(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20241223BHJP
H01T 13/54 20060101ALI20241223BHJP
H01T 13/32 20060101ALI20241223BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/54
H01T13/32
F02P13/00 302B
(21)【出願番号】P 2023083617
(22)【出願日】2023-05-22
【審査請求日】2024-11-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】後澤 達哉
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-100382(JP,A)
【文献】国際公開第2021/229844(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/140756(WO,A1)
【文献】特開2020-184435(JP,A)
【文献】特開2020-181666(JP,A)
【文献】特開2020-149924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 13/54
H01T 13/32
F02P 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、
前記中心電極を絶縁保持する主体金具と、
前記主体金具に電気的に接続され前記中心電極に一端部が対向する柱状の接地電極と、を備え、
前記主体金具は、前記接地電極の前記一端部が内側に位置する筒状の先端部を含み、
前記先端部は、前記接地電極の他端部が挿入される孔を有するスパークプラグであって、
前記接地電極のうち前記先端部の内周側に位置する部分の表面積を、前記接地電極のうち前記孔内に位置する部分の側面積で除した値は13.1以下であるスパークプラグ。
【請求項2】
前記値は6.0以下である請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記値は5.5以下である請求項1記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主体金具に接地電極が接続されるスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
中心電極と、中心電極を絶縁保持する主体金具と、主体金具に接続された接地電極と、を備えるスパークプラグにおいて、主体金具の筒状の先端部に設けられた孔に接地電極を配置する先行技術は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では先端部に囲まれた接地電極が燃料や吸気で冷やされ難いため、過熱した接地電極が火種となって過早着火(プリイグニション)が起こるおそれがある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、過早着火の発生を低減できるスパークプラグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の態様は、中心電極と、中心電極を絶縁保持する主体金具と、主体金具に電気的に接続され中心電極に一端部が対向する柱状の接地電極と、を備え、主体金具は、接地電極の一端部が内側に位置する筒状の先端部を含み、先端部は、接地電極の他端部が挿入される孔を有するスパークプラグであって、接地電極のうち先端部の内周側に位置する部分の表面積を、接地電極のうち孔内に位置する部分の側面積で除した値は13.1以下である。当該値は6.0以下が好ましく、5.5以下がより好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接地電極のうち先端部の内周側に位置する部分、すなわち燃焼ガスの熱を受ける部分の表面積を、接地電極のうち孔内に位置する部分、すなわち主体金具に熱を逃がす部分の側面積で除した値が13.1以下であるため、接地電極の過熱を防ぎ、過早着火の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施の形態におけるスパークプラグの部分断面図である。
【
図2】
図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグの断面図である。
【
図3】第2実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態におけるスパークプラグ10の部分断面図である。
図1にはスパークプラグ10の先端側の部分の軸線Oを含む断面が図示されている。
図1では紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という(
図2及び
図3においても同じ)。
図1に示すようにスパークプラグ10は、絶縁体11、中心電極15、主体金具20及び接地電極25を備えている。
【0010】
絶縁体11は軸線Oに沿って延びる軸孔12を有する略円筒状の部材である。絶縁体11は機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等のセラミックスにより形成されている。絶縁体11は、係止部13と、係止部13の先端側に隣接する先端部14と、を含む。先端部14の外径は係止部13の外径よりも小さい。
【0011】
絶縁体11の少なくとも係止部13から先端部14にかけて、軸孔12の中に軸線Oに沿って中心電極15が配置されている。中心電極15は、Niを主成分とする棒状の母材16と、母材16の先端に配置されたPt,Rh,Ru,Ir等の貴金属のうちの1種以上を主成分とするチップ17と、チップ17と母材16とを接合する溶融部18と、を含む。チップ17や溶融部18は省略できる。
【0012】
中心電極15の先端は、絶縁体11から先端側に突き出している。中心電極15は軸孔12内で端子金具19と電気的に接続されている。端子金具19は、点火装置(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具19は絶縁体11の後端に固定されている。
【0013】
主体金具20は、導電性を有する金属材料(例えば銅、銅合金、低炭素鋼等)によって形成された略円筒状の部材である。主体金具20は絶縁体11の外周に配置されている。主体金具20は、絶縁体11の少なくとも係止部13及び先端部14の外周側に位置する円筒状の先端部21を含む。先端部21は、外周におねじ22が設けられており、内周に棚部23が設けられている。おねじ22は、エンジン(図示せず)のプラグホールに設けられためねじにはまる。棚部23は、絶縁体11の係止部13の先端側に位置し、係止部13を係止する。先端部21は、絶縁体11の先端部14よりも先端側に延びている。
【0014】
先端部21の棚部23よりも先端側の部分に、先端部21の内周の一部がくぼんだ孔24が設けられている。本実施形態では孔24は先端部21を径方向に貫通しており、断面が円形であり、孔24によっておねじ22の一部が欠けている。孔24の中に接地電極25の一部が配置されている。孔24に一部が配置された接地電極25は、先端部21から中心電極15へ向かって突き出している。
【0015】
主体金具20の先端側を閉塞するキャップ26によって、キャップ26の内側に空間29が設けられている。キャップ26の材料は、Fe,Ni,Cu等の1種以上を主成分とする金属材料が例示される。本実施形態ではキャップ26は溶融部28を介して先端部21の先端側に接続されている。空間29の内と外とを連通する貫通孔27がキャップ26に設けられている。
【0016】
図2は
図1のIIで示す部分を拡大したスパークプラグ10の断面図である。接地電極25は柱状の形をしており、中心電極15(
図1参照)と対向して火花ギャップを形成する一端部32と、孔24の中に配置される他端部33と、を含む。一端部32は、先端部21の内周30の内側に位置する。一端部32は円柱状であり一端部32の断面は円形である。他端部33は、先端部21の外周31の内側であって、おねじ22の谷底22aよりも内側に位置する。他端部33は円柱状であり他端部33の断面は孔24にはまり合う円形である。先端部21を貫通する孔24は他端部33で塞がっている。
【0017】
接地電極25は、例えばNiを主成分とする母材34と、Pt,Rh,Ru,Ir等の貴金属のうちの1種以上を主成分とするチップ35と、チップ35と母材34とを接合する溶融部36と、を含む。接地電極25の一端部32はチップ35の一部を含み、他端部33は母材34の一部を含む。チップ35や溶融部36は省略できる。
【0018】
接地電極25は孔24の中で溶融部37を介して先端部21に接続されている。溶融部37は、孔24の中に配置した接地電極25の底面38にレーザビームを照射して作られる。溶融部37は、接地電極25の底面38の一部を含む部分と先端部21の一部を含む部分とが溶けてなる。本実施形態では溶融部37は接地電極25の底面38の全周に亘って連続しており、溶融部37の径方向の内側の端が先端部21の内周30に達している。
【0019】
溶融部37と先端部21との間の界面39を通して、接地電極25の熱が先端部21に伝わる。これにより接地電極25は冷やされる。界面39の面積は伝熱に大きな影響を与える。溶融部37は接地電極25の一部である。一方、接地電極25のうち先端部21の内周30の内側に位置する部分(空間29内に位置する部分)の、接地電極25の側面40と底面41は、空間29の中で燃料が燃焼して発生した熱を受ける受熱面である。
【0020】
エンジン(図示せず)に取り付けられたスパークプラグ10(
図1参照)は、エンジンのバルブ操作により、エンジンの燃焼室から貫通孔27を通って空間29に燃料が流入する。スパークプラグ10は、中心電極15と接地電極25との間の放電により火炎核を生成する。火炎核が成長すると空間29内の燃料に点火し燃料が燃焼する。燃料の燃焼によって生じる膨張圧力により、火炎を含むガス流が生じ、火炎を含むガスを貫通孔27から燃焼室に噴射する。その火炎の噴流によって燃焼室内の燃料が燃焼する。すなわちキャップ26の内側の空間29は、エンジンの燃焼室の中に設けられた副燃焼室として機能する。
【0021】
スパークプラグ10は、接地電極25のうち先端部21の内周30側に位置する部分の、側面40の面積と底面41の面積とを合わせた表面積Sを、接地電極25のうち孔24内に位置する部分の側面積E(本実施形態では界面39の面積)で除した値S/Eが13.1以下である。接地電極25の受熱と接地電極25から先端部21への伝熱とのバランスによって接地電極25の過熱を防ぎ、過早着火の発生を低減するためである。値S/Eは6.0以下が好ましく、5.5以下がより好ましい。
【0022】
スパークプラグ10は接地電極25のうち先端部21の内周30側に位置する部分がキャップ26で覆われている。先端部21の内周30側の空間29が、キャップ26の貫通孔27を通して燃焼室(図示せず)とつながっているため、燃焼室に供給された燃料や吸気によって接地電極25が冷え難く、接地電極25が過熱し易い。しかしスパークプラグ10は値S/Eが13.1以下に設定されているため、接地電極25の過熱を防ぎ過早着火の発生を低減できる。従ってキャップ26を備えるスパークプラグ10に好適である。
【0023】
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では接地電極25の底面38の全周に亘って溶融部37が連続し、先端部21の内周30に溶融部37が達している場合について説明した。これに対し第2実施形態では、接地電極53の底面60の縁に沿って溶融部59が断続的に設けられ、先端部21の内周30と溶融部59との間に隙間がある場合について説明する。第2実施形態では、第1実施形態において説明した部分と同一の部分に同じ符号を付して、以下の説明を省略する。
【0024】
図3は第2実施の形態におけるスパークプラグ50の断面図である。
図3は主体金具20の先端部21に設けられた孔51の付近が拡大して図示され、それ以外の図示が省略されている。孔51によって先端部21の内周30の一部はくぼんでいる。本実施形態では孔51は先端部21を径方向に貫通しており、断面が円形である。孔51は、先端部21の外周31に座繰り52が設けられている。座繰り52は、おねじ22の谷底22aよりも内側に位置する。
【0025】
接地電極53は、例えばNiを主成分とする母材54と、Pt,Rh,Ru,Ir等の貴金属のうちの1種以上を主成分とするチップ55と、チップ55と母材54とを接合する溶融部56と、を含む。接地電極53は柱状の形をしており、中心電極15(
図1参照)と対向して火花ギャップを形成する一端部57と、孔51の中に配置される他端部58と、を含む。
【0026】
一端部57は円柱状であり一端部57の断面は円形である。他端部58は円柱状であり他端部58の断面は孔51にはまり合う円形である。先端部21を貫通する孔51は他端部58で塞がっている。他端部58と孔51とのはめあいは、しまりばめ、ゆるみばめ、中間ばめのいずれであっても良い。
【0027】
接地電極53は孔51の中で溶融部59を介して先端部21に接続されている。接地電極53の底面60は、座繰り52とほぼ同じ平面上に位置する。溶融部59は、孔51の中に配置した接地電極53の底面60にレーザビームを照射して作られる。溶融部59は、接地電極53の底面60の一部を含む部分と先端部21の座繰り52の一部を含む部分とが溶けてなる。本実施形態では溶融部59は接地電極53の底面60の縁に沿って断続的に設けられており、溶融部59の径方向の内側の端と先端部21の内周30との間に隙間がある。
【0028】
溶融部59と先端部21との間の界面61、及び、接地電極53のうち孔51の中の側面62を通して、接地電極53の熱が先端部21に伝わる。これにより接地電極53は冷やされる。界面61及び側面62の面積は伝熱に大きな影響を与える。溶融部59は接地電極53の一部である。一方、接地電極53のうち先端部21の内周30の内側に位置する部分の、接地電極53の側面63と底面64は、燃料が燃焼して発生した熱を受ける受熱面である。
【0029】
スパークプラグ50は、接地電極53のうち先端部21の内周30側に位置する部分の、側面63の面積と底面64の面積とを合わせた表面積Sを、接地電極53のうち孔51内に位置する部分の側面積E(本実施形態では界面61の面積と側面62の面積とを合わせた面積)で除した値S/Eが13.1以下である。接地電極53の受熱と接地電極53から先端部21への伝熱とのバランスによって接地電極53の過熱を防ぎ、過早着火の発生を低減するためである。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0031】
試験者はスパークプラグを作製するために主体金具や接地電極などの部品を準備した。主体金具は、先端部の径方向の厚さが0.3mmから1.8mmまでのものや、先端部を径方向に貫通する円形の孔の直径が0.8mmから2.5mmまでのものを準備した。試験者は、主体金具の孔にはまり合う太さをもつ種々の長さの接地電極を孔に挿入した後、接地電極の底面にレーザビームを照射して、接地電極の底面の全周を主体金具にレーザ溶接し、第1実施形態におけるスパークプラグと同形のサンプルNo.1-12を作製した。
【0032】
X線CTスキャナを用いて取得したサンプルNo.1-12の断層画像から三次元像を構築し、接地電極のうち先端部の内周側に位置する部分の表面積S(mm2)、接地電極のうち孔内に位置する部分の側面積E(溶融部の界面の面積(mm2))を求め、表面積Sを側面積Eで除した値S/Eを計算した。S/Eは表面積Sを側面積Eで除した値の小数点第2位を四捨五入した。サンプルNo.1-12は表面積Sや側面積Eは異なるが、火花ギャップの大きさ、接地電極の一端部の底面の大きさ等のその他の寸法や材料は同一であった。サンプルNo.1-12の表面積S、側面積E、S/Eを表1に記した。
【0033】
【0034】
(プリイグニション試験)
試験者はJIS D1606:2020に規定されたプリイグニション試験に従って試験用エンジンの純正スパークプラグの点火時期に対する進角を測定した。過早着火が発生したクランク角が大きいほど、過早着火が生じ難いことを示す。過早着火が発生したクランク角が、純正スパークプラグのクランク角に対して7°以上進角したサンプルはAと判定し、5°以上7°未満進角したサンプルはBと判定し、2°以上5°未満進角したサンプルはCと判定し、2°未満の進角だったサンプルはDと判定した。結果は表1の耐プレイグ性の欄に記した。
【0035】
(台上耐久試験)
試験者はJIS D1606:2020に規定された台上耐久試験に従ってサンプルNo.1-12の耐久距離を調べた。耐久距離は、中心電極と接地電極との間の火花ギャップが、試験前に比べて0.2mm大きくなったことに相当する距離である。耐久距離が10万km以上のサンプルはAと判定し、耐久距離が5万km以上10万km未満のサンプルはDと判定した。結果は表1の耐消耗性の欄に記した。
【0036】
表1に示すようにS/Eが13.1よりも大きいサンプルNo.1は耐プレイグ性の判定がDであったが、S/Eが13.1以下のサンプルNo.2-12は耐プレイグ性の判定がA-Cであった。従ってS/Eが13.1以下であると過早着火を低減できることが明らかになった。
【0037】
S/Eが6.0よりも大きく13.1以下のサンプルNo.2は耐プレイグ性の判定がCであったが、S/Eが6.0以下のサンプルNo.3-12は耐プレイグ性の判定がA又はBであった。従ってS/Eが6.0以下であると過早着火をさらに低減できることが明らかになった。
【0038】
S/Eが5.5よりも大きく6.0以下のサンプルNo.3は耐プレイグ性の判定がBであったが、S/Eが5.5以下のサンプルNo.4-12は耐プレイグ性の判定がAであった。従ってS/Eが5.5以下であると過早着火をさらに低減できることが明らかになった。
【0039】
S/Eが0.5のサンプルNo.12は耐プレイグ性の判定はAであったが、耐消耗性の判定がDであった。S/Eが0.5以下であると、中心電極との間で放電が起きる接地電極として機能する部分の体積が小さくなるため、接地電極として機能しなくなるまでの時間が短くなるからである。従って耐消耗性を考慮するとS/Eは0.5よりも大きいことが望ましい。
【0040】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0041】
実施形態では孔24,51が円形の場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。孔24,51の他の形は、楕円、半円、三角や四角、六角などの多角形、隅が丸みを帯びた多角形が例示される。孔24,51の中に配置される接地電極25,53の断面の形は、孔24,51の形に応じて、孔24,51にはまり合う形に適宜設定される。
【0042】
第1実施形態では孔24の中心線の周りに連続的に溶融部37が設けられている場合について説明し、第2実施形態では孔51の中心線の周りに断続的に溶融部59が設けられている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1実施形態において孔24の中心線の周りに断続的に溶融部37を設けたり、第2実施形態において孔51の中心線の周りに連続的に溶融部59を設けたりすることは当然可能である。
【0043】
実施形態では先端部21に接地電極25,53が溶融部37,59を介して接合されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。溶接ではなく、孔24,51に接地電極25,53をはめて固定することは当然可能である。孔24,51と接地電極25,53とのはめあいは、しまりばめや中間ばめである。この場合は溶融部の界面が無いため、側面積Eは、接地電極25,53のうち孔24,51内に位置する部分の側面の面積である。
【0044】
実施形態では接地電極25,53の底面38,60の一部が溶け残っている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極25,53の底面38,60の全体が溶融部37,59に溶けて底面38,60が消失していることはある。底面38,60の全体が溶融部37,59に溶けている場合も、溶融部37,59と先端部21との間の界面39,61の面積が側面積Eに含まれる。
【0045】
第1実施形態では孔24の大きさが、先端部21の径方向に一定の大きさである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば先端部21の径方向の外側から内側に向かうにつれて孔の大きさが小さくなる、いわゆるテーパー状の孔を先端部21に設け、その孔の中に接地電極25を配置することは当然可能である。
【0046】
実施形態では先端部21のおねじ22の部分に孔24,51を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば先端部21におねじ22のない筒状の部分を設け、筒状の部分に孔をあけて接地電極25,53を設けることは当然可能である。
【0047】
実施形態では孔24,51が先端部21を貫通している場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端部21を貫通する孔でなくても先端部21の内周30の一部がくぼんでいれば、孔の中に接地電極25,53の他端部33,58を配置できるからである。
【0048】
実施形態では接地電極25,53の他端部33,58が、接地電極25,53の一端部32,57とほぼ同じ太さである場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。接地電極25,53の一端部32,57の太さと他端部33,58の太さとを異ならせることは当然可能である。
【0049】
本実施形態では接地電極25,53の一端部32,57の断面の形と他端部33,58の断面の形とが同じ場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。一端部32,57の断面の形と他端部33,58の断面の形とを異ならせることは当然可能である。
【0050】
実施形態では中心電極15の側面と接地電極25,53の一端部32,57との間に火花ギャップを設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端部21に設ける孔24,51の位置を先端側にずらすと共に、接地電極25,53を少し長くして、中心電極15の先端と接地電極25,53の側面との間に火花ギャップを設けても良い。
【0051】
実施形態では主体金具20の先端部21の先端側にキャップ26が配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ26を省くことは当然可能である。キャップ26が無くても、主体金具20の先端部21に接地電極25,53の一端部32,57が囲まれていれば、主体金具の外に接地電極が設けられたスパークプラグに比べ、燃料や吸気による冷却は不足するからである。
【0052】
実施形態では半球状のキャップ26を主体金具20に配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャップ26の形状は適宜設定できる。キャップ26の他の形状は、有底円筒状、円板状が例示される。
【0053】
実施形態では、主体金具20にキャップ26が溶接されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端にキャップを設けた筒状部材を準備し、これを主体金具20に接続して空間29を形成することは当然可能である。筒状部材はキャップで先端が閉じた筒状の部材であり、主体金具20のおねじ22に結合するめねじが内周面に設けられている。筒状部材の外周面には、エンジンのプラグホールのめねじに結合するおねじが設けられている。筒状部材のめねじを主体金具20のおねじ22に結合することにより、主体金具20の先端側にキャップが配置される。このキャップに貫通孔27が設けられる。
【0054】
筒状部材を主体金具20に接続して主体金具20の先端側にキャップを配置する手段は、筒状部材の内周面のめねじを、主体金具20のおねじ22に結合するものに限らない。他の手段によって筒状部材を主体金具に接続することは当然可能である。他の手段としては、例えば筒状部材と主体金具とを溶接等によって接合するものが挙げられる。筒状部材の材料は、Ni基合金やステンレス鋼等の金属材料や窒化ケイ素等のセラミックスが例示される。
【符号の説明】
【0055】
10,50 スパークプラグ
15 中心電極
20 主体金具
21 先端部
24,51 孔
25,53 接地電極
32,57 一端部
33,58 他端部