(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】複合紡績糸、加工方法及びその加工装置、並びに防護用品
(51)【国際特許分類】
D02G 3/40 20060101AFI20241223BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20241223BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20241223BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20241223BHJP
A41D 31/24 20190101ALI20241223BHJP
【FI】
D02G3/40
D02G3/36
D02G3/44
A41D31/00 503P
A41D31/00 503H
A41D31/00 503F
A41D31/00 503L
A41D31/00 503E
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/24
(21)【出願番号】P 2023512051
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2021112841
(87)【国際公開番号】W WO2022037543
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】202010827636.9
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010827637.3
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523055547
【氏名又は名称】賽立特(南通)安全用品有限公司
【氏名又は名称原語表記】SELECT (NANTONG) SAFETY PRODUCTS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 198, Youyi West Road, Rudong Economic Development Zone Nantong, Jiangsu 226499, China
(73)【特許権者】
【識別番号】523055558
【氏名又は名称】上海賽立特安全用品有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SELECT SAFETY PRODUCTS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1508, No. 5, Lane 388, Daduhe Road, Putuo District Shanghai, 200333, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 衛
(72)【発明者】
【氏名】厳 雪峰
(72)【発明者】
【氏名】管 ▲うぃ▼澤
(72)【発明者】
【氏名】呉 磊磊
(72)【発明者】
【氏名】王 娟
(72)【発明者】
【氏名】馬 岩
(72)【発明者】
【氏名】陳 克文
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-280121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/
A41D 31/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合紡績糸であって、
前記複合紡績糸の芯部に位置する芯糸と、
単一の材料の
複数のモノフィラメントからなる第1複合糸であって、前記複数のモノフィラメントが前記芯糸の外周表面に平行に被覆されている第1複合糸と、
前記第1複合糸の表面及び内部
、ならびに第1複合糸と芯糸との間に配置される水性接着剤であって、前記第1複合糸の表面の前記水性接着剤が水性接着剤層を形成する水性接着剤と、
単一の材料の
複数のモノフィラメントからなる第2複合糸であって、前記複数のモノフィラメントが前記水性接着剤層の外周表面に平行に被覆されている第2複合糸と、
前記第2複合糸の外側にカバーリングされるシングルカバーリング構造層又はダブルカバーリング構造層と、を含み、
前記第1複合糸と前記第2複合糸はいずれも有機複合糸又は無機複合糸を用い、
前記芯糸は金属単繊維、有機長繊維又は無機長繊維を含むが、前記水性接着剤は水性ポリウレタンエマルション又はポリアクリレートエマルションを含み、
前記芯糸は金属単繊維であって前記複合紡績糸の芯部に位置し、前記第1複合糸は無機繊維複合糸であって
、前記無機繊維複合糸の複数のモノフィラメントが前記金属単繊維の外周表面に平行に被覆され、前記第2複合糸は有機複合糸であり、前記複合紡績糸の線状密度は33.3tex~72.2tex
であって、
前記金属単繊維はステンレス糸、タングステン糸又はニッケル糸を含み、前記金属単繊維の繊度は10~60μmであり、前記無機繊維複合糸はガラス繊維複合糸又は玄武岩繊維複合糸から選択されたものであり、前記無機繊維複合糸の繊度は50~200Dであり、前記有機複合糸は超高分子量ポリエチレン、アラミド1414又はビニロンから選択されたいずれか1つであり、前記有機複合糸の繊度は150~400Dである
ことを特徴とする複合紡績糸。
【請求項2】
前記シングルカバーリング構造層は短繊維紡績糸カバーリング構造層又は長繊維カバーリング構造層を含み、前記ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、前記ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であり、前記短繊維紡績糸カバーリング構造層の短繊維紡績糸は、綿、麻、毛、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維から選択された1つの純粋な紡糸又はいずれか2つ以上の混紡糸を用い、前記長繊維カバーリング構造層の長繊維はナイロン長繊維及び/又はポリエステル長繊維であり、前記短繊維紡績糸は繊度は32~80英国式番手であり、撚り係数が260~420であり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルであり、前記長繊維は繊度が30~100Dであり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルであることを特徴とする請求項
1に記載の複合紡績糸。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の複合紡績糸の加工方法であって、
無機繊維複合糸を金属単繊維で平行に被覆し、それぞれ金属単繊維及び無機繊維複合糸の張力を制御し、金属単繊維及び無機繊維複合糸を第1ゴデットローラの案内溝に引き込んで、前記無機繊維複合糸を張力の作用によって第1ゴデットローラの案内溝に広げさせることを可能にし、前記金属単繊維が前記広げられた後の無機繊維複合糸
を構成する複数のモノフィラメント上の中央位置に位置し、前記第1ゴデットローラにより案内された後に前記金属単繊維が芯部に位置し且つ無機繊維複合糸
を構成する複数のモノフィラメントが金属単繊維の外周表面に平行に被覆される第1カバーリングトウを形成するステップ(1)と、
浸漬処理を行い、前記第1カバーリングトウを水性接着剤が収容される浸漬プールに供給して浸漬処理を行い、次に浸漬処理後の前記第1カバーリングトウに対して接着剤スプレーコーティング又は接着剤ナイフコーティングを行い、前記水性接着剤の濃度を20~50wt%とし、前記浸漬処理時間を0.5~5sとするステップ(2)と、
乾燥及び冷却を行い、前記接着剤スプレーコーティング又は接着剤ナイフコーティングを行った後の第1カバーリングトウを温度が80~120℃のオーブンに送入し、処理時間を3~6sとし、次に冷風ノズルにより迅速に冷却して複合単繊維を得て、冷却温度を5~20℃とするステップ(3)と、
有機複合糸に前記乾燥冷却後の複合単繊維を被覆し、それぞれ有機複合糸及び前記乾燥冷却後の複合単繊維の張力を制御し、有機複合糸及び前記乾燥冷却後の複合単繊維を第2ゴデットローラの案内溝に引き込んで、前記有機複合糸を張力の作用によって第2ゴデットローラの案内溝に広げさせることを可能にし、前記乾燥冷却後の複合単繊維が前記広げられた後の有機複合糸
を構成する複数のモノフィラメント上の中央位置に位置し、前記第2ゴデットローラにより案内された後に前記乾燥冷却後の複合単繊維が芯部に位置し且つ有機複合糸
を構成する複数のモノフィラメントが前記乾燥冷却後の複合単繊維に平行に被覆される第2カバーリングトウを形成するステップ(4)と、
シングルカバーリング又はダブルカバーリングを行い、前記第2カバーリングトウの外側にカバーリング機構によってシングルカバーリング又はダブルカバーリングを行って前記複合紡績糸を得て、前記シングルカバーリングが短繊維紡績糸又は長繊維を用いてカバーリングし、前記ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、前記ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であるステップ(5)と、を含むことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合紡績糸の加工方法。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の複合紡績糸の加工装置であって、
フレームと、前記フレームに並列に設置される複数組の加工装置とを備え、各組の前記加工装置は前記フレームの一端に設置される第1案内複合機構と、前記第1案内複合機構の送出端の下方に設置される浸漬機構と、前記フレームの中央部に設置され且つ浸漬機構の下流に位置する乾燥冷却機構と、前記乾燥冷却機構の送出端に設置される第2案内複合機構と、前記第2案内複合機構の送出端に設置されるカバーリング機構とをそれぞれ備えることを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合紡績糸の加工装置。
【請求項5】
前記第1案内複合機構は前記フレームに接続される第1供給ローラユニットと、前記第1供給ローラユニットの内側に設置される第1主ゴデットローラユニットと、前記第1主ゴデットローラユニットの材料入口端に設置される第1補助ゴデットローラユニットとを備えることを特徴とする請求項
4に記載の複合紡績糸の加工装置。
【請求項6】
前記第1主ゴデットローラユニットは前記フレームに接続される第1垂直スクリューと、前記第1垂直スクリューの頂部に接続される第1L字形ホルダと、前記第1L字形ホルダに接続される第1水平スクリューと、前記第1水平スクリューに設置される第1V字形ゴデットローラとを備え、前記第1V字形ゴデットローラの中央部が円弧溝を呈し、前記第2案内複合機構の構造が前記第1主ゴデットローラユニットの構造と同じであることを特徴とする請求項
5に記載の複合紡績糸の加工装置。
【請求項7】
防護用品であって、
請求項1
又は2に記載の複合紡績糸とスパンデックス及び/又はナイロン長繊維とを並列に供給して、ニードル織機によって切断防止性能を有するニットに編み、又は、
前記複合紡績糸を織機機械によって切断防止性能を有する織物に直接織り、前記ニット又は織物の切断防止性能はEN388標準によってテストし、その切断防止レベルはいずれもDレベル以上に達することができ、前記防護用品は切断防止機能を有する手袋、保護用スリーブ、襟巻き、服又は鞋を含む防護用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は、2020年8月17日に提出された名称「耐切断性複合紡績糸、紡績糸の加工方法及び防護用品」の中国特許出願202010827636.9、及び2020年8月17日に提出された名称「複合紡績糸及びその加工装置」の中国特許出願202010827637.3から援用され、それらは援用により本願に取り込まれる。
【0002】
本願は、複合紡績糸の加工技術分野に関し、特に、複合紡績糸、加工方法及びその加工装置、並びに防護用品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の複合紡績糸は、基本的に混紡、カバーリング、諸撚り及びカバーリング構造を用いて実現されているが、これらの構造はいずれも加撚して形成された螺旋状の絡み合いであり、芯層から外層まで繊維が平行して均一且つ層状に配置されることを実現できず、複合紡績糸が径方向又は軸方向からの作用力を受けるとき、各層の繊維の反応及び受けた力が一致せず、このため、複合糸のいくつかの製品での応用が不十分又は応用が限定されてしまう。
【0004】
また、従来の切断損傷防護用品、例えば、切断防止機能を有する手袋、保護用スリーブ、襟巻き、服又は靴などは耐切断性の無機又は有機長繊維又は単糸又は複合紡績糸を紡績原料として用いる場合が多く、耐切断性レベルへの要求が高い防護用品は耐切断性複合紡績糸/生糸を紡績原料として用いる場合が多く、従来の耐切断性複合紡績糸/生糸は一般的にガラス繊維、玄武岩繊維などを代表とする無機非金属長繊維を芯糸として用いて1層又は複数層の他の糸を外包し、又はステンレス繊維、タングステン糸などを代表とする金属糸を芯糸として用いて1層又は複数層の他の糸を外包する。
【0005】
例えば、従来の特許出願(CN110172777A)には切断防止機能を有する靴下及びその製造方法が開示されているが、該切断防止機能を有する靴下は紡績糸をニッティングしてなるものであり、該紡績糸は耐切断性紡績糸を含み、その耐切断性紡績糸は主にガラス繊維、石英繊維又はセラミック繊維などの無機繊維、又はステンレス糸、ニッケル合金糸、チタン合金糸、マンガン合金糸などの金属糸を芯材として、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維又はPBO繊維などの有機繊維を外包してなるものであり、
従来の特許出願(US20070062173A1)には安全衣服用の複合紡績糸が開示されているが、該紡績糸の芯糸材料はいかなる耐切断性材料の耐切断性芯であってもよく、ポリエチレン、ガラス繊維及び金属糸が挙げられるが、それらに限定されず、該芯を取り囲むものは少なくとも1種のポリエステル繊維の第1カバーリング層を含み、第1カバーリング層の周りに包まれる、撚り方向がカバーリング層と逆であるもののうちの少なくとも1種は低摩擦係数材料の繊維の第2カバーリング層を含む。
【0006】
上記従来技術の紡績糸は一定の耐切断性能を有し、同じ条件下で、耐切断性複合紡績糸の耐切断性能は耐切断性長繊維又は単糸より優れているが、金属糸又は無機非金属繊維をハートヤーンとする耐切断性複合紡績糸には依然として多くの問題があり、例えば、無機非金属繊維は加工及び使用過程において力(例えば、屈曲、引張、絡み合い)を受けた後に単繊維が破断して外部のカバーリング層から露出してバリを形成して皮膚を刺して皮膚のかゆみ及び過敏症を引き起こしやすく、金属糸は芯糸としてカバーリングされた後、複合糸が屈曲する際に金属糸が露出して折り曲げて鋭い角を形成し又は破断して鋭い裂け目を形成して皮膚に擦り傷を付けやすく、且つ従来の耐切断性複合糸は折り曲げられた後、金属糸の形状回復(性能を回復する)が悪いため、折り跡を形成して編物層とゴム被膜とを剥離させやすく、また、切断時にナイフエッジが紡績糸を押さえ、ナイフエッジが金属糸に直接衝突して金属糸の表面に切れ口を形成して破損されやすく、その耐切断性能を大幅に低下させる。それ以外に、上記従来技術における切断防止機能を有する紡績糸の耐切断性能はまだ更なる向上の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術的問題に対して、本願は上記技術的問題を解決できる複合紡績糸、加工方法及びその加工装置、並びに該複合紡績糸で加工された防護用品を提供し、該複合糸の加工装置は高性能の耐切断性複合紡績糸を加工するとともに、従来の耐切断性紡績糸に存在する上記欠点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本願の実施例は耐切断性複合紡績糸を提供し、
前記複合紡績糸の芯部に位置する芯糸と、
前記芯糸の外周表面に平行に被覆されている第1複合糸と、
前記第1複合糸の表面及び内部に配置される水性接着剤であって、前記第1複合糸の表面の前記水性接着剤が水性接着剤層を形成する水性接着剤と、
前記水性接着剤層の外周表面に平行に被覆されている第2複合糸と、
前記第2複合糸の外側にカバーリングされるシングルカバーリング構造層又はダブルカバーリング構造層と、を含み、
前記第1複合糸と前記第2複合糸はいずれも有機複合糸又は無機複合糸を用いてもよい。
【0009】
好ましくは、前記芯糸は金属単繊維、有機長繊維又は無機長繊維を含むが、それらに限定されず、好ましくは、前記水性接着剤は水性ポリウレタンエマルション又はポリアクリレートエマルションを含むが、それらに限定されず、前記水性接着剤の濃度は20~50wt%である。
【0010】
好ましくは、前記複合紡績糸は耐切断性能を有し、前記芯糸は金属単繊維であって前記複合紡績糸の芯部に位置し、前記第1複合糸は無機繊維複合糸であって前記金属単繊維の外周表面に平行に被覆され、前記第2複合糸は高靭性低伸縮性有機複合糸であり、前記複合紡績糸の線状密度は33.3tex~72.2texである。
【0011】
好ましくは、前記金属単繊維はステンレス糸、タングステン糸又はニッケル糸を含むが、それらに限定されず、前記金属単繊維の繊度は10~60μmであり、前記無機繊維複合糸はガラス繊維複合糸又は玄武岩繊維複合糸から選択されたものであり、前記無機繊維複合糸の繊度は0~200Dであり、前記高靭性低伸縮性有機複合糸は超高分子量ポリエチレン、高靭性低伸縮性ポリエステル、アラミド1414又は高靭性ビニロンから選択されたいずれか1つであり、前記高靭性低伸縮性有機複合糸の繊度は150~400Dである。
【0012】
好ましくは、前記シングルカバーリング構造層は短繊維紡績糸カバーリング構造層又は長繊維カバーリング構造層を含み、前記ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、前記ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であり、好ましくは、前記短繊維紡績糸カバーリング構造層の短繊維紡績糸は、綿、麻、毛、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維から選択された1つの純粋な紡糸又はいずれか2つ以上の混紡糸を用い、前記長繊維カバーリング構造層の長繊維はナイロン長繊維及び/又はポリエステル長繊維であり、前記短繊維紡績糸は繊度が32~80英国式番手であり、撚り係数が260~420であり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルであり、前記長繊維は繊度が30~100Dであり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルである。
【0013】
本願の他の態様として、複合紡績糸の加工方法を更に提供し、当該加工方法は、
無機繊維複合糸を金属単繊維で平行に被覆し、それぞれ金属単繊維及び無機繊維複合糸の張力を制御し、金属単繊維及び無機繊維複合糸を第1ゴデットローラの案内溝に引き込んで、前記無機繊維複合糸を張力の作用によって第1ゴデットローラの案内溝に広げさせることを可能にし、前記金属単繊維が前記広げられた後の無機繊維複合糸上の中央位置に位置し、前記第1ゴデットローラにより案内された後に前記金属単繊維が芯部に位置し且つ無機繊維複合糸が金属単繊維の外周表面に平行に被覆される第1カバーリングトウを形成するステップ(1)と、
浸漬処理を行い、前記第1カバーリングトウを水性接着剤が収容される浸漬プールに供給して浸漬処理を行い、次に浸漬処理後の前記第1カバーリングトウに対して接着剤スプレーコーティング又は接着剤ナイフコーティングを行い、前記水性接着剤の濃度を20~50wt%とし、前記浸漬処理時間を0.5~5sとするステップ(2)と、
乾燥及び冷却を行い、前記接着剤スプレーコーティング又は接着剤ナイフコーティングを行った後の第1カバーリングトウを温度が80~120℃のオーブンに送入し、処理時間を3~6sとし、次に冷風ノズルにより迅速に冷却して複合単繊維を得て、冷却温度を5~20℃とするステップ(3)と、
高靭性低伸縮性有機複合糸に前記乾燥冷却後の複合単繊維を被覆し、それぞれ高靭性低伸縮性有機複合糸及び前記乾燥冷却後の複合単繊維の張力を制御し、高靭性低伸縮性有機複合糸及び前記乾燥冷却後の複合単繊維を第2ゴデットローラの案内溝に引き込んで、前記高靭性低伸縮性有機複合糸を張力の作用によって第2ゴデットローラの案内溝に広げさせることを可能にし、前記乾燥冷却後の複合単繊維が前記広げられた後の高靭性低伸縮性有機複合糸上の中央位置に位置し、前記第2ゴデットローラにより案内された後に前記乾燥冷却後の複合単繊維が芯部に位置し且つ高靭性低伸縮性有機複合糸が前記乾燥冷却後の複合単繊維に平行に被覆される第2カバーリングトウを形成するステップ(4)と、
シングルカバーリング又はダブルカバーリングを行い、前記第2カバーリングトウの外側にカバーリング機構によってシングルカバーリング又はダブルカバーリングを行って前記耐切断性複合紡績糸を得て、前記シングルカバーリングが短繊維紡績糸又は長繊維を用いてカバーリングし、前記ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、前記ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であるステップ(5)と、を含む。
【0014】
好ましくは、前記金属単繊維の張力を7~12cN、前記無機繊維複合糸の張力を4~6cN、前記乾燥冷却後の複合単繊維の張力を7~12cN、前記高靭性低伸縮性有機複合糸の張力を4~6cNに制御する。
【0015】
本願の他の態様として、複合紡績糸の加工装置を更に提供し、当該加工装置は、
フレームと、前記フレームに並列に設置される複数組の加工装置とを備え、各組の前記加工装置は前記フレームの一端に設置される第1案内複合機構と、前記第1案内複合機構の送出端の下方に設置される浸漬機構と、前記フレームの中央部に設置され且つ浸漬機構の下流に位置する乾燥冷却機構と、前記乾燥冷却機構の送出端に設置される第2案内複合機構と、前記第2案内複合機構の送出端に設置されるカバーリング機構とをそれぞれ備える。
【0016】
好ましくは、前記第1案内複合機構は、前記フレームに接続される第1供給ローラユニットと、前記第1供給ローラユニットの内側に設置される第1主ゴデットローラユニットと、前記第1主ゴデットローラユニットの材料入口端に設置される第1補助ゴデットローラユニットとを備える。
【0017】
好ましくは、前記第1供給ローラユニットは第1取付ブラケットと、前記第1取付ブラケットに設置される第1巻き戻し軸と、前記第1巻き戻し軸の両端に設置される減衰軸受とを備える。
【0018】
好ましくは、前記第1主ゴデットローラユニットは、前記フレームに接続される第1垂直スクリューと、前記第1垂直スクリューの頂部に接続される第1L字形ホルダと、前記第1L字形ホルダに接続される第1水平スクリューと、前記第1水平スクリューに設置される第1V字形ゴデットローラとを備え、好ましくは、前記第1V字形ゴデットローラの中央部は円弧溝を呈し、好ましくは、前記第2案内複合機構の構造は前記第1主ゴデットローラユニットの構造と同じである。
【0019】
好ましくは、前記浸漬機構は、浸漬プールと、前記フレームに接続される第3垂直スクリューと、前記第3垂直スクリューの底部に接続される第3L字形ホルダと、前記第3L字形ホルダに接続される第3水平スクリューと、前記第3水平スクリューに設置される第3ゴデットローラとを備え、前記第3ゴデットローラの底部は前記浸漬プール内に位置する。
【0020】
好ましくは、前記乾燥冷却機構は、オーブンと、前記オーブンの一端に設置される材料供給口及び他端の材料排出口と、前記オーブン内に設置される複数の乾燥用赤外線ランプ管と、前記材料供給口の外側に設置される第3材料供給用ガイドプーリと、前記材料排出口の外側に設置される第3材料排出用ガイドプーリと、前記材料排出口と前記第3材料排出用ガイドプーリとの間に設置される冷却通路とを備え、前記第2ゴデットローラユニットは前記冷却通路の出口に位置する。
【0021】
好ましくは、前記カバーリング機構は、前記第2案内複合機構の出口に設置される第4ゴデットローラと、前記第4ゴデットローラの出口に設置されるカバーリング機とを備える。
【0022】
本願の他の態様として、防護用品を更に提供し、当該防護用品は、
上記本願において加工された複合紡績糸とスパンデックス及び/又はナイロン長繊維とを並列に供給して、ニードル織機によって切断防止性能を有するニットに編み、又は、
前記複合紡績糸を織機機械によって切断防止性能を有する織物に直接織り、前記ニット又は織物の切断防止性能はEN388標準によってテストし、その切断防止レベルはいずれもDレベル以上に達することができ、好ましくは、前記防護用品は切断防止機能を有する手袋、保護用スリーブ、襟巻き、服又は鞋を含むが、それらに限られない。
【発明の効果】
【0023】
本願の有益な技術的効果は以下のとおりである。
以上の本願の実施例に係る技術的解決策から理解できるように、本願の複合紡績糸は表層がカバーリング構造層を用い、外層は第2複合糸層であり、更なる外層は第1複合糸層であり、芯層は芯糸であり、本願の複合紡績糸は第1複合糸層の芯糸の外側での平行する均一な被覆を実現することができ、接着剤浸漬処理を行って複合単繊維となり、該複合単繊維外に第2複合糸を平行且つ均一に被覆してもよく、最後に第2複合糸外にカバーリング構造を用い、本願の芯糸、第1複合糸及び第2複合糸は製品の性能要件に応じて選択されてもよく、該複合糸は構造が均一で、各層(外包を除く)をその内層の繊維層の表面に均一且つ平行に被覆することを実現することができ、複合紡績糸の構造安定性を改善し、受力過程における各層の構造における繊維の反応速度及び分散効果を向上させる。
【0024】
また、本願の上記複合紡績糸中の芯糸は金属単繊維として選択されてもよく、複合紡績糸の芯部に位置し、第1複合糸は無機繊維複合糸を用いて金属単繊維の外周表面に平行に被覆され、第2複合糸は高靭性低伸縮性有機複合糸を用いて、これを用いて耐切断性複合紡績糸を加工し、該耐切断性複合紡績糸は従来の切断防止機能を有する糸よりも耐切断性能が著しく向上し、該複合糸のニット又は織物はEN388標準によってテストし、耐切断性レベルはいずれもDレベル以上に達することができる。
【0025】
本願の上記耐切断性複合紡績糸の加工方法は、まず金属単繊維と無機繊維複合糸とを複合し、ゴデットローラの案内溝によって張力の条件下で無機繊維複合糸を拡張して金属単繊維の表面に平行に被覆し、接着剤浸漬プロセスによって水性接着剤の接着剤溶液を前記無機繊維複合糸の表面及び内部に配置して複合単繊維を形成し、更に同様の方法で有機複合糸を拡張して複合単繊維の外周に平行に被覆させ、最後にカバーリングプロセスによって切断防止機能を有する複合糸を形成し、該方法は複合糸及び単繊維の異なる特性を利用して複合糸を拡張して単繊維の表面での平行被覆を実現させ、接着剤浸漬プロセスによって無機複合糸と金属単繊維とを複合して複合単繊維を形成し、複合単繊維外に更に広げられた有機複合糸を平行に被覆し、最後に通常のシングルカバーリング又はダブルカバーリングを行って、密度勾配を有する切断防止機能を有する複合糸を得ることであり、該方法は簡単で量産を実現しやすく、その製品の設計は構造が合理的であり、複合糸の表層はカバーリング構造層であり、外層は有機繊維複合糸層であり、更なる外層は接着剤浸漬後の無機繊維複合糸層であり、芯層は金属単繊維の複合紡績糸であり、該複合紡績糸は外から内へ材料の体積密度が徐々に増加する傾向があり、優れた耐切断性を有する。
【0026】
また、本願の複合紡績糸の加工装置は、複数組の前記加工装置によって複合紡績糸の加工を同時又は別々に行うことができ、前記第1案内複合機構は第1複合糸に芯糸を被覆して第1カバーリングトウ311を形成し、前記浸漬機構は第1カバーリングトウ311を水性接着剤が収容される浸漬プールに供給して浸漬処理を行い、前記乾燥冷却機構は浸漬後の第1カバーリングトウに対して乾燥及び冷却処理を行い、前記第2案内複合機構が乾燥冷却後の第1カバーリングトウ311に第2複合糸を外包して第2カバーリングトウ321を得て、第2カバーリングトウ321を前記カバーリング機構によりカバーリングして複合紡績糸を得て、複合紡績糸における芯糸の供給及び第1複合糸の供給、1番目の平行被覆、浸漬、乾燥冷却、第2複合糸の供給、2番目の平行被覆及び外包を実現し、複合紡績糸製品を得るものであり、該加工装置は広く使用され、上記耐切断性複合紡績糸の生産加工に使用されてもよく、且つ複合糸の量産を実現することができる。
【0027】
理解されるように、以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は単に例示的及び解釈的なものであり、本願を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置の模式図である。
【
図5】
図5は本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置の他の方向の模式図である。
【
図6】
図6は本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置の第1V字形ゴデットローラの模式図である。
【
図7】
図7は本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置の他の実施例の第1V字形ゴデットローラの模式図である。
【
図8】
図8は本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置の加工装置の原理模式図である。
【
図9】
図9は本願の一実施例及び比較例のプロセスにより加工された切断防止機能を有する手袋の裏地の耐屈曲性テストの効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで例示的な実施例を詳しく説明し、その例を図面に示す。以下の説明が図面に関わるとき、特に示さない限り、異なる図面における同じ数字が同一又は類似の要素を示す。以下の例示的な実施例に説明される実施形態は本願と一致するすべての実施形態を表すわけではない。むしろ、それらは単に添付の特許請求の範囲に詳しく説明されている本願のいくつかの態様と一致する装置及び方法の例である。
【0030】
本願に使用される用語は単に特定の実施例を説明するためのものであり、本願を制限するように意図されるものではない。上下の文脈において他の意味を明確に示していない限り、本願及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形式の「1種」、「前記」及び「該」は複数形式も含むように意図されている。更に理解されるように、本明細書に使用される用語「及び/又は」とは1つ又は複数の関連する列挙した項目を含む任意又はすべての可能な組み合わせを指す。
【0031】
理解されるように、本願の説明において、用語「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などで指示される方位又は位置関係は図面に示される方位又は位置関係であり、本願を説明しやすくし及び説明を簡素化するためのものに過ぎず、指す装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作しなければならないことを指示又は暗示するのではなく、従って、本願を制限するものと理解されるべきではない。
【0032】
また、用語「第1」、「第2」は説明のためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示し、又は指示される技術的特徴の数を暗示的に示すと理解されるべきではない。これにより、「第1」、「第2」で限定された特徴は少なくとも1つの該特徴を明示的又は暗示的に含んでもよい。本願の説明において、特に明確且つ具体的に限定しない限り、「複数」の意味は少なくとも2つ、例えば、2つ、3つなどである。
【0033】
本願では、特に明確に規定及び限定しない限り、用語「取付」、「接続」、「連結」、「固定」などの用語は広義に理解されるべきであり、例えば、特に明確に限定しない限り、固定連結、取り外し可能な連結又は一体であってもよく、機械的連結、電気的連結であってもよく、直接接続、中間素子による間接接続、2つの素子の内部の連通又は2つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願における具体的な意味を理解することができる。
【0034】
一実施例では、本願は複合紡績糸を提供し、該複合紡績糸は前記複合糸の芯部に位置する芯糸を含み、該芯糸は金属単繊維、例えば、ステンレス糸、タングステン糸又はニッケル糸であってもよいが、それらに限定されず、例えば、ニッケル合金糸、チタン合金糸、マンガン合金糸又はタングステン合金糸などを用いてもよく、金属単繊維の繊度は一般的に10~60μmの範囲で選択され、例示的に、ステンレス糸は30μm、35μm、40μm、45μm、50μm又は60μm仕様を選択してもよく、ニッケル糸は20μm、30μm又は40μm仕様を選択してもよく、タングステン糸は10μm、20μm、22μm、25μm、30μm、35μm又は40μmの異なる仕様を選択してもよく、具体的な芯糸の種類及び繊度の選択は複合紡績糸製品の用途及び仕様ニーズ及び加工性に基づいて考慮してもよく、又は前記芯糸は比較的細いポリエステル、ナイロン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高靭性低伸縮性ポリエステル、アラミド1414又は高靭性ビニロン又は特別な性能を有する他の有機繊維単繊維又は複合糸などを用いてもよく、無機長繊維、例えば、ガラス繊維長繊維又は玄武岩繊維長繊維などを用いてもよい。
【0035】
該複合紡績糸は、更に第1複合糸及び第2複合糸を含み、第1複合糸は芯糸の外周表面に平行且つ均一に被覆され、第2複合糸は水性接着剤層の外周表面に平行且つ均一に被覆され、該第1複合糸と第2複合糸はいずれも、従来の有機複合糸又は無機複合糸又は機能的な複合糸、例えば、難燃性又は高い耐切断性の複合糸、例えば、アラミド1313、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高靭性低伸縮性ポリエステル、アラミド1414、高靭性ビニロン、ガラス繊維又は玄武岩繊維などを用いてもよく、複合糸及び繊度の具体的な選択は複合紡績糸製品の用途及び仕様ニーズ及び加工性によって考慮してもよい。
【0036】
該複合紡績糸は更に水性接着剤を含み、該水性接着剤は浸漬プールで浸漬して芯糸の第1複合糸の表面及び内部に平行に被覆され、第1複合糸の外表面の水性接着剤がは複合糸の表面に水性接着剤層を形成することとなり、水溶性接着剤は環境に優しい水溶性接着剤から選択されたものであり、例えば、水溶性のポリウレタンエマルション又はポリアクリレートエマルションを選択してもよく、水性接着剤の濃度は20~50wt%の範囲で選択され、例示的に、20wt%、30wt%、40wt%又は50wt%などを選択する。
【0037】
該複合紡績糸の最外側はシングルカバーリング構造層又はダブルカバーリング構造層を用いて高靭性低伸縮性有機複合糸の外側をカバーリングし、シングルカバーリング又はダブルカバーリング層は従来のカバーリング機構によりカバーリングを実現し、そのシングルカバーリング構造層は短繊維紡績糸カバーリング層又は長繊維カバーリング構造層であってもよく、ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であってもよく、前記ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であり、短繊維紡績糸カバーリング構造層の短繊維紡績糸は綿、麻、毛、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維から選択された1つの純粋な紡糸又はいずれか2つ以上の混紡糸であってもよく、長繊維カバーリング構造層の長繊維はナイロン長繊維及び/又はポリエステル長繊維などである。
【0038】
他のいくつかの実施例では、本願は耐切断性能を有する複合糸を提供し、該複合紡績糸は複合糸の芯部に位置する金属単繊維を含み、該金属単繊維はステンレス糸、タングステン糸又はニッケル糸を用いてもよいが、それらに限定されず、例えば、更にニッケル合金糸、チタン合金糸、マンガン合金糸又はタングステン合金糸などを用いてもよく、該金属単繊維の繊度は一般的に10~60μmの範囲で選択され、例示的に、ステンレス糸は30μm、35μm、40μm、45μm、50μm又は60μm仕様を選択してもよく、ニッケル糸は20μm、30μm又は40μm仕様を選択してもよく、タングステン糸は10μm、20μm、22μm、25μm、30μm、35μm又は40μmの異なる仕様を選択してもよく、芯糸の具体的な選択が切断防止機能を有する複合糸製品の繊度、耐切断強度への要求などによって決定してもよい。
【0039】
該複合紡績糸は更に無機繊維複合糸を含み、該無機繊維複合糸は広げられてから金属単繊維の外周表面に平行に被覆することができ、一般的に使用される無機繊維複合糸は代表的なガラス繊維複合糸、玄武岩繊維複合糸を選択してもよいが、当業者であれば理解できるように、切断防止機能を有する複合糸製品の性能要件を満たす他の無機繊維、例えば、石綿繊維、セラミック繊維なども選択可能であり、無機繊維複合糸の繊度は50~200Dの範囲内に制御する必要があり、例示的に、50D、100D、150D、200Dなどを選択してもよい。
【0040】
該複合紡績糸は更に水性接着剤を含み、該水性接着剤は浸漬プールで浸漬して金属単繊維の無機繊維複合糸の表面及び内部に平行に被覆され、無機繊維複合糸の外表面の水性接着剤は複合糸の表面に水性接着剤層を形成することとなり、水溶性接着剤は環境に優しい水溶性接着剤から選択されたものであり、例えば、水溶性のポリウレタンエマルション又はポリアクリレートエマルションを選択してもよく、水性接着剤の濃度は20~50wt%の範囲で選択され、例示的に、20wt%、30wt%、40wt%又は50wt%などを選択し、これはいずれも本願の効果を実現することができる。
【0041】
該複合紡績糸は更に高靭性低伸縮性有機複合糸を含み、高靭性低伸縮性有機複合糸は広げられてから無機繊維複合糸外の水性接着剤層の外周表面に平行に被覆することができ、高靭性低伸縮性有機複合糸は選択肢として超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、高靭性低伸縮性ポリエステル、アラミド1414又は高靭性ビニロンのうちのいずれか1つであり、製品のニーズに応じて、完全な被覆性を考慮した上で、高靭性低伸縮性有機複合糸の繊度は150~400Dであり、例示的に、150D、200D、300D又は400Dなどの高靭性低伸縮性複合糸を選択すればよく、本願において生産された該耐切断性複合紡績糸の線状密度は33.3tex~72.2texであり、例えば、本願の具体的な実施例1~6において最終的に得られた耐切断性複合紡績糸の密度はそれぞれ47.5tex、51.5tex、66.2tex、43.3tex、72.2tex及び64.7texである。
【0042】
該複合紡績糸の最外側はシングルカバーリング構造層又はダブルカバーリング構造層を用いて高靭性低伸縮性有機複合糸の外側をカバーリングし、シングルカバーリング又はダブルカバーリング層は従来のカバーリング機構によりカバーリングを実現し、そのシングルカバーリング構造層は短繊維紡績糸カバーリング層又は長繊維カバーリング構造層であってもよく、ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であり、短繊維紡績糸カバーリング構造層の短繊維紡績糸は、綿、麻、毛、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維から選択された1つの純粋な紡糸又はいずれか2つ以上の混紡糸であってもよく、長繊維カバーリング構造層の長繊維はナイロン長繊維及び/又はポリエステル長繊維であり、短繊維紡績糸は繊度が32~80英国式番手であり、撚り係数が260~420であり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルであり、長繊維は繊度が30~100Dであり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルである。
【0043】
上記耐切断性能を有する複合糸に基づいて、本願は更に防護用品を提供し、該防護用品は本願の上記耐切断性複合紡績糸で生産されたものであり、該防護用品はニット又は織物であってもよく、ニット防護用品の加工においては、本願の複合紡績糸とスパンデックス及び/又はナイロン長繊維とを並列に供給してニードル織機により編み、ニードル織機のタイプについては、7G/10G/13G/15G/18Gニードル織機を用いて編んでもよく、本願の複合紡績糸はそれ自体が弾性を有しないため、ニードル織機により編む際にスパンデックス及び/又はナイロン長繊維と並列に供給し、弾性がないため編みにくい問題を解決することができる。
【0044】
織物による防護用品の加工においては、本願の複合紡績糸を織機機械により切断防止性能を有する織物に直接織ることができ、本願のニット又は織物の切断防止性能はEN388標準によってテストし、その切断防止レベルはいずれもDレベル以上に達することができ、本願の耐切断性防護用品は切断防止機能を有する手袋、保護用スリーブ、襟巻き、服又は鞋を含むが、それらに限られない。
【0045】
本願の他の実施例では、上記複合紡績糸の加工装置を提供する。
図1~
図8に示すように、本願の実施例に係る複合紡績糸の加工装置は、フレーム1と、前記フレーム1に並列に設置される複数組の加工装置2とを備え、各組の前記加工装置2は前記フレーム1の一端に設置される第1案内複合機構21と、前記第1案内複合機構21の送出端の下方に設置される浸漬機構22と、前記フレーム1の中央部に設置され且つ浸漬機構の下流に位置する乾燥冷却機構23と、前記乾燥冷却機構23の送出端に設置される第2案内複合機構24と、前記第2案内複合機構24の送出端に設置されるカバーリング機構25とをそれぞれ備える。複数組の前記加工装置2は複合紡績糸の加工を同時又は別々に行うことができ、具体的には、前記第1案内複合機構21は第1複合糸に芯糸を平行に被覆して第1カバーリングトウ311を形成することを実現し、前記浸漬機構22は第1カバーリングトウ311を水性接着剤が収容される浸漬プールに供給して浸漬処理を行って複合単繊維312を得て、前記乾燥冷却機構23は浸漬後の第1カバーリング糸に対して乾燥冷却処理を行い、前記第2案内複合機構24は乾燥冷却後の複合単繊維312に第2複合糸を外包して第2カバーリングトウ321を得て、第2カバーリングトウ321を前記カバーリング機構25によりカバーリングして複合紡績糸を得る。
【0046】
前記第1案内複合機構21は、前記フレーム1に接続される第1供給ローラユニット211と、前記第1供給ローラユニット211の内側に設置される第1主ゴデットローラユニット212と、前記第1主ゴデットローラユニット212の材料入口端に設置される第1補助ゴデットローラユニット213とを備える。前記第1主ゴデットローラユニット212は、前記フレーム1に接続される第1垂直スクリュー2121と、前記第1垂直スクリュー2121の頂部に接続される第1L字形ホルダ2122と、前記第1L字形ホルダ2122に接続される第1水平スクリュー2123と、前記第1水平スクリュー2123に設置される第1V字形ゴデットローラ2124とを備え、前記第1V字形ゴデットローラ2124の案内溝は円弧溝2124aを呈し、V字型ゴデットローラ案内溝の底部円弧溝2124aは第1複合糸を拡張するための空間を提供し且つ複合糸を該円弧面に沿って広げさせ、芯糸を広げられた複合糸上の中央位置に置くことに更に寄与し、芯糸の張力によって第1複合トウに嵌め込んで、複合糸を単繊維の外表面の外周に平行に被覆することを実現する。前記第1補助ゴデットローラユニット213の構造は、前記第1主ゴデットローラユニット212の構造と同じであり、唯一の相違点は前記第1補助ゴデットローラユニット213の高さが前記第1主ゴデットローラユニット212よりも低いことであり、第1補助ゴデットローラユニットのV字形ゴデットローラは、主に第1複合糸を基本的に広げさせることができ、且つ第1V字形ゴデットローラ2124の案内溝が円弧溝2124aである場合に芯糸を広げられた複合糸の中央位置に位置させるように芯糸の平行巻き戻しに対して位置決め作用を有する。前記第1供給ローラユニット211は金属芯糸を供給するためのものであり、前記第1主ゴデットローラユニット212は第1複合糸筒31内の第1複合糸を前記第1補助ゴデットローラユニット213に引き込んで基本的に拡張して、更に前記第1主ゴデットローラユニット212の第1V字形ゴデットローラ2124に入れるのであり、前記第1V字形ゴデットローラ2124の底部の円弧溝2124aは、芯糸及び第1複合糸を張力の作用によって前記円弧溝2124a内に広げさせることができ、且つ芯糸が前記広げられた後の第1複合糸上の中央位置に位置し、それにより第1複合糸を芯糸の外周表面に被覆して第1カバーリングトウ311を得る。
【0047】
前記第1補助ゴデットローラユニット213の前に、第1複合糸を第1複合糸筒31から巻き戻した後の供給経路には第1複合糸の張力を制御する第1張力調整装置(図示せず)が設置され、その張力が適当であるように確保し、前記第1補助ゴデットローラユニット213及び前記第1主ゴデットローラユニット212を通過してから均一に拡張することができる。
【0048】
また、前記第1垂直スクリュー2121を調整することにより、前記第1L字形ホルダ2122及び前記第1V字形ゴデットローラ2124の高さを調整することができ、前記第1水平スクリュー2123により、前記第1V字形ゴデットローラ2124の水平位置を調整し、芯糸が供給されてから広げられた第1複合糸の中央位置に位置するように確保し、調整しやすい。本願の他の好適な実施例として、前記第1V字形ゴデットローラ2124の底部は更に台形溝状を呈してもよく、その底部は平面を呈し、これにより第1複合糸が張力の作用によって広げられるように確保することができる。
【0049】
前記第1供給ローラユニット211は、第1取付ブラケット2111と、前記第1取付ブラケット2111に設置される第1巻き戻し軸2112と、前記第1巻き戻し軸2112の両端に設置される減衰軸受2113とを備え、芯糸の張力は減衰軸受により制御及び調整され得る。芯糸の芯糸巻きが前記第1巻き戻し軸2112に固定され、芯糸が牽引力の作用を受けるとき、前記減衰軸受2113が回転して芯糸を平行に巻き戻させる。
【0050】
前記第2案内複合機構24は、前記フレーム1に接続される第2ゴデットローラユニット241を備え、前記第2ゴデットローラユニット214の前に、第2複合糸を第2複合糸筒32から巻き戻した後の供給経路には、第2複合糸の張力を制御する第2張力調整装置(図示せず)が設置され、具体的には、前記第2ゴデットローラユニット241の構造は前記第1主ゴデットローラユニット212の構造と同じであり、前記第2ゴデットローラユニット241は、前記フレーム1に接続される第2垂直スクリュー2411と、前記第2垂直スクリュー2411の頂部に接続される第2L字形ホルダ2412と、前記第2L字形ホルダ2412に接続される第2水平スクリュー2413と、前記第2水平スクリュー2413に設置される第2V字形ゴデットローラ2414とを備え、前記第2V字形ゴデットローラ2414の案内溝は円弧溝であり、該円弧溝は高靭性低伸縮性有機複合糸を拡張するための空間を提供し且つ複合糸を該円弧面に沿って広げさせ、複合単繊維312を広げられた複合糸上の中央位置に置くことに更に寄与し、複合単繊維の張力によって第2複合糸に嵌め込んで、複合トウを複合単繊維の外表面の外周表面に平行に被覆して第2カバーリングトウ321を得ることを実現する。
【0051】
前記浸漬機構22は、浸漬プール221と、前記フレーム1に接続される第3垂直スクリュー222と、前記第3垂直スクリュー222の底部に接続される第3L字形ホルダ223と、前記第3L字形ホルダ223に接続される第3水平スクリュー224と、前記第3水平スクリュー224に設置される第3ゴデットローラ225とを備え、前記第3ゴデットローラ225の底部は前記浸漬プール221内に位置し、前記第3ゴデットローラ225の数は1つ又は複数であり、それらはいずれも前記浸漬プール221内に位置してもよく、又はその中の1つが前記浸漬プール221内に位置し、第1カバーリングトウ311が完全に浸漬されるように確保する。本願の好適な実施例として、前記第3ゴデットローラ225の構造は前記第1主ゴデットローラユニット212の構造と類似してもよく、前記第3ゴデットローラ225の高さ及び水平位置を調整することを容易にし、前記第3ゴデットローラ225は平面ローラであってもよく、又はその中央部はV字形溝状又は台形溝状を呈してもよく、第1カバーリングトウ311が再び浸漬される際に位置ずれが発生することないように確保する。
【0052】
前記乾燥冷却機構23は、オーブン231と、前記オーブン231の一端に設置される材料供給口235及び他端の材料排出口236と、前記オーブン231内に設置される複数の乾燥用ランプ管232と、前記材料供給口235の外側に設置される第3材料供給用ガイドプーリ233と、前記材料排出口236の外側に設置される第3材料排出用ガイドプーリ237と、前記材料排出口236と前記第3材料排出用ガイドプーリ237との間に設置される冷却通路234(
図1には図示しない)とを備え、前記第2ゴデットローラユニット241は前記冷却通路234の出口に位置し、前記乾燥用ランプ管232は乾燥用赤外線ランプ管を用いることが好ましい。前記材料供給口235及び前記材料排出口236の数は前記加工装置2の数と同じであって1対1で対応し、前記材料供給口235は前記材料排出口236の外側の前記第3材料排出用ガイドプーリ237の高さと同じであり、前記第1カバーリングトウ311が前記オーブン231内に水平を保持するように確保し、且つ第1カバーリングトウ311から乾燥用ランプ管232までの軸方向における距離は一定であり、均一に乾燥でき、前記第3材料供給用ガイドプーリ233は平面ローラであることが好ましく、浸漬接着剤溶液が第3材料供給用ガイドプーリ233に集まることを回避することができ、前記第3材料排出用ガイドプーリ237は一般的なV字形ガイドプーリであってもよく、ガイド過程において第1カバーリングトウ311が正確に位置決めされて位置ずれが発生することないように確保する。
【0053】
前記オーブン231の頂部には、容易に開閉できる開閉可能なカバープレートが設置され、その内部には温度コントローラに設置されてもよく、前記オーブン231内の温度が所定の温度範囲内にあるように確保し、乾燥するように確保するとともに、第1カバーリングトウ311を損傷することがなく、前記冷却通路234は送風冷却することが好ましく、乾燥後の第1カバーリングトウ311を冷却した後、第2複合糸のカバーリングを行う。
【0054】
前記カバーリング機構25は、前記第2案内複合機構24の出口に設置される第4ゴデットローラ251と、前記第4ゴデットローラ251の出口に設置されるカバーリング機252とを備える。前記カバーリング機252は、従来技術によるカバーリング機であり、前記第2カバーリングトウ321にシングルカバーリング又はダブルカバーリングを行って前記複合紡績糸を得るためのものである。
【0055】
前記カバーリング機252の数は1つ又は2つ以上である。前記カバーリング機252の数が1つである場合には、シングルカバーリングを行い、短繊維紡績糸又は長繊維でカバーリングし、前記カバーリング機252の数が2つである場合には、ダブルカバーリングを行い、ダブルカバーリング構造層は、短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であってもよく、ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆である。
【0056】
本願では、複数組の前記加工装置2により複合紡績糸の加工を同時又は別々に行うことができ、前記第1案内複合機構21は第1複合糸に芯糸を被覆して第1カバーリングトウ311を形成し、前記浸漬機構22は第1カバーリングトウ311を水性接着剤が収容される浸漬プールに供給して浸漬処理を行い、前記乾燥冷却機構23は浸漬後の第1カバーリング糸に対して乾燥冷却処理を行い、前記第2案内複合機構24は乾燥冷却後の第1カバーリングトウ311に第2複合糸を外包して第2カバーリングトウ321を得て、第2カバーリングトウ321を前記カバーリング機構25によりカバーリングして複合紡績糸を得るのであり、複合紡績糸における芯糸の供給及び第1複合糸の供給、1番目の平行被覆、浸漬、乾燥冷却、第2複合糸の自動供給、2番目の平行被覆並びに外包を実現して複合紡績糸製品を得る。
【0057】
以下、本願は本願の上記加工装置により耐切断性複合糸を加工する方法を提供し、該耐切断性複合糸が金属単繊維を芯糸、無機繊維複合糸を第1複合糸、高靭性低伸縮性有機複合糸を第2複合糸とし、水性接着剤に水性ポリウレタンエマルションを用いる。該耐切断性複合糸の加工過程は以下のとおりである。
【0058】
ステップ1 無機繊維複合糸を金属単繊維で平行に被覆し、それぞれ金属単繊維及び無機繊維複合糸の張力を制御し、金属単繊維及び無機繊維複合糸を第1案内複合機構21に引き込み、金属単繊維をまず第1供給ローラユニット211から供給し、無機繊維複合糸を第1補助ゴデットローラユニット213から引き込んで金属単繊維とともに第1補助ゴデットローラユニット213の第1V字形ゴデットローラ、第1主ゴデットローラユニット212の第1V字形ゴデットローラ2124を順次通過し、無機繊維複合糸を第1補助ゴデットローラユニットのV字形ゴデットローラの円弧状部分に基本的に広げ、第1V字形ゴデットローラは芯糸の平行巻き戻しに対して位置決め作用を有し、第1主ゴデットローラユニット212の第1V字形ゴデットローラ2124の案内溝によって無機繊維複合糸を均一に広げさせ且つ金属単繊維が広げられた後の無機繊維複合糸上の中央位置に位置し、第1主ゴデットローラユニット212により案内された後に金属単繊維が芯部に位置し且つ無機繊維複合糸が金属単繊維の外周表面に平行に被覆される第1カバーリングトウを形成し、金属単繊維の芯糸巻きが巻き戻し軸に固定され、巻き戻し軸に減衰軸受を設け、巻き戻し過程において金属単繊維の張力が減衰軸受を調整することにより制御及び調整を実現することができ、金属単繊維が牽引力の作用を受けるとき、減衰軸受を回転させ、金属単繊維を一定の張力によって平行に巻き戻させ、金属単繊維の張力を7~12cNに選択的に制御し、無機繊維複合糸の供給経路において、無機繊維の供給張力を4~6cNに選択的に制御する。
【0059】
該金属単繊維は、ステンレス糸、タングステン糸又はニッケル糸を選択的に用いてもよいが、それらに限定されず、例えば、更にニッケル合金糸、チタン合金糸、マンガン合金糸又はタングステン合金糸などを用いてもよく、該金属単繊維の繊度は一般的に10~60μmの範囲で選択され、例示的に、ステンレス糸は30μm、35μm、40μm、45μm、50μm又は60μm仕様を選択してもよく、ニッケル糸は20μm、30μm又は40μm仕様を選択してもよく、タングステン糸は10μm、20μm、22μm、25μm、30μm、35μm又は40μmの異なる仕様を選択してもよく、芯糸の具体的な選択は切断防止機能を有する複合糸製品の繊度、耐切断強度への要求などによって決定してもよい。該無機繊維複合糸は代表的なガラス繊維複合糸、玄武岩繊維複合糸を選択してもよいが、当業者であれば理解できるように、切断防止機能を有する複合糸製品の性能要件を満たす他の無機繊維、例えば、石綿繊維、セラミック繊維なども選択可能であり、無機繊維複合糸の繊度は50~200Dの範囲内に制御する必要があり、例示的に、50D、100D、150D、200Dなどを選択してもよい。
【0060】
ステップ2 浸漬処理を行い、第1カバーリングトウを水性接着剤が収容される浸漬プール221に供給して浸漬処理を行い、次に浸漬処理後の第1カバーリングトウ311に対して接着剤スプレーコーティング又は接着剤ナイフコーティング処理を行い、水溶性接着剤は環境に優しい水溶性接着剤から選択されたものであり、例えば、水溶性のポリウレタンエマルション又はポリアクリレートエマルションを選択してもよく、水性接着剤の濃度は20~50wt%の範囲で選択され、例示的に、20wt%、30wt%、40wt%又は50wt%を選択し、浸漬処理時間は0.5~5sとして選択され、浸漬処理時間は短すぎてはならず、短すぎると接着剤浸漬量が少なすぎて、複合糸は使用又は折り曲げ過程においてその内部の無機繊維複合糸上の接着剤が裂けやすく、当然のことながら、接着剤浸漬時間は長すぎてはならず、長すぎると無機繊維複合糸の接着剤付着量が多すぎて、最終的な複合糸の手触りが硬くなりすぎることとなり、該過程において浸漬処理後の第1カバーリングトウの接着剤スプレーコーティング方式は0.5mよりも大きな高度差を用いて実現してもよく、水性接着剤の浸漬プールをオーブンの材料供給口よりも0.5m以上低くし、トウ進行過程における接着剤浸漬後の糸上の水性接着剤の接着剤溶液がそれ自体の重力の作用によって浸漬プールに滑り落ちることで、第1カバーリングトウの外表面に均一な接着フィルムを形成して複合単繊維を得るのであり、第1カバーリングトウの接着剤浸漬後の接着剤ナイフコーティング方式は接着剤溶液面の上方にゲージ状孔を設置することにより第1カバーリングトウに対して接着剤浸漬を行った後にゲージ状孔によりその表面の余分な水性接着剤エマルションを掻き取り、該ゲージ状孔の孔径は複合単繊維の繊度によって一般的に30~150μmに選択される。本願の具体的な実施例1~6において、便宜上、接着剤浸漬の後で接着剤スプレーコーティングを行う方式を用いて複合単繊維を得る。
【0061】
ステップ3 乾燥及び冷却を行い、複合単繊維を温度が80~120℃のオーブン231に送入し3~6s処理し、次に冷風ノズルにより迅速に冷却して複合単繊維312を得て、冷却温度を5~20℃とする。
【0062】
ステップ4 高靭性低伸縮性有機複合糸に乾燥冷却後の複合単繊維を平行に被覆し、それぞれ高靭性低伸縮性有機複合糸及び乾燥冷却後の複合単繊維の張力を制御し、高靭性低伸縮性有機複合糸及び乾燥冷却後の複合単繊維を第2案内複合機構24の第2ゴデットローラユニット241の円弧状の案内溝に引き込んで、高靭性低伸縮性有機複合糸を張力の作用によって第2ゴデットローラユニット241の円弧状の案内溝に広げさせ、乾燥冷却後の複合単繊維は広げられた後の高靭性低伸縮性有機複合糸上の中央位置に位置し、第2ゴデットローラユニット241により案内された後に乾燥冷却後の複合単繊維が芯部に位置し且つ高靭性低伸縮性有機複合糸は乾燥冷却後の複合単繊維に平行に被覆される第2カバーリングトウ321を形成し、該加工過程において、有機繊維複合糸の供給経路上の張力も4~6cNに選択的に制御され、乾燥冷却後の複合単繊維のトウ進行経路上の張力は金属単繊維の張力と同じであって7~12cNの範囲内にあり、該高靭性低伸縮性有機複合糸は選択肢として超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸、高靭性低伸縮性ポリエステル複合糸、アラミド1414又は高靭性ビニロンのうちのいずれか1つであり、製品のニーズに応じて完全な被覆性を考慮した上で、高靭性低伸縮性有機複合糸の繊度は150~400Dであり、例示的に、150D、200D、300D又は400Dなどの高靭性低伸縮性複合糸を選択すればよい。
【0063】
ステップ5 シングルカバーリング又はダブルカバーリングを行い、第2カバーリングトウの外側にカバーリング機構25によりシングルカバーリング又はダブルカバーリングを行って前記耐切断性複合紡績糸を得て、シングルカバーリングは短繊維紡績糸又は長繊維を用いてカバーリングすればよく、ダブルカバーリング構造層は短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造であり、ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であり、短繊維紡績糸カバーリング構造層の短繊維紡績糸は、綿、麻、毛、ポリエステル、ナイロン、アクリル繊維から選択された1つの純粋な紡糸又はいずれか2つ以上の混紡糸であってもよく、長繊維カバーリング構造層の長繊維はナイロン長繊維及び/又はポリエステル長繊維であり、短繊維紡績糸は繊度は32~80英国式番手に選択され、撚り係数が260~420であり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルであり、長繊維は繊度が30~100Dであり、カバーリング撚度が400~800回撚/メートルである。シングルカバーリング又はダブルカバーリングそのものは当業者がカバーリング糸を生産する通常の技術的手段であるので、ここでは詳細な説明は省略する。カバーリングの順序及びカバーリング糸の選択については、ダブルカバーリング構造層を短繊維紡績糸と短繊維紡績糸とのカバーリング構造、長繊維と長繊維とのカバーリング構造又は短繊維紡績糸と長繊維とのカバーリング構造として選択すればよいが、ダブルカバーリング構造層の二層のカバーリング紡績糸の撚り方向は逆であるべきであり、且つ上記カバーリング材料の選択において当業者が製品の用途及び手触りに応じて考慮して選択してもよい。
【0064】
本願の好適な実施例において、上記ステップ1における第1ゴデットローラの案内溝及びステップ4における第2ゴデットローラの案内溝については、それらはいずれも底部が円弧状のV字型ゴデットローラ案内溝を用いているため、無機繊維複合糸及び有機繊維複合糸を拡張するとき、V字型ゴデットローラ案内溝の円弧状底部は拡張するための空間を提供し且つ複合糸を該円弧面に沿って広げさせ、金属単繊維又は複合単繊維をその広げられた複合糸上の中央位置に置くことに更に寄与し、複合糸を単繊維の外表面に平行に被覆することを実現する。
【0065】
以下、具体的な製品応用例によって本願の加工装置で加工された耐切断性複合紡績糸及びその具体的な加工プロセスを説明するが、実施例1~6において用いた水性接着剤はいずれも水性ポリウレタンエマルションである。
【0066】
実施例1(1#)
20μmタングステン糸を芯糸、100Dガラス繊維を無機複合糸、200D超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸を有機複合糸とし、表1及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0067】
実施例2(2#)
25μmタングステン糸を芯糸、100Dガラス繊維を無機複合糸、200D超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸を有機複合糸とし、表1及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0068】
実施例3(3#)
30μmタングステン糸を芯糸、200D玄武岩繊維を無機複合糸、200D超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸を有機複合糸とし、表1及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0069】
実施例4(4#)
10μmタングステン糸を芯糸、100D玄武岩繊維を無機複合糸、200Dアラミド1414複合糸を有機複合糸とし、表1及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0070】
実施例5(5#)
60μmステンレス糸を芯糸、200D玄武岩繊維を無機複合糸、400Dアラミド1414複合糸を有機複合糸とし、表1全体及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0071】
実施例6(6#)
35μmステンレス糸を芯糸、200Dガラス繊維を無機複合糸、400Dアラミド1414複合糸を有機複合糸とし、表1及び表1(続き)第2~5欄のプロセス及びパラメータに従って本願の耐切断性複合紡績糸を製造する。
【0072】
比較例1(1′#)
20μmタングステン糸を芯糸とし、100Dガラス繊維と200D超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸とを同時に平行に供給して芯糸とし、実施例1と同じカバーリングプロセスによって製造して従来の複合カバーリング糸を得て実施例1の比較例とする。
【0073】
比較例2(2′#)
25μmタングステン糸を芯糸とし、100Dガラス繊維と200D超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)複合糸とを同時に平行に供給して芯糸とし、実施例2と同じカバーリングプロセスによって製造して従来の複合カバーリング糸を得て実施例2の比較例とする。
【0074】
【0075】
【0076】
本願の上記実施例1~6並びに実施例1~2の比較例1′#及び2′#において、上記プロセスによって製造して耐切断性複合糸を得た後、該複合糸と同一仕様のスパンデックス長繊維とを並列に供給して18G/13Gニードル織機によって編んで切断防止機能を有する手袋の裏地を得た。該切断防止機能を有する手袋の裏地はEN388標準によってテストし、その耐切断性力の値及びレベルは表1(続き)に記載され、その耐切断性レベルはいずれもDレベル以上に達することができる。
【0077】
上記表1における実施例1~2及びその比較例の製品の耐切断性力の値をそれぞれ比較して理解できるように、同等の比較条件において、本願の耐切断性複合糸製品の耐切断性能はそれぞれ9.0%及び15.3%向上した。該耐切断性複合糸は表層がカバーリング構造層、外層が有機繊維複合糸層、更なる外層が接着剤浸漬後の無機繊維複合糸層、芯層が金属単繊維の複合紡績糸であり、該複合紡績糸は外から内へ密度が徐々に増加する傾向があり、優れた耐切断性能を有し、そのニット又は織物は、
1.ナイフエッジの衝撃を受けるとき、該複合糸体が外から内へ収縮して密度を増加させ、それにより衝撃せん断応力による金属繊維層の破壊を緩和することができ、摺動切断を受けるとき、防護効果をより良く発揮し、金属糸の表面が破損して切れ口を形成してその耐切断性能を低下させることを回避し、
2.糸体が力を受けて屈曲するとき、最も柔らかい有機繊維層が外側にあり、屈曲変形に更に寄与するとともに、有機繊維層もそれ自体の変形を利用して無機繊維及び金属繊維を保護し、無機繊維が屈曲し過ぎて折れて露出してバリを形成して皮膚を刺すことを回避し、金属繊維の屈曲後の変形回復能力を向上させ、金属糸が折り曲げられて鋭い角又は鋭い裂け目を形成して皮膚に擦り傷を付けることを回避し、
3.編み過程において、引張力の作用を受けるとき、糸体が外から内へ収縮することとなり、外層の有機繊維が主な引張力を受け、無機繊維及び金属繊維が衝撃引張力を受けて破断しやすい問題を改善し、
4.有機繊維層は外側にあって緩く配列され、該複合紡績糸の表面に接着剤浸漬を行うときの天然乳剤、PU接着剤、ニトリルラテックスなどの液体コロイドの浸透及び付着に更に寄与し、接着堅牢度を向上させる、という性能上の利点を有する。
【0078】
また、出願者は更に該切断防止機能を有する手袋の裏地の耐屈曲性能をテストした。テスト方法は実施例1~2及び比較例1~2の手袋の裏地をそれぞれ被験者の左手及び右手に着けて、それぞれ手を握りしめる動作を連続的に30分間行った後に観察するものである。テストの結果、比較例(
図9の左側)及び実施例(
図9の右側)における手袋の裏地は耐屈曲性能に明らかな差異があり、比較例における切断防止機能を有する手袋の裏地は指の表面に一層多く及び一層深いギャザーがあり、その原因はタングステン糸が連続的に折り曲げられてから回復することが困難であるためであり、比較例に比べて、本願の実施例に係る切断防止機能を有する手袋の裏地は耐屈曲性能がより良好で、該切断防止機能を有する手袋の裏地は指の表面に比較的少ない浅いギャザーがある。
【0079】
以上の実施例は本願の技術的解決策を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではなく、上記実施例を参照して本願を詳しく説明した。それは依然として上記各実施例に記載する技術的解決策を修正し、又はその中の一部の技術的特徴を均等置換することができるが、これらの修正又は置換は対応する技術的解決策の本質を本願の各実施例の技術的解決策の趣旨及び範囲から逸脱させるものではないことを、当業者は理解すべきである。
【符号の説明】
【0080】
1 フレーム
2 加工装置
21 第1案内複合機構
211 第1供給ローラユニット
2111 第1取付ブラケット
2112 第1巻き戻し軸
2113 減衰軸受
212 第1主ゴデットローラユニット
2121 第1垂直スクリュー
2122 第1L字形ホルダ
2123 第1水平スクリュー
2124 第1V字形ゴデットローラ
2124a 円弧溝
213 第1補助ゴデットローラユニット
22 浸漬機構
221 浸漬プール
222 第3垂直スクリュー
223 第3L字形ホルダ
224 第3水平スクリュー
225 第3ゴデットローラ
23 乾燥冷却機構
231 オーブン
232 乾燥用ランプ管
233 第3材料供給用ガイドプーリ
234 冷却通路
235 材料供給口
236 材料排出口
237 第3材料排出用ガイドプーリ
24 第2案内複合機構
241 第2ゴデットローラユニット
2411 第2垂直スクリュー
2412 第2L字形ホルダ
2413 第2水平スクリュー
2414 第2V字形ゴデットローラ
25 カバーリング機構
251 第4ゴデットローラ
252 カバーリング機
31 第1複合糸筒
311 第1カバーリングトウ
312 複合単繊維
32 第2複合糸筒
321 第2カバーリングトウ