IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トタルエナジーズ ワンテクの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテ ドゥ モンレアルの特許一覧

特許7608371エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法
<>
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図1
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図2
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図3A
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図3B
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図3C
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図3D
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図3E
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図4
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図5
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図6
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図7
  • 特許-エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】エコ電極、電気エネルギー蓄積装置、およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20241223BHJP
   H01G 11/26 20130101ALI20241223BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20241223BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241223BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20241223BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20241223BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241223BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H01M10/36 A
H01G11/26
H01G11/38
H01G11/86
H01M4/02 A
H01M4/24 Z
H01M4/62 C
H01M4/62 Z
H01M10/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021571843
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2020065325
(87)【国際公開番号】W WO2020245180
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】19305706.4
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522232558
【氏名又は名称】トタルエナジーズ ワンテク
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(73)【特許権者】
【識別番号】511110854
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】エメ-ペロ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】プロフィリィ,ジャコポ
(72)【発明者】
【氏名】スタフォード,リュック
(72)【発明者】
【氏名】ルスロー,スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ドール,ミカエル
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02
H01M 4/13
H01M 4/14
H01M 4/24
H01M 10/28
H01M 10/36
H01G 11/26
H01G 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギー蓄積装置であって、前記装置が、複合電極を単数または複数と少なくとも一つの水性電解液を含み、複合電極が水性電解液と接触して置かれ、前記電極が電極本体と電極シェルとを含み、前記本体が少なくとも一つの水溶性ポリマーを含み、また前記シェルの少なくとも一部が少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を含む、装置。
【請求項2】
前記装置が電池であり、例えばリチウム電池またはリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、または例えばMgもしくはCaのような多価イオン電池、ハイブリッド電池、例えばZn、LiもしくはNaイオンを使用するハイブリッド電池、またはアルカリ電池である、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン(POE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、セルロース誘導体、ペクチン、キトサン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、グアーガム誘導体、ヒアルロン酸(HA)、デンプンまたはデンプン誘導体、ポリエチルオキサゾリン、そしてその誘導体で構成される群から選択される、請求項1または2に記載の装置
【請求項4】
前記水溶性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)で構成される群から選択される、請求項1から3のいずれか一つに記載の装置
【請求項5】
前記有機物質または有機金属物質、プラズマ処理によ堆積を含み、例えば前記有機金属物質が、オルガノシラン、またはオルガノアラン、または有機物質と有機金属物質との混合物であり、例えば有機金属物質の前駆体がシロキサン、例えばジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCATS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシラン、メチル基およびメトキシ基の有機シリコン、例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、トリメチルメトキシシラン(TMMOS)、またはヘキサメチルジシランである、請求項1からのいずれか一つに記載の装置の調製方法
【請求項6】
前記有機金属物質が、プラズマ蒸着によって堆積される、請求項に記載の方法
【請求項7】
記方法が、プラズマ蒸着によって、前記物質を、前記複合電極の前記本体の少なくとも一部の上に堆積することを含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマ蒸着が大気圧下で行われる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマ蒸着が、オルガノシランまたはオルガノアラン結合の前駆体を含む蒸気相の存在下で行われ、例えば前記前駆体が、ポリアルキルジシロキサン、例えばジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)である、請求項6から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ蒸着が、ロール・ツー・ロール方式にしたがって行われる、請求項6から9のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電池、例えば電気化学二重層キャパシタ(ウルトラキャパシタ)などのキャパシタを含む、電気エネルギー蓄積装置用複合電極に関する。本発明はまた、前記複合電極を含む電気エネルギー蓄積装置、および前記複合電極を作製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電池およびキャパシタの多くは、環境にとって有害であると見なすことができる。いくつかの特定用途のために、しかしまたより良い未来のためにも、環境に優しいまたは生分解可能な電気エネルギー蓄積装置を得ることは重要であろう。電池は、数種類の材料(活物質、高分子バインダー、金属集電体など)で作られており、それらは我々が環境とより適合する装置を得たいならば全面的に見直される必要がある。バインダーは一般に、電池電解液がどんなもの(水性媒体または有機媒体)でもフッ素系ポリマーである。
【0003】
水に溶けるポリマー(CMC、PAAなど)は、有機電解液中で作用しなければならない将来性のある電極用バインダーとしてますます考慮されている。電極は水中で策定されることができ、これはプロセスの観点から重要な利点である。
【0004】
もちろん、そのようなポリマーは、それらの水溶性のために、水系電池用の電極バインダーとして使用することは今までできていない。水性溶媒中に溶けるバインダー、例えばバイオ由来のCMC(カルボキシメチルセルロース)や、PEO(ポリエチレンオキシド)、PVA(ポリビニルアルコール)、PLA(ポリ乳酸)などのような他のバインダーの利用は、水性電解液を伴うこれらの電極の使用を阻むものである。実際に、水溶性バインダーを伴う電極が水性電解液と接触して置かれると、水とバインダーとの間の強い化学的相互作用が、電極の溶解に起因する電極の電子浸透損失を引き起こす。これは、このタイプの複合電極バインダーの、「環境に優しい」電池の分野での使用のための適用範囲を狭めている。これに関連して、水系電池において例えばCMCや他のバインダーのような水溶性バインダーを基にした電極を使用することができれば、経済的にまた環境保護に関して有利である。結果的に、今日にいたるまで、CMC、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などのようなバイオ由来ポリマーは、水系電池における電極バインダーとして使用できていない。
【0005】
電池(例えばリチウムイオン電池など)用の典型的な複合電極の製造は、集電体上に堆積する活物質と、カーボンブラックと、バインダーとを混合することから成る。ウルトラキャパシタの場合、活物質は多孔質炭素である。バインダーを溶媒中に溶解してから混合物を作製する。使用される典型的なバインダーは、N-メチルピロリドン(NMP)に溶解したポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。他のバインダーと溶媒との組合せもまた可能である。対象電位領域における作用環境とのバインダーの電気化学的な安定性および適合性もまた考慮されるべきである。PVDFは、水性媒体にうまく適応しない。これに関連して、水系電池においてバイオ由来バインダーを基にした複合電極を使用することができれば、工業用電極を作製するための材料および方法が変わらないので、非常に有利となろう。さらに、一般的に使われる有機溶媒は、有害で、揮発性、そして引火性である。これに関連して、水性溶媒中に溶けるバインダーの使用はしたがって、三つの利点を有する。
【0006】
今までのところ、電池電極分野における物理化学的処理は、化学界面を修正するために活物質粒子に主に行われている。
【0007】
複合電極を作製する前に活物質(ナノ粒子)を覆うために、多大な努力がなされている。複合電極への直接堆積に関する唯一の既存例は、有機電解液電池における電気活性生成物の制御されない溶解および二次生成物の形成を減少させるための酸化物堆積(典型的にはAl)(米国特許出願公開第2012/0077082号明細書)である。
【0008】
さらに、先行技術は主に、有機媒体中で動作する電池に焦点をあてている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2012/0077082号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[発明の目的]
本発明は、電気エネルギー蓄積装置用複合電極の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0011】
本発明は、水性電解液とともに作用する電気エネルギー蓄積装置用複合電極の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0012】
本発明は、水性媒体と接触して作用する電気エネルギー蓄積装置用複合電極の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0013】
本発明は、そのような複合電極を有する電気エネルギー蓄積装置の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0014】
本発明は、そのような複合電極を作製するための方法の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0015】
本発明はとりわけ、そのような方法を低コストで提供することを目指す。
【0016】
本発明はとりわけ、電気エネルギー蓄積装置および/または複合電極を作製するための工業工程を、他の工程段階を変更することなく、統合しながらそのような複合電極を作製するための方法の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0017】
本発明は、水性媒体および/または水性電解液もしくは有機電解液とともに作用する電気エネルギー蓄積装置に、水溶性バインダーを含む複合電極を適応させるための方法の提供についての技術的問題を克服することを目指す。
【0018】
本発明は、環境に優しい、または「環境保護」に適格な方法もしくは電気エネルギー蓄積装置でありながら、上記の技術的問題を克服することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の説明]
本発明は、電気エネルギー蓄積装置用複合電極と、とりわけその電気化学的挙動を改良するために、プラズマ処理によってそのような複合電極を作製する方法とに関している。
【0020】
本発明は、前記電極が電極本体と電極シェルとを含み、前記本体が少なくとも一つの水溶性ポリマーを含み、また前記シェルの少なくとも一部が、少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を含むシェルを含む、電気エネルギー蓄積装置用複合電極に関する。
【0021】
本発明による複合電極は、水溶性ポリマーを含む単数または複数のバインダーを含む。
【0022】
一実施形態において、前記水溶性ポリマーは、バイオ由来ポリマーである。
【0023】
一実施形態において、前記水溶性ポリマーは、多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン(POE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、セルロース誘導体、とりわけアルキルセルロース、ジアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ペクチン、キトサン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、グアーガム誘導体、とりわけヒドロキシプロピルグアー、カルボキシアルキルグアー、ヒアルロン酸(HA)、デンプンまたはデンプン誘導体、ポリエチルオキサゾリン、そしてその誘導体で構成される群から選択される。
【0024】
一実施形態において、前記水溶性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、とりわけカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)で構成される群から選択される。
【0025】
水溶性ポリマーの例として、ポリエチレンオキシド(PEO、例えば100,000g/molから数百万g/molまで、典型的には150万g/molまでのPEO)が挙げられる。
【0026】
本発明は、電気エネルギー蓄積装置用複合電極のための電極バインダーとして、バイオ由来ポリマー、またより一般的には水溶性ポリマーを使用することを可能にする。
【0027】
水電解液をバイオ由来ポリマーのバインダーに結びつけることは、より環境に優しい電気エネルギー蓄積装置を開発するための非常に有望な一歩である。
【0028】
特に複合電極におけるバインダーとしての水溶性ポリマーの利用は、特に電気エネルギー蓄積装置の作製のために、とりわけ環境面、安全面および製造コスト面において大きな技術的利点を有する。
【0029】
典型的には、電極用バインダーとして使用される水溶性ポリマーは、このタイプの複合電極を、有機電解液においてだけでなく水性電解液においても使用できるようにする。
【0030】
電極作製のためにバインダーとして水溶性ポリマーまた特にCMCを利用することは、経済的かつ環境的な飛躍的進歩である。
【0031】
ポリマーが水溶性かどうか決定するための方法は以下のとおりである。
1~5重量%のポリマーが、95~99重量%の水を含む閉じられた小びんの中に置かれて撹拌される。未溶解ポリマーの跡がもはや全く観察できない場合、少なくとも2日後に透明な溶液が観察される。
【0032】
バインダーとしてポリマー(水溶性ポリマー)を含む複合電極は、電極を構成する集電体の重さに対する複合化合物の正確な量を割り出すために、重さを量られる。複合化合物は、おおよそ85~90重量%の活物質と、5~10重量%のカーボンブラック(C65、Timcal)と、5~10重量%のバインダーとで構成されている。電極は、5mLの水を含む小びんの中に、定常状態下で48時間置かれる。この時間の後、電極は、12時間真空下で80℃で乾燥され、そしてそれから再び重さを量られる。残っている複合化合物の量が、そのとき割り出される。高分子バインダーがその役割である複合電極の機械的結合を確保していないと、ポリマーはそのとき水溶性であると見なされる。典型的には、集電体に残っている複合化合物が10重量%未満、また好ましくは1重量%未満の場合、高分子バインダーは水溶性であると見なされる。
【0033】
典型的には、前記シェルの厚さは、500nm~8μmである。
【0034】
典型的には、前記複合電極は、単数または複数の活物質、単数または複数のバインダー、および単数または複数の導電性電荷を有する。
【0035】
典型的には、前記導電性電荷は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェンペレット、例えば銅、ニッケル、アルミニウムまたは銀などの粉末金属、金属繊維、およびそれらのあらゆる組合せで構成される群から選択される。
【0036】
一実施形態において、前記導電性電荷は、カーボンブラックである。
【0037】
典型的には、さまざまな物質を、電極活物質として使用することができる。そのような活物質は、電気エネルギー蓄積装置のタイプによって決まる。前記活物質は典型的には、O原子と、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、希土類金属、銅(Cu)、セレン(Se)、硫黄(S)、リン(P)、そしてケイ素(Si)の原子のうちの少なくとも一つとを含む。
【0038】
有機系活物質のような他の物質が、使用されることができる。前記有機系活物質は典型的には、O原子、C原子およびN原子を含む。
【0039】
一実施形態において、前記活物質は、LiFePOまたはFePOである。
【0040】
一実施形態において、前記活物質は、多孔質炭素である。
【0041】
一実施形態において、前記有機物質または有機金属物質は、プラズマ処理によって堆積される。例えば前記有機金属物質は、オルガノシラン、またはオルガノアラン、または異なる割合における有機物質と有機金属物質との混合物である。有機金属物質の可能な前駆体の例には、ジビニルテトラメチルジシロキサン(DVTMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCATS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDSN)、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシラン、メチル基およびメトキシ基の有機シリコン、例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMOS)、トリメチルメトキシシラン(TMMOS)、ヘキサメチルジシランなどが含まれる。有機物質の前駆体の例として、CxFyまたはCxFyAz(ここでAはヘテロ原子、x、yおよびzはそこにある各原子の数を示している)、例えば1-フルオロヘプタン、1,7-オクタジエン、アセチレン、メタン、プロピレン、スチレン、アクリル酸などが挙げられる。
【0042】
有利には、発明者らの知る限りでは、水溶性ポリマーをとりわけバインダーとして含む複合電極上の有機シリコンシェルが、前記水溶性ポリマーの溶解を制限するために特別に報告されたことはない。
【0043】
有利には、前記シェルは、電気エネルギー蓄積装置において、例えば電池などにおいて複合電極シェルとして機能するのに十分に低い抵抗率を示す。
【0044】
有利には、前記シェルは、複合電極本体の表面の可変の疎水性機能化を象徴し、このことは、液体のぬれ性の程度、および電極/電解液の界面での液体と電極との相互作用を、制御することを可能にする。本発明は有利には、広範囲の液組成に適応することを容易にする。
【0045】
有利には、前記シェルは、活物質の電気化学的充電および放電中に誘導される体積変化に耐えることのできる、優れた機械的性質を有する。
【0046】
有利には、前記シェルは、機械的性質を保持し、かつ電極と電解液との間の活性種の交換を可能にするのに十分な空隙率/形態を示す。
【0047】
一実施形態において、前記シェルは、前記少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を含む層から成る。典型的には、この実施形態において、この層は複合電極の表面にある。
【0048】
一実施形態において、前記シェルは、前記少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を含む層と、単数または複数の他の層とを含む。この実施形態において、前記少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を含む層は、複合電極の表面にあるかまたは該表面にない。
【0049】
一実施形態において、複合電極の表面は、とりわけ複合電極の表面のぬれ性および/または周囲の液体との相互作用を修正するために、複合電極の表面に機能化する分子の層を少なくとも一つ含む。
【0050】
一実施形態において、前記有機金属物質は、プラズマ蒸着、とりわけプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって堆積される。
【0051】
好ましくは、前記プラズマ処理は、大気圧で実行される。
【0052】
一実施形態において、前記プラズマ処理は、減圧で実行される。
【0053】
有利には、前記プラズマ処理は、水平配列(プロセスの平面計画配置)において大気圧で実行される。
【0054】
一実施形態において、前記プラズマ処理は、誘電体バリア放電を含み、好ましくは前記誘電体バリア放電は、層状基板の加工に適している。
【0055】
好ましい実施形態において、前記プラズマ処理は、ロール・ツー・ロール方式に組み込まれる。これは有利には、典型的には数メートルの長さのリール上での保護フィルムまたは保護層の連続堆積を可能にする準工業状態における動作を可能にする。
【0056】
一実施形態において、前記プラズマ処理は、他の反応器配列(水平ではない)を利用して大気圧で達成される。
【0057】
有利には、前記プラズマ処理は、メカニカルアームで動作するジェット式処理により容易に実現される。
【0058】
典型的には、プラズマを生成するために、電極によって覆われた集電体は、大気圧または低圧で動作するプラズマ反応器の中に置かれる。
【0059】
一実施形態において、プラズマを生成するために、キャリアガス(典型的にはHe、ArまたはN)は、反応性ガス(N、NO、O、H、CH、C、CF、C、C)と、および/または少なくとも一つの有機分子および/または有機金属分子を含むガスと、さまざまな割合で混合される。
【0060】
一実施形態において、ガスは、有機電解液電池のための電極保護といった、対象とされる応用のための化合物を含む。
【0061】
典型的には、電源は、利用されるプラズマ装置に適応している。
【0062】
プラズマ処理が大気圧で行われるならば、無線周波数、可聴周波数、マイクロ波電力、さらにはマイクロおよびナノパルス電源が好ましい。プラズマ処理が低圧で行われるならば、DC、無線周波数、またはマイクロ波電源が好ましい。
【0063】
有利には、前記大気圧でのプラズマ処理は、均質なレジーム(タウンゼント放電、または発光/グロー)で動作するか、またはフィラメントを介して散逸するエネルギーが、(例えば力学的処理を伴って)集電体にダメージを与えずに処理の均質性を制御するように制御される場合は、フィラメント状のレジームで動作する。
【0064】
有利には、穏やかなレジームでのフィラメント状放電の利用は、電極および/または堆積されるシェルの均質性を修正して、シェルによって覆われる複合電極の最終空隙率に影響を与えることを可能にする。
【0065】
典型的には、プラズマは、大気圧で、ヘリウムと、オルガノシランまたはオルガノアラン結合の分子前駆体との制御混合物中で生成され、例えば前記前駆体は、ポリアルキルジシロキサン、例えばジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)などである。
【0066】
一実施形態において、分子前駆体はフッ素系分子であり、例えばCxFyまたはCxFyAz(ここでAはヘテロ原子、x、yおよびzはそこにある各原子の数を示している)、例えば1-フルオロヘプタンである。しかしながら、本発明の目的により、環境に優しくない物質を避ける必要がある。したがって、この実施形態はあまり好ましくない。そのうえ、そのようなフッ素系物質は、工業規模で保管するのがより困難であろう。
【0067】
有利には、利用される電気励起は、堆積工程の間中ずっと電力制御を伴う可聴周波数領域におけるものである。
【0068】
典型的には、シェルの厚さは、加工時間に応じて変動する。
【0069】
一実施形態において、数層が堆積される。
【0070】
一実施形態において、異なる化学的性質を有する層が堆積される。
【0071】
有利には、シェルの形態および化学組成は、前駆体の種類に応じて異なる。
【0072】
有利には、シェルの形態(粗さ、電極被膜、空隙率、厚さ)、ならびにシェルの表面上および内部に存在する基の化学的性質は、最終生成物を最適化することを可能にするパラメータである。
【0073】
有利には、前記プラズマ処理は、シェルの空隙率を修正することを可能にする。有利には、空隙率に応じて屈曲度が修正され、このことは薄膜内のイオン輸送に影響を与え得る。
【0074】
有利には、前記プラズマ処理は、複合電極の表面およびシェルの体積体の化学的性質を制御し、このことは作り出される薄膜の安定性を修正することを可能にし、それによってとりわけ経時的用途のための複合電極の分解性の制御を可能にする。本発明はしたがって、時間制御型分解性電極に関している。
【0075】
有利には、プラズマ法における無害な前駆体の利用は、環境に優しい製造方法を利用することを可能にするだけでなく、生分解するのが困難かつ/または非常に有害な成分を放出することなく分解できる無害なシェルを作り出すこともまた可能にする。
【0076】
本発明はまた、少なくとも一つの水溶性ポリマーを含む本体を含む複合電極を作製する方法にも関しており、前記方法は、プラズマ蒸着、とりわけプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって、物質を、前記複合電極の前記本体の少なくとも一部の上に堆積することを含む。
【0077】
プラズマ蒸着、とりわけプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)は、プラズマ処理ともいわれる。
【0078】
とりわけ、本発明は、前記プラズマ蒸着によって少なくとも一つの有機物質または有機金属物質を堆積し、それによって本発明による複合電極を作製することを含む方法に関している。
【0079】
有利には、前記プラズマ蒸着は、大気圧下で行われる。
【0080】
一実施形態において、前記プラズマ蒸着は、オルガノシランまたはオルガノアラン結合の前駆体を含む蒸気相の存在下で行われ、例えば前記前駆体は、ポリアルキルジシロキサン、例えばジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)である。
【0081】
一実施形態において、前記プラズマ蒸着は、ロール・ツー・ロール方式にしたがって行われる。
【0082】
有利には、前記プラズマ処理は、有機媒体と接触して作用する電極上で行われる。本発明は、電極/電解液の界面の挙動のより良い制御を可能にする。
【0083】
有利には、プラズマ処理は、単数または複数の電極上で直接行われ、このことは、とりわけ既存の工業工程における、加工および製造ラインへの統合が容易であることを意味する。
【0084】
典型的には、本発明は、複合電極の本体の表面上への巨視的に均質なシェル(薄膜またはフィルムとも呼ばれる)の堆積を含む。この工程は、集電体上に堆積する複合電極を、該電極が化学的作用環境と適合するように修正することを容易にする。
【0085】
有利には、前記プラズマ処理を行うことによって、複合電極の表面に、複合電極の結合に関して電極表面を安定させる被覆層(シェル)が形成される。有利には、本発明によると、複合電極は、水性電解液と接触して安定している。前記被覆層がなければ、複合電極は、水性電解液または、典型的には水である水性媒体の存在下で十分な結合を有しない。
【0086】
有利には、水性溶媒の利用は、電極の製造コストを大幅に削減する。実際に、典型的なバインダーとともに一般に使われる有機溶媒(PVDFをともなうNMP溶媒)は、バインダーの可溶化のためにまた電極乾燥中の溶媒蒸気処理のために、工程における追加コストを示す。
【0087】
有利には、シェルは、前記電気エネルギー蓄積装置の動作を確実にするために、イオンの拡散を可能にし、そして電極の電気化学的安定性を保証する。
【0088】
有利には、シェルは、複合電極の機械的安定性を改善し、水性媒体におけるその安定領域を拡大する。
【0089】
有利には、シェルは、水溶性バインダーの溶解を防ぎ、また前記電気エネルギー蓄積装置および水性媒体中で扱える電極の充放電サイクル中に発生する機械的変化に適応する。
【0090】
有利には、方法は、使われる電極活物質が媒体および電気化学的作用電位領域において適合する限り、使われる電極活物質に関係なく適合する。有利には、方法は、使われる電極組成にも関係なく適合する。好ましくは、方法は、電極が機能するとすぐに、複合電極の厚さに関係なく機能する。
【0091】
典型的には、前記方法は、イオンの通過を可能にする薄膜を作り出すためのマスクの利用を必要としない。
【0092】
一実施形態において、前記方法は、電極上の処理の場所を決めるためのマスクの利用を含む。
【0093】
複合電極本体の作製は、当業者の知識にしたがって行われる。
【0094】
好ましくは、水性溶媒、より好ましくは水が、複合電極本体の作製のための溶媒として使用される。
【0095】
本発明はまた、電気エネルギー蓄積装置にも関しており、前記装置は、本発明による、または本発明による方法によって作製される、単数または複数の複合電極を含む。
【0096】
一実施形態において、前記装置は、本発明による前記複合電極と接触する水溶液を含む。
【0097】
一実施形態において、前記装置は、少なくとも一つの水性電解液を含む。
【0098】
一実施形態において、前記装置は、少なくとも一つの有機電解液を含む。
【0099】
一実施形態において、前記装置は電池であり、例えばリチウム電池またはリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池または例えばMgもしくはCaのような多価イオン電池、ハイブリッド電池、例えばZn、LiもしくはNaイオンを使用するハイブリッド電池、またはアルカリ電池である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
図1】プラズマ励起化学気相堆積装置(PECVD)の構成の概略図である。
図2】有機金属シェルの前駆体に応じたシェルの異なる形態:HMDSO(左)、TMCTS(真ん中)またはTEOS(右)を示している。
図3】A/Bは、被膜のついていないCMC電極A)と、本発明によるシェルで被覆した後のCMC電極B)についての接触角計測を示している。C/Dは、水性電解液における電極の機械的安定性テストを示している。C)は、硬化後10秒のCMC電極について、D)は、硬化後10秒の被覆済み電極について、そしてE)は、硬化後6か月である。
図4】HO中の1mのLiTFSI電解液における堆積安定性窓の測定を示している。
図5】C/10までのHO中の1m LITFSI電解液における、異なる表面の有機シリコン堆積についての定電流曲線を示している。
図6】C/10までのHO中の1m LITFSI電解液におけるクーロン効率曲線を、HMDSOプラズマ蒸着によって得られたシェルを持つLFP-CMC電極用のサイクル数に応じて示している。
図7】サイクリング前およびサイクリング後にHMDSOプラズマ蒸着シェルによって得られたシェルの、およびシェルのないバインダーとしてCMCを用いた複合電極の本体の表面の赤外線スペクトルである。
図8】HO中の1m LITFSI電解液におけるインピーダンス曲線を、HMDSOプラズマ蒸着によって得られたシェルを持つLFP-CMC電極のサイクル数に応じて示している。
【発明を実施するための形態】
【0101】
[実施例]
以下の本発明の実施例は、電極、および電気エネルギー蓄積装置の一種を示す電池を対象にする。
【0102】
電極の作製
LiFePO(Johnson Mattheyが提供しているP2)が、活物質として使用された。LiFePOはまた、Lepage et al.46によって報告された過酸化水素法と酢酸とを利用して化学的に酸化されFePOになった。水性電解液と接触し、電気化学的安定性窓において安定した他の活物質を利用することができることに、留意されたい。
【0103】
水性電解液における電気化学的評価のための電極が、84重量%の活物質(LFPかFePOのいずれか)と、9重量%のカーボンブラックTimcal C65と、脱イオン水中に予め溶解した7重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(Sigma Aldrich 419273が提供しているCMC、Mw=90,000g/mol)バインダーとを組み合わせることによって製造された。スラリーは、Kurabo Mazerustar KK-50S遊星型撹拌脱泡装置を使って均質にするために20分間混合され、そしてドクターブレード法を利用して30μmの厚さのステンレス鋼箔の上に広げられた。ステンレス鋼集電体(8)の利用により、リチウム塩をともなう水性媒体中のAl集電体において観察される典型的な腐食問題が避けられる。皮膜はそれから、一晩中炉内において真空下で70℃で乾燥された。LFP電極については8mmのディスク、FePO電極については12mmのディスクが、皮膜から型に切り取られた。負極の方が大きい寸法設計は、正極容量のバランスを保つことを許容し、また限界が作用電極のみに起因していることを確実にした。
【0104】
プラズマ蒸着
ポリマーは、大気圧で、平面から平面への誘電体バリア放電において堆積された。この作業において利用される実験準備は、これまでの研究論文において記述されている(J Profili,O Levasseur,N Naude,C Chaneac,L Stafford,N Gherardi,Influence of the voltage waveform during nanocomposite layer deposition by aerosol-assisted atmospheric pressure Townsend discharge,2016年8月7日,Journal of Applied Physics,120巻,5号,053302ページ,AIP Publishing;Jacopo Profili,Olivier Levasseur,Jean-Bernard Blaisot,Anja Koronai,Luc Stafford,Nicolas Gherardi,Nebulization of nanocolloidal suspensions for the growth of nanocomposite coatings in dielectric barrier discharges,2016年10月,Plasma Processes and Polymers,13巻,10号,981~989ページ;Olivier Levasseur,Reetesh Kumar Gangwar,Jacopo Profili,Nicolas Naude,Nicolas Gherardi,Luc Stafford,Influence of substrate outgassing on the plasma properties during wood treatment in He dielectric barrier disharges at atmospheric pressure,2017年8月,Plasma Processes and Polymers,14巻,8号,1600172ページ)。簡潔に言うと、全ての実験は、キャリアガスとしてヘリウム(He、PURITY Praxair)を用いて行われた。ガス混合物(1)(120mg/hのHMDSO蒸気を伴う4.5SLMのHe)が、DBDセルの片側から出口(5)まで連続して注入された。一定の大気圧(1バール)が、導管の穏やかなポンピングによって工程中にもたらされた。工程中に注入されるガスの純度は、実験に先立って、DBDセルをステンレス鋼密閉チャンバーの中に真空下で置いておくことによって確保された。放電セルは、1mmのガスギャップで隔てられた2枚の誘電体板(3)(Al、635μmの厚さ)で構成されている。電極(2)(銀白金ペースト、面積3×3cm)は、アルミナ表面のサイドに広がっている。電極のディスクの内側のステンレス鋼基板は、電極(8)間の下部誘電体表面上において、放電エリア(4)と接触するその表面に、置かれた。電極からの基板のあらゆる分離を防ぐために、金属箔が、四辺にKapton(登録商標)テープを使って下部表面に取り付けられた。ここで留意すべきは、この幾何学配置が、箔と層状基板との取扱いを可能にして、電極箔の継続処理用のロール・ツー・ロール配置に容易に適応され得ることである。
【0105】
放電エリア(4)は、基板の始まり(6)から約10mmの距離(7)のところで開始している。
【0106】
放電は次に、電極に正弦波電圧(2kV、20kHz)をかけることによって放電エリア(4)において点弧される。処理は、これらの条件において10分間行われた。印加電圧および電流は、それぞれ高電圧プローブ(TEKTRONIX P6015A)によって、および広帯域電流コイル(LILCO Ltd. 13W5000)によって測定された。オシロスコープ(Tektronix DPO5204B)が、すべての電圧および電流波形を記録するために使用され、また堆積中の散逸電力を計算した。
【0107】
電極特性評価
電極の形態が、卓上電子顕微鏡HITACHI TM3030Plusを使って観察され、また横断面が、JEOL FE-SEM 7600電解放出銃(FEG)走査型電子顕微鏡(SEM)を使って、10kVの加速電圧、約4mmの作動距離、および5k~50kの倍率を用いて調査された。プラズマ処理の前と後の電極における元素分布を調査するために、エネルギー分散型X線分析(EDS)を使って、化学マッピングが行われた。堆積されたフィルムの質が、ATR-FTIR(減衰全反射(ATR)モジュールを備えたVertex 70(Bruker(登録商標)))によって特徴づけられた。プラズマ処理で生じた構造的変化を特徴づけるために、2θ範囲10~60°で0.02°のステップのCuKα放射(λ=1.5406Å)を備えたBruker D8 Advanceを使って、堆積の前と後の電極のX線解析(XRD)パターンが示された。異なる表面のぬれ挙動が、接触角計測装置(OneAttension Theta、Biolin Scientific)を使って測定された。各表面は、物質の表面上に静かに落とされた小滴(脱イオン水、容積2μL)の接触角の観察(液滴法)によって特徴づけられた。結果は、堆積体の安定化後(典型的には約7秒)に300秒間、ビデオカメラ装置を用いて記録された(液体の蒸発による影響は受けない)。
【0108】
電池の組立ておよび電気化学的測定
水性電解液は、空気下で作製され、そして次にNを使ってOからガス抜きされてから、Nを充填したグローブボックスの中に保管された。LiTFSI(3M)の正確な量は、Arを充填したグローブボックスの中で重さが量られた。LiTFSIは次に、1mの濃度に達するために、対応する量の脱イオン水に溶解された。同じ手順が、硫酸塩(LiSO、NaSOおよびZnSO(Alfa Aesar))溶液(1m)のために利用された。
【0109】
すべてのセルが、Nを充填したグローブボックスの中で組み立てられた。Oは電池のサイクル寿命18に弊害をもたらすので、Oの不在下で電池を組み立てるように注意がなされた。フィルムの電気化学的安定性が、3電極のSwagelokセルを使用して測定された。作用電極は、500nmの厚さのHMDSOフィルムを伴う10mmのステンレス鋼ディスクであり、カウンター電極と参照電極とはそれぞれ、10mmのステンレス鋼ディスクとAg/AgCl電極(BaSi inc)であった。比較のために、同じ配置が、作用電極として覆いのないステンレス鋼ディスクを用いて利用された。サイクリックボルタンメトリーが、LiTFSI電解液について言えば、0.5mV/sの掃引速度を用いて、-0.75~1.25V vs.Ag/AgClで、すなわち2.51~4.51 vs.Li/Liで、行われた。硫酸塩電解液を用いると、安定性窓は、-0.50~1.00V vs.Li/Liで測定された。
【0110】
サイクル試験のために、2電極のSwagelokセルが使用された。Whatmanが提供しているGF/Dホウケイ酸ガラス繊維が、セパレータとして使用された。電気化学的性能は、さまざまな電流率で、-0.6V~0.6V vs.LiFePO/FePO(すなわち2.8V~4.0V vs.Li/Li)で、セル上で決定された。全ての電気化学測定は、VMP電気化学ステーション(Biologic,France)を使って室温で行われた。各サンプル用に、再現性を保証するために、2つのセルが組み立てられた。1mAh/gより少ない容量変化が、2つのセルのセットごとについて発見された。インピーダンス測定のために、3電極のセルが、Ag/AgCl参照電極を用いて同じ配置において使用された。
【0111】
概評として
本発明によるプラズマ処理は、シェルを製造するのに、無害のガス、および少量の無害の前駆体(典型的には1~1000ppm)のみを使用する。本発明によるプラズマ処理は、大気圧で生成されることができ、このことはポンピングとガス制御装置とに関連するコストを大幅に削減する。本発明による方法はそれゆえに、経済的でありかつ環境に優しい。
【0112】
本方法は、基板を、さまざまな電源を用いて、柔軟で構成可能なシートの形に加工するのに非常に適している。本方法は、行うのが簡単で、また連続的な工業工程と非常に適合している。
【符号の説明】
【0113】
1 ガス混合物
2 電極
3 誘電体板
4 放電エリア
5 出口
6 基板の始まり
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8