(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】積層コア、ノイズフィルタ、磁心
(51)【国際特許分類】
H01F 27/245 20060101AFI20241223BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20241223BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241223BHJP
H01F 3/04 20060101ALI20241223BHJP
H02K 1/02 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H01F27/245
H01F27/245 155
H01F27/25
H01F17/04 F
H01F3/04
H02K1/02 B
(21)【出願番号】P 2023038113
(22)【出願日】2023-03-10
【審査請求日】2024-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】石原 大資
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-253104(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114893(WO,A1)
【文献】特開2021-163772(JP,A)
【文献】特開2004-356468(JP,A)
【文献】特開2001-319820(JP,A)
【文献】特開2011-254066(JP,A)
【文献】特開2009-194724(JP,A)
【文献】特開2002-151316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/245
H01F 27/25
H01F 17/04
H01F 3/04
H02K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性金属薄帯を積層して構成された磁性体からなる積層コアであって、
前記軟磁性金属薄帯の層間に樹脂を有し、
前記軟磁性金属薄帯の層間距離dの合計をSとし、前記軟磁性金属薄帯の層間距離dの平均をd
aveとし、前記軟磁性金属薄帯の層間のうち前記層間距離が前記平均d
aveの4倍以上である層間の前記層間距離の合計をS
4とするとき、
前記合計Sに対する前記合計S
4の比R
4=S
4/Sは、
0.8%以上10.0%以下であり、
環状磁性体であることを特徴とする、積層コア。
【請求項2】
前記軟磁性金属薄帯の層間の前記樹脂のガラス転移温度が、85℃以上である、請求項1に記載の積層コア。
【請求項3】
前記軟磁性金属薄帯の層間の前記樹脂のガラス転移温度が、125℃以上である、請求項1に記載の積層コア。
【請求項4】
前記比R
4=S
4/Sは、5.0%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コア。
【請求項5】
前記軟磁性金属薄帯は、ナノ結晶合金からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コア。
【請求項6】
前記軟磁性金属薄帯は、アモルファス合金からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コア。
【請求項7】
100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが、10,000以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コア。
【請求項8】
周方向に途切れた不連続部分を有する、複数の環状積層磁性片を組み合わせてなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コア。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コアを用いた、ノイズフィルタ。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コアを用いた、トランス又はモーター用の磁心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コア、並びに、該積層コアを用いた、ノイズフィルタ及び磁心に関する。
【背景技術】
【0002】
軟磁性金属薄帯を積層した積層コアは、ノイズフィルタや、トランスやモーター等の磁心として用いられている。一般的に、軟磁性金属薄帯を積層しただけでは積層コアの強度が弱く、形状を維持できないため、接着剤として樹脂を軟磁性金属薄帯の層間に充填し、固化成型して強度を高めている。
【0003】
ここで、特許文献1では、チョークコイル用の磁心にギャップを形成させるためにナノ結晶合金の巻回コアに樹脂を含浸させている(以下、そのような樹脂を「含浸樹脂」とも称する)。含浸樹脂にはエポキシ樹脂を用いている。
【0004】
また、特許文献2では、ノイズフィルタ向けにナノ結晶合金箔の巻回コアを切断して分割形状にするため、樹脂を含浸して固化成型している。このとき、ナノ結晶合金箔の厚さに対する樹脂層の厚さを規定することで、切断してもインピーダンスが低下しにくいことを説明している。こちらも含浸樹脂にはエポキシ樹脂を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-027413号公報
【文献】特開2021-163772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような積層コアにおいては、透磁率が所期したよりも低くなる場合があることが判明した。
【0007】
そこで、本発明は、高い透磁率を有する積層コア、高いノイズ抑制効果を有するノイズフィルタ、及び、高効率の磁心を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、含浸樹脂の厚さが層間でばらつくことにより生じる含浸後の硬化処理での歪みにより積層コアの透磁率が低下することが判明した。そして、軟磁性金属薄帯の層間に樹脂を含浸して固化成型した積層コアにおいて、軟磁性金属薄帯の層間距離dの合計Sに対する軟磁性金属薄帯の層間距離dの平均daveの4倍以上の軟磁性金属薄帯の層間距離の合計S4の割合R4を10.0%以下にすることで、上記の課題を有利に解決し得るという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)軟磁性金属薄帯を積層して構成された磁性体からなる積層コアであって、
前記軟磁性金属薄帯の層間に樹脂を有し、
前記軟磁性金属薄帯の層間距離dの合計をSとし、前記軟磁性金属薄帯の層間距離dの平均をd
aveとし、前記軟磁性金属薄帯の層間のうち前記層間距離が前記平均d
aveの4倍以上である層間の前記層間距離の合計をS
4とするとき、
前記合計Sに対する前記合計S
4の比R
4=S
4/Sは、10.0%以下であることを特徴とする、積層コア。
ここで、「軟磁性金属薄帯の層間距離d」は、
図3に模式的に示すように、積層コアの側面視において120°間隔の3つの径方向ラインに存在する各層間の距離をいうものとする。また、「軟磁性金属薄帯の層間距離d」は、
図2に模式的に示すように、各径方向ラインにおいて、積層コアの径方向外側端と径方向内側端との径方向の中点から、径方向外側に径方向の全長の45%の積層コアの径方向領域と径方向内側に45%の積層コアの径方向領域とからなる、径方向全長の90%の径方向領域に存在する各層間を対象として計測する。なお、径方向全長の90%の径方向領域の端部に位置する層間は計測の対象としない。よって、「層間距離の合計S」、「層間距離dの平均d
ave」及び「平均d
aveの4倍以上である層間の前記層間距離の合計S
4」は3つの径方向ラインの径方向全長の90%の径方向領域に存在する全ての層間の「軟磁性金属薄帯の層間距離d」から算出される。なお、「軟磁性金属薄帯の層間距離d」は、光学顕微鏡を用いて計測することができる。
【0010】
(2)前記軟磁性金属薄帯の層間の前記樹脂のガラス転移温度が、85℃以上である、前記(1)に記載の積層コア。
【0011】
(3)前記軟磁性金属薄帯の層間の前記樹脂のガラス転移温度が、125℃以上である、前記(1)に記載の積層コア。
【0012】
(4)前記比R4=S4/Sは、10.0%以下である、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の積層コア。
【0013】
(5)前記軟磁性金属薄帯は、ナノ結晶合金からなる、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層コア。
【0014】
(6)前記軟磁性金属薄帯は、アモルファス合金からなる、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層コア。
【0015】
(7)100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが、10,000以上である、前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の積層コア。
【0016】
(8)周方向に途切れた不連続部分を有する、複数の環状積層磁性片を組み合わせてなる、前記(1)~(7)のいずれか1つに記載の積層コア。
【0017】
(9)前記(1)~(8)のいずれか1つに記載の積層コアを用いた、ノイズフィルタ。
(10)前記(1)~(8)のいずれか1つに記載の積層コアを用いた、トランス又はモーター用の磁心。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、本発明は、高い透磁率を有する積層コア、高いノイズ抑制効果を有するノイズフィルタ、及び、高効率の磁心を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる積層コアの側面図である。
【
図2】層間距離の合計S及び層間距離dの平均d
aveの測定範囲について説明するための模式図である。
【
図3】層間距離dの測定方法について説明するための模式図である。
【
図4】実施例1の金属薄帯層間距離を測定した観察画像の1つを示す図である。
【
図5】実施例1の金属薄帯層間距離のヒストグラムである。
【
図6】比較例1の金属薄帯層間距離を測定した観察画像の1つを示す図である。
【
図7】比較例1の金属薄帯層間距離のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0021】
<積層コア>
図1は、本発明の一実施形態にかかる積層コアの側面図である。
図1に示すように、この積層コア1は、軟磁性金属薄帯2を積層して構成された磁性体からなる。積層コア1は、円筒状の形状である。また、軟磁性金属薄帯2の層間に樹脂(含浸した状態の含浸樹脂)3を有している。
図1は模式的に示した図であり、積層コア1は軟磁性金属薄帯2をロール状に巻き取ることにより径方向に積層され、層間に樹脂3を有している環状磁性体である。
特には限定されないが、積層コア1の外径は、15~250mmとすることができ、内径は、6~155mmとすることができ、高さ(円筒状の形状の軸方向の高さ)は、3~100mmとすることができる。
【0022】
<<軟磁性金属薄帯>>
軟磁性金属薄帯2としては、保磁力が小さく透磁率が大きいものが好ましい。軟磁性金属薄帯2の軟磁性材料としては、例えば、Fe-Ni系合金(パーマロイ)、Fe-Si系合金(珪素鋼)等の軟磁性金属、Co基アモルファス合金、Fe基アモルファス合金等のアモルファス合金、Fe基ナノ結晶合金等を用いることができる。具体的には、軟磁性金属薄帯2は、ナノ結晶合金又はアモルファス合金からなることが好ましい。
【0023】
軟磁性金属薄帯2としてアモルファス合金やFe基ナノ結晶合金を用いる場合、例えば、一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-b-c-dAxM’yM”zXbSicBd(原子%)(式中、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素、AはCu,Auから選ばれた少なくとも1種の元素、M’はTi,V,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はCr,Mn,Sn,Zn,Ag,In,白金属元素,Mg,N及びSから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC,Ge,Ga,Al及びPから選ばれた少なくとも1種の元素を示し、a,x,y,z,b,c及びdはそれぞれ0≦a≦0.1,0.1≦x≦3,1≦y≦10,0≦z≦10,0≦b≦10,11≦c≦17,3≦d≦10,及び65≦100-x-y-z-b-c-d≦85を満たす。)により表される組成の合金を用いることができる。
【0024】
また、Fe基ナノ結晶合金の成分組成は特に限定されないが、原子%で、Cu:0.5~2.0%、Nb:1.0~5.0%、Si:11.0~15.0%、B:5.0~10.0%であり、残部が実質的にFeからなる成分組成とすることが好ましい。ただし、本開示の特性を満足するものであれば、この限りではない。
【0025】
軟磁性金属薄帯2としてアモルファス合金やFe基ナノ結晶合金を用いる場合、軟磁性金属薄帯2の厚さは、特には限定されないが、例えば10~30μmとすることができる。軟磁性金属薄帯2の厚さを30μm以下とすることにより、冷却速度を十分にしてアモルファス層を均一に形成し、透磁率が低下しないようにすることができる。一方で、軟磁性金属薄帯2の厚さを10μm以上とすることにより、軟磁性金属薄帯2の表面に空孔や不連続部分が生じないようにして強度の低下を抑制し、ロール状に巻き取る際に破断しやすくなって作業性が悪くならないようにすることができる。また、積層した後に含浸樹脂3を含浸させて硬化させるときに変形しづらくなり、軟磁性金属薄帯2に歪みが生じないようにして透磁率の低下を抑制することができる。同様の理由により、軟磁性金属薄帯2の厚さは、12~25μmとすることがより好ましく、14~20μmとすることがさらに好ましい。軟磁性金属薄帯2はロール状に巻き取ることにより径方向に積層された環状磁性体として使用される。また、所定のサイズに切断して積み重ねることにより積層磁性体としても使用される。
【0026】
<<含浸樹脂>>
熱処理した積層コア1の軟磁性金属薄帯2の層間に樹脂3を含浸させることで、軟磁性金属薄帯2を固定させ、形状を維持させることができる。含浸樹脂3としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーン系エラストマー等を用いることができる。使用する含浸樹脂3のガラス転移温度は、85℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度を85℃以上とすることにより、高温環境下での経年変化による含浸樹脂3の寸法変化や接着力の低下を生じないようにして、軟磁性金属薄帯2の固定を容易ならしめ形状を安定して維持することができる。また、軟磁性金属薄帯2の内部で経時的な歪みが生じないようにして、透磁率の低下を抑制することができる。含浸樹脂3のガラス転移温度は、125℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらにより好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。使用する含浸樹脂3は、硬化剤の変更によりガラス転移温度を調整でき、硬化前の粘度が低く、硬化後に軟磁性金属薄帯2との接着力が高い、エポキシ樹脂が好ましい。
【0027】
含浸樹脂3を軟磁性金属薄帯2の層間に含浸させる際の含浸樹脂3の粘度は、2000mPa・s以下とすることが好ましい。上記のような比較的低い粘度で含浸させることにより、含浸樹脂3を軟磁性金属薄帯2の層間に十分浸透しない部分や軟磁性金属薄帯2の層間を拡大・変形させて過剰に浸透する部分が生じないようにして、後述の比R4=S4/Sを10.0%以下にすることを可能にし、軟磁性金属薄帯2に歪みが生じることによる透磁率の低下を抑制することができる。粘度の高い含浸樹脂3を用いる場合は、温度調整や有機溶剤などの希釈剤の添加により粘度を調整することが好ましい。含浸樹脂3を軟磁性金属薄帯2の層間に含浸させる際の含浸樹脂3の粘度は、550mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0028】
含浸樹脂3の含浸は、未硬化の含浸樹脂3を常温~80℃に加温した状態で、含浸圧力を常圧~減圧(-0.05MPaG)状態で10分~60分浸漬して行うことが好ましい。温度は使用する含浸樹脂3の粘度に応じて調整することができる。含浸圧力を-0.05MPaG以上とすることにより、軟磁性金属薄帯2の層間を拡大・変形させて過剰に浸透する部分が生じることを抑制して、後述の比R4=S4/Sを10.0%以下にすることを可能にし、軟磁性金属薄帯2の歪みの発生を抑制して透磁率の低下を抑制することができる。含浸圧力は常圧とすることがより好ましい。浸漬中は軟磁性金属薄帯2の層間から発生する気泡を効率的に除去するために、含浸液を揺動させたり、対流させたり、振動を加えたりすることもできる。また、含浸樹脂3を含浸させることが難しい場合は、軟磁性金属薄帯2(金属箔)を積層する前に、表面に有機系や無機系の接着剤を塗布することが好ましい。
【0029】
含浸樹脂3を含浸させた積層コア1は、含浸樹脂3を硬化させるために熱処理を行う。熱処理温度や時間は用いる樹脂に対応して適切な条件で行う必要があるが、例えば50~200℃の熱処理温度で0.5~10時間の熱処理時間で行うことができる。低温から複数回に分けて段階的に熱処理することもできる。
【0030】
積層コア1の説明に戻って、積層コア1は、原料金属箔を所定のサイズ及び形状にしたものを束ねたり、ロール状に巻き取ったりして作製することができる。金属箔の充填率は、金属箔を束ねる際の拘束力や巻き取る際の張力により調整することができるが、例えば65vol%~85vol%の範囲に調整することができる。金属箔の充填率を例えば65vol%以上とすることにより、磁性体の割合が小さくなり過ぎないようにして透磁率が低下しないようにし、積層コア1の体積を小さくし得る。一方で、金属箔の充填率を例えば85vol%以下とすることにより、軟磁性金属薄帯2の層間距離dが小さくなり過ぎないようにし、含浸樹脂3を軟磁性金属薄帯2の層間に十分に浸透させて、固化成型しやすくすることができる。
【0031】
積層した金属箔は、成型時の歪みを取り除くために熱処理を行う。また、アモルファス合金は熱処理することで内部にナノ結晶を析出させることができる。熱処理温度は、例えば350℃から700℃で行うことができる。熱処理における雰囲気は、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気中や大気中で行うことが好ましい。
【0032】
図1に示した例では、積層コア1は、一体型であるが、ケーブルへの取り付け性を高めるために積層コア1を周方向に少なくとも2つ以上に分割し、分割型コアとして構成することもできる。あるいは、積層コア1を、周方向に途切れた不連続部分を有する、複数の環状積層磁性片を例えば軸方向に組み合わせて構成することができる。この際、軸方向に隣接する前記不連続部分は、軸方向に見た際に重ならないようにする(特に、重なる部分を有しないようにする)ことが好ましい。上述のように分割型コア、または、不連続部分を有する、複数の環状積層磁性片の組み合わせからなる積層コアとした場合、磁性片同士の接触面が経時変化により変形しにくい方が性能は安定する。軟磁性金属薄帯2の接着にガラス転移温度の高い樹脂を使用することで、特に高温に曝される使用環境で接触面の形状が安定し、表面粗さが悪化しにくくなるため、高温でも安定した性能を維持できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の積層コア1は、軟磁性金属薄帯2を積層して構成された磁性体からなる積層コアであり、軟磁性金属薄帯2の層間に含浸した状態の含浸樹脂3を有する。そして、本実施形態の積層コア1においては、軟磁性金属薄帯2の層間距離dの合計をSとし、軟磁性金属薄帯2の層間距離dの平均をdaveとし、軟磁性金属薄帯2の層間のうち層間距離が平均daveの4倍以上である層間の層間距離の合計をS4とするとき、前記合計Sに対する前記合計S4の比R4=S4/Sは、10.0%以下である。
以下、本実施形態の積層コア1の作用効果について説明する。
【0034】
本実施形態の積層コア1によれば、軟磁性金属薄帯2の層間に含浸した状態の含浸樹脂3を有するため、軟磁性金属薄帯2を固定させ、形状を維持させることができる。そして、前記比R4=S4/Sが10.0%以下であることにより、軟磁性金属薄帯2に歪みが生じるのを抑制して、積層コア1の高い透磁率を達成することができる。
同様の理由により、前記比R4=S4/Sは、5.0%以下であることが好ましい。
【0035】
ここで、軟磁性金属薄帯2の層間の含浸樹脂3のガラス転移温度は、85℃以上であることが好ましい。最近では、電動車向けに、積層コアを用いた製品が多く用いられているが、高速動作や高出力化により、使用温度環境が高くなっている。そのため、積層コアを固化成型する含浸樹脂にも高い耐熱性が求められる。耐熱性の指標の1つであるガラス転移温度が上記の範囲であることにより、耐熱性を向上させることができる。同様の理由により、軟磁性金属薄帯2の層間の含浸樹脂3のガラス転移温度は、125℃以上であることがさらに好ましい。
一般的に耐熱性の高い含浸樹脂3(例えば、ガラス転移温度が85℃以上であるような含浸樹脂3)を積層コア1に含浸すると、ガラス転移温度が高いと粘度が高い傾向にあり、軟磁性金属薄帯2の層間を拡大・変形させて過剰に浸透する部分が生じることや、硬化時の熱収縮が大きくなることから、軟磁性金属薄帯2に特に歪みが生じやすくなり、その結果、透磁率が低下してしまうということが見出された。
本開示の積層コア1によれば、耐熱性に鑑みて、上記のようなガラス転移温度の高い含浸樹脂3を用いた場合であっても、前記比R4=S4/Sを、10.0%以下とすることにより、軟磁性金属薄帯2に歪みが生じるのを抑制して、積層コア1の高い透磁率を達成することができるため、耐熱性と高い透磁率との両立を図ることができる。
【0036】
本実施形態において、積層コア1の100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzは、10,000以上であることが好ましい。後述の実施例でも示されるように、前記比R4=S4/Sを、10.0%以下とすることにより、このような高い100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzを達成することができる。特に、耐熱性の高い含浸樹脂3(例えば、ガラス転移温度が85℃以上であるような含浸樹脂3)を用いた場合であっても、このような高い100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzを達成することができる。
【0037】
<ノイズフィルタ>
本発明の一実施形態にかかるノイズフィルタは、上記の実施形態の積層コア1を用いたものである。このような積層コア1を用いたノイズフィルタによれば、高い透磁率を有する積層コア1を用いているため高いノイズ抑制効果を得ることができる。これにより、自動車や発電・電源設備、通信機器、OA/FA機器等の電子機器の電源ケーブルに装着され、これらの電子機器内で発生し、または、外部で発生してケーブル内を伝播するノイズを抑制するノイズ対策コアとして使用することができる。特に、積層コア1の含浸樹脂3のガラス転移温度が高い(好ましくは85℃以上である)場合には、耐熱性も向上させることができ、耐熱性と高いノイズ抑制効果との両立を図ることができる。
本開示のノイズフィルタにおいても、前記合計S4の比R4=S4/Sは、10.0%以下であり、前記比R4は、5.0%以下であることが好ましい。また、軟磁性金属薄帯2の層間の含浸樹脂3のガラス転移温度が、85℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましい。軟磁性金属薄帯2は、ナノ結晶合金又はアモルファス合金からなることが好ましい。本開示のノイズフィルタに用いる積層コア1の、100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが、10,000以上であることが好ましい。
【0038】
<磁心>
本発明の一実施形態にかかる磁心は、上記の実施形態の積層コアを用いたものである。このような積層コア1を用いた磁心によれば、高い透磁率を有する積層コア1を用いているため高効率を得ることができる。例えば、積層コア1に導線を1次巻線することで、電子基板上に実装され、ノイズを抑制するコモンモードチョークコイルとして使用することができる。さらに、例えば積層コア1に導線を1次巻線、2次巻線することで、電力変換用のトランスとしても使用することができる。
特に、積層コア1の含浸樹脂3のガラス転移温度が高い(好ましくは85℃以上である)場合には、耐熱性も向上させることができ、耐熱性と高効率との両立を図ることができる。
本開示の磁心においても、前記合計S4の比R4=S4/Sは、10.0%以下であり、前記比R4は、5.0%以下であることが好ましい。また、軟磁性金属薄帯2の層間の含浸樹脂3のガラス転移温度が、85℃以上であることが好ましく、125℃以上であることがより好ましい。軟磁性金属薄帯2は、ナノ結晶合金又はアモルファス合金からなることが好ましい。本開示の磁心に用いる積層コア1の、100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが、10,000以上であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1、2)
軟磁性金属薄帯を積層した積層コアを作製した。まず、原子%で、Cu:1%、Nb:3%、Si:13.5%、B:9%であり、残部が実質的にFeからなる合金溶湯を単ロール法により急冷して、幅10mm厚さ15μmの薄帯状のFe基アモルファス合金を得た。該Fe基アモルファス合金を巻回して、外径28.5mm、内径18.0mm、高さ10mmの円筒状とした。円筒状のFe基アモルファス合金を、アルゴン雰囲気下にて490℃に保った熱処理炉に挿入し、10分間熱処理を施した。そして、Fe基ナノ結晶合金からなる、環状磁性体を作製した。得られた環状磁性体を、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に常圧下で20分浸し、環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、環状磁性体を大気中180℃(実施例1の場合)及び160℃(実施例2の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。
【0041】
得られた積層コアの周波数100kHzにおけるインピーダンス比透磁率の測定には、キーサイト製4294Aインピーダンスアナライザーを用いた。リード線測定用のフィクスチャ(16047E)を用い、田中電線製のH-PCV,Φ0.5mm単線リード線を積層コアに通して1ターン状態でインピーダンスZを測定した。インピーダンスZからインピーダンス比透磁率μrzへの換算は、μrz=Z×Lm/(2πμ0f×Ae)で行った。ここで、μ0は真空の透磁率、Lmは平均磁路長、fは測定周波数、Aeは有効断面積である。積層コアの外径をOD、内径をID、高さをHTとしたとき、Lm=π(OD+ID)/2、Ae=(OD-ID)×HT/2×drで計算される。drは磁性体の充填率であり、今回は0.75であった。
【0042】
保磁力の測定は、東京特殊鋼製の自動計測保磁力計K-HC1000型を用いた。測定モードはSLOWで、測定方向は積層コアの径方向で、周方向に120°等間隔で計3回測定の平均値とした。含浸樹脂の粘度測定は、英弘精機株式会社製のブルックフィールド粘度計DV1Mを用いた。予め樹脂を所定の温度に加熱しておき、スピンドルトルクが10~90%に収まるようにモーター回転数を調整して測定した。含浸樹脂のガラス転移温度は、NETZSCH製の示差走査熱量計DSC3500を用いた。樹脂を含浸し硬化した積層コアから4mm×4mm×1mmの小片を切り出し、Pt製の容器に入れ、Arガスを20mL/min流し、20℃~570℃で10℃/minの昇温速度で加熱し、吸熱反応の開始点から求めた。作製した積層コアの含浸樹脂のガラス転移温度は150℃であった。
【0043】
積層コアの軟磁性金属薄帯の層間距離の測定は、
図2に示す積層コアの側面で行った。側面を♯500から♯2000の研磨紙で仕上げ、Rirox製デジタルマイクロスコープRH-2000を用い、対物500倍で観察した画像から軟磁性金属薄帯の層間距離を測定した。積層コアの内周側から外周側に向かって軟磁性金属薄帯の厚さ方向に1直線に観察し、積層コアの厚さwの90%(径方向の中心位置から径方向内側に45%及び径方向外側に45%)を網羅する範囲とした。観察場所は
図3に示すように周方向に120°等間隔の3直線(3つの径方向ライン)とし、軟磁性金属薄帯の層間距離dの平均値d
aveと合計Sを算出した。得られた軟磁性金属薄帯の層間距離をもとに、軟磁性金属薄帯の層間距離の合計Sに対する、軟磁性金属薄帯の層間距離の平均値d
aveの4倍以上(4d
ave以上)の軟磁性金属薄帯の層間距離の合計S
4の比S
4/S×100(%)を算出した。
【0044】
以下の表1に、得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。また、
図4に実施例1の金属薄帯層間距離を測定した観察画像の1つを、
図5に実施例1の金属薄帯層間距離のヒストグラムを示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、ガラス転移温度の異なるエポキシ樹脂の主剤と硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に常圧下で環状磁性体を20分浸し、環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中150℃で5時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。作製した積層コアの含浸樹脂のガラス転移温度は125℃であった。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、ガラス転移温度の異なるエポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を0.5wt%添加した溶液を作製し、溶液を25℃で維持した中に常圧下で環状磁性体を1時間浸し、環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中80℃で3時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。作製した積層コアの含浸樹脂のガラス転移温度は85℃であった。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0047】
(実施例5、6)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を30℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.05MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃(実施例5の場合)及び160℃(実施例6の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0048】
(実施例7、8)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を1wt%添加した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に常圧下で環状磁性体を20分浸し、環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃(実施例7の場合)及び160℃(実施例8の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0049】
(実施例9)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を1wt%添加した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.05MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0050】
(実施例10、11)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を1wt%添加した溶液を作製し、溶液を25℃で維持した中に常圧下で環状磁性体を1時間浸し、環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃(実施例10の場合)及び160℃(実施例11の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0051】
(実施例12)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、ガラス転移温度の異なるエポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.05MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中80℃で3時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様である。作製した積層コアの含浸樹脂のガラス転移温度は50℃であった。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0052】
(実施例13)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、実施例12と同様のエポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を80℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.05MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中80℃で3時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様である。作製した積層コアの含浸樹脂のガラス転移温度は50℃であった。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0053】
(比較例1、2)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を25℃で維持した中に環状磁性体を浸し、-0.10MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃(比較例1の場合)及び160℃(比較例2の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。また、
図6に比較例1の金属薄帯層間距離を測定した観察画像の1つを、
図7に比較例1の金属薄帯層間距離のヒストグラムを示す。
【0054】
(比較例3)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液を作製し、溶液を30℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.10MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0055】
(比較例4、5)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を1wt%添加した溶液を作製し、溶液を25℃で維持した中に環状磁性体を浸し、-0.1MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃(比較例4の場合)及び160℃(比較例5の場合)で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0056】
(比較例6)
実施例1と同様に環状磁性体を作製後、エポキシ樹脂及び硬化剤を規定量比で混合した溶液に対し硬化促進剤を1wt%添加した溶液を作製し、溶液を50℃に保温した中に環状磁性体を浸し、-0.1MPaGまで真空引きを行い10分保持した後、大気圧開放して環状磁性体に樹脂を含浸させた。その後、大気中180℃で8時間保持して樹脂を硬化させ、積層コアを得た。測定方法は実施例1と同様とした。表1に得られた積層コアの作製条件と測定結果を示す。
【0057】
【0058】
図4に示した実施例1の軟磁性金属薄帯の層間距離を測定した観察画像を見ると、金属薄帯間隔(層間距離)が均等になっているのに対し、
図6に示した比較例1の観察画像では軟磁性金属薄帯の層間の間隔が広がっている箇所が見られ、金属薄帯に歪みが生じている。
図7に示した比較例1の軟磁性金属薄帯の層間距離のヒストグラムを見ると、軟磁性金属薄帯の層間距離の広い部分が多く分布している。表1に示したように、実施例1の軟磁性金属薄帯の層間距離dの合計Sに対する、軟磁性金属薄帯の層間距離dの平均d
aveの4倍以上の軟磁性金属薄帯の層間距離の合計S
4の比R
4=S
4/Sが2.2%であるのに対し、比較例1の比R
4=S
4/Sが15.2%と大きくなっている。実施例1のインピーダンス比透磁率μrzは12,270であったのに対し、比較例1のインピーダンス比透磁率μrzは8048と低く、比R
4=S
4/Sが小さい方が、μrzが高くなることが分かる。
【0059】
その他の実施例と比較例を見ると、ガラス転移温度の高い含浸樹脂を使用した場合でも、R4を10%以下にすることでμrzは10,000を超える積層コアを得られることが分かる。軟磁性金属薄帯の層間距離dの合計Sに対する軟磁性金属薄帯2の層間距離の平均の3倍以上の金属薄帯層間距離の合計S3の割合R3(=S3/S×100)%で比較した場合、μrzが10,000を超える実施例1のような積層コアでR3は10.4%であり、μrzが10,000以下の比較例6のような積層コアのR3=10.3%と同等で、大きな差異が見られない。したがって、R4が10%以下の積層コアであれば、高い透磁率を有しつつ高温環境となる場所でも安定して使用でき、ノイズフィルタにおいては高いノイズ抑制効果が期待でき、トランスやモーターの磁心においては損失の低減が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示の積層コアは、自動車や発電・電源設備、通信機器、OA/FA機器等の電子機器の電源ケーブルに装着され、これらの電子機器内で発生し、または、外部で発生してケーブル内を伝播するノイズを抑制するノイズ対策コアとして使用できる。また、本開示の積層コアに導線を1次巻線することで、電子基板上に実装され、ノイズを抑制するコモンモードチョークコイルとして使用できる。さらに、本開示の積層コアに導線を1次巻線、2次巻線することで、電力変換用のトランスとしても使用できる。
【符号の説明】
【0061】
1:積層コア、
2:軟磁性金属薄帯、
3:樹脂(含浸樹脂)