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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】漏電検出装置、車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20241223BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20241223BHJP
   G01R 31/64 20200101ALI20241223BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241223BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241223BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20241223BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/00
G01R31/64
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021561161
(86)(22)【出願日】2020-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2020031046
(87)【国際公開番号】W WO2021106285
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2019213256
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】中山 正人
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-151595(JP,A)
【文献】特開2007-163291(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176173(WO,A1)
【文献】特開2017-142269(JP,A)
【文献】特開2016-024155(JP,A)
【文献】特開2013-195136(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029214(WO,A1)
【文献】特開平03-209179(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016179(WO,A1)
【文献】特開2013-032977(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067576(WO,A1)
【文献】特開2004-347372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/00-31/01、
31/24-31/25、
31/40-31/44、
B60L 1/00-3/12、
7/00-13/00、
15/00-58/00、
H02H 3/08-3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースと絶縁された状態で、負荷に接続されている蓄電部の電流経路に一端が接続されるカップリングコンデンサと、
周期的に変化する周期電圧を生成して、前記カップリングコンデンサの他端に第1抵抗を介して印加する第1電圧出力部と、
第1基準電圧または第2基準電圧を出力する第2電圧出力部と、
前記カップリングコンデンサと前記第1抵抗との間の接続点と、前記第2電圧出力部との間に直列に接続された第2抵抗および第3抵抗と、
前記第2抵抗と前記第3抵抗との間の分圧点の電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1電圧出力部から前記周期電圧が出力されている状態において、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに、前記蓄電部の電流経路と前記アース間の漏電の有無を判定する漏電判定部と、
診断期間の第1状態で測定された電圧と、前記診断期間の第2状態で測定された電圧との差分が、設定範囲を外れているとき、本漏電検出装置を異常と判定する診断部と、
を備え、
前記第1電圧出力部は、前記第1状態において前記第1基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第2基準電圧を出力し、
前記第2電圧出力部は、前記第1状態において前記第2基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第1基準電圧を出力する、
ことを特徴とする漏電検出装置。
【請求項2】
アースと絶縁された状態で、負荷に接続されている蓄電部の電流経路に一端が接続されるカップリングコンデンサと、
周期的に変化する周期電圧を生成して、前記カップリングコンデンサの他端に第1抵抗を介して印加する第1電圧出力部と、
第1基準電圧または第2基準電圧を出力する第2電圧出力部と、
前記カップリングコンデンサと前記第1抵抗との間の接続点と、前記第2電圧出力部との間に直列に接続された第2抵抗および第3抵抗と、
前記第2抵抗と前記第3抵抗との間の分圧点の電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1電圧出力部から前記周期電圧が出力されている状態において、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに、前記蓄電部の電流経路と前記アース間の漏電の有無を判定する漏電判定部と、
診断期間の第1状態で測定された電圧と、前記診断期間の第2状態で測定された電圧との差分が、設定範囲を外れているとき、本漏電検出装置を異常と判定する診断部と、
を備え、
前記第1電圧出力部は、前記第1状態及び前記第2状態において、前記第1基準電圧または前記第2基準電圧を継続して出力し、
前記第2電圧出力部は、前記第1状態において前記第1基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第2基準電圧を出力する、
ことを特徴とする漏電検出装置。
【請求項3】
アースと絶縁された状態で、負荷に接続されている蓄電部の電流経路に一端が接続されるカップリングコンデンサと、
周期的に変化する周期電圧を生成して、前記カップリングコンデンサの他端に第1抵抗を介して印加する第1電圧出力部と、
第1基準電圧または第2基準電圧を出力する第2電圧出力部と、
前記カップリングコンデンサと前記第1抵抗との間の接続点と、前記第2電圧出力部との間に直列に接続された第2抵抗および第3抵抗と、
前記第2抵抗と前記第3抵抗との間の分圧点の電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1電圧出力部から前記周期電圧が出力されている状態において、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに、前記蓄電部の電流経路と前記アース間の漏電の有無を判定する漏電判定部と、
診断期間の第1状態で測定された電圧と、前記診断期間の第2状態で測定された電圧との差分が、設定範囲を外れているとき、本漏電検出装置を異常と判定する診断部と、
を備え、
前記第1電圧出力部は、前記第1状態において前記第1基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第2基準電圧を出力し、
前記第2電圧出力部は、前記第1状態及び前記第2状態において、前記第1基準電圧または前記第2基準電圧を継続して出力する、
ことを特徴とする漏電検出装置。
【請求項4】
前記第1基準電圧はハイサイド基準電圧であり、
前記第2基準電圧はローサイド基準電圧である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の漏電検出装置。
【請求項5】
車両のシャーシアースと絶縁された状態で搭載され、前記車両内の負荷に電力を供給する蓄電部と、
請求項1から4のいずれか1項に記載の漏電検出装置と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースから絶縁された負荷の漏電を検出する漏電検出装置、車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両には、補機電池(一般的に12V出力の鉛電池)と別に高電圧の駆動用電池(トラクションバッテリ)が搭載される。感電を防止するために、高電圧の駆動用電池、インバータ、走行用モータを含む強電回路と、車両のボディ(シャーシアース)間は絶縁される。
【0003】
強電回路の車両側のプラス配線とシャーシアース間、及び強電回路の車両側のマイナス配線とシャーシアース間には、それぞれYコンデンサが挿入され、高電圧の駆動用電池から車両側の負荷に供給される電源が安定化されている。強電回路とシャーシアース間の絶縁抵抗を監視して漏電を検出する漏電検出装置が搭載される。
【0004】
AC方式の漏電検出装置では、駆動用電池の正極端子または負極端子に、抵抗とカップリングコンデンサを介してパルス電圧を印加し、当該抵抗と当該カップリングコンデンサとの接続点の電圧を測定し、漏電の有無を検出する。
【0005】
AC方式の漏電検出装置において、漏電検出装置自体の故障を診断する方法として、漏電検出時の周波数より十分に低い周波数のパルス電圧を印加し、印加した電圧と測定した電圧を比較し、両者が近似していれば正常と判定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2010/058855号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カップリングコンデンサの劣化によりカップリングコンデンサの漏電が大きくなると、漏電検出装置から、カップリングコンデンサ及び車両の強電回路を経由して、シャーシアースに流れるリーク電流が大きくなる。上記した漏電検出装置の故障診断方法では、このリーク電流が大きくなると、印加したパルス電圧が低下し、印加した電圧と測定した電圧との間に大きな乖離が発生する。これにより、正常な漏電検出装置を異常と誤判定する可能性が高まる。この誤判定を抑制するには、両者の近似に対する判定基準を緩める必要があるが、その場合、異常な漏電検出装置を正常と誤判定する可能性が高まる。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、漏電検出装置の故障診断を高精度に行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の漏電検出装置は、アースと絶縁された状態で、負荷に接続されている蓄電部の電流経路に一端が接続されるカップリングコンデンサと、周期的に変化する周期電圧を生成して、前記カップリングコンデンサの他端に第1抵抗を介して印加する第1電圧出力部と、固定電圧を出力する第2電圧出力部と、前記カップリングコンデンサと前記第1抵抗との間の接続点と、前記第2電圧出力部との間に直列に接続された第2抵抗および第3抵抗と、前記第2抵抗と前記第3抵抗との間の分圧点の電圧を測定する電圧測定部と、前記第1電圧出力部から前記周期電圧が出力されている状態において、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに、前記蓄電部の電流経路と前記アース間の漏電の有無を判定する漏電判定部と、前記分圧点に2種類の固定電圧が順番に印加される期間において、前記電圧測定部により測定された電圧をもとに、本漏電検出装置が正常であるか否かを判定する診断部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、漏電検出装置の故障診断を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】比較例に係る漏電検出装置を備える電源システムの構成を説明するための図である。
図2】印加パルス波形と測定電圧波形の一例を示す図である。
図3図3(a)-(d)は、比較例に係る漏電検出装置の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。
図4】比較例に係る漏電検出装置を備える電源システムのリーク経路の一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る漏電検出装置を備える電源システムの構成を説明するための図である。
図6図6(a)-(d)は、実施の形態に係る漏電検出装置の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。
図7】実施の形態に係る漏電検出装置を備える電源システムのリーク経路の一例を示す図である。
図8図8(a)-(d)は、変形例1に係る漏電検出装置の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。
図9図9(a)-(d)は、変形例2に係る漏電検出装置の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(比較例)
図1は、比較例に係る漏電検出装置10を備える電源システム5の構成を説明するための図である。電源システム5は電動車両に搭載される。電源システム5は電動車両内において、補機電池(通常、12V出力の鉛電池が使用される)と別に設けられる。電源システム5は、高電圧の蓄電部20、及び漏電検出装置10を含む。蓄電部20は、直列接続された複数のセルE1-Enを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル、電気二重層キャパシタセル、リチウムイオンキャパシタセル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。
【0013】
電動車両は高電圧の負荷として、インバータ2及びモータ3を備える。蓄電部20の正極とインバータ2の一端がプラス配線Lpで接続され、蓄電部20の負極とインバータ2の他端がマイナス配線Lmで接続される。プラス配線Lpに正側メインリレーMRpが挿入され、マイナス配線Lmに負側メインリレーMRmが挿入される。正側メインリレーMRpと負側メインリレーMRmは、蓄電部20と電動車両内の高電圧の負荷との間の導通/遮断を制御するコンタクタとして機能する。なおリレーの代わりに、高耐圧・高絶縁の半導体スイッチを使用することも可能である。
【0014】
インバータ2は、蓄電部20とモータ3の間に接続される双方向インバータである。インバータ2は力行時、蓄電部20から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。回生時、モータ3から供給される交流電力を直流電力に変換して蓄電部20に供給する。モータ3には例えば、三相交流モータが使用される。モータ3は力行時、インバータ2から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ2に供給する。
【0015】
蓄電部20は、電動車両のシャーシアースと絶縁された状態で電動車両に搭載される。補機電池は、負極がシャーシアースと導通した状態で電動車両に搭載される。なお、正側メインリレーMRpよりインバータ2側のプラス配線Lpとシャーシアース間が正側YコンデンサCpを介して接続される。また、負側メインリレーMRmよりインバータ2側のマイナス配線Lmとシャーシアース間が負側YコンデンサCmを介して接続される。正側YコンデンサCp及び負側YコンデンサCmは、プラス配線Lpとシャーシアース間、及びマイナス配線Lmとシャーシアース間をそれぞれ直流的に絶縁するとともに、プラス配線Lp及びマイナス配線Lmの電圧を安定化させる作用を有する。
【0016】
蓄電部20がシャーシアースから理想的に絶縁されている場合、蓄電部20の中間電位がシャーシアースの電位近辺に維持される。例えば、蓄電部20の両端電圧が250Vの場合、蓄電部20の正極電位が+125V近辺、負極電位が-125V近辺に維持される。高電圧の蓄電部20とシャーシアース間が導通した状態で、人間が電動車両の露出した導電部に触れると感電する危険がある。そこで高電圧の蓄電部20を搭載した電動車両では、漏電検出装置10を搭載して、高電圧の車両負荷に接続されている蓄電部20の電流経路とシャーシアース間の絶縁状態を監視する必要がある。図1では、プラス配線Lpとシャーシアース間の絶縁状態を正側漏電抵抗Rlp、マイナス配線Lmとシャーシアース間の絶縁状態を負側漏電抵抗Rlmと表している。
【0017】
比較例では漏電検出装置10は、カップリングコンデンサCc、第1抵抗R1、第1オペアンプOP1、第2抵抗R2、平滑用コンデンサC1、第2オペアンプOP2及び制御部11を含む。制御部11は、発振部11a、電圧測定部11b、漏電判定部11c及び診断部11dを含む。制御部11は例えば、マイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM、フラッシュメモリ)により構成することができる。
【0018】
カップリングコンデンサCcは、蓄電部20の電流経路に一端が接続される。図1に示す例では蓄電部20の負極にカップリングコンデンサCcの一端が接続されている。なお、カップリングコンデンサCcの一端は、蓄電部20の正極に接続されてもよいし、蓄電部20内の複数のセルE1-Enのいずれかのノードに接続されてもよい。カップリングコンデンサCcの他端は、第1抵抗R1を介して電圧出力部の出力端に接続される。カップリングコンデンサCcの他端と第1抵抗R1との間の接続点が測定点Aとなる。なお、第1抵抗R1の代わりに他のインピーダンス素子を使用してもよい。
【0019】
図1ではカップリングコンデンサCcに、比較的安価に大容量化することができるアルミ電解コンデンサが使用されている。アルミ電解コンデンサは極性を有しており、図1ではアルミ電解コンデンサの正極が測定点Aに接続され、アルミ電解コンデンサの負極が蓄電部20の負極に接続されている。カップリングコンデンサCcは、複数のアルミ電解コンデンサが直列に接続されて構成されていてもよい。この場合、1つのコンデンサがショート故障しても、残りのコンデンサにより直流的な絶縁を維持することができる。
【0020】
上記の電圧出力部は、周期的に変化する周期電圧を生成して、生成した周期電圧をカップリングコンデンサCcの他端に第1抵抗R1を介して印加する。以下、本明細書では周期電圧として矩形波電圧を使用する例を想定する。
【0021】
電圧出力部は、発振部11a及び第1オペアンプOP1を含む。発振部11aは、マルチバイブレータや局部発振器を含み、予め設定された周波数の矩形波を発生させる。発振部11aにより生成された矩形波電圧は、第1オペアンプOP1の非反転入力端子に入力される。第1オペアンプOP1の出力端子は第1抵抗R1に接続される。第1オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子が接続される。第1オペアンプOP1の正側電源端子は第1固定電位(電源電位Vcc)に接続され、第1オペアンプOP1の負側電源端子は第2固定電位(グラウンド電位GND)に接続される。以下、本明細書では電源電位Vccが5V、グラウンド電位GNDが0Vの例を想定する。
【0022】
第1オペアンプOP1は、増幅率が1倍でインピーダンス変換だけを行うボルテージフォロアとして機能する。なお、第1オペアンプOP1の代わりに、一方の入力端子が第1固定電位に接続されたANDゲート、又は一方の入力端子が第2固定電位に接続されたORゲートを使用してもよい。制御部11と測定点Aのインピーダンスを分離するバッファとして機能する素子であれば、第1オペアンプOP1を代替可能である。
【0023】
測定点Aは、第2抵抗R2を介して第2オペアンプOP2の非反転入力端子に接続される。第2オペアンプOP2の反転入力端子と出力端子が接続される。第2オペアンプOP2も、増幅率が1倍でインピーダンス変換だけを行うボルテージフォロアとして機能する。第2オペアンプOP2の非反転入力端子と第2固定電位(グラウンド電位GND)との間に平滑用コンデンサC1が接続される。平滑用コンデンサC1は、第2オペアンプOP2の非反転入力端子に入力される電圧のノイズを除去する。
【0024】
第2オペアンプOP2は、測定点Aの電圧を電圧測定部11bに出力する。電圧測定部11bは測定点Aの電圧を測定する。電圧測定部11bはA/Dコンバータを含み、当該A/Dコンバータは、発振部11aにより生成される矩形波電圧の立ち上がりエッジと立ち下がりエッジのタイミングに同期したタイミングで、測定点Aのアナログ電圧をサンプリングし、サンプリングしたアナログ電圧をデジタル値に変換する。矩形波電圧の立ち上がりエッジのタイミングでサンプリングされた電圧は、測定された電圧波形の下側ピーク値に相当し、矩形波電圧の立ち下がりエッジのタイミングでサンプリングされた電圧は、測定された電圧波形の上側ピーク値に相当する。なお、矩形波電圧の鈍りを考慮して、下側ピーク値をサンプリングすべきタイミングと、上側ピーク値をサンプリングすべきタイミングが調整されていてもよい。電圧測定部11bは、測定点Aの電圧を漏電判定部11cと診断部11dに出力する。
【0025】
漏電判定部11cは、電圧測定部11bにより測定された測定点Aの電圧をもとに、蓄電部20の電流経路とシャーシアース間の漏電の有無を判定する。漏電判定部11cは、上側ピーク値と下側ピーク値との差分で示されるピークピーク値が、設定値より小さい場合、蓄電部20の電流経路とシャーシアース間に漏電が発生していると判定する。当該設定値は、設計者による実験やシミュレーションにより予め導出された漏電発生時の測定電圧波形のピークピーク値をもとに決定される。蓄電部20の電流経路とシャーシアース間に漏電が発生している場合、第1オペアンプOP1から、検出抵抗として作用している第1抵抗R1を介してカップリングコンデンサCcに交流電流が流れる。第1抵抗R1に電流が流れると、電圧降下により測定点Aの電圧振幅が縮小する。
【0026】
図2は、印加パルス波形と測定電圧波形の一例を示す図である。電圧出力部から測定点Aに印加されるパルス波形は、ハイサイド電位が5Vでローサイド電位が0Vに設定されている。漏電判定部11cは、測定点Aにパルス電圧が印加されている期間に測定された電圧波形の上側ピーク値Vp1と下側ピーク値Vp2を特定し、上側ピーク値Vp1と下側ピーク値Vp2との差分で規定されるピークピーク値をもとに漏電の有無を判定する。
【0027】
図1に戻る。診断部11dは、電圧測定部11bにより測定された電圧をもとに、漏電検出装置10が正常であるか否か判定する。即ち、漏電検出装置10自体の故障の有無を診断する。漏電検出装置10の故障診断時は、漏電検出時と比較して、十分に低い周波数のパルス電圧が測定点Aに印加される。例えば、漏電検出時に10Hz、漏電検出装置10の故障診断時に1Hzのパルス電圧が印加されてもよい。
【0028】
図3(a)-(d)は、比較例に係る漏電検出装置10の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。図3(a)は、漏電検出装置10が正常な場合の測定波形の一例を示している。発振部11a、第1オペアンプOP1、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第2オペアンプOP2、電圧測定部11bの経路が正常であれば、発振部11aから出力されたパルス電圧が、そのまま電圧測定部11bで測定される。なお、平滑用コンデンサC1の影響により測定波形に鈍りが発生している。診断部11dは、印加されたパルス電圧のハイレベル期間に測定された電圧が第1基準電圧(本比較例では5V)近辺の電圧であり、ローレベル期間に測定された電圧が第2基準電圧(本比較例では0V)近辺の電圧のとき、漏電検出装置10を正常と判定する。
【0029】
ところで、カップリングコンデンサCcは劣化すると、リーク電流が増加する。カップリングコンデンサCcにアルミ電解コンデンサを使用する場合、無負荷状態で長時間放置されるとリーク電流が増加しやすくなる。
【0030】
図4は、比較例に係る漏電検出装置10を備える電源システム5のリーク経路の一例を示す図である。蓄電部20の電流経路とシャーシアース間には、正常な状態でも数十MΩ~100MΩの漏電抵抗で、微小なリーク電流が流れている。正側メインリレーMRp及び負側メインリレーMRmがオフ(オープン)の状態でも、蓄電部20側の電流経路とシャーシアース間に微小なリーク電流が流れる(漏電抵抗Rlb参照)。カップリングコンデンサCcの絶縁抵抗が低下すると、第1オペアンプOP1、第1抵抗R1、カップリングコンデンサCc、蓄電部20、漏電抵抗Rlbの経路で微小なリーク電流が流れる。例えば、第1抵抗R1の抵抗値が200kΩに設定されている場合、カップリングコンデンサCcの絶縁抵抗が20MΩ程度まで低下すると、当該リーク電流の影響により、5V電源で生成されたパルス電圧の測定波形が1V程度低下する。
【0031】
図3(b)は、第1オペアンプOP1からシャーシアースに微小なリーク電流が流れている場合の測定波形の一例を示している。なお、漏電検出装置10の回路自体は正常な状態にある。図3(b)では当該リーク電流の影響により、測定波形全体が低下している。なお図3(a)-(d)に示す例では、0V未満の電圧を検出できない測定回路を使用しているため、印加されたパルス電圧のローサイド期間の殆どの期間の測定電圧は、0Vにクランプされている。
【0032】
図3(c)は、漏電検出装置10が異常な場合の測定波形の一例を示している。図3(c)では、印加されたパルス電圧のハイレベル期間とローレベル期間のいずれの期間でも、0V近辺の電圧が測定されている。診断部11dは、印加されたパルス電圧のハイレベル期間に測定された電圧が、第1基準電圧(本比較例では5V)から規定値以上、乖離しているとき漏電検出装置10を異常と判定する。例えば、発振部11a、第1オペアンプOP1、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第2オペアンプOP2、電圧測定部11bの経路のどこかが断線している場合、印加されたパルス電圧のハイレベル期間にも、0V近辺の電圧が測定されることになる。その他、いずれかの回路素子にショート故障またはオープン故障が発生している場合も、ハイレベル期間に測定された電圧が、第1基準電圧から大きく乖離する。
【0033】
図3(d)は、漏電検出装置10に使用される回路素子の定数が変化した場合の測定波形の一例を示している。比較例では、回路素子の定数が変化しても、印加されたパルス電圧の測定波形は、正常時と比較して殆ど変化しない。例えば、第1抵抗R1の抵抗値が劣化により、200kΩから100kΩに低下しても、パルス電圧の測定波形は殆ど変化しない。
【0034】
図3(b)に示したように比較例に係る漏電検出装置10の診断方法では、第1オペアンプOP1からシャーシアースに流れる微小なリーク電流の影響を大きく受ける。図3(b)に示した例では、漏電検出装置10の回路自体は正常な状態にあるため、本来的には診断部11dは漏電検出装置10を正常と判定することが期待される。しかしながら、印加されたパルス電圧のハイサイド期間の測定電圧は4V近辺であり、本来の理論値である5Vから大きく乖離している。この状態を正常と判定するには、判定用の規定値に1V程度のマージンを設ける必要があり、判定基準を大幅に緩和する必要がある。この場合、回路素子の小さな故障を見逃すことになる。また、図3(d)に示したように比較例に係る漏電検出装置10の診断方法では、回路素子の定数の変化を検出することが難しい。具体的には第1抵抗R1の劣化を検出することが難しい。
【0035】
(実施の形態)
図5は、実施の形態に係る漏電検出装置10を備える電源システム5の構成を説明するための図である。以下、図1に示した比較例に係る電源システム5の構成との相違点を説明する。実施の形態では第3抵抗R3及び第3オペアンプOP3が追加される。制御部11は、定電圧出力部11eをさらに含む。定電圧出力部11eは、第1基準電圧(本実施の形態では5V)と第2基準電圧(本実施の形態では0V)の2種類の固定電圧を出力することができる。
【0036】
本実施の形態では、発振部11a及び第1オペアンプOP1が第1電圧出力部を構成し、定電圧出力部11e及び第3オペアンプOP3が第2電圧出力部を構成する。本実施の形態では、第1電圧出力部からも、第1基準電圧と第2基準電圧の2種類の固定電圧を出力することができるように構成される。
【0037】
カップリングコンデンサCcと第1抵抗R1との間の接続点Aと、第2電圧出力部との間に直列に第2抵抗R2及び第3抵抗R3が接続される。より具体的には、定電圧出力部11eから出力される定電圧は、第3オペアンプOP3の非反転入力端子に入力される。第3オペアンプOP3の出力端子は第3抵抗R3に接続される。第3オペアンプOP3の反転入力端子と出力端子が接続される。第3オペアンプOP3も、増幅率が1倍でインピーダンス変換だけを行うボルテージフォロアとして機能する。
【0038】
本実施の形態では、第2抵抗R2と第3抵抗R3の分圧点電圧が第2オペアンプOP2の非反転入力端子に入力される。即ち、電圧測定部11bは、第2抵抗R2と第3抵抗R3の分圧点電圧を測定することにより、測定点Aの電圧を圧縮された電圧で測定する。漏電判定部11cは、電圧測定部11bにより測定された電圧の振幅値をもとに、漏電抵抗変換テーブルを参照して漏電抵抗値を算出し、蓄電部20の電流経路とシャーシアース間の漏電の有無を判定する。本実施の形態では、測定点Aの電圧を分圧して測定することにより、測定点Aの電圧が測定レンジ(本実施の形態では0~5V)から外れる期間を減少させることができる。即ち、漏電判定ができない期間を減少させることができる。
【0039】
診断部11dは、第1電圧出力部から2種類の固定電圧が順番に出力される期間において、電圧測定部11bにより測定された電圧をもとに、漏電検出装置10が正常であるか否か診断する。具体的には診断部11dは、当該期間の第1状態で測定された電圧と、第2状態で測定された電圧との差分を算出し、当該差分が設定範囲内のとき漏電検出装置10を正常と判定する。第1状態と第2状態はそれぞれ数秒間(例えば、4秒間)、継続される。
【0040】
図6(a)-(d)は、実施の形態に係る漏電検出装置10の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。以下に示す例では、第1抵抗R1の抵抗値が200kΩ、第2抵抗R2の抵抗値が1000kΩ、及び第3抵抗R3の抵抗値が1000kΩに設定されていることを前提とする。また第1状態において第1電圧出力部が第1基準電圧(本実施の形態では5V)を出力し、第2電圧出力部が第2基準電圧(本実施の形態では0V)を出力し、第2状態において第1電圧出力部が第2基準電圧を出力し、第2電圧出力部が第1基準電圧を出力することを前提とする。
【0041】
図6(a)は、漏電検出装置10が正常な場合の測定波形の一例を示している。第1電圧出力部、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第2電圧出力部、第2オペアンプOP2、電圧測定部11bが正常であれば、第1状態において約2.27Vが測定され、第2状態において約2.73Vが測定される。第1状態の測定電圧の理論値と、第2状態の測定電圧の理論値は下記(式1)、(式2)により算出される。
【0042】
5×(1000/(200+1000+1000))≒2.27 ・・・(式1)
5×((200+1000)/(200+1000+1000))≒2.73 ・・・
(式2)
【0043】
診断部11dは両者の差分電圧ΔVを算出する。この例では0.46Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが設定範囲内であれば、漏電検出装置10を正常と判定する。設定範囲は、設計者による実験やシミュレーションにより得られるデータに基づき、最適な精度が得られる範囲に設定される。
【0044】
本実施の形態でも比較例と同様に、カップリングコンデンサCcが劣化すると、リーク電流が増加する。図7は、実施の形態に係る漏電検出装置10を備える電源システム5のリーク経路の一例を示す図である。
【0045】
図6(b)は、第1オペアンプOP1からシャーシアースに微小なリーク電流が流れている場合の測定波形の一例を示している。なお、漏電検出装置10の回路自体は正常な状態にある。図6(b)では当該リーク電流の影響により、測定波形全体が1V低下している。第1状態において約1.27Vが測定され、第2状態において約1.72Vが測定されている。両者の差分電圧ΔVは0.46Vである。
【0046】
図6(c)は、漏電検出装置10が異常な場合の測定波形の一例を示している。図6(c)では、第1状態と第2状態のいずれの状態でも、0V近辺の電圧が測定されている。両者の差分電圧ΔVは0Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が0.46V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0047】
図6(d)は、漏電検出装置10に使用される回路素子の定数が変化した場合の測定波形の一例を示している。図6(d)に示す例は、第1抵抗R1の抵抗値が劣化により200kΩから100kΩに低下した場合の測定波形を示している。第1状態において約2.38Vが測定され、第2状態において約2.62Vが測定される。第1抵抗R1の抵抗値が100kΩの場合、第1状態の測定電圧の理論値と、第2状態の測定電圧の理論値は下記(式3)、(式4)により算出される。
【0048】
5×(1000/(100+1000+1000))≒2.38 ・・・(式3)
5×((100+1000)/(100+1000+1000))≒2.62 ・・・
(式4)
【0049】
両者の差分電圧ΔVは0.24Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が0.46V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0050】
以上説明したように本実施の形態によれば、分圧点に2種類の固定電圧が順番に印加される期間において、第1状態と第2状態の差分電圧ΔVが設定範囲に収まるか否かを判定することにより、漏電検出装置10の故障診断を高精度に行うことができる。具体的には、第1オペアンプOP1からシャーシアースに微小なリーク電流が流れている場合でも、図6(b)に示したように、差分電圧ΔVは正常な状態とほぼ同じ値となる。したがって、微小なリーク電流の影響を殆ど受けずに、漏電検出装置10の故障診断を行うことができる。この点、図3(b)に示したように比較例では、微小なリーク電流の影響を大きく受ける。本実施の形態では、設定範囲のマージンを大きくとる必要がなく、回路素子の軽微な不具合の見逃しを減らすことができる。
【0051】
また、図6(d)に示したように本実施の形態では、回路素子の定数の変化を検出することも可能である。具体的には検出抵抗として機能する第1抵抗R1の劣化を検出することができる。この点、図3(d)に示したように比較例では、回路素子の定数の変化を検出することが難しい。
【0052】
(変形例1)
図8(a)-(d)は、変形例1に係る漏電検出装置10の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。漏電検出装置10の構成は、図5に示した構成と同様である。変形例1でも、第1抵抗R1の抵抗値が200kΩ、第2抵抗R2の抵抗値が1000kΩ、及び第3抵抗R3の抵抗値が1000kΩに設定されていることを前提とする。また第1状態において第1電圧出力部が第1基準電圧(変形例1でも5V)を出力し、第2電圧出力部が第1基準電圧を出力し、第2状態において第1電圧出力部が第1基準電圧を出力し、第2電圧出力部が第2基準電圧(変形例1でも0V)を出力することを前提とする。
【0053】
図8(a)は、漏電検出装置10が正常な場合の測定波形の一例を示している。第1電圧出力部、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第2電圧出力部、第2オペアンプOP2、電圧測定部11bが正常であれば、第1状態において約5Vが測定され、第2状態において約2.27Vが測定される。第1状態では、直列接続された第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3の両端に5Vが印加されるため、第1状態の測定電圧の理論値も5Vになる。第2状態の測定電圧の理論値は上記(式1)により算出される。
【0054】
診断部11dは両者の差分電圧ΔVを算出する。この例では2.73Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが設定範囲内であれば、漏電検出装置10を正常と判定する。
【0055】
図8(b)は、第1オペアンプOP1からシャーシアースに微小なリーク電流が流れている場合の測定波形の一例を示している。なお、漏電検出装置10の回路自体は正常な状態にある。図8(b)では当該リーク電流の影響により、測定波形全体が1V低下している。第1状態において約4Vが測定され、第2状態において約1.27Vが測定されている。両者の差分電圧ΔVは2.73Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.73V)に収まるため、漏電検出装置10を正常と判定する。
【0056】
図8(c)は、漏電検出装置10が異常な場合の測定波形の一例を示している。図8(c)では、第1状態と第2状態のいずれの状態でも、0V近辺の電圧が測定されている。両者の差分電圧ΔVは0Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.73V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0057】
図8(d)は、漏電検出装置10に使用される回路素子の定数が変化した場合の測定波形の一例を示している。図8(d)に示す例は、第1抵抗R1の抵抗値が劣化により200kΩから100kΩに低下した場合の測定波形を示している。第1状態において約5Vが測定され、第2状態において約2.38Vが測定される。第1状態では、直列接続された第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3の両端に5Vが印加されるため、第1抵抗の抵抗値に関わらず、第1状態の測定電圧の理論値も5Vになる。第2状態の測定電圧の理論値は上記(式3)により算出される。両者の差分電圧ΔVは2.62Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.73V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0058】
以上説明したように変形例1によれば、第1電圧出力部が第1状態及び第2状態において、同じ電圧を継続して出力しても、第2電圧出力部の出力電圧を切り替えることにより、上記実施の形態と同様の効果を奏する。なお、第1電圧出力部は第1基準電圧に代えて第2基準電圧を継続して出力してもよい。
【0059】
(変形例2)
図9(a)-(d)は、変形例2に係る漏電検出装置10の故障診断時の測定波形の一例を示す図である。漏電検出装置10の構成は、図5に示した構成と同様である。変形例2でも、第1抵抗R1の抵抗値が200kΩ、第2抵抗R2の抵抗値が1000kΩ、及び第3抵抗R3の抵抗値が1000kΩに設定されていることを前提とする。また第1状態において第1電圧出力部が第1基準電圧(変形例2でも5V)を出力し、第2電圧出力部が第1基準電圧を出力し、第2状態において第1電圧出力部が第2基準電圧(変形例2でも0V)を出力し、第2電圧出力部が第1基準電圧を出力することを前提とする。
【0060】
図9(a)は、漏電検出装置10が正常な場合の測定波形の一例を示している。第1電圧出力部、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3、第2電圧出力部、第2オペアンプOP2、電圧測定部11bが正常であれば、第1状態において約5Vが測定され、第2状態において約2.73Vが測定される。第1状態では、直列接続された第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3の両端に5Vが印加されるため、第1状態の測定電圧の理論値も5Vになる。第2状態の測定電圧の理論値は上記(式2)により算出される。
【0061】
診断部11dは両者の差分電圧ΔVを算出する。この例では2.27Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが設定範囲内であれば、漏電検出装置10を正常と判定する。
【0062】
図9(b)は、第1オペアンプOP1からシャーシアースに微小なリーク電流が流れている場合の測定波形の一例を示している。なお、漏電検出装置10の回路自体は正常な状態にある。図9(b)では当該リーク電流の影響により、測定波形全体が1V低下している。第1状態において約4Vが測定され、第2状態において約1.73Vが測定されている。両者の差分電圧ΔVは2.27Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.27V)に収まるため、漏電検出装置10を正常と判定する。
【0063】
図9(c)は、漏電検出装置10が異常な場合の測定波形の一例を示している。図9(c)では、第1状態と第2状態のいずれの状態でも、0V近辺の電圧が測定されている。両者の差分電圧ΔVは0Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.27V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0064】
図9(d)は、漏電検出装置10に使用される回路素子の定数が変化した場合の測定波形の一例を示している。図9(d)に示す例は、第1抵抗R1の抵抗値が劣化により200kΩから100kΩに低下した場合の測定波形を示している。第1状態において約5Vが測定され、第2状態において約2.62Vが測定される。第1状態では、直列接続された第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3の両端に5Vが印加されるため、第1抵抗の抵抗値に関わらず、第1状態の測定電圧の理論値も5Vになる。第2状態の測定電圧の理論値は上記(式4)により算出される。両者の差分電圧ΔVは2.38Vである。診断部11dは差分電圧ΔVが、所定の設定範囲(中心値が2.27V)を外れるため、漏電検出装置10を異常と判定する。
【0065】
以上説明したように変形例2によれば、第2電圧出力部が第1状態及び第2状態において、同じ電圧を継続して出力しても、第1電圧出力部の出力電圧を切り替えることにより、上記実施の形態と同様の効果を奏する。また変形例2によれば、変形例1と比較し、第2状態の測定電圧の理論値が高くなることから、測定波形全体の低下に対する耐性が大きくなる。なお、第2電圧出力部は第1基準電圧に代えて第2基準電圧を継続して出力してもよい。
【0066】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
上記実施の形態では、第1基準電圧として電源電圧の5V、第2基準電圧としてグラウンド電圧の0Vを使用する例を説明した。この点、第1基準電圧、第2基準電圧は5V、0Vに限定されるものではなく、異なる任意の2種類の電圧を使用することができる。
【0068】
上記実施の形態では、第1電圧出力部から第1抵抗R1を介してカップリングコンデンサCcに矩形波電圧を印加する例を説明した。この点、正弦波電圧をカップリングコンデンサCcに印加してもよい。この場合も漏電判定部11cは、測定点Aの電圧波形からピークピーク値を特定し、上記実施の形態と同様に漏電の有無を判定することができる。
【0069】
上記実施の形態では、漏電検出装置10を電動車両に搭載して使用する例を説明した。この点、実施の形態に係る漏電検出装置10は車載用途以外の用途にも適用できる。蓄電部20、及び蓄電部20から電力供給を受ける負荷がアースから絶縁されている構成であれば、負荷はどのような負荷であってもよい。例えば、鉄道車両内で使用される負荷であってもよい。
【0070】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0071】
[項目1]
アースと絶縁された状態で、負荷(2)に接続されている蓄電部(20)の電流経路に一端が接続されるカップリングコンデンサ(Cc)と、
周期的に変化する周期電圧を生成して、前記カップリングコンデンサ(Cc)の他端に第1抵抗(R1)を介して印加する第1電圧出力部(11a、OP1)と、
固定電圧を出力する第2電圧出力部(11e、OP3)と、
前記カップリングコンデンサ(Cc)と前記第1抵抗(R1)との間の接続点と、前記第2電圧出力部(11e、OP3)との間に直列に接続された第2抵抗(R2)および第3抵抗(R3)と、
前記第2抵抗(R2)と前記第3抵抗(R3)との間の分圧点の電圧を測定する電圧測定部(11b)と、
前記第1電圧出力部(11a、OP1)から前記周期電圧が出力されている状態において、前記電圧測定部(11b)により測定された電圧をもとに、前記蓄電部(20)の電流経路と前記アース間の漏電の有無を判定する漏電判定部(11c)と、
前記分圧点に2種類の固定電圧が順番に印加される期間において、前記電圧測定部(11b)により測定された電圧をもとに、本漏電検出装置(10)が正常であるか否かを判定する診断部(11d)と、
を備えることを特徴とする漏電検出装置(10)。
これによれば、漏電検出装置(10)の故障診断を高精度に行うことができる。
[項目2]
前記診断部(11d)は、前記期間の第1状態で測定された電圧と、前記期間の第2状態で測定された電圧との差分が、設定範囲を外れているとき、本漏電検出装置(10)を異常と判定し、
前記第2状態は、前記第1状態と比較して、前記第1電圧出力部(11a、OP1)及び前記第2電圧出力部(11e、OP3)の少なくとも一方の出力電圧が異なることを特徴とする項目1に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、漏電検出装置(10)の故障診断を高精度に行うことができる。
[項目3]
前記第1電圧出力部(11a、OP1)は、前記第1状態において第1基準電圧を出力し、前記第2状態において第2基準電圧を出力し、
前記第2電圧出力部(11e、OP3)は、前記第1状態において前記第2基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第1基準電圧を出力する、
ことを特徴とする項目2に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、好適な判定用の差分電圧を測定することができる。
[項目4]
前記第1電圧出力部(11a、OP1)は、前記第1状態及び前記第2状態において、第1基準電圧または第2基準電圧を継続して出力し、
前記第2電圧出力部(11e、OP3)は、前記第1状態において前記第1基準電圧を出力し、前記第2状態において前記第2基準電圧を出力する、
ことを特徴とする項目2に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、好適な判定用の差分電圧を測定することができる。
[項目5]
前記第1電圧出力部(11a、OP1)は、前記第1状態において第1基準電圧を出力し、前記第2状態において第2基準電圧を出力し、
前記第2電圧出力部(11e、OP3)は、前記第1状態及び前記第2状態において、前記第1基準電圧または前記第2基準電圧を継続して出力する、
ことを特徴とする項目2に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、好適な判定用の差分電圧を測定することができる。
[項目6]
前記第1基準電圧はハイサイド基準電圧であり、
前記第2基準電圧はローサイド基準電圧である、
ことを特徴とする項目3から5のいずれか1項に記載の漏電検出装置(10)。
これによれば、第1基準電圧と第2基準電圧を簡単に生成することができる。
[項目7]
車両のシャーシアースと絶縁された状態で搭載され、前記車両内の負荷(2)に電力を供給する蓄電部(20)と、
項目1から6のいずれか1項に記載の漏電検出装置(10)と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム(5)。
これによれば、自身の故障診断を高精度に行うことができる漏電検出装置(10)を備える車両用電源システム(5)を実現することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 インバータ、 3 モータ、 Lp プラス配線、 Lm マイナス配線、 Cp 正側Yコンデンサ、 Cm 負側Yコンデンサ、 Rlp 正側漏電抵抗、 Rlm 負側漏電抵抗、 Rlb 漏電抵抗、 MRp 正側メインリレー、 MRm 負側メインリレー、 5 電源システム、 20 蓄電部、 E1-En セル、 10 漏電検出装置、 11 制御部、 11a 発振部、 11b 電圧測定部、 11c 漏電判定部、 11d 診断部、 11e 定電圧出力部、 Cc カップリングコンデンサ、 R1 第1抵抗、 R2 第2抵抗、 R3 第3抵抗、 C1 平滑用コンデンサ、
OP1 第1オペアンプ、 OP2 第2オペアンプ、 OP3 第3オペアンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9