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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-20
(45)【発行日】2025-01-06
(54)【発明の名称】紙葉類取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/16 20190101AFI20241223BHJP
【FI】
G07D11/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024502589
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007138
(87)【国際公開番号】W WO2023161978
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 信彦
(72)【発明者】
【氏名】和泉 久雄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】島村 達也
(72)【発明者】
【氏名】山田 知弘
【審査官】中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-123222(JP,A)
【文献】特開2002-163704(JP,A)
【文献】特開2009-205252(JP,A)
【文献】特開2014-209377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00- 3/16,
9/00-13/00
G07F 19/00
B65H 5/00- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し可能な引き出しモジュールと、
前記引き出しモジュールとの間で、当該引き出しモジュールの引き出し方向に交差する交差方向に紙葉類を搬送する交差搬送部と、
前記交差搬送部の前記引き出しモジュール側の端部に配置され、前記引き出しモジュールを前記交差方向に付勢する付勢ガイドと
を備えることを特徴とする紙葉類取扱装置。
【請求項2】
前記引き出しモジュールは、開閉可能な開閉搬送部を有し、
前記付勢ガイドは、前記開閉搬送部をロック状態とするように付勢する
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類取扱装置。
【請求項3】
前記付勢ガイドの先端は、前記引き出し方向における中央部分が最も前記引き出しモジュール側に位置するように湾曲している
ことを特徴とする請求項1又は2記載の紙葉類取扱装置。
【請求項4】
前記交差搬送部は、前記引き出しモジュール側に延びるガイド状態と、当該ガイド状態から退避した退避状態とに移動可能な櫛歯ガイドを有し、
前記紙葉類取扱装置は、
前記付勢ガイドが前記引き出しモジュールとは反対側に押圧されることによって、前記櫛歯ガイドを前記退避状態に移動させる退避機構を更に備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の紙葉類取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automated Teller Machine)、入金機等に用いられる紙葉類取扱装置において、引き出しモジュールが引き出し可能に配置されることがある。この引き出しモジュールは、例えば、紙葉類の搬送や収容を行う。
【0003】
従来、引き出しの露出時における作業性を高め得るようにするため、紙幣処理部筐体の外部に紙幣貯蔵部を露出させた露出状態において、ディテントスプリングによって位置決め部の全長を伸長させ、露出状態に止めるよう抑制する媒体取引装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上部収納部から下部収納部に貨幣が送られる際に隙間に貨幣が挟まってしまったりこの隙間から貨幣が外部に飛び出してしまったりするのを防止するため、引き出し可能な上下の収納部の間に位置する位置固定案内部と上下の収納部の間の隙間のそれぞれを詰める隙間調整機構が設けられた貨幣処理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-061865号公報
【文献】特開2016-004518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紙幣処理機等の紙葉類取扱装置において、引き出し可能な引き出しモジュールとの間で、引き出し方向に交差する交差方向に紙葉類を搬送する交差搬送部が配置される場合がある。
【0007】
このような引き出しモジュール及び交差搬送部が配置される場合、引き出しモジュールを収納するときに引き出しモジュールと交差搬送部との接触による破損が生じないように、引き出しモジュールと交差搬送部との間には隙間が設けられる。この隙間は、部品寸法バラツキも含めた組立累積誤差を考慮し、引き出しモジュールと交差搬送部とが干渉しないように、且つ、寸法バラツキ範囲で広くなっても紙葉類の搬送などに支障が出るほどに広くならないように、部品寸法精度によって縛りをかけている。但し、固定部品による部品寸法精度での条件確保のため、引き出しモジュールと交差搬送部との間の微小な距離の想定外の変化や位置関係変更への対応に関して、柔軟な対応がし難い。
【0008】
また、例えば、引き出しモジュールが開閉可能な開閉搬送部を有する場合、この開閉搬送部が半開きのハーフロック状態で引き出しモジュールが収納されるときに、開閉搬送部が交差搬送部などに接触し、ハーフロック状態からロック状態に遷移することが望ましい。このように開閉搬送部が配置される場合に限らず、交差搬送部との間の紙葉類の受け渡しのため、或いはガタツキ防止のため、引き出しモジュールを引き出し方向に交差する交差方向に押圧することが望ましい場合がある。しかしながら、上述のように、引き出しモジュールを交差方向に押圧するために、例えば交差搬送部と引き出しモジュールとを接触させたり、これらの隙間を狭くしたりすると接触が生じ得るし、また、部品寸法ばらつきなどによって隙間を微小にするのは困難である。
【0009】
本発明の目的は、破損を回避しながら、引き出し方向に交差する交差方向に引き出しモジュールを押圧することができる紙葉類取扱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示の紙葉類取扱装置は、引き出し可能な引き出しモジュールと、前記引き出しモジュールとの間で、当該引き出しモジュールの引き出し方向に交差する交差方向に紙葉類を搬送する交差搬送部と、前記交差搬送部の前記引き出しモジュール側の端部に配置され、前記引き出しモジュールを前記交差方向に付勢する付勢ガイドとを備える。
【発明の効果】
【0011】
開示の紙葉類取扱装置によれば、破損を回避しながら、引き出し方向に交差する交差方向に引き出しモジュールを押圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態における紙幣処理機を示す斜視図である。
図2】一実施の形態における開閉搬送部及び中間搬送部を示す右側面図である。
図3】一実施の形態における開閉搬送部及び中間搬送部を示す斜視図である。
図4】一実施の形態における付勢ガイドを示す斜視図である。
図5】一実施の形態における開閉搬送部を示す斜視図である。
図6A】一実施の形態における前方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その1)である。
図6B】一実施の形態における前方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その2)である。
図6C】一実施の形態における前方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その3)である。
図6D】一実施の形態における前方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その4)である。
図7】一実施の形態における後方へ引き出されたロアモジュールの一部を示す斜視図である。
図8A】一実施の形態における後方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その1)である。
図8B】一実施の形態における後方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その2)である。
図8C】一実施の形態における後方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その3)である。
図8D】一実施の形態における後方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その4)である。
図8E】一実施の形態における後方からのロアモジュールの収納を説明するための右側面図(その5)である。
図9A】一実施の形態における中間搬送部の櫛歯ガイドのガイド状態を説明するための斜視図である。
図9B】一実施の形態における中間搬送部の櫛歯ガイドの退避状態を説明するための斜視図である。
図10A】一実施の形態の変形例における退避機構、中間搬送部、及びガイド機構を示す右側面図(その1)である。
図10B】一実施の形態の変形例における退避機構を示す右側面図(その1)である。
図11A】一実施の形態の変形例における退避機構、中間搬送部、及びガイド機構を示す右側面図(その2)である。
図11B】一実施の形態の変形例における退避機構を示す右側面図(その2)である。
図12A】一実施の形態の変形例における退避機構、中間搬送部、及びガイド機構を示す右側面図(その3)である。
図12B】一実施の形態の変形例における退避機構を示す右側面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る紙葉類取扱装置について、紙幣処理機1を一例として、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、紙幣処理機1の内部構造を示す左側面図である。
【0015】
なお、図1及び後述する図2図12Bに示す上下、前後、左右の方向は、紙幣処理機1の顧客側を前方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、上下方向は鉛直方向であり、前後方向及び左右方向は水平方向である。
【0016】
図1に示す紙幣処理機1は、例えば、ATM、BRU(Bill Recycle Unit)、CD(Cash Dispenser)、TCR(Teller Cash Recycler)などに用いられ、ロアモジュール10と、中間搬送部20と、アッパモジュール30と、フレーム40と、スライドレール51~55と、ガイド機構60とを備える。なお、紙幣は、紙葉類の一例であり、紙幣処理機1は、紙葉類取扱装置の一例である。この紙葉類取扱装置は、紙葉類に搬送或いは何らかの処理を行うものであればよい。
【0017】
ロアモジュール10は、引き出し可能な引き出しモジュールの一例であり、例えば、フレーム40の内部に収納され、前後方向に延びる3本のスライドレール51~53、55に沿って前方及び後方の両方に引き出し可能である。但し、ロアモジュール10は、少なくとも1方向(例えば、前方)に引き出し可能なものであればよい。
【0018】
ロアモジュール10は、ロアモジュール10の最上段における前部に配置された開閉搬送部11と、開閉搬送部11の下部に配置され、例えば紙幣を収納するカセットを複数収容する紙幣収容部12とを有する。
【0019】
図5に示すように、開閉搬送部11は、開放部11aと、開閉軸11bと、ロック部材11cと、櫛歯ガイド11dとを有する。
【0020】
開放部11aは、開閉搬送部11の上部の全体に亘って設けられている。また、開放部11aは、開閉搬送部11の後部に設けられ左右方向に延びる開閉軸11bを回転中心として、回転する(図5の矢印参照)。そして、開放部11aは、図5に示すように水平な状態でロックされ、上方に回転することで前部側から開放し、開閉搬送部11の内部を露出させる。
【0021】
開放部11aは、ロック軸11a-1と、2つのカラー11a-2と、2つの先端ガイド11a-3とを有する。
【0022】
ロック軸11a-1は、開放部11aの前後方向における中央近傍において、左右方向に延び、開放部11aの左右両端から突出する。また、ロック軸11a-1は、図示しない弾性体により後方に付勢されており、開放部11aが水平状態にあるとき、左右両端のそれぞれにおいてロック部材11cに引っ掛けられる。これにより、開閉搬送部11がロック状態となる。なお、開放部11aを開放させるときには、図示しない弾性体の付勢力に抗してロック軸11a-1を前方に移動させることでロック部材11cに引っ掛けられた状態から解放し、開閉軸11bを回転中心として開放部11aを上方に回転させる。
【0023】
2つのカラー11a-2は、回転不能なロック軸11a-1の左右両端に回転可能に配置され、ロック部材11cに接触する。これにより、ロック軸11a-1がスムーズにロック部材11cに沿って移動し、ロック部材11cに引っ掛けられることが可能になる。
【0024】
2つの先端ガイド11a-3は、開放部11aの左右両端の前部に設けられ、前方に向かって下方に傾斜するように設けられている。これにより、後述するように、開閉搬送部11が後方から収納される際に、開閉搬送部11(ロアモジュール10)の収納を容易にする。
【0025】
櫛歯ガイド11dは、後述する中間搬送部20との間で搬送される紙幣をガイドする。
【0026】
図2及び図3に示すように、中間搬送部20は、開閉搬送部11の前部における上方に配置されロアモジュール10(開閉搬送部11)とアッパモジュール30との間で、上下方向に紙幣を搬送する。なお、中間搬送部20は、ロアモジュール10(引き出しモジュール)との間で、このロアモジュール10の引き出し方向に交差する交差方向に紙幣(紙葉類)を搬送する交差搬送部の一例である。交差方向は、ロアモジュール10の引き出し方向(前後方向)に交差する方向であれば、上下方向に限られない。
【0027】
中間搬送部20は、下端(ロアモジュール10側)に設けられた櫛歯ガイド21と、上端(アッパモジュール30側)に設けられた櫛歯ガイド22とを有する。なお、中間搬送部20の後方には、ロアモジュール10とアッパモジュール30とを仕切る図示しない仕切り部材が配置される。この仕切り部材は、例えば、ロアモジュール10(フレーム40)を収納する金庫の一部である。
【0028】
図2に示すように、櫛歯ガイド21は、収納状態のロアモジュール10(開閉搬送部11)側へ下方に延び、ロアモジュール10(開閉搬送部11)の櫛歯ガイド11dと左右方向に交互に並ぶように位置し、紙幣をガイドする。また、櫛歯ガイド22は、収納状態のアッパモジュール30側へ上方に延び、アッパモジュール30の図示しない櫛歯ガイドと左右方向に交互に並ぶように位置し、紙幣をガイドする。
【0029】
なお、櫛歯ガイド21,22、上述のロアモジュール10(開閉搬送部11)の櫛歯ガイド11d、及び図示しないアッパモジュール30の櫛歯ガイドは、ジャムの発生時に負荷がかかると、ガイド状態から退避状態へ倒れるように回転可能であることによって、櫛歯ガイドの破損や、紙幣ダメージを防止可能であるとよい。また、これらの櫛歯ガイドは、ロアモジュール10又はアッパモジュール30の収納状態においてガイド状態をとり、ロアモジュール10又はアッパモジュール30が引き出されるとガイド状態から退避した退避状態をとるように、図示しない機構によって移動するとよい。
【0030】
図1に示すアッパモジュール30は、中間搬送部20との間で紙幣を搬送し、前後方向に延びるスライドレール54などの複数のスライドレールに沿って前方及び後方のうち少なくとも一方に引き出し可能であるとよい。例えば、アッパモジュール30は、顧客から入金された紙幣を中間搬送部20(ロアモジュール10)へ搬送するとともに、出金紙幣を中間搬送部20(ロアモジュール10)から受け渡される。
【0031】
フレーム40は、ロアモジュール10を収納する。フレーム40には、ロアモジュール10を前後方向に引き出し可能にするための上述のスライドレール51~53、55が固定される。
【0032】
図7に示すように、フレーム40の後端における内部上面には、2つの板バネ41(フレーム40に隠れて表れないため、かくれ線である破線で図示)が設けられている。この板バネ41は、V字状にロアモジュール10側(下方)に突出し、ロアモジュール10を下方(引き出し方向に交差する交差方向)に付勢する。板バネ41は、ロアモジュール10との接触時に前方に退避可能に、板バネ41の前後方向に延びる長孔においてフレーム40の内部上面に固定されている。なお、板バネ41に代えて、ゴムや他のスプリングなどの他の弾性体が配置されていてもよいし、或いは、ロアモジュール10が後方へ引き出されない場合には、板バネ41を省略してもよい。
【0033】
図3に示すように、ガイド機構60は、付勢ガイド61と、2つの圧縮バネ62とを有する。
【0034】
付勢ガイド61は、中間搬送部20の下端(ロアモジュール10側の端部)に配置され、弾性体の一例である2つの圧縮バネ62によって下方に付勢されることによって、ロアモジュール10を下方(交差方向の一例)に付勢する。なお、圧縮バネ62の一端である上端は、例えば、アッパモジュール30や、アッパモジュール30を収容する部材や、中間搬送部20などの固定部材に固定されている。また、付勢ガイド61自体が例えば板バネなどの弾性体である場合には、弾性体(圧縮バネ62)を省略可能である。
【0035】
図4に示すように、付勢ガイド61は、右側面視においてU字形状を呈し、先端である下端のガイド面61aは、前後方向(ロアモジュール10の引き出し方向)における中央部分が最もロアモジュール10側に位置するように湾曲している。
【0036】
ここで、開閉搬送部11が半開きのハーフロック状態S1である場合の前方からのロアモジュール10の収納について、図6A図6Dを参照しながら説明する。
【0037】
図6Aに示すように、付勢ガイド61は、圧縮バネ62によって下方に付勢されている。また、付勢ガイド61のガイド面61aは、中間搬送部20の下端や、フレーム40(フレーム40の上部)よりも下方に位置する。
【0038】
図6Bに示すように、開閉搬送部11がハーフロック状態S1であることによって開放部11aの上面が前方にかけて上方に傾斜しているため、開閉搬送部11がハーフロック状態S1でロアモジュール10が前方から収納され、開閉搬送部11が付勢ガイド61の下方に到達すると、開閉搬送部11が付勢ガイド61に接触して下方に付勢される。
【0039】
その後、図6Cに示すように、ロアモジュール10が更に収納されていくと、開放部11aは、開閉軸11bを回転中心として水平状態に近づいていく。
【0040】
そして、図6Dに示すように、ロック軸11a-1がロック部材11cに引っ掛けられてロックされると、開閉搬送部11はロック状態S2となる。
【0041】
次に、開閉搬送部11が半開きのハーフロック状態S1である場合の後方からのロアモジュール10の収納について、図8A図8Eを参照しながら説明する。
【0042】
図8Aに示すように、フレーム40の内部上面からは、上述の板バネ41がV字状に下方に突出している。
【0043】
図8Bに示すように、開閉搬送部11がハーフロック状態S1であることによって、フレーム40の上部に接触する高さまで開放部11aの上面が前方にかけて上方に傾斜することがある。この場合、開放部11aの前端に設けられた先端ガイド11a-3がフレーム40の上部に接触する。
【0044】
但し、図8Cに示すように、先端ガイド11a-3が前方に向かって下方に傾斜するように設けられているため、開放部11aは、フレーム40によって下方に押圧される。
【0045】
これにより、図8Dに示すように、開放部11aは、開閉軸11bを回転中心として水平状態に近づいていき、フレーム40の上部の下方に潜り込むことができる。
【0046】
その後、図8Eに示すように、ロアモジュール10が更に収納されていくと、開放部11aは、板バネ41によって下方に押圧され、ロック軸11a-1がロック部材11cに引っ掛けられてロックされると、開閉搬送部11はロック状態S2となる。
【0047】
ところで、図9Aに示すように、上述の中間搬送部20の下端の櫛歯ガイド21は、収納状態のロアモジュール10(開閉搬送部11)側へ下方に延び、ロアモジュール10の櫛歯ガイド11dと左右方向に交互に並ぶように位置し(ガイド状態S11)、紙幣をガイドする。
【0048】
一方、例えば、ロアモジュール10のフレーム40からの引き出しが開始した後などには、櫛歯ガイド21は、上述の図示しない機構によって、図9Bに示すように、ガイド状態S11から退避するとよい(退避状態S12)。
【0049】
しかしながら、ジャムの発生時に紙幣の引っ掛かりなどによって櫛歯ガイド21が退避状態S12に退避しないと、ロアモジュール10の引き出し時などに櫛歯ガイド21や、櫛歯ガイド21に接触する部材が破損したり、紙幣がダメージを受けたりするおそれがある。
【0050】
そこで、変形例における図10A図12Bに示すように、櫛歯ガイド21を退避状態S12に退避させる退避機構70が紙幣処理機1に配置されるとよい。
【0051】
図10A及び図10Bに示すように、退避機構70は、ラック71と、ベース部72と、スプリング73と、ギア74とを有する。
【0052】
ラック71は、上下方向に延びる歯面71aが後面に設けられ、例えば左右両端から上下2本のピン71b(右端の2本のピン71bのみ図示)が突出する。
【0053】
歯面71aは、下部が後方に位置し、上部が前方に位置する。歯面71aの下部は、櫛歯ガイド21のギア21aに噛み合っている。一方、歯面71aの上部は、櫛歯ガイド22のギア22aに噛み合うギア74に噛み合っている。
【0054】
図10Aに示すベース部72は、付勢ガイド61に固定されている。ベース部72には、上述のラック71のピン71bが挿入される前後方向に長い長孔72aが設けられている。これにより、上述のラック71は、ベース部72及び付勢ガイド61に対して前後方向に移動可能である。また、ラック71は、ベース部72及び付勢ガイド61とともに昇降可能である。
【0055】
スプリング73は、例えば、一端(前端)をラック71に固定され、他端(後端)を付勢ガイド61に固定された圧縮バネである。スプリング73は、ラック71(歯面71a)が櫛歯ガイド21のギア21aと、ギア74とに噛み合わないようにラック71を前方に付勢する。
【0056】
図11A及び図11Bに示すように、スプリング73の弾性力に抗してラック71を後方に例えば手動で押すと、ラック71の歯面71aの下部は、櫛歯ガイド21のギア21aに噛み合い、歯面71aの上部は、ギア74に噛み合う。
【0057】
その後、図12A及び図12Bに示すように、付勢ガイド61を例えば手動で上方(ロアモジュール10とは反対側)に押すと、付勢ガイド61と一体にラック71が上方に移動し、それに伴い、ラック71の歯面71aに噛み合う櫛歯ガイド21及びギア74が回転するとともに、ギア74に噛み合う櫛歯ガイド22のギア22aが回転する。これにより、櫛歯ガイド21,22は、回転し、ガイド状態S11から退避状態S12に遷移する。
【0058】
なお、上述の説明では、付勢ガイド61は、中間搬送部20(交差搬送部の一例)の下端に設けられているが、例えば中間搬送部20がロアモジュール10(引き出しモジュールの一例)の左右の一方に配置され、左右方向に紙幣を搬送する場合には、中間搬送部20のロアモジュール10側の端部である左端又は右端に配置されるとよい。
【0059】
また、本実施の形態では、付勢ガイド61は、例えばハーフロック状態S1の開閉搬送部11をロック状態S2とするように開閉搬送部11を付勢することで、開閉搬送部11がハーフロック状態S1のまま収納される際に破損が生じるのを抑制することができるが、付勢ガイド61が、開閉搬送部11を有さない引き出しモジュールを付勢してもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、紙幣処理機1は、交差搬送部の一例として、ロアモジュール10とアッパモジュール30との間で紙幣を搬送する中間搬送部20を備えるが、交差搬送部としては、2つのモジュール間で紙幣を搬送するものに限られない。
【0061】
また、本実施の形態では、紙幣処理機1は、ロアモジュール10及びアッパモジュール30を備えるが、紙幣処理機1は、少なくとも1つの引き出しモジュール(例えば、ロアモジュール10)を備えればよい。紙幣処理機1の各部についても、構成は任意であり、例えば、変形例における退避機構70は、ラック71、ベース部72、スプリング73、及びギア74を有する構成に限られない。
【0062】
以上説明した本実施の形態では、紙葉類取扱装置の一例である紙幣処理機1は、引き出し可能な引き出しモジュールの一例であるロアモジュール10と、交差搬送部の一例である中間搬送部20と、付勢ガイド61とを備える。中間搬送部20は、ロアモジュール10との間で、ロアモジュール10の引き出し方向(前後方向)に交差する交差方向(下方)に紙幣(紙葉類)を搬送する。付勢ガイド61は、中間搬送部20の下端(ロアモジュール10側の端部の一例)に配置され、ロアモジュール10を交差方向(下方)に付勢する。
【0063】
このように、付勢ガイド61がロアモジュール10を下方に付勢することによって、ロアモジュール10と中間搬送部20との隙間について、部品寸法バラツキも含めた組立累積誤差を考慮して最適な隙間となっていなくとも、隙間が狭ければ付勢ガイド61がロアモジュール10に押し返され、中間搬送部20とロアモジュール10との接触を防止することができる。また、付勢ガイド61がロアモジュール10を下方に付勢するため、ロアモジュール10と中間搬送部20との隙間が広くても、後述するように付勢ガイド61がハーフロック状態S1の開閉搬送部11をロック状態S2としたり、或いは、ロアモジュール10の収納をガイドしたりすることができる。したがって、本実施の形態によれば、破損を回避しながら、引き出し方向に交差する交差方向にロアモジュール10(引き出しモジュール)を押圧することができる。
【0064】
また、本実施の形態では、引き出しモジュールの一例であるロアモジュール10は、開閉可能な開閉搬送部11を有し、付勢ガイド61は、開閉搬送部11をロック状態S2とするように付勢する。
【0065】
これにより、ハーフロック状態S1の開閉搬送部11が収納時にフレーム40などに接触し、開閉搬送部11やフレーム40などが破損するのを回避することができる。更には、付勢ガイド61の弾性によって開閉搬送部11をロック状態S2に遷移させるストローク量が大きくなるため、開閉搬送部11を確実にロック状態S2に遷移させることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、付勢ガイド61の先端(ガイド面61a)は、引き出し方向における中央部分が最もロアモジュール10側に位置するように湾曲している。
【0067】
これにより、ロアモジュール10が前方から収納される際(或いは、後方から収納される際)に、ロアモジュール10が付勢ガイド61に接触し、破損が生じるのを回避することができる。
【0068】
また、本実施の形態の変形例では、中間搬送部20は、ロアモジュール10側に延びるガイド状態S11と、このガイド状態S11から退避した退避状態S12とに移動可能な櫛歯ガイド21を有する。紙幣処理機1は、付勢ガイド61がロアモジュール10とは反対側(上方)に押圧されることによって、櫛歯ガイド21(及び櫛歯ガイド22)を退避状態S12に移動させる退避機構70を更に備える。
【0069】
これにより、例えば、ジャムの発生時に紙幣が中間搬送部20の櫛歯ガイド21とロアモジュール10の櫛歯ガイド11dとの間に引っ掛かっている場合などに、ロアモジュール10を引き出す前に付勢ガイド61を持ち上げる簡易的な作業で、櫛歯ガイド21を退避状態S12に移動させ、残留紙幣による負荷を軽減し、各部の破損や紙幣ダメージが発生するのを防止することができる。
【0070】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されず、構成要素を変形して具体化することができる。例えば、本実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。このように、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において発明の種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 紙幣処理機(紙葉類取扱装置)
10 ロアモジュール(引き出しモジュール)
11 開閉搬送部
11a 開放部
11a-1 ロック軸
11a-2 カラー
11a-3 先端ガイド
11b 開閉軸
11c ロック部材
11d 櫛歯ガイド
12 紙幣収容部
20 中間搬送部(交差搬送部)
21,22 櫛歯ガイド
21a,22a ギア
30 アッパモジュール
40 フレーム
41 板バネ
51,52,53,54,55 スライドレール
60 ガイド機構
61 付勢ガイド
61a ガイド面
62 圧縮バネ
70 退避機構
71 ラック
71a 歯面
71b ピン
72 ベース部
72a 長孔
73 スプリング
74 ギア
S1 ハーフロック状態
S2 ロック状態
S11 ガイド状態
S12 退避状態

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B