(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】自律走行車、搬送システム、及び、自律走行車と搬送対象との連結構造
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241224BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021045230
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521499860
【氏名又は名称】株式会社Preferred Robotics
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】山名 崇博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳人
(72)【発明者】
【氏名】礒部 達
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開平1-248209(JP,A)
【文献】特開2011-102076(JP,A)
【文献】特開2012-121650(JP,A)
【文献】特開平5-112242(JP,A)
【文献】特開平9-277936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象と連結可能な自律走行車であって、
前記搬送対象に設けられた凸部を少なくとも前記自律走行車の進行方向の前後で挟むように前記凸部と係合する係合部
と、
前記係合部を突出させるよう前記係合部を所定方向に付勢する付勢部と、
前記付勢部による付勢に抗する力を与えることで、前記係合部の突出を抑制する抑制部と、
を備え
、
前記抑制部は、前記係合部が前記抑制の解除に応じて前記付勢部による付勢で前記所定方向に移動している間、前記付勢部による付勢に抗する力を与えない、
自律走行車。
【請求項2】
前記抑制部は、前記付勢部による付勢に抗する力を与える第1状態、又は、前記付勢部による付勢に抗する力を与えない第2状態、のいずれかの状態をとり、
前記第1状態から前記第2状態に切り替わることで、前記解除を行う、
請求項1に記載の自律走行車。
【請求項3】
前記抑制部は、前記係合部の突出方向とは反対方向に前記係合部を吸引することで、前記係合部の突出を抑制するソレノイドである、
請求項1又は2に記載の自律走行車。
【請求項4】
前記抑制部は、前記吸引を停止することで、前記係合部の突出の抑制を解除する、
請求項3に記載の自律走行車。
【請求項5】
前記抑制部による前記係合部の突出の抑制を解除する制御部を備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項6】
前記自律走行車は、前記搬送対象の下部に進入した状態において前記係合部を用いて前記搬送対象と連結するものであり、
前記凸部は、前記搬送対象の下部において下方に突出して設けられ、
前記係合部は、少なくとも一部が上下動可能であり、下方に突出した前記凸部を前後で挟むように当該上下動可能な少なくとも一部が上昇する、請求項1
乃至5のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項7】
前記係合部は、前記凸部を収める空間を有する形状を備え、下方に突出した前記凸部が当該空間に収まるように上昇することで、前記自律走行車と前記搬送対象とを連結させる、請求項
6に記載の自律走行車。
【請求項8】
前記係合部は、前記係合部の一部が前記搬送対象の下部において前記凸部の下面と対向した状態において前記下面と接触するまで上昇し、前記下面と接触した状態を保ったまま、前記凸部が前記空間に収まる位置まで前記自律走行車が前記搬送対象の下部を移動することで、前記凸部が前記空間に収まるようにさらに上昇する、請求項
7に記載の自律走行車。
【請求項9】
前記係合部の少なくとも一部は、前記凸部に向かって移動可能であって、
前記一部が前記凸部に向かって移動することで、前記係合部は前記凸部を前後で挟むように当該凸部と係合する、請求項1
乃至8のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項10】
前記係合部は、前記凸部に向かって移動可能な凹部であり、
前記凹部が前記凸部に向かって移動することで、前記係合部は前記凸部を前後で挟むように当該凸部と係合する、請求項1
乃至8のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項11】
前記自律走行車の進行中に前記凹部の一部が前記凸部と対向したことを検出する検出部と
、
を備え、
前記
抑制部は、前記自律走行車の進行中における前記検出部による検出結果に応じて前記抑制を解除して前記付勢部による付勢によって前記凹部を前記凸部に向けて突出させることで、前記凹部が前記凸部と接触した中間状態を作り出し、
前記凹部は、前記凹部が前記凸部と係合する位置まで前記自律走行車が前記中間状態を維持して進行すると、前記付勢部による付勢によってさらに突出して前記凸部と係合する、請求項
10に記載の自律走行車。
【請求項12】
前記係合部は、前記凸部の少なくとも一部を収容することで前記凸部と係合する、請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項13】
前記係合部は、前記凸部を少なくとも前記自律走行車の進行方向の前後で挟むように前記凸部と係合することで、前記搬送対象の前記自律走行車に対する前後の移動を規制する、請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の自律走行車。
【請求項14】
前記凸部が設けられた前記搬送対象と、請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の自律走行車と、を含む搬送システム。
【請求項15】
自律走行車と搬送対象との連結構造であって、
前記自律走行車は前記搬送対象の下部に進入して前記搬送対象と連結するものであり、
前記搬送対象に設けられ、下方に突出する凸部と、
前記自律走行車に設けられ、上下動可能であり、上方に移動して前記凸部と係合したとき前記自律走行車の少なくとも前進後退方向への前記凸部の相対移動を規制する規制部と、
を備え
、
前記規制部は、前記凸部に篏合する凹部であり、
前記凹部は、上方に移動して前記凸部と篏合したとき、前記凸部の水平方向への相対移動を規制し、
前記凹部は、
前記自律走行車に固設されるインナ部品と、
前記インナ部品の外周側に上下動可能に設けられるアウタ部品と、
を有し、
前記アウタ部品が上方に移動して前記凸部と篏合する、
自律走行車と搬送対象との連結構造。
【請求項16】
自律走行車と搬送対象との連結構造であって、
前記自律走行車は前記搬送対象の下部に進入して前記搬送対象と連結するものであり、
前記搬送対象に設けられ、下方に突出する凸部と、
前記自律走行車に設けられ、上下動可能であり、上方に移動して前記凸部と係合したとき前記自律走行車の少なくとも前進後退方向への前記凸部の相対移動を規制する規制部と、
を備え、
前記規制部は、前記凸部に篏合する凹部であり、
前記凹部は、上方に移動して前記凸部と篏合したとき、前記凸部の水平方向への相対移動を規制し、
前記凹部は、
前記自律走行車に固設されるアウタ部品と、
前記アウタ部品の内周側に上下動可能に設けられるインナ部品と、
前記インナ部品の内周側に設けられ、前記インナ部品を支持するカバー部品と、
を有し、
前記インナ部品が上方に移動して前記凸部と篏合する
、
自律走行車と搬送対象との連結構造。
【請求項17】
前記規制部が前記凸部と対向する位置にあることを検出する検出部と、前記自律走行車の移動と前記規制部の上下動を制御する制御装置と、前記規制部が上昇するときに上方に付勢する付勢部と、を備え、
前記制御装置は、前記自律走行車と前記搬送対象とを連結する際に、
前記自律走行車を前記搬送対象の下部に進入させ、
前記検出部により前記規制部が前記凸部と対向する位置にあることが検出されたときに前記規制部を上昇させて、前記規制部が前記凸部の下端面に突き当たり、かつ、前記付勢部により上方に付勢される中間状態とし、
前記規制部が前記凸部と係合する位置に到達するまで前記自律走行車をさらに移動させ、前記規制部を、前記中間状態を維持しながら前記凸部の下端面に沿って移動させ、前記規制部が前記凸部と係合する位置に到達したときに前記付勢部によって前記規制部をさらに上昇させて前記規制部を前記凸部に係合させる、
請求項
15又は16に記載の自律走行車と搬送対象との連結構造。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の前記自律走行車。
【請求項19】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の前記凸部。
【請求項20】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の前記凸部が設けられる搬送対象。
【請求項21】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載の前記凸部が下部に設けられた搬送対象。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律走行車、搬送システム、及び、自律走行車と搬送対象との連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車などの自律走行車を、工場や一般家庭で用いる際に、例えば物品が載置された棚や牽引台車などの搬送対象を牽引して搬送を行う場合がある。
【0003】
自律走行車と搬送対象とを連結する構成として、無人搬送車の天板にプレートを設置し、牽引台車にスリットを有するガイドを設ける構成において、無人搬送車のプレートをスリットに差し込んだ後に、電磁ロックピンをプレート及びガイドに貫通させて電磁ロックをかけ、これにより無人搬送車と牽引台車とを物理的に接続する構成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自律走行車と搬送対象との連結構造が複雑であると、自律走行車の連結位置への高い位置決め精度が求められる。
【0006】
本開示は、自律走行車と搬送対象との連結をより簡易かつより確実にできる自律走行車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態の一観点に係る自律走行車は、搬送対象と連結可能な自律走行車であって、前記搬送対象に設けられた凸部を少なくとも前記自律走行車の進行方向の前後で挟むように前記凸部と係合する係合部と、前記係合部を突出させるよう前記係合部を所定方向に付勢する付勢部と、前記付勢部による付勢に抗する力を与えることで、前記係合部の突出を抑制する抑制部と、を備え、前記抑制部は、前記係合部が前記抑制の解除に応じて前記付勢部による付勢で前記所定方向に移動している間、前記付勢部による付勢に抗する力を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】自律走行車が搬送対象となる棚とドッキングする様子を示した図
【
図4】棚のうち最下段より下部の概略構成を示す正面図
【
図8】ドッキング制御に関する制御装置の機能ブロック図
【
図10】第1実施形態のロック装置によるドッキング動作の第1段階を示す図
【
図11】第1実施形態のロック装置によるドッキング動作の第2段階を示す図
【
図12】第1実施形態のロック装置によるドッキング動作の第3段階を示す図
【
図13】第1実施形態のロック装置によるドッキング動作の第4段階を示す図
【
図15】
図14中のロック装置のC-C断面図であり、第2実施形態のロック装置によるドッキング動作の第1段階を示す図
【
図16】第2実施形態のロック装置によるドッキング動作の第2段階を示す図
【
図17】第2実施形態のロック装置によるドッキング動作の第3段階を示す図
【
図18】第2実施形態のロック装置によるドッキング動作の第4段階を示す図
【
図19】自律走行車と搬送対象との連結構造の第1変形例を示す模式図
【
図20】自律走行車と搬送対象との連結構造の第2変形例を示す模式図
【
図21】自律走行車と搬送対象との連結構造の第3変形例を示す模式図
【
図22】搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成による効果を説明するための模式図
【
図23】搬送対象側の連結要素の凹部の他の構成例を示す模式図
【
図24】搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成によるさらなる効果を説明するための模式図
【
図25】搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成による別の効果を説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示における少なくとも一の実施形態によれば、自律走行車と搬送対象との連結をより簡易かつより確実にできる自律走行車と搬送対象との連結構造を提供する。以下で説明する実施形態において自律走行車は搬送対象を牽引することで当該搬送対象を目的地まで搬送する。
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は、自律走行車120の幅方向である。y方向は、自律走行車120の前後方向である。z方向は、自律走行車120の高さ方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0012】
[第1実施形態]
<自律走行車の利用シーン>
はじめに、第1実施形態に係る自律走行車の利用シーンについて説明する。
図1は、自律走行車の利用シーンの一例を示す図であり、自律走行車120とその搬送対象を有する搬送システムを図示する。
図1に示すように、自律走行車120は、例えば、自宅のリビング等の所定空間100において、ユーザ110がソファでくつろぐシーン等で利用される。
【0013】
図1に示す利用シーンは、例えば、ユーザ110がノートPCを使用しようとして、自律走行車120に対して、
・ウェイクワードを発声した後、
・「ノートPCを持ってきて」と発声した場合(すなわち、音声による搬送指示(以降、音声指示と呼ぶ)が行われた場合)、
を示している。この場合、自律走行車120は、キャスタ付きの棚130~150の中から、ノートPCや書物等の仕事道具131が載置された棚130を搬送対象として特定し、棚130とドッキングした後、棚130をユーザ110の近傍の位置まで搬送する。なお、自律走行車120は、ウェイクワードなしに行われた音声指示に従うよう構成されてもよい。
【0014】
このように、自律走行車120を利用すれば、ユーザ110は、音声指示を行うだけで、ソファから動くことなく、離れた位置にあるノートPCを手元に置くことができる。
【0015】
なお、
図1の例は、ユーザ110が音声指示を行った時点で、棚130が、所定空間100内のアンカ170の位置に待機していた場合を示している。また、
図1の例は、アンカ170の位置に待機していた棚130を、ユーザ110の近傍の位置172まで搬送する際に、最短の搬送経路上に、障害物として、ごみ箱160が置かれていた場合を示している。
【0016】
このような場合、自律走行車120は、棚130の搬送中にごみ箱160を検知し、点線矢印171に示す搬送経路で棚130を搬送することで、ごみ箱160との衝突を回避する。
【0017】
また、
図1には示していないが、自律走行車120が棚130をユーザ110の近傍の位置172まで搬送し、ユーザ110がノートPCを棚130から取り出した後、自律走行車120に対して、「棚を元の位置に戻して」との音声指示を行ったとする。この場合、自律走行車120は、棚130を、アンカ170の位置まで搬送する。
【0018】
また、
図1の例では、自律走行車120が搬送対象として棚130を搬送する場合について示したが、ユーザ110の音声指示の内容によっては、自律走行車120が、棚140又は棚150を搬送対象として特定して搬送してもよい。また、
図1の例では、自律走行車120が、ユーザ110の近傍の位置を棚130の搬送先の位置として特定した。しかしながら、ユーザ110の音声指示の内容によっては、自律走行車120が、所定空間100内に設置された所定の設置物(例えば、家具等)の近傍の位置や、所定空間100内の任意の位置を、棚130の搬送先の位置として特定してもよい。
【0019】
<自律走行車の構成>
次に、自律走行車120の構成について説明する。
図2は、自律走行車の外観構成の一例を示す図である。
【0020】
図2(a)に示すように、自律走行車120は、全体として直方体の形状を有しており、搬送対象となる棚の最下段の下側に進入できるよう、高さ方向(z軸方向)及び幅方向(x軸方向)の寸法が規定されている。なお、自律走行車120の形状は直方体に限定されない。
【0021】
自律走行車120の上面210には、搬送対象となる棚とドッキングするためのドッキング機構を構成する部材であるロック装置211が設置されている。また、自律走行車120の上面210には、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)212が設置されている。LIDAR212は、自律走行車120の上面210の高さ位置における、前後方向(y軸方向)及び幅方向(x軸方向)を測定範囲としており、LIDAR212による測定結果を用いることで、当該測定範囲にある障害物等を検出することができる。
【0022】
自律走行車120の前面220には、前面RGBカメラ221と、ToF方式(Time of Flight方式)のカメラ(ToFカメラ222)とが設置されている。なお、本実施形態の前面RGBカメラ221は、ToFカメラ222の上側に設置されるが、前面RGBカメラ221の設置位置は、この位置に限定されない。
【0023】
前面RGBカメラ221は、自律走行車120が前進方向に移動する際、例えば、
・搬送対象となる棚(例えば、棚130)、
・搬送先の近傍にいるユーザ(例えば、ユーザ110)、搬送先の近傍にある設置物、
・搬送経路上の障害物(例えば、ごみ箱160)、
等を撮影し、カラー画像を出力する。
【0024】
ToFカメラ222は、測定範囲内の物体の3次元的な位置に関する測定データを取得するセンサの一例である。ToFカメラ222は、マルチパス問題を回避するために、自律走行車120が走行する走行面(
図2(b)に示す床面240)が測定範囲に含まれない程度に、自律走行車120の前面220において上向きに設置される。マルチパス問題の一例として、光源から出射した光が床面240を経由して他の対象物で反射し、その反射光をToFカメラ222が受光することによる測定精度の悪化が挙げられる。本実施形態において、ToFカメラ222の自律走行車120の前面220における上向きの設置角度Θは、床面240に対して約50度であるとする。
【0025】
また、ToFカメラ222は、自律走行車120が前進方向に移動する際、少なくともドッキングした棚が通過する領域(ドッキングした棚の高さ×ドッキングした棚の幅分の領域)を測定範囲として障害物等を撮影する。また、ToFカメラ222は、撮影した距離画像(深度画像)を3次元位置データとして出力する。なお、本実施形態において、ToFカメラ222の垂直画角θvは70度、水平画角θhは90度であるとする。なお、物体の3次元的な位置データを取得するためのセンサデバイスとして、ToFカメラ222に代えて、ステレオカメラや単眼カメラを用いてもよい。ステレオカメラの場合、同じタイミングで撮影された2つの画像から測定範囲内の3次元位置データが計算できる。単眼カメラの場合、異なるタイミングで撮影された2つの画像と自律走行車120の移動方向及び移動距離から、測定範囲内の3次元位置データが計算できる。
【0026】
自律走行車120の下面230には、駆動輪231と、従動輪232とが設置され、自律走行車120を支持する。
【0027】
駆動輪231は、幅方向(x軸方向)に1つずつ設置されており(幅方向に計2つ設置されており)、それぞれが独立してモータ駆動されることで、自律走行車120を、進行方向すなわち前進/後退方向(y軸方向)に移動させることができる。また、駆動輪231は、自律走行車120を、z軸周りに旋回させることができる。
【0028】
従動輪232は、幅方向(x軸方向)に1つずつ(幅方向に計2つ)設置されている。また、従動輪232は、自律走行車120に対して、それぞれがz軸周りに旋回可能に設置されている。なお、従動輪232の設置位置や設置数は、上記以外でもよい。
【0029】
また、
図2(b)に示すように、自律走行車120の内部には制御装置300が搭載されている。制御装置300は、自律走行車120内に搭載される各種センサから入力される情報や、外部から受信する操作指令などに基づき、駆動輪231やロック装置211の動作を制御して、自律走行車120の移動や棚130との連結を制御する。なお、本開示における2つの対象の連結とは、2つの対象が互いに接触しているか否かを問わず、一方の対象が移動すると他方の対象も連動して移動するような関係性のことを指してよい。
【0030】
<ドッキングの概要>
次に、ドッキングの概要について説明する。
図3は、自律走行車が搬送対象となる棚とドッキングする様子を示した図である。このうち、
図3(a)は、自律走行車120が、アンカ170の位置に待機する、搬送対象となる棚130とドッキングする直前の様子を示したものである。
【0031】
図3(a)に示すように、棚130は段数が3段の棚であり、最下段400の下側には、フレームガイド410、420が、自律走行車120の幅に応じた間隔で、略平行に取り付けられている。これにより、自律走行車120が、搬送対象となる棚130の最下段400の下側に進入する際の進入方向が規定される。また、フレームガイド410、420は、自律走行車120が搬送対象となる棚130を搬送する際、幅方向のガイド部として機能し、棚130が自律走行車120に対して幅方向にずれることを防止する。
【0032】
また、棚130の足元には、キャスタ431~434が旋回可能に取り付けられている。これにより、自律走行車120は、ドッキングした棚130を容易に搬送することができる。
【0033】
一方、
図3(b)は、自律走行車120が搬送対象となる棚130にドッキングした後の様子を示したものである。
図3(b)に示すように、棚130にドッキングした状態であっても、自律走行車120の前面220は、棚130の各段によって覆われない(前面220が、棚130の各段よりも前進方向に突出する)。このため、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面RGBカメラ221の測定範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。
【0034】
同様に、ToFカメラ222についても、自律走行車120が棚130を搬送する際に、測定範囲(垂直画角θv、水平画角θh)が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。
【0035】
一方、LIDAR212は、自律走行車120が棚130にドッキングした状態で、自律走行車120の高さ位置における前方及び後方の測定範囲が遮られることはない。しかしながら、幅方向の測定範囲についてはフレームガイド410、420によって遮られる可能性がある。
【0036】
このため、棚130のフレームガイド410、420には、LIDAR212の幅方向の測定範囲を遮蔽する割合を低減するために、開口部411、421が設けられている。これにより、自律走行車120が棚130を搬送する際に、LIDAR212は、自律走行車120の高さ位置における前方、後方及び幅方向の測定範囲を、棚130によって遮られることなく測定することができる。
【0037】
なお、
図3(b)においては示されていないが、自律走行車120の前面側に設置されたマイクも、自律走行車120が棚130にドッキングした状態で、棚130の各段よりも前進方向に突出した位置に配置される。このため、自律走行車120が棚130を搬送する際に、前面側のマイクの検出範囲が、棚130のいずれかの段によって遮られることはない。
【0038】
図4は、棚130のうち最下段400より下部の概略構成を示す正面図である。
図4に示すように、一対のフレームガイド410、420の中間の位置、すなわち棚130の最下段400のx方向の中心位置には、最下段400の下面から下方に突出するように突起440(凸部)が設けられている。本実施形態では、突起440は例えば円柱状であるが、この形状に限られない。
【0039】
上述の自律走行車120のロック装置211は上下動可能に構成され、ロック装置211が上昇したときに、この突起440に篏合することによって、自律走行車120と棚130とが連結される。すなわち、自律走行車120のロック装置211と、棚130(搬送対象)の突起440とが、本実施形態に係る「自律走行車と搬送対象との連結構造」を構成する。
【0040】
<ロック装置211の構成>
図5~
図7を参照してロック装置211の構成を説明する。
図5は、第1実施形態に係るロック装置211の斜視図である。
図6は、
図5中のロック装置211のA-A断面図である。
図7は、
図5中のロック装置211のB-B断面図である。
図6は、ロック装置211をx正方向側から視た断面であり、
図7は、y負方向側から視た断面である。
【0041】
ロック装置211は、「自律走行車120に設けられ、上下動可能であり、上方に移動して突起440と係合したとき自律走行車120の少なくとも前進後退方向への突起440の相対移動を規制する規制部」として機能する。本実施形態では、規制部としてのロック装置211は、突起440に篏合する凹部であり、突起440を少なくとも自律走行車120の進行方向の前後で挟むように突起440と係合する係合部であるといってよい。ロック装置211の凹部は、上方に移動して突起440と篏合(突起440の少なくとも一部を収容)したとき、自律走行車120に対する突起440すなわち搬送対象の水平方向への相対移動を規制することで、自律走行車120が搬送対象を牽引可能な状態を作り出す。
【0042】
ここで、第1実施形態で用いる「篏合」とは、「係合」の一例であり、「係合」という概念に包含される。「篏合」とは、一般には、軸と軸受けのように、機械のいろいろな部分がはまり合う関係を意味し、例えば、軸が孔などのくぼんだ所に固くはまり合ったり、滑り動くようにゆるくはまり合ったりする関係をいう。本実施形態では、凸状の突起440と凹状のロック装置211(アウタ部品270)とが互いに嵌り合い、突起440の外周面がロック装置211により完全に覆われる状態をいう。
【0043】
また、「係合」とは、複数の要素が互いに係わり合うことを意味し、歯車同士による動力伝達を表現する場合などに一般的に用いられる表現である。本実施形態では、「係合」とは、自律走行車120の移動によって、自律走行車120に設けられる凹状のロック装置211(アウタ部品270)と、棚130に設けれる凸状の突起440とが少なくとも一時的に接触し、ロック装置211から突起440に自律走行車120の駆動力を伝達できるような、ロック装置211と突起440との連結関係をいう。篏合以外の係合の種類としては、例えば、凸状の突起440を複数の板材や棒材などで挟持する構成などが挙げられる。挟持の詳細については
図19~
図21を参照して後述する。或いは、係合関係とは、複数の要素が必ずしも相互に接触しなくてもよく、駆動力を伝達できれば非接触の関係でもよい。例えば電磁石などを利用して要素間に引力や斥力を発生させ、これらの引力や斥力によって要素間で動力を伝達する構成でもよい。
【0044】
第1実施形態に係るロック装置211の構成をさらに説明すると、凹部としてのロック装置211は、基部250と、自律走行車120に基部250を介して固設されるインナ部品260と、インナ部品260の外周側に上下動可能に設けられるアウタ部品270と、を有する。第1実施形態に係るロック装置211では、アウタ部品270が上方に移動して突起440と篏合する凹部として機能する。なお、
図5~
図7では、アウタ部品270が突起440と篏合可能な高さ位置まで上昇している状態を図示している。なお、アウタ部品270が最下部まで下降した状態では、アウタ部品270の上端部と、インナ部品260の上面とがほぼ面一となるように配置される(
図10(a)など参照)。
【0045】
第1実施形態では、アウタ部品270は棚130の円柱形状の突起440を篏合可能な円筒形状で形成されるが、少なくとも突起440を内部に収容できればよく、例えば楕円形や長円形状などの円形以外の環状でもよい。また、インナ部品260は、環状のアウタ部品270が摺動可能となるように、z方向から視た断面がアウタ部品270の内周面と同一形状となる柱体であればよく、本実施形態では円柱状である。
【0046】
また、ロック装置211は、さらに駆動部280と、センサ格納部290と、を備える。
【0047】
駆動部280は、アウタ部品270に上下動のための動力を供給する。駆動部280は、アウタ部品270及びインナ部品260より下方に配置される。駆動部280は、アウタ部品270と連結されて、アウタ部品270を上下動させる。本実施形態では、駆動部280として、圧縮ばね付きソレノイドが適用される。
【0048】
駆動部280は、例えばシリンダタイプのソレノイドであり、ソレノイド本体281と、可動部282とを有する。ソレノイド本体281には、棒状の可動部282が摺動可能に挿入され、ソレノイド本体281に対して可動部282が一方向に進退可能とされている。ソレノイド本体281の内部には可動部282の周囲にコイルが内蔵されており、コイルに電流を流すことで可動部282を所定方向に移動させる。本実施形態では、駆動部280はプル型のソレノイドであり、可動部282が上方を向くよう設置される。つまり、駆動部280は、ソレノイドに通電している状態では、可動部282が下方に移動してソレノイド本体281に引き込まれた状態を維持する。
【0049】
一方、ソレノイドに非通電のときは、可動部282は外力を付与すれば上下方向に摺動可能な状態である。このため駆動部280は、非通電時の可動部282の復帰機構として圧縮ばね283を有する。圧縮ばね283は可動部282の上方の露出部分の周囲に配置される。圧縮ばね282の上端は可動部282の上方の露出部分に連結され、下端はソレノイド本体281の上面と対向配置される。圧縮ばね283は、ソレノイドが通電し可動部282が下方に移動してソレノイド本体281に引き込まれている状態では、可動部282とソレノイド本体281との間で圧縮される。可動部282が最下部に位置するときに、圧縮ばね283は最も収縮する。この場合、ソレノイド本体281は固定されているので上方に付勢される。したがって、ソレノイドが非通電に切り替わると、圧縮ばねの付勢力によって可動部282が上方へ移動する。このように、通電状態のソレノイドは、圧縮ばね283による付勢に抗して可動部282を突出させないようにする(可動部282の突出を抑制する)抑制部といってよい。
【0050】
ここで、
図6、
図7に示すように、アウタ部品270は、筒状部271と、連結部272と、凸部273とを有する。筒状部271は、インナ部品260の外周側に配置される筒状の部品である。連結部272は、y方向を長手方向とする板材であり、筒状部271の下端において筒状部271の直径方向に沿って配置され、板状の両端が筒状部271と接続する。また、連結部272は、y方向を長手方向、z方向を短手方向となるように設置される。連結部272は、インナ部品260をy方向に貫通して配置される。このため、インナ部品260には、アウタ部品270が上下動することを妨げないように、連結部272の短手方向(z方向)に沿って連結部272が摺動可能とするための、z方向に沿って不図示のスリットが設けられている。また、
図6、
図7に示すように、連結部272の長手方向の中央部には、上方に突出するように凸部273が設けられる。
【0051】
駆動部280のソレノイド本体281は、制御装置300からの制御指令に応じて作動し、作動時(通電時)には可動部282を吸引して下降させる。また、ソレノイド本体281の停止時には、可動部282の吸引が停止されるので圧縮ばね283(付勢部)の付勢力によって可動部282は上昇する。このように駆動部280の可動部282は、インナ部品260に対して上下動する。可動部282は、z方向を長手方向とし、その上端がアウタ部品270の連結部272に連結されている。これにより、可動部282が上下動すると、連結部272を介してアウタ部品270も上下動する。
【0052】
センサ格納部290は、ロック装置211のドッキング制御に利用する各種センサを収容する部分である。センサ格納部290は、例えば
図5~7に示すようにインナ部品260の上面の中央に埋設される。センサ格納部290は、
図5に示すようにx方向を長手方向とし、
図7に示すように、この長手方向に沿って対向する二組のセンサを備える。
【0053】
一組目のセンサはフォトリフレクタ291(検出部)である。フォトリフレクタ291は、発光部側のセンサと受光部側のセンサとから構成され、発光部から出る光を、検知したい物体で遮り、反射された光を受光部で受信することにより、物体を検知する。本実施形態では、
図7に示すように、フォトリフレクタ291は、センサ格納部290の上面から露出して設置され、発光部が上方に光を出力して、受光部が上方からの反射光を受けることができる。これにより、本実施形態のフォトリフレクタ291は、ロック装置211の上方に検知対象の突起440が存在することを検知できる。すなわち、フォトリフレクタ291は「規制部(ロック装置211)が凸部(突起440)と対向する位置にあることを検出する検出部」として機能する。
【0054】
二組目のセンサはフォトインタラプタ292である。フォトインタラプタ292は、発光素子と受光素子とを対向配置し、その間を検出物が通過するときに発光素子と受光素子との間の光を遮ることにより、物体の有無を検出する。本実施形態では、
図7に示すように、フォトインタラプタ292は、センサ格納部290の下部に、発光素子と受光素子とがx方向に沿って対向配置されるように設置されている。また、発光素子と受光素子との間には、センサ格納部290の下面から上方に向けて窪んで形成される凹部293が配置される。この凹部293は、アウタ部品270の上昇時に上述の凸部273が挿入される位置に形成される。これにより、本実施形態のフォトインタラプタ292は、ロック装置211のアウタ部品270が上昇動作をしたことを検知できる。
【0055】
<ドッキングの制御>
図8~
図13を参照して、本実施形態に係るロック装置211による棚130の突起440とのドッキング制御について説明する。
図8は、ドッキング制御に関する制御装置300の機能ブロック図である。
【0056】
このドッキング制御は、自律走行車120の制御装置300がロック装置211の各要素を利用して実施する。
図8に示すように、制御装置300は、ロック装置211による棚130の突起440とのドッキング制御の機能に関するドッキング制御部310を有する。ドッキング制御部310は、棚位置検出部311と、上下動制御部312と、ドッキング検出部313と、走行制御部314と、を有する。
【0057】
棚位置検出部311は、フォトリフレクタ291の検出信号に基づき、ロック装置211に対する棚130の突起440の位置、より詳細には突起440がロック装置211と対向する直上の位置にあるか否かを検出する。棚位置検出部311は、突起440がロック装置211との対向位置にあるか否かの検出結果の情報を上下動制御部312に出力する。
【0058】
上下動制御部312は、棚位置検出部311による検出結果に基づき、ロック装置211のアウタ部品270の上下動を制御する。上下動制御部312は、棚位置検出部311により棚130の突起440がロック装置211と対向する位置に無いと判定されたときは、駆動部280のソレノイド本体281を作動させて可動部282及びアウタ部品270を下方の所定位置に留める。一方、棚位置検出部311により棚130の突起440がロック装置211と対向する位置に有ると判定されたときには、駆動部280のソレノイド本体281を非作動に切り替えて、圧縮ばね283の付勢力により可動部282及びアウタ部品270を上昇させる。上下動制御部312は、アウタ部品270の動作状態(上昇か下降か、など)の情報をドッキング検出部313に出力する。なお上下動制御部312が制御対象とする駆動部280は、ソレノイド式のものに限られず他の機構を用いて良い。
【0059】
ドッキング検出部313は、フォトインタラプタ292の検出信号に基づき、ロック装置211のアウタ部品270と棚130の突起440とのドッキングの成否を検出する。ドッキング検出部313は、上下動制御部312がアウタ部品270を上昇させているときに、フォトインタラプタ292の受光素子の検出信号を確認する。例えば、受光素子の検出信号が所定の閾値を下回り、受光素子の受光量が所定値以下となったとき、アウタ部品270の凸部273がセンサ格納部290の凹部293の最奥まで進入する位置まで上昇していると判断できる。このとき、ドッキング検出部313は、アウタ部品270が突起440と篏合する位置まで上昇している状態を検知して、ロック装置211のアウタ部品270と棚130の突起440とのドッキングが成功したものと判定する。ドッキング検出部313は、ドッキング成否の判定結果の情報を走行制御部314に出力する。
【0060】
なお、ドッキング検出部313は、フォトリフレクタ291が突起440の下にある状態(フォトリフレクタ291が突起440を検出している状態)、かつ、アウタ部品270が突起440と嵌合する位置まで上昇している状態(フォトインタラプタ292でアウタ部品270の上昇を検知している状態)を検出したときに、ドッキングが成功したと判定してもよい。これにより、フォトリフレクタ291によって突起440を検知した後、アウタ部品270が突起440の下にないタイミングでアウタ部品270が上昇してしまった場合(例えば走行速度が速くて自律走行車120が突起440の下を通り過ぎてしまったり、自律走行車120がフレームガイドに接触して棚がずれてしまったりした場合など)、ドッキングが成功したという誤判定を防ぐことができる。
【0061】
走行制御部314は、自律走行車120の駆動輪231を制御して、自律走行車120の走行を制御する。走行制御部314は、ドッキング制御では自律走行車120のロック装置211が棚130の突起440に接近するよう自律走行車120の走行を制御し、ドッキング検出部313によりドッキング成功の情報を受け取ると、走行を停止させる。
【0062】
なお、
図8に示すドッキング制御部310の各機能ブロックは一例であって、同様の機能を実現できるものであれば他の構成でもよい。また、ドッキング制御部310を有する制御装置300は、
図2などでは自律走行車120の内部に搭載される構成が例示されているが、あくまで一例であり、自律走行車120の他の箇所に搭載される構成でもよいし、自律走行車120の外部に設置されて自律走行車120の各要素と有線又は無線で通信可能に接続される構成でもよい。
【0063】
図9は、制御装置300のハードウェア構成図である。
図9に示すように、制御装置300は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0064】
図8に示した制御装置300の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。すなわち、本実施形態に係る連結構造のドッキング制御のプログラムをコンピュータ上で実行させることで、制御装置300は、
図8の棚位置検出部311、上下動制御部312、ドッキング検出部313、及び走行制御部314として機能する。
【0065】
また、制御装置300の各機能は、アナログ回路、デジタル回路又はアナログ・デジタル混合回路で構成された回路であってもよい。また、各機能の制御を行う制御回路を備えていてもよい。各回路の実装は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によるものであってもよい。
【0066】
制御装置300の各機能の少なくとも一部はハードウェアで構成されていてもよいし、ソフトウェアで構成され、ソフトウェアの情報処理によりCPU等が実施をしてもよい。ソフトウェアで構成される場合には、制御装置300及びその少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記憶媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させるものであってもよい。記憶媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記憶媒体であってもよい。すなわち、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実装されるものであってもよい。さらに、ソフトウェアによる処理は、FPGA等の回路に実装され、プロセッサ等のハードウェアが実行するものであってもよい。ジョブの実行は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)等のアクセラレータを使用して行ってもよい。
【0067】
例えば、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶された専用のソフトウェアをコンピュータが読み出すことにより、コンピュータを上記の実施形態の装置とすることができる。記憶媒体の種類は特に限定されるものではない。また、通信ネットワークを介してダウンロードされた専用のソフトウェアをコンピュータがインストールすることにより、コンピュータを上記の実施形態の装置とすることができる。こうして、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて、具体的に実装される。なお、メモリ、プロセッサ、コンピュータ等のハードウェアは、それぞれ1つ、又は1つ以上備えられてもよい。
【0068】
次に、
図10~
図13を参照して、第1実施形態におけるドッキングの手順を説明する。
図10~
図13は、第1実施形態のロック装置211によるドッキング動作の第1~第4段階を示す図である。
図10~
図13の各図において、(a)はロック装置211と棚130の突起440との位置関係を示す拡大図であり、(b)は自律走行車120と棚130との位置関係を示す斜視図である。
【0069】
ドッキング動作では、まずは
図3(a)に示したように、自律走行車120は、y正方向側の背面側から後退しながら、棚130の最下段400の下側のフレームガイド410、420の間に進入する。このとき、上下動制御部312はロック装置211の駆動部280のソレノイド本体281を作動させてソレノイド吸引状態としている。これにより、可動部282及びアウタ部品270が下端位置に位置決めされ、アウタ部品270の上端の位置がインナ部品260の上面と揃えられている(
図10(a)参照)。
【0070】
図10に示す第1段階では、
図10(a)、(b)に矢印A1で示すように、自律走行車120は、y正方向側への進入を継続しつつ、フォトリフレクタ291による棚130の突起440の検知が行われる。
図10に示す状態より以前の段階では、自律走行車120の棚130への進入距離がまだ短いため、突起440のy負方向側(図面右側)の端部の位置にフォトリフレクタ291の検知範囲が到達していない。一方、
図10に示す状態では、
図10(a)に点線円B1で示すように、自律走行車120の棚130への進入が進み、突起440のy負方向側の端部の位置にフォトリフレクタ291の直上の検知範囲が到達している。このとき棚位置検出部311は、棚130の突起440がロック装置211と対向する直上の位置にあることを検出する。
【0071】
次に
図11に示す第2段階では、突起440の検出に応じて、上下動制御部312がソレノイド本体281を非作動に切り替え、ソレノイド吸引を解除する。これにより、
図11(a)に矢印A3で示すように、駆動部280の可動部282が圧縮ばね283の付勢力によって上昇し、矢印A4で示すように可動部282と連結されるアウタ部品270も上昇する。このとき、
図11(a)に点線円B2で示すように、アウタ部品270はまだ突起440と篏合する位置まで到達していないため、アウタ部品270の上端の一部が突起440の下端面441に突き当たる。
【0072】
このとき、圧縮ばね283による付勢力は依然として上向きに付加されているので、アウタ部品270が突起440の端面と接触しつつ、上方に押し当てる状態となる。また、このとき、アウタ部品270は突起440との篏合位置まで上昇できていない中間位置にあるので、アウタ部品270の凸部273はフォトインタラプタ292の位置まで上昇していない。このため、ドッキング検出部313によるドッキング完了の検出は行われない。したがって、
図11(a)(b)に矢印A2で示すように、走行制御部314は自律走行車120の進入を継続する。これにより、ロック装置211のアウタ部品270は、棚130の突起440の下端面441に押し付けられながら、進入方向に沿って引き摺られる。
【0073】
次に
図12に示す第3段階では、自律走行車120の棚130への進入がさらに進み、棚130の突起440の直下にロック装置211が到達する。このとき、
図12(a)に矢印A5、A6で示すように、上方に付勢されて突起440の下端面441に押し当てられていたロック装置211のアウタ部品270(及び可動部282)がさらに上昇する。この結果、点線円B3で示すように、アウタ部品270が突起440と篏合する。このとき、アウタ部品270の凸部273も、フォトインタラプタ292の位置まで上昇したため、フォトインタラプタ292が遮断されて、ドッキング検出部313によるドッキング完了の検出が行われる。走行制御部314は、ドッキング完了の検出に応じて、自律走行車120の進入を停止させる。
【0074】
図12に示す第3段階の状態を維持することによって、自律走行車120は、棚130を連結して搬送可能となる。自律走行車120が棚130から離脱する際には
図13に示す第4段階に進む。
【0075】
次に
図13に示す第4段階では、上下動制御部312が駆動部280のソレノイド本体281を作動させてソレノイド吸引状態に切り替える。これにより、
図13(a)に矢印A7で示すように、可動部282が下降して下端位置に位置決めされる。また、可動部282と連結するアウタ部品270も矢印A8で示すように下降して下端位置に位置決めされ、アウタ部品270の上端の位置がインナ部品260の上面と揃う位置まで戻される。この結果、ロック装置211と突起440とのドッキングが解除される。ドッキングが解除された状態で、
図13(a)、(b)に矢印A9で示すように、自律走行車120が棚130への進入方向と逆方向に移動することによって、自律走行車120が棚130から離脱する。
【0076】
このように、第1実施形態では、まず
図10に示したように、自律走行車120と搬送対象としての棚130とを連結する際に、自律走行車120を棚130の下部に進入させる。次に、
図11に示したように、フォトリフレクタ291によりロック装置211が棚130の突起440と対向する位置にあることが検出されたときに、ロック装置211のアウタ部品270を上昇させて、アウタ部品270が突起440の下端面441に突き当たり、かつ、駆動部280の圧縮ばね283により上方に付勢される中間状態とする。そして、
図12に示したように、アウタ部品270が突起440と係合する位置に到達するまで自律走行車120をさらに移動させ、アウタ部品270を、中間状態を維持しながら突起440の下端面441に沿って移動させ、アウタ部品270が突起440と係合する位置に到達したときに圧縮ばね283の付勢力によってアウタ部品270をさらに上昇させて、ロック装置211のアウタ部品270を棚130の突起440に係合させる。
【0077】
この構成により、ロック装置211のアウタ部品270を棚130の突起440に篏合させる前に、アウタ部品270が突起440の下端面441に押し付けられながら、自律走行車120の進入方向に沿って引き摺られる中間状態をつくることができる。このような中間状態をつくるタイミングは、突起440の下端面441のうち自律走行車120の進入方向(y方向)に沿った長さ分だけ時間的余裕がある。つまり、フォトリフレクタ291による突起440の検出した時点から、ロック装置211のアウタ部品270の前端(y正方向側の上端面)が突起440の直下より奥まで進入する時点までの間に、アウタ部品270を上昇させればよい。このため、制御装置300によるフォトリフレクタ291による突起440の検出や、ロック装置211のアウタ部品270の上昇動作のタイミングが多少早まったり遅れたりしても、上記の時間的余裕によってこれらの制御誤差を許容できるので、確実に中間状態に遷移できる。したがって、ロック装置211のアウタ部品270を、棚130の突起440に高精度に篏合させることが可能となる。
【0078】
また、第1実施形態では、規制部としてのロック装置211(アウタ部品270)は、搬送対象の棚130の突起440に篏合する凹部である。この凹部は、上方に移動して凸部としての突起440と篏合したとき、突起440の水平方向への相対移動を規制する。この構成により、ロック装置211のアウタ部品270によって、搬送対象側の凸部としての突起440の外周方向の全体を完全に覆うことができるので、突起440及び棚130の水平方向の全方向への移動を規制することが可能となる。これにより、ロック装置211による棚130との連結をより強固にできる。
【0079】
また、第1実施形態では、自律走行車120側の規制部としてのロック装置211のアウタ部品270を上昇させて、搬送対象側の棚130の突起440に篏合させる、という単純な動作を行うだけで、自律走行車120と棚130とを連結することができる。また、搬送対象側の棚130の係合要素には突起440のような単純な形状の凸部を設ければよいので、搬送対象側の係合要素を簡易に製造でき、また、小型化もできる。したがって、自律走行車と搬送対象との連結をより簡易かつより確実にできる。
【0080】
なお、上記の搬送対象側の棚130の係合要素を単純化することの効果は、搬送対象が複数の場合、すなわち、
図1を参照して説明したような、単一の自律走行車120につき複数の搬送対象(
図1では3つのキャスタ付き棚130、140、150)を使用するケースの場合に、搬送対象が備えるドッキング部のコストメリットが大きくなるので、特に顕著である。
【0081】
また、第1実施形態では、自律走行車120のドッキングユニット(ロック装置211)が棚検出用のセンサ(フォトリフレクタ291)を凹部の内側に配置する構成をとる。すなわち、フォトリフレクタ291が、上下動するアウタ部品270の内側に配置されるインナ部品260の上面に埋設される。この構成により、自律走行車120において、棚検出用のセンサをロック装置211の外側に配置しなくて済み、センサ搭載スペースを削減できるので、自律走行車120全体やロック装置211のデザイン性の向上や、部品小型化による原価低減が可能となる。
【0082】
なお、フォトリフレクタ291の設置位置は、例えば
図7などに示したように、インナ部品260の上面のうち中央に配置されるのが好ましい。インナ部品260の中央にフォトリフレクタ291を設置すると、ドッキング動作の際に、例えば自律走行車120と棚130との相対位置がずれた場合でも、水平方向の任意の方向に対して均等にずれ量を担保できる。
【0083】
[第2実施形態]
図14~
図18を参照して第2実施形態を説明する。第2実施形態は、第1実施形態に係る自律走行車と搬送対象との連結構造から、ロック装置(規制部)の構成を変更したものである。ロック装置以外の構成については第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0084】
図14は、第2実施形態に係るロック装置511の斜視図である。
図15は、
図14中のロック装置511のC-C断面図である。
図14に示す第2実施形態に係るロック装置511は、第1実施形態のロック装置211と同様に、搬送対象の棚130の突起440(凸部)に篏合する凹部である。ロック装置211の凹部は、上方に移動して突起440と篏合したとき、突起440の水平方向への相対移動を規制する。
【0085】
図14、
図15に示すように、ロック装置511は、基部550と、自律走行車120に基部250を介して固設されるアウタ部品570と、アウタ部品570の内周側に上下動可能に設けられるインナ部品560と、インナ部品560の内周側に設けられインナ部品560を支持するカバー部品590と、を有する。第2実施形態に係るロック装置511では、インナ部品560が上方に移動して突起440と篏合する。
【0086】
なお、
図14では、インナ部品560が突起440と篏合可能な高さ位置まで上昇している状態を図示している。なお、インナ部品560が最下部まで下降した状態では、
図15に示すように、インナ部品560の上端部と、アウタ部品570の上端部と、カバー部品590の上面とがほぼ面一となるように配置される。
【0087】
第2実施形態では、インナ部品560は棚130の円柱形状の突起440を篏合可能な円筒形状で形成されるが、少なくとも突起440を内部に収容できればよく、円形以外の環状でもよい。また、カバー部品590は、環状のインナ部品560が摺動可能となるように、z方向から視た断面がインナ部品560の内周面と同一形状となる柱体であればよく、本実施形態では円柱状である。同様に、アウタ部品570は、環状のインナ部品560が摺動可能となるように、z方向から視た断面がインナ部品560の外周面と同一形状となる環状であればよい。
【0088】
ロック装置511は、駆動部580を備える。駆動部580は、第1実施形態の駆動部280と同様の圧縮ばね付きソレノイドであり、ソレノイド本体581と、可動部582と、圧縮ばね583とを有する。駆動部580は、
図15に示すように、インナ部品560と連結されて、インナ部品560を上下動させる点が、第1実施形態の駆動部280と異なる。
【0089】
カバー部品590の上面には、フォトリフレクタ591(検出部)が上面に露出して設置される。フォトリフレクタ591は、第1実施形態のフォトリフレクタ291と同様に、「規制部(ロック装置511)が凸部(突起440)と対向する位置にあることを検出する検出部」として機能する。
【0090】
なお、
図14では、フォトリフレクタ591はカバー部品590の上面のうちx負方向側の端部に配置されているが、上面の他の位置に配置してもよい。特にカバー部品590の上面の中央に配置されるのが好ましい。カバー部品590の中央にフォトリフレクタ591を設置すると、ドッキング動作の際に、例えば自律走行車120と棚130との相対位置がずれた場合でも、水平方向の任意の方向に対して均等にずれ量を担保できる。
【0091】
ロック装置511は、リミットスイッチ593を備える。リミットスイッチの上方にはアーム部592が設けられる。アーム部592はインナ部品560に接続されており、インナ部品560と一体的に上下動する。アーム部592は、
図14に実線で示すように、インナ部品560が突起440と篏合可能な高さ位置まで上昇している状態のとき、リミットスイッチ593から離間して、リミットスイッチ593をオフ状態にできる高さ位置に設置されている。つまりインナ部品560が上限位置より下方にあるときは、
図14に点線で示すように、アーム部592がリミットスイッチ593を押下している状態が維持される。このアーム部592とリミットスイッチ593とは、第1実施形態のフォトインタラプタ292と同様に、ロック装置511のインナ部品560が突起440と篏合する位置まで上昇している状態を検知する機能を有する。例えば、ドッキング検出部313は、第2実施形態では、リミットスイッチ593がオフ状態のときに、インナ部品56が突起440と篏合する位置まで上昇している状態を検知して、ロック装置511のインナ部品560と棚130の突起440とのドッキングが成功したものと判定できる。
【0092】
次に、
図15~
図18を参照して、第2実施形態におけるドッキングの手順を説明する。
図15~
図18は、第2実施形態のロック装置511によるドッキング動作の第1~第4段階を示す図である。
図15~
図18の各図は、第1実施形態の
図10~
図13の(a)と対応する。すなわち、
図15~
図18の各段階における自律走行車120と棚130との位置関係は、
図10~
図13の(b)と同様である。
【0093】
ドッキング動作では、まずは
図3(a)に示したように、自律走行車120は、y正方向側の背面側から後退しながら、棚130の最下段400の下側のフレームガイド410、420の間に進入する。このとき、上下動制御部312はロック装置511の駆動部580のソレノイド本体581を作動させてソレノイド吸引状態としている。これにより、可動部582及びインナ部品560が下端位置に位置決めされ、インナ部品560の上端の位置がアウタ部品570の上端及びカバー部品590の上面と揃えられている(
図15参照)。このとき、
図14に示したように、インナ部品560に接続されるアーム部592はリミットスイッチ593を押下している。
【0094】
図15に示す第1段階では、
図15に矢印A1で示すように、自律走行車120は、y正方向側への進入を継続しつつ、フォトリフレクタ591による棚130の突起440の検知が行われる。
図15に示す状態より以前の段階では、自律走行車120の棚130への進入距離がまだ短いため、突起440のy負方向側(図面右側)の端部の位置にフォトリフレクタ591の検知範囲が到達していない。一方、
図15に示す状態では、
図15に点線円B1で示すように、自律走行車120の棚130への進入が進み、突起440のy負方向側の端部の位置にフォトリフレクタ591の直上の検知範囲が到達している。このとき棚位置検出部311は、棚130の突起440がロック装置511と対向する直上の位置にあることを検出する。
【0095】
次に
図16に示す第2段階では、突起440の検出に応じて、上下動制御部312がソレノイド本体581を非作動に切り替え、ソレノイド吸引を解除する。これにより、
図16に矢印A3で示すように、駆動部580の可動部582が圧縮ばね583の付勢力によって上昇し、矢印A4で示すように可動部582と連結されるインナ部品560も上昇する。このとき、
図16に点線円B2で示すように、インナ部品560はまだ突起440と篏合する位置まで到達していないため、インナ部品560の上端の一部が突起440の下端面441に突き当たる。
【0096】
このとき、圧縮ばね583による付勢力は依然として上向きに付加されているので、インナ部品560が突起440の端面と接触しつつ、上方に押し当てる状態となる。また、このとき、インナ部品560は突起440との篏合位置まで上昇できていない中間位置にあるので、インナ部品560に接続されるアーム部592(
図14参照)は、リミットスイッチ593から離間する位置まで上昇していない。このため、ドッキング検出部313によるドッキング完了の検出は行われない。したがって、
図16に矢印A2で示すように、走行制御部314は自律走行車120の進入を継続する。これにより、ロック装置511のインナ部品560は、棚130の突起440の下端面441に押し付けられながら、進入方向に沿って引き摺られる。
【0097】
次に
図17に示す第3段階では、自律走行車120の棚130への進入がさらに進み、棚130の突起440の直下にロック装置511が到達する。このとき、
図17に矢印A5、A6で示すように、上方に付勢されて突起440の下端面441に押し当てられていたロック装置511のインナ部品560(及び可動部582)がさらに上昇する。この結果、点線円B3で示すように、インナ部品560が突起440と篏合する。このとき、インナ部品560と連動してアーム部592も、リミットスイッチ593から離間する位置まで上昇したため、リミットスイッチ593がオフ状態に切り替えられて、ドッキング検出部313によるドッキング完了の検出が行われる。走行制御部314は、ドッキング完了の検出に応じて、自律走行車120の進入を停止させる。
【0098】
図17に示す第3段階の状態を維持することによって、自律走行車120は、棚130を連結して搬送可能となる。自律走行車120が棚130から離脱する際には
図18に示す第4段階に進む。
【0099】
次に
図18に示す第4段階では、上下動制御部312が駆動部580のソレノイド本体581を作動させてソレノイド吸引状態に切り替える。これにより、
図18に矢印A7で示すように、可動部582が下降して下端位置に位置決めされる。また、可動部582と連結するインナ部品560も矢印A8で示すように下降して下端位置に位置決めされ、インナ部品560の上端の位置がアウタ部品570の上端及びカバー部品590の上面と揃う位置まで戻される。この結果、ロック装置511と突起440とのドッキングが解除される。ドッキングが解除された状態で、
図18に矢印A9で示すように、自律走行車120が棚130への進入方向と逆方向に移動することによって、自律走行車120が棚130から離脱する。
【0100】
第2実施形態に係るロック装置511でも、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0101】
[変形例]
図19~
図21を参照して変形例を説明する。上記の第1、第2実施形態では、棚130に設けられる突起440と、自律走行車120に設けられるロック装置211のアウタ部品270又はロック装置511のインナ部品560とが篏合することによって、自律走行車120が搬送対象の棚130と連結する構成を例示した。つまり、搬送対象側の凸部としての突起440の外周の全体を、自律走行車120側の凹部としてのアウタ部品270又はインナ部品560が完全に覆うことによって、突起440及び棚130の水平方向の全方向の移動を規制する構成を例示した。しかし、ロック装置211、511による突起440の規制方向は、少なくとも自律走行車120の前進後退方向であればよく、突起440(凸部)とロック装置211、511(規制部)との係合構造は他の構成でもよい。
図19~
図21に示す例は、篏合以外の係合構造の一例としての挟持の構成例である。
【0102】
図19は、自律走行車と搬送対象との連結構造の第1変形例を示す模式図である。円柱状の凸部600は、棚130などの搬送対象に設けられる。自律走行車120には、規制部として、上下動可能な4枚の板材601、602、603、604が設けられる。板材601、602、603、604は、それぞれが円柱状の凸部600の中心軸に向いて、凸部600の外周側に配置されている。板材601と板材603とがy方向に対向して配置され、板材602と板材604とがx方向に対向して配置される。
【0103】
図19の例では、4枚の板材601、602、603、604が上昇したときに、凸部600の外周側に配置され、これにより、少なくとも4枚の板材601、602、603、604が対向するx方向及びy方向への凸部600の相対移動を規制できる。
【0104】
なお、
図19に例示する規制部は、板材601、602、603、604の枚数を4枚以外としてもよい。例えば、円柱状の凸部600を包囲する板材の数を4枚より多くしてもよい。また、
図19では4枚の板材601、602、603、604を凸部600の外周を囲むよう配置していたが、これら4つの板材を「ロ」の字型に繋げた一続きの部材を規制部として用いて良い。
【0105】
図20は、自律走行車と搬送対象との連結構造の第2変形例を示す模式図である。凸部610は、z方向から視た断面が略十字状であり、z方向に延在して形成され、棚130などの搬送対象に設けられる。自律走行車120には、規制部として、上下動可能な4本の棒材611、612、613、614が設けられる。棒材611、612、613、614は、凸部610と同様にz方向に延在する。
【0106】
図20の例では、4枚の棒材611、612、613、614が上昇したときに、凸部610の十字形状の四か所の窪んだ部分にそれぞれが配置され、これにより、少なくとも4本の棒材611、612、613、614の配列方向であるx方向及びy方向への凸部610の相対移動を規制できる。
【0107】
図21は、自律走行車と搬送対象との連結構造の第3変形例を示す模式図である。四角柱状の凸部620は、z方向に延在して形成され、棚130などの搬送対象に設けられる。自律走行車120には、規制部として、上下動可能な2枚の板材621、622が設けられる。板材621と板材622とはy方向に対向して配置され、凸部620のy方向外周側に配置されている。
【0108】
図21の例では、2枚の板材621、622が上昇したときに、凸部620のy方向両側にそれぞれが配置され、これにより、2枚の板材621、622の対向方向であるy方向への凸部620の相対移動を規制できる。
【0109】
図19~
図21に例示したように、自律走行車120側に設けられる規制部は、必ずしも搬送対象側に設けられる凸部の水平方向の全体を覆う凹部である必要はなく、水平方向の一部が開口するものでもよい。また、例えば挟み込みなどの篏合以外の係合手法を適用してもよい。上述のように、自律走行車120に設けられ、上下動可能であり、上方に移動して搬送対象側の凸部と係合したとき自律走行車120の少なくとも前進後退方向への凸部の相対移動を規制する機能を発揮できればよい。自律走行車120の幅方向(x方向)への凸部の相対移動の規制は、例えば棚130に設けられ、自律走行車120が棚130とドッキングしたときに自律走行車120の幅方向両側に配置されるフレームガイド410、420など、他の要素によって実施する構成でもよい。
【0110】
また、連結構造のうち自律走行車120側に設けられる連結要素の凹部の形状は、搬送対象側に設けられる連結要素の凸部の形状と非同一でもよい。例えば、凸部が円柱形状の場合に、凹部のz方向視の形状を、幅方向(x方向)を長軸とする長円形状としてもよい。このとき、自律走行車120の前進後退方向(y方向)の短軸の長さは、凸部の円柱形状の径とほぼ同一であるのが好ましい。凹部を幅方向に長く形成するほど、ドッキングシーケンスにおいて自律走行車120が搬送対象の棚130の下部に進入する際に、仮に自律走行車120と棚130との幅方向の相対位置がずれたとしても、凹部の移動経路上に確実に凸部が位置するようになる。これにより、より確実に自律走行車120と棚130との連結を行うことができる。
【0111】
なお、上記実施形態では、ドッキングシーケンスにおいて、ロック装置211のアウタ部品270又はロック装置511のインナ部品560を棚130の突起440に篏合させる前に、アウタ部品270又はインナ部品560が突起440の下端面441に押し付けられながら、自律走行車120の進入方向に沿って引き摺られる中間状態をつくる構成を例示したが、このような中間状態を設けずに、アウタ部品270又はインナ部品560を上昇させたときに即座に突起440と篏合する構成としてもよい。
【0112】
また、本実施形態に係る自律走行車と搬送対象との連結構造では、上記の突起440のように、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される。
図22を参照して、この構成による効果を説明する。
【0113】
図22は、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成による効果を説明するための模式図である。
図22の(a)は、上記の第1、第2実施形態の連結構造を簡略化して表している。すなわち、搬送対象の棚130に設けられる連結要素は、凸部としての突起440であり、自律走行車120側の連結要素は、凹部としてのロック装置211である。一方、
図22の(b)は、実施形態の構成とは反対に、搬送対象側の連結要素が凹部であり、自律走行車120側の連結要素が凸部である。
図22(b)の例では、凹部の一例として、棚130の最下段400に設けられる孔440Aを挙げ、凸部の一例として、この孔440Aに挿入可能なピン211Aを挙げる。
【0114】
図22(a)に示すように、実施形態の構成では、ロック装置211と突起440とが連結された状態で自律走行車120が走行すると、ロック装置211の凹部の内周面と突起440の外周面とを介して駆動力が棚130に伝達される。このとき、自律走行車120側の駆動力の伝達に着目すると、作用点はロック装置211の凹部の内周面と突起440の外周面との接点X1であり、支点はロック装置211と自律走行車120との接続部Yである。支点と作用点との間の距離をL1とする。また、
図22では、自律走行車120の移動方向を矢印Zで示す。
【0115】
一方、
図22(b)に示すように、搬送対象側の連結要素を孔440Aとする構成では、作用点は孔440Aの内周面とピン211Aとの接点X2となる。孔440Aは棚130の最下段400に設けられるので、接点X2の位置も最下段400の位置となり、(a)の場合よりも上方となる。支点はピン211Aと自律走行車120との接続部Yであり、(a)と同じである。このため、支点と作用点との間の距離L2は、(a)の場合の距離l1よりも大きくなる。
【0116】
したがって、
図22(a)に示す実施形態の構成、すなわち、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成のほうが、
図22(b)に示す搬送対象側が凹部の構成よりも、自律走行車120が同様の駆動力を棚130に付加する場合には支点(接続部Y)にかかるモーメントが小さくなる。これにより、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成とすることによって、自律走行車120と連結要素との接続部にかかる負荷を低減することができ、製品寿命を延ばすことができると考えられる。
【0117】
ここで、実施形態の構成とは反対の、搬送対象側の連結要素が凹部であり、自律走行車120側の連結要素が凸部である構成は、
図22(b)に例示した棚130の最下段400に孔440Aを設けるパターン以外の構成もあり得る。
図23は、搬送対象側の連結要素の凹部の他の構成例を示す模式図である。例えば
図23に示すように、搬送対象側の連結要素の凹部として、例えば筒状部材440Bなど、下方に開口して上方に窪むよう形成される凹部品を棚130の最下段400の下面から下方に突出するように設置する構成が考えられる。
図23に示す構成の場合、自律走行車120に設けられる、
図22(b)と同様のピンなどの凸状の可動部材211Bが、筒状部材440Bの直下に到達したときに上昇する。これにより、可動部材211Bの先端部が筒状部材440Bの内部に貫入されて
図23に示す状態となり、自律走行車120と棚130とが連結される。
【0118】
図23に示すような筒状部材440Bなどの凹部品を用いる構成に対しては、本実施形態の構成はさらに下記の効果を奏することができる。
【0119】
図24は、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成によるさらなる効果を説明するための模式図である。
図24(a)は、
図23に示した本実施形態とは反対の構成(搬送対象側の連結要素が凹部)の場合の、自律走行車120側の棚検出用のセンサ(フォトリフレクタ291)による、棚側の連結要素(筒状部材440B)の検出範囲を斜線で示している。
図24(a)では、センサの検出範囲は筒状部材440Bの下端面の円環状となる。
【0120】
一方、
図24(b)は、
図22(a)に示した本実施形態の構成(搬送対象側の連結要素が凸部)の場合の、自律走行車120側の棚検出用のセンサ(フォトリフレクタ291)による、棚側の連結要素(突起440)の検出範囲を斜線で示している。
図24(b)では、センサの検出範囲は突起440の下端面の円形状となる。ここで、
図24(b)のセンサ検出範囲の円形状の大きさは、
図24(a)のセンサ検出範囲の円環状の内部円とほぼ同等である。
【0121】
図24(a)、(b)には、自律走行車120の移動方向を
図22、
図23と同様に矢印Zで示し、自律走行車120の移動中にセンサが棚側の係合要素を検出可能な区間をそれぞれ矢印L3、L4で示す。
図24(a)の矢印L3で示す区間は円環状の縁の幅だけであるのに対して、
図24(b)の矢印L4で示す区間は円形状の直径分あり、相対的に大きくなる。したがって、
図24(b)に示す実施形態の構成、すなわち、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成のほうが、
図24(a)に示す搬送対象側が凹部の構成よりも、棚検出用のセンサ(フォトリフレクタ291)が反応できる距離が増えるので、棚検出の精度を向上できる。さらに、反応距離が増えると、センサのサンプリング周期を低くでき、また、自律走行車120の移動速度を上げることができる。
【0122】
図25は、搬送対象側の連結要素が凸部で形成される構成による別の効果を説明するための模式図である。
図25(a)は、
図23に示した本実施形態とは反対の構成(搬送対象側の連結要素が凹部)の場合の、連結部分を拡大視した模式図である。
図25(b)は、
図22(a)に示した本実施形態の構成(搬送対象側の連結要素が凸部)の場合の、連結部分を拡大視した模式図である。
【0123】
図25(a)に示すように、搬送対象側の連結要素が凹部の構成では、自律走行車120側の連結要素である凸部(可動部材211B)の全体が上下動するため、配線の断線リスクを考慮すると、棚検出センサ(フォトリフレクタ291)を可動部材211Bの外側(例えば進行方向の前方側)に配置する必要がある。このため、ドッキングシーケンスでは、凸部211Bが凹部(筒状部材440B)の真下に来る前にセンサが棚を検知して凸部211Bの上昇が始まってしまう。このとき、例えば自律走行車120が棚130と接触するなどの原因によって、
図25(a)に矢印C1で示すように棚130が少しでも動いた場合に、凸部211Bと凹部440Bとの相対位置もずれてしまうため、矢印C2で示すように凸部211Bが凹部440Bの内部に篏合することができず、ドッキングが失敗する場合がある。
【0124】
これに対して本実施形態では、
図25(b)に示すように、自律走行車120側の連結要素である凹部(ロック装置211)の内側の部分は上下動しないので、凹部内側(好ましくは中央)に棚検出センサ(フォトリフレクタ291)を配置できる。これにより、
図25(a)の構成と比較して、凹部211が凸部(突起440)の真下により近い位置まで到達した後に凹部211を上昇させることが可能となる。したがって、
図25(b)に矢印C1で示すように棚130が動いて凹部211と凸部440との相対位置も多少ずれた場合でも、矢印C3で示すように凹部211が凸部440の下端面に突き当たるので、引き続き自律走行車120が進行方向に移動すれば凹部211を凸部440に篏合でき、ドッキングの失敗する可能性を低減できる。
【0125】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素及びその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。