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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/093 20060101AFI20241223BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
E21D9/093 Z
E21D9/06 301A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022090241
(22)【出願日】2022-06-02
(65)【公開番号】P2023177519
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521478094
【氏名又は名称】地中空間開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】花岡 泰治
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091033(JP,A)
【文献】特開2016-003429(JP,A)
【文献】特開昭61-036492(JP,A)
【文献】特開2001-318031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0147083(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112065421(CN,A)
【文献】特開2016-003430(JP,A)
【文献】特開2002-138792(JP,A)
【文献】特開2003-003789(JP,A)
【文献】特開2017-057602(JP,A)
【文献】特開昭60-183900(JP,A)
【文献】特開平07-219563(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102410027(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148566(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/093
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転により地盤を掘削するカッタヘッドと、
前記カッタヘッドを支持する掘削機本体を推進させる推進ジャッキと、
前記掘削機本体に設けられ、掘削時の振動の大きさを計測する振動計測部と、
表示部と、を備え、
前記カッタヘッドの回転速度を変化させた場合、および、前記掘削機本体の推進速度を変化させた場合の少なくとも一方の場合において、前記カッタヘッドの回転速度の変化および前記掘削機本体の推進速度の変化の少なくとも一方の変化に応じて生じる掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像として前記表示部に表示する場合に、前記掘削機本体の前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさの3方向の各振動の大きさを互いに識別可能な状態で、前記表示部に表示するように構成されている、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記カッタヘッドの回転速度を増減により変化させた場合、および、前記掘削機本体の推進速度を増減により変化させた場合の少なくとも一方の場合において、前記カッタヘッドの回転速度の変化および前記掘削機本体の推進速度の変化の少なくとも一方の変化に応じて生じる掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な前記画像を前記表示部に表示するように構成されている、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記振動計測部の計測結果に基づいて前記カッタヘッドの回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御、および、前記振動計測部の計測結果に基づいて前記掘削機本体の推進速度を増減させことにより振動を小さくする制御の少なくとも一方を行う制御部を備える、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記カッタヘッドの回転速度と振動の大きさとの関係を示す振動情報が予め記憶された記憶部を備え、
前記振動情報である前記カッタヘッドの互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を前記画像として示した振動グラフを少なくとも前記表示部に表示するように構成されている、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記振動情報は、前記カッタヘッドの回転速度に対する前記掘削機本体の前記前後方向の振動の大きさ、前記左右方向の振動の大きさ、および、前記上下方向の振動の大きさの情報を含み、
前記掘削機本体の前記前後方向の振動の大きさ、前記左右方向の振動の大きさ、および、前記上下方向の振動の大きさを互いに識別可能な状態で、前記振動グラフを前記表示部に表示するように構成されている、請求項4に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記振動計測部は、前記掘削機本体の前記前後方向の振動、前記左右方向の振動および前記上下方向の振動の各々を個別に計測可能に構成され、
前記制御部は、前記掘削機本体の外周部における地盤との摩擦の影響によって、前記振動計測部により計測された前記掘削機本体の前記前後方向の振動が前記左右方向の振動および前記上下方向の振動の各振動よりも大きくなっている場合には、前記掘削機本体の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている、請求項3に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記振動計測部の計測結果に基づいて警告を報知する報知部を備える、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッタヘッドおよび推進ジャッキを備えるトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カッタヘッドおよび推進ジャッキを備えるトンネル掘削機が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、カッタヘッドおよび推進ジャッキを備えるシールド掘進機が開示されている。上記トンネル掘削機は、推進ジャッキの変形に起因する振動が発生した際に、推進ジャッキを縮めることにより、推進ジャッキをセグメントから離間させることによって、変形した推進ジャッキに作用する荷重を緩和するように構成されている。その結果、推進ジャッキが変形した状態で推進を継続することによって発生する振動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6426571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載のシールド掘進機を含むトンネル掘削機の分野では、掘削するために構成される推進ジャッキなどの駆動が振動の発生にどの程度影響し、かつ、掘削するために構成される推進ジャッキなどの駆動(例えば速度)を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが把握したいという要求が存在する。特に、手動で推進ジャッキなどの掘削するために構成される装置を駆動させる場合などに推進ジャッキなどの構成の駆動がどの程度、振動の軽減に影響するかをユーザが把握することは有効である。また、自動で推進ジャッキなどの掘削するために構成される装置の駆動を制御する場合においても、推進ジャッキなどの構成の駆動がどの程度、振動の軽減に影響するかをユーザが把握することは、振動の軽減に用いる構成の制御量などを調整することが可能となるため、有効である。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、掘削するために構成される装置の駆動が振動の発生にどの程度影響し、かつ、掘削するために構成される装置の駆動を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが容易に把握することが可能なトンネル掘削機およびトンネル掘削機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明のトンネル掘削機は、回転により地盤を掘削するカッタヘッドと、カッタヘッドを支持する掘削機本体を推進させる推進ジャッキと、掘削機本体に設けられ、掘削時の振動の大きさを計測する振動計測部と、表示部と、を備え、カッタヘッドの回転速度を変化させた場合、および、掘削機本体の推進速度を変化させた場合の少なくとも一方の場合において、カッタヘッドの回転速度の変化および掘削機本体の推進速度の変化の少なくとも一方の変化に応じて生じる掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像として表示部に表示する場合に、掘削機本体の前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさの3方向の各振動の大きさを互いに識別可能な状態で、表示部に表示するように構成されている。
【0008】
この発明のトンネル掘削機では、上記のように、カッタヘッドの回転速度を変化させた場合、および、掘削機本体の推進速度を変化させた場合の少なくとも一方の場合において、掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像を表示部に表示するように構成されている。これによって、表示部を介して、カッタヘッドの回転速度を変化させた場合および推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度を変化させた場合の少なくとも一方の場合の振動への影響を画像として可視化することができる。このため、掘削するために構成される装置であるカッタヘッドおよび推進ジャッキの少なくとも一方の駆動がどの程度、振動の発生に影響し、かつ、駆動を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが容易に把握することができる。
【0009】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、カッタヘッドの回転速度を増減により変化させた場合、および、掘削機本体の推進速度を増減により変化させた場合の少なくとも一方の場合において、カッタヘッドの回転速度の変化および掘削機本体の推進速度の変化の少なくとも一方の変化に応じて生じる掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な画像を表示部に表示するように構成されている。このように構成すれば、カッタヘッドの回転速度の増減および掘削機本体の推進速度の増減の少なくとも一方により、振動を増幅させている共振点を外すことができるので、効果的に振動を軽減することができる。カッタヘッドの回転速度を増加させて振動が軽減できれば、切込み量が小さくなり、駆動力が軽減でき、攪拌性能も向上させることができる。また、掘削機本体の推進速度を増加させて振動が軽減できる場合には、掘削効率を低下させることなく、振動を軽減することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、振動計測部の計測結果に基づいてカッタヘッドの回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御、および、振動計測部の計測結果に基づいて掘削機本体の推進速度を増減させことにより振動を小さくする制御の少なくとも一方を行う制御部を備える。このように構成すれば、制御部により、自動で、カッタヘッドの回転速度の増減または掘削機本体の推進速度の増減を行うことができるので、容易に振動を軽減することができる。すなわち、トンネル掘削機を操作するユーザの負担を軽減することができる。
【0011】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、カッタヘッドの回転速度と振動の大きさとの関係を示す振動情報が予め記憶された記憶部を備え、振動情報であるカッタヘッドの互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を画像として示した振動グラフを少なくとも表示部に表示するように構成されている。このように構成すれば、振動情報であるカッタヘッドの互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を画像として示した振動グラフをユーザが確認することによって、掘削するために構成されるカッタヘッドの回転速度が、振動の発生にどの程度影響し、かつ、回転速度を調整することによって、どの程度振動を軽減できるかをユーザがより容易に把握することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、振動情報は、カッタヘッドの回転速度に対する掘削機本体の前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさの情報を含み、掘削機本体の前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさを互いに識別可能な状態で、振動グラフを表示部に表示するように構成されている。このように構成すれば、トンネル掘削機の3軸方向に振動をわけた状態で振動グラフを表示することができるので、ユーザはより詳細な振動の情報を取得することができる。たとえば、前後方向の振動が突出して大きい場合には、掘削機本体の外周部における地盤との摩擦(外周摩擦)が発生している可能性が高いなど、ユーザはより詳細な振動の状態を把握することができる。
【0013】
上記制御部を備える構成において、好ましくは、振動計測部は、掘削機本体の前後方向の振動、左右方向の振動および上下方向の振動の各々を個別に計測可能に構成され、制御部は、掘削機本体の外周部における地盤との摩擦(外周摩擦)の影響によって、振動計測部により計測された掘削機本体の前後方向の振動が左右方向の振動および上下方向の振動の各振動よりも大きくなっている場合には、掘削機本体の推進速度を変化させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、外周摩擦による振動が共振により悪化している場合は、掘削機本体の推進速度を変化させて、地盤と外周部との間の振動を増幅させている共振点を外し、効果的に振動を軽減することができる。
【0014】
上記トンネル掘削機において、好ましくは、振動計測部の計測結果に基づいて警告を報知する報知部を備える。このように構成すれば、報知部による警告によりユーザに対して振動の発生を容易に知らせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、掘削するために構成される装置の駆動が振動の発生にどの程度影響し、かつ、掘削するために構成される装置の駆動を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1(第2)実施形態によるトンネル掘削機を側方から示した断面図である。
図2】第1実施形態によるトンネル掘削機を後方側から示した断面図である。
図3】第1実施形態によるトンネル掘削機の表示部の振動グラフを含む画像の表示例を示した図である。
図4】第1実施形態によるトンネル掘削機の表示部のリアルタイム振動表示モデルを含む画像の表示例を示した図である。
図5】第2実施形態によるトンネル掘削機の表示部の振動グラフを含む画像の表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
(トンネル掘削機の構成)
図1図4を参照して、トンネル掘削機100について説明する。
【0019】
各図では、掘削機本体100aの前後方向を、X方向により示す。X方向のうち、前方(掘進方向)をX1方向により示し、後方をX2方向により示す。カッタヘッド1の回転中心である中心軸線αは、X方向に延びている。中心軸線αは、胴体3の中心軸線でもある。
【0020】
各図では、掘削機本体100aの上下方向をZ方向により示す。Z方向のうち、上方をZ1方向により示し、下方をZ2方向により示す。
【0021】
各図では、掘削機本体100aの左右方向をY方向により示す。Y方向のうち、前方に対する右方をY1方向により示し、左方をY2方向により示す。なお、掘削機本体100aの上下方向の中心線βはY方向に延びている。掘削機本体100aの左右方向の中心線γはZ方向に延びている。
【0022】
図1に示すように、トンネル掘削機100は、カッタヘッド1と、カッタヘッド1を後方側(X2方向側)から中心軸線αまわりに回転可能に支持する掘削機本体100aとを備えている。トンネル掘削機100は、泥土圧式のトンネル掘削機である。
【0023】
(カッタヘッドの構成)
カッタヘッド1は、前面に複数のカッタビットCBを有しており、回転により地盤を掘削するように構成されている。カッタヘッド1は、後方から複数の支持脚10により支持されている。
【0024】
カッタヘッド1には、カッタヘッド1を回転させる駆動モータ11と、旋回台軸受2とが設けられている。
【0025】
一例ではあるが、駆動モータ11は、4つ設けられている。4つの駆動モータ11は、中心線βおよび中心線γの各線に対して対称に配置されている。駆動モータ11は、後述する操作盤Bに対するユーザによる駆動モータ11の回転速度(回転数)を設定する手動操作によって、駆動モータ11の回転速度を増減により変更することが可能に構成されている。また、駆動モータ11は、振動を軽減するために、自動で駆動モータ11の回転速度を増減により変更することも可能に構成されている。
【0026】
一例ではあるが、トンネル掘削機100は、操作盤Bに対する所定のモード切替操作によって、駆動モータ11の回転速度の変更を手動操作で行うこと(手動変更モード)、および、駆動モータ11の回転速度の変更を自動で行うこと(自動変更モード)を切り替え可能に構成されている。
【0027】
旋回台軸受2は、駆動モータ11の駆動力をカッタヘッド1に伝達するように構成されている。旋回台軸受2は、前胴30に固定された円環状の固定外輪2aと、固定外輪2aの内周側に配置された円環状の可動内輪2bとを含んでいる。
【0028】
(掘削機本体の構成)
掘削機本体100aは、円筒状の胴体3と、複数の推進ジャッキ4と、スクリュコンベア5と、振動計測部6と、記憶部7と、表示部8と、制御部9と、報知部Aとを備えている。一例ではあるが、表示部8および報知部Aは、共通の操作盤Bに設けられている。操作盤Bは、掘削機本体100aに設けられている。
【0029】
(掘削機本体の「胴体」の構成)
胴体3は、カッタヘッド1の後方に配置されている。胴体3は、前胴30と、前胴30の後方に配置された後胴31とを含んでいる。前胴30の内側には、旋回台軸受2および駆動モータ11などが配置されている。また、前胴30の内側には、隔壁3aが設けられている。
【0030】
隔壁3aは、前後方向(X方向)と直交する方向に延びており、カッタヘッド1により掘削された土砂が貯留されるチャンバC1と、チャンバC1よりも後方に位置する後方空間C2とを区画している。
【0031】
(掘削機本体の「推進ジャッキ」の構成)
複数の推進ジャッキ4は、カッタヘッド1の回転方向に所定の角度間隔で並ぶように配置されている。複数の推進ジャッキ4は、胴体3に固定されており、掘削機本体100aを前方(X1方向)に押し進めるように構成されている。すなわち、複数の推進ジャッキ4は、掘削機本体100aを推進させる駆動源である。推進ジャッキ4は、油圧ジャッキにより構成されている。
【0032】
推進ジャッキ4には、推進ジャッキ4の作動油の量を調整する油圧ポンプ(図示せず)が設けられている。推進ジャッキ4は、操作盤Bに対するユーザによる掘削機本体100aの推進速度を設定する手動操作によって、掘削機本体100aの推進速度を増減により変更することが可能に構成されている。
【0033】
(掘削機本体の「スクリュコンベア」の構成)
スクリュコンベア5は、チャンバC1に接続され、チャンバC1内の土砂を隔壁3aの後方空間C2に排出するように構成されている。スクリュコンベア5は、前胴30の内側の下方側に配置されている。
【0034】
スクリュコンベア5には、駆動モータ(図示せず)が設けられている。スクリュコンベア5の駆動モータは、推進ジャッキ4による掘削機本体100aの推進速度の変動に応じて、排土量が変わるように駆動が調整されるように構成されている。その結果、トンネル掘削機100は、チャンバC1内の圧力を一定に保持するよう構成されている。
【0035】
(掘削機本体の「振動計測部」の構成)
図1および図2に示す振動計測部6は、トンネル掘削機100による地盤の掘削時の各種の振動の大きさを計測するように構成されている。振動計測部6は、掘削機本体100aの前後方向(X方向)の振動、左右方向(Y方向)の振動および上下方向(Z方向)の振動を個別に計測可能に構成されている。一例ではあるが、振動計測部6は、3軸の加速度センサにより構成されている。
【0036】
上記の各種の振動とは、たとえば、カッタヘッド1により地盤を掘削する際に発生する掘削振動や、掘削機本体100aの外周部である胴体3の外周面における地盤との摩擦(外周摩擦)により発生する振動、トンネル掘削機100の各摺接部における摩擦により発生する振動、掘削機本体100aを前進させる油圧式の推進ジャッキ4の脈動により発生する振動、カッタヘッド1を回転させる駆動モータ11において発生する振動などである。
【0037】
ここで、掘削機本体の掘削時の振動を軽減するためには、カッタヘッドの回転速度を小さくすること、および、推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度を小さくして推進ジャッキの負荷を軽減すること、などが考えられる。なお、トンネル掘削機の掘削時の振動には、振動を増幅させる共振点がある。
【0038】
第1実施形態のトンネル掘削機100は、上記のように、単に各部の駆動速度を一律に小さくするのではなく、振動が発生した際に、カッタヘッド1の回転速度を増減により変動させて、トンネル掘削機100の振動が軽減するような回転速度に調整するよう構成されている。この時、共振が発生している場合は、共振点を外すことによって、振動を軽減するように構成されている。なお、カッタヘッド1の回転速度を増加させることは、地盤の掘削に対して比較的制約はないが、機械能力としての制約がある。カッタヘッド1の回転速度を小さくする場合には、切り込み量の限界や攪拌性能を考慮する必要がある。また、カッタヘッド1の回転速度を大きくする場合には、各部の摩耗量増加による制約も考慮する必要がある。
【0039】
振動計測部6は、掘削機本体100aに設けられている。振動計測部6の設置箇所は、掘削機本体100aの振動を検知できる位置であれば掘削機本体100aのいかなる位置でもよい。一例ではあるが、振動計測部6は、掘削機本体100aに複数設けられている。
【0040】
具体的には、振動計測部6は、前胴30の右方(Y1方向)の内周面に設けられる振動計測部6aと、前胴30の左方側(Y2方向)の内周面に設けられる振動計測部6bと、後胴31の右方側の内周面に設けられる振動計測部6cと、後胴31の左方側の内周面に設けられる振動計測部6dとの4つを含んでいる。4つの振動計測部6(6a、6b、6c、6d)は、上下方向において、カッタヘッド1の中心軸線αと略同じ高さ位置に配置されている。
【0041】
前胴30の振動計測部6a、6bは、前胴30の前方側に配置されている。前胴30の振動計測部6a、6bは、前後方向において、互いに略同じ位置に配置されている。前胴30の振動計測部6a、6bは、掘削機本体100aの左右方向の中心線γに対して略線対称に配置されている。
【0042】
後胴31の振動計測部6c、6dは、後胴31の前方側に配置されている。後胴31の振動計測部6c、6dは、前後方向において、互いに略同じ位置に配置されている。後胴31の振動計測部6c、6dは、掘削機本体100aの左右方向の中心線γに対して略線対称に配置されている。
【0043】
振動計測部6の検知信号は、制御部9により取得される。また、振動計測部6の検知信号は、記憶部7に記憶される。
【0044】
(掘削機本体の「記憶部」の構成)
記憶部7には、カッタヘッド1の回転速度と振動の大きさとの関係を示す振動情報I1(図1参照)が予め記憶されている。振動情報I1は、表示部8に振動の大きさの変動を視認可能な画像P1(図3参照)を表示するために利用される。
【0045】
振動情報I1は、カッタヘッド1の回転速度に対する掘削機本体100aの前後方向(X方向)の振動の大きさ、左右方向(Y方向)の振動の大きさ、および、上下方向(Z方向)の振動の大きさの情報を含んでいる。
【0046】
また、振動情報I1は、カッタヘッド1の回転速度と、掘削機本体100aの前後方向(X方向)の振動の大きさおよび左右方向(Y方向)の振動の大きさのXY平均値との関係を示す情報を含んでいる。また、振動情報I1は、カッタヘッド1の回転速度と、前後方向(X方向)の振動の大きさ、左右方向(Y方向)の振動の大きさおよび上下方向(Z方向)の振動の大きさのXYZ平均値との関係を示す情報を含んでいる。
【0047】
(掘削機本体の「表示部」の構成)
表示部8は、操作盤Bに設けられている。一例ではあるが、表示部8は、タッチパネル式のディスプレイにより構成されている。
【0048】
トンネル掘削機100は、記憶部7に予め記憶した振動情報I1を利用することにより、カッタヘッド1の回転速度を変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像P1を表示部8に表示するように構成されている。詳細には、トンネル掘削機100は、カッタヘッド1の回転速度を増減により変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な画像P1を表示部8に表示するように構成されている。
【0049】
より詳細には、トンネル掘削機100は、上記の画像P1として振動情報I1であるカッタヘッド1の互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を示した振動グラフG1(図3参照)を表示部8に表示するように構成されている。なお、トンネル掘削機100は、掘削機本体100aの前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさを互いに識別可能な状態で、振動グラフG1を表示部8に表示するように構成されている。
【0050】
具体的には、トンネル掘削機100は、振動グラフG1として、カッタヘッド1の基準回転速度、および、基準回転速度から増減させたカッタヘッド1の複数の回転速度の各回転速度に対する、前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさおよび上下方向の振動の大きさを棒グラフにより示した画像P1を表示部8に表示する。なお、一例ではあるが、基準回転速度は、現在(リアルタイム)のカッタヘッド1の回転速度であってもよい。さらに、基準回転速度は、報知部Aにより警報が報知された時点である現在(リアルタイム)のカッタヘッド1の回転速度であってもよい。また、表示部8に表示される振動グラフG1の画像P1には、XY平均値(前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさの平均値)およびXYZ平均値(前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、上下方向の振動の大きさの平均値)の線グラフも示される。
【0051】
また、トンネル掘削機100は、振動計測部6(6a、6b、6c、6d)ごとに別々の振動グラフG1を表示部8に表示可能に構成されている。図3では、前胴30の振動計測部6(6a、6b)に対応する振動グラフG1を示している。なお、ユーザは、操作盤Bを操作して、振動計測部6a、6b、6c、6dのいずれの振動グラフG1を表示部8に表示(監視)するかを個別に設定することが可能である。
【0052】
また、トンネル掘削機100は、前胴30(後胴31)側の2つの振動計測部6a、6b(6c、6d)の平均を示す振動グラフG1を表示部8に表示可能に構成されている。
【0053】
また、図4に示すように、表示部8には、振動計測部6a、6b、6c、6dにより計測された振動の大きさをリアルタイムで表示する簡易のリアルタイム振動表示モデルMも表示される。リアルタイム振動表示モデルMには、トンネル掘削機100を模したモデルM1と、振動計測部6a、6b、6c、6dの各々の振動の大きさを示す棒状のメーターM2と、振動の大きさ[dB]とが含まれる。棒状のメーターは、振動のしきい値を示す線を有している。振動計測部6a(6b、6c、6d)の振動の大きさが、棒状のメーターのしきい値以上になった場合、棒状のメーターの表示色が所定の警告色に変化する。
【0054】
一例ではあるが、振動計測部6aの振動の大きさが、棒状のメーターのしきい値未満の場合には棒状のメーターの表示色は緑色であり、棒状のメーターのしきい値以上になった場合には表示色が緑色から赤色に変化する。また、一例ではあるが、振動計測部6aの振動の大きさがしきい値以上になる状態が一定時間以上継続した場合に、はじめて棒状のメーターの表示色を変化させてもよい。
【0055】
ここで、図3に示す振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1をユーザが確認して、ユーザが手動操作によりカッタヘッド1(駆動モータ11)の回転速度を増減により変更する場合について説明する。すなわち、上記の手動変更モードである場合について説明する。XYZ平均の線グラフより、カッタヘッド1の回転速度が0.8[rpm]の場合に、振動が最も小さくなることがわかる。そこで、ユーザは、基準回転速度(現在の回転速度)1.0[rpm]から0.2[rpm]だけ、カッタヘッド1の回転速度を小さくする。
【0056】
なお、ユーザは、XYZ平均の線グラフではなく、上下方向の振動を無視して、XY平均の線グラフを考慮して、カッタヘッド1の回転速度を増減により変更してもよい。また、ユーザは、前胴30の振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1を考慮するのではなく、後胴31の振動計測部6c、6dの平均を示す振動グラフG1を考慮して、カッタヘッド1の回転速度を増減により変更してもよい。また、ユーザは、振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1を考慮するのではなく、振動計測部6a(6b、6c、6d)の単独の振動グラフG1を考慮して、カッタヘッド1の回転速度を増減により変更してもよい。
【0057】
次に、図3に示す振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1に基づいて、制御部9が自動でカッタヘッド1(駆動モータ11)の回転速度を増減により変更する場合について説明する。すなわち、上記の自動変更モードである場合について以下説明する。自動変更モードでは、手動変更モードと同様に、画像P1として振動グラフG1が表示部8に表示される。なお、ユーザの操作盤Bに対する所定の設定操作により、自動変更モードにおいて、振動グラフG1が表示部8に表示されないようにすることも可能である。
【0058】
(掘削機本体の「制御部」の構成)
制御部9は、振動計測部6の計測結果に基づいてカッタヘッド1の回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御を行うように構成されている。詳細には、制御部9は、振動計測部6の計測結果に基づいて、振動が大きくなり報知部Aにより警告が報知された場合に、報知の時点の回転速度を基準回転速度として、カッタヘッド1の回転速度を増減により変動させて振動を小さくするように構成されている。
【0059】
詳細には、上記説明した手動変更モードの場合と同様であるが、制御部9は、振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1のXYZ平均の線グラフよりカッタヘッド1の回転速度が0.8[rpm]の場合に振動が最も小さくなるため、基準回転速度(現在の回転速度)1.0[rpm]から0.2[rpm]だけ、カッタヘッド1の回転速度を小さくする制御を行う。
【0060】
例外として、制御部9は、掘削機本体100aの外周部における地盤との摩擦(外周摩擦)の影響によって、振動計測部6により計測された掘削機本体100aの前後方向の振動が左右方向の振動および上下方向の振動の各振動よりも大きくなっている場合には、カッタヘッド1の回転速度を増減させることなく、推進ジャッキ4による掘削機本体100aの推進速度を小さくするだけでなく大きくする制御(推進速度を変化させる制御)も行うように構成されている。このように、外周摩擦による振動が共振によって悪化している場合は、制御部9は、掘削機本体100aの推進速度を小さくするだけではなく、逆に大きくすることによって、外周摩擦の振動を増幅させている共振点を外し、効果的に振動を軽減することができる。
【0061】
上記「外周摩擦の影響によって、振動計測部6により計測された掘削機本体100aの前後方向の振動が左右方向の振動および上下方向の振動の各振動よりも大きくなっている場合」とは、前後方向の振動が、単に左右方向の振動および上下方向の振動の各振動よりも大きいだけでなく、前後方向の振動が突出して大きい場合である。
【0062】
なお、自動変更モードにおいてユーザの操作盤Bに対する所定の設定操作により、制御部9は、XYZ平均ではなく、XY平均を考慮して、自動でカッタヘッド1の回転速度を増減により変更することも可能である。また、ユーザの操作盤Bに対する所定の設定操作により、制御部9は、振動計測部6a、6bの平均を示す振動グラフG1ではなく、振動計測部6a(6b、6c、6d)の単独の振動グラフG1などを考慮して、カッタヘッド1の回転速度を増減により変更することも可能である。また、制御部9は、前後方向の振動、左右方向の振動および上下方向の振動に重みづけをした値の平均を取るなどの情報に基づいて、自動でカッタヘッド1の回転速度を増減により変更することも可能である。
【0063】
(掘削機本体の「報知部」の構成)
報知部Aは、操作盤Bに設けられている。報知部Aは、振動計測部6の計測結果に基づいて警告を報知するように構成されている。報知部Aは、注意ランプA1と、警報ランプA2と、警報ブザーA3とを含んでいる。
【0064】
注意ランプA1は、ユーザに向けて振動に対する注意を喚起するためのランプである。注意ランプA1は、振動計測部6の計測結果に基づいて、振動の大きさがしきい値以上となっている場合に、点滅(継続点灯でもよい)するように構成されている。
【0065】
警報ランプA2は、ユーザに向けて振動を軽減する必要がある状態であることを視覚的に知らせるためのランプである。警報ランプA2は、振動計測部6の計測結果に基づいて、振動の大きさがしきい値以上となっている状態が一定時間以上継続した場合に、継続点灯(点滅でもよい)するように構成されている。すなわち、警報ランプA2は、注意ランプA1の点滅状態が一定時間以上継続した場合に、継続点灯するように構成されている。
【0066】
警報ブザーA3は、ユーザに向けて振動を軽減する必要がある状態であることを音により知らせるためのブザーである。警報ブザーA3は、警報ランプA2が点灯するタイミングと同じタイミングで警報音を発報する。
【0067】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1の回転速度を変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像P1を表示部8に表示するように構成されている。これによって、表示部8を介して、カッタヘッド1の回転速度を変化させた場合の振動への影響を画像P1として可視化することができる。このため、掘削するために構成される装置であるカッタヘッド1の駆動がどの程度、振動の発生に影響し、かつ、駆動を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが容易に把握することができる。
【0069】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1の回転速度を増減により変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な画像P1を表示部8に表示するように構成されている。これによって、カッタヘッド1の回転速度の増減により、振動を増幅させている共振点を外すことができるので、効果的に振動を軽減することができる。カッタヘッド1の回転速度を増加させて振動が軽減できれば、切込み量が小さくなり、駆動力が軽減でき、攪拌性能も向上させることができる。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、振動計測部6の計測結果に基づいてカッタヘッド1の回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御を行う制御部9を備える。これによって、制御部9により、自動で、カッタヘッド1の回転速度の増減を行うことができるので、容易に振動を軽減することができる。すなわち、トンネル掘削機100を操作するユーザの負担を軽減することができる。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、カッタヘッド1の回転速度と振動の大きさとの関係を示す振動情報I1が予め記憶された記憶部7を備え、振動情報I1であるカッタヘッド1の互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を画像P1として示した振動グラフG1を少なくとも表示部8に表示するように構成されている。これによって、振動情報I1であるカッタヘッド1の互いに異なる複数の回転速度と振動の大きさとの関係を画像P1として示した振動グラフG1をユーザが確認することによって、掘削するために構成されるカッタヘッド1の回転速度が、振動の発生にどの程度影響し、かつ、回転速度を調整することによって、どの程度振動を軽減できるかをユーザがより容易に把握することができる。
【0072】
第1実施形態では、上記のように、振動情報I1は、カッタヘッド1の回転速度に対する掘削機本体100aの前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさの情報を含み、掘削機本体100aの前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさを互いに識別可能な状態で、振動グラフG1を表示部8に表示するように構成されている。これによって、トンネル掘削機100の3軸方向に振動をわけた状態で振動グラフG1を表示することができるので、ユーザはより詳細な振動の情報を取得することができる。たとえば、前後方向の振動が突出して大きい場合には、掘削機本体100aの外周部における地盤との摩擦(外周摩擦)が発生している可能性が高いなど、ユーザはより詳細な振動の状態を把握することができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、振動計測部6は、掘削機本体100aの前後方向の振動、左右方向の振動および上下方向の振動の各々を個別に計測可能に構成され、制御部9は、掘削機本体100aの外周部における地盤との摩擦(外周摩擦)の影響によって、振動計測部6により計測された掘削機本体100aの前後方向の振動が左右方向の振動および上下方向の振動の各振動よりも大きくなっている場合には、掘削機本体100aの推進速度を変化させる制御を行うように構成されている。これによって、外周摩擦による振動が共振により悪化している場合は、掘削機本体100aの推進速度を変化させて、地盤と外周部との間の振動を増幅させている共振点を外し、効果的に振動を軽減することができる。
【0074】
第1実施形態では、上記のように、振動計測部6の計測結果に基づいて警告を報知する報知部Aを備える。これによって、報知部Aによる警告によりユーザに対して振動の発生を容易に知らせることができる。
【0075】
[第2実施形態]
次に、図1および図5を参照して、第2実施形態によるトンネル掘削機200の構成について説明する。第2実施形態では、制御部9により振動計測部6の計測結果に基づいてカッタヘッド1の回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御を実行した上記第1実施形態とは異なり、制御部209により振動計測部6の計測結果に基づいて掘削機本体100aの推進速度を増減させことにより振動を小さくする制御を実行する例について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0076】
図1に示すように、第2実施形態のトンネル掘削機200は、制御部209を備えている。
【0077】
制御部209は、振動計測部6の計測結果に基づいて、推進ジャッキ4の駆動を制御することによって、掘削機本体100aの推進速度を増減させことにより振動を小さくする制御を行うように構成されている。制御部209の自動変更モードにおける振動を軽減する制御方法については、第1実施形態の制御部9の制御方法と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
この場合、トンネル掘削機200は、記憶部7に予め記憶した振動情報I2(図5参照)を利用することにより、掘削機本体100aの推進速度を変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像P2(図5参照)を表示部8に表示するように構成されている。詳細には、トンネル掘削機200は、掘削機本体100aの推進速度を増減により変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な画像P2を表示部8に表示するように構成されている。
【0079】
より詳細には、トンネル掘削機200は、上記の画像P2として振動情報I2である掘削機本体100aの互いに異なる複数の推進速度と振動の大きさとの関係を示した振動グラフG2(図5参照)を表示部8に表示するように構成されている。なお、トンネル掘削機200は、掘削機本体100aの前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさ、および、上下方向の振動の大きさを互いに識別可能な状態で、振動グラフG2を表示部8に表示するように構成されている。
【0080】
具体的には、トンネル掘削機200は、振動グラフG2として、掘削機本体100aの基準推進速度、および、基準推進速度から増減させた掘削機本体100aの複数の推進速度の各推進速度に対する、前後方向の振動の大きさ、左右方向の振動の大きさおよび上下方向の振動の大きさを棒グラフにより示した画像P2を表示部8に表示する。
【0081】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0082】
第2実施形態では、上記のように、掘削機本体100aの推進速度を変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの変動を視認可能な画像P2を表示部8に表示するように構成されている。これによって、表示部8を介して、推進ジャッキ4による掘削機本体100aの推進速度を変化させた場合の振動への影響を画像P2として可視化することができる。このため、掘削するために構成される装置である推進ジャッキ4の駆動がどの程度、振動の発生に影響し、かつ、駆動を調整することによってどの程度振動を軽減できるかをユーザが容易に把握することができる。
【0083】
第2実施形態では、上記のように、掘削機本体100aの推進速度を増減により変化させた場合において、掘削時の振動の大きさの増減による変動を視認可能な画像P2を表示部8に表示するように構成されている。これによって、掘削機本体100aの推進速度の増減により、振動を増幅させている共振点を外すことができるので、効果的に振動を軽減することができる。掘削機本体100aの推進速度を増加させて振動が軽減できる場合には、掘削効率を低下させることなく、振動を軽減することができる。
【0084】
第2実施形態では、上記のように、振動計測部6の計測結果に基づいて掘削機本体100aの推進速度を増減させことにより振動を小さくする制御を行う制御部9を備える。これによって、制御部9により、自動で、掘削機本体100aの推進速度の増減を行うことができるので、容易に振動を軽減することができる。すなわち、トンネル掘削機200を操作するユーザの負担を軽減することができる。
【0085】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0086】
たとえば、第1実施形態では、制御部により振動計測部の計測結果に基づいてカッタヘッドの回転速度を増減させることにより振動を小さくする制御を行い、第2実施形態では制御部により振動計測部の計測結果に基づいて推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度を増減させることにより振動を小さくする制御を行った例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部により振動計測部の計測結果に基づいてカッタヘッドの回転速度を増減させるとともに、推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度を増減させることにより振動を小さくする制御を行ってもよい。すなわち、カッタヘッドの駆動と推進ジャッキの駆動とを連動させる制御を行ってもよい。
【0087】
また、上記第1(第2)実施形態では、手動および自動の両方で、カッタヘッドの回転速度(推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度)を増減により変動させることが可能なようにトンネル掘削機を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、手動のみ、または、自動のみで、カッタヘッドの回転速度(推進ジャッキによる掘削機本体の推進速度)を増減により変動させることが可能なようにトンネル掘削機を構成してもよい。
【0088】
また、上記第1および第2実施形態では、泥土圧式のトンネル掘削機に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、泥水式のトンネル掘削機に本発明を適用してもよい。
【0089】
また、上記第1および第2実施形態では、振動計測部を前胴および後胴の両方に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、振動計測部を前胴のみ、または、後胴のみに設けてもよい。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、振動計測部を4つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、振動計測部を1つ、2つ、3つ、または、5つ以上設けてもよい。
【0091】
また、上記第1および第2実施形態では、表示部を操作盤に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、表示部を操作盤と別体で構成してもよい。
【0092】
また、上記第1および第2実施形態では、報知部を操作盤に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、報知部を操作盤と別体で構成してもよい。
【0093】
また、上記第1および第2実施形態では、報知部を、ランプおよびブザーにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、報知部を、ランプのみ、または、ブザーのみにより構成してもよい。
【0094】
また、本発明の画像の表示態様は、上記第1および第2実施形態により説明したものに限られない。掘削時の振動の大きさの変動を視認可能であればいかなる態様の画像でもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 カッタヘッド
4 推進ジャッキ
6 振動計測部
7 記憶部
8 表示部
9、209 制御部
100、200 トンネル掘削機
100a 掘削機本体
A 報知部
G1、G2 振動グラフ
I1、I2 振動情報
P1、P2 画像
図1
図2
図3
図4
図5