(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】自律飛行体、エレベータ点検システム、エレベータ点検方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241223BHJP
【FI】
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2023214381
(22)【出願日】2023-12-20
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 大樹
(72)【発明者】
【氏名】本山 剛史
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/104494(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0365281(US,A1)
【文献】特開2023-033660(JP,A)
【文献】特開2019-043755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを点検可能な自律飛行体であって、
撮像部と、
前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと無線通信可能な通信部と、
前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する点検部と、
前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記エレベータにおいて前記乗りかごの到着を待機する乗り場の前記利用者から上下いずれかの行き先方向に向かう前記乗りかごを前記乗り場に到着させるために行う操作である乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗りかご内の利用者が前記乗りかごを所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる制御部と、を備え
、
前記点検部は、前記通信部が前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御部は、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が下方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
自律飛行体。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、前記行き先階が前記乗り場呼びが行われた階より下の階である場合には、前記行き先階より少なくとも1階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項
1に記載の自律飛行体。
【請求項3】
前記点検部は、前記通信部が前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信
する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御部は、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が上方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも1階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項1に記載の自律飛行体。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、前記行き先階が前記乗り場呼びが行われた階より上の階である場合には、前記自律飛行体を退避移動させない、
請求項
3に記載の自律飛行体。
【請求項5】
前記点検部は、前記昇降路内の最下階から最上階までを点検し、
前記制御部は、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから前記乗り場呼びまたは前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合であって、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、または、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記自律飛行体を、前記昇降路内の前記乗りかごの移動経路から外れた領域に退避移動させる、
請求項1に記載の自律飛行体。
【請求項6】
前記点検部は、前記撮像部により、前記昇降路内に複数の箇所に設けられた、点検項目を示す点検項目情報を検索し、検索された前記点検項目情報に基づいて、点検作業を実行する、
請求項1~
5のいずれか一つに記載の自律飛行体。
【請求項7】
前記制御部は、前記撮像部により、前記昇降路内に複数の箇所に設けられた、退避場所を示す退避情報を検索し、検索された前記退避情報に基づいて、前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項
6に記載の自律飛行体。
【請求項8】
エレベータの制御するエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置とネットワークで接続され、前記エレベータを管理するエレベータ管理サーバと、前記エレベータを点検可能な自律飛行体と、前記エレベータ管理サーバにネットワークで接続され、かつ前記自律飛行体と無線通信可能であって、前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと、を備えるエレベータ点検システムであって、
前記エレベータ制御装置は、
前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごの到着を待機する乗り場に設けられた第1の操作盤に対する、前記利用者による上下いずれかの行き先方向に向かう前記乗りかごを前記乗り場に到着させるために行う操作である乗り場呼びが行われた場合、前記乗り場呼びを受信して、受信した前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記エレベータ管理サーバに送信し、前記乗りかご内に設けられた第2の操作盤に対して、前記利用者が前記乗りかごを所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である行き先階呼びが行われた場合に、前記行き先階呼びを受信し、受信した前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記エレベータ管理サーバに送信する第1の通信部、を備え、
前記エレベータ管理サーバは、
前記エレベータ制御装置から前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体管理サーバに送信し、前記エレベータ制御装置から前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体管理サーバに送信する第2の通信部と、を備え、
前記自律飛行体管理サーバは、
前記エレベータ管理サーバから前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体に送信し、前記エレベータ管理サーバから前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体に送信する第3の通信部と、を備え、
前記自律飛行体は、
撮像部と、
前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと無線通信可能な第4の通信部と、
前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する点検部と、
前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置と、を受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置と、を受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる制御部と、を備え
、
前記点検部は、前記第4の通信部が前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御部は、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が下方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
エレベータ点検システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、下方向の前記乗り場呼びがあった旨を受信した後、前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、前記行き先階が前記乗り場呼びが行われた階より下の階である場合には、前記行き先階より少なくとも1階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項
8に記載のエレベータ点検システム。
【請求項10】
前記点検部は、前記第4の通信部が前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信
する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御部は、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が上方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも1階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項
8に記載のエレベータ点検システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、上方向の前記乗り場呼びがあった旨を受信した後、前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、前記行き先階が前記乗り場呼びが行われた階より上の階である場合には、前記自律飛行体を退避移動させない、
請求項
10に記載のエレベータ点検システム。
【請求項12】
前記点検部は、前記昇降路内の最下階から最上階までを点検し、
前記制御部は、前記第4の通信部が、前記自律飛行体管理サーバから前記乗り場呼びまたは前記行き先階呼びがあった旨を受信した場合であって、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、または、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記自律飛行体を、前記昇降路内の前記乗りかごの移動経路から外れた領域に退避移動させる、
請求項
8に記載のエレベータ点検システム。
【請求項13】
前記昇降路内には、複数の箇所に、点検項目を示す点検項目情報が設けられ、
前記点検部は、前記撮像部により前記点検項目情報を検索し、検索された前記点検項目情報に基づいて、点検作業を実行する、
請求項
8~12のいずれか一つに記載のエレベータ点検システム。
【請求項14】
前記昇降路内には、退避場所を示す退避情報が設けられ、
前記制御部は、前記撮像部により前記退避情報を検索し、検索された前記退避情報に基づいて、前記自律飛行体を退避移動させる、
請求項
13に記載のエレベータ点検システム。
【請求項15】
エレベータの制御するエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置とネットワークで接続され、前記エレベータを管理するエレベータ管理サーバと、前記エレベータを点検可能な自律飛行体と、前記エレベータ管理サーバにネットワークで接続され、前記自律飛行体と無線通信可能で、前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと、を備えるエレベータ点検システムで実行されるエレベータ点検方法であって、
前記エレベータ制御装置が、前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごの到着を待機する乗り場に設けられた第1の操作盤に対する、前記利用者による上下いずれかの行き先方向に向かう前記乗りかごを前記乗り場に到着させるために行う操作である乗り場呼びが行われた場合、前記乗り場呼びを受信して、受信した前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記エレベータ管理サーバに送信し、前記乗りかご内に設けられた第2の操作盤に対して、前記利用者が前記乗りかごを所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である行き先階呼びが行われた場合に、前記行き先階呼びを受信し、受信した前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記エレベータ管理サーバに送信するステップと、
前記エレベータ管理サーバが、前記エレベータ制御装置から前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体管理サーバに送信し、前記エレベータ制御装置から前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体管理サーバに送信するステップと、
前記自律飛行体管理サーバが、前記エレベータ管理サーバから前記乗り場呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体に送信し、前記エレベータ管理サーバから前記行き先階呼びと前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、受信した前記行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを前記自律飛行体に送信するステップと、
前記自律飛行体が、前記自律飛行体管理サーバと無線通信を行うステップと、
前記自律飛行体が、前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する
点検ステップと、
前記自律飛行体が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置と、を受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ
、前記自律飛行体管理サーバから、前記行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置と、を受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる
制御ステップと、を含
み、
前記点検ステップは、前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御ステップは、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が下方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
エレベータ点検方法。
【請求項16】
エレベータを点検可能な自律飛行体のコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記自律飛行体は、撮像部、を備え、
前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと無線通信を行うステップと、
前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する
点検ステップと、
前記自律飛行体管理サーバから、前記エレベータにおいて前記乗りかごの到着を待機する乗り場の前記利用者から上下いずれかの行き先方向に向かう前記乗りかごを前記乗り場に到着させるために行う操作である乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗りかご内の利用者が前記乗りかごを所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる
制御ステップと、を前記コンピュータに実行させ
、
前記点検ステップは、前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、
前記制御ステップは、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が下方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律飛行体、エレベータ点検システム、エレベータ点検方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からエレベータの点検作業は、点検作業者が現地のエレベータに赴いて実施していたが、目視による点検項目については、エレベータ内に固定したカメラ等の撮像装置を用いて代替する方法が考えられている。エレベータの乗りかごの上下あるいは昇降路内にカメラを設置し、昇降路内の点検を行う場合、死角が多く視認しにくい箇所の点検が難しい場合がある。このような死角で視認しにくい箇所を点検するための代替方法としてドローン等の自律飛行体を活用した点検方法が考えられる。
【0003】
自律飛行体を利用した点検手法では、自律飛行体の飛行時の障害物との接触が懸念されるが接触を回避する方法として、自律飛行体に対象物を検出するセンサを設けて回避する方法、あるいは、移動経路上に設置したマーカを検出して対象物を回避する方法がある。ただし、どちらの技術も周囲の物体は静止していることを前提としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6494701号公報
【文献】特開2023-70120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような自律飛行体を用いた点検技術を、エレベータの点検作業に利用するためには、エレベータのサービス時間中に自律飛行体の飛行を行うことは困難であるため、保守点検に応じてエレベータの運行を停止させる必要がある。このため、エレベータの運行を停止することなく、自律飛行体を利用して効率的な点検作業を行うことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の自律飛行体は、エレベータを点検可能な自律飛行体であって、撮像部と、前記自律飛行体を管理する自律飛行体管理サーバと無線通信可能な通信部と、前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する点検部と、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記エレベータにおいて前記乗りかごの到着を待機する乗り場の前記利用者から上下いずれかの行き先方向に向かう前記乗りかごを前記乗り場に到着させるために行う操作である乗り場呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記乗り場呼びが行われた階と、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗りかご内の利用者が前記乗りかごを所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である行き先階呼びがあった旨と前記乗りかごの現在位置とを受信した場合に、前記乗りかごの現在位置と、前記自律飛行体の現在位置と、前記行き先階呼びにおける前記行き先階と、に基づいて、前記乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる制御部と、を備え、前記点検部は、前記通信部が前記自律飛行体管理サーバから前記エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが最上階にいる旨を受信する場合に、前記エレベータの前記乗りかごが上下移動可能な昇降路内の最下階から最上階より1階下の階までを点検し、前記制御部は、前記通信部が、前記自律飛行体管理サーバから、前記乗り場呼びがあった旨を受信した場合に、前記乗り場呼びにおける前記行き先方向が下方向である場合には、前記乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで前記自律飛行体を退避移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるエレベータ点検システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる制御盤の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる昇降機クラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかるドローンクラウド内のサーバの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかるドローンの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態にかかるエレベータ点検処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態にかかるドローンによる点検処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第1の実施形態にかかるドローンの退避移動処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の実施形態にかかる点検項目マーカーと退避マーカーの昇降路内での貼付の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態における点検項目マーカーと退避マーカーに基づいたドローンの移動の例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態にかかるドローンの復帰処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第1の実施形態におけるドローンの移動の例を示す模式図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態におけるドローンの移動の他の例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態にかかるドローンによるエレベータ点検処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態にかかるドローンの退避移動処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、第2の実施形態にかかる退避マーカ-の設置例を示す図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態におけるドローンの退避と復帰の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態にかかるドローンが退避した状態の例を示す図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態にかかるドローンが乗りかごの移動経路から外れた領域に退避し、乗りかごの通過後に、乗りかごの移動経路に復帰する例を示す図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態にかかるドローンの復帰処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、変形例にかかる退避マーカーの設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかるエレベータ点検システム1の全体構成の一例を示す図である。本実施形態のエレベータ点検システム1は、
図1に示すように、エレベータ600に設けられる制御盤100と、エレベータ600に設けられるコントローラ150と、エレベータ600に設けられる管制室160と、昇降機クラウド200内のサーバ210と、ドローンクラウド500内のサーバ510と、監視センター400と、を主に備えている。
【0009】
本実施形態では、オフィスビルやマンションビル等のビル7に、一つのエレベータ600が設置されている。エレベータ600は、各昇降路20内に乗りかご50を備える。この他、昇降路20内には、巻上機2およびカウンタウェイト3を備える。乗りかご50とカウンタウェイト3は、それぞれに昇降路20内に立設された不図示の一対のガイドレールに昇降自在に支持されており、ロープを介して昇降動作する。
【0010】
乗りかご50には、利用者(ロボット等も含む)が乗車可能となっている。
昇降路20は、乗りかご50が上下移動可能な空間である。
【0011】
乗りかご50の内壁面には、操作盤4Aが設けられている。
操作盤4Aは、利用者から各種操作を受け付けたり、乗りかご50に各種を報知を行うものである。操作盤4Aには、行き先階の指定や乗りかご50の扉を開閉するための押しボタンや非接触センサ、スピーカ、液晶表示部等(いずれも不図示)が設けられている。また、操作盤4Aは、制御盤100に有線または無線で接続されている。利用者からの行き先階押しボタンの押下や非接触センサによる検知により、行き先階呼びが制御盤100に送出される。
【0012】
ここで、行き先階呼びとは、乗りかご50内の利用者が、その乗りかご50を所望の行き先階へと向かわせるために行う操作である。行き先階呼びには、行き先階が含まれる。操作盤4Aは、第2の操作盤の一例である。
乗りかご50には、この他、カメラや荷重センサ等を設けてもよい。
【0013】
図1では、乗りかご50が1階から5階までの昇降路20を上下移動可能なエレベータ600の例を示している。ただし、階数はこれに限定されるものではない。そして、各階には、利用者が乗りかごの到着を待機する場所である乗り場が設けられている。
【0014】
各階の乗り場のエレベータの扉が設けられた壁面に、操作盤4Bが設けられている。
操作盤4Bは、利用者から各種操作を受け付けたり、乗りかご50に各種を報知を行うものである。操作盤4Bには、上方向あるいは下方向の行き先方向の指定や乗りかご50の扉を開閉するための押しボタンや非接触センサ、スピーカ、液晶表示部等(いずれも不図示)が設けられている。また、操作盤4Bは、制御盤100に有線または無線で接続されている。利用者からの行き先方向押しボタンの押下や非接触センサによる検知により、乗り場呼びが制御盤100に送出される。
【0015】
ここで、乗り場呼びとは、乗り場の利用者が、上下いずれかの行き先方向に向かう乗りかご50をその乗り場に到着させるために行う操作である。乗り場呼びには、行き先方向と乗り場呼びを行った階とが含まれている。操作盤4Bは、第1の操作盤の一例である。
【0016】
昇降路20の内部には、制御盤100とコントローラ150とが設けられる。制御盤100は、乗りかご50に設けられた操作盤4A、乗り場に設けられた操作盤4Bと無線または有線で接続される。
【0017】
制御盤100は、エレベータ600内の乗りかご50の運行を制御する。制御盤100は、コントローラ150に、有線または無線で接続されている。
【0018】
コントローラ150は、ネットワークで昇降機クラウド200内のサーバ210に接続される。コントローラ150は、制御盤100とサーバ210との間の通信を制御し、制御盤100とサーバ210との間でやり取りされる各種信号を仲介するためのインターフェース機能およびハブ機能を備えた仲介装置である。制御盤100の詳細については後述する。
【0019】
昇降路20内の上部には、ドローン用アンテナ21が設けられてる。このドローン用アンテナ21は、ドローンクラウド500のサーバとの情報の無線通信での電波の送受信、昇降路20内を飛行するドローン300との無線通信での電波の送受信を担う機器である。
【0020】
昇降路20の複数の箇所には、点検項目マーカー45と、退避マーカー23が貼付されている。
点検項目マーカー45は、ドローン300によるエレベータ600の点検作業における点検項目に関する情報を示したものである。具体的には、点検項目マーカー45は二次元バーコードで構成され、当該二次元バーコードには、ドローン300の現在位置(すなわち、点検項目マーカー45が貼付されている位置)、点検項目の内容、次の点検項目マーカー45への移動方向と距離の情報が含まれている。点検項目マーカー45は、点検項目情報の一例である。
【0021】
点検項目マーカー45の貼付箇所は、エレベータ600の主な点検項目である、巻上機2、ブレーキ、メインロープ5、メインシーブ、制御盤100、ガバナー、リミットスイッチ、ホールドア、ガイドレール、ブラケット、ガイドシュー、ローラー、給油器、着床スイッチ、かごシーブ、かご上周り、カウンタウェイト3、テールコード、非常止め装置、テンショナー、ピット、バッファーとする。点検項目マーカー45の貼付位置は、点検用品本体とするが、貼付が困難な場合は各点検用品の近傍とする。
【0022】
後述するドローン300が飛行しながらこれらの点検項目マーカー45を検索して、検索された点検項目マーカー45の二次元バーコードをスキャンして解析することで点検項目を実行可能となっている。
【0023】
退避マーカー23は、乗りかご50が移動する際に、ドローン300の退避場所に関する情報を示すものである。具体的には、退避マーカー23は二次元バーコードで構成され、当該二次元バーコードには、ドローン300の現在位置(すなわち、退避マーカー23が貼付されている位置)、次の退避マーカー23への移動方向と距離、点検項目マーカー45への移動方向と距離の情報が含まれている。退避マーカー23は、退避情報の一例である。
【0024】
退避マーカー23の貼付箇所は、乗りかごの移動経路上とカウンタウェイト3bの移動経路上としている。乗りかご50の移動経路上の退避マーカー23の貼付箇所は、乗りかご50の上下移動によってドローン300と乗りかご50との接触の回避を目的とし、ドローン300の退避に伴う上下の移動距離を最小化させるため、昇降路20の頂部のフロアレベルより少し下の位置としている。
【0025】
ドローン300が飛行しながらこれらの退避マーカー23を検索して、検索された退避マーカー23の二次元バーコードをスキャンして解析することで退避移動が可能となっている。
【0026】
また、昇降路20内の下部には、充電器22が設けられている。充電器22は、ドローン300の後述する充電部305(
図5参照)に接続され、ドローン300を充電する。
【0027】
管制室160には、ビル7の管理人が在席し、制御盤100に対する各種指示を与える。また、管制室160の管理人は、PCや端末装置を介して、制御盤100からメール等により各種指示を受信する。
【0028】
昇降機クラウド200内のサーバ210は、エレベータ600の乗りかご50に対する各種制御をコントローラ150を介して制御盤100に指示したり、制御盤100からの各種要求や各種データをコントローラ150を介して受信する。昇降機クラウド200内のサーバ210は、ネットワークで監視センター400(社内サーバ)とドローンクラウド500のサーバ510とに接続される。昇降機クラウド200内のサーバ210は、エレベータ管理装置の一例である。
【0029】
監視センター400には、不図示の社内サーバが設置されている。社内サーバは、エレベータ600の関連会社内に設置されるサーバであり、エレベータ600の保守管理や遠隔監視に必要な情報を、エレベータ600より収集している。これによれば、エレベータ600に不具合が発生した場合に、保守員は、監視センター400の社内サーバに収集された保守管理に必要な情報を参照して、当該発生した不具合に対応することが可能である。また、昇降機クラウド200を通じて機能やサービスが実行される際、必要に応じて監視センター400の社内サーバにアクセスして建物やエレベータ情報を参照したり、保守員がエレベータの管理に必要な情報を取得したりすることが可能である。
【0030】
また、監視センター400の社内サーバは、ドローン300に対して無線通信により各種指示を送信する。
【0031】
ドローンクラウド500のサーバ510は、昇降機クラウド200のサーバ210から各種要求や各種データを受信する。ドローンクラウド500のサーバ510は、ネットワークで、エレベータ600内の複数のドローン300と接続されており、複数のドローン300のそれぞれに対して各種指示を送信する。ドローンクラウド500のサーバ510は、自律飛行体管理サーバの一例である。
昇降機クラウド200のサーバ210、ドローンクラウド500のサーバ510の詳細については後述する。
【0032】
ドローン300は、無線操縦が可能な機体で、娯楽用、空撮用、荷物の搬送用等様々な種類、サイズのものを含む。また、ドローン300は、搭載する撮像部306から取得する画像に基づく有視界飛行(手動飛行)をするものや、プログラムに従って自動で目的地まで自動飛行するもの等を含む。ドローン300は、白津飛行体の一例である。ドローン300の詳細については後述する。
【0033】
なお、エレベータの数は一つに限定されるものではなく、ビル7内に複数設けられていてもよい。このため、昇降路20、乗りかご50、制御盤100、コントローラ150の数もエレベータ600の数に応じて変わってくる。
【0034】
次に制御盤100について説明する。
図2は、第1の実施形態にかかる制御盤100の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【0035】
制御盤100は、エレベータ制御装置の一例である。
制御盤100は、一般的なコンピュータの構成であり、
図2に示すように、制御部101と、通信部102と、記憶部110と、を主に備えている。
【0036】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(RANDOM ACCESSMEMORY)などの記憶媒体(すなわち、メモリデバイス)である。記憶部110には、各種制御プログラム等が記憶されている。
【0037】
制御部101は、ハードウェアプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)からなる。
制御部101は、記憶部110から、各種制御プログラムを読み出して実行することにより、エレベータ600の運行制御を実行する。ここで、エレベータ600の運行制御に必要な主要機能として、例えば、乗場呼びや行き先階呼びを登録する機能、乗場呼びや行き先階呼びに基づいて、巻上機2を駆動制御し乗りかご50の上下移動を制御する機能、、乗りかご50の速度制御などを行う安全機能、乗りかご50の戸開閉を制御する機能、乗りかご50の照明を制御する機能等、を実行する。
【0038】
通信部102は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、制御盤100とコントローラ150との間の通信処理を行う。また、通信部102は、管制室160の管理人の携帯端末やPC等との間で各種指示や通知を送受信する。
【0039】
本実施形態では、通信部102は、乗り場に設けられた操作盤4Bに対する乗り場呼びが行われた場合、当該乗り場呼びを受信して、受信した乗り場呼びと乗りかご50の現在位置とをコントローラ150を介して、昇降機クラウド200のサーバ210に送信する。
【0040】
また、通信部102は、乗りかご50内に設けられた操作盤4Aに対して、利用者による行き先階呼びが行われた場合に、当該行き先階呼びを受信し、受信した行き先階呼びと乗りかご50の現在位置とを昇降機クラウド200のサーバ210に送信する。
通信部102は、第1の通信部の一例である。
【0041】
次に、昇降機クラウド200内のサーバ210について説明する。
図3は、第1の実施形態にかかる昇降機クラウド200内のサーバ210の機能的構成の一例を示すブロック図である。サーバ210は、一般的なコンピュータの構成として、制御部211と、通信部212と、記憶部220と、を主に備える。
【0042】
記憶部220は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部220には、各種制御プログラムが記憶される。
【0043】
制御部211は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部211は、コントローラ150を介して制御盤100に各種制御指示を行う。
【0044】
通信部212は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ210とコントローラ150を介した制御盤100との間の通信処理や、サーバ210とドローンクラウド500内のサーバ510との間の通信処理を行う。
【0045】
本実施形態では、通信部212は、制御盤100からコントローラ150を介して、エレベータ600の乗り場で乗り場呼びが行われた場合、当該乗り場呼びと乗りかご50の現在位置とを受信する。通信部212は、乗り場呼びと乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、受信した乗り場呼びと乗りかご50の現在位置とを、ドローンクラウド500のサーバ510に送信する。
【0046】
また、通信部212は、制御盤100からコントローラ150を介して、エレベータ600の乗りかご50で行き先階呼びが行われた場合、当該行き先階呼びと乗りかご50の現在位置とを受信する。通信部212は、行き先階呼びと乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、受信した行き先階呼びと乗りかご50の現在位置とを、ドローンクラウド500のサーバ510に送信する。
【0047】
次に、ドローンクラウド500内のサーバ510について説明する。
図4は、第1の実施形態にかかるドローンクラウド500内のサーバ510の機能的構成の一例を示すブロック図である。
サーバ510は、一般的なコンピュータの構成として、制御部511と、通信部512と、記憶部520と、を主に備える。
【0048】
記憶部520は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部520には、各種制御プログラム325が記憶されている。
制御部511は、ハードウェアプロセッサ(CPU)からなる。制御部511は、ドローン300に関する各種処理の制御を行う。
【0049】
通信部512は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、サーバ510と昇降機クラウド200内のサーバ210との間の通信処理や、サーバ510とドローン300との間の通信処理を行う。
【0050】
本実施形態では、通信部512は、昇降機クラウド200内のサーバ210から乗り場呼びと乗りかごの現在位置とを受信する。通信部512は、乗り場呼びと乗りかごの現在位置とを受信した場合に、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とをドローン300に送信する。
【0051】
また、通信部512は、昇降機クラウド200内のサーバ210から行き先階呼びと乗りかごの現在位置とを受信する。通信部512は、行き先階呼びと乗りかごの現在位置とを受信した場合に、行き先階呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とをドローン300に送信する。
【0052】
次に、ドローン300について説明する。
図5は、第1の実施形態にかかるドローン300の機能的構成の一例を示すブロック図である。ドローン300は、
図5に示すように、撮像部306と、集音部307と、温度検出部308と、アンテナ301と、通信部312と、点検部302と、制御部311と、駆動部303と、記憶部320と、バッテリー304と、充電部305と、を主に備えている。
【0053】
撮像部306は、ドローン300の周囲を撮像するカメラ等であり、撮像画像を記憶部320に保存する。集音部307は、ドローン300の周囲から音声を集音するマイクロフォン等であり、集音した音声データを記憶部320に保存する。温度検出部308は、ドローン300の周囲の温度を検出する温度センサや温度計であり、検出した温度を記憶部320に保存する。
【0054】
アンテナ301は、エレベータ600内のドローン用アンテナ21との間で無線通信による電波の送受信を担う機器である。
【0055】
通信部312は、所定の通信プロトコルを有する通信デバイスからなり、アンテナ301およびエレベータ600内のドローン用アンテナ21を介して、ドローンクラウド500のサーバ510との間の通信処理を行う。本実施形態の通信部312は、ドローンクラウド500のサーバ510から、エレベータ600で、乗り場呼びがあった旨、行き先階呼びがあった旨および乗りかご50の現在位置を受信する。
【0056】
記憶部320は、例えばROMやRAMなどの記憶媒体(メモリデバイス)である。記憶部220には、各種制御プログラムが記憶される。
【0057】
駆動部303は、制御部311によって制御され、ドローン300の飛行を駆動する。
バッテリー304は、蓄電池である。充電部305は、昇降路20内の充電器22と接続可能な端子であり、充電器22に接続された場合に、バッテリー304が充電される。
【0058】
点検部302は、エレベータ600において利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する。本実施形態では、点検部302は。通信部312がドローンクラウド500のサーバ510から乗りかご50の現在位置として最上階にいる旨を受信するした場合に、昇降路20内の最下階から最上階より1階下の階までを点検する。
【0059】
点検部302が実行する点検処理としては、一例として、巻上機2、ブレーキ、メインロープ5、メインシーブ、制御盤100、ガバナー、リミットスイッチ、ホールドア、ガイドレール、ブラケット、ガイドシュー、ローラー、給油器、着床スイッチ、かごシーブ、かご上周り、カウンタウェイト3、テールコード、非常止め装置、テンショナー、ピット、バッファー等の点検作業がある。ただし、点検の項目としては、これらに限定されるものではない。
【0060】
ここで、点検部302は、撮像部306により、昇降路20内に複数の箇所に設けられた点検項目マーカー45を検索し、検索された点検項目マーカー45の情報に基づいて、点検作業を実行する。
【0061】
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、乗り場呼びが行われた階と、乗り場呼びにおける行き先方向と、に基づいて、駆動部303を制御して、乗りかご50が移動しない階までドローン300を退避移動させる。
【0062】
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、行き先階呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、行き先階呼びにおける行き先階と、に基づいて駆動部303を制御し、乗りかご50が移動しない階までドローン300を退避移動させる。
【0063】
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗り場呼びにおける行き先方向が下方向である場合には、駆動部303を制御して、乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0064】
制御部311は、さらに、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、下方向の乗り場呼びがあった旨を受信した後、さらに、行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、行き先階が乗り場呼びが行われた階(すなわち、乗りかご50の現在の階)より下の階である場合には、駆動部303を制御して、行き先階より少なくとも1階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0065】
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗り場呼びにおける行き先方向が上方向である場合には、駆動部303を制御して、乗り場呼びが行われた階より少なくとも1階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0066】
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、上方向の乗り場呼びがあった旨を受信した後、さらに、行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、行き先階が乗り場呼びが行われた階(すなわち、乗りかご50の現在の階)より上の階である場合には、ドローンを退避移動させない。
【0067】
ここで、制御部311は、撮像部306により、昇降路20内に複数の箇所に設けられた退避マーカー23を検索し、検索された退避マーカー23の情報に基づいて、ドローン300を退避移動させる。
【0068】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかるエレベータ点検処理について説明する。
【0069】
図6は、第1の実施形態にかかるエレベータ点検処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6では、乗りかご50の動作もあわせて説明している。
【0070】
まず、ドローン300は、昇降路20の底部に移動してドローン300によりエレベータ600の点検を開始する(S11)、そして。ドローン300では、通信部312によりドローンクラウド500のサーバ510から乗りかご50の現在位置を受信し、制御部311が乗りかご50の現在位置を確認する(S12)。
【0071】
乗りかご50の現在位置が1階から(最上階ー1)階のいずれかの階である場合には(S12:1~(最上階-1階)で待機中)、乗りかご50が最上階に移動するまでドローン300は待機する(S13)。
【0072】
S12で、乗りかご50の現在位置が最上階である場合には(SS12:最上階で待機)、通信部312が監視センター400から飛行指示を受信する(S14)。そして、ドローン300では、制御部311が駆動部303を制御して、飛行を開始する(S15)。そして、点検部302は、昇降路20の底部の点検を開始する(S16)。
【0073】
底部の点検が完了すると(S17)、ドローン300は、制御部311による駆動部303の制御により1階床分上昇移動する(S18)。そして、点検部302は1階の点検を開始する。ドローン300は、このような点検作業を1階ごとに上昇しながら繰り返し時実行する。そして、制御部311は、点検の途中で、例えば、最上階-1階の点検を介した後に(S19)、通信部312がドローンクラウド500のサーバ510から乗り場呼びがあった旨を受信したか否かを判断する(S20)。乗り場呼びがあった旨を受信しなかった場合には(S21:No)、処理は S36へ移行する。
【0074】
S36では、点検部302は、最上階-1階の点検を完了する(S36)。そして、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して底部に戻り(S37)、処理は終了する。
【0075】
S20で、通信部312が乗り場呼びがあった旨を受信した場合として(S21:Yes)、下の二つの場合を考える。
【0076】
第1の場合として、乗り場呼びがN階でなされ(ここで、Nは1以上の整数である)、行き先方向が下方向である場合(S20:N階、下方向)、ドローン300はN-2階に退避移動する(S22)。そして、乗りかご50がN階に移動する(S23)。次いで、ドローン300の制御部311は、通信部312がドローンクラウド500のサーバ510から行き先階呼びがあった旨を受信したか否かを判断する(S24)。行き先階呼びがあった旨を受信していない場合には(S24:No)、行き先階呼びがあった旨の受信待ちとなる。
【0077】
行き先階呼びがあった旨を受信し、行き先階がN-1階である場合、すなわち、1階床分下降である場合には(S24:N-1階(1階床下降))、ドローン300は、N-2階で待機する(S25)。そして、乗りかご50はN-1階に移動する(S26)。そして、処理はS27に移行する。
【0078】
S24で、行き先階呼びがあった旨を受信し、行き先階がN-2階である場合、すなわち、2階床分下降である場合には(S24:N-2階(2階床下降))、ドローン300は、N-3階に移動し。待機する(S29)。そして、乗りかご50はN-2階に移動する(S30)。そして、処理はS27に移行する。
【0079】
S27で、エレベータ600の利用が終了すると(S27)、乗りかご50は最上階に移動する(S28)。そして、ドローン30は、最上階-1階に移動し、点検を再開する(S29)。そして、処理はS36へ移行する。
【0080】
S20で、通信部312が乗り場呼びがあった旨を受信した場合(S21:Yes)の第2の場合として、乗り場呼びがN階でなされ(ここで、Nは1以上の整数である)、行き先方向が上方向である場合(S20:N階、上方向)、ドローン300はN-1階へ退避する(S31)。
【0081】
そして、乗りかご50がN階に移動する(S32)。次いで、ドローン300の制御部311は、通信部312がドローンクラウド500のサーバ510から行き先階呼びがあった旨を受信したか否かを判断する(S33)。行き先階呼びがあった旨を受信していない場合には(S33:No)、行き先階呼びがあった旨の受信待ちとなる。
【0082】
行き先階呼びがあった旨を受信し、行き先階がN+1階である場合、すなわち、1階床分上昇である場合には(S33:N+1階(1階床下降))、ドローン300は、現在の位置であるN-1階で待機する(S34)。そして、乗りかご50はN+1階に移動する(S235)。そして、処理はS27に移行する。
【0083】
次に、S16における点検処理の詳細について説明する。
図7は、第1の実施形態にかかるドローン300による点検処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【0084】
まず、ドローン300の点検部302は、監視センター400から点検開始の指示を受信する(S51)。ドローン300では、撮像部306により昇降路20内で点検項目マーカー45を探索する(S52)。
【0085】
図9は、第1の実施形態にかかる点検項目マーカー45と退避マーカー23の昇降路20内での貼付の一例を示す図である。ドローン300は、
図9の例に示す点検項目マーカー45を探索することになる。
【0086】
そして、撮像部306で点検項目マーカー45を検知すると(S53)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、点検項目マーカー45に向かって移動する(S54)。そして、点検部302は点検を開始する(S55)。
【0087】
点検が終了すると(S56)、ドローン300では、撮像部306により昇降路20内で次の点検項目マーカー45を探索する(S57)。そして、撮像部306で点検項目マーカー45を検知すると(S58)、上記のS54~S56の処理が点検項目マーカー45が検知されるごとに繰り返し実行される。そして、すべての点検項目マーカー45について処理が終了すると(S59)、呼出し元に復帰する。
【0088】
次に、
図6のS22の退避移動処理の詳細について説明する。
図8は、第1の実施形態にかかるドローン300の退避移動処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【0089】
ドローン300では、撮像部306によりN-1階の退避マーカー23を探索する(S72)。そして、撮像部306でN-1階の退避マーカー23を検知すると(S73)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、N-1階の退避マーカー23に向かっての移動を開始する(S74)。
【0090】
ドローン300がN-1階への移動を完了すると(S75)、撮像部306によりN-2階の退避マーカー23を探索する(S76)。ドローン300は、
図9の例に示す退避マーカー23を探索することになる。
【0091】
そして、撮像部306でN-2階の退避マーカー23を検知すると(S77)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、N-2階の退避マーカー23に向かっての移動を開始する(S78)。
【0092】
そして、ドローン300がN-2階への移動を完了すると(S79)、呼出し元に復帰する。
なお、
図6のS31にも退避移動が行われるが、かかる処理も
図8と同様の手順で行われる。ただし、この場合、N階からN-1階までの退避移動で処理は復帰する。
【0093】
図10は、第1の実施形態における点検項目マーカー45と退避マーカー23に基づいたドローン300の移動の例を示す図である。
図10(a)は、昇降路20内の点検項目マーカー45と退避マーカー23の設置例を示す。
図10(b)は、昇降路20内の点検項目マーカー45と退避マーカー23に基づくドローン300の移動経路を示している。
【0094】
点検項目マーカー45は、
図10(a)のように、昇降路20の底部から上部に向かって貼付されており、退避マーカー23が底部に貼付されている場合を例にあげる。この場合、ドローン300は、
図10(b)に示すように、底部から上部に向けて点検項目マーカー45に従って移動して点検し、最後に、退避マーカー23に基づいて底部に退避するようになる。
【0095】
次に、
図6のS29のドローン300の復帰処理の詳細について説明する。
図11は、第1の実施形態にかかるドローン300の復帰処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【0096】
ドローン300では、撮像部306によ最上階-2階の退避マーカー23を探索する(S92)。そして、撮像部306で最上階-2階の退避マーカー23を検知すると(S93)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、最上階-2階の退避マーカー23に向かっての移動を開始する(S94)。
【0097】
ドローン300が最上階-2階への移動を完了すると(S95)、撮像部306により最上階-1階の退避マーカー23を探索する(S96)。
【0098】
そして、撮像部306で最上階-1階の退避マーカー23を検知すると(S97)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、最上階-1階の退避マーカー23に向かっての移動を開始する(S98)。
【0099】
そして、ドローン300が最上階-1階への移動を完了すると(S99)、呼出し元に復帰する。
【0100】
図12は、第1の実施形態におけるドローン300の移動の例を示す模式図である。
図12では、最上階が5階であり、初期の乗りかご50の位置が5階である場合を考える。
【0101】
このような場合、ドローン300は、1階から4階まで点検を行って上昇する。そして、行き先方向が下方向の乗り場呼びが4階で行われた場合を考える。このとき、ドローン300は、2階まで下降し、次いで乗りかご50が4階に着床する。
【0102】
この後、4階で利用者が乗車した乗りかご50で、行き先階が3階である行き先階呼びがなされたとする。この場合、ドローン300はそのまま2階に待機し、乗りかご50が3階に移動する。3階で利用者が降車してエレベータ600の利用が終了した後、乗りかご50が最上階である5階に移動すると、ドローン300は4階まで上昇して、点検を再開することになる。上記は、
図6のS21、S21からS29までの処理の実行によるものである。
【0103】
図13は、第1の実施形態におけるドローン300の移動の他の例を示す模式図である。
図13では、最上階が5階であり、初期の乗りかご50の位置が5階である場合を考える。
【0104】
このような場合、ドローン300は、1階から4階まで点検を行って上昇する。そして、行き先方向が上方向の乗り場呼びが4階で行われた場合を考える。このとき、ドローン300は、3階まで下降し、次いで乗りかご50が4階に着床する。
【0105】
この後、4階で利用者が乗車した乗りかご50で、行き先階が5階である行き先階呼びがなされたとする。この場合、ドローン300はそのまま3階に待機し、乗りかご50は行き先階である5階に移動する。5階で利用者が降車してエレベータ600の利用が終了した後、ドローン300は4階まで上昇して、点検を再開することになる。上記は、
図6のS21、S31からS35までの処理の実行によるものである。
【0106】
このように本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、乗り場呼びが行われた階と、乗り場呼びにおける行き先方向と、に基づいて、駆動部303を制御して、乗りかご50が移動しない階までドローン300を退避移動させる。また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、行き先階呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、行き先階呼びにおける行き先階と、に基づいて駆動部303を制御し、乗りかご50が移動しない階までドローン300を退避移動させる。
【0107】
このため、本実施形態によれば、乗り場呼びや行き先階呼びにより乗りかご50が昇降路20内を上下移動する際に、昇降路20内で点検処理中のドローン300は、乗りかご50が移動しない階まで退避移動されるので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用して効率的な点検作業を行うことができる。
【0108】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗り場呼びにおける行き先方向が下方向である場合には、駆動部303を制御して、乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0109】
このため、本実施形態によれば、行き先階方向が下方向である乗り場呼びより乗りかご50が昇降路20内を乗り場呼びのあった階から下方向に移動する際に、昇降路20内で点検処理中のドローン300は、乗りかご50が移動しない階として乗り場呼びが行われた階より少なくとも2階下の階まで退避移動されるので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用して効率的な点検作業を行うことができる。
【0110】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、さらに、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、下方向の乗り場呼びがあった旨を受信した後、さらに、行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、行き先階が乗り場呼びが行われた階(すなわち、乗りかご50の現在の階)より下の階である場合には、駆動部303を制御して、行き先階より少なくとも1階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0111】
このため、本実施形態によれば、下方向の乗り場呼びの後に、乗り場の乗りかご50から、行き先階が乗りかご50の現在の階より下の階である行き先階呼びがあった場合には、昇降路20内で点検処理中のドローン300は、乗りかご50が移動しない階として当該行き先階より少なくとも1階下の階ままで退避移動されるので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用して効率的な点検作業を行うことができる。
【0112】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、乗り場呼びがあった旨と乗りかご50の現在位置とを受信した場合に、乗り場呼びにおける行き先方向が上方向である場合には、駆動部303を制御して、乗り場呼びが行われた階より少なくとも1階下の階までドローン300を退避移動させる。
【0113】
このため、本実施形態によれば、行き先階方向が上方向である乗り場呼びより乗りかご50が昇降路20内を乗り場呼びのあった階から上方向に移動する際に、昇降路20内で点検処理中のドローン300は、乗りかご50が移動しない階として乗り場呼びが行われた階より少なくとも1階下の階まで退避移動されるので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用して効率的な点検作業を行うことができる。
【0114】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から、上方向の乗り場呼びがあった旨を受信した後、さらに、行き先階呼びがあった旨を受信した場合において、行き先階が乗り場呼びが行われた階(すなわち、乗りかご50の現在の階)より上の階である場合には、ドローンを退避移動させない。
【0115】
このため、本実施形態によれば、上方向の乗り場呼びの後に、乗り場の乗りかご50から、行き先階が乗りかご50の現在の階より上の階である行き先階呼びがあった場合には、昇降路20内で点検処理中のドローン300は、現在の階が乗りかご50が移動しない階であるとして退避移動しないので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用して効率的な点検作業を行うことができる。
【0116】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のエレベータ600の昇降路20内には、複数の箇所に、点検項目を示す点検項目マーカー45が設けられ、ドローン300の点検部302は、撮像部306により点検項目マーカー45を検索し、検索された点検項目マーカー45に基づいて点検作業を実行する。このため、本実施形態によれば、ドローン300は、点検項目マーカー45に従って点検作業を実行すればよいので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用してより効率的な点検作業を行うことができる。
【0117】
また、本実施形態では、エレベータ点検システム1のエレベータ600の昇降路20内には、退避場所を示す退避マーカー23が設けられ、ドローン300の制御部311は、撮像部306により退避マーカー23を検索し、検索された前記退避情報に基づいて、前記自律飛行体を退避移動させる。このため、本実施形態によれば、ドローン300は退避マーカー23に従って退避移動すればよいので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用してより効率的な点検作業を行うことができる。
【0118】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、乗りかご50が移動する場合、乗りかご50の移動が行われない階にドローン300を退避していたが、この第2の実施形態では、乗りかご50の移動経路から外れた領域にドローン300を退避する。
【0119】
本実施形態にかかるエレベータ点検システム1、制御盤100、昇降機クラウド200のサーバ210、ドローンクラウド500のサーバ510,ドローン300のそれぞれの構成は第1の実施形態と同様である。
【0120】
本実施形態にかかるドローン300では、以下の点が第1の実施形態と異なっている。
点検部302は、昇降路20内の最下階から最上階までを点検可能となっている。
制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から乗り場呼びまたは行き先階呼びがあった旨を受信した場合であって、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、乗り場呼びが行われた階と、乗り場呼びにおける行き先方向と、または、乗りかごの現在位置と、ドローン300の現在位置と、行き先階呼びにおける行き先階と、に基づいて、ドローン300を、昇降路20内の乗りかご50の移動経路から外れた領域に退避移動させる。
【0121】
本実施形態では、退避マーカー23は、乗りかご50の移動経路から外れた領域に設置されている。具体的には、退避マーカー23は、上記移動経路から外れた領域に存在するカウンタウェイト3上、若しくはカウンタウェイト3の近傍に貼付されている。
【0122】
次に、本実施形態におけるエレベータ点検処理について説明する。
図14は、第2の実施形態にかかるドローン300によるエレベータ点検処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0123】
まず、ドローン300は、昇降路20の底部に移動してドローン300によりエレベータ600の点検を開始する(S101)、そして。ドローン300では、点検部302が最上階-1階の点検を開始する(S102)。最上階-1階の点検が完了すると(S103)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を駆動して、乗りかご50の移動経路から外れた位置に退避移動する(S104)。
【0124】
乗りかご50が最上階から最上階-2階まで下降すると(S105)、ドローン300は、乗りかご50の移動経路に復帰する(S106)。そして、ドローン300は1階床分上昇する(S107)。次いで、ドローン300では、点検部302が最上階の点検を開始する(S108)。最上階の点検が完了すると(S109)、ドローン300は、上記と逆の順序で昇降路20の底部に戻り、点検を処理を終了する(S110)。
【0125】
次に、
図14のS104における退避処理について説明する。
図15は、第2の実施形態にかかるドローン300の退避移動処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【0126】
ドローン300では、撮像部306によりカウンタウェイト3上の退避マーカー23を探索する(S121)。
図16は、第2の実施形態にかかる退避マーカ-23の設置例を示す図である。
図16に示すように、本実施形態では、退避マーカー23は、カウンタウェイト3上、およびカウンタウェイト3の近傍に貼付されている。本実施形態では、撮像部306は、
図16の例二示す退避マーカー23を探索することになる。
【0127】
撮像部306がカウンタウェイト3上の退避マーカー23を検知すると(S122)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、カウンタウェイト3上の退避マーカー23に向かって移動を開始する(S123)。移動が完了すると(S124)、処理は読出し元に復帰する。
【0128】
図17は、第2の実施形態におけるドローン300の退避と復帰の一例を示す図である。
図18は、第2の実施形態にかかるドローン300が退避した状態の例を示す図である。
【0129】
図19は、第2の実施形態にかかるドローン300が乗りかご50の移動経路から外れた領域に退避し、乗りかご50の通過後に、乗りかご50の移動経路に復帰する例を示す図である。
【0130】
図15の退避処理により、
図17の左側、
図19の左側に示すように、ドローン300は、乗りかご50の移動経路から外れた領域に設定されているカウンタウェイト3の退避マーカー23に従って、退避移動することになる。そして、ドローン300は、
図18に示すように、カウンタウェイト3の経路上でホバリングして待機する。
【0131】
次に、
図14のS106におけるドローン300の復帰処理について説明する。
図20は、第2の実施形態にかかるドローン300の復帰処理の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
【0132】
ドローン300では、撮像部306により最上階-1階の点検項目マーカー45を探索する(S131)。撮像部306が最上階-1階の点検項目マーカー45を検知すると(S132)、ドローン300は、制御部311により駆動部303を制御して、最上階-1階の点検項目マーカー45に向かって移動を開始する(S133)。移動が完了すると(S134)、処理は読出し元に復帰する。
【0133】
このような
図19の復帰処理により、
図17の右側、
図19の右側に示すように、ドローン300は、乗りかご50の移動経路に設定されている点検項目マーカー45に従って、乗りかご50の移動経路に復帰することになる。
【0134】
このように本実施形態では、エレベータ点検システム1のドローン300の点検部302は、昇降路20内の最下階から最上階までを点検し、制御部311は、通信部312が、ドローンクラウド500のサーバ510から乗り場呼びまたは行き先階呼びがあった旨を受信した場合であって、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、乗り場呼びが行われた階と、乗り場呼びにおける行き先方向と、または、乗りかご50の現在位置と、ドローン300の現在位置と、行き先階呼びにおける行き先階と、に基づいて、ドローン300を、昇降路20内の乗りかご50の移動経路から外れた領域に退避移動させる。具体的には、制御部311は、ドローン300を、昇降路20内の乗りかご50の移動経路から外れた領域として、カウンタウェイト3上若しくはカウンタウェイト3の近傍に退避移動させる。このため、本実施形態によれば、ドローン300を乗りかご50の移動経路から外れた領域に退避移動することになるので、エレベータ600の運行を停止することなく、ドローン300を利用してより効率的な点検作業を行うことができる。
【0135】
(変形例)
第2の実施形態では、退避マーカー23をカウンタウェイト3上若しくはカウンタウェイト3の近傍に設定していたが、乗りかご50の移動経路から外れた領域であれば、いずれの場所に退避マーカー23を設置してもよい。
【0136】
図21は、変形例にかかる退避マーカー23の設置例を示す図である。
この
図21に示すように、退避マーカー23を、乗りかご50の移動経路から外れた領域に設けられるレールブラケット47に設置することができる。これにより。ドローン300を乗りかご50の移動経路から外れた領域であるレールブラケット47に着陸して退避させることが可能となる。
【0137】
このような変形例によれば、第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0138】
上記実施形態および変形例にかかる制御盤100、昇降機クラウド200のサーバ210、ドローンクラウド500のサーバ510は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0139】
上記実施形態および変形例にかかるドローン300は、CPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDD、SSD、CDドライブ装置などの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、操作ボタン等の入力装置を備えたハードウェア構成となっている。
【0140】
上記実施形態および変形例にかかるドローン300で実行されるエレベータ点検プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0141】
上記実施形態および変形例にかかるドローン300で実行されるエレベータ点検プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0142】
さらに、上記実施形態および変形例にかかるドローン300で実行されるエレベータ点検プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態および変形例にかかるドローン300で実行されるエレベータ点検プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0143】
上記実施形態および変形例にかかるドローン300で実行されるエレベータ点検プログラムは、上述した各部(通信部312、点検部302、制御部311)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記ROMからエレベータ点検プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部312、点検部302、制御部311が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1…エレベータ点検システム、2…巻上機、3…カウンタウェイト、4A,4B…操作盤、5…ロープ、7…ビル、20…昇降路、22…充電器、23…退避マーカー(退避情報)、45…点検項目マーカー(点検項目情報)、47…レールブラケット、50…乗りかご、100…制御盤(エレベータ制御装置)、101,211,311,511…制御部、102,212,312,512…通信部、110,220,320,520…記憶部、160…管制室、200…昇降機クラウド、210,310…サーバ、300…ドローン(自律飛行体)、301…アンテナ、302…点検部、303…駆動部、304…バッテリー、305…充電部、306…撮像部、307…集音部、308…温度検出部、500…ドローンクラウド、600…エレベータ。
【要約】
【課題】エレベータの運行を停止することなく、自律飛行体を利用して効率的な点検作業を行うこと。
【解決手段】実施形態の自律飛行体は、エレベータにおいて利用者が乗車可能な乗りかごが上下移動可能な昇降路内の点検作業を実行する点検部と、自律飛行体管理サーバから乗り場呼びがあった旨と乗りかごの現在位置とを受信した場合に、乗りかごの現在位置と、自律飛行体の現在位置と、乗り場呼びが行われた階と、乗り場呼びにおける前記行き先方向と、に基づいて、乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させ、自律飛行体管理サーバから行き先階呼びがあった旨と乗りかごの現在位置とを受信した場合に、乗りかごの現在位置と、自律飛行体の現在位置と、行き先階呼びにおける行き先階と、に基づいて、乗りかごが移動しない階まで前記自律飛行体を退避移動させる制御部と、を備える。
【選択図】
図5