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特許7608555粘結剤組成物、砂組成物、鋳型造型用キット及び鋳型の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】粘結剤組成物、砂組成物、鋳型造型用キット及び鋳型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/22 20060101AFI20241223BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20241223BHJP
   C09J 171/10 20060101ALI20241223BHJP
   C08G 8/00 20060101ALI20241223BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
B22C1/22 B
B22C1/00 B
C09J171/10
C08G8/00 H
C08K5/17
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023172514
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2022203938の分割
【原出願日】2022-12-21
(65)【公開番号】P2024089621
(43)【公開日】2024-07-03
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】永井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 毅
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-22996(JP,A)
【文献】特許第2504660(JP,B2)
【文献】特開2016-20002(JP,A)
【文献】特開2016-2550(JP,A)
【文献】特開2020-142299(JP,A)
【文献】特開2021-23985(JP,A)
【文献】特開2021-70038(JP,A)
【文献】特開2001-314939(JP,A)
【文献】特開昭61-37346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/22
B22C 1/00
C09J 171/10
C08G 8/00
C08K 5/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性フェノール樹脂と、
モノエタノールアミンと、
を含み、
前記水溶性フェノール樹脂の濃度45質量%水溶液の25℃におけるpHが12以上である、粘結剤組成物(ただし、前記粘結剤組成物中の窒素含有量が0.05~0.40質量%であるものを除く。)
【請求項2】
水溶性フェノール樹脂と、
モノエタノールアミンと、
を含み、
前記水溶性フェノール樹脂の濃度45質量%水溶液の25℃におけるpHが12以上である粘結剤組成物であって、
前記水溶性フェノール樹脂の含有量が、前記粘結剤組成物の総質量に対して45~50質量%であり、
前記モノエタノールアミンの含有量が窒素換算で、前記粘結剤組成物の総質量に対して0.0225~0.045質量%である、粘結剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘結剤組成物と、耐火性粒状材料とを含む、砂組成物。
【請求項4】
有機エステルをさらに含む、請求項3に記載の砂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の粘結剤組成物と、耐火性粒状材料とを各々独立して有する、鋳型造型用キット。
【請求項6】
有機エステル及び炭酸ガスからなる群より選ばれる1種以上の硬化剤をさらに独立して有する、請求項5に記載の鋳型造型用キット。
【請求項7】
請求項4に記載の砂組成物を鋳型製造用の型に充填し、前記砂組成物に含まれる前記粘結剤組成物を硬化させる、鋳型の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の砂組成物を鋳型製造用の型に充填し、有機エステル又は炭酸ガスを通気させて、前記砂組成物に含まれる前記粘結剤組成物を硬化させる、鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘結剤組成物、砂組成物、鋳型造型用キット及び鋳型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳型造型プロセスの1種に、アルカリフェノール樹脂を粘結剤として用いたアルカリフェノール樹脂プロセスがある。アルカリフェノール樹脂プロセスの代表的なものとして、珪砂等の耐火性粒状材料にアルカリフェノール樹脂と、硬化剤である有機エステルとを加えて混練して砂組成物(混練砂)とし、得られた砂組成物を木型、樹脂型、金型等(以下、これらを総称して「鋳型造型用型」ともいう。)に充填して造型し、アルカリフェノール樹脂を硬化させて耐火性粒状材料を粘結して固化させて鋳型(自硬性鋳型)とする方法(自硬性鋳型造型法)が知られている。また、耐火性粒状材料にアルカリフェノール樹脂を加えて砂組成物とし、得られた砂組成物を鋳型造型用型に充填して造型し、これに硬化剤である有機エステル又は炭酸ガスを通気してアルカリフェノール樹脂を硬化させて砂を粘結して固化させて鋳型(ガス硬化鋳型)とする方法(ガス硬化鋳型造型法)も知られている。
【0003】
ところが、粘結剤の硬化時等にホルムアルデヒドが発生し、作業環境が悪化することがある。
従来、ホルムアルデヒドの発生量を低減する方法として、尿素やレゾルシン等のホルムアルデヒド捕捉剤を粘結剤に添加する方法が知られている。
例えば特許文献1には、レゾルシン等のフェノール化合物単量体と有機エステルとを含む硬化剤組成物と、耐火性粒状材料と、水溶性フェノール樹脂とを混練した混練砂を鋳型造型用型に充填して鋳型を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2504660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粘結剤に尿素を添加する場合、ホルムアルデヒドの発生量を十分に低減するためには、大量の尿素を添加する必要がある。その結果、粘結剤組成物中の尿素由来の窒素量が増えてしまい、鋳物欠陥が生じることがある。また、ホルムアルデヒド自体は架橋剤の役割を果たすため、尿素がホルムアルデヒドを捕捉すると架橋剤としての効果が得られにくくなるため、鋳型の強度が低下してしまう。
【0006】
一方、レゾルシンはフェノール樹脂の1種であることから、ホルムアルデヒドを捕捉した状態で粘結剤の硬化に取り込まれるため、ホルムアルデヒドがレゾルシンに捕捉されても鋳型の強度を維持できる。
しかし、レゾルシンを配合した粘結剤組成物は増粘しやすく、保存安定性が低下しやすい。
【0007】
本発明は、鋳型強度を維持しつつ、ホルムアルデヒドの発生量を低減でき、保存安定性にも優れる粘結剤組成物、砂組成物、鋳型造型用キット及び鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 水溶性フェノール樹脂と、
1級アミン、2級アミン及び多価アミンからなる群より選ばれる1種以上のアミン化合物(但し、尿素を除く。)と、
を含み、
前記水溶性フェノール樹脂の濃度45質量%水溶液の25℃におけるpHが12以上である、粘結剤組成物。
[2] 前記アミン化合物の含有量が窒素換算で、前記水溶性フェノール樹脂100質量部に対して0.05~0.53質量部である、前記[1]の粘結剤組成物。
[3] 前記[1]又は[2]の粘結剤組成物と、耐火性粒状材料とを含む、砂組成物。
[4] 有機エステルをさらに含む、前記[3]の砂組成物。
[5] 前記[1]又は[2]の粘結剤組成物と、耐火性粒状材料とを各々独立して有する、鋳型造型用キット。
[6] 有機エステル及び炭酸ガスからなる群より選ばれる1種以上の硬化剤をさらに独立して有する、前記[5]の鋳型造型用キット。
[7] 前記[4]の砂組成物を鋳型製造用の型に充填し、前記砂組成物に含まれる前記粘結剤組成物を硬化させる、鋳型の製造方法。
[8] 前記[3]の砂組成物を鋳型製造用の型に充填し、有機エステル又は炭酸ガスを通気させて、前記砂組成物に含まれる前記粘結剤組成物を硬化させる、鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋳型強度を維持しつつ、ホルムアルデヒドの発生量を低減でき、保存安定性にも優れる粘結剤組成物、砂組成物、鋳型造型用キット及び鋳型の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
以下の明細書において、「鋳型」とは、本発明の粘結剤組成物、砂組成物又は鋳型造型用キットを用いて造型してなるものである。
【0011】
[粘結剤組成物]
以下、本発明の第一の態様の粘結剤組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の粘結剤組成物は、以下に示す水溶性フェノール樹脂とアミン化合物(但し、尿素を除く。)とを含む。
粘結剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、水溶性フェノール樹脂及びアミン化合物に加えて、これら以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0012】
<水溶性フェノール樹脂>
水溶性フェノール樹脂の25℃におけるpHは12以上であり、12~14が好ましく、12~13がより好ましくい。すなわち、本実施形態の粘結剤組成物に含まれる水溶性フェノール樹脂は、アルカリフェノール樹脂であるともいえる。
水溶性フェノール樹脂のpHは、水溶性フェノール樹脂を濃度が45質量%となるように水に溶解して調製した水溶液のpHを測定温度25℃で測定した値である。
【0013】
水溶性フェノール樹脂は、アルカリ金属の水酸化物の存在下、常法により、フェノール類及びビスフェノール類からなる群より選ばれる1種以上(以下、「フェノール系化合物」という。)と、アルデヒド類とを水系で反応させることで得られる。
水溶性フェノール樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
フェノール類としては、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、3,5-キシレノール、m-エチルフェノール、m-プロピルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、o-ブチルフェノール、レゾルシノール、ハイドロキノン、カテコール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、メチルハイドロキノン、2-メチルレゾルシノール、2,3-ジメチルハイドロキノン、2,5-ジメチルレゾルシノール、2-エトキシフェノール、4-エトキシフェノール、4-エチルレゾルシノール、3-エトキシ-4-メトキシフェノール、2-プロペニルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-イソプロポキシフェノール、4-ピロポキシフェノール、2-アリルフェノール、3,4,5-トリメトキシフェノール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、ピロガロール、フロログリシノール、1,2,4-ベンゼントリオール、5-イソプロピル-3-メチルフェノール、4-ブトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、4-t-ペンチルフェノール、2-t-ブチル-5-メチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3-フェノキシフェノール、4-フェノキシフェノール、4-へキシルオキシフェノール、4-ヘキサノイルレゾルシノール、3,5-ジイソプロピルカテコール、4-ヘキシルレゾルシノール、4-ヘプチルオキシフェノール、3,5-ジ-t-ブチルフェノール、3,5-ジ-t-ブチルカテコール、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-sec-ブチルフェノール、4-クミルフェノール、ノニルフェノール、2-シクロペンチルフェノール、4-シクロペンチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどが挙げられる。
これらフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールS、ビスフェノールZなどが挙げられる。
これらビスフェノール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルへミホルマール、プロピルへミホルマール、サリチルアルデヒド、グリオキザール、ブチルヘミホルマール、フェニルへミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α-フェニルプロピルアルデヒド、β-フェニルプロピルアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-クロロベンズアルデヒド、o-ニトロベンズアルデヒド、m-ニトロベンズアルデヒド、p-ニトロベンズアルデヒド、o―メチルベンズアルデヒド、m-メチルベンズアルデヒド、p-メチルベンズアルデヒド、p-エチルベンズアルデヒド、p-n-ブチルベンズアルデヒドなどが挙げられる。
これらアルデヒド類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
フェノール系化合物としては、フェノール類及びビスフェノール類のいずれか一方を単独で用いてもよいし、フェノール類及びビスフェノール類を混合して用いてもよい。
【0018】
アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
これらアルカリ金属の水酸化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なお、フェノール系化合物とアルデヒド類とを反応させる際に、反応系中にアルデヒドと縮合可能なモノマー(例えば尿素、シクロヘキサノン、メラミン等)を加えてもよい。
また、得られたアルカリフェノール樹脂を水又は1価のアルコール類(例えばメタノール、エタノール、プロパノール等)で所望の濃度となるように希釈してもよい。
【0020】
水溶性フェノール樹脂は、水や有機溶剤等の溶剤を含んだ状態で用いることができる。
水溶性フェノール樹脂の総質量に対する水の含有量(水分量)については特に制限されないが、30~80質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましい。水の含有量が30質量%以上であれば、高粘性による混練ムラが起こりにくい。水の含有量が80質量%以下であれば、強度の高い鋳型が得られやすい。
【0021】
水溶性フェノール樹脂の含有量は、粘結剤組成物の総質量に対して35~65質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましく、45~50質量%がさらに好ましい。水溶性フェノール樹脂の含有量が上記下限値以上であれば、十分な粘結性が得られるとともに、粘結剤組成物の硬化速度が速まる。水溶性フェノール樹脂の含有量が上記上限値以下であれば、粘結剤組成物の粘度の上昇を抑制できる。加えて、鋳型の強度が向上する。
なお、本明細書において、「水溶性フェノール樹脂の含有量」は純分換算量である。すなわち、水溶性フェノール樹脂が溶剤を含む場合は、水溶性フェノール樹脂の全質量から溶剤の全含有量を除いた質量のことである。
【0022】
<アミン化合物>
アミン化合物は、1級アミン、2級アミン及び多価アミンからなる群より選ばれる1種以上(但し、尿素を除く。)である。
これらアミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
1級アミンとしては、例えばモノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン等の鎖状1級アミン;アニリン、トルイジン、フェニエチルアミン等の環状1級アミン;グリシン等のアミノ酸などが挙げられる。これらの中でも、モノエチルアミン、モノエタノールアミン、グリシンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。
これら1級アミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
2級アミンとしては、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン等の鎖状2級アミン;ジフェニルアミン、ピリジン等の環状2級アミンなどが挙げられる。これらの中でも、ジメタノールアミンが好ましい。
これら2級アミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
多価アミンとしては、例えばエチレンジアミン、ジエチルトリアミン等の鎖状多価アミン;ピペラジン、メラミン、ベンゾグアナミン等の環状多価アミンなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン、ピペラジンが好ましい。
これら多価アミンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
アミン化合物の含有量は、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましく、0.30質量部以上がさらに好ましく、0.40質量部以上が特に好ましい。また、アミン化合物の含有量は、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して1.18質量部以下が好ましく、1.00質量部以下がより好ましく、0.70質量部以下がさらに好ましく、0.50質量部以下が特に好ましい。アミン化合物の含有量が上記下限値以上であれば、ホルムアルデヒドの発生量をより低減できる。アミン化合物の含有量が上記上限値以下であれば、鋳型の強度を良好に維持できる。
アミン化合物の含有量の前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、アミン化合物の含有量は、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して、0.10~1.18質量部が好ましく、0.20~1.00質量部がより好ましく、0.30~0.70質量部がさらに好ましく、0.40~0.50質量部が特に好ましい。
なお、本発明において、「水溶性フェノール樹脂100質量部」は純分換算量である。
【0027】
アミン化合物の含有量は窒素換算で、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.06質量部以上がより好ましく、0.07質量部以上がさらに好ましく、0.09質量部が特に好ましい。また、アミン化合物の含有量は窒素換算で、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して、0.53質量部以下が好ましく、0.40質量部以下がより好ましく、0.30質量部以下がさらに好ましく、0.20質量部以下が特に好ましい。アミン化合物の含有量が上記下限値以上であれば、ホルムアルデヒドの発生量をより低減できる。アミン化合物の含有量が上記上限値以下であれば、鋳型の強度を良好に維持できる。
アミン化合物の含有量の前記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、アミン化合物の含有量は窒素換算で、水溶性フェノール樹脂100質量部に対して、0.05~0.53質量部が好ましく、0.06~0.40質量部がより好ましく、0.07~0.30質量部がさらに好ましく、0.09~0.20質量部が特に好ましい。
【0028】
窒素換算でのアミン化合物の含有量は、水溶性フェノール樹脂100質量部に対するアミン化合物の含有量と、アミン化合物の分子量及び1分子当たりの窒素原子数から、下記式(i)に基づき求めることができる。
窒素換算でのアミン化合物の含有量=(アミン化合物の含有量/アミン化合物の分子量)×14.0×窒素原子数 ・・・(i)
【0029】
<任意成分>
任意成分としては、例えばシランカップリング剤;水、有機溶剤等の溶剤などが挙げられる。有機溶剤としては、例えばメタノールなどが挙げられる。
粘結剤組成物がシランカップリング剤を含んでいれば、鋳型の強度がさらに向上する。
シランカップリング剤としては、例えばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0030】
粘結剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上述したアミン化合物以外のホルムアルデヒド捕捉剤(以下、「他のホルムアルデヒド捕捉剤」ともいう。)を含んでいてもよい。但し、本実施形態の粘結剤組成物は、他のホルムアルデヒド捕捉剤を含んでいなくても十分にホルムアルデヒドの発生量を低減できるので、他のホルムアルデヒド捕捉剤を含む必要がない。鋳型強度、鋳型の製造コスト、鋳物製品の品質等を考慮すると、粘結剤組成物は他のホルムアルデヒド捕捉剤を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、意図せずして含有するものを除き、積極的に他のホルムアルデヒド捕捉剤を粘結剤組成物にしないことを意味する。
他のホルムアルデヒド捕捉剤としては、例えば尿素、レゾルシン、ピロガロールなどが挙げられる。
【0031】
<製造方法>
粘結剤組成物は、水溶性フェノール樹脂及びアミン化合物と、必要に応じて任意成分とを混合することで得られる。
なお、粘結剤組成物が任意成分を含む場合、予め水溶性フェノール樹脂に任意成分を添加しておいてもよい。
【0032】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の粘結剤組成物は、上述したアミン化合物を含むので、粘結剤組成物の硬化時等にホルムアルデヒドが発生しても、発生したホルムアルデヒドを捕捉できる。これは、例えば以下の反応式に示すように、水溶性フェノール樹脂と、ホルムアルデヒドと、アミン化合物とが反応(マンニッヒ反応)することで、ホルムアルデヒドが反応生成物中に取り込まれることによるものと考えられる。なお、以下に示す反応式は、水溶性フェノール樹脂がアルカリレゾール樹脂であり、アミン化合物がモノエタノールアミンである場合の反応式である。
【0033】
【化1】
【0034】
また、上述したように、ホルムアルデヒドは反応生成物中に取り込まれる。すなわち、ホルムアルデヒドを水溶性フェノール樹脂に取り込みつつ、硬化反応が進行するので、鋳型の強度を維持できる。
また、アミン化合物を含んだ粘結剤組成物は増粘しにくいので、保存安定性にも優れる。
加えて、アミン化合物はレゾルシンと比較して安価であることから、鋳型の製造コストを抑えることもできる。
【0035】
ところで、粘結剤組成物中の窒素原子含有量が多いと、得られる鋳型中の窒素原子含有量も増えることとなる。そのような鋳型を用いて鋳物を製造すると、ピンホールと呼ばれるガス欠陥(鋳物欠陥)を誘発することがある。
しかし、本実施形態の粘結剤組成物であれば、少量のアミン化合物でもホルムアルデヒドの発生量を十分に低減できるので、必要以上にアミン化合物を配合する必要がない。アミン化合物の含有量が少量であるほど、粘結剤組成物中の窒素原子含有量を減らすことができ、最終的な鋳物製品のガス欠陥を抑制できる。
【0036】
[砂組成物]
以下、本発明の第二の態様の砂組成物の一実施形態について説明する。
本実施形態の砂組成物は、上述した本発明の第一の態様の粘結剤組成物と、耐火性粒状材料とを含む。
砂組成物は、有機エステルをさらに含んでいてもよい。
砂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、粘結剤組成物、耐火性粒状材料及び有機エステルに加えて、これら以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
【0037】
<耐火性粒状材料>
耐火性粒状材料としては、珪砂、クロマイト砂、ジルコン砂、オリビン砂、非晶質シリカ、アルミナ砂、ムライト砂等の天然砂;人工砂などの従来公知のものを使用できる。また、使用済みの耐火性粒状材料を回収したもの(回収砂)や再生処理したもの(再生砂)なども使用できる。製造コストの観点では天然砂が好ましく、その中でも珪砂がより好ましい。熱により膨張しにくい観点では人工砂が好ましい。製造コストと耐熱性とのバランスを考慮し、天然砂と人工砂とを混合して用いてもよい。
これら耐火性粒状材料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
耐火性粒状材料の平均粒子径は50~600μmが好ましく、100~550μmがより好ましく、200~500μmがさらに好ましい。耐火性粒状材料の平均粒子径が上記下限値以上であれば、強度の高い鋳型が得られる。耐火性粒状材料の平均粒子径が上記上限値以下であれば、鋳型を用いて鋳造される鋳物の表面性に優れる。
耐火性粒状材料の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した耐火性粒状材料の体積分布基準での累積頻度50%に相当する粒子径(メジアン径)である。
【0039】
<粘結剤組成物>
粘結剤組成物の含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.5~3.0質量部が好ましく、0.8~2.0質量部がより好ましく、1.0~1.5質量部がさらに好ましい。粘結剤組成物の含有量が上記下限値以上であれば、強度がより高い鋳型が得られやすい。粘結剤組成物の含有量が上記上限値以下であれば、混練ムラが起きにくい。
なお、本明細書において、「粘結剤組成物の含有量」は純分換算量である。すなわち、粘結剤組成物が溶剤を含む場合は、粘結剤組成物の全質量から溶剤の全含有量を除いた質量のことである。
【0040】
<有機エステル>
本実施形態の砂組成物に含まれる有機エステルは、液状である。
液状の有機エステルとしては、アルカリフェノール樹脂の硬化剤として用いられているものを使用することができ、例えばギ酸メチル、ギ酸エチル、プロピレンカーボネート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピオラクトン、ε-カプロラクトンなどが挙げられる。
これら液状の有機エステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
有機エステルの含有量は、耐火性粒状材料100質量部に対して、0.1~0.6質量部が好ましく、0.16~0.4質量部がより好ましく、0.2~0.3質量部がさらに好ましい。有機エステルの含有量が上記下限値以上であれば、粘結剤組成物を十分に硬化させることができる。有機エステルの含有量が上記上限値以下であれば、過剰含有による注湯時のガスの発生量を抑制できる。
【0042】
<任意成分>
任意成分としては、本発明の第一の態様の粘結剤組成物の説明において先に例示した任意成分が挙げられる。
砂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、他のホルムアルデヒド捕捉剤を含んでいてもよい。但し、砂組成物に含まれる粘結剤組成物は、他のホルムアルデヒド捕捉剤を含んでいなくても十分にホルムアルデヒドの発生量を低減できるので、砂組成物は他のホルムアルデヒド捕捉剤を含む必要がない。鋳型強度、鋳型の製造コスト、鋳物製品の品質等を考慮すると、砂組成物は他のホルムアルデヒド捕捉剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0043】
<製造方法>
砂組成物は、耐火性粒状材料及び粘結剤組成物と、必要に応じて有機エステル及び任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。
なお、砂組成物が有機エステルを含む場合、耐火性粒状材料と有機エステルとを混合して混合物を得た後に、得られた混合物に粘結剤組成物と、必要に応じて任意成分とを加えて、さらに混合することが好ましい。
【0044】
<作用効果>
以上説明した本実施形態の砂組成物は、上述した本発明の第一の態様の粘結剤組成物を含むので、ホルムアルデヒドの発生量を低減できる。また、本実施形態の砂組成物を用いれば、実用的な強度の鋳型を製造できる。
【0045】
[鋳型造型用キット]
以下、本発明の第三の態様の鋳型造型用キットの一実施形態について説明する。
本実施形態の鋳型造型用キットは、耐火性粒状材料と、上述した本発明の第一の態様の粘結剤組成物とを各々独立して有する。
鋳型造型用キットは、以下に示す硬化剤をさらに独立して有していてもよい。
ここで、「独立して有する」とは、各々の成分が互いに混合、接触しない状態で存在していることを意味する。各成分は、鋳型造型用キットを使用するときに初めて混合、接触される。
鋳型造型用キットとしては、例えば各成分を別々に収容した容器の集合体であってもよい。
【0046】
鋳型造型用キットに含まれる耐火性粒状材料としては、本発明の第二の態様の砂組成物の説明において先に例示した耐火性粒状材料が挙げられる。
【0047】
鋳型造型用キットに含まれる硬化剤は、有機エステル及び炭酸ガスからなる群より選ばれる1種である。
鋳型造型用キットに含まれる有機エステルは、液状又はガス状である。
液状の有機エステルとしては、本発明の第二の態様の砂組成物の説明において先に例示した液状の有機エステルが挙げられる。
ガス状の有機エステルとしては、液状の有機エステルをガス化したものが挙げられる。
中でも、ギ酸メチルをガス化したギ酸メチルガス、ギ酸エチルをガス化したギ酸エチルガスが好ましい。
これらガス状の有機エステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
鋳型造型用キットが、各成分を別々に収容した容器の集合体である場合、耐火性粒状材料を収容した容器及び粘結剤組成物を収容した容器の少なくとも一方には、任意成分が含まれていてもよい。なお、これら容器には、他のホルムアルデヒド捕捉剤を実質的に含まないことが好ましい。
任意成分としては、本発明の第一の態様の粘結剤組成物の説明において先に例示した任意成分が挙げられる。
【0049】
[鋳型の製造方法]
本発明の第四の態様の鋳型の製造方法は、自硬性鋳型造型法により鋳型を製造する方法である。
本発明の第五の態様の鋳型の製造方法は、ガス硬化鋳型造型法により鋳型を製造する方法である。
【0050】
本発明の第四の態様の鋳型の製造方法では、本発明の第二の態様の砂組成物のうち有機エステルを含むものを鋳型製造用の型(鋳型造型用型)に充填し、砂組成物に含まれる有機エステルの硬化作用により粘結剤組成物を硬化させて、鋳型を製造する。
また、本発明の第三の態様の鋳型造型用キットを用いて鋳型を製造してもよい。その場合は、耐火性粒状材料と、本発明の第一の態様の粘結剤組成物と、液状の有機エステルと、必要に応じて任意成分とを混合して砂組成物とし、得られた砂組成物を鋳型造型用型に充填すればよい。本発明の第三の態様の鋳型造型用キットが液状の有機エステルを独立して有する場合、その鋳型造型用キットを構成する有機エステルを用いて砂組成物を調製すればよい。
【0051】
本発明の第五の態様の鋳型の製造方法では、本発明の第二の態様の砂組成物のうち有機エステルを含まないものを鋳型造型用型に充填し、有機エステル又は炭酸ガスを通気させて、有機エステル又は炭酸ガスの硬化作用により砂組成物に含まれる粘結剤組成物を硬化させて、鋳型を製造する。
また、本発明の第三の態様の鋳型造型用キットを用いて鋳型を製造してもよい。その場合は、耐火性粒状材料と、本発明の第一の態様の粘結剤組成物と、必要に応じて任意成分とを混合して砂組成物とし、得られた砂組成物を鋳型造型用型に充填すればよい。本発明の第三の態様の鋳型造型用キットがガス状の有機エステル又は炭酸ガスを独立して有する場合は、その鋳型造型用キットを構成する有機エステル又は炭酸ガスを用いて、鋳型造型用型中の砂組成物に通気させてもよい。
【0052】
有機エステル又は炭酸ガスの通気流量は1分間あたり5~30Lが好ましく、10~20Lがより好ましい。通気流量が上記下限値以上であれば、粘結剤組成物が十分に硬化する。通気流量が上記上限値以下であれば、鋳型の常温強度を良好に維持できる。
有機エステル又は炭酸ガスを通気させる時間(通気時間)は、30~180秒が好ましく、60~180秒がより好ましい。通気時間が上記下限値以上であれば、粘結剤組成物が十分に硬化するが、上記上限値を超えても粘結剤組成物の硬化は頭打ちとなるため、コストを高めるだけである。
【0053】
以上説明した本実施形態の鋳型の製造方法によれば、耐火性粒状材料と本発明の第一の態様の粘結剤組成物とを含む砂組成物を用いているので、鋳型の強度を維持しつつ、ホルムアルデヒドの発生量を低減できる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各例で用いた材料を以下に示す。また、各種測定方法は以下の通りである。
なお、以下の各例において「部」、「%」「ppm」は、それぞれ、特に限定のない場合は「質量部」、「質量%」、「質量ppm」を示す。
実施例~9は参考例である。
【0055】
[測定・評価方法]
<ホルムアルデヒドの発生量の測定>
1Lのポリエチレン製の容器に、混練直後の砂組成物30.0gを入れ、温度20℃、湿度50%の条件で1時間保存した。保存後の容器中に発生したホルムアルデヒド量を北川式ガス検知管により測定した。
【0056】
<圧縮強度の測定>
試験片の圧縮強度は、JIS Z 2601の鋳物砂の試験方法に準じて、卓上抗圧力試験機(高千穂機械株式会社製)を用いて測定した。
【0057】
<保存安定性の評価>
1Lのポリエチレン製の容器に、調製直後の粘結剤組成物1kgを入れ、温度35℃、湿度50%の条件で15日間保存した。保存前と保存後の粘結剤組成物のそれぞれについて、E型粘度計(東機産業株式会社製、製品名「VISCOMETER TV-25」)を使用して、25℃における粘度を測定した。保存前の粘結剤組成物の粘度に対する、保存後の粘結剤組成物の粘度上昇を求め、以下の評価基準にて粘結剤組成物の保存安定性を評価した。
〇:粘度上昇が1.2倍未満である。
×:粘度上昇が1.2倍以上である。
【0058】
<窒素原子含有量の算出>
粘結剤組成物の調製に用いた各種成分の配合量、添加剤の分子量及び1分子当たりの窒素原子数から、下記式(ii)に基づき粘結剤組成物中の窒素原子含有量を算出した。なお、窒素原子含有量は、粘結剤組成物の総質量に対する量(ppm)である。
粘結剤組成物中の窒素原子含有量=100×10,000×{(添加剤の配合量/添加剤の分子量)×窒素原子の原子量(14.0)}×窒素原子数/(水溶性フェノール樹脂と添加剤と水の配合量の合計) ・・・(ii)
【0059】
[水溶性フェノール樹脂の合成]
撹拌機、温度計、アリーン冷却管、滴下ロートを付けた3Lの4つ口フラスコに、フェノール364.9g(3.69mol)、50%ホルマリン420.3g(7.00mol)、炭酸亜鉛1.73g(0.014mol)、イオン交換水138.8gを投入し、48%水酸化ナトリウム水溶液104.1gをさらに投入した。
次いで、4つ口フラスコにマントルヒーターを取り付け、内温が90℃になるまで昇温した後、90℃にて2時間保持した。次いで、イオン交換水219.6gを投入し、撹拌により均一混合させた後、48%水酸化ナトリウム水溶液69.4gと、48%水酸化カリウム水溶液138.8gとを液温が45℃以下となる滴下速度にて順次投入した。次いで、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「信越シリコーンMBE-403」)10.4gを投入した後、さらにイオン交換水28.7gを投入し、水溶性フェノール樹脂であるアルカリレゾール樹脂1487.6gを得た。
得られた水溶性フェノール樹脂の純分が45%になるようにイオン交換水に溶解して水溶液を調製した。得られた水溶液の25℃におけるpHを測定したところ、12.5であった。
【0060】
[実施例1~9、比較例1~5]
<粘結剤組成物の調製>
表1~3に示す配合組成に従って、水溶性フェノール樹脂と、添加剤と、粘結剤組成物中の水溶性フェノール樹脂の含有量が45%となるのに必要なイオン交換水とを20℃で均一になるまで混合し、粘結剤組成物を得た。なお、表中の水溶性フェノール樹脂の配合量は、純分換算での量である。また、表中の溶剤の配合量は、粘結剤組成物に含まれる溶剤の合計量である。溶剤には、粘結剤組成物の調製の際に用いたイオン交換水に加えて、水溶性フェノール樹脂の合成に用いた原料から持ち込まれる溶剤が含まれる。
得られた粘結剤組成物中の窒素原子含有量を求めた。
また、実施例2及び比較例2、4で得られた粘結剤組成物については、保存安定性を評価した。結果を表1、3に示す。
【0061】
<砂組成物の調製>
表1~3に示す配合組成に従って、耐火性粒状材料と、有機エステルとしてアルカリフェノール樹脂用硬化剤(群栄化学工業株式会社製、アルファシステム硬化剤「AH-530」、トリアセチン及びエチレングリコールジアセテートの混合物)とを品川式万能撹拌機(株式会社品川工業所製、製品名「MIXER」)に投入し、60秒間混練した。次いで、表1~3に示す配合組成に従って、粘結剤組成物をさらに投入し、60秒間混練して砂組成物(混練砂)を得た。なお、表中の配合量は、純分換算での量である。
得られた砂組成物を用いて、ホルムアルデヒドの発生量を測定した。結果を表1~3に示す。
なお、耐火性粒状材料としては、天然砂又は人工砂を用いた。
天然砂としては、珪砂(三菱商事建材株式会社製、商品名「フリーマントル新砂」)若しくは珪砂(再生砂)を用いた。
人工砂としては、アルサンド(伊藤機工株式会社製、「アルサンド#1000」)を用いた。
【0062】
<試験片の作製>
砂組成物を直ちに温度20℃、湿度50%の条件下、直径50mm、深さ50mmの円柱状の型が複数形成された木型に充填して、粘結剤組成物を硬化させ、混練開始から1時間経過した後に木型から試験片を取り出した。
混練開始から1時間、2時間、3時間及び24時間経過後の試験片の圧縮強度を測定した。結果を表1~3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1~3から明らかなように、各実施例で得られた粘結剤組成物は、ホルムアルデヒドの発生量を低減できた。これら粘結剤組成物を用いて作製した試験片は圧縮強度が高かった。また、実施例2で得られた粘結剤組成物は保存安定性に優れていた。なお、残りの実施例で得られた粘結剤組成物についても、実施例2と同様の保存安定性を有している。
一方、添加剤を用いていない比較例1の場合、ホルムアルデヒドが発生しやすかった。
添加剤として尿素を用いた比較例2の場合、実施例4、6と同程度のホルムアルデヒドの発生量の低減効果を得るためには、実施例4、6で用いた添加剤(モノエチルアミン又はピペラジン)の4倍量の尿素が必要であった。また、比較例2で得られた試験片は、実施例4、6で得られた試験片よりも圧縮強度が低かった。
比較例3の場合、実施例8で用いた添加剤(モノエタノールアミン)の4倍量の尿素を用いたにも関わらず、ホルムアルデヒドが発生しやすかった。
添加剤としてレゾルシンを含む比較例4で得られた粘結剤組成物は、保存安定性に劣っていた。
添加剤として3級アミンを用いた比較例5の場合、ホルムアルデヒドが発生しやすかった。