(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】抗菌組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20241223BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241223BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241223BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/133 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20241223BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241223BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
A61K8/34
A61P31/04
A61Q19/00
A61Q5/02
A61K31/133
A61K31/05
A61P43/00 121
A61K8/41
(21)【出願番号】P 2021518879
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079347
(87)【国際公開番号】W WO2020089145
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-26
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アガルケド,アジット・マノハー
(72)【発明者】
【氏名】アガーワル,クシュホー
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダ,アミターバ
(72)【発明者】
【氏名】マタパティ,ムリチュンジャヤ・スワーミー
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】Hand Sanitizer,(ID#):1855230,Mintel GNPD,2012年,<URL:https://www.portal.mintel.com>
【文献】Orange & Eucalyptus Herbal Hand Gel,(ID#):5520271,2018年03月,<URL:https://www.portal.mintel.com>
【文献】GC/MS analysis of volatile constituents and antibacterial activity of the essential oil of the leaves of Eucalyptus globulus in atlas median from Morocco,Advances in Natural and Applied Sciences,2009年,Vol.3,pp.1-14
【文献】A comparison of citrus blossom volatiles,Phytochemistry,2009年,pp.1428-1434
【文献】Analysis of enantiomeric linalool ratio in green and roasted coffee,FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL,2006年,Vol.21,pp.637-641
【文献】Analysis of volatile components isolated from Hawaiian green coffee beans (Coffea arabica L.),FLAVOUR AND FRAGRANCE JOURNAL,2002年,Vol.17,pp.349-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 1/00-43/00
A61K31/00-31/327
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌組成物であって、以下の
(i)0.1~10重量%の下記一般式1の化合物
【化1】
[式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状炭素鎖であり、R
5は、1~4個の炭素原子を有する炭素鎖である];および
(ii)0.005~0.5重量%の下記構造を有する一般式2の精油化合物
【化2】
[式中、
R
1はH、OHまたはOR(但し、Rは1~5個の炭素原子を有するアルキル鎖である)であり;
R
2は、C
1~C
6直鎖アルキル基;またはC
3~C
6分岐アルキル基;またはC
5~C
6環状もしくは複素環アルキル基;またはC
6芳香族基である];
を含有し、
但し、前記精油化合物は、チモール、カルバクロール、2-プロピルフェノール、4-ペンチルフェノール、4-sec-ブチルフェノール、2-ベンジルフェノールもしくはオイゲノールまたはそれらの組み合わせから選択され、
前記一般式1の化合物が、次式を有するテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(THPE)
【化3】
であり、
水および界面活性剤を含む化粧品として許容される基剤を含む、前記抗菌組成物。
【請求項2】
前記精油化合物がチモール、カルバクロールまたはオイゲノールである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物がテルピネオールをさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
テルピネオールおよび精油化合物としてのチモールの混合物を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤、好ましくは石鹸である請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成形された固体のバーの形態である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物を所望の皮膚表面に適用し、続いて該組成物を該表面から拭き取るか、または該表面を水ですすいで該組成物を実質的に含まないようにする工程を含む、皮膚に抗菌効力を提供する方法。
【請求項8】
前記組成物を水で希釈した後に、該組成物を所望の皮膚表面に適用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、希釈溶液の1~50重量%、好ましくは2~20重量%の濃度まで水で希釈される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記拭き取りまたはすすぎの工程が、前記組成物を適用した後10秒~2分で行われる、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌組成物に関する。より詳細には、本発明は、パーソナルケア組成物、例えば、抗菌効果を提供する、毛髪、身体、手または顔のケアのためのパーソナルケア組成物に関する。より詳細には、本発明は、相互作用して相乗的な抗菌効力を提供し、また2回の洗浄の間に細菌に対する保護を与える活性物質を含むクレンジング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は任意の身体部分の洗浄に有用であるが、特に手の衛生または身体もしくは顔の洗浄に適した抗菌組成物に関する。
【0003】
特にトイレの使用後および/または食物の摂取前に、抗菌性石鹸で手洗いすることは、ヒトの死亡率、罹患率を改善し、一般的な生活の質を改善する最も効果的な方法の1つと確認されている。トリクロサンなどの塩素系抗菌剤を含む衛生および消毒石鹸組成物が知られている。使用者が、抗菌活性が低いか、その活性が遅い石鹸を使用する場合、使用者の皮膚の細菌除去が比較的不十分になる可能性が高く、さらなる生物および/または無生物の表面の汚染を引き起こし、病原体の拡散および結果として生じる疾患につながる可能性がある。したがって、抗菌活性が強化された手洗い組成物およびボディウォッシュ組成物を提供することは、消費者の健康および生活の質の向上を提供するために最も重要である。
【0004】
上記の問題は公知の抗菌活性物質を含有する組成物の使用によって大幅に軽減されるが、増強された抗菌効力を確実にするのと同時に、2回の洗浄の間に皮膚を細菌から保護することを確実にする必要がある。本発明者らは特定の精油が選択されたテトラヒドロキシアルキレンアミン化合物と組み合わされる場合に、この利益を得ることができることを見出した。
【0005】
国際公開第WO06026170(Bausch & Lomb)は、有効消毒量の1種以上の抗菌剤および1種以上の(ヒドロキシアルキル)ジアミン系緩衝剤、(ヒドロキシアルコキシ)ジアミン系緩衝剤またはそれらの組み合わせを含む組成物を開示する。
【0006】
出願人の知る限りでは、選択されたテトラヒドロキシアルキレンアミン化合物と組み合わせた本発明で特許請求される精油化合物が、2回の洗浄操作の間に皮膚を攻撃し得る細菌に対する皮膚の保護も提供しつつ、高度に効率的な抗菌作用を示すことについて開示されたことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第WO06026170号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、皮膚がこの組成物で洗浄されてから長い間、増強された抗菌活性を示す抗菌組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、個人用クレンジング組成物、特に石鹸を含むものに使用した場合に有効な抗菌組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、皮膚をその組成物で洗浄した後の長い間、細菌の侵入に対して有効である抗菌組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、以下を含む抗菌組成物が提供される:
(i)下記一般式1の化合物
【化1】
[式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭素鎖であり;R
5は1~4個の炭素原子を有する炭素鎖である。];および
(ii)下記構造を有する一般式2の精油化合物
【化2】
[式中、
R
1はH、OHまたはOR(但し、Rは1~5個の炭素原子を有するアルキル鎖である。)であり;
R
2は、C
1~C
6直鎖アルキル基;またはC
3~C
6分岐アルキル基;またはC
5~C
6環状もしくは複素環アルキル基;またはC
6芳香族基である。]。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の組成物を所望の皮膚表面に適用した後、該組成物を該表面から拭き取るか、または該表面を水ですすいで該組成物を実質的に含まないようにする工程を含む、皮膚に抗菌効力を提供する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これらおよび他の態様、特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を読むことによって、当業者には明らかになるのであろう。疑義を回避するために、本発明の1つの態様の任意の特徴を、本発明の任意の他の態様で利用することができる。「含む(comprising)」という語は「包含する(including)」を意味するものであるが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「構成される(composed of)」を意味するものではなく、言い換えれば、列挙された工程または選択肢は網羅的である必要はない。以下の説明で与えられる実施例は本発明を明確にすることを意図したものであり、本発明をそれらの実施例自体に限定することを意図したものではないことに留意されたい。同様に、全てのパーセンテージは特に断らない限り、重量/重量パーセンテージである。実施例および比較例を除き、または特段に明示的に示される場合を除き、本明細書および特許請求の範囲における、材料または反応条件の数量、材料の物理的性質および/または使用を示す全ての数字は、「約」の語によって修飾されると理解されるべきである。「x~y」の形式で表される数値範囲がxおよびyを含むと理解される。特定の特徴について、複数の好ましい範囲が「x~y」の形式で表される場合、異なる終点を組み合わせるすべての範囲も意図されると理解される。言い換えると、任意の範囲の値を指定する際に、任意の特定の上限値を任意の特定の下限値に関連付けることができる。
【0014】
本明細書で見出される本発明の開示は、請求項が複数項への従属または重複なしに見出され得るという事実にかかわらず、請求項で見出されるすべての実施形態を、互いに複数項への従属性を有するものとして網羅すると考えられるべきである。
【0015】
本発明の特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関して特徴が開示される場合、そのような開示は必要な変更を加えて、本発明の任意の他の態様(例えば、本発明の方法)にも適用されると考えられるべきである。
【0016】
本明細書で使用される「抗菌組成物」とは、哺乳動物、特にヒトの皮膚、毛髪および/または頭皮への局所適用のための組成物を含むことを意味する。このような組成物は一般に、数秒から数分までの期間、身体の所望の局所表面に適用される。適用時間が短い場合、例えば数秒~数分のオーダーであり、その後、組成物を水ですすぎ落とすか、または拭き取る場合、このような組成物は、クレンジング組成物またはウォッシュオフ組成物として知られている。組成物がより長い期間、例えば数分~24時間まで適用され、通常のパーソナルクリーニングのプロセスの間に洗い流される場合、そのような組成物は、リーブオン組成物として知られている。本発明による組成物は、ウォッシュオフまたはリーブオン型であり得る。これら2つのうち、ウォッシュオフ型であることが好ましい。それは、外観、クレンジング、臭気抑制または一般的な美観も改善するために人体に適用される任意の製品を含む。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、バー、シャンプー、コンディショナー、ハンドウォッシュ、フェイスウォッシュまたはボディウォッシュ製品の形態であり得る。それは、より好ましくは手または人体の他の部分を消毒するために使用される。
【0017】
本発明は、より詳細には抗菌クレンジング組成物に関する。
【0018】
本発明の抗菌組成物は、下記一般式1の化合物を含む:
【化3】
[式中、R
1~R
4はそれぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖炭素鎖であり、R
5は、1~4個の炭素原子を有する炭素鎖である。]。
【0019】
R1~R4は、炭素数3または4の炭素鎖であることが好ましく、炭素数3の炭素鎖であることがより好ましい。R5は、2または3個の炭素原子を有する炭素鎖であることが好ましく、2個の炭素原子を有する炭素鎖であることがより好ましい。さらに好ましくは、R5は線状炭素鎖である。
【0020】
式1の最も好ましい化合物は、以下の式を有するテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(THPE)である。
【化4】
【0021】
式1の化合物は、好ましくは組成物の0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらに好ましくは0.2~3重量%で含まれる。
【0022】
本発明の組成物は、以下の構造を有する一般式2の精油化合物を含む。
【化5】
[式中、
R
1はH、OHまたはOR(但し、Rは1~5個の炭素原子を有するアルキル鎖である。)であり;
R
2は、C
1~C
6直鎖アルキル基;またはC
3~C
6分岐アルキル基;またはC
5~C
6環状もしくは複素環アルキル基;またはC
6芳香族基である。]。
【0023】
本発明の組成物に使用するための式2の化合物による最も好ましい精油化合物は、チモール、カルバクロール、(E)-2(プロプ-1-エニル)フェノール、2-プロピルフェノール、4-ペンチルフェノール、4-sec-ブチルフェノール、2-ベンジルフェノールもしくはオイゲノール、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0024】
これらの化合物の構造を以下に示す:
【0025】
【0026】
【0027】
(E)-2(プロプ-1-エニル)フェノール
【化8】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
上記精油化合物のうち、チモール、カルバクロールまたはオイゲノールが本発明の組成物における使用には、より好ましい。
【0034】
精油化合物は、組成物の0.001~1重量%、好ましくは0.005~1重量%、さらに好ましくは0.005~0.5重量%で含まれることが好ましい。
【0035】
テルペン群の追加の精油化合物が本発明の組成物に含まれることがさらに好ましい。テルペン群の最も好ましい化合物はテルピネオールである。テルピネオールは、好ましくはα-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールまたはそれらの混合物から選択される。テルピネオールがα-テルピネオールであることが特に好ましい。テルピネオールは、精製された形態で抗菌組成物に添加され得る。
【0036】
テルピネオール化合物の構造を以下に示す:
【化14】
【0037】
抗菌組成物は、好ましくは組成物の0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%のテルピネオールを含む。
【0038】
本発明の特に好ましい態様によれば、組成物はチモールとテルピネオールの混合物を含む。
【0039】
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、皮膚上への活性分子の沈着の結果として、洗浄工程が完了してから長い間の抗菌効力が得られると考える。次いで、これらの分子は2回の洗浄の間に、皮膚上に既に存在する抗菌ペプチドと相互作用して、所望の利点をもたらす。
【0040】
本発明において、抗菌性アルコール(炭素数1~7の低分子量アルコール)は実質的に存在しない。実質的に存在しないとは、アルコールの濃度が抗菌治療活性に必要な量未満であることを意味する。好ましくは、抗菌性アルコールが1%未満、より好ましくは0.1%未満で存在し、最適には本発明には存在しない。
【0041】
本発明の組成物は、好ましくは化粧品として許容される基剤を含む。一態様によれば、化粧品として許容される基剤は水を含む。別の好ましい態様によれば、該基剤は界面活性剤を含む。したがって、化粧品として許容される基剤は、水、界面活性剤またはそれらの組み合わせを含む。化粧品として許容される基剤は、油を含むことができる。本発明の特に好ましい態様は、エマルジョンである化粧品として許容される基剤を含む。エマルジョンにおいて、油および水は、乳化剤(好ましくは界面活性剤)の存在下で乳化される。組成物は、クリーム、ローション、ゲル、粉末、軟膏、ボディウォッシュ、ハンドウォッシュまたはフェイスウォッシュ製品、シャンプー、ヘアコンディショナーまたは石鹸組成物、好ましくは石鹸バーとして調製されることが好ましい。製品は、ボディウォッシュ、ハンドウォッシュまたはフェイスウォッシュ製品、最も好ましくはハンドウォッシュ製品であってもよい。
【0042】
本発明の組成物は皮膚クレンジングのために、例えばハンドウォッシュ製品として使用することができる。抗菌組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤を使用する場合、特に好ましい界面活性剤は石鹸である。石鹸は、本発明の抗菌組成物の個人用洗浄用途に適した界面活性剤である。この石鹸は好ましくはC8-C24石鹸であり、より好ましくはC10-C20石鹸であり、最も好ましくはC12-C18石鹸である。石鹸のカチオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはアンモニウムであり得る。好ましくは、石鹸のカチオンがナトリウム、カリウムまたはアンモニウムから選択される。より好ましくは、石鹸のカチオンはナトリウムまたはカリウムである。
【0043】
典型的な脂肪酸ブレンドは、石鹸の5~30重量%のココナッツ脂肪酸および70~95重量%の脂肪酸からなる。落花生、大豆、獣脂、パーム、パーム核などの他の適切な油/脂肪に由来する脂肪酸もまた、他の所望の割合で使用され得る。
【0044】
それが存在する場合、存在する石鹸は、好ましくは組成物の1~90重量%、好ましくは10~85重量%、より好ましくは25~75重量%の量で存在する。
【0045】
他の好ましい界面活性剤はC8-C22のような非イオン性界面活性剤であり、好ましくは、製品が液状であるとき、1~8個までのエチレンオキシド基を含む、C8-C16脂肪族アルコールエトキシレートである。界面活性剤は、好ましくは第一級アルキルスルフェート、第二級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネートまたはエトキシル化アルキルスルフェートから選択される。組成物はアニオン性界面活性剤、例えばアルキルエーテルスルフェート、好ましくは天然または合成物由来で、1~3個のエチレンオキシド基および/またはスルホン酸を有するものをさらに含むことができる。特に好ましいのは、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。アルキルポリグルコシド、好ましくはC6~C16までの炭素鎖長を有するものも組成物中に存在し得る。
【0046】
好ましい組成物は、香料、顔料、防腐剤、皮膚軟化剤、日焼け止め剤、乳化剤、ゲル化剤および増粘剤などの他の公知の成分を含むことができる。これらの成分の選択は、組成物の形式に主に依存する。
【0047】
水が好ましい担体である。水が存在する場合、それは好ましくは組成物の少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、さらにより好ましくは少なくとも5重量%で存在する。水が担体である場合、好ましい液体組成物は10~99.8重量%の水を含む。液体抗菌組成物は皮膚消毒液として、皮膚洗浄のために、特にハンドウォッシュまたはフェイスウォッシュのために有用である。水が担体である場合、好ましい固体組成物は5~30重量%の水を含む。
【0048】
固体抗菌組成物は、好ましくは成形された固体、より好ましくはバーの形態である。固体抗菌組成物は、特にハンドウォッシュまたはフェイスウォッシュのための皮膚クレンジングに特に有用である。
【0049】
別の態様によれば、無機粒子材料も適切な担体である。無機粒子材料が担体である場合、抗菌組成物は固体形態である。好ましくは、無機粒子材料はタルクである。無機微粒子材料がタルクである場合、固体抗菌組成物は、顔または体に適用するためのタルク粉末として特に有用である。
【0050】
本発明の別の局面において、本発明の組成物は、個人衛生のための拭き取りにおける使用に適している。
【0051】
本発明はまた、本発明の組成物を所望の皮膚表面に適用する工程を含む、皮膚に抗菌効力を提供する方法に関する。この方法は、好ましくは本質的に非治療的または美容的である。
【0052】
これに続いて、特定の時間後に表面から組成物を実質的に除去する。通常、人々は身体部分を洗浄するのに約10秒~2分間を費やし、この時間枠内で所望の抗菌作用が起こったはずであることが期待される。洗浄時間は、好ましくは10秒~1分、より好ましくは10秒~30秒である。表面からの組成物の除去は、適切な拭き取り繊維を使用して表面から組成物を拭き取ることによって達成することができる。あるいは、組成物を実質的に含まないように水で表面を濯ぐことによって達成されてもよい。組成物は、通常、組成物を水で希釈した後、所望の皮膚表面に適用される。組成物は、希釈溶液の1~50重量%、好ましくは2~20重量%の濃度まで水で希釈することができる。
【0053】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0054】
例A-C、1:THPEとチモールのイン・ビトロ有効性
以下のサンプルを、以下に記載のプロトコールを使用して、イン・ビトロ抗菌効力について試験した。
例-A:培養コントロール
例-B:1%・テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン(THPE)
例-C:0.01%・チモール
例-1:1%・THPE+0.01%・チモール
【0055】
プロトコール
使用溶媒:
pH7.4の培養調製物用10mMリン酸ナトリウム緩衝液
【0056】
生物:
大腸菌ATCC 10536
【0057】
手順:
・試験菌をグリセロールストック(-70℃で保存)からTSAスラント(寒天斜面)上に継代培養し、37℃で18~24時間インキュベートした。スラントを冷蔵庫に最大2週間保存した後、新たなスラントを調製した。
・試験菌をTSAスラントからTSAを含むペトリ皿平板上に画線し、使用前に37℃で21~22時間インキュベートした。
・10mMリン酸ナトリウム緩衝液中の106細胞に対応する細菌接種物を上記の平板から調製した。
・培養物のODを大腸菌について0.8に調整して、108細胞/mlを得た。一旦、108細胞に対応する細菌接種材料がリン酸ナトリウム緩衝液中で調製されると、それは106細胞に連続的に希釈される(10mMリン酸ナトリウム緩衝液中で1:10希釈)。
・全ての処理について、135μlの細菌接種材料(106CFU/ml)を300μlの反応容器(マイクロタイタープレート/96ウェルプレート中)に添加した。
・全てのコントロールおよび処置群について、100mM緩衝液の15μlを添加して、すべての反応において~5mMに相当する最終濃度となるようにした。
・試験するそれぞれの化合物/活性物質を添加し、オートクレーブ処理した蒸留水で300μlの体積にした。注:各処理は2連で試験される。
・マイクロタイタープレートを37℃で4時間(接触時間)インキュベートし、次いで、細菌死滅を検査するために中和剤D/E中での必要な連続希釈後にTSA上にプレーティングした。
・プレートを大腸菌検査のために一晩インキュベートした。
・コロニーを計数して、残存する細菌を推定し、それによって対数死滅数を推定した。
【0058】
残存する細菌の平均に関するデータ(log cfu/ml)を表-1に要約する:
【表1】
【0059】
上記表-1のデータはチモールとTHPEとの組み合わせが、個々の化合物と比較して相乗的な抗菌効果を提供することを示す。
【0060】
例Dおよび2:いかなる抗菌活性物質も含まない石鹸組成物と比較した、石鹸ベースにおける本発明の組成物のイン・ビボ抗菌効力
以下の2つの石鹸バーを、以下の表-2に示すように調製した。
【表2】
【0061】
上記組成物を、以下のプロトコールを使用して、イン・ビボ抗菌活性について試験した:
1.抗菌活性物質を含まない石鹸バーを各ボランティアに与えて、入浴、手洗い、前腕洗浄等に使用し、7日間ウォッシュオフした後、試験を開始した。
2.ボランティアは、研究が終了するまで、いかなるリーブオン製品(サンスクリーン、手指消毒剤、皮膚保湿剤、ローション、クリーム、油および抗菌製品)の使用も控えるように指示された。
3.ボランティアは、朝に前腕を洗うことなく8日目に研究現場に来るように求められた(好ましくは入浴せずに研究現場に来るように求められた。)。
4.8日目に、研究者は例Dの石鹸バーでボランティアの一方の前腕を洗浄し、例2の石鹸バーで他の前腕を洗浄した。
5.洗浄プロトコールは以下の通りであった。
・水道水温は24℃±2℃であった。
・石鹸を水中で10秒間湿潤/浸漬する。
・各前腕を水道水(100ml±10ml)で湿らせる。
・前腕の全長にわたって石鹸を前後に10回塗布する。
・手袋をした手の掌に水を2~3mlとり、手で前腕を30秒間泡立てる。
・前腕に20秒間泡を保持する。
・前腕に水道水を流して1分間洗浄し、石鹸を完全に除去する。
・滅菌ティッシュペーパーを用いてパット乾燥することにより、過剰の水を除去する。
・前腕を洗った30分後、108ストックからの10μLの大腸菌(10536)を、前腕皮膚上の規定された円形領域(7cm2の円)に10分間適用した。(108培養ストックは10mMリン酸ナトリウム緩衝液中で、18~20時間培養液を用いて調製した。ODは620nmで0.8に調整し、108カウントを達成した。)。
6.前腕皮膚への大腸菌の10分間の接触時間の後、1.5mlの抽出緩衝液を用いてカップスクラブ法(ASTM法、E2752-10)により回収した。
7.次いで、各サンプルを9mlのD/E(Dey Engley中和ブロス)中で連続希釈し、それぞれの希釈物をMacConkey寒天培地上にプレーティングした。
8.プレートを37℃で24時間インキュベートして大腸菌を増殖させ、次いでコロニーを計数し、標準的な微生物学的方法を用いてlog cfu/mlを計算した。
【0062】
抽出緩衝液
0.4g・KH2PO4、10.1g・Na2HPO4、1.0g・Triton X100、100.0g・Tween 80および11.67g・レシチンを1リットルの精製熱水に溶解した。最終pHを7.8±0.1に調整した。オートクレーブ処理の直後に緩衝液をボルテックス処理した。
【0063】
上記処理後に残存する細菌に関するデータを以下の表-3に要約する:
【表3】
【0064】
上記表-3のデータは、本発明の石鹸バー組成物(例-2)が皮膚表面を組成物で洗浄した後ずっと長い間、従来の石鹸バー(例-D)と比較してはるかに良好な抗菌効力を提供することができることを示す。
【0065】
例E-Hおよび3、4:THPEとカルバクロールのイン・ビトロ効力
チモール+THPEについて行った実験と同様の実験を、カルバクロール+THPEを用いて行った。抗菌効力を、例1およびA~Cについて上記で詳述したように、イン・ビトロで測定した。抗菌効果を以下の表-4に要約する:
【0066】
【0067】
上記表-4のデータは、チモール+THPEと比較して、カルバクロールとTHPEとの組み合わせについて同様の相乗活性が得られることを示す。
【0068】
例I-Kおよび5:オイゲノールとTHPEのイン・ビトロ効力
チモール+THPEについて行った実験と同様の実験を、オイゲノール+THPEを用いて行った。抗菌効力を、例1およびA~Cについて上記で詳述したように、イン・ビトロで測定した。抗菌効果を以下の表-5に要約する:
【表5】
【0069】
上記表-5のデータはオイゲノールとTHPEとの組み合わせについての相乗活性を示すが、この効果はチモール+THPEについてほどは顕著でない。