていることを特徴とするとする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に洗濯乾燥機の乾燥工程では、内槽(回転槽)内に乾燥風を吹き込み、内部に収容される衣類を温めて水分蒸発を促進することで乾燥が進行する。吹き込まれた乾燥風は、内槽の側面や底面に設けられた脱水兼通気孔を介して外槽(水槽)側に流出し、内槽と外槽間の空隙を流路とし、外槽に設けられたダクトへ回収され、ダクト内で除湿されたのち、筐体外へ排気ないし乾燥風供給装置を介して再び内槽内へ吹き込まれる。このとき、吹き込まれた乾燥風が衣類に触れることなく外槽側へ流出すると、乾燥風の熱が衣類の乾燥に供されないため、乾燥効率が低下する。
【0003】
このような乾燥効率低下を防ぐために、例えば、特許文献1では、外槽に副空気循環路を設け、内槽から外槽に流出した空気を再度内槽へ還流させ、また副空気循環路には還流用のファンを配置する洗濯乾燥機が開示されている。また、特許文献2では、回転槽の開口部が設けられた端部に弾性変形する壁部材を設け、脱水工程時、回転槽が高速回転する際には壁部材の先端が水槽から離れ、乾燥工程のように低速回転の際には壁部材の先端が水槽に近接することで回転槽と水槽のギャップに向かう乾燥風の量を抑える洗濯乾燥機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-55191号公報
【文献】特開2004-8683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の洗濯乾燥機では、内槽の外底部に還流用ファンを設け、特許文献2に記載の洗濯乾燥機では、内槽の端部に壁部材を設けている。このため、内槽が高速回転した場合に外槽との接触を抑制するため、クリアランスを十分確保する必要がある。また、追加部材によるコスト増加や、組立工程増加が懸念される。
【0006】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、乾燥効率を向上させることが可能な洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筐体と、前記筐体に収容され、吹出部と吸気部とを備える外槽と、前記外槽に収容される内槽と、前記内槽を回転駆動させる駆動部と、前記筐体に収容され、前記内槽内に乾燥風を吹き出す送風部と、前記外槽と前記内槽との間に形成され、前記吹出部と前記吸気部を連通する送風路と、を備え、前記送風路と異なる風路である副路を有し、前記副路の吐出部は、前記送風路の流路方向の流れに対し、垂直以上の角度で吐出されるように接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乾燥効率を向上させることが可能な洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の洗濯乾燥機を示す外観斜視図である。
図2図1に示す洗濯乾燥機の縦断面図である。
図3】第1実施形態に係る回転翼を示す外観斜視図である。
図4】第1実施形態に係る槽カバーを示す上面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6】第1実施形態に係る制御装置の構成図である。
図7】第1実施形態の洗濯乾燥機の制御処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態の洗濯乾燥機の乾燥運転時の制御処理を示すフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図10】第3実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図11】第4実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図12】第5実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図13】第6実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図14】第7実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図15】第8実施形態の洗濯乾燥機の縦断面図である。
図16】第8実施形態に係る乾燥副路を設けた槽カバーの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。
(第1実施形態)
図1は、洗濯乾燥機の外観斜視図、図2は洗濯乾燥機の縦断面図である。
図1に示すように、洗濯乾燥機(洗濯機)100は、外郭を構成する筐体1を備え、筐体1の上部にトップカバー2を備える。また、筐体1は、トップカバー2の前側に、電源スイッチ5や洗剤・柔軟仕上げ剤容器28(図2参照)を備える。また、筐体1は、トップカバー2の後部に、給水電磁弁4やヒータ20(図2参照)、送風ファン19(図2参照)などの給水、乾燥に関連する部品を内蔵している。また、筐体1には、衣類投入口2a(図2参照)を覆うように外蓋3が設けられている。この外蓋3の前側には、取っ手3aと、操作スイッチ6、6aや表示器25を備えた操作パネル8が設けられている。また、外蓋3は、取っ手3aを上方に引くと図2の二点鎖線で示すように中央で折り曲げて開くようになっている。なお、操作パネル8は、筐体1の底部に設けた制御装置14(図2参照)と電気的に接続されている。
【0011】
図2に示すように、洗濯乾燥機100は、筐体1に収容される外槽(水槽)10を備える。外槽10は、緩衝装置(図示せず)を介して外槽10の四方位を係合させて均等に支持することにより筐体1の略中心部に支持される。また、外槽10の下部には駆動機構12が取り付けられている。
【0012】
外槽10には、洗濯物(衣類)56を収納する洗濯兼脱水槽である内槽9が収容されている。この内槽9は、ステンレススチール製の円筒状の胴板9p、胴板9pの底側の端部に設けられる合成樹脂製の底板9q、胴板9pの上縁部に設けられる合成樹脂製の流体バランサ9cを備えて構成されている。胴板9pには、通水および通風のための多数の小さな貫通孔9a(一部のみ図示)が形成されている。また、底板9qには、通水および通風のための多数の小さな貫通孔9b(一部のみ図示)が形成されている。また、内槽9には、底部の内側に洗濯物56を攪拌する回転翼11が回転自在に設置されている。
【0013】
流体バランサ9cは、リング状に形成され、内槽9の胴板9pの上端部に設けられている。また、流体バランサ9cは、内槽9の胴板9pよりも径方向の内側に突出するように配置され、流体バランサ9cの内径が、内槽9の胴板9pの内径よりも短く(小さく)なるように構成されている。また、流体バランサ9cは、内部に比重の大きな流体を封入して構成され、内槽9の回転時に洗濯物の偏りなどによって偏心が生じたときに、流体バランサ9c内での流体の移動によって偏心を打ち消し、回転のバランスを維持する機能を有している。
【0014】
図3は回転翼の構成を示す外観斜視図である。
図3に示すように、回転翼11には、回転することによって回転翼11上に投入されている洗濯物56(図2参照)に上向きの分力を繰り返し作用させるなだらかな傾斜面11hと隆起部11aが形成され、傾斜面11hには通水および通風のための多数の小さな貫通孔11cが設けられている。内槽9と回転翼11は、クラッチ機構12a(図2参照)と洗濯脱水駆動電動機12b(図2参照)から構成される駆動機構12(駆動部)によって各々が独立または、一体となって回転駆動する。
【0015】
図2に戻って、駆動機構12は、インバータ駆動電動機または可逆回転型のコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した洗濯脱水駆動電動機12bとクラッチ機構12aと遊星歯車減速機構(図示省略)を内蔵している。また、駆動機構は、洗濯脱水駆動電動機12bとクラッチ機構12aを制御することによって、内槽9を静止または自由に回転できるように解放した状態で、回転翼11を繰り返し正逆回転させる洗濯駆動モードと、内槽9と回転翼11を一体的に同一方向に回転させる脱水駆動モードを実行する駆動機能を有する。
【0016】
外槽10の側面外側には、洗濯時や脱水時の外槽10の振動を検出するための振動センサ27が設けられている。また、外槽10の底面には、エアトラップ21aが設けられている。このエアトラップ21aの内部の圧力がチューブ21bを介して水位センサ21に伝えられ、外槽10内に溜められた水の水位を検知する。また、外槽10の下部には吸気部である通水通気口(吸気部)10bが設けられている。
【0017】
外槽10は、上面に合成樹脂製の槽カバー31を備えている。この槽カバー31は、前側から約2/3の部分には衣類投入口31aを有し、後面31bには給水入口(図示せず)、循環水入口33を有している。また、槽カバー31の前方には、洗剤・柔軟仕上げ剤入口28aが設けられている。衣類投入口31aを覆うように内蓋23がヒンジ23bで開閉自在に取り付けられている。取っ手23aを上方に持ち上げることで、内蓋23のロック(図示せず)が解除され図中一点鎖線で示すように開き、取っ手23aを下方に押すことでロックされる。
【0018】
槽カバー31の後面31bには、乾燥風51を内槽9内へ導く吹出部54が設けられている。この吹出部54の上流側は、蛇腹管29bを介してヒータ20と接続されている。なお、洗濯物56の出し入れを円滑にするためには、衣類投入口31aは広くすることが望ましい。このため、吹出部54は内槽9の外周側に設置されている。また、吹出部54の下流側は、端部が内槽9の外周底部に向けて設けられ、乾燥風51を内槽9の外周底部目掛けて吹き付けるようになっている。
【0019】
また、槽カバー31の内部には、流体バランサ9cと槽カバー31の下面間を流れる乾燥風51の流量を抑制するため、後述する乾燥副路70Aが設けられている。すなわち、外槽10は、上面側に吹出部54、下部に吸気部である通水通気口10b(吸気部)を備えており、内槽9および回転翼11との間の空間が乾燥風51の流れる送風路R1となる。なお、送風路R1とは、流体バランサ9cと槽カバー31との間を通り、内槽9の外周面と外槽10の内周面との間を通り、内槽9の底壁と外槽10の底壁との間を通る流路と、内槽9の内側を通り、貫通孔9aを外槽10に向けて通り、内槽9の外周面と外槽10の内周面との間を通り、内槽9の底壁と外槽10の底壁との間を通る流路と、内槽9の内側を通り、貫通孔9bを外槽10に向けて通り、内槽9の底壁と外槽10の底壁との間を通る流路とを意味している。
【0020】
洗濯物56を乾燥するための乾燥機構(送風部)D1は、送風ファン19とヒータ20と乾燥ダクト22と除湿機構22aとから構成されている。乾燥ダクト22は、通水通気口10bと吹出部54との間を接続する。乾燥ダクト22の途中には、除湿機構22a、リントフィルタ(図示せず)、送風ファン19、ヒータ20、温度センサ26が設けられている。送風ファン19を運転し、ヒータ20に通電すると、蛇腹管29bを通って吹出部54から内槽9内に乾燥風51が吹き込み、洗濯物56を温め水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、貫通孔9a、9bを通って外槽10に出て、通水通気口10bから乾燥ダクト22に吸い込まれ、除湿機構22aを流下する冷却水で冷却除湿されて乾いた低温空気となり、ヒータ20で再度加熱され、内槽9内に吹き込むように循環する。なお、乾燥ダクト22内で冷却除湿された空気はリントフィルタ(図示せず)を通して糸屑が捕集される。また、乾燥中は、排水弁15が開放され、除湿機構22aを流下する冷却水と除湿された水分が排水ホース24を介して外部に排出される。
【0021】
ゴム製の蛇腹管29a、29b、29c、29d、29eは、振動変位する外槽10や槽カバー31と固定側(筐体1やトップカバー2など)に設けた乾燥ダクト22や給水電磁弁4、循環ポンプ16などとの接続用に用いられる。
【0022】
給水電磁弁4は、本実施形態では4方向に給水を行えるよう4連弁を使用している。一つ目は洗濯給水電磁弁で、給水入口に接続され、内槽9内に給水する。二つ目は洗剤給水電磁弁で、洗剤・柔軟仕上げ剤容器28の洗剤投入室に接続されている。三つ目は仕上げ剤給水電磁弁で、洗剤・柔軟仕上げ剤容器28の仕上げ剤投入室に接続されている。洗剤・柔軟仕上げ剤容器28は、洗剤・柔軟仕上げ剤入口28aとつながっており、外槽10内に洗剤や仕上げ剤が供給される。四つ目は除湿機構22aに接続されている。
【0023】
洗濯水の循環パイプ17は、外槽10の底部に設けた通水通気口10bと循環水入口33との間を接続する。循環パイプ17の途中には、機体底部に設けた循環ポンプ16、異物トラップ18があり、異物トラップ18には排水弁15を介して排水ホース24が接続されている。循環ポンプ16を運転すると、外槽10内の洗濯水は、外槽10の底部に設けた通水通気口10bから循環パイプ17を通り、外槽10の上部に運ばれ、槽カバー31の後面の循環水入口33から後面31bの内槽9側に設置された循環水カバー30に入り、ノズル34から内槽9内に散水される。
【0024】
図4は、槽カバーの上面図である。
図4に示すように、槽カバー31は、後面に給水入口32と循環水入口33、および吹出部54を備える。また、槽カバー31は、中心部に衣類投入口31aを、前面に洗剤・柔軟仕上げ剤入口28aを備えている。
【0025】
また、槽カバー31には、破線で示すように乾燥副路70Aが設けられている。この乾燥副路70Aは、略円環状に配置されている。なお、乾燥副路70Aは、完全な円環ではなく、適宜切れ目が設けられている。
【0026】
なお、槽カバー31は樹脂成型によって構成されているが、一体に設けた吹出部54や乾燥副路70Aには高温の乾燥風が流れる。そのため、温度による変形を抑えるために80度以上の耐熱性のある材料(例えば、ガラス繊維を含む樹脂)で作られるのが望ましい。
【0027】
図5は、図4のA-A断面図である。なお、図5では、流体バランサ9cと内槽9と外槽10を併せて図示している。
図5に示すように、洗濯乾燥機100(図1参照)は、外槽10と内槽9との間に形成され、吹出部54(図2参照)と通水通気口10b(図2参照)とを連通する送風路R1を備えている。洗濯乾燥機100は、送風路R1とは異なる乾燥副路(副路)70Aを有している。この乾燥副路70Aは、槽カバー31に設けられている。
【0028】
また、槽カバー31は、槽カバー上板31cと槽カバー下板31dとの二枚を重ね、比較的厚みを持たせた構成にしている。これにより、槽カバー31の内部に乾燥副路70Aを設け易いだけでなく、流路の壁面を分割して樹脂成型できるため、容易な成形が可能になる。また、槽カバー上板31cと槽カバー下板31dとの間には、弾性部材であるパッキン75a、75b(図8参照)が設けられており、槽カバー31の気密性を高めた構造としている。
【0029】
また、乾燥副路70Aは、流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74から風(乾燥風)を流入する流入部(流入口)71A、風(乾燥風)を空隙74に吐出して戻す吐出部(吐出口)72A、および流入部71Aと吐出部72Aとを連通する流路73Aによって構成される。
【0030】
また、乾燥副路70Aは、軸方向に切断したときの断面視において略U字状に形成されている。なお、U字状のように流路73Aを短く形成することで、圧力損失を低減できる。また、流入部71Aおよび吐出部72Aは、流体バランサ9cの上面(流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74)と対向する位置、換言すると流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74(送風路R1)に面する位置に形成されている。なお、流入部71Aの位置は、任意であり、空隙74に面している構成に限定されない。
【0031】
また、乾燥副路70Aの吐出部72Aは、空隙(送風路)74の流路方向S2の流れ(上流側から下流側に向かう流れ)に対し、垂直以上の角度αで接続されている。すなわち、吐出部72Aの流路方向S1と空隙74の流路方向S2とが成す角度αは、90°以上に設定される。また、角度αは、流路方向S2に対して槽カバー31側に回転して流路方向S1に至る角度である。また、空隙74を流れる乾燥風の流れに対して、吐出部72Aから吐出される乾燥風が対向する向きとなる。なお、角度αの上限は、180°以下に設定される。
【0032】
また、空隙74に流入した乾燥風51aは、乾燥副路70Aの流入部71Aにおいてそのまま空隙74を流れる乾燥風51bと、流路73Aへ流れる乾燥風51cへと分流される。乾燥風51cは、そのまま流路73Aを通って吐出部72Aへ流れ込み、空隙74へと戻される。このとき、吐出部72Aから吹き出る乾燥風51dは、空隙74を流れる乾燥風51bと対向する向きに吹き出すことで、吐出部72A周辺の流れが乱され渦が発生し、空隙74の通風抵抗が増大する。すなわち、吐出部72Aから吹き出る乾燥風51dの流れ方向と、空隙74を上流から下流に向けて流れる乾燥風51bの流れ方向の成す角度αは90°以上となる。これによって、空隙74に流入する乾燥風51aの風量が減少し、内槽9内の洗濯物56(図2参照)に吹き付けられる乾燥風の風量が増加するので、衣類の乾燥効率が向上する。
【0033】
ところで、吐出部72Aから吹き出す乾燥風51dの風量が大きいほど、吐出部72A周辺の流れが乱され易いため、空隙74の通風抵抗が増大する。そこで、本実施形態では、流入部71Aの流路断面積C1は、空隙74の流路断面積C2より大きい。これにより、乾燥風51aの分流がより促され、流入部71Aに乾燥風が流れ易くなる。
【0034】
また、本実施形態では、乾燥副路70Aの流路断面積は、流入部71Aから吐出部72Aに向けて小さくなる。すなわち、流路73Aの流路断面積C3よりも吐出部72Aの流路断面積C4が小さくなるように構成されている。乾燥副路70Aは、流入部71Aの流路断面積C1より、吐出部72Aの流路断面積C4の方が狭く(小さく)なるように構成されている。これにより、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51c、51dの流速が徐々に速くなり、流入部71A周辺の圧力に対して吐出部72A周辺の圧力が小さくなるため、乾燥副路70Aに風が流れ易くなる。その結果、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51c、51dの風量がさらに増加するため、さらに空隙74の通風抵抗が増加する。
【0035】
このような構成を備えた洗濯乾燥機100においては、洗濯から乾燥までの一連の動作が自動的に行われる。以下でこれらの動作内容について説明する。図6は洗濯乾燥機の制御部のブロック図である。
図6に示すように、マイクロコンピュータ(制御装置)40は、各スイッチ6、6aに接続される操作ボタン入力回路41や水位センサ21、温度センサ26、振動センサ27と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。また、マイクロコンピュータ40からの出力は駆動回路42に接続され、給水電磁弁4、クラッチ機構12a(図6ではクラッチと略記)、排水弁15、循環ポンプ16、洗濯脱水駆動電動機12b(図6では電動機と略記)、送風ファン19、ヒータ20などに接続され、これらの開閉や回転、通電を制御する。また、マイクロコンピュータ40は、使用者に洗濯乾燥機100の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオードの表示器25や発光ダイオード7、ブザー43に接続される。
【0036】
マイクロコンピュータ40は電源スイッチ5が押されて電源が投入されると起動し、図7および図8に示すような洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。以下、マイクロコンピュータ40(制御装置)による制御フローを説明する。まず、洗濯および脱水工程について説明する。
【0037】
≪ステップS101≫
洗濯乾燥機の状態確認および初期設定を行う。
【0038】
≪ステップS102≫
操作パネル8の表示器25を点灯表示し、操作スイッチ6からの指示入力に従って洗濯コースを設定する。指示入力がない状態では、標準の洗濯コースまたは前回実施の洗濯コースを自動的に設定する。
【0039】
≪ステップS103≫
操作パネル8の操作スイッチ6におけるスタートスイッチ6aからの指示入力を監視して処理を分岐する。
【0040】
≪ステップS104≫
洗剤量検出処理を実行する。この洗剤量検出は、洗い水を給水する前の乾布状態において、内槽9を静止させた状態で回転翼11を一方向に回転させたときに、回転翼11に作用する回転負荷量に基づいて洗濯物56の布量を検出するように、駆動機構12における洗濯脱水駆動電動機12bとクラッチ機構12aを制御し、検出した布量に基づいて洗剤の適量(洗剤量)を求めることによって行う。
【0041】
洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。具体的には、布量の検出は、洗濯脱水駆動電動機12bとしてインバータ駆動電動機を使用した構成では、洗濯脱水駆動電動機12bを回転させるように所定時間給電した時の到達回転速度を検出することによって行う。洗濯脱水駆動電動機12bとしてコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した構成では、洗濯脱水駆動電動機12bを飽和回転速度まで上昇させるように給電した状態で断電した後の惰性回転減速特性を検出することによって行う。そして、好ましい洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
【0042】
洗濯水量は、布量が所定の布量の範囲(適量)内のときには回転翼11を越えない水位を維持して外槽10の底部に溜まるように洗濯水量を設定する。また、この検出結果(布量)に基づいて洗濯時間を求めて設定する。布量検出が行われない時には、標準の洗濯時間を設定する。
【0043】
≪ステップS105≫
求めた洗剤量を操作パネル8の表示器25に表示する。
【0044】
≪ステップS106≫
洗剤給水電磁弁を開き、洗剤・柔軟仕上げ剤容器28の洗剤投入室に洗剤給水を実行する。使用者は、表示された量の粉末洗剤や液体洗剤を洗剤・柔軟仕上げ剤容器28の洗剤投入室に投入した後、外蓋3を閉じるように操作する。洗剤給水が流れている洗剤投入室に投入された粉末洗剤や液体洗剤は、洗剤給水の水と共に洗剤・柔軟仕上げ剤入口28aを通って外槽10の底部に落下する。
【0045】
≪ステップS107≫
洗剤溶かし水位まで給水したら給水を停止する。洗剤溶かし水位とは、この後の洗剤溶かし工程(ステップS108)で内槽9を回転させたときに、内槽9の底で給水した水と洗剤を攪拌するのに十分な水量で、かつ水面が回転翼11の下面の高さより低くなる(洗濯物56が洗剤溶かし前に濡れない)ように設定したものである。
【0046】
≪ステップS108≫
内槽9と回転翼11を一体的に一方向に緩速回転させることによって、該内槽9の底面で外槽10の底部に投入された洗剤溶かし水と粉末洗剤や液体洗剤を攪拌して、高洗剤濃度の洗い水を生成する洗剤溶かしを実行する。
【0047】
≪ステップS109≫
前洗いを実行する。この前洗いは、内槽9を静止させた状態で回転翼11を正逆回転させる攪拌を間欠的に行い、回転翼11の正逆回転中に循環ポンプ16を運転することによって外槽10の底部の洗剤水をノズル34から洗濯物56上に降り掛ける。このとき、高濃度の洗剤水が洗濯物56に散布されるため、洗剤の浸透作用で洗濯物56にむらなく浸透する。洗濯物56に浸透した高濃度の洗剤水は、油の溶解能力が高く、皮脂汚れなどの油脂汚れを溶解し、洗濯物56から汚れが浮き上がらせる効果が非常に大きく、高い洗浄力が得られる。次に、回転翼11と循環ポンプ16の停止期間中に、水位センサ21の検出信号を参照しながら洗剤給水電磁弁および洗濯給水電磁弁を開いて、水位が設定水位を越えないように給水する。この運転を複数回繰り返すことによって、洗濯物56を洗い水に馴染ませて回転翼11上に分散させるように行う。
【0048】
≪ステップS110≫
本洗いを実行する。この本洗いでは、先ず、前述と同様な方法で布量検出を行う、設定されている洗濯時間を補正して設定する。その後に、内槽9を静止させた状態で回転翼11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して、外槽10の底部に溜った洗い水をノズル34から洗濯物56に降り掛ける洗い水循環を行う攪拌と、循環ポンプ16の運転を停止して洗い水の循環を止めた状態で回転翼11を正逆回転させる布ほぐし攪拌を繰り返す。回転翼11の正逆回転により、洗濯物56は内槽9内で円周方向および半径方向に入れ替わり、満遍なく洗浄される。最後に、循環ポンプ16の運転を停止して洗い水の循環を止めた状態で、回転翼11を正逆回転させる均一化攪拌を実行して本洗い時間を終了させるようにする。
【0049】
≪ステップS111≫
第1回目の溜めすすぎを実行する。この溜めすすぎでは、始めに、排水弁15を開いて外槽10の底部に溜っている洗い水を排水した後に、内槽9と回転翼11を一体的に一方向に回転させて洗濯物56に含まれている洗い水を遠心脱水する。この洗い水脱水時の内槽9と回転翼11の回転速度は、後述する最終脱水における回転速度(約1100r/min)と同様に設定し、高い脱水率を実現するように脱水運転を行う。
【0050】
その後、排水弁15を閉じて内槽9と回転翼11を一体的に一方向に緩速回転させながら、洗濯給水電磁弁を開放して水道水を散水口から回転翼11上の洗濯物56に降り掛けるように給水する。
【0051】
次に、内槽9と回転翼11の回転を停止した状態で、外槽10の底部の水位が設定水位を越えないようにすすぎ水給水を行う。そして、本洗いにおける押し洗い攪拌と同様に、内槽9を静止させた状態で回転翼11を正逆回転させながら、循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜ったすすぎ水をノズル34から回転翼11上の洗濯物56に降り掛けるように循環させる、すすぎ水循環攪拌すすぎを実行する。そして、回転翼11の回転と循環ポンプ16の運転を停止した状態で、外槽10の底部に溜るすすぎ水の水位を検出しながら、水位が設定水位を越えないように給水を行う。そして、内槽9を静止させた状態で回転翼11を正逆回転させながら、循環ポンプ16を運転して、外槽10の底部に溜ったすすぎ水をノズル34から回転翼11上の洗濯物56に降り掛けるように循環させる、すすぎ水循環攪拌すすぎを実行する。洗い時と同様、内槽9内の洗濯物56は円周方向と半径方向に入れ替わるので、すすぎ水が洗濯物56に満遍なくかかり、洗剤分が希釈される。その後、循環ポンプ16を停止してすすぎ水の循環を止めた状態で、回転翼11の正逆回転を継続する均一化攪拌を行う。
【0052】
≪ステップS112≫
第2回目の溜めすすぎを実行する。この第2回目の溜めすすぎは、柔軟仕上げ剤給水電磁弁を開いて洗剤・柔軟仕上げ剤容器28における柔軟仕上げ剤投入室に給水することによって、該柔軟仕上げ剤投入室内の柔軟仕上げ剤を外槽10の底部に導入する制御を付加する。それ以外の動作は、第1回目の溜めすすぎと同様に行う。
【0053】
≪ステップS113≫
最終脱水処理を実行する。最終脱水は、排水弁15を開放としたままの状態で、内槽9と回転翼11を一体的にして、一方向に高速回転させるように駆動機構を運転し、内槽9内の洗濯物56を遠心脱水するように行う。なお、この最終脱水の運転時間は、所望の脱水率が得られる時間に設定する。
【0054】
≪ステップS114≫
洗濯乾燥コースが設定されているかどうかを確認して、処理を分岐する。洗濯乾燥コースが選ばれていない場合は洗濯完了であり、この制御フローを終了する。一方、洗濯乾燥コースが選ばれている場合は乾燥工程に入る。
【0055】
洗濯工程が終了したのち、乾燥工程を実施する。図8はこの乾燥工程の制御フローである。以下この制御フローについて説明する。
≪ステップS200≫
図8に示すように、乾燥工程では、さらに洗濯物56の脱水を行うために高速で内槽9を回転させる。なお、先の洗濯工程で充分な脱水が行われている場合はこのステップを省略することができる。
【0056】
≪ステップS201≫
ステップS200を所定時間行うための処理であり、決められた規定時間を経過するまで脱水工程を実行する。このステップも先の洗濯工程で充分な脱水が行われている場合は、省略することができる。
【0057】
≪ステップS202≫
送風ファン19およびヒータ20を運転し、吹出部54から内槽9内の洗濯物56へ乾燥風を吹き付ける。
【0058】
≪ステップS203≫
内槽9と回転翼11を一体的に緩速回転させ、内槽9を静止させた状態で回転翼11を正逆回転を行うことにより、洗濯物56全体を攪拌しながら加熱させ乾燥を行う。
【0059】
≪ステップS204≫
温度センサ26により乾燥風51の温度を監視しながら実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに乾燥終了と判断する。洗濯物56が乾燥していない場合は、ステップS203の内槽9または、回転翼11を回転させて再度ステップS204の判断を行う。
【0060】
≪ステップS205≫
ヒータ20をOFFにした後、更に送風ファン19をOFFにし、内槽9と回転翼11の回転を停止させて乾燥工程を終了する。
【0061】
なお、本実施形態例では熱源としてヒータ20を用いて説明したが、熱源はヒートポンプによるものでも同様の効果を得ることができる。
【0062】
ところで、乾燥中、吹出部54から吹き出した乾燥風51(図2参照)は、内槽9内の洗濯物56に吹付けられ、洗濯物56を温めたのち、内槽9槽壁面(胴板)に設けられた貫通孔9aや、回転翼11に設けられた貫通孔9bによって、外槽10側へと流出する(図2参照)。このとき、内槽9と回転翼11に設けられた貫通孔9a、9bには通風抵抗が存在するため、乾燥風51の大部分は内槽9内へ吹き込まれるものの、一部は内槽9内へと入らず、内槽9と外槽10との隙間である、空隙74へと分流される。分流された乾燥風51a(図5参照)は内槽9の外側に回り込み、洗濯物56に吹付けられないため、乾燥効率低下につながる。特に、内槽9の容積に対して、投入されている洗濯物56の量が多い場合、洗濯物56が内槽9の槽壁面に設けられた貫通孔9aや、回転翼11に設けられた貫通孔9bを塞いでしまうため、内槽9の通風抵抗が増大し、相対的に通風抵抗が小さくなる空隙74から乾燥風が抜け易くなる。
【0063】
また、外槽10に設けられた槽カバー31と、内槽9に設けられた流体バランサ9cとの間の距離を近づけた場合も、空隙74の通風抵抗を増加させることが可能である。しかし、脱水時などに内槽9が高速回転した際、内槽9が外槽10に接触するおそれがあり、トレードオフの関係が生じる。本実施形態では、槽カバー31に乾燥副路70Aを設けることで、流体バランサ9cと槽カバー31との距離を近づけることなく空隙74の通風抵抗の増加が可能となり、クリアランスとの両立が容易になる。
【0064】
このように構成された第1実施形態の洗濯乾燥機100は、筐体1と、筐体1に収容され、吹出部54と通水通気口10bとを備える外槽10と、外槽10に収容される内槽9と、内槽9を回転駆動させる駆動機構12と、筐体1に収容され、内槽9内に乾燥風を吹き出す乾燥機構D1と、外槽10と内槽9との間に形成され、吹出部54と通水通気口10bとを連通する送風路R1と、を備える(図5参照)。また、洗濯乾燥機100は、送風路R1と異なる風路である乾燥副路70Aを有する。乾燥副路70Aの吐出部72Aは、送風路R1の空隙74の流路方向S2に対し、垂直以上の角度で吐出される。これによれば、空隙74の通風抵抗を増加させ、空隙74を流れる乾燥風51bの風量を抑制することで、内槽9内に吹き込む乾燥風51の風量が増加し、洗濯物56の乾燥効率が向上する。
【0065】
また、第1実施形態において、乾燥副路70Aの流路断面積C1,C3,C4は、乾燥副路70Aの流入部71Aから吐出部72Aに向けて小さくなる(図5参照)。これによれば、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51c、51dの流速が徐々に速くなり、流入部71A周辺の圧力に対して吐出部72A周辺の圧力が小さくなるため、乾燥副路70Aに風が流れ易くなる。その結果、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51c、51dの風量がさらに増加するため、空隙74の通風抵抗がさらに増加する。
【0066】
また、第1実施形態において、乾燥副路70Aは、流入部71Aの流路断面積C1が、空隙74の流路断面積C2より大きい。これによれば、空隙74に流入した乾燥風51aが乾燥副路70Aに流れ易くなり、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51cの風量が増加するため、空隙74の通風抵抗がさらに増加する。
【0067】
また、第1実施形態において、外槽10は槽カバー31を備え、吐出部72Aは槽カバー31に設けられている(図5参照)。これによれば、槽カバー上板31cと槽カバー下板31dとを組み合わせるだけであるので、乾燥副路70Aを作り易くなる。
【0068】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る乾燥副路の断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図9に示すように、第2実施形態は、乾燥副路70Aを槽カバー31に設けた第1実施形態に替えて、乾燥副路70Bを流体バランサ9cに設けたものである。この乾燥副路70Bは、乾燥副路70Aを上下逆さまにした形状であり、空隙74から風(乾燥風)を流入する流入部71Bと、風(乾燥風)を空隙74に吐出して戻す吐出部72B、および流入部71Bと吐出部72Bとを連通する流路73Bによって構成される。
【0069】
また、乾燥副路70Bは、軸方向に切断したときの断面視において略U字状に形成されている。また、流入部71Bおよび吐出部72Bは、槽カバー31の下面(流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74)と対向する位置、換言すると流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74(送風路R1)に面する位置に形成されている。なお、流入部71Bの位置は、任意であり、空隙74に面している構成に限定されない。
【0070】
また、乾燥副路70Bの吐出部72Bは、空隙(送風路)74の流路方向S4の流れに対し、垂直以上の角度βで接続されている。また、吐出部72Bの流路方向S3と空隙74の流路方向S4とが成す角度βは、第1実施形態と同様に、90°以上に設定されている。また、角度βは、流路方向S4に対して流体バランサ9c側に回転して流路方向S3に至る角度である。また、空隙74を流れる乾燥風の流れに対して、吐出部72Bから吐出される乾燥風が対向する向きとなる。なお、角度βの上限は、180°以下に設定される。
【0071】
第2実施形態では、第1実施形態のように槽カバー31に乾燥副路70Aを設けた場合と同様に空隙74の通風抵抗が増加し、衣類の乾燥効率が向上する。
【0072】
また、第2実施形態では、内槽9は流体バランサ9cを備え、吐出部72Bは流体バランサ9cに設けられている(図9参照)。これによれば、吐出部72Aを槽カバー31に設けた場合と同様に、乾燥副路70Bを作り易くなる。
【0073】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図10に示すように、第3実施形態は、単一の乾燥副路70Aを備えた第1実施形態に替えて、乾燥副路70Aが内槽9の回転軸O(図2参照)を中心として槽カバー31内に複数設けたものである。3つの乾燥副路70Aは、いずれも同じ形状であり、それぞれ、流入部71A、吐出部72Aおよび流路73Aを備えている。
【0074】
第3実施形態では、各吐出部72A周辺において流れが乱されるため、乾燥副路70Aが一つの場合よりもさらに空隙74の通風抵抗が増加し、より衣類の乾燥効率が向上する。
【0075】
このように、第3実施形態では、乾燥副路70Aは内槽9の回転軸Oとの距離が異なった位置に複数設けられている。これによれば、空隙74の通風抵抗が単一の乾燥副路70Aを設けた場合よりも増加し、衣類の乾燥効率がさらに向上する。
【0076】
(第4実施形態)
図11は、第4実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図11に示すように、第4実施形態は、第1実施形態の乾燥副路70Aに凸部材75(凸部)を追加したものである。なお、図示省略しているが、第1実施形態と同様に、乾燥副路70Aの吐出部72Aは、空隙(送風路)74の流路方向S2に対し、垂直以上の角度αで接続されている。
【0077】
凸部材75は、流入部71Aの対向面である流体バランサ9cに設けられている。なお、乾燥副路70Aは、乾燥工程において機能させるものであり、内槽9の回転は低速で回転するだけである。このため、内槽9の回転停止時に凸部材75が流入部71Aに対向する位置であれば、乾燥時に凸部材75が流入部71Aの対向位置から外れることはない。
【0078】
第4実施形態では、空隙74を流れる乾燥風51の主流の向きが、流入部71側に変わるため、乾燥副路70Aに乾燥風51aが分流しやすくなる。これにより、乾燥副路70Aを流れる乾燥風51bの風量が増加するため、吐出部72A周辺部の流れが乱れやすく、空隙74の通風抵抗が凸部材75が設けられていない場合に比べて増加するため、衣類の乾燥効率がさらに向上する。
【0079】
このように第4実施形態では、乾燥副路70Aの流入部71Aの対向面(流体バランサ9cの上面)に、凸部材75が形成されている。これによれば、空隙74に流入した乾燥風51aを乾燥副路70Aに導入し易くなり、空隙74の通風抵抗が凸部材75が設けられていない場合よりも増加させることができ、衣類の乾燥効率をさらに向上させることができる。
【0080】
(第5実施形態)
図12は、第5実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図12に示すように、第5実施形態は、第1実施形態の乾燥副路70Aと、第2実施形態の乾燥副路70Bと、を組み合わせた構成である。なお、第5実施形態では、乾燥副路70Aと乾燥副路70Bとが上下対称形状となるように構成されている。また、乾燥副路70Aの流入部71Aと乾燥副路70Bの流入部71Bとが対向し、乾燥副路70Aの吐出部72Aと乾燥副路70Bの吐出部72Bとが対向している。なお、第5実施形態では、乾燥副路70Aの流入部71Aおよび吐出部72Aと、乾燥副路70Bの流入部71Bおよび吐出部72Bとが空隙74の乾燥風51bの流れ方向に互いに一致している場合を例に挙げたが、流れ方向に互いにずれた配置にしてもよい。
【0081】
第5実施形態では、吐出部72A、72B周辺において流れが乱されるため、乾燥副路70A(または乾燥副路70B)が一つの場合よりもさらに空隙74の通風抵抗が増加し、より衣類の乾燥効率が向上する。
【0082】
なお、第5実施形態では、槽カバー31に単一の乾燥副路70Aを設け、流体バランサ9cに単一の乾燥副路70Bを設けた場合を例に挙げて説明したが、槽カバー31に複数の乾燥副路70Aを設け、かつ、流体バランサ9cに複数の乾燥副路70Bを設けてもよい。
【0083】
(第6実施形態)
図13は、第6実施形態に係る乾燥副路の断面図である。
図13に示すように、第6実施形態は、第1実施形態の乾燥副路70Aに替えて、乾燥副路70Cを備えている。なお、第6実施形態は、流入部が空隙74に面するように限るものではないことを示す実施形態である。
【0084】
乾燥副路70Cは、流入部71Cが槽カバー31に形成された衣類投入口31a(内周壁)に面するように構成されている。また、乾燥副路70Cは、流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74と対向する位置に吐出部72C、流入部71Cと吐出部72Cとを連通する流路73Cと、を備えている。
【0085】
第6実施形態は、槽カバー31の衣類投入口31aに面する側に流入部71Cを設けた場合であっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
なお、第6実施形態では、槽カバー31の衣類投入口31aに面する側に流入部71Cを設けた場合を例に挙げて説明したが、第2実施形態の乾燥副路70Bにおいて流入部71Bを流体バランサ9cの開口部9c1(図9参照)に面する側に形成してもよい。この場合も、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0087】
(第7実施形態)
図14は、第7実施形態に係る乾燥副路の断面図である。なお、第1実施形態ないし第6実施形態では、吐出部72A、72B、72Cが流体バランサ9cと槽カバー31との間の空隙74に面するように接続された場合を例に挙げて説明したが、第7実施形態では、吹出部54と通水通気口10bとを連通する送風路R1とは異なる風路である乾燥副路70Dを設けたものである。
【0088】
乾燥副路70Dは、流体バランサ9cと外槽10との間の空隙74Aから風(乾燥風)を流入する流入部(流入口)71Dと、風(乾燥風)を空隙74に吐出して戻す吐出部(吐出口)72D、および流入部71Dと吐出部72Dとを連通する流路73Dによって構成される。
【0089】
また、乾燥副路70Dは、軸方向に切断したときの断面視において略U字状に形成されている。また、流入部71Dおよび吐出部72Dは、流体バランサ9cの外周面と外槽10との間の空隙74Aと対向する位置に形成されている。なお、流入部71Aの位置は、任意であり、空隙74Aに面している構成に限定されない。
【0090】
また、乾燥副路70Dの吐出部72Dは、空隙(送風路)74Aの流路方向S6の流れに対し、垂直以上の角度γで接続されている。また、吐出部72Dの流路方向S5と空隙74Aの流路方向S6とが成す角度γは、第1実施形態の角度αおよび第2実施形態の角度βと同様に、90°以上に設定されている。また、角度γは、流路方向S6に対して外槽10側に回転して流路方向S5に至る角度である。また、空隙74を流れる乾燥風の流れに対して、吐出部72Dから吐出される乾燥風が対向する向きとなる。なお、角度γの上限は、180°以下に設定されている。
【0091】
(第8実施形態)
図15は、第8実施形態のドラム式洗濯乾燥機の縦断面図である。図16は、第8実施形態に係る乾燥副路を設けた槽カバーの拡大断面図である。なお、第1実施形態ないし第7実施形態については、縦型の洗濯乾燥機を例に挙げて説明したが、ドラム式の洗濯乾燥機(洗濯機)にも適用できる。
【0092】
次に、洗濯乾燥機200(洗濯機)の概略構造について簡単に説明する。
図15に示すように、筐体201の内側には外槽202が備えられる。外槽202は下部の複数個のサスペンション206により支持されている。
【0093】
外槽202の内側には回転ドラムである内槽203が設けられている。内槽203は、有底円筒形状に形成され、外槽202内において回転可能に支持されている。また、内槽203は、ドア204を開けることで洗濯物56を投入できるようになっている。また、内槽203は、側壁(周壁)である円筒部に遠心脱水および通風用の多数の貫通孔203a(一部のみ図示)を有する。また、内槽203の開口部の外周には、脱水時の洗濯物56のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサ205が設けられている。また、内槽203の内側には、洗濯物56を持ち上げる複数個のリフタ207が設けられている。
【0094】
また、内槽203は、フランジ208に連結された主軸209を介して駆動用モータ210(駆動部)に直結されている。なお、内槽203を駆動させる方式としては、本実施形態に限定されず、主軸に固定されたプーリと外槽に固定したモータとをベルトを介して連結させ、内槽203を駆動させるいわゆるベルト駆動式の構成でもよい。
【0095】
外槽202の前部には、乾燥副路170を備えた槽カバー231が設けられている。外槽202の開口部には、弾性体からなるゴム系のパッキン211が取り付けられている。このパッキン211は、外槽202内とドア204との気密性および水密性を維持する役割をしている。これにより、洗い、すすぎ及び脱水時の水漏れの防止が図られている。内槽203は、側壁に遠心脱水および通風用の多数の貫通孔203a(一部のみ図示)が設けられている。また、外槽202の水受け部212に設けられた排水口216は、排水弁213を介して排水ホース214に接続されている。また、オーバーフローホース215はドラム背面の乾燥ダクト217の下部に取り付けられており、排水弁213の手前で排水口216からのホースと合流させている。すなわち、排水弁213が開となれば、排水ホース214と連通される構成となっている。
【0096】
外槽202の下部には洗濯水の循環ポンプ218が設けられている。循環ポンプ218を駆動すると、水受け部212の水は、排水口216から糸くずフィルタ225を介して循環ポンプ218に入る。循環ポンプ218で昇圧された洗濯水は、外槽202の上部に設けた散水ノズル(図示せず)まで汲み上げられ、内槽203内の洗濯物56に散布される。洗濯水は洗濯物56を通ったのち再び水受け部212に戻されるため、この循環を繰り返すことで、少ない水で洗濯物56を湿らせ、洗剤を浸透させることができる。
【0097】
内槽203内の洗濯物56を乾燥させる乾燥機構(送風部)D2は、送風ファン219と、ヒータ220と、乾燥ダクト217と、除湿機構217aと、よって構成されている。送風ファン219は、外槽202から離して筐体1に固定されている。ヒータ220の出口と吹出部221は、柔軟構造のベローズ222が接続されている。乾燥ダクト217は、外槽202に設けられた通気口223(吸気部)と送風ファン219との間を蛇腹管224を介して接続する。乾燥ダクト217は外槽202ら離して筐体201の背面に固定(図示せず)され、その途中には、除湿機構217aが設けられている。
【0098】
このように構成された洗濯乾燥機200は、外槽202と内槽203との間に形成され、吹出部221と通気口223を連通する送風路R2を備えている。なお、送風路R2とは、流体バランサ205と槽カバー231との間を通り、内槽203の外周面と外槽202の内周面との間を通る流路と、内槽203の内側を通り、貫通孔203aを外槽202に向けて通り、内槽203の外周面と外槽202の内周面との間を通る流路と、を意味している。
【0099】
このように構成された洗濯乾燥機200において、送風ファン219を運転し、ヒータ220に通電すると、吹出部221から内槽203内に乾燥風51が吹き込み、洗濯物56を温め水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、貫通孔203aを通り、外槽202に出て、通気口223から乾燥ダクト217に吸い込まれる。このとき、第1実施形態と同様に、内槽203には通風抵抗が存在するため、乾燥風51の一部が外槽202と内槽203との間の空隙174(通風路)に流れ込むことになる。
【0100】
図16に示すように、槽カバー231は、槽カバー上板231aと槽カバー下板231bの二枚で構成され、内部に乾燥副路170(副路)を備えている。また、槽カバー上板231aと槽カバー下板231bとの間には、弾性部材であるパッキン232bが設けられており、槽カバー31の気密性を高めた構造としている。
【0101】
乾燥副路170は、流体バランサ205と槽カバー231との間の空隙174から風(乾燥風)を流入する流入部(流入口)171と、風(乾燥風)を空隙174に吐出して戻す吐出部(吐出口)172、および流入部171と吐出部172とを連通する流路173によって構成される。
【0102】
また、乾燥副路170は、外槽202の軸方向に切断したときの断面視において略U字状に形成されている。また、流入部171および吐出部172は、流体バランサ205の前面(流体バランサ205と槽カバー231との間の空隙174と対向する位置、換言すると流体バランサ205と槽カバー231との間の空隙174(送風路R2)に面する位置に形成されている。なお、流入部171の位置は、任意であり、空隙174に面している必要はない。
【0103】
また、乾燥副路170の吐出部172は、空隙(送風路)174の流路方向S20の流れ(上流側から下流側に向かう流れ)に対し、垂直以上の角度δで接続されている。すなわち、吐出部172の流路方向S10と空隙174の流路方向S20とが成す角度δは、90°以上に設定される。また、角度δは、流路方向S20に対して槽カバー231側に回転して流路方向S10に至る角度である。また、空隙174を流れる乾燥風の流れに対して、吐出部172から吐出される乾燥風が対向する向きとなる。なお、角度δの上限は、180°以下に設定される。
【0104】
このように構成された洗濯乾燥機200は、筐体201と、筐体201に収容され、吹出部221と通気口223とを備える外槽202と、外槽202に収容される内槽203と、内槽203を回転駆動させる駆動用モータ210と、筐体201に収容され、内槽203内に乾燥風51を吹き出す送風路R2と、外槽202と内槽203との間に形成され、吹出部221と通気口223を連通する送風路R2と、を備える。また、洗濯乾燥機200は、送風路R2と異なる風路である乾燥副路170を有する。この乾燥副路170の吐出部172は、空隙174の流路方向S20に対し、垂直以上の角度δで吐出されるように接続する。これにより、空隙174から流入した乾燥風151aは、流入部171で分かれて乾燥風151cとなって流路173を通り、吐出部172から空隙174に戻される。また、流路方向S20と流路方向S10との成す角度δが90°以上に設定されているため、空隙141を流れる乾燥風151bの向きに対して吐出部172の乾燥風151dが吐出される向きが略対向するため、空隙174の通風抵抗が増大する。その結果、第1実施形態と同様に、内槽203内に吹き込む乾燥風51の風量が増加し、洗濯物56の乾燥効率が向上する。
【0105】
なお、第8実施形態では、槽カバー231に乾燥副路170を設けた場合を例に挙げて説明したが、第1実施形態ないし第7実施形態を適宜組み合わせて構成してもよい。例えば、第2実施形態のように流体バランサ205に乾燥副路を設けてもよく、槽カバー231と流体バランサ205の双方に乾燥副路を設けてもよく、乾燥副路を内槽203の回転軸との距離が異なった位置に複数設けられていてもよい。
【0106】
本発明は、前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。例えば、槽カバー31と流体バランサ9cとの間の通風路R1(空隙74)に乾燥副路を設けた場合を主に例を挙げて説明したが、内槽9の底部と外槽10の底部との間の通風路R1に乾燥副路を設ける構成であってもよい。
【0107】
また、洗濯乾燥機100においては、第1実施形態ないし第7実施形態を適宜組み合わせて構成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 筐体
9 内槽
9a、9b 貫通孔
9c 流体バランサ(バランスリング)
10 外槽
10b 通水通気口(吸気部)
12 駆動機構(駆動部)
19 送風ファン
20 ヒータ
22 乾燥ダクト
22a 除湿機構
31 槽カバー
31c 槽カバー上板
31d 槽カバー下板
51、51a、51b、51c 乾燥風
54 吹出部
70A、70B、70C、70D 乾燥副路(副路)
71 流入部
72 吐出部
73 流路
74 空隙(送風路)
75 凸部材(凸部)
170 乾燥副路(副路)
171 流入部
172 吐出部
173 流路
174 空隙(送風路)
200 洗濯乾燥機(洗濯機)
201 筐体
202 外槽
203 内槽
203a 貫通孔
205 流体バランサ(バランスリング)
210 駆動用モータ(駆動部)
217 乾燥ダクト
217a 除湿機構
219 送風ファン
220 ヒータ
221 吹出部
223 通気口(吸気部)
231 槽カバー
231a 槽カバー上板
231b 槽カバー下板
D1、D2 乾燥機構(送風部)
R1、R2 送風路
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