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特許7608423局所組成物及びミトコンドリア断片化に対するそれの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】局所組成物及びミトコンドリア断片化に対するそれの使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20241223BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241223BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q19/08
A61K8/67
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022500933
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2020067465
(87)【国際公開番号】W WO2021008822
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】19186086.5
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ロシャ,シェイラ・アウベス
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チュン-イー
(72)【発明者】
【氏名】ロサ,ホセ・ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】ニップ,ジョン・チュン-シン
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0116696(US,A1)
【文献】特開2007-204426(JP,A)
【文献】特表2004-519241(JP,A)
【文献】国際公開第2012/027827(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0095233(US,A1)
【文献】PLOS ONE,2017年06月23日,12(6),https://doi.org.10.1371/journal.pone.0174469
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99、
31/00-33/44
A61P 17/00、43/00
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚細胞のエネルギー効率を改善するための局所パーソナルケア組成物であって、
(a)0.001~10重量%のナイアシンアミド:
(b)0.001~10重量%の下記構造式1のS-アデノシル-L-メチオニン化合物:
【化1】
(c)任意の追加の皮膚有益剤;及び
(d)美容上許容される担体
を含む前記局所パーソナルケア組成物を皮膚に局所適用することにより、処置を必要とする個体の皮膚におけるミトコンドリアの保護及び/又はミトコンドリア断片化の低下によって消費者の皮膚にアンチエイジング及びアンチストレスの利点をもたらすための方法。
【請求項2】
前記ナイアシンアミドの量が、組成物の総重量に基づいて0.01~6重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナイアシンアミドの量が、組成物の総重量に基づいて0.05~3.5重量%である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記S-アデノシル-L-メチオニン化合物の量が、組成物の総重量に基づいて0.01~6重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
処置を必要とする高齢個体の皮膚をミトコンドリア断片化から保護することによって細胞エネルギー効率を改善する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
皮膚細胞におけるミトコンドリアの保護及び/又はミトコンドリア断片化の低下によって消費者の皮膚にアンチエイジング及びアンチストレスの利点をもたらすための、0.001~10重量%ナイアシンアミド及び0.001~10重量%のS-アデノシル-L-メチオニンを含む局所パーソナルケア組成物の使用。
【請求項7】
皮膚細胞におけるミトコンドリアの保護及び/又はミトコンドリア断片化の低下によって消費者の皮膚にアンチエイジング及びアンチストレスの利点をもたらすための局所パーソナルケア組成物の製造での、ナイアシンアミド及びS-アデノシン-L-メチオニンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚細胞内のミトコンドリア断片化に対して有用なナイアシンアミド及びS-アデノシル-L-メチオニンの共同的組み合わせを含む局所組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者が肌の顔の線、しわ、しみの跡を減らして若く見えることを望む場合、彼らは局所組成物の適用に依存する方法を介して肌の利益を提供することが望ましいことに気づく。消費者の皮膚に利益をもたらすことができる局所組成物に組み込むための有効成分が常に求められている。細胞成分の完全性及び機能を保護することによって皮膚の利益をもたらす、局所組成物に組み込むための有効成分が常に必要とされている。
【0003】
しかしながら、細胞の機能的成分を活用して若さや外見を介したその知覚を達成する技術は不確かである。身体のすべての細胞に当てはまるが、細胞の操作が若々しく見える肌を実現できるかどうか、又はどのように達成できるかについては特に予測できないものである。細胞の重要な機能性構成要素はミトコンドリアである。
【0004】
ヒト細胞内において、酸化的リン酸化がミトコンドリア内で起こり、これは、細胞エネルギーの最大83%がアデノシン三リン酸(ATP)の形で生成される必須の細胞成分である。次に、ATPに蓄積された細胞エネルギーは、ヒト細胞内で、ひいてはヒトなどの哺乳動物の体内で、複数の重要な生体プロセスを駆動するのに使用される。
【0005】
ミトコンドリアの酸化的リン酸化の際に、低基礎レベルの活性酸素種(ROS-細胞成分の脂肪酸、タンパク質、及びDNAに損傷を与えて細胞の変性と死を引き起こし得る高反応性中間体)が生成される。この低レベルのROSは、構成的抗酸化酵素、ROSスカベンジャー、修復酵素、及び損傷した成分の除去によって効率的に消すことができる。対照的に、ROSのレベルの上昇及び持続を可能にする条件は、ミトコンドリア断片化(「MF」)又は特にストレスの多い状況下では、正常な細胞機能に必要なエネルギー需要を満たすことができない機能不全のミトコンドリアをもたらす。長期の太陽紫外線(「UV」)照射は、高レベルのROSにつながる主要な条件の一つであることから、光老化を引き起こすUV放射から保護されていない皮膚においては、ミトコンドリア断片化が特に問題となる。ミトコンドリア断片化は、修復細胞機序が遅くなり始める通常の皮膚老化時の懸念でもある。実際、イン・ビボ研究で、高齢者皮膚のケラチン生成細胞は、若者の皮膚のケラチン生成細胞と比較して、著しく断片化されたミトコンドリアネットワークを有することが明らかになっている(Mellem D, Sattler M, Pagel-Wolff S, Jaspers S, Wenck H, Rubhausen MA, et al.(2017) Fragmentation of the mitochondrial network in skin in vivo.PLoS ONE 12(6):e0174469)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Mellem D, Sattler M, Pagel-Wolff S, Jaspers S, Wenck H, Rubhausen MA, et al.(2017) Fragmentation of the mitochondrial network in skin in vivo.PLoS ONE 12(6):e0174469
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ミトコンドリア断片化に対して皮膚を保護し、活性酸素種の基礎レベルを維持し、早期皮膚老化を防ぐことができる技術(化合物)が求められている。
【0008】
理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人は、ミトコンドリア断片化から皮膚細胞を保護する化合物が、皮膚の完全性及び機能を維持又は改善するために必要な細胞エネルギーの増加に寄与するものと考えている。皮膚細胞中のそのような化合物の量を増やすことは、皮膚の利益(若い皮膚の表現型)と関連している。
【0009】
したがって、本発明は、ミトコンドリア断片化に対する共同的皮膚有益剤、その皮膚有益剤組み合わせを含む組成物、並びにミトコンドリア断片化に対するその組成物の使用方法に関する。その組成物は、ミトコンドリア断片化から皮膚を保護し、活性酸素種を維持又は低減することで、早期の皮膚老化を防ぐ。
【0010】
追加情報
ニコチンアミドは、ナイアシンアミド又はビタミンB3の一種としても知られ、当技術分野では公知であり、Sigma-Aldrich Chemical Company(St. Louis, Missouri, USA)などの供給元から市販されている。しかし、細胞内でのATPを増加させるそれの能力には疑問があり、ATPレベルを低下させて、細胞の全体的な生体エネルギー状態を低下させると考えられている。
ビタミンBを使用して老化の兆候を減らすことを目的とした局所組成物が、US2007/0110731に開示されている。NZ526350Aには、アミノ酸、ビタミンB複合体を含み、好ましくはさらにS-アデノシル-L-メチオニンを含むアンチエイジング組成物が開示されている。
【0011】
S-アデノシル-L-メチオニン(SAMe)は体内で自然に発生し、ヒトにおける経口サプリメントとして使用される。SAMeはエネルギー代謝の主要な関係物質であり、メチル基を核酸、タンパク質、脂質及び二次代謝産物に転移させる上で主要な役割を果たす。SAMeは、ポリアミン生合成、細胞の増殖と修復、適切な細胞膜の維持、脳内化学物質の分解、遺伝子発現及び免疫系の機能において重要な役割を果たす。
【0012】
SAMeを含む局所医薬組成物が、うつ病治療に関してシャラー(Schaller)らのUS2006/0069059A1に開示されている。
【0013】
全体として、追加情報のいずれも、局所化粧品組成物やSAMeを含む組成物の皮膚への適用方法がミトコンドリア断片化に効果的であることを実証しているものではない。上記の追加情報はいずれも、ミトコンドリア断片化の機序を開示していない。さらに、その追加情報のいずれも、美容上好適な担体中で皮膚に局所適用した場合に、皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を低減し、及び/又は酸化ストレスを低減することからナイアシンアミド(B3)と組み合わせて皮膚有益剤であるS-アデノシル-L-メチオニン(SAMe)を含む組成物を記載していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ナイアシンアミド(B3)とS-アデノシル-L-メチオニン(SAMe)との組み合わせを含む局所パーソナルケア組成物、ミトコンドリア断片化に対するその組成物の使用、及び皮膚細胞内でミトコンドリア断片化を低減する方法を提供することによって、従来技術の欠陥を克服するものである。
【0015】
理論に拘束されることを望むものではないが、本出願人らは、皮膚細胞上のミトコンドリア断片化レベルが、皮膚細胞エネルギーを高めるためのバイオマーカーとして使用され得ると考えている。ミトコンドリア断片化から皮膚細胞を保護する化合物は、皮膚の完全性及び機能を維持又は改善するために必要な細胞エネルギーの増加に寄与する。細胞内で断片化されたミトコンドリアの数が少ないと、皮膚の利点(若い皮膚の表現型)に関連するより健康的なミトコンドリアネットワークが可能となる。
【0016】
本発明は、局所組成物に組み込むための有効成分の発見に基づいており、それは、皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化レベルを低下させることによって、消費者の皮膚の利益をもたらすことができる。
【0017】
第1の態様において、本発明は、美容上許容されるビヒクル中の0.001~10%、好ましくは0.01~6%、最も好ましくは0.05~3.5%のナイアシンアミド(B3)化合物;及び0.001~10%、好ましくは0.01~6%のSAMeを含む局所用パーソナルケア組成物である。
【0018】
SAMeは、下記の構造式1の化合物である。
【化1】
【0019】
この組成物は、追加の任意の皮膚有益剤を含むことができる。
【0020】
第2の態様において、本発明は、美容上許容されるビヒクル中のB3とSAMeとの組み合わせを含むパーソナルケア組成物を皮膚に局所適用することによって、処置を必要とする個体の皮膚におけるミトコンドリア断片化を防止する方法である。好ましくは、本発明の方法は、処置を必要とする高齢個体の皮膚をミトコンドリア断片化から保護する。本発明の組成物は、任意に、追加の皮膚有益剤を含み得る。
【0021】
第3の態様において、本発明は、ミトコンドリア断片化を低減するための、SAMeとB3を含む本発明の組成物の使用である。
【0022】
第4の態様において、本発明は、皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を防止するための局所パーソナルケア組成物の製造における、SAMeとB3/ナイアシンアミドの使用である。
【0023】
本発明の他のすべての態様は、以下の詳細な説明及び実施例を考慮すると容易に明らかになるであろう。
【0024】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて、文脈が明らかにそうでないことを規定しない限り、以下の用語は以下に明示的に関連付けられる意味を持つ。
【0025】
本明細書で使用される「1実施形態では」及び「一部の実施形態では」という語句は、(1以上の)同じ実施形態を指してもよいが、必ずしも(1以上の)同じ実施形態を指さない。さらには、本明細書で使用される「別の実施形態では」及び「一部の他の実施形態では」という語句は、異なる実施形態を指してもよいが、必ずしも異なる実施形態を指さない。したがって、以下に記載される通り、本発明の様々な実施形態は、本発明の範囲又は精神から離れることなく容易に組み合わせることができる。加えて、本発明の様々な実施形態と組み合わせて与える例のそれぞれは、例示的なものであり、限定的なものではないことが意図される。
【0026】
本明細書で使用される「皮膚」は、個体の足、顔(口腔を含む)、首、胸、背中、腕、手、脚、臀部及び頭皮(髪を含む)の皮膚を含むことを意味する。
【0027】
特に別断で明記されていない限り、本明細書に記載の範囲はすべて、そこに含まれるすべての範囲を含むことを意味する。
【0028】
実施例、又はその他の明示的に示した場合を除いて、材料の量又は反応条件、材料の物理的性質及び/又は使用を説明する本記載中の全ての数は、「約」という語によって修飾されるものと理解するべきである。全ての量は、別段の記載がなければ、最終組成物の質量による。請求項は複数の従属又は重複なしで見付かり得るという事実にかかわらず、本明細書中に見られる本発明の開示は、互いに多項従属した請求項中に見出される全ての実施形態をカバーするものと考えるべきである。任意の範囲の濃度又は量の記載において、任意の特定の上限濃度は、任意の特定のより低い濃度又は量と関連することができる。
【0029】
「含む」という語は、「包含する」ことを意味するが、必ずしも「からなる」又は「から構成される」ことを意味しないことが意図される。すなわち、挙げたステップ又は選択項目は網羅的なものである必要はない。「含む」という用語は、「本質的にからなる」、及び「からなる」という用語を包含することを意味する。
【0030】
本発明の組成物は、クリーム、ローション、香油、セラム、脱臭剤及び制汗剤、シャンプー、コンディショナー、バー及び液体洗浄製品を含む。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、リーブオンクリーム又はローションのような局所リーブオン組成物である。
【0031】
「リーブオン組成物」は、皮膚に塗布され、何らかの期間、特に数時間にわたって洗浄されない又はすすぎ落とされないことが意図される組成物を指し、塗布の直後又は数分後にすすぎ落とされ又は洗浄除去される皮膚クレンジング又は洗い落とされる若しくはすすぎ落とされる組成物とは対照的である。リーブオン組成物及びウォッシュ/リンスオフ組成物の両方が「パーソナルケア組成物」の範囲内にある。
【0032】
「パーソナルケア組成物」とは、外観改善、日焼け止め、クレンジング(オーラルケアを含む)、臭気抑制、保湿又は全身美容のためにヒト身体に適用される製品を指す。パーソナルケア組成物の非限定的な例には、スキンローション、クリーム、ジェル、ローション、フェイシャルマスク、スティック、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、トイレバー、制汗剤、脱臭剤、シェーブクリーム、脱毛剤、サンレス・タナー及び日焼け止めローションなどがある。
【0033】
「皮膚美容組成物」は、見た目の改善、太陽光保護、しわの出現若しくは光加齢の他の徴候の低減、匂い制御、皮膚美白、均一な皮膚の色調、又は一般的美観のためにヒトの身体に塗布される任意の製造物を指す。皮膚に利益を提供するのに適した本発明の組成物は、乳濁液又は水及び乳化剤を含まない組成物であることができる。局所美容用皮膚組成物の非限定的な例としては、皮膚ローション、クリーム、フェイシャルマスク、ジェル、スティック、制汗薬、デオドラント、液体又はジェル状ボディウォッシュ、固形石鹸、オーラルケア製品、サンレス・タナー及びサンスクリーンローションが挙げられる。
【0034】
ミトコンドリア断片化を指す場合に「に対して」を使用することは、保護/保護の提供、低下、維持、防止、特には紫外線に曝露された皮膚でのことを含むが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、美容上許容されるビヒクル中の、SAMeと組み合わせてナイアシンアミド(B3)を含む局所パーソナルケア組成物に関するものである。本発明のパーソナルケア組成物を皮膚に局所適用することにより、処置を必要とする個体の皮膚におけるミトコンドリア断片化を防止する方法;ミトコンドリア断片化を防止又は低減するための本発明の組成物の使用;皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を防止するための局所パーソナルケア組成物の製造における、SAMeとB3の使用も提供される。
【0036】
本発明は、ミトコンドリアを保護し、及び/又は皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を低下させることによって、消費者の皮膚に利益をもたらすことができる、局所組成物に組み込むための有効成分の発見に基づいている。これらの化合物は、エネルギーの効率的な使用、グルコース及び脂質代謝の制御、細胞の修復/若返りの増加、及び抗酸化効果の増加に関連している。本発明の化粧品組成物を適用することのパーソナルケア上の利点には、アンチエイジング及びアンチストレス(UV及び酸化ストレスを含む)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
第1の態様において、本発明は、美容上許容されるビヒクル中の0.001~10%のナイアシンアミド(B3)化合物及び0.001~10%、好ましくは0.01~6%のSAMeを含む局所パーソナルケア組成物である。
【0038】
SAMeは、構造式1の化合物:
【化2】

であって、構造式2のナイアシンアミド:
【化3】

と組み合わせられるものである。
【0039】
第2の態様では、本発明は、美容上許容されるビヒクル中のSAMeとB3を含むパーソナルケア組成物を皮膚に局所適用することによって、処置を必要とする個体の皮膚におけるミトコンドリア断片化を防止する方法である。好ましくは、本発明の方法は、処置を必要とする高齢者の皮膚をミトコンドリア断片化から保護することによって、細胞のエネルギー効率を改善する。
【0040】
第3の態様では、本発明は、ミトコンドリア断片化を低減するための、SAMeとB3を含む本発明の組成物の使用である。
【0041】
第4の態様では、本発明は、皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を防止するための局所パーソナルケア組成物の製造における、SAMeとB3の使用である。
【0042】
S-アデノシル-L-メチオニン(「SAMe」)
本発明によれば、S-アデノシル-L-メチオニン化合物(以下に示す構造式1)が、ナイアシンアミドと組み合わせて使用される。
【化4】
【0043】
代表的には、本発明の組成物に使用されるS-アデノシル-L-メチオニン(SAMe)の量は、組成物の総重量に基づいて0.001~10%、好ましくは0.01~6%、そして最も好ましくは0.05~3.5%であり、及びそこに含まれるすべての範囲を含む。
【0044】
ニコチンアミド
ニコチンアミドは、ナイアシンアミドとして、又はある形のビタミンB3としても知られ、次の構造式2を有する。
【化5】
【0045】
代表的には、本発明の組成物で使用されるニコチンアミドの量は、組成物の総重量に基づいて0.001~10%、好ましくは0.01~6%、最も好ましくは0.05~3.5%であり、そこに含まれるすべての範囲を含む。
【0046】
有利かつ予想外に、SAMe+B3の組み合わせは、皮膚細胞におけるミトコンドリア断片化を低下する能力を示す。
【0047】
塩型
本発明の化合物(SAMe及びニコチンアミド)は、各種の生理的に好適な対イオンと塩を形成することができ、それには塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、硫酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クエン酸塩又はRCO (RはC-C22アルキル基であり、それは直鎖、分岐若しくは環状、飽和若しくは不飽和であり、O、Sから選択される1以上のヘテロ原子で置換されていても良い。)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
担体
本発明の組成物は、美容上許容される担体として、オイルのような非極性液体を有することができる。あるいは、そのような非極性液体は、組成物が乳濁液である場合、油相として使用することができる。
【0049】
本発明の組成物が乳濁液である場合、それらは、代表的には、非極性液体に加えて、美容上許容される担体成分を含むであろう。水が最も好ましい追加の担体である。水の量は、組成物の総重量に基づいて、1~99重量%、好ましくは5~90%、最も好ましくは35~80重量%、最適には40~75重量%の範囲であることができ、そしてそこに含まれるすべての範囲を含む。通常、本発明の組成物は、水及び油乳濁液であり、最も好ましくは水中油型である。しかしながら、油中水型乳濁液、特に一般に油中水型及び高内相乳濁液として分類される乳濁液が選択肢である。本発明の担体として適した高内相乳濁液の例示的な例が、共同所有米国特許出願公開第2008/0311058号及び米国特許第8,425,882号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
本発明での使用(水有り又は無し)に適した他の美容上許容される担体には、鉱油、シリコーン油、エステル、及びアルコールなどがあり得る。これらの材料の量は、合計で、本発明の組成物の0.1~99重量%、好ましくは0.1~45重量%、最も好ましくは1~20重量%の範囲であることができ、その中に含まれるすべての範囲を含む。
【0051】
シリコーンオイルは、揮発性形と不揮発性形に分けることができる。本明細書で使用される「揮発性」という用語は、周囲温度で測定可能な蒸気圧を有する材料を指す。揮発性シリコーンオイルは好ましくは、3~9、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状又は直鎖ポリジメチルシロキサンから選択される。
【0052】
直鎖揮発性シリコーン材料は通常、25℃で5センチストーク未満の粘度を有し、他方、環状材料は代表的には約10センチストーク未満の粘度を有する。
【0053】
担体材料として有用な不揮発性シリコーンオイルには、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、及びポリエーテルシロキサンコポリマーなどがある。本明細書で有用な本質的に不揮発性のポリアルキルシロキサンには、例えば、25℃で5~100,000センチストークの粘度を有するポリジメチルシロキサン(ジメチコンなど)などがある。
【0054】
好ましいシリコーン源は、シクロペンタシロキサン及びジメチコノール溶液である。
【0055】
好適なエステルの中には、次のものがある。
(1)パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソナノン酸イソノニル、ミリスチン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸オレイル、及びオレイン酸オレイルのような10~20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニル又はアルキルエステル;
(2)エトキシル化脂肪アルコールの脂肪酸エステルなどのエーテルエステル;
(3)エチレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(200-6000)モノ及びジ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレエート、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシル化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪酸エステル、エトキシル化グリセリルモノステアレート、1,3-ブチレングリコールモノステアレート、1,3-ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステル;
(4)蜜ろう、鯨ろう、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリルなどのろうエステル;及び
(5)大豆ステロール及びコレステロール脂肪酸エステルが例である、ステロールエステル。
【0056】
多くの場合、カプリル酸カプリン酸トリグリセリドなどのオイルが担体として好ましい。
【0057】
乳化剤が、本発明の組成物中に存在し得る。乳化剤の総濃度は、組成物の約0.1~40重量%、好ましくは1~20重量%、最も好ましくは1~5重量%の範囲であることができ、それに含まれるすべての範囲を含む。乳化剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性及び両性活性物質からなる群から選択することができる。特に好ましいノニオン性活性物質は、疎水性物質1モルあたり約2~約100モルのエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドと縮合したC10-C20脂肪アルコール又は酸疎水性物質;2~20モルのアルキレンオキシドと縮合したC-C10アルキルフェノール;エチレングリコールのモノ及びジ脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセリド;ソルビタン、モノ及びジC-C20脂肪酸;及びポリオキシエチレンソルビタン並びにそれらの組み合わせを有するものである。アルキルポリグリコシド及びサッカリド脂肪アミド(例えば、メチルグルコンアミド)も好適なノニオン性乳化剤である。
【0058】
好ましいアニオン性乳化剤には、アルキルエーテル硫酸塩及びスルホン酸塩、アルキル硫酸塩及びスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル及びジアルキルスルホコハク酸塩、C-C20アシルイセチオネート、C-C20アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボキシレート及びそれらの組み合わせなどがある。
【0059】
使用できるカチオン性乳化剤には、例えば、アルミタミドプロピルトリモニウムクロリド、ジステアリルジモニウムクロリド及びそれらの混合物などがある。有用な両性乳化剤には、ココアミドプロピルベタイン、C12-C20トリアルキルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、及びラウロジアンホ酢酸ナトリウム又はそれらの混合物などがある。
【0060】
他の一般的に好ましい乳化剤には、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリコール、ステアラミドAMP、PEG-100ステアレート、セチルアルコール、並びにヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウムコポリマー/スクアラン及びそれらの混合物などの乳化剤/増粘剤添加物などがある。
【0061】
組成物
潜在的に有害な微生物の増殖から保護するために、望ましくは、防腐剤を本発明の組成物に組み込むことができる。本発明の組成物に好適な従来の防腐剤は、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルである。最近使用されるようになった他の防腐剤には、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、及び各種の四級アンモニウム化合物などがある。化粧品の化学者は、適切な防腐剤には精通しており、日常的にそれらを選択して、防腐剤負荷試験を満足させ、製品安定性を提供する。特に好ましい防腐剤は、ヨードプロピニルブチルカルバメート、フェノキシエタノール、1,2-オクタンジオール、エチルヘキシルグリセリン、ヘキシレングリコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、デヒドロ酢酸ナトリウム及びベンジルアルコールである。防腐剤は、組成物の使用、及び防腐剤と乳濁液中の他の成分との間の可能な不適合性を考慮して選択されるべきである。防腐剤は好ましくは、組成物の0.01重量%~2重量%の範囲の量で使用され、その中に含まれるすべての範囲を含む。1,2-オクタンジオールとフェノキシエタノール、又はヨードプロピニルブチルカルバメートとフェノキシエタノールの組み合わせが好ましく、フェノキシエタノールが、フェノキシエタノールと防腐剤の組み合わせの総重量の35~65重量%を占める。
【0062】
増粘剤を、本発明の組成物に含ませても良い。特に有用なものは多糖類である。例には、でんぷん、天然/合成ガム、セルロース誘導体などがある。でんぷんの代表的なものは、ヒドロキシプロピルでんぷんリン酸ナトリウム及びでんぷんオクテニルコハク酸アルミニウムなどの化学修飾でんぷんである。タピオカデンプンが好ましい場合が多い。好適なガムには、キサンタン、菌核、ペクチン、カラヤガム、アラビアガム、寒天、グアー、カラギーナン、アルギン酸塩、及びそれらの組み合わせなどがある。適切なセルロース誘導体には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどがある。合成ポリマーが、さらに別の種類の効果的な増粘剤である。このカテゴリーには、Carbomer類などの架橋ポリアクリレート、Sepigel 305などのポリアクリルアミド、及びSimulgel EG及びArlstoflex AVCなどのタウレートコポリマーなどがあり、これらのコポリマーは、それぞれのINCI命名法でアクリル酸ナトリウム/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレート及びアクリロイルジメチルタウレート/ビニルピロリドンコポリマーとして識別される。増粘に適した別の好ましい合成ポリマーは、Seppicによって市販され、Simulgel INS100の名前で販売されているアクリレート系ポリマーである。
【0063】
増粘剤の量は、使用される場合、組成物の0.001~5重量%、好ましくは0.1~2重量%、最も好ましくは0.2~0.5重量%の範囲であることができ、それに含まれるすべての範囲が含まれる。
【0064】
香料、固定剤及び研磨剤を、本発明の組成物に含ませても良い。これらの物質のそれぞれは、約0.05~約5重量%、好ましくは0.1~3重量%の範囲であり得る。
【0065】
皮膚の保湿を強化するために、カチオン性アンモニウム化合物を本発明の組成物に使用して、保湿を強化しても良い。そのような化合物には、ヒドロキシプロピルトリ(C-Cアルキル)アンモニウムモノ置換サッカリドの塩、ヒドロキシプロピルトリ(C-Cアルキル)アンモニウムモノ置換ポリオールの塩、ジヒドロキシプロピルトリ(C-Cアルキル)アンモニウム塩、ジヒドロキシプロピルジ(C-Cアルキル)モノ(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩、グアーヒドロキシプロピルトリモニウム塩、2,3-ジヒドロキシプロピルトリ(C-Cアルキル又はヒドロキシアルキル)アンモニウム塩又はそれらの混合物などがある。最も好ましい実施形態において、そして所望の場合、本発明で使用されるカチオン性アンモニウム化合物は、四級アンモニウム化合物である1,2-ジヒドロキシプロピルトリモニウムクロライドである。使用される場合、そのような化合物は、代表的には、組成物の0.01~30重量%、好ましくは、0.1~15重量%を構成する。
【0066】
カチオン性アンモニウム化合物が使用される場合、それと共に使用するための追加の好ましい添加剤は、ヒドロキシメチル尿素、ヒドロキシエチル尿素、ヒドロキシプロピル尿素;ビス(ヒドロキシメチル)尿素;ビス(ヒドロキシエチル)尿素;ビス(ヒドロキシプロピル)尿素;N,N′-ジヒドロキシメチル尿素;N,N′-ジ-ヒドロキシエチル尿素;N,N′-ジヒドロキシプロピル尿素;N,N,N′-トリヒドロキシエチル尿素;テトラ(ヒドロキシメチル)尿素;テトラ(ヒドロキシエチル)尿素;テトラ(ヒドロキシプロピル)尿素;N-メチル-N′-ヒドロキシエチル尿素;N-エチル-N,N-N′-ヒドロキシエチル尿素;N-ヒドロキシプロピル-N′-ヒドロキシエチル尿素及びN,N′-ジメチル-N-ヒドロキシエチル尿素又はそれらの混合物のような置換された尿素などの保湿剤である。ヒドロキシプロピルという用語が現れる場合、その意味は、3-ヒドロキシ-n-プロピル、2-ヒドロキシ-n-プロピル、3-ヒドロキシ-i-プロピル、又は2-ヒドロキシ-i-プロピル基のいずれかについて包括的である。最も好ましいのはヒドロキシエチル尿素である。後者は、商標名HydrovanceでICIのNational Starch & Chemical Divisionから50%水系液として入手できる。
【0067】
本発明の組成物中で使用される場合、置換尿素の量は、組成物の総重量基準で0.01~20%、好ましくは0.5~15%、最も好ましくは2~10%の範囲であり、それに含まれるすべての範囲が含まれる。
【0068】
従来の保湿剤を、本発明において、皮膚有益剤として、及び本発明の生体エネルギー性の組み合わせに加えて使用することができる。これらは一般的に多価アルコール型材料である。代表的な多価アルコールには、グリセロール(すなわち、グリセリン(glycerine)又はグリセリン(glycerin))、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシル化グリセロール、プロポキシル化グリセロール及びそれらの混合物などがある。最も好ましいのは、グリセリン、プロピレングリコール又はそれらの混合物である。使用される保湿剤の量は、組成物の0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%の範囲であることができる。
【0069】
カチオン性アンモニウム化合物及び置換尿素が使用される場合、最も特に好ましい実施形態では、組成物の総重量に基づいて、少なくとも1~15%のグリセリンが使用され、それに含まれるすべての範囲が含まれる。
【0070】
本発明の組成物は、本発明による活性剤、皮膚有益剤、及び/又はそれらの誘導体とともに、任意に及び追加で、ビタミン類を含み得る。例示的なビタミンは、レチノール(ビタミンA)、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、葉酸及びビオチンである。ビタミンの誘導体も使用することができる。例えば、ビタミンC誘導体には、アスコルビルテトライソパルミテート、マグネシウムアスコルビルホスフェート及びアスコルビルグリコシドなどがある。ビタミンEの誘導体には、酢酸トコフェリル、パルミチン酸トコフェリル及びリノール酸トコフェリルなどがある。DL-パンテノール及び誘導体も使用でき、ビタミンD及びKも選択肢である。本発明による組成物中に存在する場合の任意のビタミンの総量は、組成物の0.0~10重量%、好ましくは0.001~1%、最適には0.01~0.5重量%の範囲であり得る。
【0071】
任意の皮膚有益剤
本発明の組成物は、ナイアシンアミドに加えて皮膚有益剤及び/又はそれの誘導体、追加の任意の皮膚有益剤(SBA)を含むことができる。ナイアシンアミドに対して、皮膚有益剤及び/又はその誘導体は、皮膚有益剤の少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも40~95重量%、最も好ましくは100重量%を構成することが好ましい。必要に応じて、任意の皮膚有益剤又は添加剤を提供して、ナイアシンアミドや共同的皮膚有益剤及び/又はそれの誘導体ではない皮膚有益剤の部分を構成させることができる。
【0072】
任意で使用に好適なものには、キレート剤(例えば、EDTA)、乳白剤(例えば、TiO、粒径50~1200nm、及び好ましくは、50~350nm)、C8-22脂肪酸置換糖類、リポ酸、レチノキシトリメチルシラン(商標名SilCare IM-75でClariant Corp.から入手可能)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びそれらの組み合わせのような材料もある。セラミド類(セラミドI、セラミド3、セラミド36及びセラミド6など)及びシュードセラミド類も有用である可能性がある。これらの材料の量は、本発明の組成物の0.000001~10重量%、好ましくは0.0001~1重量%の範囲であることができる。
【0073】
日焼け止め活性剤もまた、本発明の組成物に含まれ得る。特に好ましいものは、Parsol MCXとして入手可能なエチルヘキシルp-メトキシシンナメート、Parsol 1789として入手可能なAvobenzene、及びOxybenzoneとしても知られるベンゾフェノン-3などの材料である。超微粒二酸化チタン、オクトクリレン酸化亜鉛、ポリエチレン及び他の各種ポリマーなどの無機日焼け止め活性剤を使用することができる。
【0074】
存在する場合の日焼け止め剤の量は、一般に、0.1~30重量%、好ましくは0.5~20%、最適には0.75~10重量%の範囲であり得る。
【0075】
従来の緩衝剤/pH調整剤を使用することができる。これらには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、クエン酸、及びクエン酸塩/クエン酸緩衝剤などの一般的に使用される添加剤などがある。特に好ましい実施形態において、本発明の組成物のpHは、4~8、好ましくは4.25~7.75、最も好ましくは6~7.5であり、そこに含まれるすべての範囲を含む。
【0076】
本発明の組成物は、好ましくは、リーブオンスキンローション、クリーム、シャンプー、コンディショナー、シャワージェル、制汗剤、脱臭剤、脱毛剤、シェーブクリーム又はトイレバーである。
【0077】
包装
本発明の組成物を貯蔵及び配送するために、多種多様な包装を使用することができる。包装は、多くの場合、パーソナルケアの最終用途のタイプによって決まる。例えば、リーブオンスキンローション及びクリーム、シャンプー、コンディショナー及びシャワージェルは、一般に、クロージャーで覆われたディスペンス端に開口部を備えたプラスチック容器を使用する。代表的なクロージャーは、スクリューキャップ、非エアロゾルポンプ、及びフリップトップヒンジ式蓋である。制汗剤、脱臭剤、及び脱毛剤の包装には、ディスペンス端にロールオンボールが付いた容器が関与する場合がある。あるいは、これらのタイプのパーソナルケア製品は、スティックが台上をディスペンス口に向かって移動する推進反発機構を備えた容器内のスティック組成物製剤で送達することができる。推進剤で加圧され、スプレーノズルを備えた金属缶は、制汗剤、シェービングクリーム、その他のパーソナルケア製品の包装として機能する。トイレットバーは、セルロース又はプラスチックのラッパーで構成された包装、又は段ボール箱の中にある包装、又はシュリンクラップのプラスチックフィルムで囲まれた包装を備えていることができる。
【0078】
以下の実施例は、本発明の理解を容易にするために提供されている。これらの実施例は、特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例
【0079】
実験方法
材料及び細胞処理
試験化合物(B3及びSAMe)は、Sigma(St. Loius, MO)から購入した。細胞培養増殖培地(カルシウムを含むEpilife培地(カタログ番号MEPI500CA)及びEpilife培地サプリメントHKGS 100X(カタログ番号S-001-5))は、Thermofisher(Waltham, MA)から購入した。凍結保存されたヒトケラチン生成細胞細胞(約1×10細胞)を、12ウェルガラス底プレートに約15%の集密度で蒔いた。細胞を初代ケラチン生成細胞増殖培地(カルシウムを含むEpilife培地)に懸濁させ、37℃で1日間インキュベートした(第0日)。第1日に、試験化合物を含まない(対照サンプル)、又は試験化合物B3(10mM)、SAMe(500μM)又はB3(10mM)+SAMe(500μM)を含む補充初代ケラチン生成細胞増殖培地(HKGS 100Xを補充したカルシウムを含むEpilife培地;合計25mL)による細胞の処理を開始した。細胞処理(上記の試験化合物を含む又は含まない25mL培地)をさらに2日間(第2及び3日)にわたり1日1回継続した。第4日に培地をPBSに交換し、細胞をUV光(4J/cmのUVA+UVB)に14分間曝露し、上記で定義の対応する試験化合物を含む又は含まない培地を細胞に供給することにより、細胞をUV処理した。UV処理はさらに3日間1日1回続けた(第5、6、7日)。ミトコンドリア断片化を評価するために、すべてのウェルでの画像収集及び分析を第1、3、5、8日に実施した。
【0080】
画像収集
二光子励起蛍光(TPEF)イメージングのため、細胞培養物を、顕微鏡適合性のマイクロインキュベータシステムに入れ、そこは撮像セッション全体を通じて加湿環境内で37℃に維持した。HEPES緩衝剤(Sigma)を、撮像前に細胞培養物に加え、そこは撮像セッション全体を通じて細胞培養物のpHを維持した。調整可能な(680~1300nm)チタンサファイアレーザ(InSight Deep See;Spectra Physics;Mountain View, CA)を搭載したLeica TCS SP8共焦点顕微鏡を使用して撮像を行った。画像(1024×1024ピクセル;386×386μm)を、水浸25x対物レンズ(NA0.95;2.4mm作動距離)を使用して取得し、700nmショートパスフィルター(ET700SP-2P)と495nmダイクロイックミラー(495DCXR)を含むChroma(Bellows Falls, VT)からのフィルターを含むフィルターキューブを使用する二つの非デスキャン式光電子増倍管(PMT)検出器で同時に収集した。NADH蛍光を分離するために、NADH発光ピークに対応する460(±20)nm発光フィルター(Chroma、ET460/40M-2P)を、非デスキャン検出器のうちの一つの前に配置した。NADH蛍光画像を、755nm励起を使用してこの460nmチャネルから取得した。FAD蛍光を、他の非デスキャン検出器用の525(±25)nm発光フィルター(Chroma、ET525/50M-2P)と860nm励起を使用して分離した。NADHの2光子作用断面積は、755nm励起と860nm励起の間で数桁減少し、それによって、より長波長でのFADの効率的な分離が可能となる。NADHに対応する蛍光寿命画像(512×512ピクセル;386×386μm)を、SymPhoソフトウェアを使用して、同じ励起及び発光設定で取得した。PMTゲインを各画像について調節して、飽和ピクセル強度値を防止しながらコントラストを最大化した。各画像についてPMTゲインとレーザー出力を記録し、それを蛍光強度を正規化するのに使用した。
【0081】
ミトコンドリア断片化の計算
ミトコンドリア断片化を評価するため、既に確立されたフーリエ変換技術を使用して、各画像からパワースペクトル密度(PSD)曲線を得た(M. Levitt et al., Diagnostic cellular organization features extracted from autofluorescence images. Opt Lett 32, 3305-3307 (2007); J. Xylas, K. P. Quinn, M. Hunter, I. Georgakoudi, Improved Fourier-based characterization of intracellular fractal features. Opt Express 20, 23442-23455 (2012))。すなわち、レドックス分析に使用したものと同じバイナリマスクによって選択された細胞の細胞質領域内の画像強度パターンをコピーし、画像背景に無作為に配置して、明確な細胞境界がなく、画像全体に広がる細胞ミトコンドリアパターンのみを有する新たな画像を作成した(K. P. Quinn et al., Quantitative metabolic imaging using endogenous fluorescence to detect stem cell differentiation. Sci Rep 3, 3432 (2013))。フーリエ変換時にパワースペクトル密度(PSD)曲線を、各画像について作成した。次に、高空間周波数(>0.1μm-1、ミトコンドリアの大きさに相当)でのPSD曲線の逆べき法則挙動が確認された。0.1μm-1と全PSD領域の98%の周波数の間のこの部分をR(k)~k-βの形式の方程式に適合させ、本試験全体を通じてミトコンドリア断片化を表す指数べきβを求めた。
【0082】
統計解析
各日の処理間の平均を比較するため、JMPとTukey HSDを統計解析に用いた。検定の有意水準(α、第1種の過誤の確率)は0.05に設定した。二つの測定値間のP値</=から0.05を、統計的に有意であると見なす。
【0083】
実施例1.ケラチン生成細胞におけるミトコンドリア断片化-UV試験
この実験の目的は、UV曝露がある場合とない場合での老化の結果として起こるミトコンドリア断片化から、各種活性物質によってもたらされる皮膚への保護の程度を比較することであった。
【0084】
ミトコンドリア断片化の値が高いほど、特定の活性物質又は活性物質の組み合わせによって提供される皮膚への保護が弱くなる。留意すべき点として、皮膚細胞のミクロ規模の成分であるミトコンドリアなどの生体システムの場合、ミトコンドリア断片化数の絶対値は小さく、わずかな差が重要である可能性がある。
【0085】
UV曝露の3日前と4日後のケラチン生成細胞におけるミトコンドリア断片化に対するB3と低レベルのSAMeの影響を、下記の表に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
上記の表1におけるデータからわかるように、高レベルのB3(10mM)、低レベルのSAMe(500μM)又は低レベルのSAMe(500μM)+高レベルのB3(10mM)の組み合わせで非UV曝露ケラチン生成細胞を処理してもミトコンドリア断片化はほとんど減少しない。ミトコンドリア断片化の対照レベルを上げるには、4日間のUV曝露のみでも効果的である。高用量(10mM)のB3単独が、このUV誘発効果を対照レベルまで低減するには効果的であるが、はるかに低い用量(500μM)のSAMe単独では、ミトコンドリア断片化がUV曝露レベルを超えて増加する。しかしながら、予期せぬことに、B3(10mM)と少量(20分の1)のSAMe(500μM)の組み合わせは、B3又はSAMe処理単独の場合よりミトコンドリア断片化を効果的かつ相乗的に低下させ、非UV曝露対照レベルを超えていることから、優れた共同的利益を提供する。
【0088】
実施例2
本発明によるパーソナルケア製剤は、以下の表に示している。表中のすべての数字は、組成物中の重量%を表す。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】