(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 25/00 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
B66B25/00 B
B66B25/00 A
(21)【出願番号】P 2023209036
(22)【出願日】2023-12-12
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 康伸
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-033375(JP,A)
【文献】特開平05-310393(JP,A)
【文献】特開2004-010259(JP,A)
【文献】特開2022-123482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの状態を診断する乗客コンベアシステムであって、
前記乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、
前記乗客コンベアの乗降部近辺に設置され、前記乗客コンベア上にいる利用者を検出するための検出装置と、を具備し、
前記制御装置は、
前記乗客コンベアを起動する起動時刻を示す時刻情報を記憶する記憶部と、
前記時刻情報によって示される前記起動時刻以降に、前記検出装置からの検出結果に基づいて、前記乗客コンベア上に利用者がいるか否かを継続的に判定する判定部と、
前記起動時刻に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記乗客コンベアを起動し、前記乗客コンベアを第1の運転モードで動作させ、前記乗客コンベアの状態を診断する情報処理部と、を備え
、
前記情報処理部は、
前記第1の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記第1の運転モードよりも移動速度が速い第2の運転モードで前記乗客コンベアを動作させ、前記乗客コンベアの状態をさらに診断し、
前記第2の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記第2の運転モードよりも移動速度が速い第3の運転モードで前記乗客コンベアを動作させ、前記乗客コンベアの状態をさらに診断することを特徴とする、
乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記情報処理部は、
前記各運転モードで各々行われた診断の結果を示す診断結果情報を、前記制御装置に接続された遠隔監視装置を介して、監視センタに送信することを特徴とする、
請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
前記情報処理部は、
前記起動時刻に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいる旨を示す場合、前記乗客コンベアを起動せず、
前記第1の運転モードでの診断が終了した際に、または、前記第2の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいる旨を示す場合、診断に失敗した旨の診断結果情報を、前記監視センタに送信することを特徴とする、
請求項2に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前記情報処理部は、
前記起動時刻に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいる旨を示す場合、前記乗客コンベアを起動せず、
前記第1の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいる旨を示す場合、前記第1の運転モードでの診断の結果を示す診断結果情報を、前記監視センタに送信し、
前記第2の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいる旨を示す場合、前記第1の運転モードおよび前記第2の運転モードで各々行われた診断の結果を示す診断結果情報を、前記監視センタに送信することを特徴とする、
請求項2に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項5】
前記第1の運転モードは、低速運転モードであり、
前記第2の運転モードは、省エネ運転モードであり、
前記第3の運転モードは、通常運転モードであることを特徴とする、
請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項6】
前記検出装置は、投光器および受光器を含む赤外線ビームセンサであり、
前記投光器は、乗り口近辺のデッキカバー上に、赤外線ビームを照射する照射口を降り口側に向けて設置され、
前記受光器は、降り口近辺のデッキカバー上に、赤外線ビームを受光する受光面を乗り口側に向けて設置されることを特徴とする、
請求項1~
請求項5のうちのいずれか1項に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項7】
前記検出装置は、前記乗客コンベア上を撮影可能なカメラである、
請求項1~
請求項5のうちのいずれか1項に記載の乗客コンベアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベア(例えば、エスカレータ、動く歩道など)は、運転が停止された状態でも階段や歩道として利用可能な構造を有しているため、乗客コンベアの運転が停止されていたとしても、当該乗客コンベア上に乗客(利用者)がいないとは限らない。乗客コンベア上に乗客がいる状態で、当該乗客コンベアが起動され、当該乗客コンベアの運転が開始されてしまうと、転倒などの事故が発生する可能性がある。このため、乗客コンベアを起動・停止する際には、当該乗客コンベアが設置された施設の管理者(以下、施設管理者と表記)が、現地において、乗客コンベア上に乗客がいないことを目視で確認して、乗客コンベアを起動・停止させる必要がある。
【0003】
ところで、エレベータにおいては、自動診断運転により当該エレベータを構成する各種機器の状態を示す情報(稼働情報)を収集することが行われている。しかしながら、乗客コンベアは、上記したように、当該乗客コンベアを起動・停止する際に施設管理者の立ち会いが必要なため、エレベータのような自動診断運転を行うことが難しいといった実情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-211864号公報
【文献】特開2002-167157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、施設管理者の立ち会いがなくても乗客コンベアを起動し、当該乗客コンベアの状態を診断することが可能な乗客コンベアシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る乗客コンベアシステムは、乗客コンベアの状態を診断する。前記乗客コンベアシステムは、前記乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、前記乗客コンベアの乗降部近辺に設置され、前記乗客コンベア上にいる利用者を検出するための検出装置と、を具備する。前記制御装置は、前記乗客コンベアを起動する起動時刻を示す時刻情報を記憶する記憶部と、前記時刻情報によって示される前記起動時刻以降に、前記検出装置からの検出結果に基づいて、前記乗客コンベア上に利用者がいるか否かを継続的に判定する判定部と、前記起動時刻に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記乗客コンベアを起動し、前記乗客コンベアを第1の運転モードで動作させ、前記乗客コンベアの状態を診断する情報処理部と、を備える。前記情報処理部は、前記第1の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記第1の運転モードよりも移動速度が速い第2の運転モードで前記乗客コンベアを動作させ、前記乗客コンベアの状態をさらに診断し、前記第2の運転モードでの診断が終了した際に前記判定部によって行われた判定の結果が前記乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、前記第2の運転モードよりも移動速度が速い第3の運転モードで前記乗客コンベアを動作させ、前記乗客コンベアの状態をさらに診断する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る乗客コンベアシステムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態における乗客コンベアシステムに含まれる一部要素の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、同実施形態における乗客コンベアシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
また、以下では、乗客コンベアシステムに含まれる乗客コンベアが「エスカレータ」である場合を説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る乗客コンベアシステムの概略構成例を示す図である。乗客コンベアシステムはエスカレータ10を含み、エスカレータ10を構成する各種機器の状態を診断可能なシステム(エスカレータ10を構成する各種機器の稼働情報を収集可能なシステム)である。
図1に示すように、エスカレータ10は、例えば建物の下階と上階との間に傾斜して設置される。なお、
図1に示す例では、下階側がエスカレータ10の乗り口であり、上階側がエスカレータ10の降り口である場合を想定している。
【0011】
図1に示すエスカレータ10は、隙間なく連結された複数の踏段(ステップ)11を下部機械室12(乗り口)と上部機械室13(降り口)との間で循環移動させることで、踏段11上に搭乗した乗客(利用者)を搬送するように構成されている。
【0012】
複数の踏段11は、無端状の連結チェーン14によって連結されており、建物の床下に設置されたトラス15内に配置されている。トラス15の内部には、下部スプロケット16と上部スプロケット17とが配置されており、これらの間に連結チェーン14が巻き掛けられている。
【0013】
図1に示す例では、上部スプロケット17にモータや減速機などを有する駆動装置18が連結されている。この駆動装置18により、連結チェーン14が巻き掛けられている下部スプロケット16および上部スプロケット17が回転し、当該連結チェーン14を介して複数の踏段11が案内レール(図示せず)にガイドされながら下部機械室12と上部機械室13との間を循環移動する。なお、
図1においては、駆動装置18が上部スプロケット17に連結されているが、当該駆動装置18は、下部スプロケット16に連結されていてもよい。
【0014】
また、トラス15の上部には、各踏段11の両側面と対向するように一対のスカートガード(図示せず)が踏段11の移動方向に沿って設置されている。この一対のスカートガード上部にそれぞれ欄干19が立設されている。換言すれば、欄干19は、各踏段11の両側にそれぞれ立設されている。欄干19の周囲にはベルト状のハンドレール20が装着されている。ハンドレール20は、踏段11に搭乗している乗客が把持する手すりであり、例えば駆動装置18の駆動力が伝達されることで、踏段11の移動と同期して周回する。
【0015】
エスカレータ10の乗降口(乗り口および降り口)は下部機械室12および上部機械室13の上部に位置し、当該乗降口には、乗降板22および23がそれぞれ取り外し可能に設置されている。乗降板22および23は、下部機械室12および上部機械室13の天井に相当する。乗客は、エスカレータ10(踏段11)に乗り込む際に乗降板22の上を通行し、エスカレータ10(踏段11)から降りる際に乗降板23の上を通行する。
【0016】
上部機械室13には、駆動装置18の他に、制御装置21が設置されている。制御装置21は、エスカレータ10の運転を制御するために当該エスカレータ10に設置されている各種機器の動作(例えば、駆動装置18の動作)を制御する。
【0017】
検出装置24は、例えば投光器24aと受光器24bとを含む赤外線ビームセンサであり、投光器24aと受光器24bとは互いに対向するように乗降部の近辺に設置されている。例えば、投光器24aは、乗り口近辺のデッキカバー上に、赤外線ビームを照射する照射口を降り口側に向けて(受光器24b側に向けて)設置され、受光器24bは、降り口近辺のデッキカバー上に、赤外線ビームを受光する受光面を乗り口側に向けて(投光器24a側に向けて)設置される。
【0018】
遠隔監視装置25は、制御装置21近辺に設置され、当該制御装置21と有線接続されている。また、遠隔監視装置25は、監視センタ(図示せず)と通信可能に接続されている。
【0019】
遠隔監視装置25は、制御装置21から得られるエスカレータ10を構成する各種機器の状態を示す情報(詳細については後述するが、診断結果情報)や、エスカレータ10の運転状態を示す情報を、監視センタに送信する。また、遠隔監視装置25は、監視センタからの各種指示(例えば、診断指示)を受信し、受信した各種指示を制御装置21に出力する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る乗客コンベアシステムに含まれる一部要素の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、制御装置21は、検出装置24および遠隔監視装置25の双方に接続されている。
【0021】
図2に示すように、制御装置21は、記憶部21aと、利用者有無判定部21bと、情報処理部21cと、運転制御部21dと、を備えている。
【0022】
記憶部21aには、エスカレータ10の起動時刻(運転開始時刻)を示す起動時刻情報が記憶されている。なお、記憶部21aには、エスカレータ10の停止時刻(運転終了時刻)を示す停止時刻情報がさらに記憶されていてもよい。また、記憶部21aには、起動時刻情報と停止時刻情報とを含む運転スケジュール情報が記憶されていてもよい。
【0023】
利用者有無判定部21bは、記憶部21aに記憶された起動時刻情報によって示されるエスカレータ10の起動時刻以降に、検出装置24から取得される検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを継続的に(繰り返し)判定する。なお、ここでは一例として、検出装置24は、エスカレータ10の起動時刻になると、電源がオフからオンに切り替わり、投光器24aから受光器24bに向けて赤外線ビームを照射し始めるものとするが、これに限定されず、検出装置24は、常時、投光器24aから受光器24bに向けて赤外線ビームを照射するものであっても構わない。また、検出装置24は、例えば、後述する
図3に示す一連の処理が終了すると、電源がオンからオフに切り替えられてもよい。
【0024】
情報処理部21cは、起動時刻に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10を起動し、エスカレータ10の運転モードを低速運転モード(第1の運転モード)に設定するための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、エスカレータ10の運転モードを低速運転モードに設定するための指示を情報処理部21cから受けると、エスカレータ10を低速運転させるように、駆動装置18の動作を制御する。なお、低速運転モードとは、例えば10m/minの移動速度でエスカレータ10を動作させる運転モードである。
【0025】
情報処理部21cは、低速運転が開始された際に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10を低速運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する。
【0026】
また、情報処理部21cは、低速運転モードでの診断が終了した際に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10の運転モードを低速運転モードから省エネ運転モード(第2の運転モード)に切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、エスカレータ10の運転モードを低速運転モードから省エネ運転モードに切り替えるための指示を情報処理部21cから受けると、エスカレータ10を省エネ運転させるように、駆動装置18の動作を制御する。なお、省エネ運転モードとは、例えば20m/minの移動速度でエスカレータ10を動作させる運転モードである。
【0027】
情報処理部21cは、省エネ運転が開始された際に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10を省エネ運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する。
【0028】
さらに、情報処理部21cは、省エネ運転モードでの診断が終了した際に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10の運転モードを省エネ運転モードから通常運転モード(第3の運転モード)に切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、エスカレータ10の運転モードを省エネ運転モードから通常運転モードに切り替えるための指示を情報処理部21cから受けると、エスカレータ10を通常運転させるように、駆動装置18の動作を制御する。なお、通常運転モードとは、例えば30m/minの移動速度でエスカレータ10を動作させる運転モードである。
【0029】
情報処理部21cは、通常運転が開始された際に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいない旨を示す場合、エスカレータ10を通常運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する。
【0030】
低速運転モード、省エネ運転モードおよび通常運転モードの状態で各々実施された診断の結果を示す診断結果情報は、記憶部21aに記憶されると共に、遠隔監視装置25を介して、監視センタ(図示せず)に送信される。
【0031】
なお、情報処理部21cは、起動時刻に利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいる旨を示す場合、利用者が転倒してしまう可能性があるため、エスカレータ10を起動しない。
【0032】
また、情報処理部21cは、エスカレータ10が各運転モードで動作し始めた際に、または、各運転モードでの診断が終了した際に、利用者有無判定部21bによって行われた判定の結果が、エスカレータ10上に利用者がいる旨を示す場合、エスカレータ10の運転モードを通常運転モードに切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。この場合、情報処理部21cは、エスカレータ10を構成する各種機器の診断が失敗した旨の診断結果情報を、遠隔監視装置25を介して、監視センタに送信する。あるいは、情報処理部21cは、各運転モードで各々実施された診断のうち、エスカレータ10上に利用者がいると判定されるより前に実施された診断の結果を示す診断結果情報を、遠隔監視装置25を介して、監視センタに送信する。
【0033】
図2に示すように、遠隔監視装置25は、通信部25aと、制御部25bと、を備えている。通信部25aは、制御装置21および監視センタと通信するための通信インタフェースである。制御部25bは、遠隔監視装置25の動作を制御する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る乗客コンベアシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
記憶部21aに記憶された起動時刻情報によって示される起動時刻になると(ステップS1)、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS2)。
【0035】
ステップS2の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS2のYes)、情報処理部21cは、エスカレータ10を起動させずに、上記したステップS2の処理を再度実行する。
【0036】
一方、ステップS2の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS2のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10を起動し、エスカレータ10の運転モードを低速運転モード(第1の運転モード)に設定するための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、情報処理部21cからの上記した指示にしたがって、エスカレータ10を低速運転させるように、駆動装置18の動作を制御する(ステップS3)。
【0037】
エスカレータ10が低速運転モードで動作し始めると、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS4)。
【0038】
ステップS4の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS4のYes)、情報処理部21cは、エスカレータ10の運転モードを通常運転モードに切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、情報処理部21cからの上記した指示にしたがって、エスカレータ10を通常運転させるように、駆動装置18の動作を制御する(ステップS5)。その後、情報処理部21cは、エスカレータ10を構成する各種機器の診断が失敗した旨の診断結果情報を、遠隔監視装置25を介して、監視センタに送信し(つまり、診断が失敗した旨を監視センタに通知し)(ステップS6)、ここでの一連の動作を終了させる。
【0039】
一方、ステップS4の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS4のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10を低速運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する(ステップS7)。
【0040】
低速運転モードでの診断が終了すると、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS8)。
【0041】
ステップS8の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS8のYes)、上記したステップS5,S6の処理が順に実行される。
【0042】
一方、ステップS8の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS8のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10の運転モードを低速運転モードから省エネ運転モード(第2の運転モード)に切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、情報処理部21cからの上記した指示にしたがって、エスカレータ10を省エネ運転させるように、駆動装置18の動作を制御する(ステップS9)。
【0043】
エスカレータ10が省エネ運転モードで動作し始めると、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS10)。
【0044】
ステップS10の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS10のYes)、上記したステップS5,S6の処理が順に実行される。
【0045】
一方、ステップS10の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS10のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10を省エネ運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する(ステップS11)。
【0046】
省エネ運転モードでの診断が終了すると、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS12)。
【0047】
ステップS12の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS12のYes)、上記したステップS5,S6の処理が順に実行される。
【0048】
一方、ステップS12の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS12のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10の運転モードを省エネ運転モードから通常運転モード(第3の運転モード)に切り替えるための指示を運転制御部21dに出力する。運転制御部21dは、情報処理部21cからの上記した指示にしたがって、エスカレータ10を通常運転させるように、駆動装置18の動作を制御する(ステップS13)。
【0049】
エスカレータ10が通常運転モードで動作し始めると、利用者有無判定部21bは、このタイミングに検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定する(ステップS14)。
【0050】
ステップS14の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいると判定された場合(ステップS14のYes)、上記したステップS5,S6の処理が順に実行される。
【0051】
一方、ステップS14の判定の結果、エスカレータ10上に利用者がいないと判定された場合(ステップS14のNo)、情報処理部21cは、エスカレータ10を通常運転モードで動作させた状態で、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する(ステップS15)。
【0052】
しかる後、情報処理部21cは、各運転モードの状態で各々実施された診断の結果を示す診断結果情報を、遠隔監視装置25を介して、監視センタに送信(通知)し(ステップS16)、ここでの一連の動作を終了させる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る乗客コンベアシステムは、記憶部21aに予め記憶された起動時刻情報によって示される起動時刻になると、当該起動時刻に検出装置24から取得された検出結果に基づいて、エスカレータ10上に利用者がいるか否かを判定し、利用者がいないと判定された場合に、エスカレータ10を起動させる。これによれば、エスカレータ10を安全かつ自動的に起動させることができるため、施設管理者が現地まで赴いてエスカレータ10を起動させる必要がなくなり、施設管理者にかかる負担を軽減することが可能である。
【0054】
また、本実施形態に係る乗客コンベアシステムは、エスカレータ10を起動させた際に、移動速度が各々異なる低速運転モード、省エネ運転モードおよび通常運転モードでエスカレータ10を順に動作させ、エスカレータ10を構成する各種機器の診断を実施する。これによれば、エスカレータ10を起動させる度に、エスカレータ10の自動診断を行うことができるため、エスカレータ10に生じ得る異常を早期に発見することが可能である。また、保守員は、エスカレータ10を起動させる度に行われる自動診断の結果を踏まえて、定期点検作業を行うことができるため、定期点検時の作業工数の減少(つまり、定期点検作業時に保守員にかかる負担の軽減)も期待することが可能である。
【0055】
なお、本実施形態においては、エスカレータ10を安全かつ自動的に起動させる場合について説明したが、エスカレータ10の起動時と同様な処理を行うことで(つまり、
図3に示したステップS1,S2の処理を実行することで)、エスカレータ10を安全かつ自動的に停止させることもできる。これによれば、エスカレータ10の起動時だけでなく、エスカレータ10の停止時に施設管理者にかかる負担も軽減することが可能である。
【0056】
また、本実施形態においては、エスカレータ10を構成する各種機器の診断が、エスカレータ10を起動した際に実施される場合について説明したが、これに限定されず、エスカレータ10を構成する各種機器の診断は、例えば、エスカレータ10を停止する際に実施されても構わない。この場合、情報処理部21cは、エスカレータ10の運転モードを、例えば、通常運転モード、省エネ運転モードおよび低速運転モードの順に遷移させることで、各運転モードでの診断を実施することができる。
【0057】
さらに、エスカレータ10を構成する各種機器の診断は、エスカレータ10の起動時や停止時ではなく、運転途中に運転モードが切り替えられたタイミングで実施されても構わない。
【0058】
なお、本実施形態においては、検出装置24が赤外線ビームセンサである場合について説明したが、これに限定されず、検出装置24は、エスカレータ10上に利用者がいることを検出可能な装置であれば任意の装置であって構わない。例えば、検出装置24は、センサポールに取り付けられ、エスカレータ10上を撮影可能なカメラであってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、乗客コンベアシステムに含まれる乗客コンベアがエスカレータ10である場合について説明したが、これに限定されず、乗客コンベアシステムに含まれる乗客コンベアは、例えば「動く歩道」であってもよい。
【0060】
以上説明した一実施形態によれば、施設管理者の立ち会いがなくても乗客コンベアを起動し、当該乗客コンベアの状態を診断することが可能な乗客コンベアシステムを提供することができる。
【0061】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10…エスカレータ、21…制御装置、21a…記憶部、21b…利用者有無判定部、21c…情報処理部、21d…運転制御部、24…検出装置、24a…投光器、24b…受光器、25…遠隔監視装置。
【要約】
【課題】施設管理者の立ち会いがなくても乗客コンベアを起動し、当該乗客コンベアの状態を診断することが可能な乗客コンベアシステムを提供すること。
【解決手段】一実施形態に係る乗客コンベアシステムは、乗客コンベアの動作を制御する制御装置と、乗客コンベアの乗降部近辺に設置され、乗客コンベア上にいる利用者を検出するための検出装置と、を備える。制御装置は、乗客コンベアを起動する起動時刻を示す時刻情報を記憶する記憶部と、時刻情報によって示される起動時刻以降に、検出装置からの検出結果に基づいて、乗客コンベア上に利用者がいるか否かを継続的に判定する判定部と、起動時刻に判定部によって行われた判定の結果が乗客コンベア上に利用者がいない旨を示す場合、乗客コンベアを起動し、乗客コンベアを第1の運転モードで動作させ、乗客コンベアの状態を診断する情報処理部と、を有する。
【選択図】
図1