(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】中枢神経系原発リンパ腫の併用治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241223BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20241223BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20241223BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20241223BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/02 ZNA
A61K31/475
A61K31/573
A61K31/675
A61K31/704
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2021530986
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019083322
(87)【国際公開番号】W WO2020109625
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520503599
【氏名又は名称】フォンダッツィオーネ・セントロ・サン・ラッファエーレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・コルティ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・ジョゼ・マリア・フェレーリ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-522511(JP,A)
【文献】特表2014-510102(JP,A)
【文献】R-CHOPPreceded By Engineered Tumor Necrosis Factor (TNF) in Patients with Relapsed or Refractory (r/r) Primary CNS Lymphoma (PCNSL): Results of Antitumor Activity, Safety and Blood-Brain Barrier (BBB) Permeabilization in the "Ingrid" Phase II Trial,blood,2018年11月29日,Vol. 132, Supplement 1,p. 1687,http://doi.org/10.1182/blood-2018-99-118507
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/02
A61K 31/475
A61K 31/573
A61K 31/675
A61K 31/704
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における中枢神経系原発リンパ腫の治療に使用するための、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン)並びにNGR-hTNF又はそのアナログの組合せ医薬であって、
NGR-hTNF又はそのアナログの投与
がリツキシマブの投与後且つCHOP薬剤の投与前に実施される少なくとも1コー
スを含み
、
NGR-hTNF又はそのアナログ及びR-CHOPは別々に投与される、組合せ医薬。
【請求項2】
R-CHO
Pが、375mg/m
2のリツキシマブ、750mg/m
2のシクロホスファミド、50mg/m
2のドキソルビシン、及び1.4mg/m
2のビンクリスチンからなる、請求項1に記載の組合せ医薬。
【請求項3】
NGR-hTNFの投与が、0.8ug/m
2からなる、請求項1又は2に記載の組合せ医薬。
【請求項4】
NGR-hTNF又はそのアナログの投与がリツキシマブの投与後且つCHOP薬剤の投与前に実施される6コー
スを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項5】
NGR-hTNF又はそのアナログの投与がリツキシマブの投与後且つCHOP薬剤の投与前に実施されるコースは、18から21日間離れている、請求項1から4のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項6】
中枢神経系原発リンパ腫が、再発した中枢神経系原発リンパ腫であるか、又は難治性の中枢神経系原発リンパ腫である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組合せ医薬。
【請求項7】
R-CHOPと組合せた対象における中枢神経系原発リンパ腫の治療に使用するための組成物であって、NGR-hTNF又はそのアナログを含み、
前記治
療は、NGR-hTNF又はそのアナログの投与がリツキシマブの投与後且つCHOP薬剤の投与前に実施される少なくとも1コー
スを含み、
NGR-hTNF又はそのアナログ及びR-CHOPは別々に投与される、組成物。
【請求項8】
対象における中枢神経系原発リンパ腫の治療に使用するためのキットであって、R-CHOP及びNGR-hTNF又はそのアナログを含み、
前記治
療は、NGR-hTNF又はそのアナログの投与がリツキシマブの投与後且つCHOP薬剤の投与前に実施される少なくとも1コー
スを含み、
NGR-hTNF又はそのアナログ及びR-CHOPは別々に投与される、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中枢神経系原発リンパ腫の治療のための、R-CHOP治療と、NGR-hTNF又はそのアナログの投与との組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
原発性のCNSのびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(PCNSL)は、特有の臨床的挙動を有する侵襲性の強い悪性腫瘍であり、CNSに限局してとどまり、稀にCNS外に播種することがある(1)。限局型のCNS外のDLBCLと比較して、PCNSL患者は、少なくとも部分的には、血液脳関門(BBB)を通過して良好なCNSバイオアベイラビリティを達成するために、CNS外のDLBCLを処置するために現在使用される薬剤(すなわち、R-CHOPレジメン:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン)の無効果に起因して、劣った生存率を示す(2)。現在、PCNSL患者は、シタラビン、アルキル化剤、及びリツキシマブと高頻度で併せられる、高用量のメトトレキサートベースの組合せを用いて処置される(3)。これらの現在の組合せの使用の普及は、PCNSL患者の生存を大きく向上させたが、これらの処置は、入院、適切な直接の経験を必要とし、関連する毒性に苦しまされる(4)。反対に、R-CHOP薬剤の向上したCNS送達は、入院を必要とせず、腫瘍血液部門において広く使用されている、良好な耐容性を示す治療の利点を有し得る。従って、可逆性のBBB透過性を誘導し、CNS細胞増殖抑制バイオアベイラビリティを向上させることができる静脈投与物質の使用は、PCNSL患者において、魅力的な研究手法である。
【0003】
腫瘍壊死因子(TNF)の静脈内送達は、選択的なBBB透過を受け、脳転移の動物モデルにおいて、化学療法剤の腫瘍浸透を向上させる(6)。TNFは、強力な抗腫瘍活性を有する炎症性サイトカインであるが、がん患者におけるその使用は、非常に大きな全身毒性によって制限されている(7)。相次ぐエビデンスは、このサイトカインの治療指数は、血管標的手法によって向上し得ると示唆している(8)。これは、例えば、ヒトTNFのN末端を、CNGRCG(アミノペプチダーゼN (CD13)のアイソフォームを認識することができる腫瘍血管系ホーミングペプチド、血管新生腫瘍血管において正に制御される膜結合型メタロプロテイナーゼ(9, 10)、正常の血管にはわずかに発現するか又は全く発現しない(11))と融合することによって達成することができる。ヒトTNFを用いて作製されたCNGRCG-TNF融合タンパク質(イタリア ミランのSan Raffaele Scientific Instituteで開発され、NGR-hTNFと呼ばれる)は、まだ薬理学的に活性でない、極めて低用量のサイトカインの腫瘍血管系への送達を可能にし、それによって全身性の毒性反応及び対抗制御的な機序を避けることを可能とする(12)。メラノーマ及びリンパ腫の動物モデルで実施した研究は、低用量のNGR-hTNFは、局所的に血管透過性を高め、腫瘍組織において化学療法剤の浸透を増加させることができることを示した(8, 10, 12, 14)。
【0004】
これらの見解に基づき、本発明者らは、低用量のNGR-hTNFが、PCNSLを患う患者において、BBBを変化させ、R-CHOPの浸透及び活性を向上させることができると仮説を立てた。NGR-hTNFのトランスレーショナルリサーチプログラムの一部として、本研究者らは、再発性又は難治性PCNSLの患者におけるNGR-hTNFの低用量の静脈内投与を用いたBBB透過が先行する、6コースのR-CHOP化学免疫療法の実現可能性及び活性を評価することを目的とした、前向き第II相試験を計画した。パープロトコールの計画された、試験の「概念実証(proof-of-principle)」部において、リンパ腫病変及び正常に見える脳実質のBBB透過性における変化を、第一の10人の登録患者で、ダイナミックコントラスト強調(Dynamic Contrast Enhanced; DCE)磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging; MRI)及び単光子放出コンピューター断層撮影(single photon emission computed tomography; SPECT)によって調査した。血漿及び脳脊髄液(CSF)試料中のR-CHOP薬剤の濃度の変化、並びに診断用生検中のCD13(NGR-hTNFの標的)の発現の変化を、腫瘍血管系に対するNGR-hTNFの効果の特異性の指標として調査した。本明細書において、本発明者らは、世界中で使用されるCNS外のDLBCLの治療に類似した、PCNSL患者に対する簡単で、実施しやすく、活性な治療の開発に向けた第一のステップとしてのこの「概念実証」研究の結果を報告する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Batchelor TT. Primary central nervous system lymphoma. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2016;2016:379-85.
【文献】Ferreri AJM, Holdhoff M, Nayak L, Rubenstein JL. Evolving Treatments for Primary Central Nervous System Lymphoma. Am Soc Clin Oncol Educ Book 2019;39:454-66
【文献】Ferreri AJ, Cwynarski K, Pulczynski E, et al. Chemoimmunotherapy with methotrexate, cytarabine, thiotepa, and rituximab (MATRix regimen) in patients with primary CNS lymphoma: results of the first randomisation of the International Extranodal Lymphoma Study Group-32 (IELSG32) phase 2 trial. Lancet Haematol 2016;3:e217-27.
【文献】Ferreri AJM. Therapy of primary CNS lymphoma: role of intensity, radiation, and novel agents. Hematology Am Soc Hematol Educ Program 2017;2017:565-77.
【文献】Connell JJ, Chatain G, Cornelissen B, et al. Selective permeabilization of the blood-brain barrier at sites of metastasis. J Natl Cancer Inst 2013;105:1634-43.
【文献】Corti A, Curnis F, Rossoni G, Marcucci F, Gregorc V. Peptide-mediated targeting of cytokines to tumor vasculature: the NGR-hTNF example. BioDrugs 2013;27:591-603.
【文献】Di Matteo P, Arrigoni GL, Alberici L, et al. Enhanced expression of CD13 in vessels of inflammatory and neoplastic tissues. J Histochem Cytochem 2011;59:47-59.
【文献】Curnis F, Sacchi A, Borgna L, Magni F, Gasparri A, Corti A. Enhancement of tumor necrosis factor alpha antitumor immunotherapeutic properties by targeted delivery to aminopeptidase N (CD13). Nat Biotechnol 2000;18:1185-90.
【文献】Curnis F, Arrigoni G, Sacchi A, et al. Differential binding of drugs containing the NGR motif to CD13 isoforms in tumor vessels, epithelia, and myeloid cells. Cancer Res 2002;62:867-74.
【文献】Curnis F, Sacchi A, Corti A. Improving chemotherapeutic drug penetration in tumors by vascular targeting and barrier alteration. J Clin Invest 2002;110:475-82.
【文献】Sacchi A, Gasparri A, Gallo-Stampino C, Toma S, Curnis F, Corti A. Synergistic antitumor activity of cisplatin, paclitaxel, and gemcitabine with tumor vasculature-targeted tumor necrosis factor-alpha. Clin Cancer Res 2006;12:175-82.
【文献】Ferreri AJM, Calimeri T, Conte GM, et al. R-CHOP preceded by blood-brain barrier permeabilization with engineered tumor necrosis factor-alpha in primary CNS lymphoma. Blood 2019;134:252-62.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、許容される耐容性及び有効性を有する、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)で治療される。しかしながら、この化学免疫療法は、血液脳関門の劣った透過性のため、原発性のCNSのDLBCL (PCNSL)において効果がない。NGRと連結された腫瘍壊死因子-α(NGR-hTNF)(CD13+腫瘍血管を標的とするペプチド)は、リンパ腫を有するマウスにおける内皮透過性及び薬物透過を誘導する。本発明において、第2相試験における、再発性/難治性PCNSL患者における、NGR-hTNFが先行するR-CHOP21の安全性、活性、及び血管透過性の変化を扱った。NGR-hTNF/R-CHOPの組合せは、良好な耐容性を示した。ダイナミックコントラスト強調MRI及び99mTc-DTPA SPECTは、NGR-hTNFが選択的に、CD13が常に発現される、腫瘍/腫瘍周辺領域における血管透過性を増加させることを実証した。NGR-hTNFは、R-CHOP薬剤の血漿/CSF濃度に影響を与えなかった。神経画像検査、病理組織学的及び薬物動態学的結果は、NGR-hTNF/R-CHOPの活性と一致し、7/10の患者における迅速で顕著な腫瘍退縮と関連した。
【0007】
本発明において、驚くべきことに、低用量のNGR-hTNFが先行する、R-CHOP投与は、7/10のPCNSL患者において迅速で、顕著な腫瘍退縮を伴う、安全で活性な手法であることが発見された。
【0008】
従って、本発明は、対象の中枢神経系原発リンパ腫の治療における使用のための、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾン)並びにNGR-hTNF又はそのアナログの組合せであって、NGR-hTNF又はそのアナログの投与が先行する、少なくとも1コースのR-CHOPを含む組合せを提供する。
【0009】
NGR-hTNFアナログは、参照として援用される国際公開第2004/041297号及び国際公開第01/61017号に記載される。
【0010】
好ましくは、R-CHOPのコースは、375mg/m2のリツキシマブ、750mg/m2のシクロホスファミド、50mg/m2のドキソルビシン、及び1.4mg/m2のビンクリスチンからなる。
【0011】
好ましくは、R-CHOPのコースは、1日目の375mg/m2のリツキシマブ、2日目の750mg/m2のシクロホスファミド、50mg/m2のドキソルビシン、及び1.4mg/m2のビンクリスチンからなる。
【0012】
好ましくは、NGR-hTNF又はそのアナログの投与は、CHOP薬剤の前に実施される。
【0013】
好ましくは、NGR-hTNF投与は、0.8ug/m2からなる。
【0014】
好ましい実施形態において、上記組合せは、それぞれがNGR-hTNF又はそのアナログの投与によって先行される、R-CHOPの6コースを含む。
【0015】
好ましくは、NGR-hTNF又はそのアナログの投与が先行するR-CHOPのコースは、18から21日間離れている。
【0016】
治療される腫瘍は、好ましくは、再発した又は難治性である、中枢神経系原発リンパ腫である。
【0017】
再発した又は難治性は、再発した腫瘍又は標準のアップフロント治療に抵抗性である腫瘍を意味する。そのようなアップフロント治療は、例えば、リツキシマブを伴う又は伴わない、高用量メトトレキサートベースの化学療法である。再発した又は難治性である中枢神経系原発リンパ腫は、標準第一選択治療(例えば、リツキシマブを伴う又は伴わない、高用量メトトレキサートベースの化学療法)の後に再発したリンパ腫又はそれに抵抗性であるリンパ腫を意味する。第一選択治療は、当業者に知られている任意の既知の治療である。
【0018】
用語「再発した」は、退縮の期間の後に再出現又は増大した疾患を指す。用語「難治性」は、リンパ腫が治療に反応しない(がん細胞が成長し続けることを意味する)場合、又は治療への反応が非常に長くは持続しない場合を説明するために使用される。
【0019】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ポリペプチド及びタンパク質を含む。用語「ポリペプチド」は、単鎖ポリペプチド分子、並びに個々の構成ポリペプチドが共有結合性又は非共有結合性の方法で連結している多重ポリペプチド複合体を含む。用語「ポリペプチド」は、長さで、2つ又はそれより多いアミノ酸を含み、典型的には、5、10、又は20より多いアミノ酸を有する。
【0020】
本発明において使用するためのポリペプチド配列は、特定の配列及びその断片には限定されないだけではなく、任意のソース、例えば、関連するウイルス/細菌タンパク質、細胞ホモログ(cellular homologue)及び合成ペプチド、並びにそのバリアント又は誘導体、から得られる相同配列も含むと理解される。本発明のポリペプチド配列は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドも含む。
【0021】
本発明のアミノ酸配列に関連する、用語「バリアント」又は「誘導体」は、結果として得られるアミノ酸配列が好ましくは標的活性を有する、好ましくは配列表に提示されるポリペプチドの少なくとも25から50%の活性を有する、より好ましくは少なくとも実質的に同じ活性を有する限り、配列から又は配列に、1つの(又はそれより多くの)アミノ酸の任意の置換、バリエーション、修飾、交換、欠失、追加を含む。
【0022】
従って、配列は、本発明における使用のために改変することができる。典型的には、改変は、配列の活性を維持させる。
【0023】
従って、一実施形態において、アミノ酸置換は、例えば、1、2、又は3から10、20、又は30の置換から作られ得り、ただし、改変された配列は、少なくとも25から50%の活性維持する、又は実質的に同じ活性を維持する。しかしながら、別の実施形態において、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列への改変は、意図的にポリペプチドの生物学的活性を減少させるように作成されてもよい。例えば、標的分子への結合能は維持するが機能的なエフェクタードメインを欠失する、トランケートポリペプチドは、有用であり得る。
【0024】
一般に、好ましくは、バリアント又は誘導体のアミノ酸残基の20%、10%、又は5%が、配列表に示される対応する領域と比較して、改変されている。
【0025】
アミノ酸置換は、例えば、治療的に投与されるポリペプチドの血漿半減期を増加させる、非天然のアナログの使用を含み得る(治療に使用するためのペプチド誘導体の産生に関する更なる詳細に関しては、以下を参照)。保存的置換を、例えば、以下の表に従って、行うことができる。第2列の同じブロック、好ましくは第3列の同じ行のアミノ酸が、互いに置換することができる。
【0026】
【0027】
本発明のポリペプチドはまた、上述のポリペプチド及びそのバリアントの断片を含み、配列の断片を含む。好ましい断片は、エピトープ又は結合ドメインを含む断片を含む。適切な断片は、少なくとも約5、例えば、10、12、15、又は20アミノ酸の長さである。適切な断片はまた、200、100、又は50アミノ酸未満の長さであってもよい。タンパク質並びにその対立遺伝子バリアント及び種バリアントのポリペプチド断片は、保存的置換を含む、1つ又はそれより多くの(例えば、2、3、5、又は10)置換、欠失、又は挿入を含んでもよい。例えば、組換え技術によって、置換、欠失、及び/又は挿入が行われた場合、配列表に示されるアミノ酸残基の好ましくは20%、10%、又は5%未満が改変されている。
【0028】
本発明のポリペプチド及びコンジュゲートは、典型的には、例えば以下に記載される、組換え手段によってなされる。しかしながら、本発明のポリペプチド及びコンジュゲートはまた、当業者によく知られている技術を使用した合成手段、例えば固相合成法によってなされてもよい。ペプチドの化学合成に関する様々な技術が、Borgia and Fields, 2000, TibTech 18: 243-251によってレビューされ、そこに含まれる参照で詳細に記載されている。
【0029】
ペプチドは、サイトカインに直接結合することができ、又はシングルアミノ酸、アミノ酸配列、又は有機残基、例えば6-アミノカプリル-N-ヒドロキシスクシンイミド(6-aminocapryl-N-hydroxysuccinimide)であり得る、スペーサーを介して間接的に結合することができる。結合方法は、当業者に既知であり、遺伝子工学又は化学合成技術を含む。
【0030】
ペプチドリガンドは、好ましくは、サイトカインのN末端に結合し、その結果、受容体への修飾したサイトカインの結合における任意の干渉を最小化する。代替的には、ペプチドは、分子上に自然に生じる又は遺伝子工学技術によって人工的に挿入される、アミド結合又はカルボキシル結合の受容体であるアミノ酸残基に結合することができる。修飾されたサイトカインは、好ましくは、ペプチドをコードする5’-連続配列を含むcDNAの使用によって調製される。
【0031】
好ましい実施形態によると、TNFとCNGRC配列とのコンジュゲート生成物が提供される。より好ましくは、TNFのアミノ末端は、スペーサーG(グリシン)を介してCNGRCペプチドに結合する。
【0032】
結果として生じる生成物(NGR-hTNF)は、RMA-Tリンパ腫の動物モデルにおいて、TNFよりも活性であることを示した。さらに、NGR-TNFで処置された動物は、更なるRMA-T又はRMA細胞の腫瘍形成投与量を拒絶することができた。通常のTNFと比較した、抗腫瘍活性の増加が、免疫能力のある動物では見られたが、免疫不全の動物では見られなかった。これは、「NGR」ペプチドとコンジュゲートしたTNFの抗腫瘍活性の増加は、コンジュゲートの直接的な細胞毒活性ではなく、免疫応答の増強によるものであることを示している。
【0033】
NGR-TNFによって誘導されるin vivo免疫効果が、直接的にCD13受容体に関連することも実証された。例えば、CD13受容体に対する抗体並びにGNGRCリガンドが、in vivoにおいてNGR-TNFと競合することが見られ、従って、NGR-TNFによる受容体標的のメカニズムが示唆された。
【0034】
TNF/CD13リガンドコンジュゲートの治療指数は、2つのTNF受容体(p75TNFR及びp55TNFR)の1つに選択的に結合することができるTNFの変異型を使用することによって、さらに向上させることができる。上記TNF変異体は、部位特異的変異導入(site-directed mutagenesis)(Loetscher, H. , et al., Human tumor necrosis factor alpha (TNF alpha) mutants with exclusive specificity for the 55-kDa or 75kDa TNF receptors. J. Biol. Chem. 1993.268 : 26350-7、及びVan Ostade, X. , et al., Human TNF mutants with selective activity on the p55 receptor. Nature 1993.361 : 266-9.)によって得ることができる。
【0035】
本発明による修飾したサイトカインの薬物動態を、サイトカイン自体の血漿半減期を延長することを可能にする、ポリエチレングリコール誘導体を調製することによって、向上することができる。
【0036】
本発明の更なる実施形態は、CD13リガンドで修飾したサイトカインが、腫瘍抗原若しくはその他の腫瘍血管新生マーカー(例えば、xvインテグリン、メタロプロテアーゼ、若しくは血管増殖因子)に対する抗体若しくはその断片、又は細胞外マトリックスの成分に対する抗体若しくはその断片(例えば、抗テネイシン抗体若しくは抗フィブロネクチンEDBドメイン)とコンジュゲートされた、二官能性誘導体によって提供される。TNFと、胃腺がん及び卵巣腺がんによって発現される腫瘍関連TAG72抗原に対するmAbのヒンジ領域との融合生成物の調製物が、近年報告された(Yang, J., et al., A genetically engineered single-chain FV/TNF molecule possesses the anti-tumor immunoreactivity of FV as well as the cytotoxic activity of tumor necrosis factor. Mol. Immunol. 1995.32: 873- 81)。
【0037】
本発明の更なる実施形態は、ビオチン/アビジンシステムを用いた、腫瘍プレターゲティングによって提供される。この手法によると、1)ビオチン化mAb、2)アビジン(又はストレプトアビジン)、並びに3)CD13及びビオチンで修飾された二価サイトカインによって形成される三重複合体は、異なるステージで、腫瘍抗原部位上で得られる。多くの論文が、免疫コンジュゲートを用いた従来のターゲティングと比較して、プレターゲティング手法は、実際に、遊離活性分子に対する標的に向かった活性分子の比を増加させ、その結果、治療毒性を減少させることができると証明した(Paganelli, G. , et al., Three-step monoclonal antibody tumor targeting in carcinoembryonic antigenpositive patients. Cancer Res. 1991.51: 5960-6; Paganelli, G. , et al., Clinical application of the avidin-biotin system for tumor targeting. In D. Goldenberg Ed. Cancer therapy with radiolabeled antibodies. CRC Press, Boca Raton, 1995. P. 239-253; Modorati, G. , et al., Immunoscintigraphy with three step monoclonal pretargeting technique in diagnosis of uveal melanoma: preliminary results. Br. J. Ophtalm. 1994.78 : 19-23; Colombo, P. , et al., Immunoscintigraphy with anti-chromogranin A antibodies in patients with endocrine/neuroendocrine tumors. J. Endocr. Invest. 1993.16 : 841-3)。in vitroで細胞毒性を誘導し、通常のTNFが不活性である条件下で腫瘍細胞の増殖を減少させることができる、この手法は、ビオチン化TNFを用いて有益な結果をもたらした((Moro, M. , et al. , Tumor cell targeting with antibody-avidin complexes and biotinylated tumor necrosis factor alpha. Cancer Res. 1997.57 : 1922-8. And 26. Gasparri, A. , et al., Tumor pretargeting with avidin improves the therapeutic index of biotinylated tumor necrosis factor alpha in mouse models. Cancer Res. 1999.59 : 2917-23.)。プレターゲティング手法はまた、腫瘍抗原及び修飾サイトカインに同時に結合する二重特異性抗体を使用することによって、二相方法を用いて実施することもできる。がん胎児性抗原及びTNFに対する二重特異性抗体の使用は、近年、TNF腫瘍プレターゲティングに関する手段として記載されている(Robert, B. , et al., 1996. Cytokine targeting in tumors using a bispecific antibody directed against carcinoembryonic antigen and tumor necrosis factor alpha. Cancer Res. 56: 4758.)。
【0038】
更なる実施形態によると、本発明は、異なるTNFサブユニット上に、CD13リガンド及び抗体又はその断片(直接又はビオチン-アビジンブリッジを介して間接的に)の両方にコンジュゲートしたTNF分子であって、抗体又はその断片が、腫瘍細胞に発現する抗原又は腫瘍間質のその他の成分(例えば、テネイシン及びフィブロネクチンEDBドメイン)に対するものである、TNF分子を含む。これは、修飾したサイトカインの腫瘍指向特性の更なる向上、及び三量体‐ 単量体‐三量体の移行を介した、腫瘍微小環境における後者の徐放をもたらす。以前の研究で示されたように、実際に、TNFコンジュゲートの修飾されたサブユニットは、ターゲティング複合体から解離し、再結合して修飾されていない三量体TNF分子を形成し、その後腫瘍微小環境中に拡散することができる。生物活性TNFの放出は、ターゲッティング後24から48時間以内に起きることが示されている(Corti, A. , et al., Tumor targeting with biotinylated tumor necrosis factor alpha: Structure activity relationships and mechanism of action on avidin pretargeted tumor cells. Cancer Res. 1998.58 : 3866-3872)。
【0039】
本発明のペプチドは、患者に、治療的に投与され得る。単に天然アミノ酸からなるのではなく、例えば、免疫原性を減少させる、患者の体内での循環半減期を増加させる、バイオアベイラビリティを向上させる、並びに/又は有効性及び/若しくは特異性を向上させるように改変したペプチドを使用することが好ましい。
【0040】
治療用途のために、多くの手法が使用して、ペプチドを改変してきた。1つの手法は、ペプチド又はタンパク質を、様々なポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)に結合させることである(例えば、米国特許第5,091,176号、5,214,131号、及び米国第5,264,209号を参照)。
【0041】
天然アミノ酸を様々な非コードアミノ酸又は修飾アミノ酸(例えば、D-アミノ酸及びN-メチルアミノ酸)で置き換えることはまた、ペプチドを改変するために使用することができる。
【0042】
別の手法は、二官能性架橋剤、例えば、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル、ヘキサン酸スクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]、及びヘキサン酸スルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]を使用することである(米国特許第5,580,853号を参照)。
【0043】
立体配座的に制約を受ける、本発明のペプチドの誘導体を使用することが、望ましいことがある。立体配座的な制約は、ペプチドによって想定される安定性及び3次元形状の好ましいコンフォメーションを指す。立体配座的な制約は、ペプチドの1つの残基の立体配座可動性を制限することに関わる、局所的な制約;残基が2次構造ユニットを形成する、一群の残基の立体配座可動性を制限することに関わる、領域的制約;全体のペプチド構造に関わる、全体的な制約、を含む。
【0044】
ペプチドの活性な立体配座は、共有結合修飾、例えば、環化によって、又はガンマラクタム若しくはその他の種類の架橋の組込みによって安定化することができる。例えば、側鎖を環化してバックボーンにし、相互作用部位の各側にL-ガンマラクタム部分を作ることができる。一般に、Hruby et al. ,"Applications of Synthetic Peptides, "in Synthetic Peptides: A User's Guide: 259-345 (W. H. Freeman & Co. 1992)を参照。環化はまた、例えば、システイン架橋の形成、それぞれの末端アミノ酸のアミノ末端基及びカルボキシ末端基の結合、又はLys残基若しくは関連するホモログのアミノ基とAsp、Glu、若しくは関連するホモログのカルボキシ基との結合によって、達成することができる。ヨード酢酸無水物(iodoacetic anhydride)を使用した、ポリペプチドのアルファ‐アミノ基とリジン残基のイプシロン‐アミノ基との結合もまた、行うことができる。Wood and Wetzel, 1992, Int'l J. Peptide Protein Res. 39: 533-39を参照。
【0045】
米国第5,891,418号に記載される別の手法は、ペプチド構造中に金属イオン錯化バックボーンを含む。典型的には、好ましい金属ペプチドバックボーンは、所与の錯化金属イオンの配位圏に必要とされる特定の配位基の必須の数に基づく。一般に、有用であると示し得る金属イオンのほとんどは、4から6の配位数を有する。ペプチド鎖の配位基の性質は、アミン、アミド、イミダゾール、又はグアニジノ官能基を有する窒素原子;チオール又はジスルフィドの硫黄原子;及びヒドロキシ、フェノール、カルボニル、カルボキシル官能基の酸素原子を含む。さらに、ペプチド鎖又は個々のアミノ酸は、化学的に改変して、配位基、例えば、オキシム、ヒドラジノ、スルフィドリル、フォスフェイト、シアノ、ピリジノ、ピペリジノ、又はモルフォリノを含むことができる。ペプチドコンストラクトは、直鎖又は環状のいずれかであり得るが、直鎖コンストラクトが典型的には好ましい。小さな直鎖ペプチドの一例は、配位数4の金属イオンと錯体を形成することができる、主鎖に4つの窒素を有するGly-Gly-Gly-Gly(N4錯体形成系)である。
【0046】
治療ペプチドの特性を向上させるための更なる技術は、非ペプチドペプチド模倣薬を使用することである。幅広い様々な有用な技術を使用して、ペプチドの正確な構造を明らかにすることができる。これらの技術は、アミノ酸シーケンシング、X線結晶構造解析、質量分析、核磁気共鳴分光法、コンピューター支援分子モデル、ペプチドマッピング、及びそれらの組合せを含む。ペプチドの構造解析は、一般に、ペプチドのアミノ酸配列並びに原子成分の3次元ポジショニングを含む、大量のデータを提供する。この情報から、治療活性のために必要とされる化学官能基を有するが、より安定で、例えば、より生物学的分解しにくい、非ペプチドペプチド模倣薬を設計することができる。この手法の例は、米国第5,811,512号で提供される。
【0047】
本発明の治療ペプチドを化学合成する技術は、上述の参考文献に記載され、Borgia and Fields, 2000, TibTech 18: 243-251によってもレビューされており、そこに含まれる参考文献中に詳細に記載されている。
【0048】
治療における使用のために、本発明の修飾したサイトカインは、経口投与又は非経口投与のための医薬調製物中に適切に配合される。非経口投与のための配合物が好ましく、注射可能な溶液又は懸濁液、及び注入のための液体を含む。非経口投与形態の調製に関して、有効量の活性成分を滅菌担体中に溶解又は懸濁し、任意選択で賦形剤、例えば、可溶化剤、等張剤、保存料、安定化剤、乳化剤、又は分散剤を添加し、その後、密封バイアル又はアンプルに分注する。
【0049】
より詳細には、ポリペプチド及びポリヌクレオチドを含む本発明のコンジュゲートを、好ましくは、様々な成分と組合せて、本発明の組成物を産生することができる。好ましくは、組成物を、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組合せて、医薬組成物(ヒト又は動物に使用するためのものであり得る)を産生する。適切な担体及び希釈剤は、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水を含む。賦形剤の例は、The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edn, Eds Wade & Weller, American Pharmaceutical Associationで見出すことができる。本発明の組成物は、直接的な注入によって投与することができる。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼球内、経口、又は経皮投与のために配合することができる。
【0050】
組成物は、毎日、毎週、毎月の投与が所望の1日用量を提供するように、配合することができる。組成物は、低い頻度、例えば、2、4、6、8、10、又は12時間ごとの投与に好都合に配合することができると理解される。
【0051】
ポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチド/ベクターを、裸の核酸コンストラクト、好ましくは、宿主細胞ゲノムに相同なフランキング配列を更に含む裸の核酸コンストラクトとして、直接投与することができる。
【0052】
哺乳類細胞による裸の核酸コンストラクトの取込みは、いくつかの既知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション剤の使用を含む技術によって、向上する。これらの剤の例は、カチオン性物質(例えば、リン酸カルシウム及びDEAE-デキストラン)並びにリポフェクタント(例えば、リポフェクタム(商標)及びトランスフェクタム(商標))を含む。典型的には、核酸コンストラクトを、トランスフェクション剤と混合して、組成物を産生する。
【0053】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを、薬学的に許容される担体又は希釈剤と組合せて、医薬組成物を産生する。適切な担体及び希釈剤は、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水を含む。組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼球内、又は経皮投与のために配合することができる。
【0054】
当業者は、任意の特定の患者及び疾患に対して、最適な投与経路及び投薬計画を容易に決定することができるので、記載される投与経路及び投薬計画は単に手引きを意図する。
【0055】
リポソームの形態のサイトカインの調製物は、その生物学的活性を向上させることができる。実際に、TNFアミノ基のアシル化は、in vitroにおける生物学的活性の喪失なしに、その疎水性の増加を誘導することが見られた。さらに、脂質に結合したTNFは、in vitroにおける影響を受けない細胞毒性、免疫調節効果、及びin vivoにおける毒性の減少を有することが報告されている(Debs, R. J. , et al., Liposome-associated tumor necrosis factor retains bioactivity in the presence of neutralizing anti-tumor necrosis factor antibodies. J. Immunol. 1989.143 : 1192-7; Debs, R. J. , et al., Immunomodulatory and toxic effects of free and liposome-encapsulated tumor necrosis factor alpha in rats. Cancer Res. 1990.50 : 375-80.)。
【0056】
ヒトにおけるボーラスTNFの最大耐量は、218~410pg/m2であり(32. Fraker, D. L., Alexander, H. R. & Pass, H. I., 1995. Biologic therapy with TNF: systemic administration and isolation-perfusion. In Biologic therapy of cancer. principles and practice, De Vita, V., Hellman, S. & Rosenberg, S. (eds) pp. 329-345. J. B. Lippincott Company: Philadelphia.)、動物における有効量より約10倍低い。マウスモデルからのデータに基づいて、ヒトにおいて、抗腫瘍効果を達成するには、少なくとも10倍高い用量が必要であると考えられている(Schraffordt Koops, et al., Hyperthermic isolated limb perfusion with tumour necrosis factor and melphalan as treatment of locally advanced or recurrent soft tissue sarcomas of the extremities, Radiothepray & Oncology 1998.48 : 1-4; Hill, S. , et al., Low-dose tumour necrosis factor alpha and melphalan in hyperthermic isolated limb perfusion. Br. J. Sugr. 1993.80: 995-7; Eggermont, A. M. , et al., Isolated limb perfusion with tumor necrosis factor and melphalan for limb salvage in 186 patients with locally advanced soft tissue extremity sarcomas. The cumulative multicenter European experience. Ann. Surg. 1996.224 : 756-65.)。温熱四肢灌流(hyperthermic isolated-limb perfusion)に関する第一の臨床研究では、高い奏効率が、メルファラン及びインターフェロンyと組合せた、4mgのTNFの特有の用量で、得られた(Lienard, D. , et al., In transit metastases of malignant melanoma treated by high dose rTNF alpha in combination with interferon-gamma and melphalan in isolation perfusion. World Journal of Surgery 1992.16: 234-40.)。その他の研究は、インターフェロンyを省略することができ、さらにより少ない用量のTNFが治療反応を誘導するのに十分であり得ることを示した(Hill, S. , et al., Low-dose tumour necrosis factor alpha and melphalan in hyperthermic isolated limb perfusion. Br. J. Sugr. 1993.80: 995-7; Eggermont, A. M. , et al., Isolated limb perfusion with tumor necrosis factor and melphalan for limb salvage in 186 patients with locally advanced soft tissue extremity sarcomas. The cumulative multicenter European experience. Ann. Surg. 1996.224 : 756-65.)。2つのサイトカインが内皮細胞に対して相乗効果を発揮するので、それらを組合せたその選択的なターゲティングは、より強力な抗腫瘍活性をもたらす可能性があり、従って、同じサイトカインを組合せて用いたがん治療で通常直面する全身毒性の問題を克服することを可能にする。さらに、TNFは、血管内皮のバリア機能を減少させ、その結果、高分子の透過性を増加させることが知られている。本発明による修飾TNF分子を用いた治療のより低い毒性、及びその腫瘍血管指向特性を利用した、その他の適用は、治療又は診断のいずれかの目的で、その他の化合物に対する腫瘍血管の透過性を増加させるための使用である。例えば、修飾TNFを使用して、腫瘍の放射免疫シンチグラフィー又は放射免疫療法における、放射標識抗体又はホルモン(腫瘍イメージング化合物)の腫瘍の取込みを増加させることができる。代替的には、化学療法薬剤、免疫毒素、リポソーム運搬薬剤若しくは遺伝子(liposomes carrying drugs or genes)、又はその他の抗がん剤の取込みを増加させて、それらの抗腫瘍効果を高めることもできる。従って、本発明のサイトカインは、がんの治療又は診断において、その他の診断又は治療用物質とも、組合せた、別々の、又は連続した調製物において使用することができる。
【0057】
本発明は、修飾TNFとINFyとの組合せの使用に関する。この組合せは、組合せた、別々の、又は連続した調製物において使用することができる。有利には、組合せはまた、がんの治療又は診断における、その他の診断又は治療用物質、例えば、ドキソルビシン及びメファラン(mephalan)との組合せである。従って、本発明は、修飾TNFとIFNyとの組合せ、任意選択で、別の腫瘍診断又は抗腫瘍治療物質を含む、医薬組成物を提供する。繰り返しになるが、この組合せは、組合せた、別々の、又は連続した調製物において使用することができる。
【0058】
特許出願番号第PCT/IB03/02187号において、ピコグラム用量のサイトカインの標的送達は、化学療法薬剤の透過を向上させ、化学療法薬剤の治療指数を増加させるための新規で驚くべき戦略を提供することを見出した。特許出願番号第PCT/IB03/02187号は、その全てが、参照によって本明細書に援用される。さらに詳細には、腫瘍及び腫瘍血管系を含む腫瘍関連環境への非常に低用量のサイトカインの送達は、ネガティブフィードバックメカニズムを避け、薬剤透過バリアを変化させる能力を保持する新規の手法を意味することを見出した。
【0059】
本発明の組成物は、非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼球内、経口、又は経皮投与のために配合することができる。本発明のこの態様の一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、0.5から500ng/kgの範囲、好ましくは1から50ng/kgの範囲、より好ましくは5から15ng/kgの範囲の用量で投与することができる。
【0060】
本発明のこの態様の別の実施形態において、IFNyと組合せた本発明のコンジュゲートであって、コンジュゲート又はその代謝産物を、治療される対象の血漿に、約35,000ng/day以下、好ましくは約3,500ng/day以下、より好ましくは約1,000ng/day以下の量で供するような量で存在するコンジュゲートを含む、医薬組成物を提供する。
【0061】
上記の用量は、70kgの対象に関する用量に関する。当業者は、70kg以外の質量を有する対象のために、列挙された用量を容易に改変することができるだろう。
【0062】
当業者は、任意の特定の患者及び疾患に対して、最適な投与経路及び投薬計画を容易に決定することができるので、記載される投与経路及び投薬計画は単に手引きを意図する。
【0063】
本発明の別の態様は、CD13リガンド、好ましくは上述のホーミングペプチドをコードする5’-又は3’-連続DNA配列の付加によって、サイトカインcDNAから調製することができる、本明細書に開示するコンジュゲートサイトカインをコードするcDNAに関する。連結したcDNAは、それ自体として使用するか、又は遺伝子治療のためのベクターに挿入後に使用することができる。適切なベクターの調製及び治療適用は、(Mizuguchi, H., et al., Tumor necrosis factor alpha-mediated tumor regression by the in vivo transfer of genes into the artery that leads to tumor. Cancer Res. 1998.58 : 5725-30.)に開示され、本明細書に参照によって援用される。
【0064】
本発明における使用のためのポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドコンジュゲートをコードする核酸配列を含む。遺伝コードの縮退の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドが、同じポリペプチドをコードすることができると、当業者は理解する。さらに、当業者が、所定の技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドにコードされるポリペプチド配列に影響を与えない、ヌクレオチド置換を作製し、本発明のポリペプチドが発現される、任意の特定の宿主生物のコドン使用を反映することができると理解される。
【0065】
本発明のポリヌクレオチドは、DNA又はRNAを含み得る。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖又は二重鎖であってもよい。本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド内に合成ヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドを含む、ポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドに対する多くの異なる種類の修飾が、本分野で知られている。これらは、メチルホスホネート及びホスホロチオエートバックボーン、分子の3’及び/又は5’末端におけるアクリジン又はポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的のために、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本分野で利用することができる任意の方法によって修飾することができると理解される。そのような修飾は実施され、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性又は生存期間を向上させることができる。
【0066】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え複製ベクターに組込むことができる。ベクターは、適合する宿主細胞中で、核酸を複製するために使用することができる。従って、更なる実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを複製ベクターに導入し、適合する宿主細胞にベクターを導入し、ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって、本発明のポリヌクレオチド製造する方法を提供する。ベクターは、宿主細胞から回収することができる。適切な宿主細胞は、細菌(例えば、大腸菌(E. coli))、酵母、哺乳類細胞株、及びその他の真核細胞(例えば、昆虫Sf9細胞)を含む。
【0067】
好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を供することができるコントロール配列に、操作可能に連結しており、すなわち、ベクターは、発現ベクターである。用語「操作可能に連結」は、記載される構成要素が意図するように機能することを可能にする関係にあることを意味する。コード配列に操作可能に連結した調節配列を、コード配列の発現が、コントロール配列に適合した条件下で、達成されるような方法でライゲーションする。
【0068】
コントロール配列を修飾してもよく、例えば、更なる転写調節因子の付加によって修飾して、コントロール配列に指示される転写のレベルを、より転写調節物質に反応よくすることができる。
【0069】
本発明のベクターは、以下に記載の適切な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクションして、本発明のタンパク質の発現を提供することができる。この方法は、タンパク質をコードするコード配列のベクターによる発現を供する条件下で、上述の発現ベクターで形質転換した宿主細胞を培養する工程、及び任意選択で、発現タンパク質を回収する工程を含む。
【0070】
ベクターは、例えば、複製の起点、任意選択で上記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択でプロモーターの調節因子とともに提供される、プラスミド又はウイルスベクターであり得る。ベクターは、1つ又は複数の選択可能マーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合のアンピシリン耐性遺伝子又は哺乳類ベクターに関してはネオマイシン耐性遺伝子を含んでもよい。ベクターを使用して、例えば、宿主細胞をトランスフェクション又は形質転換することができる。
【0071】
本発明のタンパク質をコードする配列に操作可能に連結したコントロール配列は、プロモーター/エンハンサー、及びその他の発現調節シグナルを含む。これらのコントロール配列は、発現ベクターを使用するように設計した宿主細胞に適合するように、選択することができる。用語「プロモーター」は、本分野においてよく知られており、最小プロモーターから、上流のエレメント及びエンハンサーを含むプロモーターまで、様々なサイズ及び複雑性の核酸領域を包含する。
【0072】
原核生物プロモーター及びその他の真核生物細胞で機能するプロモーターを使用することができるが、プロモーターは、典型的には、哺乳類細胞で機能するプロモーターから選択する。プロモーターは、典型的には、ウイルス又は真核生物遺伝子のプロモーター配列に由来する。例えば、プロモーターは、発現が起きる細胞のゲノムに由来するプロモーターであってもよい。真核生物プロモーターに関して、プロモーターは、ユビキタスな形式で(例えば、a-アクチン、b-アクチン、チューブリンのプロモーター)、又は、代替的には、組織特異的な形式で(例えば、ピルビン酸キナーゼに関する遺伝子のプロモーター)機能するプロモーターであり得る。特定の細胞に特異的な組織特異的プロモーターも使用され得る。プロモーターはまた、特定の刺激に反応するプロモーターであってもよく、例えば、ステロイドホルモン受容体に結合するプロモーターであってもよい。ウイルスプロモーターもまた、使用することができ、例えば、モロニーマウス白血病ウイルスの長い末端反復(MMLV LTR)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター、又はヒトサイトメガロウイルス(CMV) IEプロモーターも使用することができる。細胞の生存期間の間、異種遺伝子の発現のレベルを制御できるように、プロモーターが誘導性であることはまた、有利であり得る。
【0073】
誘導性は、プロモーター使用して得られる発現のレベルを制御できることを意味する。
【0074】
さらに、任意のこれらのプロモーターは、更なる調節配列、例えば、エンハンサー配列の付加によって、修飾することができる。2つ又はそれより多くの異なる上述のプロモーター由来の配列因子を含む、キメラプロモーターもまた、使用することができる。
【0075】
本発明のベクター及びポリヌクレオチドを、ベクター/ポリヌクレオチドを複製する目的、及び/又は本発明のポリヌクレオチドによってコードされる本発明のタンパク質を発現させる目的で、宿主細胞に導入することができる。
【0076】
本発明のタンパク質は、宿主細胞として原核細胞を使用して、産生することができるが、真核細胞、例えば、酵母、昆虫、又は哺乳類細胞、特に哺乳類細胞を使用することが好ましい。
【0077】
本発明のベクター/ポリヌクレオチドを、本分野で既知の様々な技術、例えば、トランスフェクション、形質転換、及びエレクトロポレーションを使用して、適切な宿主細胞に導入することができる。本発明のベクター/ポリヌクレオチドを動物に投与する場合、いくつかの技術、例えば、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、及びアデノウイルス等の組換えウイルスベクターを用いたインフェクション、核酸の直接注射、並びにバイオリステック形質転換が、本分野で知られている。
【0078】
本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を使用して、本発明のコンジュゲートを発現することができる。宿主細胞は、本発明のポリペプチド及びコンジュゲートを発現させる適切な条件下で、培養することができる。本発明の産生物の発現は、持続的に産生されるように構造的であってもよく、誘導性であって、発現を開始する刺激を必要としてもよい。誘導性発現の場合、タンパク質の産生は、必要である場合に、例えば、培養培地への誘導物質(例えば、デキサメタゾン又はIPTG)の添加によって、開始することができる。
【0079】
本発明のコンジュゲートは、酵素溶解、化学溶解、及び/又は浸透圧溶解、並びに物理的破壊を含む、本分野で既知の様々な技術によって、宿主細胞から抽出することができる。
【0080】
本発明は、以下の図を参照にして、非限定的な例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】全体的な試験計画。2相におけるエンドポイント及び統計が報告される。NGR-hTNF/RCHOPレジメンは、構成的及び臨床的な理由から、2相で異なった。
【
図2】予備段階の計画(第一の10人の患者)。登録された患者は、NGR-hTNFが先行しない第一のコースのR-CHOPを受け、一方で、その他の5コースは、NGR-hTNFが先行した。脳MRIは、奏効評価のために実施されるガドリニウム増強磁気共鳴画像を示し、一方、DCE-MRIは、BBB透過性の変化を評価するために使用する脳のダイナミックコントラスト強調MRIである。SPECTは、第3のコースの前及び後に実施される、単光子放出コンピューター断層撮影であり、BBB透過性の変化を評価する。矢印は、CSF及び血漿試料の回収を表す。
【
図3】拡大段階の計画(第二の18人の患者)。登録された患者は、6コースのNGR-hTNF/R-CHOPを受けた。脳MRIは、奏効評価のために実施されるガドリニウム増強磁気共鳴画像を示す。矢印は、ベースラインCSF及び血漿試料の回収を表す。
【
図4】奏効者におけるDCE-MRIによって評価されたBBB透過性の変化。増強領域の変化は左、及び病変部周辺領域の変化は右に表す;結果をKtransで表す。第一のコース(NGR-hTNFなし)及び第二のコース(NGR-hTNFあり)での、各患者の値を、線で結ぶ。サブグループごとの中央値及び値域(range)値が、各グラフの下に報告される。
【
図5】治療の第三のコースにおける、NGR-hTNF及びそれに続くR-CHOPの注入後の
99mTc-DTPAの取込みの増加の例。30%以上(≧30%)の
99mTc-DTPAの取込みのボリュームに、NGR-hTNF及びR-CHOPの投与の前(左の画像‐青い線)及び後(中央の画像‐緑の線)に実施する2つのSPECT試験において、曲線を付けた。曲線を付けたボリュームの比較は、腫瘍(赤い画像)を示すガドリニウム増強T1強調MRI中に表わされる。NGR-hTNF/R-CHOP送達の前及び後の対象のボリュームは、それぞれ、22cm
3及び40cm
3であった。
【
図6】腫瘍血管系の内膜によるCD13の発現。A)登録された患者の診断用脳生検のリンパ腫コンポーネント内のCD13発現の免疫組織化学解析。染色は、抗CD13モノクローナル抗体 SP187を単独で使用して実施した(茶色のシグナル、400×)。B)CD13及びαSMA(周皮細胞のマーカー)の免疫組織化学解析。抗CD13モノクローナル抗体 SP187(茶色)、及び抗αSMAモノクローナル抗体 1A4(赤)を用いて、共染色を実施した。黒の矢印は、CD13陽性血管、赤の矢印は、αSMA陽性血管周囲細胞を示す(バー20μm;630×)。左パネル:周皮細胞被覆(赤)を伴う大血管及びいくらかの微小血管を有する領域の代表写真であり、周皮細胞の非存在下においてもCD13染色(茶色)を示す。右:いくらかのC13陽性微小血管(茶色)を有する領域の代表写真。C‐D)抗CD13抗体(緑)を用いて、及び抗αSMA抗体 1A4(赤)を用いて染色された組織切片の共焦点免疫蛍光解析(400×、バー:50μm)。差し込み図:CD13が血管内皮の腔側に発現することを示す、成熟血管(アスタリスク)のCD13及びαSMA染色の3D画像(3D projection)(400×、バー:25μm)。
【
図7】NGR-hTNFが先行するR-CHOPに対する奏効の例。A)ガドリニウム増強T1強調スキャンは、高用量メトトレキサート後、並びにサルベージ高用量イホスファミドベースの治療及び全脳放射線照射後に二次再発した65歳男性における、右頭頂葉の大きな均質増強病変(矢印)を示す。B)4コースの実験的治療後の腫瘍退縮。C)ガドリニウム増強T1強調スキャンは、事前の高用量メトトレキサートベースの化学免疫療法に難治性であるPCNSLの39歳男性における、大脳基底核、間脳、及び左側頭葉に浸潤する、大きな多葉(polylobate)の増強病変(矢印)を示す。D)4コースの実験的治療後の腫瘍退縮。
【
図8】クロモグラニンA(CgA)血漿レベル、PPI療法、及び奏効。A)CgA血漿レベルとNGR-hTNF/R-CHOPに対する奏効との間の関係性。完全寛解(n=12)に達した患者、及び完全寛解に達しなかった患者(その他、n=16)のCgAのベースライン血漿レベルを示す。CgAレベルの中央値(値域)は、それぞれ、1.14nM (0.29-2.72)及び2.10nM (0.47-5.81)であった(p= 0.066)。B及びC)プロトンポンプ阻害剤(PPI)中断後のCgA血漿レベルの変化。試験登録時に(ベースライン)及び第三のコース前に(2か月)採取した血漿試料のCgA濃度の比較は、PPI中断後に一部の患者でのレベルの減少を示した(B)が、一方で、この薬剤を投与されなかった患者では、値は一定を維持した(C)。完全寛解に達した患者(実線)又は部分奏効に達した患者(点線)間では、差異は検出されなかった。
【
図9】CNS原発リンパ腫血管系における内皮細胞及び周皮細胞によるCD13の発現。ポリクローナル抗CD13抗体(緑)を用いて、及びポリクローナル抗CD31抗体(内皮細胞のマーカー、赤)を用いて染色した、2人の登録患者由来のPCNSL組織切片の高解像度広視野共免疫蛍光解析。DAPIを用いた核染色(青)。A‐C)CD13陽性内皮細胞(矢印、マージ画像(merged figure)の黄色)及びCD13陽性の壁細胞(アローヘッド、緑、恐らく周皮細胞)を有する血管の例。パネルAに報告される血管のzスタック画像に関して、補足動画(Supplemental Movie)も参照。B)中央のパネル:左のパネルに示される血管の強調された領域(破線の長方形)の電子工学的拡大。B)右パネル:二次抗体単独を用いた連続切片で実施したコントロールであり、染色の欠如を示す。D)CD13陽性壁細胞及びCD13陰性内皮細胞を有する血管の例(マージ画像において、それぞれ、緑及び赤、アローヘッド及び矢印)。スケールバーは5μm、倍率は各パネルに示されている。
【
図10】PCNSL血管系におけるCD13及びPDGFRβの発現。ポリクローナル抗CD13抗体(緑)を用いて、及びポリクローナル抗PDGFRβ抗体(周皮細胞のマーカー、赤)を用いて染色した、登録患者のPCNSL組織切片の高解像度広視野共免疫蛍光解析。DAPIを用いた核染色(青)。3つの異なる血管の代表の染色を示す。倍率は60×、スケールバーは10μm。
【発明を実施するための形態】
【0082】
患者及び方法
試験対象母集団及び選択基準
「INGRID」試験は、NGR-hTNFが先行する6コースのR-CHOPを、再発したPCNSL又は難治性PCNSLを有するHIV陰性患者に注入することからなる、実験的治療に焦点を当てたシングルアームII相試験である(EUDRACT: 2014-001532-11‐clinicaltrials.gov NCT03536039)。試験は2つの異なる部分を有する(
図1):第一の部は、実施可能性及びBBB透過性に対するNGR-hTNFの効果の「概念実証」に注目し;第二の部は、実験的治療の活性及び耐容性に注目する。選択基準は、1) WHO基準(17)によるDLBCLの組織学的に証明された診断;2)最初の診断時及び試験登録時の両方において、CNS、脳神経、髄膜、及び/又は眼にだけに局在する疾患;3)高用量メトトレキサートを含む化学療法後に再発した、又は事前の高用量メトトレキサートを含む事前の化学療法に対して難治性であるリンパ腫;4)測定可能な疾患;5) 18から80歳;6) ECOGパフォーマンスステータスが3以下(≦3)である。以前に臓器提供を受けた若しくは免疫抑制のその他の形態を有する患者、HBV、HCV、及び/若しくはHIV感染を有する患者、又はその他の悪性腫瘍を有する患者は除外した。事前の治療の間の任意の種類の地固め療法(すなわち、全能放射線療法 -WBRT-,自家幹細胞移植-ASCT-、経口薬剤維持療法(oral drug maintenance))は、認めた。試験登録前に、診断及び再発時に実施した病理組織学的診断試料及び神経画像検査を、中心的に再検討し、患者を、身体的及び神経学的検査、ヘモグラム及び生化学的血清プロファイル(ウイルスマーカー:HIV、HBV、HCVを含む)、心エコー検査、強調頸部、胸部、及び腹部CTスキャン、骨髄生検、コントラスト強調脳MRI、CSF検査、眼科的評価、並びに
18FDG-PETによって評価した。リスクは、診断時及び試験登録時の両方において、IELSGスコアに従って規定した(18)。適格性が確認された後、及びプロトコール内容の患者のレビュー後に、各患者から書面のインフォームドコンセントを取得した。この試験は、ヘルシンキ宣言に準拠し、イタリア ミラノのSan Raffaele Scientific InstituteのIRBに承認された。
【0083】
予備段階(Explorative phase):計画及び治療
予備段階の計画は
図2にまとめた。第一の10人の登録患者は、NGR-hTNFが先行しない第一のコースのR-CHOPを受けたが、その他の5コースは、NGR-hTNFが先行した(表2(Table 1))。
【0084】
【0085】
すなわち、登録患者は、NGR-hTNFが先行する、6コースのR-CHOP21を受けた。治療は2日間行った:375mg/m2のリツキシマブが1日目に送達され、2日目に、CHOP薬剤の2時間前に、0.8μg/m2の用量のNGR-hTNFが1時間の注入によって送達された。プロトコールにより、第一の10人の患者において、R-CHOPの第一のコースは、NGR-hTNFに先行されなかった(14)。NGR-hTNFのタイミング及び投与スケジュールに関する論拠は、以前に報告されている(14)。従って、拡大段階において(第一の10のコホートの後)、登録患者は、NGR-hTNFが先行する、6コースのR-CHOPを受けた。NGR-hTNFの各注入を開始する30~60分前に、輸注関連反応の予防として、1.000mgの用量のアセトアミノフェン/パラセタモールを経口的に又は静脈内に送達した。ステロイドは避けたが、プレドニゾロンの5日間ではなく、臨床的に必要であれば、NGR-hTNF注入の日を妨げた。PPIを用いた治療は避け、試験登録時に、H2遮断薬(すなわち、ラニチジン)に置き換えた。
【0086】
計画した6コースを完了し、完全奏効(PR)又は部分奏効(PR)を達成した患者を、地固め療法のために評価した。プロトコールに従って、及び事前の治療に従って、WBRT 30~36Gy、カルムスチン-チオテパ-前処置ASCT、又は経口レナリドミド維持療法を許容した。
【0087】
拡大段階(Expansion phase)
NGR-hTNF/R-CHOP(コース#1~6)
1日目:リツキシマブ 375mg/m2(静脈内注入)
NGR-hTNF 0.8μmg/m2(リツキシマブの直後に、1時間の注入)
シクロホスファミド 750mg/m2(NGR-hTNFの1時間後に静脈内ボーラス)
ドキソルビシン 50mg/m2(シクロホスファミドの直後に、静脈内ボーラス)
ビンクリスチン 1.4mg/m2(最大2mg)(ドキソルビシンの直後に、静脈内ボーラス)
2~6日目:プレドニゾン 75mg/d(経口)
【0088】
R-CHOPを従来の用量で送達した:0日目に静脈内(IV)注入としてリツキシマブ 375mg/m2、その後、1日目に、IVボーラスとしてシクロホスファミド 750mg/m2、IVボーラスとしてドキソルビシン 50mg/m2、及びIVボーラスとしてビンクリスチン 1.4mg/m2(最大2mg);2~6日目に、経口でプレドニゾン 75mg/d。CHOPの2時間前に、NGR-hTNF 0.8μg/m2を、1時間の注入によって、送達した。プロトンポンプ阻害剤を用いた治療は避けた。なぜならば、これらの薬剤は、クロモグラニンのレベルを増加させ、最終的に、NGR-hTNFの活性を妨げ得るからである。H2遮断薬(すなわち、ラニチジン)を、胃保護療法として、許容した。ステロイドは避けたが、プレドニゾロンの5日間ではなく、臨床的に必要であれば、NGR-hTNF注入の日を妨げた。
【0089】
拡大段階:計画及び治療
拡大段階の計画を、
図3にまとめた。その他の18人の登録患者(第一の10人の後)は、NGR-hTNFが先行する、6コースのR-CHOPを受けた(表2(Table 1))。その他の違いは、1日の全ての薬剤の送達に関する:すなわち、静脈内(IV)注入としてリツキシマブ 375mg/m
2、その後、1時間の注入によるNGR-hTNF 0.8μmg/m
2、及び、2時間後に、CHOP薬剤が送達される(IVボーラスとしてシクロホスファミド 750mg/m
2、IVボーラスとしてドキソルビシン 50mg/m
2、及びIVボーラスとしてビンクリスチン 1.4mg/m
2(最大2mg);2~6日目に、経口でプレドニゾン 75mg/d)。プロトンポンプ阻害剤及びステロイドの使用は、上述した推奨に同じく従う。計画した6コースを完了し、予備段階又は拡大段階の間に、完全奏効(PR)又は部分奏効(PR)を達成した患者を、地固め療法のために評価した。プロトコールに従って、及び事前の治療に従って、WBRT 30~36Gy、カルムスチン-チオテパ-前処置ASCT、又は経口レナリドミド維持療法を許容した。
【0090】
薬剤
リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンは、任意の市販の形態、又はその他入手可能な形態である。
【0091】
NGR-hTNF
大腸菌(E.coli)細胞に発現された、配列:
CNGRCGVRSSSRTLSDKPVAHVVANPQAEGQLQWLNRRANALLANGVELRDNQLVVPSEGLYLIYSQVLFKGQGCPSTHVLLTHTISRIAVSYQTKVNLLSAIKSPCQRETPEGAEAKPWYEPIYLGGVFQLEKGDRLSAEINRPDYLDFAESGQVYFGIIAL(配列番号1)
の、ヒト腫瘍壊死因子アルファのN末端に融合した、CNGRCGからなる遺伝子組換えタンパク質。NGR-hTNFアナログは、参照により援用される、国際公開第2004/041297号及び国際公開第01/61017号に記載されている。
【0092】
毒性及び奏効評価
治療副作用を、各化学療法コースに関して、別々に評価し、NCI-NCIC CTC バージョン3・0 (19)に従って格付けした。臓器ごと、患者ごとの最悪の毒性を検討した。定期的なスペシャリストコントロール、ECG、トロポニンレベルの決定、及び心エコー検査を、毎回の治療コースの前に実施して、心毒性を排除した。認知機能に対する治療の影響は、そのための検査による評価を行わなかった。全ての適格な患者を、奏効評価について検討した。奏効を、治療の第一、第二、第四、及び第六のコース後に、1.5テスラスキャナーで実施する脳のガドリニウム増強MRIによって、評価した(
図2及び
図3)。ポジティブなCSF及び/又は硝子体液(vitreous)を伴う場合、第二、第四、第六のコース後に検査を実施した。奏効は、IPCG基準(20)に従って、規定した(表3(Table 2))。
【0093】
【0094】
簡潔には、CRは、リンパ腫の全ての形跡の消失からなり;PRは、腫瘍サイズの50%より多くの(>50%)の減少であり;進行性疾患(PD)は、腫瘍サイズの25%より多くの(>25%)増加又は任意の新たな病変の発見であり;全てのその他の状態は安定な疾患(stable disease, SD)としてみなした。IPCG基準の重要な変化として、2回連続MRIで腫瘍退縮が確認された場合のみ、「奏効(response)」とみなされ、従って、各「奏効」は、6~8週間の最小継続期間を要した。第一のコースのR-CHOP後の奏効は、治療的決定に至らせなかったが、任意のその後のMRIの時点でPDであった患者は、「試験停止(off study)」とみなし、組織のガイドラインに従って、治療した。治療開始から記録した最大奏効は、解析を検討した。奏効期間を、最大奏効の日から、客観的増悪(objective progression)、任意の原因による死、又は経過観察最終診察の日まで、測定した。治療終了後、疾患を、3か月ごとに評価した。
【0095】
バイオマーカー評価
CgA並びにsTNF-R1及びsTNF-R2の血漿レベルを、腫瘍応答評価と同時に採取した試料について、ELISAによって検査した。
【0096】
CgA並びにsTNF-R(受容体1及び2)の血漿レベルを、腫瘍応答評価と同時に、すなわち、治療の第一のコースの前、並びに第二及び第六のコースの後に、採取した試料について、検査した。sTNF-Rは、市販のキット(DuoSet ELISAs, R&D Systems社)を使用して、検査した。CgA血漿レベルは、捕捉工程でのモノクローナル抗体B4E11、及び検出工程での抗CgAのウサギ抗血清の使用に基づく、自家製のELISAキットを使用することによって評価した(21)。
【0097】
PPI療法(PPI療法である及びPPI療法でない(yes vs. not))とCgAの血漿レベル(連続型変数)及び(連続型変数)との間の関係性を、Mann-WhitneyのU検定によって評価した。治療奏効(CRである及びCRでない(CR vs, not CR))とCgA又はsTNF-Rの血漿レベルとの間の関係性をカイ二乗検定によって評価し、カットオフを使用して、「低い」血漿レベルと「高い」血漿レベルを有するサブグループを区別した。カットオフは、ROC曲線に基づいて選択した。
【0098】
CgA又はsTNF-R(連続型変数)と治療奏効(CR vs. not CR)とPPI療法(yes vs. not)との間の関係性を、Mann-WhitneyのU検定によって評価した。
【0099】
PCNSL血管系のCD13(NGRの標的)の発現を明らかにするために、抗CD13及び抗CD31(内皮細胞のマーカー)抗体を用いて、並びに抗CD13及び抗血小板由来成長因子受容体‐β(PDGFR-β;周皮細胞のマーカー)抗体を用いて、登録患者の腫瘍組織切片について、二重免疫蛍光染色実験を実施した。
【0100】
免疫蛍光試験
腫瘍組織におけるCD13、CD31、及び血小板由来成長因子受容体-β(PDGFR-β)の発現を、登録患者の診断用試料のパラフィン包埋試料(10μmの厚さ)について、免疫蛍光技術によって評価した。抗原賦活化後、抗CD13/APNのウサギポリクローナル抗体(1051-RP02, SinoBiological社, 1:500)、抗CD31/PECAM-1のヒツジポリクローナル抗体(内皮細胞のマーカー、 AF806, R&D System社, 15μg/ml)、及び抗PDGFR-βのヤギポリクローナル抗体(周皮細胞のマーカー、AF385, R&D System社, 10μg/ml)を使用して、免疫蛍光染色を実施した。抗体を、1% BSA、5% 正常ウマ血清、0.1% Triton X-100を含むPBSで希釈し、4℃で一晩インキュベーションした。洗浄後、CD13とCD31の二重染色に関して、抗CD13抗体及び抗CD31抗体の結合を、ロバの抗ウサギ IgG-Alexa Fluor 488(緑、4μg/ml)コンジュゲート及びロバの抗ヒツジ IgG-Alexa Fluor 568(赤、4μg/ml)コンジュゲートからなる二次抗体の混合物を使用して、検出した。CD13とPDGFRβの二重染色に関して、抗CD13抗体及び抗PDGFR-β抗体の結合を、ロバの抗ウサギ IgG-Alexa Fluor 488(緑、4μg/ml)コンジュゲート及びロバの抗ヤギ IgG-Alexa Fluor 546(赤、4μg/ml)コンジュゲートからなる二次抗体の混合物を使用して、検出した。核染色は、DAPIで実施した(青)。蛍光シグナルは、40X/1.35、60X/1.42、及び100X/1.4の対物レンズを備える、高解像度広視野顕微鏡(DeltaVision(商標) Ultra, GE healthcare社)を使用して取得した。Z-スタックの取得は、0.2μm及び0.3μm間隔で実施した(それぞれ、100Xの対物レンズ、及び40X又は60Xの対物レンズ)。Z-スタックを、内蔵のソフトウェアを使用して、デコンボリューション及び必要な処理を行った。画像は、Image Jソフトウェアを使用して、Z-スタックから抽出した。
【0101】
統計学的検討
全奏効率(ORR:CR及びPR)がプライマリーエンドポイントであり、Simonの二段階ミニマックスデザインを使用した。低い興味と考えられる最大ORRは、30%(本発明者らの施設で実施された、PCNSL患者におけるサルベージ治療に注目した以前の前向き試験で報告された率と同様に(22, 23))であり、興味があると考えられる最小ORRは50%であった。その違いを実証するために、総計28人の患者を必要とした(片側検定;第一種のエラー(type I error).10;検出力(power).9)。第一段階では、12人の患者が登録され、少なくとも4つの奏効が見られた場合、試験を総計28人まで継続する。少なくとも12の奏効が記録された場合、実験的治療は有効であると断言される。奏効と臨床的及び治療的変数の関連性は、Fisherの正確確率検定によって、検討した。解析した変数は、年齢(60歳以下と60歳より上(≦60 years vs. >60 years))、LDH血清レベル(正常と高い(normal vs. high))、CSFタンパク質濃度(正常と高い(normal vs. high))、疾患の部位(周辺部と深部(peripheral vs. deep))、以前の治療(1と2~3 (1 vs. 2-3))、以前の地固め療法(なしとWBRT及び/又はASCT (none vs. WBRT及び/又はASCT))、失敗の種類(再発した疾患と難治性疾患(relapsed vs. refractory disease))であった。
【0102】
奏効期間、PFS、OS、及び耐容性を、セカンドエンドポイントとした。奏効期間は、奏効が記録された最初の評価から、再発の日、任意の原因による死亡の日、又は経過観察の最終診察の日までの時間として規定した。PFSは、試験に参加した時間と失敗(疾患の再発又は疾患の増悪)、任意の原因による死、又は経過観察の最終診察の日との間の間隔として規定した。OSは、試験への参加から、任意の原因による死又は経過観察の最終診察の日までの時間として規定した。耐用性は、NCI CTCAE (19)に従って、グレード3~4のAEによって規定した。
【0103】
神経画像検査により評価したBBB透過性
リンパ腫病変の位置、腫瘍周辺の領域(病変部周囲領域)の位置、及び正常に見える脳実質におけるBBB透過性の、NGR-hTNFによって誘導される変化を、DCE-MRIによって評価した。DCE取得は、従来のT1、T2、フレア(Flair)、DWI、及びダイナミック磁化コントラスト灌流(Dynamic Susceptibility Contrast Perfusion; DSC)シーケンスも含む標準プロトコール(28)に従った。
図5に示されるように、DCE-MRIは、0日目(治療前‐ベースラインデータ)、並びに1日目の第一(R-CHOPのみ)、第二(NGR-hTNFが先行する最初のコースのR-CHOP)、及び第六(NGR-hTNFが先行するR-CHOPの最後のコース)の治療コースに、従来型のMRI検査内で、実施した。多数の病変がある場合は、最も大きい病変を検討した。DCE-MRIの後処理を、Oleaソフトウェア(La Ciotat, フランス)を使用して実施した。全ての動態イメージを、動きアーチファクトに関して補正し、コントラスト後ボリュメトリックT1シーケンス(volumetric post- contrast T1 sequence)に共記載した。結果を、対側の白質を使用して標準化したKtrans値として表した。第二のコース後に得たKtrans(NGR-hTNF注入後に測定した)を、第一のコース(NGR-hTNFなし)後に得たKtransと比較し、BBB透過性に対するTNFの効果を確立した。統計学的有意性は、Wilcoxonの対応した検定(Wilcoxon matched pairs test)によって評価した。
【0104】
SPECTにより評価したBBB透過性
NGR-hTNFによって誘導されたBBB透過性の変化を、脳シンチグラフィーによっても評価した。親水性のため、99mTc-ジエチレントリアミン五酢酸(99mTc-DTPA)は、破壊されたBBBのみ透過し、変化した組織内に広がり、まだよく解明されていないメカニズムによって結合する。脳病変の位置における、トレーサーの取込み量は、BBB透過の程度に比例して増加する。脳シンチグラフィーは、2度、第三のコースの治療の前の数日(中央値4日、値域1~6)、基本条件で(bBS)、及び第三のコースの終了後(paBS)に、取得した。およそ555~740MBqの99mTc-DTPAを、静脈内ボーラスで注入した。90~120分後、低エネルギー高解像度コリメーター対に装備されたデュアルヘッドγ‐カメラを使用して、SPECT/CT検査を実施した。bBS及びpaBSの両方について、定性的及び半定量的評価を実施した。特に、半定量的評価に関しては、PMODソフトウェア(ver. 3.2, PMOD Technologies社, スイス)を使用し、99mTc-DTPA取込みの量を評価した。最大取込みの30%の関心ある量が、自動等値面法(automatic isocontour method)によって、99mTc-DTPA陽性領域の周囲に描出された。bBSとpaBSとの間の99mTc-DTPA取込みの量における変化の統計学的有意性は、Wilcoxonの対応した検定によって評価した。
【0105】
CNGRCGペプチドの標的受容体(CD13)の発現
NGR-hTNFのCNGRCG部位は、腫瘍血管に発現するCD13形態を認識することができ、結果として、腫瘍内皮へのTNFの標的送達をもたらす。治療する腫瘍中のこのCD13形態の存在を、登録患者の診断用組織試料のパラフィン包埋試料についての免疫組織学的及び免疫蛍光技術によって評価した。試験及び実験的治療において、CD13の発現は、患者の登録の条件とはしなかった。
【0106】
免疫組織学的解析は、イムノステイナー(immunostainer) Ventana-Roche Ultrabenchmark XT、抗CD13モノクローナル抗体(mAb) SP187、及び抗α‐平滑筋アクチン(α‐SMA、周皮細胞のマーカー)mAb 1A4 (Sigma社, 10μg/ml)を使用して、自動で実施した。免疫蛍光染色は、抗原賦活化後、1% BSA、5% 正常ウマ血清、0.1% Triton X-100を含むPBS中の抗CD13ポリクローナル抗体(1051-RP02, SinoBiological社, 1:500)及び抗αSMA抗体(mAb 1A4, Sigma社, 10μg/ml)を使用して実施した。一晩のインキュベーション後、結合した抗体を、ロバの抗ウサギ IgG-Alexa Fluor 488(緑)(4μg/ml)コンジュゲート及びロバの抗マウス IgG-Alexa Fluor 647(赤外)(4μg/ml)コンジュゲートからなる二次抗体の混合物を使用して、検出した。核染色は、DAPIを用いて実施した(青)。蛍光シグナルを、40x/0.4の対物レンズ、Navigator Module、及びLASX acquisition softwareを備える倒立ポイント走査共焦点SMD-SP8 Leica Microsystemを使用して取得した。
【0107】
結果
評価可能な試験対象母集団
2016年5月と2018年12月の間に、28人の患者を登録した。全ての患者が、活性及び耐容性について、評価可能であった。評価する患者28人の年齢の中央値は、58歳であり(値域26~78)、14人が男性であった(表4(Table 3))。
【0108】
【0109】
ほとんどの患者が、試験登録時に好ましくない特性を有していた:23人の患者(82%)は、中度~高度のIELSGリスクスコアを有し、15人の患者がECOG-PS≧2を有し、11人の患者が増加したLDH血清レベルを有し、11人の患者が高いCSFタンパク質濃度を有し、12人の患者が脳の深部領域の病変を有した。全ての患者が、脳実質の病変を示し、3人は同時に眼球内疾患を示した。髄膜疾患を有する患者はいなかった。患者は高度に前治療されており、10人が2又はそれより多くの事前の治療を受けており、17人の患者(61%)がASCT、WBRT、又はその両方を受けていた。15人の患者(54%)において、リンパ腫は前の治療に難治性であった。
【0110】
毒性
実験的治療は、良好に耐容性を示した(表5(Table 4))。
【0111】
【0112】
計画した168コースのうち132コース(79%)が、送達された。予期しない毒性又は毒性による中断の症例はなく、用量の減少を必要とする患者はいなかった。治療の遅れは、血球減少のため、6コースでのみ(4%)記録された。12人の患者において、16の重度な副作用が記録された:発作(3)、深部静脈血栓症(2)、グレード3の感染症(5)、グレード3の失神(2)、グレード3の便秘、グレード4の発熱性好中球減少、肺アスペルギルス症、及びグレード2の左心室の機能低下。NGR-hTNF注入に対して反応した9症例があり;その全て(熱(4)、悪寒(4)、及び動脈性高血圧)がグレード1~2であり、15分間の注入の中断及び対症治療法後に解決した。パープロトコールとして、注入を遅延させ、1時間後に完了した。これらの患者は、更なる輸注反応を起こすことなく、プロトコール通りの予防とともに、その他のコースのNGR-hTNF/R-CHOPを受けた。12人の患者が、輸血/血小板輸血を必要とした(そのうちの7人は以前にASCTを受けていた)。
【0113】
活性(プライマリーエンドポイント)
NGR-hTNF/R-CHOP組合せに対する最も良好な奏効は、11人の患者での完全奏効(complete)であり(
図7の実施例)、10人の患者での部分奏効(partial)であり、75%のORRであった(95%CI = 59~91%);7人の患者がPDであった。所定の活性閾値の、少なくとも12の奏効を、大部分は達成した。最良の奏効は、14人の患者では第二のコース後に達成し、7人の患者では第四のコース後に達成した。IELSGリスク変数、病変の部位及び数、事前の治療、並びに難治性に従って、奏効は、解析するサブグループに均等に分散した(表6(Table 5))。
【0114】
【0115】
21人の奏効した患者のうち17人が、地固め療法を受けた:7人の患者がWBRT、5人の患者がASCT、1人の患者がレナリドミド維持療法、及び4人の患者がこれらの治療の組合せ。眼内疾患を有する3人の患者のうち2人は、その部位において腫瘍退縮を達成し、経過観察の3か月及び28か月において硝子体内の再発を起こさなかった。全ての完全奏効者において、奏効は6か月よりも長く持続した(中央値10か月;値域6~19)。中央値が16か月の経過観察において(値域9~26)、5人の患者が再発せず、6人の患者が生存している。
【0116】
NGR-hTNF阻害剤(バイオマーカー評価)
有意に近い関係性(p=0.066)が、試験登録時のCgAの血漿レベルとCR率との間に見られた(
図8A)。患者を、1.4nMのROC駆動カットオフを用いて、「低い」及び「高い」CgAレベルを有する患者に、グループ化した場合、それぞれ、CRに達した8/13及び3/15の患者が見られた(62% vs. 20%; p=0.05)。特に、試験登録時のCgAの血漿レベルは、事前のステロイド治療の間のPPIの受容と関係していた。PPIを受けていない患者(n=14)及びPPI治療をした患者(n=14)では、それぞれ、中央値のCgAの血漿レベルは、1.05nM(値域0.29~3.27)及び2.26nM(値域0.33~7.99;p=0.008)であった。CgA濃度は、PPI中断後に、一部の患者で次第に減少し(
図8B)、この薬剤を受けなかった患者では、その値は安定を保った(
図8C)。
【0117】
試験登録時の中央値のsTNF-R1及びsTNF-R2の血漿レベルは、それぞれ、0.66(値域0.32~4.88)及び2.14(値域0.98~7.26)であった。sTNF-Rの濃度は、NGR-hTNF/R-CHOPへの奏効と関連せず、PPI中断後に変化せず、治療の間安定を保った(データは不図示)。
【0118】
PCNSL血管系におけるCD13の発現
免疫組織学的染色は、登録患者の診断用脳生検におけるCD13の存在を実証した:ほとんどの場合、染色された血管は、不規則な外形を伴う、内腔狭窄を示した。リンパ腫病変内のCD13陽性血管シグナルの例は、
図6Aに示される。抗CD13ポリクローナル抗体を用いて、及び抗α‐SMA(周皮細胞のマーカー)抗体を用いて染色した組織切片の免疫組織学的及び共焦点免疫蛍光解析は、ほとんどの染色された血管が周皮細胞層を欠如することを示し(
図6B)、未熟な血管であることを提示した。より成熟した血管の3D画像は、CD13が血管の内膜によって発現される一方で、周皮細胞では非常により低く発現するか又はほとんど欠失していることを示した(
図6C、D)。これらの発見は、CD13は、腫瘍血管系の内皮の腔側に発現し、静脈内経路で送達されるNGR-hTNFにアクセスすることができるという事実を指し示した。
【0119】
抗CD13(NGR標的)及び抗PDGFR-β(周皮細胞マーカー)抗体を用いた二重染色試験は、ほとんど全てのリンパ腫関連血管における広範のCD13発現を明らかにした(
図10)。さらに、抗CD13及び抗CD31(内皮マーカー)抗体を用いた二重染色試験は、腫瘍血管の内膜におけるCD13発現も明らかにした(
図9A~C)。CD13陽性周皮細胞及びCD13陰性内皮細胞を有する腫瘍血管も観察された(
図9D)。
【0120】
神経画像検査により評価したBBB透過性
DCE-MRI解析は、NGR-hTNF注入後に血管透過性が増加することを示した(
図4)。この効果は、病変部周辺の領域でより明らかであった。第一のコースのR-CHOP(NGR-hTNFなし)後のコントラスト強調領域のKtransの中央値(値域)は、23.5 (6.8~98.8)であり、第二のコース(NGR-hTNF/R-CHOP組合せ)後に35.3 (23.9~887.7; p=0.39)まで上昇した。病変部周辺の領域において、ベースライン値(R-CHOP単独)はより低いが(中央値2.5;値域0.4~3.9)、第二のコースのNGR-hTNF注入(NGR-hTNF/R-CHOP組合せ)後に、4.7 (2.2~37.7; p=0.01)まで上昇した。
【0121】
SPECTにより評価したBBB透過性
腫瘍及び病変部周辺の領域においてBBB透過性を増加させるNGR-hTNFの能力を、SPECT試験によって確認した。定量的解析は、全ての調査したケースにおける
99mTc-DTPA陽性領域の範囲の増加を示した(
図5の例)。NGR-hTNF及びR-CHOPの注入前及び後にPMODによって測定した30%以上(≧30%)の
99mTc-DTPA取込みの量(関心のある量)の中央値は、それぞれ、26cm
3(値域5~67)及び40cm
3(値域10~92)であった(p=0.028)。14~87%の範囲を有する、45%の量の増加の中央値がみられた。
【0122】
考察
本明細書で提示されるINGRID II相試験の結果は、NGR-hTNF/R-CHOP組合せ物が、高度に前治療された再発性/難治性PCNSLの患者において、良好の耐容性を示し、非常に活性であることを実証した。重要なことには、治療した患者のほとんどは、これらの予後不良な患者における治癒の可能性を増加させる、NGR-hTNF/R-CHOP後の腫瘍退縮に続く地固め療法を受けた。この革新的な戦略の活性は、腫瘍及び病変部周辺領域における、血管透過性の選択的増強に従う。NGR-hTNF効果の特異性は、本試験の拡大段階で実証される、血漿及びCSF試料中のR-CHOP薬剤の濃度の変化がないことによっても裏付けられ、並びに本試験で実証される、腫瘍関連毛細血管の内皮細胞及び周皮細胞におけるCD13(NGR-hTNFの標的)の高レベルの発現によっても裏付けられる。総合すると、この試験の結果は、非侵襲的方法によって、腫瘍において、BBB透過性及び薬剤浸透を増加させることは、PCNSL患者における魅力的な治療手法であることを裏付ける。
【0123】
前リツキシマブ時代(era)のCHOP、及び、近年では、R-CHOPによるPCNSL患者における経験は、実際に、この組合せが、診察時及び再発時のPCNSL患者において効果がないことを実証し(5, 24-26)、この無効果がほとんど、関連薬剤の劣ったCNSバイオアベイラビリティによるものであるという通説を確認する。実際、アップフロント治療として使用する場合、CHOP化学療法は低い奏効率に関連し、高用量メトトレキサートベース化学療法又はWBRTと組合せた疾患のコントロールの向上に寄与せず、CHOP-WBRT後の2年全生存率はたった20~40%であった(5, 24-25)。再発性又は難治性PCNSL患者における、リツキシマブを伴う又は伴わないCHOPに焦点を当てた試験は該当がないが、しかしながら、第一選択治療として報告された残念な結果(5, 24-25)が、リツキシマブを伴う又は伴わないCHOPはサルベージ治療としても不活性であるはずと示唆している。この見解は、75%のORR及びNGR-hTNF/R-CHOP併用治療に奏効する21人の患者のうちの17人における地固め療法を送達する可能性とは反する、第一の10人の登録患者におけるR-CHOP単独の第一のサイクル後の有意な反応の欠如によっても裏付けられる。NGR-hTNF/R-CHOPを用いて得られた活性な結果は、全ての患者における、予期せぬ毒性はなく、重要なことには、用量強度(dose intensity)の維持を伴う、優れた安全性プロファイルに関連する。以前の試験(27-29)と一致して、化学療法剤への低用量のNGR-hTNFの添加は、良好な耐容性と関連し、特に、ドキソルビシンとの併用は重度の心血管系イベントと関連しなかった。
【0124】
固形腫瘍を有する動物モデル及び患者の両方における、NGR-hTNF及び化学療法剤とのその相乗効果に焦点を当てた以前の研究は、腫瘍血管に対するNGR-hTHFの選択性が特定の受容体との相互作用を必要とすることを示した(11, 12, 30)。低用量で送達される場合、NGR-hTNFは、血管新生腫瘍血管系ではCD13、TNF-R1、及びTNF-R2を発現する内皮細胞上のこれらの受容体との高い親和性の相互作用に関与するが(7)、非新生物組織で起きる場合、CD13を発現しない内皮細胞との相互作用には関与しない。実際、CD13の特異型は、腫瘍及びその他の組織の血管新生血管により発現されるが、正常組織の血管では発現しない(又はほとんど発現しない)(8, 32)。意外なことに、NGR含有薬剤は、腫瘍血管中の内皮細胞及び周皮細胞に発現されるCD13型を選択的に標的とすることができるが、その他の組織により発現されるCD13型を標的にはできない(10, 32)。この試験の拡大段階(14)では、NGR-hTNFの透過性促進効果は、腫瘍血管によるCD13の発現が免疫組織化学及び免疫蛍光技術によって実証された、腫瘍及び病変部周辺領域においてより明らかであることを示した。注目すべきことには、CD13は、PCNSL血管系の周皮細胞によって、及びより低い程度で、内皮細胞によって多量に発現されることが見出された。重要なことには、これらの細胞(特に後者の場合)は、静脈内に送達されたNGR-hTNFに非常にアクセスしやすい。特に、正常な脳におけるCD13の発現に関する以前の研究は、周皮細胞はこのマーカーを発現するが、内皮細胞は発現しないことを示した(33, 34)。正常な脳の周皮細胞によって発現されるCD13型を認識するNGR-hTNFの能力は、まだ解明されていないが、以下の観察結果は、PCNSL患者において腫瘍血管のみが標的となることが示唆される:第一に、腫瘍/腫瘍周辺領域において99mTc-DTPAの取込み増大が、NGR-hTNF治療後のSPECTによって見られるが、残りの正常な脳では見られなかった(14);第二に、NGR-hTNF治療後に、患者において、血漿及びCSF中のR-CHOP薬剤の濃度の変化が起きなかった(14)。選択的薬剤透過に関する1つの可能性のある説明は、腫瘍血管中のCD13+内皮
細胞を標的とすることによって、NGR-hTNFがその透過性をさらに増加させ、その結果、選択的局所的薬剤透過を促進するというものである。脳転移で以前に観察されたように(6)、TNF受容体は、正常血管に比べて、腫瘍血管で過剰発現しており、その結果、腫瘍血管における、低用量NGR-hTNFとCD13及びTNF受容体との多価の高親和性の相互作用をもたらすが、正常脳血管においてはもたらさないという可能性もある。
【0125】
本研究において、sTNF-Rの血漿レベルは、治療結果と関連していなかったが、有意な関連性が、CgAの血漿レベル、PPIの使用、及びNGR-hTNF/R-CHOPへの奏効の間で見られた。CgAの血漿レベルは、PPIを用いた治療後に増加することが知られている。なぜなら、これらの薬剤は、高ガストリン血症及びCgAを分泌するように腸クロム親和性細胞の刺激を誘導するからである(36-38)。従って、本発明者らは、ステロイド治療及び化学療法の間に胃腸毒性を防止するために実施した、PCNSL患者へのPPIの投与が、循環CgAの有意な増加をもたらすことを見出した。ROC駆動カットオフを使用して、本発明者らはまた、低CgA血漿レベルの患者の62%、及び高CgAレベルの患者の27%が、NGR-hTNF/R-CHOPに対するCRを達成した(p=0.066)ことを見出した。この発見は、NGR-hTNF/R-CHOP治療前のPPIの中断が妥当であることを裏付ける。可能である場合、NGR-hTNF/R-CHOPは、数日から数週間を必要とし得る(36-38)、PPI中断後にCgAが正常レベルに達した後に始めるべきである。
【0126】
結論として、INGRID試験の結果は、BBBに対する低用量NGR-hTNFの透過性促進効果は、PCNSLにおいてR-CHOPの活性を向上させるのに利用することができることを裏付ける。NGR-hTNF/R-CHOP組合せ療法は、高度に前処置された再発性/難治性PCNSLの患者において、活性且つ安全であり、その抗腫瘍活性は、腫瘍血管におけるCD13の発現に従う。PPIは、この治療の前及び間は避けるべきである。なぜならば、PPIは、CgAの血漿レベルを増加させることによってNGR-hTNFの効果を軽減し得るからである。この革新的な手法は、PCNSL患者の第一選択治療として扱われるのに値する。
【0127】
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