(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置、ヘッドアップディスプレイシステム、位相差フィルム及び車両用合わせガラス
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20241223BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241223BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20241223BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/23
B60J1/02 M
B60J1/00 J
(21)【出願番号】P 2022500325
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2021003464
(87)【国際公開番号】W WO2021161829
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020022342
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020027920
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140713
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523220503
【氏名又は名称】セントラル硝子プロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】森 直也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 晃史
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-225236(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145550(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/177027(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168726(WO,A1)
【文献】特開2016-071078(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244619(WO,A1)
【文献】特開平11-095156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0307176(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に認識させる、ヘッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記投影光を照射する映像部と、
前記映像部と前記投影部との間に
、前記映像部とは別部材として設けられ、前記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
前記偏光部を透過した投影光が投影される前記投影部と、を備え、
前記投影部は、前記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
前記視認者の正面である視認者正面領域と、前記X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
前記投影光は、少なくとも前記視認者斜め前方領域に投影され、
前記視認者から前記投影部を見た時のX軸を0°、前記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
前記位相差フィルムは、前記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、前記光軸により前記投影面に入射する前記投影光の振動方向を変えるものであり、
前記特定方向は、前記入射面と平行な方向であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記視認者が前記第二ガラス板の室内側面以外に形成された反射像に基づく虚像を観察する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記視認者が前記第一ガラス板の室外側面に形成された反射像に基づく虚像を観察する請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に認識させる、ヘッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記投影光を照射する映像部と、
前記映像部と前記投影部との間に設けられ、前記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
前記偏光部を透過した投影光が投影される前記投影部と、を備え、
前記投影部は、前記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
前記視認者の正面である視認者正面領域と、前記X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
前記投影光は、少なくとも前記視認者斜め前方領域に投影され、
前記視認者から前記投影部を見た時のX軸を0°、前記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
前記位相差フィルムは、前記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、前記投影面に入射する前記投影光の振動方向θαと前記光軸とがなす角度をdθとした場合に、入射する前記投影光の振動方向を2dθ回転させるものであり、
前記振動方向θαは、前記投影面におけるX軸に対する前記入射面の角度をθpとした場合に前記投影面において2θr-θpの方向であることを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記視認者が前記第二ガラス板の室内側面に形成された反射像に基づく虚像を観察する請求項4に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記視認者が複数名であり、
各視認者のそれぞれに対して、前記映像部と前記投影部との間に前記偏光部が設けられ、視認者毎に設けられた入射面である各入射面を有し、
それぞれの前記偏光部は、前記各入射面に対応した前記特定方向に振動する投影光を透過させる、請求項1~5のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記偏光部は、透過した投影光の振動方向が前記特定方向となる透過軸を有し、
それぞれの前記透過軸の向きが異なる請求項6に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記投影光が、前記複数名の視認者のそれぞれの前記視認者正面領域の間であり、前記複数名の視認者のそれぞれの前記視認者斜め前方領域に相当する領域である中央領域に投影される請求項7に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
前記投影部において、前記投影光が投影される投影位置が変更可能であり、
前記投影位置の変更に伴う入射面の変更に対応して、前記偏光部が可動であり、前記偏光部を透過させる光の振動方向を変えることができる請求項1~8のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイシステムであって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイシステムは、
前記投影光を照射する映像部と、
前記映像部と前記投影部との間に設けられ、前記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
前記投影光が投影される前記投影部と、を備え、
前記投影部は、前記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
前記視認者の正面である視認者正面領域と、前記X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
前記投影光は、少なくとも前記視認者斜め前方領域に投影され、
前記視認者から前記投影部を見た時のX軸を0°、前記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
前記位相差フィルムは、前記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、前記光軸により前記投影面に入射する前記投影光の振動方向を変えるものであり、
前記偏光部が可動であり、前記偏光部を透過させる光の振動方向を変えることにより、以下の(A)及び(B)を切り替え可能であることを特徴とする
、ヘッドアップディスプレイシステム。
(A)前記第二ガラス板へ入射する光の振動方向を、前記入射面と平行な方向とする。
(B)前記位相差フィルムが、前記投影面に入射する前記投影光の振動方向θαと前記光軸とがなす角度をdθとした場合に、入射する前記投影光の振動方向を2dθ回転させるものであるとして、前記第二ガラス板を透過した光の振動方向を、前記投影面におけるX軸に対する前記入射面の角度をθpとした場合に前記投影面において2θr-θpの方向となるようにする。
【請求項11】
前記投影部において、前記投影光が投影される投影位置が変更可能であり、
前記投影位置の変更に伴う入射面の変更に対応して、前記偏光部が可動であり、前記偏光部を透過する投影光の振動方向を変えることができる請求項10に記載のヘッドアップディスプレイシステム。
【請求項12】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
振動方向がX軸方向である前記投影光を照射する映像部と、
前記投影光が投影される投影部と、を備え、
前記投影部は、前記視認者よりも、前記移動体が前進する時の進行方向に配置され、前記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、前記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、前記第二ガラス板と、前記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
前記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記投影光を、前記位相差フィルムへ入射させることによって、前記投影光の振動方向を前記入射面に対して平行方向へ変換することができ、
前記投影部は、前記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
前記視認者が前記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者正面領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
前記視認者が前記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者斜め前方領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
前記虚像は、前記第二ガラス板の前記第四主面に形成された反射像に基づき、
前記視認者正面領域及び前記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、前記第一ガラス板の前記第一主面から出射される光は、主として前記入射面に対して平行方向に振動する前記投影光である、ことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項13】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
振動方向がYZ平面に平行な方向である前記投影光を照射する映像部と、
前記投影光が投影される投影部と、を備え、
前記投影部は、前記視認者よりも、前記移動体が前進する時の進行方向に配置され、前記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、前記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、前記第二ガラス板と、前記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
前記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記投影光を、前記位相差フィルムへ入射させることによって、前記投影光の振動方向を前記入射面に対して垂直方向へ変換することができ、
前記投影部は、前記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
前記視認者が前記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者正面領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
前記視認者が前記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者斜め前方領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
前記虚像は、前記第一ガラス板の前記第一主面に形成された反射像に基づき、
前記視認者正面領域及び前記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、前記第一ガラス板の前記第一主面で反射される光は、主として前記入射面に対して垂直方向に振動する前記投影光である、ことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項14】
前記視認者斜め前方領域のうち、前記視認者正面領域の右側に位置する右側周辺領域と、前記視認者正面領域の左側に位置する左側周辺領域では、前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対である請求項12又は13に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項15】
前記視認者斜め前方領域における前記位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って連続的になされている請求項12~14のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項16】
前記視認者斜め前方領域における前記位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って非連続的になされている請求項12~14のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項17】
第一ガラス板と、第二ガラス板と、前記第一ガラス板と前記第二ガラス板との間に配置される位相差フィルムと、を備える車両用合わせガラスであって、
前記位相差フィルムが、上下方向の縦軸及び左右方向の横軸を有する、一体物である位相差フィルムであって、前記縦軸に沿った複数の地点において、前記位相差フィルムの光軸と前記横軸とがなす角は一定であり、前記横軸方向に沿って、前記位相差フィルムの光軸と前記横軸とがなす角が一定傾向で変化する位相差フィルムであることを特徴とする車両用合わせガラス。
【請求項18】
前記横軸方向に沿って、前記位相差フィルムの光軸と前記横軸とがなす角が連続的に変化する請求項17に記載の車両用合わせガラス。
【請求項19】
前記横軸方向に沿って、前記位相差フィルムの光軸と前記横軸とがなす角が非連続的に変化する請求項17に記載の車両用合わせガラス。
【請求項20】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイシステムであって、
地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ前記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
前記視認者の視点と前記投影光の発光点と前記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
前記ヘッドアップディスプレイシステムは、
前記投影光を照射する映像部と、
前記投影光が投影される投影部と、を備え、
前記投影部は、前記視認者よりも、前記移動体が前進する時の進行方向に配置され、前記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、前記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、前記第二ガラス板と、前記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
前記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記投影光を、前記位相差フィルムへ入射させることによって、前記投影光の振動方向を前記入射面に対して平行方向又は垂直方向へ変換することができ、
前記投影部は、前記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、前記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
前記視認者が前記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者正面領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
前記視認者が前記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、前記視認者斜め前方領域に配置される前記位相差フィルムは、前記第四主面との平行面において前記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
前記映像部は、振動方向がX軸方向である第一の投影光、及び、振動方向がYZ平面に平行な方向である第二の投影光を切り替えて照射することができ、
前記視認者が偏光板を介さずに虚像を視認する場合は、前記映像部から前記第一の投影光を照射し、前記虚像は、前記第二ガラス板の前記第四主面に形成された反射像に基づき、前記視認者正面領域及び前記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、前記第一ガラス板の前記第一主面から出射される光は、主として前記入射面に対して平行方向に振動する投影光であり、
前記視認者が偏光板を介して虚像を視認する場合は、前記映像部から前記第二の投影光を照射し、前記虚像は、前記第一ガラス板の前記第一主面に形成された反射像に基づき、前記視認者正面領域及び前記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、前記第一ガラス板の前記第一主面で反射される光は、主として前記入射面に対して垂直方向に振動する投影光である、ことを特徴とする、ヘッドアップディスプレイシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ装置、ヘッドアップディスプレイシステム、位相差フィルム及び車両用合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(以降、HUDと表記する場合がある)装置の投影部として、移動体の前方部に設置されるウィンドシールドが用いられている。乗員は、投影部における投影光の反射像に基づく虚像を視認する。投影部では、室内側主面、室外側主面の両主面に反射像が形成され得る。
【0003】
投影部での、室内側主面、室外側主面の両主面での反射像の形成は、二重像として、乗員に視認され得る虚像(二重像発生の機構は、非特許文献1を参照されたい)につながる。HUD装置における二重像を抑制する方式として、楔HUD方式と、偏光HUD方式とがある。
【0004】
楔HUD方式では、投影部を、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備えるものとすることで、乗員から見て室内側主面に形成された反射像に基づく虚像と、室外側主面に形成された反射像に基づく虚像とが一致するように、投影光の光路が調整される(二重像抑制の機構は、非特許文献1を参照されたい)。
【0005】
特許文献1には、偏光HUD方式のHUD装置が開示されている。
偏光HUD方式では、乗員は、投影部におけるS偏光又はP偏光の投影光の反射像に基づく虚像表示を視認する。ここで、S偏光は入射面に対して、振動の方向が垂直方向である投影光、他方、P偏光とは、入射面に対して振動の方向が平行方向である投影光のことを言う。
【0006】
このHUD装置では、反射像の二重像、すなわち虚像表示の二重像の抑制は、次のような機構でなされている。投影部を、室外側に配置される第一ガラス板と、室内側に配置される第二ガラス板と、第一ガラス板と第二ガラス板との間に配置される位相差フィルムとを備え、積層部材の各材料は、可視光領域での屈折率が同等になるように調整されたものとする。そして、投影部に対し前述したS偏光又はP偏光を含む投影光がブリュースター角で入射される。
【0007】
入射される投影光がS偏光からなる場合、第二ガラス板の室内側主面に反射像が形成される。そして、投影部を通過する投影光は位相差フィルムによりP偏光となる。該P偏光は、第一ガラス板の室外側主面に達したときは、該主面で反射されることなく、室外側へと出射される。乗員は、第二ガラス板の室内側主面に形成された、S偏光の反射像に基づく虚像表示を視認する。この場合を、S-HUDと表記する。
【0008】
また、入射される投影光がP偏光からなる場合、第二ガラス板の室内側主面で反射される投影光の割合は低い。投影部を通過する投影光は位相差フィルムによりS偏光となる。該S偏光は、第一ガラス板の室外側主面に達したとき、一部は該主面で反射され、残部は室外側から出射される。この反射像を形成した投影光は投影部の位相差フィルムを再度通過するので、P偏光へ変化する。乗員は、第一ガラス板の室外側主面に形成された反射像に基づく、P偏光による虚像表示を視認する。この場合を、P-HUDと表記する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2019/244619号
【文献】特開2000-249966号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】「新型アクティブドライビングディスプレイの開発」、マツダ技法、No.33(2016)、60頁-65頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、HUD装置で表示する情報の多様化が求められている。例えば、標識や歩行者などをマーキングした情報を表示し、運転をアシストする用途が挙げられる。また、運転席と助手席での画像情報を共有する要望もある。共有する情報としてはカーナビゲーションシステムにより表示される情報や天気等の情報が挙げられる。
【0012】
このように、HUD装置で表示する情報を多様化するという用途に応えるためには、運転者の正面のみに情報を表示するだけでは足りず、運転者の正面以外の領域、例えば、運転者の正面よりもフロントガラス面の外周に近い領域や、助手席と運転者との間の領域に情報を表示するといったことが必要となる場合がある。
【0013】
特許文献1のように偏光HUD方式において虚像表示をさせる場合、HUDにより情報を視認する乗員である視認者の正面に像を表示することを念頭に置いて位相差フィルムの光軸と投影光の振動方向のなす角度を調整して、二重像の発生を抑制する。
【0014】
特許文献2には、偏光HUD方式において大面積表示をさせようとすると、表示面積全体にブリュースター角で表示光を入射することが困難になり、大面積表示ができないということが課題として挙げられている。
そして、大面積化に伴うブリュースター角のずれを楔角を変化させることで解決すると記載されている。
【0015】
特許文献2では、旋光子フィルムを挿入した位置から下辺方向にフロント合わせガラスの厚みを薄くし、該厚みの変化を挿入する旋光子フィルムの厚みによって調整すると記載されている。そして、この方法であると、旋光子フィルムを挿入した部位とその下部で反射像を表示することにより表示面積が拡大できるとされている。
【0016】
しかし、この方法による表示面積の拡大は、旋光子フィルムを挿入した部位とその下部に限られ、フロントガラス面の上下方向に対する表示面積の拡大方法に限られる。
また、下辺方向にフロント合わせガラスの厚みを薄くするのは製造過程での手間が増大するというデメリットがある。
【0017】
乗員が移動体の運転席側及び助手席側に着座し、フロントガラス面の中央領域にHUDによる像を表示する場合、像の表示領域は、2名の乗員(視認者)のいずれからも斜め方向となる。
このような場合、たとえ偏光HUD方式により各々の視認者の正面に表示される像に対して二重像の発生を抑制するようにヘッドアップディスプレイ装置を設計していても、視認者が斜め方向の像を見ることになるために、2名の視認者のいずれもが像を二重像として視認することがある。
【0018】
本開示は、上記を踏まえて、フロントガラス面の外周に近い領域や、フロントガラス面の中央領域に表示された像を視認者が斜めから視認した場合に、二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本開示の第1実施形態の第1の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に認識させる、ヘッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイ装置は、
上記投影光を照射する映像部と、
上記映像部と上記投影部との間に設けられ、上記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
上記偏光部を透過した投影光が投影される上記投影部と、を備え、
上記投影部は、上記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
上記視認者の正面である視認者正面領域と、上記X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
上記投影光は、少なくとも上記視認者斜め前方領域に投影され、
上記視認者から上記投影部を見た時のX軸を0°、上記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
上記位相差フィルムは、上記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、上記光軸により上記投影面に入射する上記投影光の振動方向を変えるものであり、
上記特定方向は、上記入射面と平行な方向であることを特徴とする。
【0020】
本開示の第1実施形態の第1の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置では、投影光を照射する映像部と、投影光が投影される投影部との間に偏光部が設けられている。
偏光部は、投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させ、偏光部を透過した投影光が投影部に投影される。
偏光部において投影光を透過させる特定の方向は、入射面に平行な方向である。この場合、P-HUD方式のヘッドアップディスプレイ装置として使用することができる。
このヘッドアップディスプレイ装置は、偏光サングラスを使用するサングラスモードで使用することに適している。
偏光部によって透過させる光の振動方向を調整することにより、フロントガラス面の外周に近い領域や、フロントガラス面の中央領域に表示された像を視認者が斜めから視認した場合に、二重像の発生を抑制することができる。
【0021】
また、本開示の第1実施形態の第1の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置においては、上記視認者が上記第二ガラス板の室内側面以外に形成された反射像に基づく虚像を観察するようにすることが好ましい。
本開示のヘッドアップディスプレイ装置においては、上記視認者が上記第一ガラス板の室外側面に形成された反射像に基づく虚像を観察することが好ましい。
【0022】
また、本開示の第1実施形態の第2の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に認識させる、ヘッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイ装置は、
上記投影光を照射する映像部と、
上記映像部と上記投影部との間に設けられ、上記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
上記偏光部を透過した投影光が投影される上記投影部と、を備え、
上記投影部は、上記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
上記視認者の正面である視認者正面領域と、上記X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
上記投影光は、少なくとも上記視認者斜め前方領域に投影され、
上記視認者から上記投影部を見た時のX軸を0°、上記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
上記位相差フィルムは、上記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、上記投影面に入射する上記投影光の振動方向θαと上記光軸とがなす角度をdθとした場合に、入射する上記投影光の振動方向を2dθ回転させるものであり、
上記振動方向θαは、上記投影面におけるX軸に対する上記入射面の角度をθpとした場合に上記投影面において2θr-θpの方向であることを特徴とする。
【0023】
本開示の第1実施形態の第2の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置では、投影面に入射する投影光の振動方向をθαとし、X軸に対して位相差フィルムの光軸が傾く角度をθrとし、投影面におけるX軸に対する入射面の角度をθpとした場合に、上記振動方向θαが上記投影面において2θr-θpの方向である。
投影面に入射する投影光の振動方向が上記条件を満たすと、S-HUD方式のヘッドアップディスプレイ装置として使用することができる。S-HUD方式のヘッドアップディスプレイ装置は、P-HUD方式のように雨天時に像が歪むことがないので、像を鮮明に表示させることができる。
また、斜め方向に投影する場合、例えばθr=45°の時の2θr-θpの方向は、入射面と直交しない。
【0024】
本開示の第1実施形態の第2の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置においては、上記視認者が上記第二ガラス板の室内側面に形成された反射像に基づく虚像を観察することが好ましい。
【0025】
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置では、上記視認者が複数名であり、各視認者のそれぞれに対して、上記映像部と上記投影部との間に上記偏光部が設けられ、視認者毎に設けられた入射面である各入射面を有し、それぞれの上記偏光部は、上記各入射面に対応した上記特定方向に振動する投影光を透過させることが好ましい。
また、上記偏光部は、透過した投影光の振動方向が上記特定方向となる透過軸を有し、それぞれの上記透過軸の向きが異なることが好ましい。
また、上記投影光が、上記複数名の視認者のそれぞれの上記視認者正面領域の間であり、上記複数名の視認者のそれぞれの上記視認者斜め前方領域に相当する領域である中央領域に投影されることが好ましい。
【0026】
複数名の視認者のそれぞれに対して偏光部を設けて、各視認者毎に設けられた入射面と投影面の位置の関係に合わせて、偏光部において透過させる投影光の振動方向を調整する。これにより、フロントガラス面の中央領域に表示された像を複数名の視認者が斜めから視認した場合に、いずれの視認者からみても二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置とすることができる。
【0027】
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置においては、上記投影部において、上記投影光が投影される投影位置が変更可能であり、
上記投影位置の変更に伴う入射面の変更に対応して、上記偏光部が可動であり、上記偏光部を透過させる光の振動方向を変えることができることが好ましい。
投影位置が変更されると、入射面が変更される。入射面の変更に対して偏光部が可動して偏光部を透過させる光の振動方向を変えることができると、投影位置が変更された場合でも二重像を抑制することができる。
【0028】
本開示の第1実施形態に係るへッドアップディスプレイシステムは、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイシステムであって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイシステムは、
上記投影光を照射する映像部と、
上記映像部と上記投影部との間に設けられ、上記投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる偏光部と、
上記投影光が投影される上記投影部と、を備え、
上記投影部は、上記投影光の入射側である室内側から室外側へ、第二ガラス板、位相差フィルム、第一ガラス板の順になるように配置された合わせガラスであり、
上記視認者の正面である視認者正面領域と、上記X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域よりも遠くなる領域である視認者斜め前方領域とを有し、
上記投影光は、少なくとも上記視認者斜め前方領域に投影され、
上記視認者から上記投影部を見た時のX軸を0°、上記位相差フィルムに沿った面を投影面とした時、
上記位相差フィルムは、上記投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、上記光軸により上記投影面に入射する上記投影光の振動方向を変えるものであり、
上記偏光部が可動であり、上記偏光部を透過させる光の振動方向を変えることにより、以下の(A)及び(B)を切り替え可能であることを特徴とする。
(A)上記第二ガラス板へ入射する光の振動方向を、上記入射面と平行な方向とする。
(B)上記位相差フィルムが、上記投影面に入射する上記投影光の振動方向θαと上記光軸とがなす角度をdθとした場合に、入射する上記投影光の振動方向を2dθ回転させるものであるとして、上記第二ガラス板を透過した光の振動方向を、上記投影面におけるX軸に対する上記入射面の角度をθpとした場合に上記投影面において2θr-θpの方向となるようにする。
【0029】
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムでは、上記偏光部が可動であり、上記偏光部を透過させる光の振動方向を変えることができる。これによりS-HUD方式とP-HUD方式の切り替えを行うことができる。
これにより、複数種類の二重像抑制方式を備えるヘッドアップディスプレイシステムとすることができる。
【0030】
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムでは、上記投影部において、上記投影光が投影される投影位置が変更可能であり、
上記投影位置の変更に伴う入射面の変更に対応して、上記偏光部が可動であり、上記偏光部を透過する投影光の振動方向を変えることができることが好ましい。
投影位置が変更されると、入射面が変更される。入射面の変更に対して偏光部が可動して偏光部を透過する投影光の振動方向を変えることができると、投影位置が変更された場合でも二重像を抑制することができる。
【0031】
本開示の第2実施形態の第1の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイ装置は、
振動方向がX軸方向である上記投影光を照射する映像部と、
上記投影光が投影される投影部と、を備え、
上記投影部は、上記視認者よりも、上記移動体が前進する時の進行方向に配置され、上記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、上記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、上記第二ガラス板と、上記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
上記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、上記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
上記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、上記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
上記投影光を、上記位相差フィルムへ入射させることによって、上記投影光の振動方向を上記入射面に対して平行方向へ変換することができ、
上記投影部は、上記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
上記視認者が上記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者正面領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
上記視認者が上記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者斜め前方領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
上記虚像は、上記第二ガラス板の上記第四主面に形成された反射像に基づき、
上記視認者正面領域及び上記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、上記第一ガラス板の上記第一主面から出射される光は、主として上記入射面に対して平行方向に振動する上記投影光である、ことを特徴とする。
【0032】
本開示の第2実施形態の説明では、視認者の視点と投影部を結ぶ線のうち、Y軸に沿った線の長さ(視点から投影部までの距離)を1000mmとし、上記のY軸に沿った線を0°としたときの、X軸方向に沿って±10°の範囲を視認者正面領域とする。
視認者正面領域から、X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域を視認者斜め前方領域とする。
【0033】
本開示の第2実施形態の第1の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置では、視認者の正面である視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°となっている。視認者正面領域では投影光は殆どS偏光となる。視認者正面領域では位相差フィルムに入射された投影光(S偏光)がP偏光に変換される効率が高いので、二重像の発生が抑制される。
【0034】
X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いている。
位相差フィルムの光軸の方向を、X軸に対して45°±5°からずれる方向に傾けることにより、投影光の入射面の変化に対応させて、位相差フィルムを通過した光のうち、入射面に対して平行方向に振動する光の割合を向上させる。その結果、視認者斜め前方領域でも位相差フィルムに入射された投影光がP偏光に変換される効率が高くなるので、二重像の発生が抑制される。
視認者正面領域及び視認者斜め前方領域のいずれにおいても位相差フィルムに入射された投影光がP偏光に変換される効率が高くなるので、二重像の発生が抑制される。
その結果、フロントガラス面の横方向にHUDの表示領域を拡大した場合においても、二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0035】
また、本開示の第2実施形態の第2の態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイ装置は、
振動方向がYZ平面に平行な方向である上記投影光を照射する映像部と、
上記投影光が投影される投影部と、を備え、
上記投影部は、上記視認者よりも、上記移動体が前進する時の進行方向に配置され、上記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、上記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、上記第二ガラス板と、上記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
上記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、上記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
上記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、上記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
上記投影光を、上記位相差フィルムへ入射させることによって、上記投影光の振動方向を上記入射面に対して垂直方向へ変換することができ、
上記投影部は、上記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
上記視認者が上記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者正面領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
上記視認者が上記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者斜め前方領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
上記虚像は、上記第一ガラス板の上記第一主面に形成された反射像に基づき、
上記視認者正面領域及び上記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、上記第一ガラス板の上記第一主面で反射される光は、主として上記入射面に対して垂直方向に振動する上記投影光である、ことを特徴とする。
【0036】
このヘッドアップディスプレイ装置は、偏光サングラスを使用するサングラスモードでも使用できる。
このヘッドアップディスプレイ装置では、視認者の正面である視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°となっている。視認者正面領域では投影光は殆どP偏光となる。視認者正面領域では位相差フィルムに入射された投影光(P偏光)がS偏光に変換される効率が高いので、第一ガラス板の第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示が強くなる。そのため、相対的に第四主面で反射される投影光の影響が弱くなって、二重像の発生が抑制される。
【0037】
X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いている。
位相差フィルムの光軸の方向を、X軸に対して45°±5°からずれる方向に傾けることにより、投影光の入射面の変化に対応させて、位相差フィルムを通過した光のうち、入射面に対して垂直方向に振動する光の割合を向上させる。その結果、視認者斜め前方領域でも第一ガラス板の第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示が強くなる。そのため、相対的に第四主面で反射される投影光の影響が弱くなって、二重像の発生が抑制される。視認者正面領域及び視認者斜め前方領域のいずれにおいても位相差フィルムに入射された投影光がS偏光に変換される効率が高くなるので、二重像の発生が抑制される。
その結果、フロントガラス面の横方向にHUDの表示領域を拡大した場合においても、二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【0038】
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置では、上記視認者斜め前方領域のうち、上記視認者正面領域の右側に位置する右側周辺領域と、上記視認者正面領域の左側に位置する左側周辺領域では、上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対であることが好ましい。
このように定めることで、視認者の左右両側において二重像の発生を抑制することができる。
【0039】
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置では、上記視認者斜め前方領域における上記位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って連続的になされていることが好ましい。
また、上記視認者斜め前方領域における上記位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って非連続的になされていることが好ましい。
【0040】
また、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムは、上下方向の縦軸及び左右方向の横軸を有する、一体物である位相差フィルムであって、
上記縦軸に沿った複数の地点において、上記位相差フィルムの光軸と上記横軸とがなす角は一定であり、
上記横軸方向に沿って、上記位相差フィルムの光軸と上記横軸とがなす角が一定傾向で変化することを特徴とする。
【0041】
このような位相差フィルムを、フロントガラスの横方向と位相差フィルムの横軸方向を揃えて配置することにより、フロントガラス面の横方向に広い表示領域を有するHUD装置を提供することができる。
【0042】
本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムでは、上記横軸方向に沿って、上記位相差フィルムの光軸と上記横軸とがなす角が連続的に変化することが好ましい。
また、上記横軸方向に沿って、上記位相差フィルムの光軸と上記横軸とがなす角が非連続的に変化することが好ましい。
【0043】
また、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスは、第一ガラス板と、第二ガラス板と、上記第一ガラス板と上記第二ガラス板との間に配置される位相差フィルムと、を備える車両用合わせガラスであって、
上記位相差フィルムが、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムであることを特徴とする。
【0044】
このような車両用合わせガラスを使用すると、フロントガラス面の横方向に広い表示領域を有するHUD装置を提供することができる。
【0045】
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムは、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を上記移動体の乗員である視認者に視認させる、へッドアップディスプレイシステムであって、
地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をX軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をY軸、及び地面と垂直な方向をZ軸とし、
上記視認者の視点と上記投影光の発光点と上記投影光が反射する点である反射点とを有する面を入射面とした時、
上記ヘッドアップディスプレイシステムは、
上記投影光を照射する映像部と、
上記投影光が投影される投影部と、を備え、
上記投影部は、上記視認者よりも、上記移動体が前進する時の進行方向に配置され、上記投影光の入射側に配置される第二ガラス板と、上記投影光の出射側に配置される第一ガラス板と、上記第二ガラス板と、上記第一ガラス板との間に配置される、位相差フィルムとを、備える合わせガラスからなり、
上記第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、上記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
上記第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、上記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
上記投影光を、上記位相差フィルムへ入射させることによって、上記投影光の振動方向を上記入射面に対して平行方向又は垂直方向へ変換することができ、
上記投影部は、上記視認者の正面である視認者正面領域と、X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域を有し、
上記視認者が上記視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者正面領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°であり、
上記視認者が上記視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、上記視認者斜め前方領域に配置される上記位相差フィルムは、上記第四主面との平行面において上記位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向に傾いており、
上記映像部は、振動方向がX軸方向である第一の投影光、及び、振動方向がYZ平面に平行な方向である第二の投影光を切り替えて照射することができ、
上記視認者が偏光板を介さずに虚像を視認する場合は、上記映像部から上記第一の投影光を照射し、上記虚像は、上記第二ガラス板の上記第四主面に形成された反射像に基づき、上記視認者正面領域及び上記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、上記第一ガラス板の上記第一主面から出射される光は、主として上記入射面に対して平行方向に振動する投影光であり、
上記視認者が偏光板を介して虚像を視認する場合は、上記映像部から上記第二の投影光を照射し、上記虚像は、上記第一ガラス板の上記第一主面に形成された反射像に基づき、上記視認者正面領域及び上記視認者斜め前方領域のいずれにおいても、上記第一ガラス板の上記第一主面で反射される光は、主として上記入射面に対して垂直方向に振動する投影光である、ことを特徴とする。
【0046】
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイシステムは、映像部から照射する2種類の投影光を切り替えることにより、偏光サングラス等の偏光板を介して虚像を視認するサングラスモードと、偏光板を介さずに虚像を視認する通常モードを切り替えて使用することができる。
そして、フロントガラス面の横方向にHUDの表示領域を拡大した場合に、いずれのモードにおいても、二重像の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
本開示によると、フロントガラス面の外周に近い領域や、フロントガラス面の中央領域に表示された像を視認者が斜めから視認した場合に、二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、HUD装置を備える移動体の上面図である。
【
図2】
図2は、HUD装置に使用する車両用合わせガラスを第四主面側から見た図である。
【
図3】
図3は、車両用合わせガラスの一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態の第1の態様に係る第一のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態の第2の態様に係る第二のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第二のHUD装置において、偏光部を透過させる光の振動方向を説明するための模式図である。
【
図7】
図7は、第一のHUD装置における、視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の位置の関係の例を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、第二のHUD装置における、視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の位置の関係の例を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、第一のHUD装置において視認者が複数名である場合の視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の位置の関係の例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、第二のHUD装置において視認者が複数名である場合の視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の位置の関係の例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、実施例及び比較例で使用した第一のHUD装置を模式的に示す配置図である。
【
図12】
図12は、実施例1における実験系を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、比較例1における実験系を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、実施例1及び比較例1において視認される虚像を示す写真である。
【
図15】
図15は、実施例2における実験系を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、比較例2における実験系を模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施例2及び比較例2において視認される虚像を示す写真である。
【
図18】
図18は、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムの一例を模式的に示す図面である。
【
図19】
図19は、本開示の第2実施形態に係る他の位相差フィルムの一例を模式的に示す図面である。
【
図20】
図20は、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスの一例を模式的に示す分解斜視図である。
【
図21】
図21は、本開示の第2実施形態の第1の態様に係る第三のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
【
図22】
図22は、右ハンドル車における視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、左ハンドル車における視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、右ハンドル車における運転者が視認者である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
【
図25】
図25は、左ハンドル車における運転者が視認者である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
【
図26】
図26は、視認者が運転者と助手席の乗員の2名である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
【
図27】
図27は、視認者が運転者と助手席の乗員の2名である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
【
図28】
図28は、投影部をサイドガラスにも拡張した態様を模式的に示す図である。
【
図29】
図29は、本開示の第2実施形態の第2の態様に係る第四のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
【
図30】
図30は、実施例及び比較例で使用した第三のHUD装置を模式的に示す配置図である。
【
図31】
図31は、実施例3における実験系を模式的に示す図である。
【
図32】
図32は、比較例3における実験系を模式的に示す図である。
【
図33】
図33は、実施例3及び比較例3において視認される虚像を示す写真である。
【
図34】
図34は、実施例4における実験系を模式的に示す図である。
【
図35】
図35は、比較例4における実験系を模式的に示す図である。
【
図36】
図36は、実施例4及び比較例4において視認される虚像を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)及びヘッドアップディスプレイシステム(HUDシステム)について、それぞれ図面を用いて説明する。
【0050】
なお、本開示の第1実施形態に係るHUD装置としては、視認者が第二ガラス板の室内側面以外に形成された反射像に基づく虚像を観察するHUD装置(P-HUD方式のHUD装置)と、視認者が第二ガラス板の室内側面に形成された反射像に基づく虚像を観察するHUD装置(S-HUD方式のHUD装置)があり、それぞれを第一のHUD装置、第二のHUD装置ともいう。本開示の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の説明において、第一のHUD装置と第二のHUD装置を区別しないときは単に本開示の第1実施形態に係るHUD装置という。
また、本開示の第1実施形態に係るHUDシステムは、一つのシステムにおいて偏光部を透過させる光の振動方向を切り替えることによって第一のHUD装置としても第二のHUD装置としても使用することができるようにしたシステムである。
【0051】
また、本開示の第1実施形態の説明では、視認者の視点と投影部を結ぶ線のうち、Y軸に沿った線の長さ(視点から投影部までの距離)を1000mmとし、上記のY軸に沿った線を0°としたときの、X軸方向に沿って±3°の範囲を視認者正面領域とする。また、Z軸方向に沿って範囲を拡げた場合も、視認者正面領域とする。
視認者正面領域から、X軸方向のいずれかの方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域を視認者斜め前方領域とする。また、X軸方向及びZ軸方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域も視認者斜め前方領域とする。
また、本開示の第1実施形態の説明では、位相差フィルムに沿った面であり、投影光が位相差フィルムに入射する面を投影面という。投影面は位相差フィルムの主面を含む面である。
【0052】
[ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)]
本開示の第1実施形態に係るHUD装置には、第一のHUD装置と第二のHUD装置の2種類がある。まず、両方のHUD装置に共通の事項であるX軸、Y軸及びZ軸の定義及び移動体について説明する。
図1は、HUD装置を備える移動体の上面図であり、
図2は、HUD装置に使用する車両用合わせガラスを第二ガラス板の室内側面(第四主面)側から見た図である。
図1及び
図2を参照して、本開示におけるX軸、Y軸及びZ軸の向きについて説明する。
図1には移動体としての車両20を示しており、X軸を横方向、Y軸を縦方向に示している。Z軸は紙面に垂直な方向となる。
Y軸は、地面と水平且つ移動体である車両20が前進する時の進行方向である。
X軸は、地面と水平且つ移動体である車両20が前進する時の進行方向(Y軸)と直交する方向である。
Z軸は地面と垂直な方向である。
また、第二ガラス板側から第一ガラス板側を見た時の、第一ガラス板の方向を「前方」とする。
【0053】
移動体としては、車両(乗用車、トラック、バス、電車等)、汽車、船、飛行機等が挙げられる。これらの中では車両であることが好ましい。
【0054】
図2には車両用合わせガラス10を示している。車両用合わせガラス10は車両に設置される際にはそのガラス面はXZ平面とは平行とはならず、XZ平面から傾けて配置されることが多い。
【0055】
次に、車両用合わせガラスについて説明する。
図3は、車両用合わせガラスの一例を模式的に示す分解斜視図である。
第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、第一主面の反対側の第二主面とを備える。
また、第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、第四主面の反対側の第三主面とを備える。
なお、上記の「露出される」とは、車両用合わせガラスの機能を損なわない範囲で、防曇性、耐傷性等の各種機能を付与する為のフィルムや膜等を、各主面上に有していてもよいものとする。
図3には車両用合わせガラス10を示している。
図3には図面の手前側に第二ガラス板12を配置した図を示しており、手前側に見える面が第四主面124である。第四主面124の反対側の面が第三主面123である。
図面の奥側に第一ガラス板11を配置しており、手前側に見える面が第二主面112である。第二主面112の反対側の面が第一主面111である。
第一ガラス板11と第二ガラス板12との間に、位相差フィルム100が配置されている。
第四主面124は室内側に露出される面であるので、車両に車両用合わせガラスを配置した際に視認者が直接視認する面になる。すなわち、
図3には視認者が車内から直接視認する位置関係を示している。
【0056】
車両用合わせガラスにおいては、第一ガラス板と、第二ガラス板とが、中間膜を介して接合され、一体構造となっていることが好ましい。中間膜は、中間膜を構成するポリマーが軟化する温度で、加熱することで、第一ガラス板と、第二ガラス板とを合わせ化するもので、ポリマーとして、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を使用することができる。なお、中間膜は複数の樹脂層で構成されていても良い。
【0057】
車両用合わせガラスを構成するガラス材料としては、平板状のガラス板が湾曲形状に加工されたものを好適に使用することができる。ガラス板の材質としては、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰珪酸塩ガラスの他、アルミノシリケートガラスやホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等の公知のガラス組成のものを使用することができる。第一ガラス板、第二ガラス板の、それぞれの厚みは、例えば、0.4mm~3mmとしてもよい。また、第一ガラス板と、第二ガラス板との間隔は、0.01mm~2.5mmとしてもよい。
【0058】
位相差フィルム100は、投影面において、X軸に対してθr傾いた光軸を有し、上記光軸により上記投影面に入射する上記投影光の振動方向を変えるものである。例えば、位相差フィルムが1/2波長フィルムの場合は、上記投影面に入射する投影光の振動方向と、上記光軸とがなす角度をdθとしたとき、入射する上記投影光の振動方向を2dθ回転させる。
なお、本開示の第1実施形態において、位相差フィルムの光軸とは、位相差フィルムにおける屈折率が最も大きい方向の軸を意味する。また、位相差フィルムとしては、基材を持たない層や膜を含んでもよい。例えば、投影部内に光軸を有する層を、塗布、積層、添着、付着、圧着、転写等により形成したものが挙げられる。
【0059】
位相差フィルムは、第一ガラス板と第二ガラス板との間に配置される。
位相差フィルムは中間膜の内部に配置されていてもよいし、第一ガラス板に接する位置に配置されていてもよいし、第二ガラス板に接する位置に配置されていてもよい。また、
図3に示したように、位相差フィルムの面が第二主面及び第三主面と面するように配置されるとしてもよい。また、位相差フィルムは全面に配置されても、部分的に配置されてもよく、第二主面や第三主面と面する位相差フィルムの面の面積の合計が、第二主面や第三主面の面積と同等以下であることが好ましい。
また、必要に応じて複数の位相差フィルムを用いてもよく、異なる種類の位相差フィルムや、位相差フィルム以外のフィルムを組み合わせて用いるものでもよい。
上記の位相差フィルムを配置した車両用合わせガラスの辺を、X軸に沿うように配置することによりフロントガラスとしての車両用合わせガラスとすることができる。
【0060】
位相差フィルムとしては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差素子や、液晶ポリマーを特定方向に配向させて配向状態を固定化した位相差素子を用いることができる。
前者のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差素子としては、例えば、高分子樹脂を溶媒に溶解した後、ステンレスベルトやポリエチレンテレフタレート(PET)などの平滑な表面上に塗布し、溶媒を蒸発させた後にフィルムを巻き取る溶剤キャスト法や、高分子樹脂を押し出し機に入れて加熱溶融し、スリット(Tダイ)から押し出し冷却した後にフィルムを巻き取る溶融押出法などの方法により製膜したものを使用できる。延伸には一般的に延伸機が用いられ、縦、横、斜めなどに延伸された位相差フィルムを得ることができる。
後者の位相差素子としては、例えば、液晶ポリマーを配向処理したポリエチレンテレフタレート(PET)やトリアセチルセルロース(TAC)等の透明プラスチックフィルムなどの透明基板上に塗布し、熱処理、冷却して液晶配向を固定化したものを使用できる。
上記の液晶ポリマーの例としては、特定の方向に配向する際、ネマティック液晶、ねじれネマティック液晶、ディスコティック液晶、コレステリック液晶などの液晶性を示す化合物であれば特に限定されない。例えば、液晶状態でねじれネマティック配向し、液晶転移点以下ではガラス状態となるものは使用することができ、光学活性なポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマー、光学活性なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロート、ポリシロキサンなどの側鎖型液晶ポリマーなどが挙げられる。また、光学活性でないこれらの主鎖型あるいは側鎖型ポリマーに、他の低分子あるいは高分子の光学活性化合物を加えたポリマー組成物などを例示することができる。
第一のHUD装置、第二のHUD装置のそれぞれにおける位相差フィルムの役割については、後にそれぞれ説明する。
【0061】
[第一のHUD装置]
まず、第一のHUD装置を例にして本開示の第1実施形態の第1の態様に係るHUD装置について説明する。
図4は、本開示の第1実施形態の第1の態様に係る第一のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
図4では、投影光の光路は実線で示されている。
第一のHUD装置1において、投影部は
図3に示した車両用合わせガラス10である。
【0062】
図4に示す第一のHUD装置1では、映像部31から投影光60が照射される。
ここで、映像部31の発光点32、第一主面111で投影光60が反射する反射点33、視認者35の視点34の3点を含む平面が入射面である。
【0063】
映像部31から照射された投影光60は、振動方向が限定される必要はないが、振動方向が入射面と平行であるP偏光の光だと、偏光部81を通過する光の量が多くなり、第一主面へ到達する光の量を多く出来るため好ましい。
車両において、映像部31は車両のダッシュボード等に配置することが好ましい。
映像部31から投影光60を照射する向きを変えたり、映像部31の位置を動かすことによって、投影光60を照射する位置を移動させることができる。
【0064】
映像部31と投影部(車両用合わせガラス10)の間には偏光部81が設けられている。偏光部81は、透過した投影光60の振動方向が特定方向となる透過軸を有する部材であり、例えば、公知の偏光板等を用いることができる。
上記の偏光板は上記の特定方向と垂直方向に振動する光を吸収する吸収軸を有するのが望ましい。上記のような透過軸及び吸収軸を有すると、例えば透過軸及び吸収軸のどちらにも沿わない方向に振動する光が入射した際、透過後の光の振動方向を上記特定方向とすることが容易となる。
偏光部81は、投影光60が投影部に到達するより前に、当該偏光部81を通過可能な位置に配置されていればよい。例えば、車両において、偏光部81は上記の映像部31と同様にダッシュボードの中に配置され、光源からの光が迅速に偏光部81を透過するように、光源と隣接して配置されることが好ましい。
【0065】
第一のHUD装置1において、偏光部81は、入射面と平行な方向に振動する光を透過させる。すなわち、偏光部81を透過した後の投影光61はP偏光となる。
【0066】
偏光部81を透過した後の投影光61がP偏光である場合、偏光サングラス越しで虚像を観察する、サングラスモードでも使用することができる。また、
図4では偏光サングラス36を用いているが、当然裸眼でも虚像を観察可能である。まず、映像部31から出射された投影光60は、偏光部81を透過することで、P偏光の投影光61として第四主面124に照射される。この時の角度はブリュースター角が望ましい。一般的に、ブリュースター角で入射したP偏光は反射を生じない為、二重像の原因となる第四主面124での反射を抑制することが可能となる。
映像部は、投影光61が第四主面124に照射されるときの角度がブリュースター角となるように、X軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
次に、投影部内を進行した投影光61は、位相差フィルム100に入射されると振動方向が変わる。
第一のHUD装置1においては、第四主面以外のいずれかの面で反射が生じればよいので、位相差フィルム100として1/2波長フィルム(半波長フィルム)や、1/4波長フィルム等を用いることが可能である。
位相差フィルム100を通過した後の光の振動方向は、位相差フィルムの種類や光軸の向きによって様々だが、例えば、位相差フィルムとして1/2波長フィルムを用いている場合は、投影面に入射する投影光の振動方向と、位相差フィルムの光軸とがなす角度をdθとしたとき、投影光の振動方向を2dθ回転させた方向になる。
次に、上記の投影光が第一主面111へ到達すると、反射して反射像を形成する。この時、反射光としてS偏光が反射され、反射しなかった他の光は第一主面111を通過し、室外側へ放出される。
次に、第一主面111で形成された反射像は、再度、位相差フィルム100を通過し、P偏光になる。視認者35は、第一主面111での反射像に基づく光路62の延長上にある虚像621を視認する。
この虚像621はP偏光からなるので、視認者35は偏光サングラス36越しでも、虚像621を視認することができる。
この場合、視認者は、第一ガラス板の室外側面(すなわち第一主面)に形成された反射像に基づく虚像を観察することになる。
【0067】
また、第一主面111へ到達する前に光を反射させる反射用の層がある場合は、当該層で反射が生じる。その場合、反射しなかった光が第一主面111へ到達し、更なる反射が生じると、この反射が二重像の原因となってしまう場合がある。その為、第一主面111へ到達する前に反射が生じる場合は、第一主面111へ到達する前に、再度P偏光となるように光の振動方向を変えることが好ましい。
このような場合も含めると、視認者は、第二ガラス板の室内側面以外に形成された反射像に基づく虚像を観察するようにすることが好ましい。「第二ガラス板の室内側面以外に形成された反射像」には、「第一ガラス板の室外側面に形成された反射像」も含む。
【0068】
また、第一のHUD装置において、偏光部81は可動であり、偏光部81を透過させる光の振動方向を変えることができることが好ましい。
偏光部81が可動であると、入射面が変化した場合に、偏光部81が動くことによって、上記特定方向を入射面と平行な方向に合わせることができる。当該特定方向を入射面と平行な方向に合わせることによって、P-HUD方式のHUD装置として好適に使用することができる。
【0069】
[第二のHUD装置]
次に、第二のHUD装置を例にして本開示の第1実施形態の第2の態様に係るHUD装置について説明する。
図5は、本開示の第1実施形態の第2の態様に係る第二のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
図5では、投影光の光路は実線で示されている。
第二のHUD装置2において、投影部は
図3に示した車両用合わせガラス10である。
【0070】
映像部31と投影部(車両用合わせガラス10)の間には偏光部82が設けられている。偏光部82は、投影光に含まれる特定方向に振動する光を透過させる透過軸を有する部材であり、例えば、公知の偏光板等を用いることができる。
偏光部82は、投影光40が投影部に到達するより前に、当該偏光部82を通過可能な位置に配置されていればよい。例えば、車両において、偏光部82は上記の映像部31と同様にダッシュボードの中に配置され、光源からの光が迅速に偏光部82を透過するように、光源と隣接して配置されることが好ましい。
【0071】
第二のHUD装置2において、偏光部82は、投影光40に含まれる特定方向に振動する光を透過させる。
【0072】
第二のHUD装置2では、映像部31から投影光40が照射される。
投影光40が偏光部82を透過した後の投影光41が第四主面124に照射され、第四主面124には反射像が形成される。視認者35は第四主面124に形成された反射像に基づく光路42の延長上にある虚像421を観察する。
【0073】
映像部31の発光点32、第四主面124で投影光41が反射する反射点33、視認者35の視点34の3点を含む平面が入射面である。
【0074】
映像部31から照射された投影光40は、光の振動方向が特に限定されるものではないが、偏光部82を透過する特定方向に振動する光の量を多くする目的で、偏光部82の透過軸に平行な方向に振動する光を含むことが望ましい。
特定方向に振動する投影光は、第二ガラス板を透過する透過光及び第二ガラス板の室内側面で反射する反射光となるものである。偏光部を透過した特定方向に振動する投影光の振動方向は、第二ガラス板を透過後に下記する振動方向θαとなる。
【0075】
車両において、映像部31は車両のダッシュボードに配置することが好ましい。
映像部31から投影光40を照射する向きを変えたり、映像部31の位置を動かすことによって、投影光40を照射する位置を移動させることができる。
【0076】
偏光部82を透過した後の投影光41の一部が第四主面124で反射せずに、第四主面124を透過すると、投影部内を進行した投影光41の振動方向が、位相差フィルム100を通過することで変化する。
位相差フィルム100が投影面においてX軸に対してθr傾いた光軸を有していて、第二ガラス板12を透過し、投影面に入射する投影光41の振動方向θαが、投影面におけるX軸に対する入射面の角度をθpとした場合に投影面において2θr-θpの方向となっていると、位相差フィルム100を通過することによって、投影光の振動方向が前述したように2dθ回転し、入射面と平行な方向、すなわちP偏光と同様の振動方向になる。
投影光41の振動方向の変化については、図面を参照して以下に説明する。
【0077】
図6は、第二のHUD装置において、位相差フィルム100へ入射させる光の振動方向を説明するための模式図である。また、
図6は視認者が前方(第四主面側から第一主面側を見た方向)を見た場合を示す。
図6ではX軸を0°として示している。
X軸に対する位相差フィルムの光軸の角度がθ
rである。ここでは、θ
rを45°で示している。
P偏光の振動方向は入射面に対して平行な方向であり、S偏光の振動方向は入射面に対して垂直な方向である。
投影光41の振動方向と位相差フィルムの光軸のなす角度をdθとする。投影光41が位相差フィルムを通過すると、投影光の振動方向が2dθ回転する。すなわち、投影光41の振動方向が図面において時計回り又は反時計回りに2dθ回転する。この回転により、投影光41の振動方向が入射面に平行になるようにする。
このような条件を満たす場合に、投影光41が位相差フィルムを通過することによってP偏光に変化することになる。
【0078】
この条件を満たすような投影面に入射する投影光振動方向をθ
αと置く。
θ
αは以下のようにして求められる。
X軸に対する入射面の角度が、
図6においてθ
pで示される角度である。
図6より、dθ=θ
p-θ
rである。・・・式(1)
図6より、θ
α=θ
r-dθである。・・・式(2)
上記式(1)、式(2)より、θ
α=2θ
r-θ
p
となる。
上記式(1)が+の場合は
図6において反時計回りに振動方向が回転し、-の場合は時計回りに回転する。
すなわち、θ
α=2θ
r-θ
pを満たす投影光41を位相差フィルムに入射させると、位相差フィルムを通過した後の光の振動方向が入射面と平行な方向になる。
投影光を位相差フィルム100に入射させる前に、投影光の振動方向θ
αをθ
α=2θ
r-θ
pを満たすようにすることにより、二重像の原因となる他の振動方向の光が位相差フィルムに入射しないようにしている。
【0079】
位相差フィルム100を通過してP偏光となった投影光は、第一主面111で反射が生じることなく、投影光はP偏光のまま室外側へ放出される。
このように、第四主面124で反射しなかった投影光について、第一主面111での反射を抑制することができれば、二重像の発生が抑制される。
【0080】
また、第二のHUD装置において、偏光部82は可動であり、偏光部82を透過させる光の振動方向を変えることができることが好ましい。
偏光部82が可動であると、入射面が変化した場合に、偏光部82が動くことによって、偏光部82を透過した光の振動方向を変化させることができ、投影面に入射する投影光の振動方向θαをθα=2θr-θpを満たす方向に合わせることができる。偏光部82が可動であることによって、投影位置を変えても投影面に入射する投影光の振動方向θαをθα=2θr-θpを満たす方向に合わせやすくなる為、S-HUD方式のHUD装置として好適に使用することができる。
【0081】
[偏光部の透過軸の向きの例]
続いて、第一のHUD装置、第二のHUD装置のそれぞれにおける偏光部の透過軸の向きの例について説明する。なお、本開示のHUD装置は以下に挙げる例に限定されるものではない。
以下の例では、視認者は右ハンドル車の運転者の位置に着座している。
視認者の正面が視認者正面領域であり、X軸方向のいずれかの方向に沿って、視認者正面領域よりも遠くなる領域を視認者斜め前方領域とする。
【0082】
図7は、第一のHUD装置における、視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の向きの関係の一例を模式的に示す図である。
図7において、視認者35は右ハンドル車の運転者の位置に着座している。
図7には、視認者35の左側の視認者斜め前方領域に投影した像621Lと、像621Lを見る場合に使用する偏光部81Lの透過軸の向きを示している。また、視認者の右側の視認者斜め前方領域に投影した像621Rと、像621Rを見る場合に使用する偏光部81Rの透過軸の向きを示している。
【0083】
視認者がそれぞれの像を見る場合に、偏光部の透過軸の向きを調整する。
図7における偏光部の透過軸の向きは、視認者正面領域であればZ軸に沿った向きであり、この場合を基準線として偏光部81L、偏光部81Rの中に点線で示している。
これに対して、偏光部81L、偏光部81Rの透過軸は、偏光部81L、偏光部81Rの中に示す実線である。
図7の場合、例えば、視認者の左側に設ける偏光部81Lでは透過軸を、X-Z面に沿った面上で反時計回りに回転させる。一方、視認者の右側に設ける偏光部81Rでは透過軸を時計回りに回転させる。透過軸を回転させる角度は二重像が最も低減されるような角度に調整すればよい。また、透過軸が入射面と平行な方向になるように調整するのが好ましい。
なお、
図7では透過軸がZ軸上にある為、Z軸方向に沿った向きを基準としているが、
図8のように透過軸がX軸上にある場合はX軸に沿った向きを基準とする。
【0084】
図8は、第二のHUD装置における、視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の向きの関係の一例を模式的に示す図である。
図8において、視認者35は右ハンドル車の運転者の位置に着座している。
図8には、視認者35の左側の視認者斜め前方領域に投影した像421Lと、像421Lを見る場合に使用する偏光部82Lの透過軸の向きを示している。また、視認者の右側の視認者斜め前方領域に投影した像421Rと、像421Rを見る場合に使用する偏光部82Rの透過軸の向きを示している。
【0085】
視認者がそれぞれの像を見る場合に、偏光部の透過軸の向きを調整する。
図8における偏光部の透過軸の向きは、視認者正面領域であればX軸に沿った向きであり、この場合を基準線として偏光部82L、偏光部82Rの中に点線で示している。
これに対して、偏光部82L、偏光部82Rの透過軸は、偏光部82L、偏光部82Rの中に示す実線である。
図8の場合、例えば、視認者の左側に設ける偏光部82Lでは透過軸を、X-Z面に沿った面上で時計回りに回転させる。一方、視認者の右側に設ける偏光部82Rでは透過軸を反時計回りに回転させる。
透過軸を回転させる角度は二重像が最も低減されるような角度に調整すればよい。
【0086】
なお、
図7及び
図8には位相差フィルムの光軸が45°の場合の例を示しているが、光軸の角度によっては、透過軸を回転させる方向を前述した方向と逆にした方が、二重像をより抑制できることがある。
【0087】
[任意形態]
前述したHUD装置は、特に自動車のフロントガラスに映像を投影する際に適したものであるが、当然、自動車のサイドガラス等に映像を投影してもよい。サイドガラスに映像を投影する場合は、サイドガラスに位相差フィルムを配置し、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向と直交する方向をY軸、地面と水平かつ上記移動体が前進する時の進行方向をX軸として、その他はフロントガラスの場合と同様に投影光を照射すればよい。
【0088】
[視認者が複数名である場合の例]
本開示の第1実施形態に係るHUD装置は、視認者が複数名である場合に、フロントガラス面の中央領域に表示された像を複数名の視認者が斜めから視認した場合に、いずれの視認者からみても二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置とすることができる。
以下に、視認者が、右ハンドル車の運転者の位置に着座する運転者と助手席に着座する同乗者の2名である場合の二重像の発生の抑制について説明する。
運転者、同乗者のそれぞれの正面がそれぞれの視認者の正面の視認者正面領域であり、X軸方向のいずれかの方向に沿って、視認者正面領域よりも遠くなる領域を視認者斜め前方領域とする。また、X軸方向及びZ軸方向に沿って、上記視認者正面領域に対して遠くなる領域も視認者斜め前方領域とする。
投影光は、運転者と同乗者のそれぞれの視認者正面領域の間であり、運転者と同乗者のそれぞれの視認者斜め前方領域に相当する領域である中央領域に投影される。
【0089】
図9は、第一のHUD装置において視認者が複数名である場合の視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の向きの関係の一例を模式的に示す図である。
図9に示す第一のHUD装置1において、視認者である運転者35D、同乗者35Pは、中央領域に投影された像621Cを視認する。
なお、
図9では像621Cを1つ表示させているが、複数表示させてもよい。
【0090】
図9においては、運転者35D、同乗者35Pのそれぞれに対して映像部(図示省略)が設けられており、各映像部は、中央領域において像621Cが重なるように投影光を投影部(フロントガラス面)に照射する。
車両において、映像部は車両のダッシュボードに、複数の視認者に合わせて複数配置されることが好ましい。
また、運転者35D、同乗者35Pのそれぞれに対して、偏光部81D、偏光部81Pが設けられている。偏光部81D、偏光部81Pは運転者35D、同乗者35Pのそれぞれに対応する映像部と投影部の間に設けられる。
車両において、偏光部81D及び偏光部81Pは映像部と同様にダッシュボードの中に配置され、光源からの光が迅速に偏光部81D又は偏光部81Pを透過するように、光源と隣接して配置されることが好ましい。
【0091】
偏光部81Dは運転者35Dの入射面に平行な方向に振動する投影光を透過させる透過軸を有し、偏光部81Pは同乗者35Pの入射面に平行な方向に振動する投影光を透過させる透過軸を有する。
偏光部81Dの透過軸の向きと、偏光部81Pの透過軸の向きは異なっている。
具体的には、
図9における偏光部81Dの透過軸の向きは、視認者正面領域であればY-Z面に沿った向きであり、この場合を基準線として反時計回りに回転した方向である。偏光部81Pの透過軸の向きは、視認者正面領域であればY-Z面に沿った向きであり、この場合を基準線として時計回りに回転した方向である。
偏光部81Dの透過軸の向きと偏光部81Pの透過軸の向きが、視認者毎に設けられた入射面と投影面の位置の関係に合わせて調整される。このようにすることによって、フロントガラス面の中央領域に表示された像を複数名の視認者(運転者及び同乗者)が斜めから視認した場合に、いずれの視認者からみても二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置とすることができる。
【0092】
図10は、第二のHUD装置において視認者が複数名である場合の視認者、投影部の位置と偏光部の透過軸の向きの関係の一例を模式的に示す図である。
図10に示す第二のHUD装置2において、視認者である運転者35D、同乗者35Pは、中央領域に投影された像421Cを視認する。
【0093】
運転者35D、同乗者35Pのそれぞれに対して入射面が設けられている。
また、運転者35D、同乗者35Pのそれぞれに対して、偏光部82D、偏光部82Pが設けられている。
偏光部82Dは、位相差フィルムの光軸の角度をθ
rとし、投影面におけるX軸に対する、運転者35Dにとっての入射面の角度をθ
pとした場合に、偏光部82Dを透過して、投影面に入射する投影光の振動方向θ
αがθ
α=2θ
r-θ
pを満たすように設けられている。
また、偏光部82Pは、位相差フィルムの光軸の角度をθ
rとし、投影面におけるX軸に対する、同乗者35Pにとっての入射面の角度をθ
pとした場合に、偏光部82Pを透過して、投影面に入射する投影光の振動方向θ
αがθ
α=2θ
r-θ
pを満たすように設けられている。
偏光部82Dの透過軸の向きと、偏光部82Pの透過軸の向きは異なっている。
具体的には、
図10における偏光部82Dの透過軸の向きは、視認者正面領域であればX-Y面に沿った向きであり、この場合を基準線として時計回りに回転した方向である。偏光部82Pの透過軸の向きは、視認者正面領域であればX-Y面に沿った向きであり、この場合を基準線として反時計回りに回転した方向である。
偏光部82Dの透過軸の向きと偏光部82Pの透過軸の向きが、視認者毎に設けられた入射面と投影面の位置の関係に合わせて調整される。このようにすることによって、フロントガラス面の中央領域に表示された像を複数名の視認者(運転者及び同乗者)が斜めから視認した場合に、いずれの視認者からみても二重像の発生を抑制し得るヘッドアップディスプレイ装置とすることができる。
【0094】
[ヘッドアップディスプレイシステム(HUDシステム)]
本開示の第1実施形態に係るHUDシステムは、一つのシステムにおいて偏光部を透過させる光の振動方向を切り替えることができるようにしたシステムである。
そして、偏光部を透過させる光の振動方向を変えることによって、第一のHUD装置としても第二のHUD装置としても使用することができるようにしたシステムである。
具体的には以下の(A)及び(B)を切り替え可能である。
(A)上記第二ガラス板へ入射する光の振動方向を、上記入射面と平行な方向とする。
(B)上記位相差フィルムが、上記投影面に入射する上記投影光の振動方向θαと上記光軸とがなす角度をdθとした場合に、入射する上記投影光の振動方向を2dθ回転させるものであるとして、上記第二ガラス板を透過した光の振動方向を、上記投影面におけるX軸に対する上記入射面の角度をθpとした場合に上記投影面において2θr-θpの方向となるようにする。
上記(A)のようにした場合はP-HUDとなり、第一のHUD装置として使用することができる。
上記(B)のようにした場合はS-HUDとなり、第二のHUD装置として使用することができる。
【0095】
また、投影部において、投影光が投影される投影位置が変更可能であるようにしてもよい。
第一のHUD装置の場合、偏光部は、入射面と平行な特定方向に振動する光を透過させる透過軸を有している。
ここで、投影位置が変更になると、入射面が変更になる。
入射面が変更になった場合に偏光部の位置がそのままであると、偏光部を透過した光の振動方向が入射面と平行な方向からずれてしまう。そのため、偏光部を透過した後にP偏光ではない光の割合が高くなり、二重像が生じやすくなる。
そこで、投影位置が変更になった場合に、投影位置に合わせて偏光部を可動させて、偏光部を透過する投影光の振動方向を変えて、変更された入射面と平行な方向に振動する光を透過させるようにする。
これにより、投影位置が変更になった場合でも、二重像を抑制することができる。
【0096】
第二のHUD装置の場合でも同様であり、投影位置が変更されて入射面が変更されたことに合わせて、偏光部及び透過軸を可動させる。
具体的には、変更された投影面におけるX軸に対する変更された入射面の角度をθpとした場合に変更された投影面において2θr-θpの方向(位相差フィルムの光軸の角度がθr)となる光を透過させるようにする。
これにより、投影位置が変更になった場合でも、二重像を抑制することができる。
【0097】
(本開示の第1の実施形態に係る実施例)
視認者正面領域と視認者斜め前方領域のそれぞれにおいて、偏光部を透過させる光の振動方向を変化させた場合の二重像の発生の様子を比較する実験を行った。
まず、第一のHUD装置を使用した場合の実験結果を示す。
図11は、実施例及び比較例で使用した第一のHUD装置を模式的に示す配置図である。
図12は、実施例1における実験系を模式的に示す図であり、
図13は、比較例1における実験系を模式的に示す図である。
【0098】
図11に示すような第一のHUD装置を準備した。第一のHUD装置1は、P-HUD方式用の、150mm×150mmの正方形の投影部を有する。第一のHUD装置1内の位相差フィルムの光軸は45°とした。
図11に示すとおり、映像部31を水平に置き、車両用合わせガラス10を、映像部31に対して、ブリュースター角を形成する57°の位置関係で配置する。
映像部31の上に偏光部81としての偏光板を載置することにより、映像部31と車両用合わせガラス10の間に偏光部81を配置する。
映像部31から、垂直上方へ向けて、投影光を照射し、視認者35は、第一主面111での反射像に基づく光路の延長上にある虚像を観察する。
視認者の視点と車両用合わせガラスの高さは同じである。
映像部31としてはタブレットを使用し、タブレットから緑色格子像を表示する。タブレットの上に偏光板を載置して車両用合わせガラスの直下に配置する。
また、移動体の夜間での走行を模擬するために、視認者35が視認する方向で、車両用合わせガラス10の向こう側には、黒の背景板37が配置されている。
【0099】
図12及び
図13に示すように、観察点として視認者35の正面をX軸方向の位置0の地点として、左側に-200mm地点、-400mm地点を設けた。
なお、X軸方向の左側を「-」方向、右側を「+」方向としている。
実施例1では、
図12に示す通り、視認者正面領域(X軸方向の位置0の地点)では偏光部81の透過軸をY軸方向を基準線として0°としている。
図12及び
図13並びに後述する
図15及び
図16では、偏光部の位置はX-Y面での位置として示し、車両用合わせガラスの位置はX-Z面での位置として示している。
視認者斜め前方領域である-200mm地点、-400mm地点では偏光部81の透過軸を反時計回りに回転させた。回転角はそれぞれ+10°、+25°とした。回転角は反時計回り方向を+、時計回り方向を-としている。
上記実験は、視認者35の位置を固定して、150mm×150mmの正方形の投影部の位置をそれぞれX軸方向に-200mmずつずらし、さらに映像部をX軸方向に-200mmずつずらし、偏光部も投影部と映像部の間に配置されるように、同様にX軸方向に-200mmずつずらすことによって行った。
比較例1では、
図13に示す通り、すべての観察点で偏光部81の透過軸をY軸方向を基準線として0°とした。
【0100】
図14は、実施例1及び比較例1において視認される虚像を示す写真である。
それぞれ視認者からの距離が同じ位置で比較すると、実施例1において視認者斜め前方領域にあたる-200mm地点、-400mm地点において二重像の発生が抑制されていることが確認できた。
一方、比較例1ではこれらの地点で横方向及び縦方向に伸びる二重像が観察された。
【0101】
次に、第二のHUD装置を使用した場合の実験結果を示す。
実験系自体は
図11に示した第一のHUD装置と同様である。偏光部81に代えて第二のHUD装置で使用する偏光部82としての偏光板を用いている。また、視認者35は、第四主面124での反射像に基づく光路の延長上にある虚像を観察する。
図15は、実施例2における実験系を模式的に示す図であり、
図16は、比較例2における実験系を模式的に示す図である。
【0102】
図15及び
図16に示すように、観察点として視認者35の正面をX軸方向の位置0の地点として、左側に-200mm地点、-400mm地点を設けた。
なお、X軸方向の左側を「-」方向、右側を「+」方向としている。
実施例2では、
図15に示す通り、視認者正面領域(X軸方向の位置0の地点)では偏光部82の透過軸をX軸方向を基準線として0°としている。
視認者斜め前方領域である-200mm地点、-400mm地点では偏光部82の透過軸を時計回りに回転させた。回転角はそれぞれ-15°、-20°とした。回転角は反時計回り方向を+、時計回り方向を-としている。
上記実験は、視認者35の位置を固定して、150mm×150mmの正方形の投影部の位置をそれぞれX軸方向に-200mmずつずらし、さらに映像部をX軸方向に-200mmずつずらし、偏光部も投影部と映像部の間に配置されるように、同様にX軸方向に-200mmずつずらすことによって行った。
比較例2では、
図16に示す通り、すべての観察点で偏光部82の透過軸をX軸方向を基準線として0°とした。
【0103】
図17は、実施例2及び比較例2において視認される虚像を示す写真である。
それぞれ視認者からの距離が同じ位置で比較すると、実施例2において視認者斜め前方領域にあたる-200mm地点、-400mm地点において二重像の発生が抑制されていることが確認できた。
一方、比較例2ではこれらの地点で横方向及び縦方向に伸びる二重像が観察された。
【0104】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)、位相差フィルム、車両用合わせガラス及びヘッドアップディスプレイシステム(HUDシステム)について、それぞれ図面を用いて説明する。
【0105】
なお、本開示の第2実施形態に係るHUD装置としては、振動方向がX方向である投影光を照射する映像部を備えるHUD装置と、振動方向がYZ平面に平行な方向である投影光を照射する映像部を備えるHUD装置があり、それぞれを第三のHUD装置、第四のHUD装置ともいう。本開示の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の説明において、第三のHUD装置と第四のHUD装置を区別しないときは単に本開示の第2実施形態に係るHUD装置という。
また、本開示の第2実施形態に係るHUDシステムは、一つのシステムにおいて照射する投影光の種類を切り替えることによって第三のHUD装置としても第四のHUD装置としても使用することができるようにしたシステムである。
【0106】
また、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムは、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラス、HUD装置及びHUDシステムに使用可能な位相差フィルムである。また、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスは、本開示の第2実施形態に係るHUD装置及びHUDシステムに使用可能な車両用合わせガラスである。
【0107】
まず、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムについて説明し、次に本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスについて説明する。
続けて本開示の第2実施形態に係るHUD装置について説明し、最後に本開示の第2実施形態に係るHUDシステムについて説明する。
【0108】
[位相差フィルム]
本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムは、上下方向の縦軸及び左右方向の横軸を有する、一体物である位相差フィルムであって、縦軸に沿った複数の地点において、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は一定であり、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が一定傾向で変化することを特徴とする。
本開示の第2実施形態において、位相差フィルムの光軸とは、位相差フィルムにおける屈折率が最も大きい方向の軸を意味する。
また、本開示の第2実施形態における位相差フィルムは、1/2波長フィルム(半波長フィルム)である。
【0109】
図18は、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムの一例を模式的に示す図面である。
図18には、位相差フィルム201の各地点における位相差フィルムの光軸を模式的に示している。また、「横軸」と「縦軸」の向きを示している。
図18のP
1地点において、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は45°である。
なお、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は、2直線の交点で形成される角度のうち小さい方の角度として定める。位相差フィルムの光軸と横軸が平行の場合は、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は0°とする。
縦軸に沿った複数の地点であるP
1地点、P
2地点、P
3地点においてはいずれも位相差フィルムの光軸と横軸がなす角は一定であり、45°である。
【0110】
本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムでは、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が一定傾向で変化する。
図18には、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が連続的に変化する形態の位相差フィルムを示している。
【0111】
図18に示す位相差フィルム201には、P
1地点から横軸方向に沿って左側に位置する点であるN
1地点、O
1地点とP
1地点から横軸方向に沿って右側に位置する点であるQ
1地点、R
1地点を示している。
図18の左から右に向かう各地点で、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は、N
1地点では35°、O
1地点では40°、P
1地点では45°、Q
1地点では50°、R
1地点では55°となっており、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が一定傾向で変化していることがわかる。
また、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が連続的に変化していることから、例えばO
1地点とP
1地点の間では、
図18の左から右に向かう各地点で位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が40°から45°に向かって連続的に変化している。
【0112】
図19は、本開示の第2実施形態に係る他の位相差フィルムの一例を模式的に示す図面である。
図19には、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が非連続的に変化する形態の位相差フィルムを示している。
図19に示す位相差フィルム202には、その横軸方向中央付近に、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が45°であるp
1領域を示している。p
1領域の幅を位相差フィルム202の上に両矢印で示している。
このp
1領域においては、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角はすべて同じであり45°である。
【0113】
図19に示す位相差フィルム202には、p
1領域から横軸方向に沿って左側に位置する領域であるn
1領域、o
1領域とp
1領域から横軸方向に沿って右側に位置する領域であるq
1領域、r
1領域を示している。
各領域の境界は
図19中に点線で示している。
各領域内における位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角はすべて同じとなっている。
【0114】
図19の左から右に向かう各領域で、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は、n
1領域では35°、o
1領域では40°、p
1領域では45°、q
1領域では50°、r
1領域では55°となっており、横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が一定傾向で変化していることがわかる。
また、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角は各領域内では同じであることから、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が非連続的に変化することがわかる。
【0115】
なお、ここまでの説明では、位相差フィルムの光軸と横軸がなす角が45°である地点又は領域を有する位相差フィルムについて説明したが、位相差フィルムの光軸と横軸がなす角の具体的な値は上述した例の範囲に限定されるものではない。横軸方向に沿って、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が一定傾向で変化する位相差フィルムであれば本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムとなる。また、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が非連続的に変化する場合に、隣接する領域間で角度が変化する幅は5°に限定されるものではない。また、隣接する領域間で角度が変化する幅は一定でなくてもよい。
【0116】
位相差フィルムとしては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差素子や、液晶ポリマーを特定方向に配向させて配向状態を固定化した位相差素子を用いることができる。
前者のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差素子としては、例えば、高分子樹脂を溶媒に溶解した後、ステンレスベルトやポリエチレンテレフタレート(PET)などの平滑な表面上に塗布し、溶媒を蒸発させた後にフィルムを巻き取る溶剤キャスト法や、高分子樹脂を押し出し機に入れて加熱溶融し、スリット(Tダイ)から押し出し冷却した後にフィルムを巻き取る溶融押出法などの方法により製膜したものを使用できる。延伸には一般的に延伸機が用いられ、縦、横、斜めなどに延伸された位相差フィルムを得ることができる。
後者の位相差素子としては、例えば、液晶ポリマーを配向処理したポリエチレンテレフタレート(PET)やトリアセチルセルロース(TAC)等の透明プラスチックフィルムなどの透明基板上に塗布し、熱処理、冷却して液晶配向を固定化したものを使用できる。
上記の液晶ポリマーの例としては、特定の方向に配向する際、ネマティック液晶、ねじれネマティック液晶、ディスコティック液晶、コレステリック液晶などの液晶性を示す化合物であれば特に限定されない。例えば、液晶状態でねじれネマティック配向し、液晶転移点以下ではガラス状態となるものは使用することができ、光学活性なポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマー、光学活性なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロート、ポリシロキサンなどの側鎖型液晶ポリマーなどが挙げられる。また、光学活性でないこれらの主鎖型あるいは側鎖型ポリマーに、他の低分子あるいは高分子の光学活性化合物を加えたポリマー組成物などを例示することができる。
【0117】
配向処理する方法としては、例えば、透明基板となるプラスチックフィルムの表面をラビング処理する方法や、ガラス板やプラスチックフィルム上にポリイミドなどの有機薄膜(配向膜)を形成し、上記配向膜をラビング処理又は光配向処理する方法等が挙げられる。ラビング処理としては、ナイロンやレーヨンなどのラビング布でプラスチックフィルムや配向膜の表面を擦る方法が適用できる。
液晶ポリマーの塗布方法としては、スピンコート、ダイコート、スプレーコート、カレンダーコート、グラビアコートなど、一般的に知られている方法を用いることができる。
また、位相差フィルムの光軸と横軸とがなす角が非連続的に変化する位相差フィルムは、複数の位相差フィルムを領域ごとに位相差フィルムの光軸が異なるように傾けて積層、又は、貼り合わせることによって作製してもよい。
【0118】
図18に示す位相差フィルム201、
図19に示す位相差フィルム202は、いずれも本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラス、本開示の第2実施形態に係るHUD装置、本開示の第2実施形態に係るHUDシステムを得るために使用することができる。
すなわち、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムを使用することによって、フロントガラス面の横方向に広い表示領域を有するHUD装置を提供することができる。
【0119】
[車両用合わせガラス]
本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスは、第一ガラス板と、第二ガラス板と、第一ガラス板と第二ガラス板との間に配置される位相差フィルムと、を備える車両用合わせガラスであって、位相差フィルムが、本開示の第2実施形態に係る位相差フィルムであることを特徴とする。
【0120】
図20は、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスの一例を模式的に示す分解斜視図である。
第一ガラス板は、室外側に露出される第一主面と、第一主面の反対側の第二主面とを備える。
また、第二ガラス板は、室内側に露出される第四主面と、第四主面の反対側の第三主面とを備える。
図20には車両用合わせガラス210を示している。
図20には図面の手前側に第二ガラス板12を配置した図を示しており、手前側に見える面が第四主面124である。第四主面124の反対側の面が第三主面123である。
図面の奥側に第一ガラス板11を配置しており、手前側に見える面が第二主面112である。第二主面112の反対側の面が第一主面111である。
第一ガラス板11と第二ガラス板12との間に、
図18で説明した位相差フィルム201が配置されている。
第四主面124は室内側に露出される面であるので、車両に車両用合わせガラスを配置した際に視認者が直接視認する面になる。すなわち、
図20には視認者が車内から直接視認する位置関係を示している。
【0121】
この車両用合わせガラス210は右ハンドル車用の車両用合わせガラスであり、HUD像を視認する視認者は運転者である。位相差フィルムにおける光軸と横軸がなす角が45°となる地点が右ハンドル車において運転者である視認者の正面となるように、位相差フィルム201の位置が定められている。
また、視認者の左側で光軸と横軸がなす角が45°より小さくなっており、視認者の右側で光軸と横軸がなす角が45°より大きくなっている。
【0122】
図20には、視認者の正面において光軸が右上がりになっていて光軸と横軸がなす角が45°となっている場合を示しているが、視認者の正面において光軸が左上がりになっていて光軸と横軸がなす角が45°となっていてもよい。視認者の正面において光軸が左上がりになっている場合、視認者の左側で光軸と横軸がなす角が45°より大きくなり、視認者の右側で光軸と横軸がなす角が45°より小さくなる。
なお、光軸が左上がりになっている場合に光軸と横軸がなす角については、光軸が右上がりになっている場合と同じ角度の取り方では角度が鈍角となるので、当該鈍角の補角となる鋭角の値を指すものとする。
【0123】
車両用合わせガラスにおいては、第一ガラス板と、第二ガラス板とが、中間膜を介して接合され、一体構造となっていることが好ましい。中間膜は、中間膜を構成するポリマーが軟化する温度で、加熱することで、第一ガラス板と、第二ガラス板とを合わせ化するもので、ポリマーとして、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を使用することができる。なお、中間膜は複数の樹脂層で構成されていても良い。
【0124】
位相差フィルムは、第一ガラス板と第二ガラス板との間に配置される。
位相差フィルムは中間膜の内部に配置されていてもよいし、第一ガラス板に接する位置に配置されていてもよいし、第二ガラス板に接する位置に配置されていてもよい。
第一ガラス板及び第二ガラス板の横方向と位相差フィルムの横軸方向を揃えて配置することによりフロントガラスとしての車両用合わせガラスとすることができる。
【0125】
車両用合わせガラスを構成するガラス材料としては、平板状のガラス板が湾曲形状に加工されたものを好適に使用することができる。ガラス板の材質としては、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰珪酸塩ガラスの他、アルミノシリケートガラスやホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等の公知のガラス組成のものを使用することができる。第一ガラス板、第二ガラス板の、それぞれの厚みは、例えば、0.4mm~3mmとしてもよい。また、第一ガラス板と、第二ガラス板との間隔は、0.05mm~1mmとしてもよい。
【0126】
図20には、
図18で説明した位相差フィルム201が配置された車両用合わせガラスを示したが、位相差フィルムとして
図19で説明した位相差フィルム202を用いた車両用合わせガラスも、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスである。
【0127】
本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスは、本開示の第2実施形態に係るHUD装置、本開示の第2実施形態に係るHUDシステムを得るために使用することができる。すなわち、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスを使用することによって、フロントガラス面の横方向に広い表示領域を有するHUD装置を提供することができる。
【0128】
また、フロントガラス同様に、サイドガラスに上記の車両用合わせガラスを用いることによって、HUD像が表示される領域を拡大してもよい。この時の投影光が投影される投影部は、視認者の真横よりも前方とするのが好ましい。
【0129】
[ヘッドアップディスプレイ装置(HUD装置)]
本開示の第2実施形態に係るHUD装置には、第三のHUD装置と第四のHUD装置の2種類がある。まず、両方のHUD装置に共通の事項であるX軸、Y軸及びZ軸の定義及び移動体の定義並びに移動体の例示は、本開示の第1実施形態に係るHUD装置及び移動体と同様である。
【0130】
HUD装置に使用する車両用合わせガラスとしては、本開示の第2実施形態に係る車両用合わせガラスを使用することができる。
【0131】
[第三のHUD装置]
第三のHUD装置は、第二ガラス板の第四主面に形成された反射像を虚像として観察する装置であり、S-HUD方式のHUD装置である。
図21は、本開示の第2実施形態の第1の態様に係る第三のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
この模式図では、視認者を運転者とし、視認者の正面である視認者正面領域における断面の模式図を示している。また、紙面に垂直な方向がX軸である。
図21では、投影光の光路は実線で示されている。
第三のHUD装置3において、投影部は車両用合わせガラス210であり、車両用合わせガラス210は、移動体である車両の室外側に配置される第一ガラス板11と、車両の室内側に配置される第二ガラス板12とを備えている。
第一ガラス板11は、室外側に露出される第一主面111と、第一主面111の反対側の第二主面112とを備える。
また、第二ガラス板12は、室内側に露出される第四主面124と、第四主面124の反対側の第三主面123とを備える。
第一ガラス板11と第二ガラス板12との間には位相差フィルム201が配置されている。
【0132】
投影光240は、映像部31から第四主面124に照射され、第四主面124には反射像が形成される。視認者35は第四主面124に形成された反射像に基づく光路241の延長上にある虚像412を観察する。
【0133】
第三のHUD装置3では、映像部31から振動方向がX軸方向である投影光240が照射される。
ここで、映像部31の発光点32、第四主面124で投影光240が反射する反射点33、視認者35の視点34の3点を含む平面が入射面である。
図21では紙面が入射面とほぼ同じ面に相当する。
振動方向が入射面に対して垂直となる光がS偏光の光である。入射面がX軸に対して垂直になる場合、当該入射面に対して振動方向がX軸方向である投影光を入射すると、当該投影光はS偏光となる。
【0134】
投影光がS偏光である場合に、第四主面124を透過し、投影部内を進行した投影光は、位相差フィルム201を通過することで、P偏光に変換され、第一主面111で反射が生じることなく、投影光はP偏光のまま室外側へ放出される。
このように第一主面111での反射を抑制することができれば、二重像の発生が抑制される。
【0135】
視認者が視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、視認者正面領域に配置される位相差フィルムは、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°となっている。
X軸に沿った振動方向を有するS偏光が透過する位相差フィルム201の光軸がX軸に対して45°±5°であればS偏光がP偏光に変換される割合が多いことになる。視認者正面領域においては入射面がX軸と垂直になり、投影光がS偏光となるのでこれに対応する位相差フィルムの光軸をX軸に対して45°±5°としておくことで二重像の発生を抑制できる。
【0136】
次に、視認者が、X軸方向のいずれかの方向に沿って、視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合について説明する。
視認者が視認者斜め前方領域を見る場合、視認者が視認者正面領域を見る場合と入射面が異なる。投影光の振動方向はX軸方向のままであるので、入射面に対する投影光の振動方向(X軸)は垂直方向からずれてしまい、投影光はS偏光とP偏光の混合光となり、視認者正面領域から遠くなるほどにP偏光成分の割合が高くなる。
このような混合光に対して、位相差フィルムの光軸をX軸に対して45°±5°のままにしておくと位相差フィルムを通過した後の投影光に占めるP偏光の割合が少なくなり、S偏光の割合が高くなってしまう。
そこで、視認者が視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、視認者斜め前方領域に配置される位相差フィルムにつき、位相差フィルムの光軸をX軸に対して45°±5°からずらすことによって、S偏光とP偏光の混合光が位相差フィルムを通過した後にP偏光となる成分の割合を増やし、二重像の発生を抑制する。
【0137】
視認者正面領域、視認者斜め前方領域のいずれにおいても、投影光を位相差フィルムへ入射させることによって、投影光の振動方向を入射面に対して平行方向へ変換するようにする。振動方向が入射面に対して平行方向となる光がP偏光である。
位相差フィルムを通過した後の投影光がP偏光であると第一主面で反射が生じることなく、投影光はP偏光のまま室外側へ放出される。従って視認者正面領域、視認者斜め前方領域のいずれにおいても二重像の発生が抑制されて、フロントガラス面の横方向にHUDの表示領域を拡大した場合においても、二重像の発生を抑制し得るHUD装置となる。
【0138】
図22は、右ハンドル車における運転者が視認者である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
図22には、HUD装置を構成する車両用合わせガラス210のみを示しており、車両用合わせガラス210を構成する位相差フィルムの光軸の方向も模式的に示している。
右ハンドル車においては車両用合わせガラス210の図面右側が視認者35の正面にあたるのでこの部分に視認者正面領域250を設ける。視認者正面領域250では位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°である。
X軸方向の右方向に沿って視認者正面領域250に対して遠くなる領域が右側周辺領域251である。一方、X軸方向の左方向に沿って視認者正面領域250に対して遠くなる領域が左側周辺領域252である。
右側周辺領域251では位相差フィルムの光軸がX軸に対して50°よりも大きくなる方向にずれている。一方、左側周辺領域252では位相差フィルムの光軸がX軸に対して40°よりも小さくなる方向にずれている。
すなわち、右側周辺領域と左側周辺領域では、位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対である。
なお、左ハンドル車において助手席に乗車する乗員が視認者である場合も同じである。
【0139】
図23は、左ハンドル車における視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
左ハンドル車においては車両用合わせガラス210の図面左側が視認者35の正面にあたるのでこの部分に視認者正面領域250を設ける。視認者正面領域250では位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°である。
図22に示す形態と同様に、X軸方向の右方向に沿って視認者正面領域250に対して遠くなる領域が右側周辺領域251であり、X軸方向の左方向に沿って視認者正面領域250に対して遠くなる領域が左側周辺領域252である。
右側周辺領域251では位相差フィルムの光軸がX軸に対して50°よりも大きくなる方向にずれている。一方、左側周辺領域252では位相差フィルムの光軸がX軸に対して40°よりも小さくなる方向にずれている。
すなわち、右側周辺領域と左側周辺領域では、位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対である。
なお、右ハンドル車において助手席に乗車する乗員が視認者である場合も同じである。
【0140】
図24は、右ハンドル車における運転者が視認者である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
図22に示す態様とは、位相差フィルムの光軸の方向が異なる。
図22に示す態様では視認者の正面において光軸が右上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっているが、
図24に示す態様では視認者の正面において光軸が左上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっている。
右側周辺領域251では位相差フィルムの光軸がX軸に対して40°よりも小さくなる方向にずれている。一方、左側周辺領域252では位相差フィルムの光軸がX軸に対して50°よりも大きくなる方向にずれている。
すなわち、右側周辺領域と左側周辺領域では、位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対である。
なお、左ハンドル車において助手席に乗車する乗員が視認者である場合も同じである。
【0141】
図25は、左ハンドル車における運転者が視認者である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
図23に示す態様とは、位相差フィルムの光軸の方向が異なる。
図23に示す態様では視認者の正面において光軸が右上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっているが、
図25に示す態様では視認者の正面において光軸が左上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっている。
右側周辺領域251では位相差フィルムの光軸がX軸に対して40°よりも小さくなる方向にずれている。一方、左側周辺領域252では位相差フィルムの光軸がX軸に対して50°よりも大きくなる方向にずれている。
すなわち、右側周辺領域と左側周辺領域では、位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°からずれる方向の向きが反対である。
なお、右ハンドル車において助手席に乗車する乗員が視認者である場合も同じである。
【0142】
図26は、視認者が運転者と助手席の乗員の2名である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置を模式的に示す図である。
この態様では、運転者と助手席の乗員の2名のそれぞれに異なる像を視認させる。
各視認者に対して視認者正面領域と視認者斜め前方領域で位相差フィルムの光軸とX軸のなす角が最適化されるようにする。
視認者が運転者と助手席の乗員の2名である場合、
図26の右側に示す運転者としての視認者35に対して視認者正面領域250が設けられ、X軸方向の右方向に沿って視認者正面領域250に対して遠くなる領域に右側周辺領域251が設けられている。
また、
図26の左側に示す助手席の乗員としての視認者35´に対して視認者正面領域250´が設けられ、X軸方向の左方向に沿って視認者正面領域250´に対して遠くなる領域に左側周辺領域252´が設けられている。
なお、
図26は運転席が右側、助手席が左側の右ハンドル車を想定しているが、運転席が左側、助手席が右側の左ハンドル車でも同じである。
【0143】
図26に示す態様では、運転者としての視認者35に対する左側周辺領域、助手席の乗員である視認者35´に対する右側周辺領域は設けられていないが、運転者としての視認者35に対する投影部、助手席の乗員である視認者35´に対する投影部の配置によっては、これらの領域を設けてもよい。
また、それぞれの視認者から投影光を視認可能なように、
図20に示したような位相差フィルムを複数枚組み合わせて用いてもよい。
【0144】
図27は、視認者が運転者と助手席の乗員の2名である場合の視認者正面領域及び視認者斜め前方領域の位置の別の態様を模式的に示す図である。
図26に示す態様とは、位相差フィルムの光軸の方向が異なる。
図26に示す態様では視認者の正面において光軸が右上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっているが、
図27に示す態様では視認者の正面において光軸が左上がりとなっていて光軸と横軸がなす角が45°となっている。
運転者としての視認者35に対する右側周辺領域251では位相差フィルムの光軸がX軸に対して40°よりも小さくなる方向にずれている。一方、助手席の乗員としての視認者35´に対する左側周辺領域252´では位相差フィルムの光軸がX軸に対して50°よりも大きくなる方向にずれている。
【0145】
視認者斜め前方領域は、視認者の横に配置されるサイドガラスにおける、視認者の斜め前の領域に拡張してもよく、投影部をサイドガラスに拡張してもよい。
図28は、投影部をサイドガラスにも拡張した態様を模式的に示す図である。
図28には、車両用合わせガラス210の右側に配置されるサイドガラス270を示している。視認者は、右側のサイドガラス270に投影された投影光を視認することができる。
サイドガラス270において投影光が投影される領域を右側拡張領域271とする。
右側拡張領域271でも、視認者正面領域の右側周辺領域において位相差フィルムの光軸の角度が変化していく。
視認者斜め前方領域をサイドガラスに拡張した拡張領域でも同様の思想によって二重像の発生を抑制することができる。
【0146】
[第四のHUD装置]
第四のHUD装置は、第一ガラス板の第一主面に形成された反射像を虚像として観察する装置であり、P-HUD方式のHUD装置である。
図29は、本開示の第2実施形態の第2の態様に係る第四のHUD装置の概略と、該装置での光路を示す模式図である。
この模式図では、視認者を運転者とし、視認者の正面である視認者正面領域における断面の模式図を示している。また、紙面がYZ平面と平行な面である。
図29では、投影光の光路は実線で示されている。
第四のHUD装置4において、投影部は車両用合わせガラス210であり、車両用合わせガラス210は、移動体である車両の室外側に配置される第一ガラス板11と、車両の室内側に配置される第二ガラス板12とを備えている。
第一ガラス板11は、室外側に露出される第一主面111と、第一主面111の反対側の第二主面112とを備える。
また、第二ガラス板12は、室内側に露出される第四主面124と、第四主面124の反対側の第三主面123とを備える。
第一ガラス板11と第二ガラス板12との間には位相差フィルム201が配置されている。
【0147】
第四のHUD装置4では、映像部31から振動方向がYZ平面に平行な方向である投影光260が照射される。
ここで、映像部31の発光点32、第一主面111で投影光260が反射する反射点33、視認者35の視点34の3点を含む平面が入射面である。
図29では紙面が入射面とほぼ同じ面に相当する。
振動方向が入射面と平行になる光がP偏光の光である。入射面がYZ平面に平行になる場合、当該入射面に対して振動方向がYZ平面に平行な方向である投影光を入射すると、当該投影光はP偏光となる。
【0148】
投影光260がP偏光である場合、偏光サングラス越しで虚像を観察する、サングラスモードでも使用することができる。
投影光260は、映像部31から第四主面124に照射され、投影部内を進行した投影光は、位相差フィルム201で、S偏光に変換され、第一主面111で反射像を形成しつつ、反射しなかった一部のS偏光は第一主面111を通過し、S偏光のまま室外側へ放出される。
第一主面111で形成された反射像は、再度、位相差フィルム201を通過し、P偏光に変換される。視認者35は、第一主面111での反射像に基づく光路261の延長上にある虚像612を視認する。
この虚像612はP偏光からなるので、視認者35は偏光サングラス36越しでも、虚像を視認することができる。
【0149】
なお、第四主面124では反射像は形成されないか、反射像が少し形成される。第四主面124で形成された反射像の強度が第一主面111での反射像と比較して相対的に強い場合は、第四主面124で形成された反射像が二重像として観察される。
【0150】
視認者が視認者正面領域に形成された反射像を見る場合に、視認者正面領域に配置される位相差フィルムは、第四主面との平行面において位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°±5°となっている。
視認者正面領域では投影光は殆どP偏光となる。視認者正面領域においてP偏光が透過する位相差フィルム201の光軸がX軸に対して45°±5°であればP偏光がS偏光に変換される割合が多いことになる。
位相差フィルムに入射された投影光(P偏光)がS偏光に変換される効率が高ければ、第一ガラス板の第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示が強くなる。そのため、相対的に第四主面で形成された反射像の影響が弱くなって、二重像の発生が抑制される。
【0151】
次に、視認者が、X軸方向のいずれかの方向に沿って、視認者正面領域に対して遠くなる領域である視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合について説明する。
視認者が視認者斜め前方領域を見る場合、視認者が視認者正面領域を見る場合と入射面が異なる。投影光の振動方向はYZ平面に平行な方向のままであるので、入射面に対する投影光の振動方向(YZ平面に平行な方向)は平行方向からずれてしまい、投影光はS偏光とP偏光の混合光となり、視認者正面領域から遠くなるほどにS偏光成分の割合が高くなる。
このような混合光に対して、位相差フィルムの光軸をX軸に対して45°±5°のままにしておくと位相差フィルムを通過した後の投影光に占めるS偏光の割合が少なくなり、P偏光の割合が高くなってしまう。
そこで、視認者が視認者斜め前方領域に形成された反射像を見る場合に、視認者斜め前方領域に配置される位相差フィルムにつき、位相差フィルムの光軸をX軸に対して45°±5°からずらすことによって、S偏光とP偏光の混合光が位相差フィルムを通過した後にS偏光となる成分の割合を増やし、第一ガラス板の第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示を強くする。
第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示を強くすることで、相対的に第四主面で反射される投影光の影響が弱くなって、二重像の発生が抑制される。
【0152】
視認者正面領域、視認者斜め前方領域のいずれにおいても、投影光を位相差フィルムへ入射させることによって、投影光の振動方向を入射面に対して垂直方向へ変換するようにする。振動方向が入射面に対して垂直方向となる光がS偏光である。
位相差フィルムを通過した後の投影光がS偏光であると第一主面の反射が強くなるので、一ガラス板の第一主面に形成された反射像に基づく虚像表示が強くなる。
従って視認者正面領域、視認者斜め前方領域のいずれにおいても二重像の発生が抑制されて、フロントガラス面の横方向にHUDの表示領域を拡大した場合においても、二重像の発生を抑制し得るHUD装置となる。
【0153】
第四のHUD装置においても、第三のHUD装置と同様に視認者正面領域、視認者斜め前方領域の位置を定めることができる。右ハンドル車、左ハンドル車のそれぞれにおける視認者正面領域、視認者斜め前方領域の位置の例は
図22及び
図23を参照して説明した通りとすることができる。
また、位相差フィルムの光軸の方向が左上がりとなる場合の例は
図24及び
図25を参照して説明した通りとすることができる。
また、視認者が2名である場合の例は
図26と
図27を参照して説明した通りとすることができる。
また、投影部をサイドガラスに拡張した場合の例は
図28を参照して説明した通りとすることができる。
【0154】
なお、ここまで説明した第三のHUD装置、第四のHUD装置とも、視認者斜め前方領域における位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って連続的になされているもの(すなわち、
図18に示す位相差フィルムを使用した例)を図示して説明したが、視認者斜め前方領域における位相差フィルムの光軸の方向の傾きの変化が、X軸方向に沿って非連続的になされているもの(すなわち、
図19に示す位相差フィルムを使用した例)を使用してもよい。
【0155】
[ヘッドアップディスプレイシステム(HUDシステム)]
本開示の第2実施形態に係るHUDシステムは、一つのシステムにおいて照射する投影光の種類を切り替えることによって第三のHUD装置としても第四のHUD装置としても使用することができるようにしたシステムである。
HUDシステムにおいて、映像部は、振動方向がX軸方向である第一の投影光、及び、振動方向がYZ平面に平行な方向である第二の投影光を切り替えて照射することができる。第一の投影光を照射する場合はS-HUDとなり、第三のHUD装置として使用することができる。第二の投影光を照射する場合はP-HUDとなり、第四のHUD装置として使用することができる。
視認者が、偏光サングラス等の偏光板を介して虚像を視認する場合に、第四のHUD装置として使用する。
HUDシステムにおける映像部以外の構成は、第三のHUD装置及び第四のHUD装置と同様の構成とすることができる。
以下には、映像部における第一の投影光と第二の投影光の切り替えについて説明する。
【0156】
映像部は、振動方向がX軸方向である第一の投影光を投影することができる装置であってもよく、振動方向がYZ平面に平行な方向である第二の投影光を投影することができる装置であってもよい。
また、2種類の投影機構を有していて投影光の種類を切り替えることができる装置であってもよい。
また、ある偏光の光を最初に照射し、その光の光路に偏光制御部を配置することで、投影する光を第一の投影光又は第二の投影光に変換することができる装置であってもよい。
変換前の投影光の種類としては、あらゆる偏光をランダムに含んだもの(無偏光)、円偏光や楕円偏光、P偏光とS偏光との混合光、P偏光、S偏光でもない直線偏光などが挙げられる。
映像部としては、投影光を照射できるプロジェクターが好適に使用される。そのようなプロジェクターの例としては、DMD投影システム方式プロジェクター、レーザー走査型MEMS投影システム方式プロジェクター、または、反射型液晶方式プロジェクター等が挙げられる。
【0157】
例えば、映像部が最初に振動方向がX軸方向である第一の投影光を照射する機構を有する場合、その投影光の光路に偏光制御部として半波長板(第一の投影光の振動方向に対する位相差フィルムの光軸が45°となる位相差フィルム)を設けることで、第一の投影光を第二の投影光に変換することができる。
第一の投影光をそのまま投影光として使用する場合は偏光制御部を通過させないようにして、第二の投影光とする場合は偏光制御部を通過させるようにすればよい。
偏光制御部の通過/非通過を制御することによって、第一の投影光と第二の投影光の切り替えを行うことができる。
【0158】
映像部が最初に振動方向がYZ平面に平行な方向である第二の投影光を照射する機構を有する場合も、同様の構成とすることで第二の投影光を第一の投影光に変換することができるので、偏光制御部の通過/非通過を制御することによって、第二の投影光と第一の投影光の切り替えを行うことができる。
【0159】
第四のHUD装置では第一ガラス板の第一主面に形成された反射像を虚像として観察するが、投影光の強度が第三のHUD装置と同じである場合、第三のHUD装置で第二ガラス板の第四主面に形成された反射像よりも虚像表示が弱くなる。
そのため、第二の投影光を投影する場合の照射強度を、第一の投影光を投影する場合の照射強度よりも高いものとなるようにすることが好ましい。これは、映像部から照射する投影光の照射強度を第一の投影光と第二の投影光の場合で切り替えることにより行うことができる。また、第一の投影光を投影する場合にNDフィルター等を透過させることによってその照射強度を低下させるようにしてもよい。
【0160】
(本開示の第2の実施形態に係る実施例)
視認者正面領域と視認者斜め前方領域のそれぞれにおける、位相差フィルムの光軸とX軸のなす角度とが変化した場合の二重像の発生の様子を比較する実験を行った。
まず、視認者斜め前方領域が視認者の右側にある場合についての実験結果を示す。
図30は、実施例及び比較例で使用した第三のHUD装置を模式的に示す配置図である。
図31は、実施例3における実験系を模式的に示す図であり、
図32は、比較例3における実験系を模式的に示す図である。
【0161】
図30に示すような第三のHUD装置を準備した。第三のHUD装置3は、S-HUD方式用の、200mm×200mmの正方形の投影部を有する。
図30に示すとおり、映像部31を水平に置き、車両用合わせガラス210を、映像部31に対して、ブリュースター角を形成する56°の位置関係で配置する。
映像部31から、垂直上方へ向けて、X軸方向に振動する投影光を照射し、視認者35は、第四主面124に表示された虚像を観察する。視認者の視点と車両用合わせガラスの高さは同じである。
映像部31としてはタブレットを使用し、タブレットから白色格子像を表示する。タブレットは車両用合わせガラスの直下に配置する。
また、移動体の夜間での走行を模擬するために、視認者35が視認する方向で、車両用合わせガラス210の向こう側には、黒の背景板37が配置されている。
【0162】
図31及び
図32に示すように、観察点として視認者の正面をX軸方向の位置0の地点として、右側に+200mm地点、+400mm地点を設けた。
実施例3では、
図31に示す通り、視認者正面領域(X軸方向の位置0の地点)では位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°となるように投影部を配置した。さらに視認者斜め前方領域である+200mm地点、+400mm地点では位相差フィルムの光軸がX軸に対してそれぞれ55°、65°となるように投影部を配置した。
上記実験は、200mm×200mmの正方形の投影部の位置をそれぞれ200mmずつずらし、さらに投影部を傾けることで位相差フィルムの光軸を傾けるように投影部を配置することにより行った。
比較例3では、
図32に示す通り、すべての観察点で位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°となるように投影部を配置した。
【0163】
図33は、実施例3及び比較例3において視認される虚像を示す写真である。
それぞれ視認者からの距離が同じ位置で比較すると、実施例3において視認者斜め前方領域にあたる+200mm地点、+400mm地点において二重像の発生が抑制されていることが確認できた。
一方、比較例3ではこれらの地点で横方向に伸びる二重像が観察された。
【0164】
続いて、視認者斜め前方領域が視認者の左側にある場合についての実験結果を示す。
図34は、実施例4における実験系を模式的に示す図であり、
図35は、比較例4における実験系を模式的に示す図である。実験の手法は実施例3と同様である。
図34及び
図35に示すように、観察点として視認者の正面をX軸方向の位置0の地点として、左側に-100mm地点、-200mm地点、-300mm地点、-400mm地点、-500mm地点を設けた。
図34に示す通り、実施例4では視認者正面領域(X軸方向の位置0の地点)では位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°となるようにして、視認者斜め前方領域である-100mm地点、-200mm地点、-300mm地点、-400mm地点、-500mmでは位相差フィルムの光軸がX軸に対してそれぞれ40°、35°、30°、25°、20°となるようにした。
図35に示す通り、比較例4ではすべての観察点で位相差フィルムの光軸がX軸に対して45°となるようにした。
【0165】
図36は、実施例4及び比較例4において視認される虚像を示す写真である。
それぞれ視認者からの距離が同じ位置で比較すると、実施例4において視認者斜め前方領域にあたる-100mm地点、-200mm地点、-300mm地点、-400mm地点、-500mmにおいて二重像の発生が抑制されていることが確認できた。
一方、比較例4では特に-300mm地点、-400mm地点、-500mmにおいて横方向に伸びる二重像が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0166】
自動車などの車両のフロントガラス面の外周に近い領域や、フロントガラス面の中央領域に表示された像を視認者が斜めから視認した場合に、二重像の発生を抑制し得るHUD装置を提供することができる。
【0167】
本願は、2020年2月13日に出願された日本国特許出願2020-022342号、2020年2月21日に出願された日本国特許出願2020-027920号、及び、2020年8月24日に出願された日本国特許出願2020-140713号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。
【符号の説明】
【0168】
1 第一のHUD装置
2 第二のHUD装置
3 第三のHUD装置
4 第四のHUD装置
10、210 車両用合わせガラス
11 第一ガラス板
12 第二ガラス板
20 車両
31 映像部
32 発光点
33 反射点
34 視点
35 視認者
35D 運転者(視認者)
35P 同乗者(視認者)
36 偏光サングラス
40、60 投影光
41 偏光部を透過した後の投影光
42、241 第四主面に形成された反射像に基づく光路
61 偏光部を透過した後の投影光
62、261 第一主面に形成された反射像に基づく光路
81、81L、81R、81D、81P、82、82L、82R、82D、82P 偏光部
100、201、202 位相差フィルム
111 第一主面
112 第二主面
123 第三主面
124 第四主面
240 振動方向がX軸方向である投影光
250、250´ 第2実施形態の視認者正面領域
251 右側周辺領域(第2実施形態の視認者斜め前方領域)
252、252´ 左側周辺領域(第2実施形態の視認者斜め前方領域)
260 振動方向がYZ平面に平行な方向である投影光
270 サイドガラス
271 右側拡張領域
412、421、421C、421L、421R 虚像(第四主面に形成された反射像に基づく光路の延長上にある虚像)
612、621、621C、621L、621R 虚像(第一主面に形成された反射像に基づく光路の延長上にある虚像)