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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/20 20060101AFI20241223BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
F24F1/0007 401A
F24F1/0007 361H
F24F1/0007 401B
F24F1/0007 401C
F24F1/0007 401D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023549447
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2022033089
(87)【国際公開番号】W WO2023047919
(87)【国際公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2021155266
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】日本キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山邊 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】井岡 久美子
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡田 成浩
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141576(JP,A)
【文献】特開平10-311551(JP,A)
【文献】特開平09-170775(JP,A)
【文献】特開2008-202860(JP,A)
【文献】国際公開第2015/181870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/20
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記室内の空気を吸い込み、前記熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す送風機と、
前記室内に向けて開口する箱形に構成され、前記熱交換器および前記送風機を収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、外部に暴露されない内層部と、前記内層部と隣接して配置されて外部に暴露される外層部とを有する構造体によって形態が規定され、
前記外層部は、前記構造体の肉厚方向に前記内層部を挟んで対をなし、前記内層部の全体を覆って前記構造体の表面部を構成し、前記内層部は、前記構造体の対をなす前記表面部で挟まれて前記構造体の内部を構成し、
前記構造体は、前記内層部および前記外層部をいずれも有し、該内層部および該外層部にそれぞれ複数の空隙を有する第1の部分と、前記内層部および前記外層部をいずれも有し、同一体積あたりの前記空隙の存在密度が前記第1の部分よりも低い存在密度で内層部および外層部にそれぞれ複数の前記空隙を有する第2の部分とが混在して構成され、
前記第2の部分は、前記筐体における前記第1の部分の配置箇所よりも大きな外力が作用する箇所に配置される
空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
前記熱交換器の熱交換作用によって生じた結露水を受けるドレンパンと、
前記ドレンパンに形成された装着孔に取り外し可能に嵌め込まれ、前記送風機が吸い込む空気を整流するベルマウスと、
前記室内の空気を吸い込む吸込口および前記熱交換器で熱交換された空気を吹き出す吹出口を有し、前記筐体の開口を前記室内の側から覆うパネルと、
前記パネルに回動可能に支持され、前記吸込口を遮蔽するグリルと、
前記パネルに回動可能に支持され、前記吹出口から吹き出される空気の吹出方向を変化させるルーバーと、をさらに備え、
前記筐体、前記ドレンパン、前記ベルマウス、前記パネル、前記グリル、前記ルーバーのうち、少なくとも一つの部材は、前記第1の部分と前記第2の部分とが混在して構成された前記構造体によって形状が規定され、
前記部材の前記構造体において、前記第1の部分の複数の前記空隙は、前記内層部と前記外層部との間で互いに連通し、前記第2の部分の複数の前記空隙は、前記内層部と前記外層部との間で互いに連通する
請求項1に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
前記部材の前記構造体は、前記部材以外の部材の前記構造体よりも水との親和性の高い材料で構成される
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記部材の前記構造体は、有機系材料で構成される
請求項2に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項5】
前記部材の前記構造体を構成する材料は、前記空隙を区画する壁部を補強する補強剤を含む
請求項3または4に記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、天井埋め込み型の空気調和機では、室内ユニットが天井裏に吊り下げられている。室内ユニットは、送風機および熱交換器を内蔵した箱形の筐体(ケーシング)を有し、当該筐体の下端が熱交換器から滴下する結露水を受け止めるドレンパンで塞がれている。
【0003】
ドレンパンは、送風機の真下に位置するベルマウス装着孔を有し、当該ベルマウス装着孔にベルマウスが取り付けられている。ベルマウスは、送風機が吸い込む空気の流れを整流するための要素であって、その外周部がドレンパンに取り外し可能に固定されている。また、ベルマウスはパネルで覆われている。パネルは、室内ユニットを室内の側から覆う要素であって、天井に沿うような姿勢で配置されている。パネルには、室内の空気を吸い込む吸込口を遮蔽するグリルと、熱交換器で熱交換された空気を室内に吹き出す吹出口から室内に吹き出される空気の吹出方向を変化させるルーバーが設けられている。
【0004】
室内ユニットの据え付けやメンテナンスの際には、筐体やパネルなどの取り付けや取り外しなどの作業を行う必要がある。このような作業は、天井や天井裏などの高所で行われるため、作業時間の短縮や作業効率の改善などによって作業性の向上を図ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許平3-122425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、据え付けやメンテナンスなどの作業性を向上させることが可能な空気調和機の室内ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、空気調和機の室内ユニットは、熱交換器と、送風機と、筐体とを備える。前記熱交換器は、室内の空気と冷媒との間で熱交換を行う。前記送風機は、前記室内の空気を吸い込み、前記熱交換器で熱交換された空気を前記室内に吹き出す。前記筐体は、前記室内に向けて開口する箱形に構成され、前記熱交換器および前記送風機を収容する。また、前記筐体は、外部に暴露されない内層部と、前記内層部と隣接して配置されて外部に暴露される外層部とを有する構造体によって形態が規定される。前記外層部は、前記構造体の肉厚方向に前記内層部を挟んで対をなし、前記内層部の全体を覆って前記構造体の表面部を構成する。前記内層部は、前記構造体の対をなす前記表面部で挟まれて前記構造体の内部を構成する。前記構造体は、第1の部分と第2の部分とが混在して構成される。前記第1の部分は、前記内層部および前記外層部をいずれも有し、該内層部および該外層部にそれぞれ複数の空隙を有する。前記第2の部分は、前記内層部および前記外層部をいずれも有し、同一体積あたりの前記空隙の存在密度が前記第1の部分よりも低い存在密度で内層部および外層部にそれぞれ複数の前記空隙を有し、前記筐体における前記第1の部分の配置箇所よりも大きな外力が作用する箇所に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、天井埋め込み型の空気調和機の室内ユニットの斜視図である。
図2図2は、ユニット本体の筐体にドレンパンおよびベルマウスを組み込んだ状態を示す平面図である。
図3図3は、ユニット本体の筐体からドレンパンおよびベルマウスを取り外した状態を示す平面図である。
図4図4は、図2のA2-A2線に沿う断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る室内ユニットを構成する少なくとも一部の構成要素の形状を規定する構造体における内部構造を模式的に示す断面図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る室内ユニットを構成する少なくとも一部の構成要素の形状を規定する構造体における内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1から図4には、本実施形態に係る空気調和機の室内ユニットの構成を示す。図1は、天井埋め込み型の空気調和機の室内ユニットの斜視図である。図2は、後述するユニット本体の筐体にドレンパンおよびベルマウスを組み込んだ状態を示す平面図である。図3は、後述するユニット本体の筐体からドレンパンおよびベルマウスを取り外した状態を示す平面図である。図4は、図2のA2-A2線に沿う断面図である。
【0010】
図1および図2に示すように、空気調和機の室内ユニット1は、主たる要素として、天井裏に据え付けられるユニット本体2と、ユニット本体2の下端に取り付けられたパネル(以下、天井パネルという)3を備えている。ユニット本体2は、筐体4を備えている。筐体4は、下向きに開口した箱形の要素であって、例えば四本の吊りボルト(図示省略)を介して天井裏の梁から吊り下げられている。
【0011】
筐体4は、天板部4aおよび側面部4bを含んでいる。側面部4bは、筐体4の周方向に連続するとともに、四つの外周角部4cを有している。図4に示すように、天板部4aおよび側面部4bの内面は、例えば発泡スチロール製の断熱材5で覆われている。断熱材5は、筐体4の下端に開口部6を規定している。
【0012】
筐体4の外周角部4cには、吊り金具7が固定されている。吊り金具7は、筐体4の四方に向けて水平に突出しており、当該吊り金具7に前記吊りボルトの下端が連結されている。
【0013】
さらに、筐体4には、四つのブラケット8が固定されている。ブラケット8は、吊り金具7の真下に位置するように筐体4の外周角部4cの下端部に位置している。ブラケット8は、筐体4の四方に向けて水平に突出している。
【0014】
図2図3および図4に示すように、筐体4の内部には、送風機10および熱交換器11が収容されている。送風機10は、空調対象空間、つまり室内の空気を吸い込み、熱交換器11で熱交換された空気を室内に吹き出す。送風機10としては、軸方向から空気を吸い込んで周方向に吹き出す、いわゆる遠心ファンが用いられている。送風機10は、ファン駆動部10aと、ファン部10bを有している。ファン駆動部10aは、例えばモータであり、筐体4の天板部4aに断熱材5を介して固定され、回転軸10cを回転させる。ファン部10bは、周方向に所定のピッチで配置された複数の羽根10dを有し、回転軸10cの先端部に同心状に取り付けられて回転軸10cとともに回転する。ファン部10bの上端は、筐体4の天板部4aで覆われているので、ファン部10bの下端が吸い込み側となる。
【0015】
熱交換器11は、空調対象空間、つまり室内の空気と冷媒との間で熱交換を行い、該室内を空気調和する。熱交換器11は、筐体4の内部で送風機10の吹き出し側を取り囲むように起立している。熱交換器11は、複数の放熱フィン12および冷媒が流れる複数本の伝熱管13を備えている。放熱フィン12は、筐体4の高さ方向に延びた細長い板であり、筐体4の周方向に互いに間隔を有して並んでいる。伝熱管13は、筐体4の高さ方向および横方向に間隔を有して並んでいるとともに、互いに直列に接続されて複数の流路(パス)を形成している。さらに、伝熱管13は、放熱フィン12を貫通することで、当該放熱フィン12に熱的に接続されている。
【0016】
図3に示すように、熱交換器11に接続された冷媒管14が筐体4の一つの外周角部4cと熱交換器11との間のスペースに集中して配置されている。冷媒管14は、一対の接続口16a,16bに接続されている。接続口16a,16bは、筐体4の一つの外周角部4cから筐体4の外に突出されているとともに、液管およびガス管を介して空気調和機の室外機に接続されるようになっている。
【0017】
さらに、筐体4の内部には、ドレンポンプ17が収容されている。ドレンポンプ17は、室内ユニット1を冷房運転した時に、熱交換器11の熱交換作用によって生じた結露水をユニット本体2の外に排出するための要素である。ドレンポンプ17は、筐体4の下端部において、接続口16a,16bが設けられた外周角部4cと隣り合う他の外周角部4cの付近に配置されている。ドレンポンプ17に接続されたドレン配管18は、筐体4の内部を通してドレンポンプ17の上方に引き回されている。
【0018】
図2および図4に示すように、筐体4の下端の開口部6は、ドレンパン20で塞がれている。ドレンパン20は、熱交換器11の熱交換作用によって生じた結露水を受けるための要素である。ドレンパン20は、断熱性を有する本体21と、本体21の表面に一体的に積層されたシート材22とを備えている。本体21は、ドレンパン20の形状を規定する要素である。シート材22は、例えば厚さが数ミリの合成樹脂材料で構成され、本体21よりも剛性が高い。シート材22を構成する合成樹脂材料としては、例えばABS樹脂が用いられる。
【0019】
ドレンパン20は、例えば熱交換器11に対応するような四角い枠形に構成され、筐体4の断熱材5が規定する開口部6の内側に嵌め込まれている。ドレンパン20は、送風機10の吸い込み側の真下に位置される円形のベルマウス装着孔23と、当該ベルマウス装着孔23を取り囲む周縁部24とを有している。ドレンパン20の周縁部24は、筐体4の開口部6の内側に嵌め込まれている。
【0020】
ドレンパン20の周縁部24には、四つの切欠部26と、熱交換器11の下端部が入り込む凹陥部27と、が形成されている。切欠部26は、夫々ドレンパン20の周縁部24が有する四つの辺に沿って延びる細長い形状を有している。ドレンパン20の周方向に隣り合う切欠部26は、互いに直交し合うような位置関係に保たれている。ドレンパン20の周縁部24は、断熱材5が規定する開口部6の内側に嵌め込まれているので、切欠部26と断熱材5とで囲まれた領域は、熱交換器11を通過した空気が導かれる複数の連通口28を構成している。
【0021】
凹陥部27は、ドレンパン20の周方向に連続した溝状の要素であって、切欠部26よりもドレンパン20の内側に位置されている。凹陥部27は、内周壁29a、外周壁29bおよび底壁29cで規定されている。内周壁29aは、ベルマウス装着孔23を取り囲むように底壁29cから起立されている。すなわち、内周壁29aは、ベルマウス装着孔23と凹陥部27との間に介在された仕切り壁と言い換えることができる。
【0022】
さらに、底壁29cの中央部には、熱交換器11の下端に向けて盛り上がった膨出部31が形成されている。膨出部31は、熱交換器11の下端に沿うようにドレンパン20の周方向に連続して形成されている。膨出部31の上面には、熱交換器11の下端を受け止めるクッション材32が積層されている。
【0023】
このようなドレンパン20は、図2に示すような四つのドレンパン固定金具38を介して筐体4の下端に取り外し可能に支持されている。ドレンパン固定金具38は、ブラケット8の下面にねじ止めされている。ドレンパン固定金具38は、筐体4の外周角部4cからドレンパン20の四つの角部に向けて水平に張り出しており、当該ドレンパン固定金具38の上にドレンパン20の角部が載置されている。これにより、ドレンパン20が筐体4の開口部6から抜け落ちないように筐体4の下端に保持されている。
【0024】
図1および図2に示すように、筐体4の側面部4bの前面には、電装ユニット40が支持されている。電装ユニット40は、筐体4の外に露出された電気部品箱41と、電気部品箱41に収容された制御基板42とを備えている。制御基板42は、例えば複数のICチップが実装された配線板、リアクタおよび端子台のような各種の電装品43を有している。制御基板42は、送風機10、熱交換器11、およびドレンポンプ17などに複数のリード線を介して電気的に接続されている。
【0025】
図2および図4に示すように、ドレンパン20のベルマウス装着孔23には、ベルマウス53が取り外し可能に嵌め込まれている。ベルマウス53は、送風機10が吸い込む空気の流れを整流するための要素である。
【0026】
ベルマウス53は、例えば下方に向けてラッパ状に拡径された形状を有するベルマウス本体54と、ベルマウス本体54の最大径を規定するベルマウス本体54の下端部から径方向外側に向けて水平に張り出すフランジ部55とを有している。フランジ部55は、ベルマウス本体54の周方向に連続して形成されている。さらに、フランジ部55の先端には、下向きに直角に折れ曲がる外周壁56が形成されている。
【0027】
室内ユニット1の天井パネル3は、空調対象空間の天井(図示省略)に沿うような姿勢で配置され、筐体4の下端の開口部6を室内の側から覆っている。図1に示すように、天井パネル3は、グリル(以下、吸込グリルという)80および枠体81を備えている。
【0028】
吸込グリル80は、天井パネル3の中央部に位置し、枠体81に回動可能に支持され、室内の空気を筐体4に吸い込む吸込口(後述する作業用開口87)を遮蔽する要素である。吸込グリル80は、正方形状の外枠部82と、外枠部82で囲まれた格子部83とを備えている。格子部83は、ベルマウス53の真下に位置するとともに、取り外し可能なフィルタ(図示省略)を有している。
【0029】
天井パネル3の枠体81は、吸込グリル80を取り囲む例えば正方形状の要素であって、第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dと、四つのコーナー部86a,86b,86c,86dとを有している。
【0030】
第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dは、夫々吸込グリル80の外枠部82の外周縁に沿って延びている。コーナー部86a,86b,86c,86dは、天井パネル3の四隅に位置するとともに、枠体81の周方向に隣り合う第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dの間を一体的に繋いでいる。第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dの内周縁で囲まれた四角い領域は、作業用開口87を規定している。作業用開口87は、筐体4の内部を室内に露呈させ、例えば送風機10や熱交換器11の清掃やメンテナンスなどを簡易的に行うための開口部分である。また、作業用開口87は、室内の空気を筐体4に吸い込む吸込口に相当する。
【0031】
天井パネル3は、枠体81が有する四つのコーナー部86a,86b,86c,86dの箇所で筐体4のブラケット8に取り外し可能に連結されている。これにより、ドレンパン20およびベルマウス53を含むユニット本体2の下端が天井パネル3で覆われる。
【0032】
天井パネル3は、熱交換器11で熱交換された空気を室内に吹き出す四つの吹出口88を有している。吹出口88は、ドレンパン20が有する四つの切欠部26と向かい合うように、枠体81の第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dに形成されている。
【0033】
天井パネル3の枠体81には、四つのルーバー89が回動可能に支持されている。ルーバー89は、吹出口88から室内に吹き出される空気の吹き出し方向を変化させる要素であって、フラットな細長い板状に形成されている。ルーバー89は、吹出口88を閉じる閉じ位置と、吹出口88を開放するように傾斜する開き位置との間で回動可能とされている。ルーバー89が閉じ位置に回動された状態では、当該ルーバー89が水平となって枠体81の第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dを全面的に覆うようになっている。
【0034】
例えば、天井パネル3の吸込グリル80は、外枠部82の一辺が枠体81の第1から第4の辺部85a,85b,85c,85dのいずれかに選択的に回動可能に連結される。このため、吸込グリル80は、上述した作業用開口を閉じる第1の位置と、当該作業用開口を開放する第2の位置との間で回動可能となっている。さらに、吸込グリル80を第2の位置に回動させた状態では、当該吸込グリル80を枠体81から取り外せるようになっている。
【0035】
上述した室内ユニット1を構成する各種の構成要素のうち、少なくとも一部の構成要素は、次のような構造体によって形状が規定されている。換言すれば、かかる構成要素は、前記構造体によって形作られている。
【0036】
図5は、かかる一部の構成要素の構造体における内部構造を模式的に示す断面図である。例えば、図5に示す構造体90は、筐体4の形状を規定する。図5に示すように、筐体4の構造体90は、内層部90aおよび外層部90bを有している。内層部90aは、構造体90において外部に暴露されない部位であり、端的には構造体90の内部に相当する。外層部90bは、内層部90aに隣接して配置され、構造体90において外部に暴露される部位であり、端的には構造体90の表面部に相当する。すなわち、外層部90bは、内層部90aを全体に亘って覆っている。図5は、構造体90の一部における内層部90aおよび外層部90bを模式的に示しており、図示例では、内層部90aを挟んで外層部90bが対をなして配置された状態となっている。
【0037】
このように内層部90aおよび外層部90bを有する構造体90は、第1の部分91と第2の部分92とが混在して構成されている。第1の部分91は、内層部90aおよび外層部90bにそれぞれ複数の空隙93を有している。同様に、第2の部分92は、内層部90aおよび外層部90bにそれぞれ複数の空隙93を有している。空隙93は、内層部90aおよび外層部90bの肉(中実部)94に対する空隙、つまり肉94が存在しない領域である。例えば、空隙93は内部が空気で満たされた気泡である。外層部90bの空隙93は、一部が外部に開放されており、構造体90の表面部の窪みに相当する。
【0038】
図5に示す例では、複数の空隙93の大きさおよび形状は、いずれも同一とされているが、これらは異なっていてもよい。また、複数の空隙93の配置は、規則的であっても、不規則的であってもよい。図5に示す例では、第1の部分91の複数の空隙93は規則的に配置され、第2の部分92の空隙93は不規則的に配置されている。なお、一部の空隙93は、内部がほぼ真空であってもよいし、液体で満たされていてもよい。あるいは、空隙93の内部は、空気と液体とが混在して満たされていてもよい。
【0039】
構造体90は、例えば母材となる合成樹脂に補強材を添加した材料を射出成形の過程で発泡させて成形される。補強材は、空隙93である気泡を区画する壁部95、換言すれば中実部94における空隙93を取り囲む領域を補強する。例えは、補強材は極細の繊維などである。補強材を添加することで空隙93の壁部95が補強されるため、成形時における気泡の破泡が抑制される。したがって、例えばより細かい空隙93を形成するとともに、空隙93の存在密度(発泡倍率)を上げることができる。また、壁部95が補強されることで、構造体90の強度(剛性)も高められる。
【0040】
第1の部分91と第2の部分92とでは、同一体積あたりの空隙93の存在密度が異なっている。図5に示すように、具体的には、同一体積あたりでは第1の部分91よりも第2の部分92の方が空隙93の存在密度が低い。すなわち、第2の部分92は、同一体積あたりの空隙93の存在密度が第1の部分91よりも低い存在密度で空隙93を有している。このように、第1の部分91は空隙93が密な領域(空隙密部)であり、第2の部分92は空隙93が疎な領域(空隙疎部)である。例えば、複数の空隙93がほぼ同一形態である場合、空隙93の存在密度は、所定体積あたりの空隙93の数として捉えられる。同一体積あたりの第1の部分91および第2の部分92における空隙93の存在密度の比は、これらの部分91,92における空隙93の数の比として表せる。
【0041】
第1の部分91および第2の部分92は、それぞれ構造体90、つまり筐体4の各部に混在して配置されている。第2の部分92は、筐体4における第1の部分91の配置箇所よりも大きな外力が作用する箇所に配置される。本実施形態において、第2の部分92は、筐体4において比較的大きな外力が作用する特定箇所に配置されている。これに対し、第1の部分91は、筐体4における前記特定箇所以外の箇所に配置されている。
【0042】
特定箇所は、例えば図4に示す筐体4に対して熱交換器11が固定される箇所、および筐体4に対して送風機10のファン駆動部10aが固定される箇所である。具体的には、天板部4aの固定部4d,4eが特定箇所に相当する。固定部4dは、熱交換器11の配置に対応して天板部4aの外周付近に連続して位置している。固定部4dに作用する外力は、例えば熱交換器11の自重により負荷される力である。固定部4eは、ファン駆動部10aの配置に対応して天板部4aの中央付近に位置している。固定部4eに作用する外力は、例えばファン駆動部10aを含む送風機10の自重およびファン駆動部10aの駆動時の振動により負荷される力である。すなわち、固定部4d,4eには、熱交換器11や送風機10の自重により負荷される力、ファン駆動部10aの駆動時の振動により負荷される力などの外力が直接的に負荷される。したがって、固定部4d,4eに対して外力から与える影響は、特定箇所以外の箇所と比べて相対的に大きくなる。
【0043】
特定箇所以外の箇所は、例えば図4に示す筐体4に対して熱交換器11が固定される箇所かつ筐体4に対して送風機10のファン駆動部10aが固定される箇所以外の箇所である。具体的には、天板部4aの固定部4d,4e以外の箇所(図4に符号4fで示す非固定部)、側面部4b、および外周角部4c(図1から図3参照)が特定箇所以外の箇所に相当する。非固定部4fには、例えば熱交換器11や送風機10の自重により負荷される力、ファン駆動部10aの駆動時の振動により負荷される力が固定部4d,4eのようには直接的に負荷されない。したがって、非固定部4f、側面部4b、および外周角部4cに対して外力から与えられる影響は、固定部4d,4eと比べて相対的に小さくなる。
【0044】
このように本実施形態によれば、筐体4において相対的に大きな外力が作用される固定部4d,4eを空隙93が密な領域(空隙密部)とし、相対的に小さな外力が作用される非固定部4f、側面部4b、および外周角部4cを空隙93が疎な領域(空隙疎部)とすることができる。すなわち、外力に対する強度(剛性)を維持しながら空隙93の分だけ中実部94を減少させ、筐体4の軽量化を図ることができる。その結果、例えば天井や天井裏などの高所で室内ユニット1の据え付けを行う場合であっても、筐体4が軽量化されているため作業時間の短縮や作業効率の改善を図ることができ、作業性を向上させることが可能となる。
【0045】
ここで、室内ユニット1の筐体4以外の構成要素、例えばドレンパン20、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89は、筐体4の固定部4d,4eに作用されるような外力は作用されない。したがって、筐体4以外の構成要素のうち、一部の構成要素あるはすべての構成要素の形状を、筐体4の非固定部4fに配置された第1の部分(空隙密部)91と同様の空隙93を有する構造体で規定してもよい。これにより、ドレンパン20、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89などの強度(剛性)を維持しつつ、軽量化を図ることができる。したがって、軽量化された分だけ、例えばこれらの構成要素のメンテナンスなどを容易に行うことが可能となる。ひいては、作業時間の短縮や作業効率の改善を図り、作業性を向上させることが可能となる。
【0046】
本実施形態では、図5に示す例のように第1の部分91および第2の部分92において、複数の空隙93である各々の気泡は、内層部90aと外層部90bとの間で互いに連通することなく、それぞれが独立して存在している。ただし、これらの空隙は、図6に示すように、内層部100aと外層部100bとの間で互いに連通していてもよい。以下、このように空隙が互いに連通した形態を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態に係る空気調和機の室内ユニットの基本的な構成は、第1の実施形態に係る室内ユニット1(図1から図4)と同様である。したがって、以下では、かかる室内ユニットの基本的な構成についての説明は省略もしくは簡略化し、第2の実施形態の特徴である第1の実施形態との相違点について詳述する。その際、第1の実施形態と同一もしくは類似の構成部材については、同一の参照符号を用いて、説明を省略もしくは簡略化する。
【0047】
(第2の実施形態)
図6は、室内ユニット1を構成する各種の構成要素のうち、少なくとも一部の構成要素の構造体100における内部構造を模式的に示す断面図である。構造体100としては、例えば、筐体4、ドレンパン20、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89などを適用可能である。構造体100は、構造体90(図5)と同様に、内層部100aおよび外層部100bを有している。内層部100aは、構造体100において外部に暴露されない部位であり、端的には構造体100の内部に相当する。外層部100bは、内層部100aに隣接して配置され、構造体100において外部に暴露される部位であり、端的には構造体100の表面部に相当する。また、構造体100は、構造体90と同様に、第1の部分91および第2の部分92とが混在して構成されている。
【0048】
図6に示すように、本実施形態において、かかる構造体100の複数の空隙96は、内層部100aと外層部100bとの間で互いに連通している。空隙96は、肉(中実部)97に対する空隙、つまり肉94が存在しない領域であり、例えば内部が空気で満たされた気泡である。本実施形態では、複数の空隙96である気泡は、互いに連通して集合体(以下、空隙群という)98を形成している。空隙群98は、空隙96である複数の気泡を区画するそれぞれの壁部99、つまり中実部97における複数の空隙96を取り囲む領域がそれぞれ連続して形成されている。これにより、空隙群98は、複数の壁部99で中実部97から区画された各々の空隙96よりも大きな空間、つまり連続した複数の気泡として構成される。
【0049】
空隙群98を形成する空隙96のうち、外層部100bの空隙96は、一部が外部に開放されており、構造体100の表面部における空隙群98への連通口98aとなっている。連通口98aは、空隙群98を形成する複数の空隙96、つまり連続した複数の気泡に通じる入口である。すなわち、図6に示す例では、一方の外層部100bから内層部100aを経て、他方の外層部100bに至るまで複数の空隙96が連通した状態となっている。換言すれば、空隙群98は、双方の外層部100bから内層部100aに至るまで、複数の空隙96が連通した状態となっている。これにより、構造体100は、外層部100bおよび内層部100aにおいて、各空隙96の壁部99が連通口98aを介して外部に暴露された状態となる。したがって、構造体100は、外部に暴露される面積が構造体90(図5)と比べて拡張されている。
【0050】
構造体100において、このような空隙96の形態は、第1の部分91および第2の部分92のいずれに対しても適用可能である。一例として、図6には、第1の部分(空隙密部)91における空隙96の形態を示す。なお、図示は省略するが、第2の部分(空隙疎部)92における空隙96の形態は、該空隙96の存在密度が低いことを除き、第1の部分91と同様に各々の空隙96が互いに連通した形態となっている。
【0051】
このように空隙群98を有する構造体100によれば、構造体100の軽量化を図りつつ、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、外層部100bから内層部100aへ空隙群98を通じて湿気や水を流動させ、吸収させることができる。また、空隙群98に吸収した湿気や水を外層部100bの空隙96、つまり空隙群98への連通口98aを通して蒸散させることも可能となる。
【0052】
したがって、例えば筐体4、ドレンパン20、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89など、比較的結露が生じやすい構想要素を構造体100で形作ることで、これら各構成要素において外部に暴露される面積を拡張させることができる。これにより、筐体4、ドレンパン20、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89などで結露が生じた場合であっても、結露水を空隙群98に適宜溜め込み、また適宜蒸散させることができる。その結果、室内ユニット1における結露水の漏洩などを抑制でき、空調能力の向上が可能となる。例えば、ルーバー89に生じる結露に起因するカビなどの発生を抑制できる。
【0053】
また、構造体100によれば、外部に暴露される面積が構造体90(図5)と比べて拡張されているため、湿気や水などのほか、室内の空気が含む臭い、有害物質、汚れなども併せて空隙群98に吸着させることができる。したがって、構造体100の軽量化に加えて、例えば室内の空気清浄効果を高め、空気質を清潔に保つことが可能となる。
【0054】
ここで、構造体100は、構造体90と同様に、例えば母材となる合成樹脂に補強材を添加した材料を射出成形の過程で発泡させて成形される。本実施形態において、構造体100の母材は、水との親和性の高い材料で構成される。例えば、かかる母材の水との親和性は、空隙群98を有する構造体100以外の室内ユニット1の構成要素よりも、つまり該構成要素の形状を規定する構造体の母材よりも高ければよい。
【0055】
例えば、構造体100の母材が含む材料としては、水酸基(-OH基)やアミノ基(-NH)などの親水性の官能基を有する材料、具体的には当該官能基を有する珪藻土などを適用できる。また、構造体100は、例えば母材となる合成樹脂に補強材を添加した材料を射出成形の過程で発泡させて成形すればよい。補強材は、例えば極細の繊維などであり、空隙96である気泡を区画する壁部99、換言すれば中実部97における空隙群98を取り囲む領域を補強する。補強材を添加することで空隙96の壁部99が補強されるため、成形時における気泡の破泡が抑制されることは、第1の実施形態と同様である。なお、成形後の構造体100の表面に対してプラズマ処理などの親水処理を施してもよい。
【0056】
あるいは、構造体100の母材が含む材料として、有機系材料を適用してもよい。室内の空気が含む臭い、有害物質、汚れの原因物質の多くは有機物であると考えられる。このため、これらの原因物質は、例えば活性炭のような炭素を骨格とした有機分子と相性がよく、結合しやすい。したがって、構造体100の材料として有機系材料を適用することで、室内の空気が含む臭い、有害物質、汚れなどをより一層吸着させやすくなる。結果として、室内の空気清浄効果をさらに高め、空気質をより清潔に保つことが可能となる。
【0057】
例えば、ベルマウス53、パネル3、グリル80、およびルーバー89などに対して室内の空気が含む臭い、有害物質、汚れなどを吸着させることで、室内の空気清浄効果を高め、空気質を清潔に保つことができる。加えて、これらが従来よりも軽量化されているため、より容易に脱着、交換などの作業を行うことが可能となる。結果として、室内の空気清浄効果や空気質を長期に亘って高めることが可能となる。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…空気調和機の室内ユニット、2…ユニット本体、3…パネル(天井パネル)、4…筐体、4a…天板部、4b…側面部、4c…外周角部、4d,4e…固定部、4f…非固定部、6…開口部、10…送風機、10a…ファン駆動部、10b…ファン部、10c…回転軸、10d…羽根、11…熱交換器、20…ドレンパン、21…本体、22…シート材、23…ベルマウス装着孔、53…ベルマウス、54…ベルマウス本体、55…フランジ部、80…グリル(吸込グリル)、81…枠体、82…外枠部、83…格子部、87…作業用開口(吸込口)、88…吹出口、89…ルーバー、90,100…構造体、90a,100a…内層部、90b,100b…外層部、91…第1の部分(空隙密部)、92…第2の部分(空隙疎部)、93,96…空隙、94,97…肉(中実部)、95,99…壁部、98…空隙群、98a…連通口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6