(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】スクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションのためのシミュレーションデバイス
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20241223BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20241223BHJP
G01L 5/24 20060101ALI20241223BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20241223BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20241223BHJP
F16D 129/04 20120101ALN20241223BHJP
【FI】
B25B23/14 640W
F16D65/18
G01L5/24
F16D121:24
F16D125:40
F16D129:04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022108765
(22)【出願日】2022-07-06
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502281471
【氏名又は名称】キストラー ホールディング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン メンツ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ノイマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヒェン シュナイダー
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112556922(CN,A)
【文献】米国特許第05886246(US,A)
【文献】国際公開第2016/103147(WO,A1)
【文献】特開2005-351683(JP,A)
【文献】特表2007-514559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
F16D 65/18
G01L 5/24
F16D 121/24
F16D 125/40
F16D 129/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー駆動工具(2)のねじ継手シミュレーションのためのシミュレーションデバイス(1)であって、
前記スクリュー駆動工具(2)を前記シミュレーションデバイス(1)に結合することができるテスト接続ユニット(11)であって、前記スクリュー駆動工具(2)は始動させることができ、前記始動された状態で前記テスト接続ユニット(11)に結合され、前記テスト接続ユニット(11)を回転軸(Z)の周りで回転させ、前記テスト接続ユニット(11)にトルク(M)を及ぼす、テスト接続ユニット(11)を備え、
前記始動された状態にあり、前記テスト接続ユニット(11)に結合された前記スクリュー駆動工具(2)が前記テスト接続ユニット(11)に及ぼす前記トルク(M)を測定するため、及び前記テスト接続ユニット(11)が前記結合された状態で、前記始動されたスクリュー駆動工具(2)によって前記回転軸(Z)の周りで回転される回転の角度を測定するための測定ユニット(13)を備え、
前記始動された状態にあり、前記テスト接続ユニット(11)に結合された前記スクリュー駆動工具(2)が前記テスト接続ユニット(11)に及ぼす前記トルク(M)を減速するためのブレーキユニット(12)を備える、シミュレーションデバイス(1)において、
前記シミュレーションデバイス(1)は、コンバータユニット(14)を備え、前記コンバータユニット(14)は前記テスト接続ユニット(11)に機械的に接続され、前記コンバータユニット(14)は、前記始動された状態にあり、前記テスト接続ユニット(11)に結合された前記スクリュー駆動工具(2)が前記テスト接続ユニット(11)に及ぼす前記トルク(M)を捕らえ、前記トルクをブレーキ力(F)に変換し、前記ブレーキ力(F)を前記ブレーキユニット(12)に加え、前記コンバータユニット(14)は、スピンドル(14.1)と、ナット(14.2)とを備え、前記スピンドル(14.1)及び前記ナット(14.2)は、形状フィットを介して互いに接続され、前記形状フィットによって、前記回転軸(Z)の周りの前記スピンドル(14.1)の回転運動が、前記回転軸(Z)に沿った前記ナット(14.2)の長手方向の移動に変換されること、及び、前記回転軸(Z)に沿って移動される前記ナット(14.2)が、前記始動された状態にあり、前記テスト接続ユニット(11)に結合された前記スクリュー駆動工具(2)が前記テスト接続ユニット(11)に及ぼすトルク(M)をブレーキ力(F)に変換し、前記ブレーキ力(F)を前記ブレーキユニット(12)に加え、前記コンバータユニット(14)は、回転要素(14.5)を備えること、前記スピンドル(14.1)は、ねじ込みスピンドルであること、前記ナット(14.2)は、ねじ込みナットであること、前記回転要素(14.5)は、前記ねじ込みスピンドル(14.1)と前記ねじ込みナット(14.2)との間に前記形状フィットを生成すること、及び前記回転要素(14.5)は、前記回転軸(Z)の周りの前記ねじ込みスピンドル(14.1)の前記回転運動を前記回転軸(Z)に沿った前記ねじ込みナット(14.2)の前記長手方向の移動に変換し、前記回転要素(14,5)は、前記ねじ込みスピンドル(14,1)と前記ねじ込みナット(14、2)との間に前記形状フィットを生成するようにボール又はローラであり、前記ねじ込みスピンドル(14,1)と、前記ねじ込みナット(14、2)と、中間の前記回転要素(14,5)とは、自動ロック式ではない、ボールねじ駆動装置又はローラギア駆動装置を形成し、前記ボール又はロー
ラは、前記ボール又はローラの極めて低い回転摩擦により、前記回転軸(Z)の周りの前記ねじ込みスピンドル(14,1)の回転運動を前記回転軸(Z)に沿ったねじ込みナット(14,2)の移動に変換することを特徴とする、シミュレーションデバイス(1)。
【請求項2】
前記シミュレーションデバイス(1)は、保持ユニット(15)を備え、前記保持ユニット(15)は、始動させることができること、前記始動された保持ユニット(15)は、形状フィットを利用して前記ナット(14.2)を保持(H)し、形状フィットによる前記保持(H)は、前記スクリュー駆動工具(2)に向かう方向の前記回転軸(Z)に沿ったナット開始位置(14.2*)からナット終了位置(14.2+)への前記ナット(14.2)の長手方向の移動のみを許可することを特徴とする、請求項1に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項3】
前記ブレーキユニット(12)は、複数のブレーキ板要素(12.1)と、ブレーキピストン(12.2)とを備えること、長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)は、前記ブレーキ力(F)を前記ブレーキピストン(12.2)に加えること、及び前記ブレーキ力(F)が加えられる前記ブレーキピストン(12.2)は、前記ブレーキ板要素(12.1)同士の摩擦係合をもたらすことを特徴とする、請求項2に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項4】
前記コンバータユニット(14)は、戻りばね要素(14.4)を備えること、及び長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動された前記ナット(14.2)は、前記戻りばね要素(14.4)を圧縮することを特徴とする、請求項
2に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項5】
長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)及び前記スピンドル(14.1)は、前記回転軸(Z)の周りの前記スピンドル(14.1)の回転運動中、互いに対して荷重され、前記スピンドル(14.1)は、スピンドル開始位置(14.1*)からスピンドル終了位置(14.1+)に前記回転軸(Z)に沿って長手方向に移動すること、前記ブレーキユニット(12)は、複数のブレーキばね要素12.3を備えること、及び前記回転軸(Z)に沿って長手方向に前記スピンドル終了位置(14.1+)に移動される前記スピンドル(14.1)は、前記ブレーキばね要素(12.3)を圧縮することを特徴とする、請求項
2に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項6】
前記ブレーキばね要素(12.3)は、ハウジングポット(10.2)内に配置されることと、前記ハウジングポット(10.2)内に配置されたブレーキばね要素(12.3)の数は、事前定義された公称トルク及び/又は回転の公称角度まで、前記始動されたスクリュー駆動工具(2)によって及ぼされる前記トルク(M)に応じて変動する、及び/又は前記ハウジングポット(10.2)内に配置された前記ブレーキばね要素(12.3)の硬さは、事前定義された公称トルク及び/又は回転の公称角度まで、前記始動されたスクリュー駆動工具(2)によって及ぼされる前記トルク(M)に応じて変動することを特徴とする、請求項5に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項7】
前記ブレーキばね要素12.3は、ハウジングポット(10.2)内に配置されること、及び前記ハウジングポット(10.2)は急速解放機構を利用して開放することができること、及び前記開放したハウジングポット(10.2)内で前記ブレーキばね要素(12.3)を交換することができることを特徴とする、請求項
5に記載のシミュレーションデバイス(1)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載のシミュレーションデバイス(1)を使用してスクリュー駆動工具(2)のねじ継手シミュレーションを実施するための方法であって、
第1のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具(2)が前記テスト接続ユニット(11)を介して前記シミュレーションデバイス(1)に結合されること、
第2のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具(2)が始動され、前記始動されたスクリュー駆動工具(2)が、前記テスト接続ユニット(11)を前記回転軸(Z)の周りで回転させ、前記テスト接続ユニット(11)にトルク(M)を及ぼすこと、
第3のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具(2)によって及ぼされる前記トルク(M)が、コンバータユニット(14)によって捕らえられ、ブレーキ力(F)に変換されること、及び
前記第3のステップにおいて、前記ブレーキ力(F)が、前記コンバータユニット(14)によって前記ブレーキユニット(12)に加えられることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記コンバータユニット(14)は、スピンドル(14.1)と、ナット(14.2)とを備え、前記スピンドル(14.1)及び前記ナット(14.2)は、形状フィットを介して互いに接続されること、及び前記第3のステップにおいて、前記形状フィットにより、前記回転軸(Z)の周りの前記スピンドル(14.1)の回転運動が、前記回転軸(Z)に沿ったナット開始位置(14.2*)からナット終了位置(14.2+)への前記ナット(14.2)の長手方向の移動に変換されること、及び前記第3のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具(2)によって及ぼされる前記トルク(M)は、長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)によって前記ブレーキ力(F)に変換されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シミュレーションデバイス(1)は、保持ユニット(15)を備え、前記保持ユニット(15)は、前記第2のステップにおいて始動されること、前記ナット(14.2)は、前記始動された保持ユニット(15)によって形状フィットによって保持(H)され、形状フィットによる前記保持(H)は、前記スクリュー駆動工具(2)に向かう方向の前記回転軸(Z)に沿った前記ナット開始位置(14.2*)から前記ナット終了位置(14.2+)への前記ナット(14.2)の長手方向の移動のみを許可することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ブレーキユニット(12)は、複数のブレーキ板要素(12.1)と、ブレーキピストン(12.2)とを備えること、及び前記第3のステップにおいて、長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)は、前記ブレーキピストン(12.2)に前記ブレーキ力(F)を加え、前記第3のステップにおいて、前記ブレーキ力(F)が加えられる前記ブレーキピストン(12.2)は、前記ブレーキ板要素(12.1)同士の摩擦係合をもたらすことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コンバータユニット(14)は、戻りばね要素(14.4)を備え、前記戻りばね要素(14.4)は、前記第3のステップにおいて、長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)によって圧縮されること、第6のステップにおいて、前記保持ユニット(15)は、停止され、前記停止された保持ユニット(15)は、形状フィットによって前記ナット(14.2)をもはや保持(H)しないこと、形状フィットによる前記ナット(14.2)の前記保持(H)のない状態で、前記圧縮された戻りばね要素(14.4)は減圧され、前記減圧された戻りばね要素(14.4)によって生成された戻りばね力(RR)は、前記ナット(14.2)に及ぼされること、及び前記第6のステップにおいて、前記ナット(14.2)は、前記戻りばね力(RR)によって前記回転軸(Z)に沿って前記ナット終了位置(14.2+)から前記ナット開始位置(14.2*)へと移動されることを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
長手方向に前記ナット終了位置(14.2+)に移動される前記ナット(14.2)及び前記スピンドル(14.1)は、前記回転軸(Z)の周りの前記スピンドル(14.1)の回転運動中互いに対して荷重されること、及び前記スピンドル(14.1)は、前記回転軸(Z)に沿ってスピンドル開始位置(14.1*)からスピンドル終了位置(14.1+)に長手方向に移動されること、前記ブレーキユニット(12)は、複数のブレーキばね要素(12.3)を備えること、及び前記スピンドル(14.1)は、前記ブレーキばね要素(12.3)を圧縮すること、第6のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具(2)は、停止され、前記停止したスクリュー駆動工具(2)によってトルク(M)がもはや及ぼされないこと、形状フィットによる前記ナット(14.2)の前記保持(H)のない状態で、前記ブレーキばね要素(12.3)は減圧し、前記減圧したばね要素(12.3)は、ばね力(R)を及ぼすこと、及び前記第6のステップにおいて、前記スピンドル(14.1)は、戻りばね力(R)によって前記回転軸(Z)に沿って前記スピンドル終了位置(14.1+)から前記スピンドル開始位置(14.1*)へと移動されることを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項のプリアンブルによるスクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションのためのシミュレーションデバイスに関する。本発明はまた、独立請求項のプリアンブルによるシミュレーションデバイスを使用するスクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションを実施するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
2013年2月のガイドラインVDI/VDE2647によれば、スクリュー駆動工具は、モータ駆動式スクリュー駆動工具と、手動操作式トルクレンチの両方である。スクリュー駆動工具は始動させることができ、始動されたスクリュー駆動工具は、回転軸の周りで回転し、これにより接続要素にトルクを及ぼす。
【0003】
接続要素は、ねじ山を備え、ボルト、ナットなどである。接続要素は、構成要素を接続するのに使用される。接続は、構成要素間の圧締め力によって行われる。圧締め力は、構成要素を最大の作動力の下で使用することができることを保証する。
【0004】
よって、始動されたスクリュー駆動工具によって及ぼされるトルクは、圧締め力を生成するように機能する。この目的のために、スクリュー駆動工具は、及ぼされるトルクを経時的に増加する、及び/又は回転の角度を介して、及ぼされるトルクを増加する。及ぼされるトルクの増加は、圧締め力に特有の公称トルクまで、及び/又は圧締め力に特有の回転の公称角度まで行われる。公称トルク及び/又は回転の公称角度は事前定義され、スクリュー駆動工具に対して設定することができる。以下では、公称トルク及び/又は回転の公称角度は、公称値と称される。
【0005】
スクリュー駆動工具には、インジケータシステムが備わっている。公称値に達するとすぐに、スクリュー駆動工具によるトルクの印加は停止される。インジケータシステムは、種々の機能原理に従って作動してよい。例えば、クリックタイプのトルクレンチは、公称値にひとたび到達すると、自動的にトルクの印加を中断する。音響トルクレンチは、公称値に達すると、音響信号又は光信号を自動的にトリガする。スクリュー駆動工具の指示は、現在及ぼされているトルク及び/又は現在の回転の公称角度を、目盛り又は電子スクリーン上に表示する。
【0006】
上記で言及したタイプのスクリュー駆動工具は、多くの工業製造プロセスで使用される。スクリュー駆動工具が設定された公称値に実際に達することを確実にするために、スクリュー駆動工具の性能は間隔をおいてテストされる。
【0007】
この目的のために、2013年2月のガイドラインVDI/VDE2647は、何をどのようにテストすべきかを指定している。スクリュー駆動工具の性能テストは、ねじ継手シミュレーションと呼ばれる。ねじ継手シミュレーションは、テスト接続要素と、ブレーキユニットと、測定ユニットとを備えるシミュレーションデバイスを使用して実施される。スクリュー駆動工具は、テスト接続要素を介してシミュレーションデバイスに結合される。テスト接続要素は、回転軸の周りで回転することが可能である。ブレーキユニット及びテスト接続要素は、互いに機械的に接続される。測定ユニットは、テスト接続要素とブレーキユニットとの間に配置される。測定ユニットは、トルクトランスデューサ及び回転角度トランスデューサを備える。
【0008】
シミュレーションデバイスに結合されたスクリュー駆動工具が始動され、テスト接続要素にトルクを及ぼす。加えられたトルクにより、テスト接続要素が回転軸の周りで回転を始める。ブレーキユニットが始動され、テスト接続要素にブレーキをかける。トルクトランスデューサは、トルクを測定し、回転角度トランスデューサは、テスト接続要素が回転軸の周りを回転する回転角度を測定する。
【0009】
そのようなシミュレーションデバイスは、国際公開第2016/103150A1号より知られている。ブレーキユニットは、ブレーキディスクと、ブレーキパッドとを備える。ブレーキディスクは、テスト接続要素に機械的に接続されるのに対して、ブレーキパッドは、静止するように配置される。ブレーキユニットは、油圧式に作動し、油圧ポンプと、ブレーキピストンとを備える。油圧ポンプは、ブレーキ液を汲み上げて、ブレーキピストンに対して作用し、ブレーキピストンは、ブレーキディスクに対して摩擦係合で作用し、テスト接続要素にブレーキをかける。
【0010】
上記で言及したタイプの油圧式ブレーキユニットの調達及びメンテナンスは、費用がかかるため、シミュレーションデバイスもまた費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、スクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションに関して費用効果の高いシミュレーションデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は独立請求項の特徴を成す機構によって達成されている。
【0014】
本発明は、スクリュー駆動工具をシミュレーションデバイスに結合することができるテスト接続ユニットを備えるスクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションのためのシミュレーションデバイスに関し、スクリュー駆動工具は始動させることができ、始動された状態でテスト接続ユニットに結合され、テスト接続ユニットを回転軸の周りで回転させ、テスト接続要素にトルクを及ぼし、始動された状態にあり、テスト接続ユニットに結合されたスクリュー駆動工具が、テスト接続ユニットに及ぼすトルクを測定するため、及び始動されたスクリュー駆動工具に結合されたとき、テスト接続ユニットが回転軸の周りを回転する回転の角度を測定するための測定ユニットを備え、始動された状態にあり、テスト接続ユニットに結合されたスクリュー駆動工具がテスト接続ユニットに及ぼすトルクを減速するためのブレーキユニットを備え、シミュレーションデバイスは、コンバータユニットを備え、コンバータユニットは、テスト接続ユニットに機械的に接続され、コンバータユニットは、始動された状態にあり、テスト接続ユニットに結合されたスクリュー駆動工具がテスト接続ユニットに及ぼすトルクを捕らえ、前記トルクをブレーキ力に変換し、ブレーキ力をブレーキユニットに加える。
【0015】
本発明はまた、独立請求項によるシミュレーションデバイスを使用するスクリュー駆動工具のねじ継手シミュレーションを実施するための方法にも関し、方法は、以下のステップを含み、第1のステップにおいて、公称値がスクリュー駆動工具で設定され、スクリュー駆動工具は、テスト接続ユニットを介してシミュレーションデバイスに結合され、第3のステップにおいて、スクリュー駆動工具が始動され、始動されたスクリュー駆動工具は、テスト接続ユニットを回転軸の周りで回転させ、テスト接続ユニットにトルクを及ぼし、第3のステップにおいて、スクリュー駆動工具によって及ぼされるトルクは、コンバータユニットによって捕らえられ、ブレーキ力に変換され、第3のステップにおいて、ブレーキ力は、コンバータユニットによって前記ブレーキユニットに加えられる。
【0016】
こうして、国際公開第2016/103150A1号に記載されるような従来技術とは対照的に、本発明によるシミュレーションデバイスはもはや油圧式ブレーキユニットを必要とせず、デバイスを費用効果の高いものにする。代わりに、スクリュー駆動工具によって及ぼされるトルクは、コンバータユニットによって受け取られ、ブレーキ力に変換される。このブレーキ力はブレーキユニットに加えられる。
【0017】
本発明の主題のさらなる実施例は、従属請求項において請求される。
【0018】
以下では、本発明が、図面を参照して一例としてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】スクリュー駆動工具2が結合されているシミュレーションデバイス1の長手方向断面図である。
【
図2】スクリュー駆動工具2及び保持ユニット15が始動されている、
図1による長手方向断面図である。
【
図2b】
図2~
図4による始動された保持ユニット15の拡大断面図である。
【
図3】コンバータユニット14がブレーキユニット12に機械的に接触している、
図2による長手方向断面図である。
【
図3a】ブレーキユニット12に機械的に接触していない、
図1、
図2及び
図6によるコンバータユニット14の長手方向断面図である。
【
図3b】ブレーキユニット12に機械的に接触している、
図3から
図5によるコンバータユニット14の拡大断面図である
【
図4】ブレーキユニット12のブレーキばね要素12.3がコンバータユニット14によって圧縮されている、
図3による長手方向断面図である。
【
図4a】
図1から
図3及び
図6による、ブレーキユニット12の非圧縮状態のブレーキばね要素12.3の拡大断面図である。
【
図4b】
図4及び
図5による、ブレーキユニット12の圧縮状態のブレーキばね要素12.3の拡大断面図である。
【
図5】スクリュー駆動工具2が結合されていない、
図4による長手方向断面図である。
【
図6】停止された保持ユニット15を備える、
図5による長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を通して、同一の参照番号は、同一の対象物を指す。
【0021】
図1~
図6は、スクリュー駆動工具2のねじ継手シミュレーションのためのシミュレーションデバイス1の好ましい一実施例を介した長手方向断面図を示す。長手方向断面図は、回転軸Zに沿って作成されている。
図2a、
図2b、
図3a、
図3b、
図4a及び
図4dは、
図1~
図6の拡大断面図を示す。
【0022】
2013年2月のガイドラインVDI/VDE2647によれば、スクリュー駆動工具2は、モータ駆動式スクリュー駆動工具又は手動操作式トルクレンチである。スクリュー駆動工具2は始動させることができ、ねじ継手に応じて、始動されたスクリュー駆動工具2は、回転軸Zの周りを連続して、及び/又は非連続で回転し、トルクMを及ぼす。
【0023】
ねじ継手シミュレーションの過程で、スクリュー駆動工具2は、及ぼされるトルクMを経時的に増加する、及び/又は及ぼされるトルクMを回転の角度を介して増加する。及ぼされるトルクMの増加は、公称トルクまで、及び/又は回転の公称角度まで行われる。公称トルク及び/又は回転の公称角度は事前定義され、スクリュー駆動工具2に対して設定することができる。以下では、公称トルク及び/又は回転の公称角度は、公称値Sとも称される。
【0024】
スクリュー駆動工具2にはインジケータシステムが備わっている。ねじ継手シミュレーション中、公称値Sに達するとすぐに、スクリュー駆動工具2はトルクの印加を停止する。インジケータシステムは、異なる機能原理に従って作動してよい。スクリュー駆動工具2は、公称値に達したとき、それ自体で自動的に解放するクリックタイプのトルクレンチであってよい。スクリュー駆動工具2は、公称値に達したとき、音響信号又は光信号を自動的にトリガする音響トルクレンチであってもよい。スクリュー駆動工具2は、指示スクリュー駆動工具であってもよく、前記指示スクリュー駆動工具は、加えられたトルクMを目盛り又は電子スクリーン上に表示する。
【0025】
シミュレーションデバイス1の基本的な構成要素は、テスト接続ユニット11、ブレーキユニット12、測定ユニット13、コンバータユニット14及び保持ユニット15である。
【0026】
シミュレーションデバイス1は、ハウジング10を備える。前記ハウジング10は、複数の部品から成り、上部ハウジング部分10.1と、ハウジング底部10.2とを備える。スクリュー駆動工具に近いハウジング端部は、上部ハウジング部分10.1に配置され、スクリュー駆動工具から離れたハウジング端部は、ハウジング底部10.2に配置される。ハウジング10は、中空の円筒形形状であり、回転軸Zに沿って延在する。ハウジング10は、空洞を有する。前記空洞は、上部ハウジング部分10.1からハウジング底部10.2まで延在する。ハウジング10は、複数の機能を果たし、例えば、それはシミュレーションデバイス1の基本的構成要素を機械的破損から保護する、さらに、ねじ継手シミュレーション中の回転軸Zに沿った偏向及び回転軸Zの周りでのねじれに対してシミュレーションデバイス1に機械的安定性を与える。
【0027】
テスト接続ユニット11は、ねじ継手シミュレーションを実行するためのスクリュー駆動工具2のシミュレーションデバイス1への結合を可能にするように設計されている。テスト接続ユニット11は、円筒形形状であり、回転軸Zに沿って延在する。テスト接続ユニット11は、テスト接続要素11.1と、回転体11.2とを備える。好ましくはテスト接続要素11.1及び回転体11.2は、一体式に製造される。テスト接続要素11.1は、スクリュー駆動工具に近い上部ハウジング部分10.1のハウジング端部に配置される。テスト接続要素11.1は、上部ハウジング部分10.1にある開口を通して外側からアクセス可能である。テスト接続要素11.1は、標準的な仕様に従って形成され、例えば正方形形状である。スクリュー駆動工具2は、テスト接続要素11.1を介してシミュレーションデバイス1に結合される。結合は解放可能である。回転体11.2は、上部ハウジング部分10.1の空洞内に回転可能に設置される。
【0028】
ブレーキユニット12が、上部ハウジング部分10.1の空洞内に配置される。ブレーキユニット12は、複数のブレーキ板要素12.1と、ブレーキピストン12.2と、複数のブレーキばね要素12.3とを備える。前記ブレーキユニット12は、ねじ継手シミュレーション中にスクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMを減速する機能を有する。
【0029】
ブレーキ板要素12.1は、スクリュー駆動工具2に近づけて配置され、ブレーキピストン12.2は、回転軸Zに沿って見られるように、スクリュー駆動工具2からさらに離れて配置される。好ましくは、前記ブレーキ板要素12.1は、上部ハウジング部分10.1に装着された複数の第1のブレーキ板要素と、回転体11.2に装着された複数の第2のブレーキ板要素とを備える。ブレーキ板要素12.1は、環状形状である。それらは、回転軸Zに沿って互いに交互に配置される。ブレーキピストン12.2は、上部ハウジング部分10.1に配置される。ブレーキピストン12.2は、スクリュー駆動工具から離れた端部と、スクリュー駆動工具に近い端部とを備える。スクリュー駆動工具に近い端部で、ブレーキピストン12.2は、ブレーキ板要素12.1と直接機械的に接触する。スクリュー駆動工具から離れた端部を介してブレーキピストン12.2にブレーキ力Fを加えることができる(
図3及び
図4を参照)。ブレーキ力Fが加えられるブレーキピストン12.2は、スクリュー駆動工具2に向かう方向に回転軸Zに沿って可動である。ブレーキ力Fが加えられる前記ブレーキピストン12.2は、ブレーキ板要素12.1同士の摩擦係合をもたらす。摩擦式に係合したブレーキ板要素12.1は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMを低下させる。
【0030】
ブレーキばね要素12.3は、ハウジングポット10.2の空洞内でスクリュー駆動工具から離れたハウジング端部に配置される。ブレーキばね要素12.3は、ハウジングポット12.2内に固定される。好ましくは、ブレーキばね要素12.3は、ディスクばねである。ブレーキばね要素12.3は、回転軸Zに沿って圧縮可能である。ハウジングポット10.2内のブレーキばね要素12.3の数及び/又はブレーキばね要素12.3の硬さは、公称値S(公称トルク及び/又は回転の公称角度)に応じて変動する。ハウジングポット10.2は、ブレーキばね要素12.3の迅速で容易な交換を可能にするために、差し込みロックなどの急速解放締め具を備える。
【0031】
測定ユニット13が上部ハウジング部分10.1の空洞内に配置される。前記測定ユニット13は、トルクトランスデューサと、回転角度トランスデューサとを備える。トルクトランスデューサは、ねじ継手シミュレーション中にスクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMを測定するように設計される。トルクトランスデューサは、は、回転体11.2に装着される。好ましくはトルクトランスデューサは、ひずみ計である。ひずみ計は、トルクMによって生じた回転体11.2の伸張又は圧縮を検知する。回転角度トランスデューサは、テスト接続ユニット11が、ねじ継手シミュレーション中に回転軸Zの周りで回転する回転の角度を測定するように設計される。回転角度トランスデューサは、センサ要素と、測定ディスクとを備える。センサ要素は、上部ハウジング部分10.1に装着され、測定ディスクは、回転体11.2に装着される。好ましくは測定ディスクは、角度マークを備え、センサ要素は、ねじ継手シミュレーション中に回転軸Zの周りで回転する角度マークを検知する。
【0032】
コンバータユニット14の主要な部分は、上部ハウジング部分10.1の空洞内に配置され、より小さい部分は、ハウジングポット10.2の空洞内に配置される。コンバータユニット14は、スピンドル14.1と、ナット14.2と、ブッシュ14.3と、戻りばね要素14.4とを備える。コンバータユニット14は、テスト接続ユニット11に装着される。コンバータユニット14の機能は、ねじ継手シミュレーション中にスクリュー駆動工具2によって及ぼすトルクMを捕らえ、それをブレーキ力Fに変換し、ブレーキ力Fをブレーキユニット12に加えることである。
【0033】
スピンドル14.1は円筒形形状であり、回転軸Zに沿って延在する。ナット14.2は、中空の円筒形形状であり、スピンドル14.1の円周上に配置される。回転軸Zに垂直な面内で、ナット14.1は、スピンドル14.1の円周を完全に取り囲む。スピンドル14.1及びナット14.2は、形状フィットによって互いに接続される。形状フィットは、回転軸Zの周りのスピンドル14.1の回転運動を回転軸Zに沿ったナット14.2の長手方向の移動に変換する。好ましくは、スピンドル14.1及びナット14.2は、ボールねじ駆動装置、ローラギアなどを形成する。このような場合、スピンドル14.1は、ねじ込みスピンドルであり、ナット14.2は、ねじ込みナットである。ボール又はローラなどの回転要素14.5が、ねじ込みスピンドルとねじ込みナットとの間に形状フィットを生成する。
図1から
図6では、回転要素14.5は、破線の円として概略的に示される。ねじ込みスピンドルは、その円周上に軌道を備える。ねじ込みナットは、戻り道を備える。回転要素14.5は、ねじ込みスピンドルの軌道内及びねじ込みナットの戻り道の中を移動する。回転要素14.5は、回転軸Zの周りのねじ込みスピンドルの回転運動を回転軸Zに沿ったねじ込みナットの移動に変換する。回転要素14.5の回転摩擦は極めて低いため、ボールねじ駆動装置又はローラギア駆動装置は、自動ロック式ではない。
【0034】
ブッシュ14.3が、機械的接続部14.31によって回転体11.2に接続される。機械的接続部14.31は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMを回転体11.2からブッシュ14.3に伝達する。好ましくは、機械的接続部14.31は、ブッシュ14.3及び回転体11.2が、互いに係合して歯付きシステムを形成する歯を備える歯付きシステムである。
【0035】
スピンドル14.1は、回転軸Zに沿ってスクリュー駆動工具の近くに位置決めされる端部を有する。スクリュー駆動工具に近い端部では、スピンドル14.1は、別の機械的接続部14.11を介してブッシュ14.3に装着される。別の機械的接続部14.11は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMをブッシュ14.3からスピンドル14.1に伝達する。好ましくは、別の機械的接続部14.11は、フェザーキーねじ接続によって達成される。このような場合、ねじがスピンドル14.1とブッシュ14.3を互いに接続し、フェザーキーがこの接続を固定する。ねじは、ねじ山ピッチを有するねじ山を備える。スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMの作用の下、及びねじ山ピッチに応じて、ねじは、回転軸Zに沿って可動であり、10mm未満/10mmに等しい、スクリュー駆動工具2から離れる方向のブッシュ14.3の長手方向の移動につながる。
【0036】
戻りばね要素14.4は上部ハウジング部分10.1に配置される。好ましくは、スクリュー駆動工具に近い前記戻りばね要素14.4の端部は、上部ハウジング部分10.1に機械的に接触しているのに対して、スクリュー駆動工具から離れた戻りばね要素14.4の端部は、ナット14.2に機械的に接触している。
【0037】
回転軸Zに沿って見ると、ナット14.2は、戻りばね要素14.4及びブレーキピストン12.2よりもスクリュー駆動工具2からさらに離れて配置される。ナット14.2は、スクリュー駆動工具に近いその端部にベアリング及び圧力スリーブ14.21を備える。ベアリングは、ナット14.1が、回転要素14.5が介在する回転軸Zに沿った移動中にジャミングするのを阻止するように機能する。ナット14.2は、圧力スリーブ14.21によって戻りばね要素14.4及びブレーキピストン12.2に機械的に接触している。この目的のために、圧力スリーブ14.21は、回転軸Zに垂直な面内に延在する接触面を備える。機械的接触は、戻りばね要素14.4及びブレーキピストン12.2の両方に対して行われる。
【0038】
保持ユニット15がハウジング10に配置される。保持ユニット15は、駆動装置15.1と、保持要素15.2とを備える。保持ユニット15は、回転軸Zに沿った、スクリュー駆動工具2に向かう方向の回転軸Zに沿った方向性の移動のために、ナット14.2を保持するように設計される。
【0039】
駆動装置15.1は、上部ハウジング部分10.1の外側に装着される。好ましくは、駆動装置15.1は、ソレノイドである。駆動装置15.1及び保持要素15.2は、互いに機械的に接続される。駆動装置15.1及び保持要素15.2は、半径方向軸Xに沿って延在する。半径方向軸Xは、回転軸Zに垂直である。保持要素15.2は、ハウジング10の外側開口を通ってハウジング10の空洞へと突出する。保持要素15.2は好ましくは、フェザーキーを備える。
【0040】
保持ユニット15は始動及び停止させることができる。保持ユニット15が始動されるとき、駆動装置15.1は、静止位置15.2*と保持位置15.2+との間で保持要素15.2を移動させる。
図2aは、静止位置15.2*にある保持要素15.2を示す。
図2bは、駆動装置15.1が、進行距離Δxだけ半径方向軸Xに沿ってナット14.2に向かって移動されている保持要素15.2を示す。このとき、保持要素15.2は、保持位置15.2+にある。保持位置15.2+では、保持要素15.2は、前記ナット14.2と直接機械的に接触している。好ましくは、半径方向軸Xに沿った進行距離Δxは、10mm未満/10mmと等しい。保持位置15.2+においてナット14.2と機械的に接触している保持要素15.2は、形状フィットを利用してナット14.2を保持する(
図2から
図4を参照)。
【0041】
回転軸Zの周りのスピンドル14.1の回転運動中、形状フィットによって達成されるこの保持Hは、ナット14.2が、スクリュー駆動工具2から離れる方向に回転軸Zに沿って移動するのを阻止する。しかしながら、形状フィットによるこの保持Hは、スクリュー駆動工具2に向かう方向の回転軸Zに沿ったナット14.2の移動は可能にする。
図3aは、ナット開始位置14.2*にあるナット14.2を示す。ナット開始位置14.2*から、ナット14.2は、スクリュー駆動工具2に向かう方向で好ましくは25mm未満/25mmに等しい回転軸Zに沿ったナットストロークΔz1だけ進むことができる。しかしながら、スクリュー駆動工具2に向かう方向の回転軸Zに沿ったナット14.2の移動は、ブレーキピストン12.2によって制限される。ナット14.2は、回転軸Zに沿って前記ナットストロークΔz1だけ進み、その後、戻りばね要素14.4に対して、及びブレーキピストン12.2に対してナット終了位置14.2+に位置決めされる。圧力スリーブ14.21は、戻りばね要素14.4を圧縮し、ブレーキピストン12.2にブレーキ力Fを加える。
【0042】
スピンドル14.1は、回転軸Zに沿ってスクリュー駆動工具から離れた端部を有する。スクリュー駆動工具から離れた端部に、スピンドル14.1は、スピンドル接触面14.12を備える。スピンドル接触面14.12を介して、スピンドル14.1は、ハウジングポット10.2内でブレーキばね要素12.3に直接機械的に接触している。スピンドル接触面14.12は、回転軸Zに垂直な面内に延在する。
【0043】
したがって、ナット14.2がナット終了位置14.2+にあり、スクリュー駆動工具2が回転軸Zの周りを回転するようにスピンドル14.1を駆動し続けるとき、前記ナット14.2及びスピンドル14.1は、互いに対して機械的に荷重される。
図4a及び
図4bに示されるように、ブッシュ14.3は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMの作用の下、スクリュー駆動工具2から離れる方向に回転軸Zに沿って移動する。結果として、前記ブッシュ14.3に機械的に接続されるスピンドル14.1もまた、スクリュー駆動工具2から離れる方向に回転軸Zに沿って移動する。スピンドル接触面14.12は、スピンドル開始位置14.1*を離れ、回転軸Zに沿ってスピンドル終了位置14.1+に移動し、結果としてブレーキばね要素12.3を圧縮することになる。
【0044】
ナット14.2は、スクリュー駆動工具2がもはやねじ継手シミュレーションの終わりにトルクMを及ぼしていない場合でも(
図5を参照)、ブレーキピストン12.2にブレーキ力Fを加え続ける。これは、ナット14.2は依然として保持ユニット15によって形状フィットによって保持Hされているという事実によるものである。
【0045】
ねじ継手シミュレーションの終わりには、スクリュー駆動工具2によってそれ以上トルクMが及ぼされることはない。しかしながら保持ユニット15の停止後にのみ、保持要素15.2が駆動装置15.1によって保持位置15.2+から静止位置15.2*に戻るように移動される場合、ナット14.2はもはや形状フィットによって保持Hされない。この場合、ブレーキばね要素12.3は減圧し、ばね力Rを生じることになる。前記ばね力Rは、スピンドル接触面14.12を介してスピンドル14.1に作用する。ブッシュ14.3及びスピンドル14.1は、スクリュー駆動工具2に向かう方向で回転軸Zに沿って移動する。スピンドル接触面14.12は、スピンドル終了位置14.1+を離れ、スピンドル開始位置14.1+へと回転軸Zに沿って自動的に移動する(
図5及び
図6を参照)。シミュレーションデバイス1をリセットするためのさらなる時間のかかる措置はもはや必要なく、処置を費用効果の高いものにする。
【0046】
それが形状フィットによってもはや保持Hされないとき、戻りばね要素14.4は減圧し、この減圧から生じる戻りばね力RRにより、ナット14.2をナット終了位置14.2+を離れさせ、ナット開始位置14.2+に自動的に戻す(
図5及び
図6を参照)。有利には、この戻りばね力RRの大きさは、ナット14.2が、戻りばね力RRの作用の下、極めて迅速にナット開始位置14.2+を占めるようにするように選択され、処置の時間を節約し、経済的にする。
【0047】
形状フィットによる保持Hがないと、ブレーキ板要素12.1の摩擦接触は解放され、ブレーキピストン12.2を、ブレーキ板要素12.1から離れて、回転軸Zに沿って移動させる。
【0048】
よって、シミュレーションデバイス1を使用してスクリュー駆動工具2のねじ継手シミュレーションを実施するための方法は、以下のステップを含む。
【0049】
図1に描かれる第1のステップにおいて、公称値Sが、スクリュー駆動工具2に対して設定され、スクリュー駆動工具2は、テスト接続ユニット11を介してシミュレーションデバイス1に結合される。スクリュー駆動工具2は、まだ始動されず、回転軸Zの周りをまだ回転せず、まだトルクMも全く及ぼしていない。保持要素15.2は、静止位置15.2*にある(
図2aを参照)。ナット14.2は、ナット開始位置14.2*にある(
図3aを参照)。スピンドル14.1は、スピンドル開始位置14.1*にある(
図4aを参照)。
【0050】
図2に描かれる第2のステップにおいて、スクリュー駆動工具2は始動される。スクリュー駆動工具2の始動のすぐ後(2秒以内)に、保持ユニット15が始動され、保持要素15.2が、駆動装置15.1によって保持位置15.2+に移動され、ナット14.2は、形状フィットを利用してナット開始位置14.2*に保持Hされる(
図2b及び
図3aも参照)。スピンドル14.1は依然としてスピンドル開始位置14.1*にある(
図4aを参照)。
【0051】
図3に描かれる第3のステップにおいて、始動されたスクリュー駆動工具2は、回転軸Zの周りを回転し、トルクMを及ぼす。スクリュー駆動工具2に結合されたテスト接続要素11.1は、回転軸Zの周りの回転運動を回転体11.2を介して前記ブッシュ14.3に伝達する。トルクMは、機械的接続部14.31を介してコンバータユニット14によって受け取られる。回転軸Zの周りの回転運動は、ブッシュ14.3からスピンドル14.1に伝達される。スピンドル14.1の回転軸Zの周りの回転運動は、回転軸Zに沿ったナット14.2の移動となる。コンバータユニット14は、及ぼされるトルクMを変換する。スクリュー駆動工具2から離れる方向の回転軸Zに沿ったナット14.2の移動は、形状フィットを利用してナット14.2を保持するHことによって阻止される。よって、ナット14.2は、スクリュー駆動工具2に向かう方向の回転軸Zに沿った移動を実行する。ナット14.2は、ナット開始位置14.1*を離れ、ナット終了位置14.2+に回転軸Zに沿って移動する(
図3a及び
図3bを参照)。ナット終了位置14.2+に移動したナット14.2は、及ぼされたトルクMをブレーキ力Fに変換する。よって、及ぼされたトルクMは、このようにしてコンバータユニット14によってブレーキ力Fに変換される。ナット終了位置14.2+にあるナット14.2は、戻りばね要素14.4を圧縮する。ナット終了位置14.2+にあるナット14.2は、ブレーキピストン12.2にブレーキ力Fを加える。このようにして、コンバータユニット14は、ブレーキユニット12にブレーキ力Fを加える。ブレーキ力Fが加えられる前記ブレーキピストン12.2は、回転軸Zに沿って移動することができ、ブレーキ板要素12.1同士の摩擦接触をもたらす。ブレーキ板要素12.1は、前記スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクMを下げる。測定ユニット13は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクM、及びテスト接続ユニット11が回転軸Zの周りで回転する回転の角度を測定する。保持要素15.2は、保持位置15.2+のままである(
図2bを参照)。スピンドル14.1は依然として、スピンドル開始位置14.1*にある。
【0052】
図4に描かれる第4のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具2は、設定された公称値Sが達成されるまで、及ぼされるトルクMをさらに増加する。スクリュー駆動工具2は、回転軸Zの周りでスピンドル14.1を回転し続ける。ナット14.2は、ナット終了位置14.2+にあるため、ナット14.2及びスピンドル14.1は、互いに対して機械的に荷重される。この機械的荷重の結果として、ブッシュ14.3は、スピンドル14.1をスピンドル開始位置14.1*からスピンドル終了位置14.1+まで移動し、ブレーキばね要素12.3を圧縮する(
図4a及び
図4bを参照)。測定ユニット13は、スクリュー駆動工具2によって及ぼされるトルクM、及びテスト接続ユニット11が回転軸Zの周りで回転する回転の角度を測定する。
【0053】
図5に描かれる第5のステップにおいて、前記スクリュー駆動工具2は、設定された公称値Sを達成しており、テスト接続ユニット11の回転軸Zの周りの回転運動及びトルクMの行使を停止する。スクリュー駆動工具2のテスト接続要素11.1への結合は解放される。スクリュー駆動工具2は、シミュレーションデバイス1から取り外される。保持要素15.2は、保持位置15.2+のままである(
図2bを参照)。ナット14.2は、ナット終了位置14.2+のままである(
図3bを参照)。
【0054】
図6に描かれる第6のステップにおいて、保持ユニット15は、停止され、保持要素15.2は、駆動装置15.1によって保持位置15.2+から静止位置15.2に戻るように移動される。ナット14.2はもはや形状フィットによって保持Hされない。形状フィットによるこのような保持Hなしで、戻りばね要素14.4は減圧し、回転軸Zに沿って、ナット開始位置14.2+に移動されるナット14.2に戻りばね力RRを及ぼす(
図5及び
図6を参照)。形状フィットによるこのような保持Hがないと、ブレーキディスク要素12.1同士の摩擦接触は解放され、ブレーキピストン12.2をブレーキディスク要素12.1から離れるように回転軸Zに沿って移動させる(
図5及び
図6を参照)。同時に、ブレーキばね要素12.3は減圧し、結果としてばね力Rを生じる。このばね力Rが、ブッシュ14.3及びスピンドル14.1をスピンドル終了位置14.1+から回転軸Zに沿ってスピンドル開始位置14.1*に戻るようにさせ、ブッシュ14.3及びスピンドル14.1は、
図6に示される表現においてこの位置に達している。
【符号の説明】
【0055】
1 シミュレーションデバイス
2 スクリュー駆動工具
10.1 上部ハウジング部分
10.2 ハウジング底部
11 テスト接続ユニット
11.1 テスト接続要素
11.2 回転体
12 ブレーキユニット
12.1 ブレーキ板要素
12.2 ブレーキピストン
12.3 ブレーキばね要素
13 測定ユニット
14 コンバータユニット
14.1 スピンドル
14.1* スピンドル開始位置
14.1+ スピンドル終了位置
14.11 別の機械的接続部
14.12 スピンドル接触面
14.2 ナット
14.2* ナット開始位置
14.2+ ナット終了位置
14.21 圧力スリーブ
14.3 ブッシュ
14.31 機械的接続部
14.4 戻りばね要素
14.5 回転要素
15 保持ユニット
15.1 駆動装置
15.2 保持要素
15.2* 静止位置
15.2+ 保持位置
Δx 進行距離
Δz1 ナットストローク
Δz2 ブッシュストローク
F ブレーキ力
H 形状フィットによる保持
M トルク
R ばね力
RR 戻りばね力
S 公称値
X 半径方向軸
Z 回転軸