(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20241223BHJP
B66B 1/06 20060101ALI20241223BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
B66B5/02 E
B66B1/06 E
B66B3/00 L
(21)【出願番号】P 2023213898
(22)【出願日】2023-12-19
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木和田 年昭
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特許第7400067(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/124405(WO,A1)
【文献】特開2023-127305(JP,A)
【文献】特許第7368903(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
B66B 1/00-1/52
B66B 3/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置とが通信可能に接続されるエレベータシステムであって、
前記エレベータ制御装置は、
火災の発生を検知する火災検知部と、
前記移動体によって送信される信号であって、前記移動体が前記エレベータに乗車したことを示す乗車信号と、前記移動体が前記エレベータから降車したことを示す降車信号とに基づいて、前記移動体が前記エレベータ内にいるか否かを判断する乗降判断部と、
前記火災検知部によって火災の発生が検知された場合、通常運転から前記エレベータを避難階に移動させて前記エレベータのドアを戸開制御する火災管制運転に切り替え、更に前記乗降判断部によって前記移動体が前記エレベータ内にいると判断された場合、前記移動体の目的階を前記避難階に変更するための変更指令を前記移動体に送信する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記エレベータが前記避難階に着床し、前記ドアが戸開閉されたにも関わらず、前記移動体からの前記降車信号を受信できない場合、前記変更指令を前記移動体に再度送信し、前記ドアを再戸開させる、
エレベータシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記ドアを再戸開させる際に、火災の発生に伴い前記エレベータを現在利用することができない旨の通知を、乗場側に設置された表示装置に表示させる、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記移動体は、前記変更指令にしたがって前記目的階を前記避難階に変更し、前記避難階で降車すると、乗場付近で待機状態となる、
請求項1
または請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置とが通信可能に接続されるエレベータシステムであって、
前記エレベータ制御装置は、
火災の発生を検知する火災検知部と、
前記移動体によって送信される信号であって、前記移動体が前記エレベータに乗車したことを示す乗車信号と、前記移動体が前記エレベータから降車したことを示す降車信号とに基づいて、前記移動体が前記エレベータ内にいるか否かを判断する乗降判断部と、
前記火災検知部によって火災の発生が検知された場合、通常運転から前記エレベータを避難階に移動させて前記エレベータのドアを戸開制御する火災管制運転に切り替え、更に前記乗降判断部によって前記移動体が前記エレベータ内にいると判断された場合、前記移動体の目的階を前記避難階に変更するための変更指令を前記移動体に送信する制御部と、
を備え、
前記移動体は、前記変更指令にしたがって前記目的階を前記避難階に変更する場合、変更前の目的階をログとして保存しておき、前記エレベータの復旧後に、前記ログによって示される変更前の目的階に移動するための呼びを登録する、
エレベータシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記変更指令と共に、前記移動体の避難場所の位置を示す位置情報を前記移動体に送信し、
前記移動体は、前記変更指令にしたがって前記目的階を前記避難階に変更し、前記避難階で降車すると、前記位置情報によって示される避難場所まで移動する、
請求項1
または請求項2に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内を自律走行型ロボットのような移動体(以下、サービスロボットと表記)が移動(走行)することによって、当該建物内において荷物を搬送(運搬)するサービスや当該建物内を警備するサービスのような各種サービスを提供することが考えられている。
【0003】
サービスロボットが移動する建物が例えば複数階建てのビルである場合、当該サービスロボットは、当該ビルに設けられているエレベータを利用することによって、当該ビル内の複数の階床(フロア)を移動することができる。
【0004】
ところで、エレベータには、建物内で火災が発生した際に避難階で停止し、当該避難階で利用者を降車させる火災管制運転機能(火災管制運転モード)が搭載されている。この機能によれば、建物内で火災が発生した際に、利用者がエレベータの乗りかご内に閉じ込められてしまうリスクを低減することができる。
【0005】
しかしながら、サービスロボットにおいては、エレベータが火災管制運転機能により避難階に到着したとしても、当該避難階がサービスロボットの目的階でない限り、当該避難階を降車する階床として認識することができない。このため、サービスロボットがエレベータの乗りかご内に閉じ込められてしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6619760号公報
【文献】特許第6552755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、火災管制運転時に、サービスロボットがエレベータの乗りかご内に閉じ込められてしまうことを防ぐことが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、前記エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置とが通信可能に接続されるシステムである。前記エレベータ制御装置は、火災の発生を検知する火災検知部と、前記移動体によって送信される信号であって、前記移動体が前記エレベータに乗車したことを示す乗車信号と、前記移動体が前記エレベータから降車したことを示す降車信号とに基づいて、前記移動体が前記エレベータ内にいるか否かを判断する乗降判断部と、前記火災検知部によって火災の発生が検知された場合、通常運転から前記エレベータを避難階に移動させて前記エレベータのドアを戸開制御する火災管制運転に切り替え、更に前記乗降判断部によって前記移動体が前記エレベータ内にいると判断された場合、前記移動体の目的階を前記避難階に変更するための変更指令を前記移動体に送信する制御部と、を備える。前記制御部は、前記エレベータが前記避難階に着床し、前記ドアが戸開閉されたにも関わらず、前記移動体からの前記降車信号を受信できない場合、前記変更指令を前記移動体に再度送信し、前記ドアを再戸開させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、同実施形態におけるエレベータシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、同実施形態におけるエレベータシステムの動作の一例を具体的に説明するための図である。
【
図4】
図4は、変形例におけるエレベータシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0011】
実施形態においては、各種サービスを提供するために、建物内を移動体が移動する場合を想定する。この移動体は、例えば建物内において荷物を搬送(運搬)するサービスや当該建物内を警備するサービス等を提供する自律走行型ロボット(以下、サービスロボットと表記)を含む。
【0012】
ここで、サービスロボットが移動する建物が複数の階床(フロア)を有するビル等である場合、当該サービスロボットは、例えば当該ビルに設置されているエレベータを利用することによって複数の階床を移動することができる。なお、サービスロボットが移動する建物としては、上記したビルの他に、複数の階床を有する病院や駅舎等が想定される。
【0013】
以下、
図1を参照して、一実施形態に係るエレベータシステムの概要について説明する。
図1に示すように、エレベータシステムは、乗りかご10(エレベータ)と、火災報知器20と、エレベータ制御装置30と、サービスロボット40とによって構成される。なお、
図1では、サービスロボット40が乗りかご10に乗車している様子(サービスロボット40が乗りかご10内にいる様子)を示している。
【0014】
火災報知器20は、乗りかご10が設置された建物内の各所に設置される。火災報知器20は、火災の発生を感知すると、当該火災の発生を感知した旨の感知信号をエレベータ制御装置30に送信する。
【0015】
エレベータ制御装置30は、例えばインターネットのようなネットワーク(公衆回線網)を介して、サービスロボット40と通信可能に接続される。エレベータ制御装置30は、乗りかご10を昇降動作させるための図示せぬ巻上機の制御や、ドアの戸開閉制御、乗りかご10内の各種機器類(例えば、照明等)の制御、サービスロボット40と連携した動作の制御等を行う。
【0016】
エレベータ制御装置30は、サービスロボット40と連携した動作の一つとして、サービスロボット40によって送信された移動要求を受信し、当該移動要求に乗りかご10を応答させる制御を行う。移動要求は、サービスロボット40が出発階に相当する階床から目的階(行先階)に相当する階床に移動したい旨の要求であり、出発階と目的階を示す情報を含む。エレベータ制御装置30は、受信した移動要求によって示される出発階から目的階まで乗りかご10を移動させる制御を行う。
【0017】
図1に示すように、エレベータ制御装置30は、火災検知部31と、エレベータ制御部32と、ロボット乗降判断部33と、ロボット連動部34(通信部)と、を備えている。
【0018】
火災検知部31は、火災報知器20によって送信された感知信号に基づいて建物内で火災が発生したことを検知し、当該火災の発生を検知した旨の火災検知信号をエレベータ制御部32に出力する。
【0019】
エレベータ制御部32は、火災検知部31、ロボット乗降判断部33およびロボット連動部34の動作を制御すると共に、火災検知部31、ロボット乗降判断部33およびロボット連動部34からの各種信号に基づいて乗りかご10の動作を制御する。
【0020】
エレベータ制御部32は、火災検知部31によって出力された火災検知信号に基づいて、乗りかご10の運転を制御する。具体的には、エレベータ制御部32は、乗りかご10の運転モードを通常運転モードから火災管制運転モードに切り替え、当該乗りかご10を避難階まで移動させ、そこで戸開して待機する等の制御を行う。なお、避難階とは、避難に最適な階床として予め定められた階床であり、例えばロビー階等がこれに相当する。これによれば、建物内で火災が発生した際に、乗りかご10を避難階で停止させ、当該乗りかご10に乗車している利用者を避難階で降車させることができるため、閉じ込め等のリスクを低減することができる。
【0021】
また、エレベータ制御部32は、火災管制運転モード時(火災管制運転時)に、サービスロボット40が乗りかご10内にいる場合、当該サービスロボット40の目的階を避難階に変更するための目的階変更指令を、ロボット連動部34を介して当該サービスロボット40に送信する。
【0022】
さらに、エレベータ制御部32は、乗りかご10がサービスロボット40の目的階に着床した際に、乗りかご10が目的階に到着した旨の目的階到着通知(換言すると、乗りかご10から降車することを促す旨の通知)を、ロボット連動部34を介して当該サービスロボット40に送信する。なお、本明細書においては詳細な説明を省略するが、エレベータ制御部32は、乗りかご10がサービスロボット40の出発階に着床した際には、乗りかご10が出発階に到着した旨の出発階到着通知(つまり、乗りかご10への乗車を促す通知)を、ロボット連動部34を介して当該サービスロボット40に送信する。
【0023】
ロボット乗降判断部33は、サービスロボット40から送信される信号であって、サービスロボット40が乗りかご10に乗車したことを示す乗車信号と、サービスロボット40が乗りかご10から降車したことを示す降車信号とに基づいて、乗りかご10におけるサービスロボット40の乗降を検出し、サービスロボット40が乗りかご10内にいるか否かを判断する。
【0024】
例えば、ロボット乗降判断部33は、サービスロボット40によって送信された乗車信号を受信した場合、当該サービスロボット40が乗りかご10に乗車したことを検出する。また、ロボット乗降判断部33は、サービスロボット40によって送信された降車信号を受信した場合、当該サービスロボット40が乗りかご10から降車したことを検出する。
【0025】
ロボット乗降判断部33は、上記した乗車信号が受信されたにも関わらず、上記した降車信号が受信されない場合に、サービスロボット40が乗りかご10内にいると判断する(換言すると、サービスロボット40が乗りかご10内にいることを検出する)。ロボット乗降判断部33による判断(検出)の結果は、エレベータ制御部32に送られる。
【0026】
ロボット連動部34は、サービスロボット40と通信するための通信インタフェースである。
ロボット連動部34は、サービスロボット40によって送信された乗車信号を受信し、当該乗車信号をロボット乗降判断部33に出力する。同様に、ロボット連動部34は、サービスロボット40によって送信された降車信号を受信し、当該降車信号をロボット乗降判断部33に出力する。さらに、ロボット連動部34は、エレベータ制御部32から出力された目的階変更指令をサービスロボット40に送信する。
【0027】
図1に示すように、サービスロボット40は、エレベータ連動部41(通信部)と、目的階設定部42と、ロボット制御部43と、ロボット乗降送信部44と、を備えている。
【0028】
エレベータ連動部41は、エレベータ制御装置30と通信するための通信インタフェースである。
エレベータ連動部41は、エレベータ制御装置30によって送信された目的階変更指令を受信し、当該目的階変更指令を目的階設定部42に出力する。また、エレベータ連動部41は、エレベータ制御装置30によって送信された目的階到着通知を受信し、当該目的階到着通知をロボット制御部43に出力する。なお、エレベータ連動部41は、上記した出発階到着通知を受信した場合も同様に、当該出発階到着通知をロボット制御部43に出力する。
【0029】
目的階設定部42は、サービスロボット40の目的階を設定する機能を有している。目的階設定部42は、エレベータ連動部41から出力された目的階変更指令に基づいて、サービスロボット40に設定中の目的階を、当該目的階変更指令によって示される目的階(この場合、避難階)に変更する。換言すると、目的階設定部42は、サービスロボット40が移動要求を送信した際に設定された目的階を、上記した目的階変更指令によって示される目的階に変更する。サービスロボット40に設定された目的階を示す情報は、ロボット制御部43に送られる。
【0030】
ロボット制御部43は、エレベータ連動部41、目的階設定部42およびロボット乗降送信部44の動作を制御すると共に、エレベータ連動部41および目的階設定部42からの各種信号に基づいてサービスロボット40の動作を制御する。
ロボット制御部43は、上記した移動要求を、エレベータ連動部41を介してエレベータ制御装置30に送信する。移動要求は、例えば、サービスロボット40が各種サービスを提供する際に乗りかご10を利用する必要がある場合に生成される。ロボット制御部43は、上記した移動要求がエレベータ制御装置30に送信されると、当該移動要求によって示される出発階から目的階まで移動させるように、サービスロボット40の動作を制御する。
【0031】
また、ロボット制御部43は、エレベータ連動部41から出力された目的階到着通知に基づいて、サービスロボット40が乗りかご10から降車するように、当該サービスロボット40の動作(移動)を制御する。なお、ロボット制御部43は、エレベータ連動部41から出力された出発階到着通知に基づいて、サービスロボット40が乗りかご10に乗車するように、当該サービスロボット40の動作(移動)を制御することも行う。
【0032】
さらに、ロボット制御部43は、サービスロボット40の乗車/降車が完了した旨の通知をロボット乗降送信部44に出力する。
【0033】
ロボット乗降送信部44は、ロボット制御部43から出力されたサービスロボット40の降車が完了した旨の通知に基づいて、サービスロボット40が乗りかご10から降車したことを示す降車信号を、エレベータ連動部41を介してエレベータ制御装置30に送信する。また、ロボット乗降送信部44は、ロボット制御部43から出力されたサービスロボット40の乗車が完了した旨の通知に基づいて、サービスロボット40が乗りかご10に乗車したことを示す乗車信号を、エレベータ連動部41を介してエレベータ制御装置30に送信する。
【0034】
次に、
図2のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例について説明する。なお、ここでは、乗りかご10が通常運転モードで運転している最中に建物内で火災が発生した際の動作について説明する。
【0035】
エレベータ制御装置30に含まれる火災検知部31によって火災の発生が検知されると(ステップS1)、エレベータ制御部32は、乗りかご10の運転モードを通常運転モードから火災管制運転モードに切り替え、乗りかご10を避難階に移動させる制御を行う(ステップS2)。
【0036】
続いて、ロボット乗降判断部33は、サービスロボット40が乗りかご10内にいるか否かを判断する。具体的には、ロボット乗降判断部33は、サービスロボット40によって送信される乗車信号および降車信号に基づいて、当該サービスロボット40が乗りかご10内にいるか否かを判断する(ステップS3)。
【0037】
なお、ロボット乗降判断部33は、上記した乗車信号を受信しているにも関わらず、上記した降車信号を受信できていない場合に、サービスロボット40が乗りかご10内にいると判断する。一方、ロボット乗降判断部33は、上記した乗車信号および降車信号を共に受信している場合(つまり、乗車信号と、当該乗車信号に対応する降車信号とを受信している場合)、あるいは、上記した乗車信号をそもそも受信していない場合に、サービスロボット40が乗りかご10内にいないと判断する。
【0038】
ステップS3の処理において、サービスロボット40が乗りかご10内にいないと判断された場合(ステップS3)、ここでの一連の動作は終了する。
【0039】
一方、ステップS3の処理において、サービスロボット40が乗りかご10内にいると判断された場合(ステップS3のYes)、エレベータ制御部32は、サービスロボット40の目的階を避難階に変更するための目的階変更指令を、ロボット連動部34を介してサービスロボット40に送信する(ステップS4)。
【0040】
サービスロボット40に含まれるエレベータ連動部41によって、目的階変更指令が受信されると(ステップS5)、目的階設定部42は、サービスロボット40に設定中の目的階を、当該目的階変更指令によって示される目的階(つまり、避難階)に変更する(ステップS6)。
【0041】
エレベータ制御装置30に含まれるエレベータ制御部32は、乗りかご10が避難階に着床すると、当該乗りかご10のドアを戸開させる制御を行う(ステップS7)。その後、エレベータ制御部32は、乗りかご10がサービスロボット40の目的階(この場合、避難階)に到着した旨の目的階到着通知を、ロボット連動部34を介して当該サービスロボット40に送信する(ステップS8)。
【0042】
サービスロボット40に含まれるエレベータ連動部41によって、目的階到着通知が受信されると(ステップS9)、ロボット制御部43は、当該サービスロボット40が乗りかご10から降車するように、当該サービスロボット40の動作(移動)を制御する(ステップS10)。
【0043】
ステップS10の処理により、サービスロボット40の降車が完了すると、ロボット乗降送信部44は、当該サービスロボット40が乗りかご10から降車したことを示す降車信号を、エレベータ連動部41を介してエレベータ制御装置30に送信する(ステップS11)。ステップS11の処理の後、サービスロボット40は、乗場付近で待機状態となる。なお、ここでの待機状態とは、今回乗りかご10に乗車する際に生成された移動要求に関する各種設定(例えば、変更前の目的階)がリセットされ、所定のサービスの提供に関する新たな要求(例えば、1階から3階に物を運搬して欲しい等の新たな要求)を待っている状態である。
【0044】
しかる後、エレベータ制御装置30は、サービスロボット40によって送信された降車信号を受信し、当該サービスロボット40の降車が無事に(正常に)完了したことを確認すると(ステップS12)、ここでの一連の動作を終了させる。
【0045】
ここで、具体的な状況を想定して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作について説明する。
以下では、
図3に示すように、3階建ての建物に設置された1台の乗りかご10を含むエレベータシステムにおいて、サービスロボット40が、当該乗りかご10に乗車して1階から3階に向けて移動している最中であって、当該乗りかご10が1階と2階との間を移動している際に、火災の発生が検知された場合を想定する。
【0046】
この場合、まず、エレベータ制御装置30に含まれるエレベータ制御部32は、
図3(a)に示すように、乗りかご10の運転モードを火災管制運転モードに切り替え、当該乗りかご10を避難階(ロビー階)である1階まで移動させる制御を行う。また、エレベータ制御部32は、乗りかご10に乗車中のサービスロボット40に対して、現在設定中の目的階(この場合、3階)を、避難階である1階に変更するための目的階変更指令を送信する。サービスロボット40に含まれる目的階設定部42は、エレベータ制御装置30によって送信された目的階変更指令に基づいて、目的階を3階から1階に変更(設定)する。
【0047】
その後、
図3(b)に示すように、乗りかご10が避難階である1階に着床すると、エレベータ制御装置30に含まれるエレベータ制御部32は、当該乗りかご10のドアを戸開させる制御を行う。また、エレベータ制御部32は、乗りかご10に乗車中のサービスロボット40に対して、目的階に到着した旨の目的階到着通知を送信する。
【0048】
サービスロボット40に含まれるロボット制御部43は、エレベータ制御装置30によって送信された目的階到着通知にしたがって、乗りかご10から降車するように当該サービスロボット40の動作(移動)を制御する。サービスロボット40の降車が完了すると、
図3(c)に示すように、ロボット乗降送信部44は、当該サービスロボット40が乗りかご10から降車したことを示す降車信号をエレベータ制御装置30に送信する。
【0049】
これによれば、サービスロボット40が、乗りかご10に乗車して移動している最中に、火災の発生が検知され、当該乗りかご10が、火災管制運転モードによって本来の目的階とは異なる階床の避難階に移動する場合であっても、当該サービスロボット40を、本来の目的階(
図3の場合、3階)とは異なる階床の避難階(
図3の場合、1階)で降車させることができるため、サービスロボット40が乗りかご10内に閉じ込められてしまうことを防ぐことができる。
【0050】
以上説明した本実施形態では、サービスロボット40は、避難階で降車した後に、今回乗りかご10に乗車する際に生成された移動要求に関する各種設定(例えば、変更前の目的階)をリセットした待機状態になるとしたが、例えば、サービスロボット40は、本来の目的階とは異なる階床(避難階)で降車した場合、今回乗りかご10に乗車する際に生成された移動要求に関する各種設定をエラーログとして保存しておき、乗りかご10の運転が復旧した際に、当該エラーログによって示される各種設定のための移動要求をエレベータ制御装置30に再度送信するとしてもよい(つまり、変更前の目的階に移動するための呼びを登録してもよい)。これによれば、サービスロボット40は、例えば火災の発生によって中断されてしまったサービスの提供を、エレベータの復旧と共に自動的に再開させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、サービスロボット40は、避難階で降車した後に乗場付近で待機状態になるとしたが、例えば、サービスロボット40は、避難階で降車した後に乗場付近で待機状態になるのではなく、当該避難階と共に設定される避難場所まで移動するとしてもよい。この場合、エレベータ制御装置30は、サービスロボット40の目的階を避難階に変更するための目的階変更指令と共に、サービスロボット40の避難場所の位置を示す位置情報を送信する。
【0052】
ここで、サービスロボット40が、例えば病院において可燃性の薬品を運搬している最中に火災が発生した場合を想定すると、当該サービスロボット40が避難階で降車し、当該避難階の乗場付近で待機状態になる場合、火災が避難階にまで及んだ際に、当該薬品に引火して二次的被害が発生する可能性があるが、当該サービスロボット40を乗場から離れた避難場所まで移動させておくことで、このような二次的被害の発生を防ぐことができる。
【0053】
以下、変形例について説明する。
(変形例)
本変形例においては、エレベータ制御装置30が目的階変更指令および目的階到着通知をサービスロボット40に送信したにも関わらず、当該サービスロボット40から降車信号を受信することができない場合の動作について説明する。
【0054】
図4は、変形例におけるエレベータ制御装置30の動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図2に示した処理と同様な処理については、ここではその詳しい説明を省略する。
【0055】
まず、
図2に示したステップS1~S4,S7,S8と同様な処理として、ステップS21~S26の処理が実行される。これによれば、目的階変更指令および目的階到着通知がエレベータ制御装置30からサービスロボット40に送信される。
【0056】
エレベータ制御装置30は、乗りかご10のドアを戸開してから一定時間が経過すると、当該乗りかご10のドアを戸閉させる制御を行う。このとき、エレベータ制御装置30は、サービスロボット40から降車信号を受信することができたか否かを確認する(ステップS27)。
【0057】
ステップS27の処理において、サービスロボット40から降車信号を受信できていたことが確認された場合(ステップS27のYes)、エレベータ制御装置30は、当該サービスロボット40の降車が無事に(正常に)完了したことを確認できたとして、ここでの一連の動作を終了させる。
【0058】
一方、ステップS27の処理において、サービスロボット40から降車信号を受信できていないことが確認された場合(ステップS27のNo)、エレベータ制御装置30は、上記したステップS24の処理において送信した目的階変更指令をサービスロボット40に再度送信し、乗りかご10のドアを再戸開させる制御を行った後に(ステップS28)、上記したステップS26の処理を再度実行する。
【0059】
上記したステップS27,S28の処理を実行することで、エレベータ制御装置30は、目的階変更指令をサービスロボット40に送信する処理と、目的階到着通知をサービスロボット40に送信する処理とを再度実行し、再戸開した乗りかご10からサービスロボット40を降車させることができる。これによれば、例えば、ステップS24の処理が実行された際の通信状況が悪く、サービスロボット40がエレベータ制御装置30から送信された目的階変更指令を正常に受信することができずに、当該サービスロボット40の目的階を避難階に変更することができなかった場合にも対応することができる。
【0060】
なお、上記したステップS28の処理により、乗りかご10のドアを再戸開させる際には、エレベータ制御装置30は、火災の発生に伴いエレベータを現在利用することができない旨の通知を、乗場側に設置された表示装置(例えば、階床を表示するインジケータ等)に表示させる制御を行う。これによれば、再戸開した乗りかご10に、利用者が間違って乗車してしまうことを防ぐことができる。
【0061】
以上説明した一実施形態によれば、火災管制運転時に、サービスロボット40がエレベータ(乗りかご10)内に閉じ込められてしまうことを防ぐことが可能なエレベータシステムを提供することができる。
【0062】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…乗りかご、20…火災報知器、30…エレベータ制御装置、31…火災検知部、32…エレベータ制御部、33…ロボット乗降判断部、34…ロボット連動部、40…サービスロボット、41…エレベータ連動部、42…目的階設定部、43…ロボット制御部、44…ロボット乗降送信部。
【要約】
【課題】火災管制運転時に、サービスロボットがエレベータの乗りかご内に閉じ込められてしまうことを防ぐことが可能なエレベータシステムを提供すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータが設置された建物内を移動する移動体と、エレベータの動作を制御するエレベータ制御装置とが通信可能に接続されるシステムである。エレベータ制御装置は、移動体によって送信される信号であって、移動体がエレベータに乗車したことを示す乗車信号と、移動体がエレベータから降車したことを示す降車信号とに基づいて、移動体がエレベータ内にいるか否かを判断する乗降判断部と、火災の発生が検知された場合であって、乗降判断部によって移動体がエレベータ内にいると判断された場合、移動体の目的階を避難階に変更するための変更指令を移動体に送信する制御部と、を備える。
【選択図】
図1