(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】脱離用プライマー組成物層を有する積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20241224BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20241224BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20241224BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20241224BHJP
C09D 179/02 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B32B7/06
C09D5/20
C09D7/65
C09D7/63
C09D179/02
(21)【出願番号】P 2022146375
(22)【出願日】2022-09-14
【審査請求日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2021194607
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】冨浦 伊武樹
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 京平
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-090627(JP,A)
【文献】特開2015-174999(JP,A)
【文献】特開2021-138784(JP,A)
【文献】特開2004-123895(JP,A)
【文献】特開2003-171486(JP,A)
【文献】特開2021-187896(JP,A)
【文献】特開2018-012819(JP,A)
【文献】特開2018-002905(JP,A)
【文献】特開2020-175620(JP,A)
【文献】特開平6-322514(JP,A)
【文献】特開平7-279099(JP,A)
【文献】特開2021-119235(JP,A)
【文献】特開2021-98546(JP,A)
【文献】特開2001-277445(JP,A)
【文献】特開2023-50125(JP,A)
【文献】特開2006-161005(JP,A)
【文献】特開2001-121658(JP,A)
【文献】特開2023-81286(JP,A)
【文献】特開2023-81284(JP,A)
【文献】特開2022-147623(JP,A)
【文献】特開2016-107592(JP,A)
【文献】特開2007-22033(JP,A)
【文献】特許第7306552(JP,B1)
【文献】特許第7292543(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、シーラント層の順に積層してなる積層体であって、脱離用プライマー層を形成するための脱離用プライマー組成物が、アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物である積層体。
【請求項2】
アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物が、下記a.~d.から選ばれた1種以上を含有する請求項1に記載の積層体。
a.ポリブタジエン系化合物
b.ポリエチレンイミン化合物
c.ポリエチレンイミン化合物と、グリシジル基含有シランカップリング剤及び/又はイソシアネート基含有シランカップリング剤を含有する混合物
d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物
【請求項3】
該積層体が、下記(1)~(3)のいずれかである請求項1又は2に記載の積層体。
(1)樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、接着剤層、脱離用プライマー層、及びドライラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
(2)押出しラミネートの場合:樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、アンカーコート剤、押出しラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
(3)押出しラミネートの場合:樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、押出しラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
【請求項4】
ポリエチレンイミン化合物、及びシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物の数平均分子量が、それぞれ独立して1,000~200,000である請求項1又は2記載の積層体。
【請求項5】
ポリエチレンイミン化合物、及びシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物の質量平均分子量が、それぞれ独立して4,000~800,000である請求項1又は2記載の積層体。
【請求項6】
ポリブタジエン系化合物が、水酸基含有ポリブタジエン化合物及び/又はカルボキシル基含有ポリブタジエン化合物である請求項1又は2に記載の脱離用プライマー組成物を用いた積層体。
【請求項7】
シーラント層が、無延伸プラスチックフィルム又は溶融された樹脂から形成されてなる請求項1又は2に記載の脱離用プライマー組成物を用いた積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱離用プライマー組成物層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、菓子、生活雑貨、ペットフード等には意匠性、経済性、内容物保護性、輸送性等の点から、各種プラスチックフィルムを使用した包装材料が使用されている。また、多くの包装材料には、消費者へアピールする意匠性、メッセージ性の付与を意図してグラビア印刷やフレキソ印刷が施されている。
そしてこれらの包装材料を得るために、包装材料の基材フィルムの表面に印刷される刷りっぱなし印刷、あるいは包装材料の基材フィルムの表面に印刷した印刷面に必要に応じて接着剤やアンカー剤を塗布し、基材フィルムにラミネート加工を施すための印刷が行われる。
ラミネート加工を施すための印刷では、ポリエステル、ナイロン、アルミニウム箔等の各種基材フィルム上に色インキ組成物、白インキ組成物を順次印刷後、該白インキ組成物の印刷層上に、接着剤を用いたドライラミネート加工や、アンカーコート剤を用いたエクストルージョンラミネート加工等によりヒートシールを目的としたポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等が積層されている(特許文献1参照)。
【0003】
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品は海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類等の海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念される。
【0004】
このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みの1つとして、印刷インキ組成物を積層した積層体から、積層体のプラスチック基材を脱離するリサイクル方法が提案されている。積層体プラスチック基材を脱離する方法としては、脱離用インキ組成物(例えば、特許文献2参照)、脱離用接着剤(例えば、特許文献3参照)、脱離用アンカーコート剤等(例えば、特許文献4~6参照)、脱離液(例えば、特許文献7参照)が提案されている。 しかし、これらの方法では、脱離液として、温水で脱離させることは十分ではなく、ラミネート印刷インキ組成物で使用する場合は、ラミネート適性、レトルト適性が不十分である問題を有していた。また、これらの特許で記載されている積層体では、シーラント層に無延伸プラスチックフィルムを用いた場合、印刷層と無延伸プラスチックフィルムの脱離が不十分である問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-97959号公報
【文献】特許第6631964号公報
【文献】特許第6642688号公報
【文献】特許第6388131号公報
【文献】特開2020-175620号公報
【文献】国際公開第2021/090690号
【文献】特許第6690806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂基材やシーラント層から印刷層をより簡単に脱離液により分離脱離しやすく、且つ、ラミネート適性が優れる脱離用プライマー組成物層を有する積層体を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記の積層体とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、シーラント層の順に積層してなる積層体であって、脱離用プライマー層を形成するための脱離用プライマー組成物が、アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物である積層体。
2.アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物が、下記a.~d.から選ばれた1種以上を含有する1に記載の積層体。
a.ポリブタジエン系化合物
b.ポリエチレンイミン化合物
c.ポリエチレンイミン化合物と、グリシジル基含有シランカップリング剤及び/又はイソシアネート基含有シランカップリング剤を含有する混合物
d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物
3.該積層体が、下記(1)~(3)のいずれかである1又は2に記載の積層体。
(1)樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、接着剤層、脱離用プライマー層、及びドライラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
(2)押出しラミネートの場合:樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、アンカーコート剤、押出しラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
(3)押出しラミネートの場合:樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、押出しラミネートにより形成されたシーラント層を順に有する積層体。
4.ポリエチレンイミン化合物、及びシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物の数平均分子量が、それぞれ独立して1,000~200,000である1~3のいずれかに記載の積層体。
5.ポリエチレンイミン化合物、及びシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物の質量平均分子量が、それぞれ独立して4,000~800,000である1~4のいずれかに記載の積層体。
6.ポリブタジエン系化合物が、水酸基含有ポリブタジエン化合物及び/又はカルボキシル基含有ポリブタジエン化合物である1~5のいずれかに記載の脱離用プライマー組成物を用いた積層体。
7.シーラント層が、無延伸プラスチックフィルム又は溶融された樹脂から形成されてなる1~6のいずれかに記載の脱離用プライマー組成物を用いた積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明は、樹脂基材やシーラント層から印刷層をより簡単に脱離液により分離脱離でき、且つ、ラミネート適性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、シーラント層の順に形成される積層体であって、脱離用プライマー層を形成する脱離用プライマー組成物が、アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物である積層体である。
また、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、接着剤層、脱離用プライマー層の順に形成される印刷物においては、任意のそれらの層の間等に、更に公知の任意の層を形成しても良い。
【0010】
[樹脂基材]
樹脂基材として、従来からラミネート用印刷インキに使用されているものを使用できる。
具体的には、耐水性、耐熱性、耐衝撃性があり、防湿性やガス遮断性にも優れる、二軸延伸ポリプロピレン、ポリエステル、延伸ナイロン、透明蒸着フィルム等、が好ましい。
【0011】
[脱離用プライマー層]
本発明中の脱離用プライマー層は、樹脂基材表面と印刷層の間、及び印刷層とシーラント層の間に設けられる。そして印刷物を使用した後に再利用を行うにあたり、樹脂基材とその上に形成された印刷層とを分離し、かつ、シーラント層と印刷層とを分離して、印刷層を基材、シーラント層から脱離させるための脱離用プライマー層である。
脱離用プライマー層を形成するための脱離用プライマー組成物について説明する。
本発明は、特定の脱離用プライマー層を有する積層体である。例えば、樹脂基材の表面と印刷層の間に設けられる脱離用プライマー層は、基材上に形成した印刷面に、更にアンカーコート層を形成し、その上に樹脂フィルム等をラミネートする際の、アンカーコート剤とはその用途及び求める性質において異なる。
脱離用プライマー組成物は、樹脂基材に印刷インキ組成物で印刷する前に、予め脱離用プライマー層を形成させておくための組成物である。
さらに、脱離用プライマー組成物は、印刷層とシーラント層をドライラミネートする前に、シーラント層に、予め脱離用プライマー層を形成させておくためにも用いられてもよい。
さらに、脱離用プライマー組成物は、印刷層とシーラント層を押出しラミネートする前に、印刷層とシーラント層の間に、予め脱離用プライマー層を形成させておくためにも用いられてもよい。
樹脂基材と印刷層の間に位置するように設けられた脱離用プライマー層を形成するための脱離用プライマー組成物と、印刷層とシーラント層の間に位置するように設けられた脱離用プライマー層を形成するための脱離用プライマー組成物は、同一であっても、異なっていてもよい。
脱離用プライマー組成物は、アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又、はポリブタジエン系化合物を含有する。
【0012】
アミン価が5.0~25.0mmol/gであるポリエチレンイミン系化合物、及び/又は、ポリブタジエン系化合物を含有する脱離用プライマー組成物は、a.~d.から選ばれた1種以上を含有する。
a.ポリブタジエン系化合物
b.ポリエチレンイミン化合物
c.ポリエチレンイミン化合物とグリシジル基含有シランカップリング剤及び/又はイソシアネート基含有シランカップリング剤を含有する混合物
d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物
【0013】
(a.ポリブタジエン系化合物)
ポリブタジエン系化合物としては、水性の組成物であることが好ましい。水性とするため、かつ密着性を向上させるために、ポリブタジエン化合物に水酸基やカルボキシル基を導入した、水酸基含有ポリブタジエン化合物や、カルボキシル基含有ポリブタジエン化合物が好ましい。なお、ポリブタジエン化合物は架橋されていないことが脱離性を発揮する上で好ましい。具体的には、EL-451(東洋モートン社)、T-180E(日本曹達社)等が挙げられる。
【0014】
(b.ポリエチレンイミン化合物)
ポリエチレンイミン化合物としては、ポリエチレンイミン化合物のアミン価が15.0~25.0mmol/gであり、中でも16.0mmol/g以上が好ましく、20.0mmol/g以下が好ましい。
また、分子内のアミノ基のうち、1級アミノ基から3級アミノ基のそれぞれの基を全て有するポリエチレンイミン系化合物が好ましく、中でも、各アミノ基の数に基づく含有率として、2級アミノ基が1級及び3級アミノ基よりも多く含有することが好ましく、更に1級から3級までの全アミノ基中の2級アミノ基の含有量が、基の数で40%以上であることがより好ましい。これらの範囲内であるほど、脱離を容易に行うことができる。
なお、b.ポリエチレンイミン化合物は、d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を包含せず、d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物はb.ポリエチレンイミン化合物とは異なる化合物である。
【0015】
(c.ポリエチレンイミン化合物とグリシジル基含有シランカップリング剤及びイソシアネート基含有シランカップリング剤から選ばれた1種以上を含有する混合物)
ラミネート適性を向上させる場合は、上記ポリエチレンイミン化合物に、さらに、グリシジル基及び/イソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させることが好ましい。
ポリエチレンイミン化合物としては、上記(b)で記載したものと同様なポリエチレンイミン化合物が使用でき、このポリエチレンイミン化合物は、d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を包含しない。
グリシジル基を含有するシランカップリング剤としては、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメトキシジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメトキシジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。イソシアネート基を含有するシランカップリング剤としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリエトキシシラン、2-イソシアネートエチルトリメトキシシラン等が例示できる。レトルト後のラミネート適性の点より、グリシジル基を含有するシランカップリング剤、イソシアネート基を含有するシランカップリング剤は、グリシジル基を含有するシランカップリング剤、イソシアネート基を含有するシランカップリング剤は、(ポリエチレンイミン系化合物のアミノ基の数)に対する、(シランカップリング剤のグリシジル基の数+イソシアネート基の数)の比((シランカップリング剤のグリシジル基の数+シランカップリング剤のイソシアネート基の数)/ポリエチレンイミン系化合物の1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計)が0.20~2.50となるように配合することが好ましい。そして、0.30以上がより好ましく、0.50以上が更に好ましく、2.20以下がより好ましく、1.90以下が更に好ましい。
なお、アミノ基の数は1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計である。
この、(ポリエチレンイミン系化合物のアミノ基の数)に対する、(シランカップリング剤のグリシジル基の数+イソシアネート基の数)の比(シランカップリング剤のグリシジル基の数+イソシアネート基の数/ポリエチレンイミン系化合物の1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計)比は、以下の考えの式により求めることができる。
[(グリシジル基含有シランカップリング剤の塗布量(g/m2)×1分子中の平均グリシジル基数)/グリシジル基含有シランカップリング剤の平均分子量(g/mmol)]+[(イソシアネート基含有シランカップリング剤の塗布量(g/m2)×1分子中の平均イソシアネート基数)/イソシアネート基含有シランカップリング剤の平均分子量(g/mmol)]を、[(ポリエチレンイミン系化合物塗布量(g/m2)×アミン価(mmol/g))×(1分子中の平均(1級アミノ基の数+2級アミノ基の数))/(1分子中の平均(1級アミノ基の数+2級アミノ基の数+3級アミノ基の数))]で割った値。
なお、本発明における脱離用プライマー組成物が、b.ポリエチレンイミン化合物と、c.ポリエチレンイミン化合物と、グリシジル基含有シランカップリング剤及び/又はイソシアネート基含有シランカップリング剤を含有する混合物を、選んで含有する際には、これらはポリエチレンイミン化合物を含有する点において重複するので、実質的にc.ポリエチレンイミン化合物と、グリシジル基含有シランカップリング剤及び/又はイソシアネート基含有シランカップリング剤を含有する混合物を選択したことになる。
【0016】
(d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物)
ラミネート適性を向上させる場合は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を使用することができる。シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物のアミン価は、5.0mmol/g以上が好ましく、15.0mmol/g以下が好ましい。
シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物としては、ポリエチレンイミンと、式:R-Z-SiY3
[式中、Rは、イソシアネート基、オキシラニル基、グリシドキシ基、アクリロキシ基、カルボエトキシ基、カルボメトキシ基、ビニルスルホニル基、及びアクリルアミド基からなる群から選択されるアミン反応性基を表し、Zは炭素原子を含有する二価の有機基を表し、各Yは独立して加水分解性基を表す]で表される少なくとも1種のアミン反応性の加水分解性オルガノシランであるシランカップリング剤と、を含む成分の反応によって得られるシランカップリング剤変性ポリエチレンイミン化合物が使用できる。
このシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物は、上記シランカップリング剤の基Rとポリエチレンイミンのアミノ基が反応をして、ポリエチレンイミンに上記シランカップリング剤が結合した構造を有する。但し、上記のように、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物は所定のアミン価を有することが好ましい。
本発明にてプライマー組成物に含有されてもよい上記(b),(c)中のポリエチレンイミン化合物、及び、(d)中のシロキサン変性ポリエチレンイミン化合物の分子量としては、ラミネート適性の点より数平均分子量は、それぞれ独立して1,000~200,000であるものが好ましい。また、質量平均分子量が、それぞれ独立して4,000~800,000であるものが好ましい。
なお、d.シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物は、上記b.ポリエチレンイミン化合物及びc.のポリエチレンイミン化合物には包含されず、ポリエチレンイミン化合物とは異なる化合物である。
【0017】
(脱離用プライマー組成物)
脱離用プライマー組成物は、上記の各成分を含有し、さらに、水と、アルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールの1種以上を混合してなる溶剤を基礎とすることが好ましい。
(脱離用プライマー層)
樹脂基材と印刷層との間、印刷層とシーラント層との間に設けられる脱離用プライマー用組成物層は、脱離用プライマー組成物の塗布量(固形分)として、0.010g/m2以上が好ましく、0.015g/m2以上がより好ましい。また0.400g/m2以下が好ましく、0.300g/m2以下がより好ましく、0.200g/m2以下が更に好ましい。
【0018】
[印刷層]
印刷層は、ラミネート用印刷インキ組成物により形成される。
ラミネート用印刷インキ組成物は、従来から使用されているラミネート用印刷インキ組成物が利用できる。
<ラミネート用印刷に使用するラミネート用印刷インキ組成物>
ラミネート用印刷インキ組成物は、顔料、バインダー樹脂、各種の添加剤及び溶剤を含有する。そして下記の組成に限定されない。
【0019】
(顔料)
ラミネート用印刷インキ組成物にて使用される顔料としては、従来からラミネート用印刷インキ組成物に使用されている公知の無機及び有機顔料のうちの1種以上を使用できる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、体質顔料としては、シリカ粒子、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等を挙げることができる。なかでも白色顔料として酸化チタンを使用することが好ましい。
有機顔料としては、例えば、油溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環系顔料等を挙げることができる。
これら顔料の印刷インキ組成物中での含有量は、通常1~50質量%程度である。
【0020】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、好ましくは、印刷インキ組成物の安定性、接着性及びラミネート適性の点からアミン価を有するポリウレタン樹脂を含む。
(ポリウレタン樹脂)
上記ポリウレタン樹脂としては、酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されているポリウレタン樹脂を含有してもよい。酸変性されていないポリウレタン樹脂とは、分子末端及び/又は分子内のその他の箇所にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有しないポリウレタン樹脂である。酸変性されているポリウレタン樹脂としては、分子末端及び/又は分子内のその他の箇所にカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有するポリウレタン樹脂である。
酸変性されているポリウレタン樹脂をビヒクルとしたインキ組成物で形成されたとしても、又は酸変性されていないポリウレタン樹脂等の本来脱離が困難な樹脂をビヒクルとしたインキ組成物で形成されたとしても、印刷層は樹脂基材から円滑に脱離できる。
【0021】
このようなポリウレタン樹脂として、印刷インキ組成物で一般的に用いられているポリウレタン樹脂を使用できる。
中でも、印刷インキ組成物の経時安定性、接着性及びラミネート適性の点からみて、アミノ基を有する(アミン価を有する)ポリウレタン樹脂が好ましい。アミノ基を有するポリウレタン樹脂の中でも、分子の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上、特に分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂がより好ましい。
更に好ましくは、水酸基を有し、及び分子の末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上を有するポリウレタン樹脂である。
ポリウレタン樹脂は、上記アミノ基のような特定の官能基を有することで、ラミネート用印刷インキ組成物として優れた印刷適性及び接着性を有することになる。
上記ポリウレタン樹脂のアミン価は、1.0~15.0mgKOH/gであることが好ましく、2.0~8.0mgKOH/gであることがより好ましい。
上記アミン価が1.0mgKOH/g未満であると、本発明のフィルム用印刷インキ組成物のフィルムに対する接着性が低下し、更に、ラミネート適性が低下する可能性があり、上記アミン価が15.0mgKOH/gを超えると、耐ブロッキング性が低下する可能性がある。
なお、本発明において、上記アミン価は固形分1gあたりのアミン価を意味し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法(例えば、COMTITE(AUTO TITRATOR COM-900、BURET B-900、TITSTATION K-900)、平沼産業社)によって測定した後、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
また、ポリウレタン樹脂は、再溶解性の点から分子内及び分子末端に水酸基を有することが好ましい。
【0022】
(酸変性されていないポリウレタン樹脂)
酸変性されていないポリウレタン樹脂としては、ポリウレタンポリウレア樹脂、及び/又はポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタンポリウレア樹脂が好ましい。
ポリウレタンポリウレア樹脂は、有機ジイソシアネート成分と高分子ジオール成分から得たウレタンプレポリマーを、鎖伸長及び/又は末端停止させてポリウレタンポリウレア樹脂としたものである。
そして、ケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタンポリウレア樹脂は、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤として、a.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を、ウレタンプレポリマーと反応させて得られたポリウレタンポリウレア樹脂、b.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を、ウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行って得られるポリウレタンポリウレア樹脂、のa及び/又はbを使用することにより得られる裏刷り印刷インキ組成物のアミン臭が低下し、経時安定性が優れる。
ポリウレタンポリウレア樹脂は、環境面を考慮するとバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有していてもよい。
【0023】
(酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂)
酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂は、分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有する。
更に好ましくは、水酸基を有し、及び分子の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる1種以上を有する酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂である。
これらのポリウレタンポリウレア樹脂としては、有機ジイソシアネート化合物と、高分子ジオール化合物との反応によりウレタンプレポリマーを合成し、これに下記の鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を好適に使用できる。
【0024】
(ウレタンプレポリマーの合成)
上記の各ウレタンプレポリマーは、以下の有機ジイソシアネート化合物と、高分子ジオール化合物を反応して得る。
【0025】
(有機ジイソシアネート化合物)
上記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート(水添MDI)等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物が挙げられる。これらの有機ジイソシアネート化合物は、1種又は2種以上を混合して使用できる。中でも脂環族ジイソシアネート化合物、脂肪族ジイソシアネート化合物及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物がより好ましい。
【0026】
また、その他の有機ジイソシアネート化合物として、1,3-及び/又は1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4-ジイソシアナトビフェニル、3,3-ジメチル-4,4-ジイソシアナトビフェニル等の芳香族ジイソシアネート化合物、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)等の脂環族ジイソシアネート化合物、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、m-及び/又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物も利用できる。
その他の有機ジイソシアネート化合物を併用する場合には、全有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基数の合計に対して、その他の有機ジイソシアネート化合物のイソシアネート基の数が50%以下となるように併用できるが、より好ましくは30%以下、更に好ましくは10%以下である。
又は全有機ジイソシアネート化合物100質量部中、その他の有機ジイソシアネート化合物を50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0027】
(高分子ジオール化合物)
上記高分子ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上を縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
更に上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を1種又は2種以上混合して併用することもできる。
また、上記高分子ジオール化合物としては、数平均分子量が1,000~8,000のものが好ましく、1,000~5,500のものがより好ましく、1,000~4,000のものが更に好ましい。
また、上記高分子ジオール化合物としては、3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールを含有するものを選択できる。
このとき、その他の高分子ジオール化合物として、下記のものを併用することができる。
3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール以外の高分子ジオール化合物としては、アジピン酸、セバシン酸、無水フタル酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物、更に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物等が挙げられる。これらの高分子ジオール化合物を、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0028】
上記の中でも、アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールを縮合反応させて得られた数平均分子量が1,000~8,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましく、更に数平均分子量1,000~4,000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオールが好ましい。
その他の高分子ジオール化合物を併用する場合には、全高分子ジオール化合物の水酸基数の合計に対する、その他の高分子ジオール化合物の水酸基の数が70%以下となるように併用できるが、より好ましくは55%以下、更に好ましくは40%以下である。
又は全高分子ジオール化合物100質量部中、その他の高分子ジオール化合物を50質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
なお、ラミネート用印刷インキ組成物の有機溶剤が、後述するエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤系(以下場合により「混合液」という。)を用いる場合には、高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物、好ましくはポリプロピレングリコールを使用すると、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、また、階調再現性、かぶり防止性等の印刷適性が良好となる傾向があり、必要とする性能に合わせて幅広く印刷インキ組成物の設計が可能となる点で好ましい。
【0029】
(酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂)
ポリウレタン樹脂としては、環境面を考慮すると酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有していてもよい。酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂について以下に説明する。なお、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の説明のうち、上記した酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂と共通する説明は適宜省略する。
酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂は、バイオマス由来(植物由来)の成分を含むポリウレタン樹脂である。酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂は、他の枯渇性資源を用いる場合と比較して地球温暖化防止や環境負荷低減の点で貢献できる。そして、バイオポリエステルポリオール化合物と有機ジイソシアネート化合物との反応によりバイオマスウレタンプレポリマーを合成し、これに必要に応じて鎖伸長剤、反応停止剤を反応させて得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂であることが好ましく、イソシアネート化合物が植物由来のバイオイソシアネートであることがより好ましい。
【0030】
(イソシアネート化合物)
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂で説明した有機ジイソシアネート以外に植物油由来のジイソシアネートを使用できる。植物油由来の有機ジイソシアネート化合物としては、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、更に、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のバイオポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リジンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。
【0031】
(バイオポリエステルポリオール化合物)
以下、バイオポリエステルポリオール化合物(バイオマスポリエステルポリオール)について説明する。
環境面を考慮して、バイオポリエステルポリオール化合物の中でも、上記のその他の高分子ジオール化合物として、植物由来の成分を含む材料から合成して得たバイオポリエステルポリオール化合物を併用しても良い。
また、バイオポリエステルポリオール化合物を含むポリエステルポリオール化合物と、上記の特定のイソシアネート化合物との反応により得た酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂を、本発明中の酸変性していないポリウレタンポリウレア樹脂に混合して使用することもできる。
このため、上記のバイオポリエステルポリオール化合物として、炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物と、カルボン酸化合物とを反応させたバイオポリエステルポリオールを採用できる。バイオポリオール成分は、短鎖ジオール化合物及びカルボン酸化合物のうち、少なくともいずれか一方が植物由来であることがより好ましく、両方が植物由来であることが更に好ましい。
植物由来の炭素数が2~4の短鎖ジオール化合物は特に限定されない。一例を挙げると、短鎖ジオール化合物は、以下の方法により植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等であってもよい。これらは併用されてもよい。
1,3-プロパンジオールは、植物資源(たとえばトウモロコシ等)を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て、製造され得る。上記発酵法のようなバイオ法で製造された1,3-プロパンジオール成分は、EO製造法の1,3-プロパンジオール成分と比較して、安全性の面で優れており、乳酸等有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能である。1,4-ブタンジオールは、植物資源からグリコールを製造し発酵することによってコハク酸を得て、これを水添することにより製造され得る。また、エチレングリコールは、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造され得る。
【0032】
植物由来のカルボン酸化合物は特に限定されない。一例を挙げると、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸等である。これらは併用されてもよい。これらの中でも、カルボン酸化合物は、セバシン酸、コハク酸及びダイマー酸からなる群から選択される少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。またセバシン酸100質量部に対して、リンゴ酸を0.05~0.5質量部含有しても良い。
バイオポリエステルポリオール化合物は、植物由来の短鎖ジオール化合物と植物由来のカルボン酸とを、適宜縮合反応させて、100%植物由来のバイオポリエステルポリオールとして生成される。具体的には、植物由来のセバシン酸と、植物由来の1,3-プロパンジオールとを直接脱水縮合させて、ポリトリメチレンセバケートポリオールが得られる。また、植物由来のコハク酸と、植物由来の1,4-ブタンジオールとを直接脱水縮合して、ポリブチレンサクシネートポリオールが得られる。
これらの各バイオポリエステルポリオール化合物を1種以上使用してもよい。
これらの植物由来の成分を使用して得られたウレタンプレポリマーは、全ウレタンプレポリマー中、固形分換算で、10質量%以上含まれても良く、40質量%以上含まれても良い。
【0033】
(鎖伸長剤及び反応停止剤)
次に、上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、上記酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂で使用する鎖伸長剤及び反応停止剤について説明する。
上記鎖伸長剤としては、印刷インキ組成物用バインダーとしてのポリウレタンポリウレア樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、例えば、ポリアミン化合物の中でも、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ジ(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物が挙げられる。
更に、ポリウレタンポリウレア樹脂がゲル化しない範囲で、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン化合物を併用することができる。
ポリウレタンポリウレア樹脂の末端に第1級アミノ基及び第2級アミノ基を導入する反応停止剤としては、ポリアミン化合物として、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(アミノエチルエタノールアミン)、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等を例示できる。この中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等の第1級アミノ基を有するポリアミンが好ましい。
ポリウレタンポリウレア樹脂に水酸基を導入する反応停止剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類が例示できる。また、既知の反応停止剤であるモノアミン化合物、モノアルコール化合物が利用可能であり、具体的には、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、エタノール等のモノアルコール類を例示することができる。
【0034】
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の製造方法としては、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。また、それぞれの成分の質量平均分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、印刷適性やラミネート適性を調節することが可能である。
上記酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の質量平均分子量としては、10,000~70,000であることが好ましく、更に20,000~60,000であることがより好ましい。
更に、適度な柔軟性とラミネート強度を高めるため、上記ポリウレタン樹脂として、ウレア結合を有しない質量平均分子量は1,000~70,000のポリウレタン樹脂を配合することもできる。
【0035】
(有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応)
また、上記有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物を反応させる際の、それぞれの使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、通常、1.2:1.0~3.0:1.0、より好ましくは1.3:1.0~2.0:1.0となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟な酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂になる傾向があり、印刷インキ組成物を印刷した時に耐ブロッキング性等が低い可能性があり、この場合、他の硬質の樹脂と併用することが必要となる場合がある。
【0036】
本発明にて使用される酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を得るための有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応時において、触媒を使用することができる。
中でも有機金属系化合物を使用することが好ましく、このような有機金属系化合物として、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、及びブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン化合物、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫アセテート、トリブチル錫クロライド、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫トリクロロアセテート、及び2-エチルヘキサン酸錫等の錫化合物、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、及びナフテン酸鉛等の鉛化合物、更に、2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネート、安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム等がある。そして、これらの中でもテトラブチルチタネート等のチタン化合物が好ましい。
また3級アミン化合物を使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)を使用することができる。
【0037】
(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂)
ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂は、上記の鎖伸長剤及び/又は反応停止剤のうち、ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化してなるケチミン化合物を使用し、c.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用して、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーと反応させることにより、d.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用して、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行うことにより酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を製造して得る。特に、上記の鎖伸長剤及び反応停止剤のなかから、イソホロンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及びエチレンジアミンから選ばれる1種以上を採用することが好ましい。
ケトン化合物によりケチミン化されたポリアミン化合物は、ケトン化合物の酸素原子が、ポリアミン化合物のアミノ基の窒素原子によって置換された構造を有する。
また、使用するケトン化合物としては、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトンが好ましい。
このケチミン化反応においてはケトン化合物以外の溶媒を使用しないことが好ましい。
但し、ケトン化合物以外の溶媒として、アルコール化合物を使用できる。なかでもイソプロピルアルコールを使用できる。
この、ケトン化合物以外の溶媒を使用しないことは、無溶剤条件下でケチミン化すると定義する。なお、その後の鎖伸長反応や、酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂が臭気を有しないという点を阻害しない範囲で、無溶剤条件下ではなく、極性有機溶媒を配合しても良い。
本発明は、ケチミン化された、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤を使用して上記c又はdの方法で鎖伸長や反応停止をさせる工程を経て得た酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び/又は酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を含有する印刷インキ組成物であってもよく、その印刷インキ組成物及び印刷された印刷物はケチミン臭を発生させない。また、印刷面に対して、ドライラミネート、押出ラミネート等の手段によりラミネートしたときの剥離強度を高くすることができる。
なお、ケチミン化されたアミン等は鎖伸長剤として使用してもよく、反応停止剤として使用してもよく、鎖伸長剤と反応停止剤の双方として使用してもよい。
【0038】
(ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂の合成)
有機ジイソシアネート化合物と高分子ジオール化合物との反応により得られたウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに対して、ポリアミン化合物を予め過剰量のケトン化合物によりケチミン化してなるケチミン化合物を使用し、e.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用し、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーと反応させることにより、f.有機溶剤中でポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を採用し、ウレタンプレポリマー及び/又はバイオマスウレタンプレポリマーに加え撹拌混合し、更に水を加えた後、鎖伸長及び反応停止を行うことにより、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂、ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られる酸変性されていないポリウレタンポリウレア樹脂及び酸変性されていないバイオマスポリウレタンポリウレア樹脂を得ることができる。
反応の際に溶剤を使用するときには、エステル系溶剤及び/又はアルコール系溶剤が好ましく、エステル系溶剤とアルコール系溶剤の混合物がより好ましく、酢酸プロピルとイソプロピルアルコールが更に好ましく、質量比で、酢酸プロピル:イソプロピルアルコール=1:1~5:1の範囲が最も好ましい。
【0039】
(酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂)
本発明における印刷層を形成するためのポリウレタン樹脂として、酸変性されたポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂も採用できる。上記の酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂と共に使用してもよく、酸変性されたポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂のみ、又は酸変性されていないポリウレタン樹脂及び/又は酸変性されていないバイオマスポリウレタン樹脂のみを使用しても良い。
酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂を構成する高分子ジオール化合物として、前記高分子ジオール成分と無水ピロメリット酸などの四塩基酸無水物を反応させるか、あるいは、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸等を開始剤として、ラクトン類を開環重合して得られる遊離のカルボキシル基を有する高分子ジオール化合物を使用するか、ポリウレタン樹脂を構成する高分子ジオール化合物とともにジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸等のヒドロキシカルボン酸を使用することにより、従来公知の方法で得られるものを使用する事ができる。酸変性されたポリウレタン樹脂、酸変性されたバイオマスポリウレタン樹脂の酸価70mgKOH/g以下が好ましい。
【0040】
本発明における印刷層を形成するためのポリウレタン樹脂と併用できる他のバインダー樹脂について説明する。
(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体)
ラミネート用印刷インキ組成物に配合しても良い塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体としては、従来、グラビア印刷インキ組成物に使用されている塩化ビニルモノマーと酢酸ビニルモノマーを必須成分とし、必要に応じて、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等の脂肪酸ビニルモノマー、水酸基等の官能基を有するモノマーを共重合成分として、公知の方法で製造したものが使用できる。
水酸基を有する塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、酢酸エステル部分の一部をケン化すること、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを導入することにより得られる。
酢酸エステル部分の一部をケン化することにより得られた水酸基を有する塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体の場合では、分子中の塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式1)、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位(下記式2)、及び酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位(下記式3)の比率により樹脂の皮膜物性や溶解挙動が決定される。すなわち、塩化ビニルの反応部位に基づく構成単位は樹脂皮膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルの反応部位に基づく構成単位は接着性や柔軟性を付与し、酢酸ビニルの反応部位のケン化に基づく構成単位は環境に配慮した印刷インキ組成物の有機溶剤系への良好な溶解性を付与する。
式1 -CH2-CHCl-
式2 -CH2-CH(OCOCH3)-
式3 -CH2-CH(OH)-
【0041】
なお、ラミネート用印刷インキ組成物で使用する、後記の有機溶剤に対する溶解性や印刷適性の点から、上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、分子内に各種官能基を有していても良い。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤が使用されるときは、上記塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体は、50~200mgKOH/gの水酸基を有していることが好ましい。このような塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体の市販品としては、例えば、ソルバインA、AL、TA5R、TA2、TA3、TAO、TAOL等を使用することが好ましい。
【0042】
(塩化ビニル・アクリル系共重合体)
ラミネート用印刷インキ組成物に配合できる塩化ビニル・アクリル系共重合体は、塩化ビニルとアクリルモノマーの共重合体を主成分とするものであり、共重合体の形態は特に限定されない。例えば、アクリルモノマーはポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト共重合されていても良い。
【0043】
アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基を有するアクリルモノマー等を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。
【0044】
水酸基を有するアクリルモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。
また、アクリルモノマーとして、水酸基以外の官能基を有するアクリルモノマーを用いることもできる。水酸基以外の官能基の例としてはカルボキシル基、アミド結合基、アミノ基、アルキレンオキサイド基等が挙げられる。
上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、質量平均分子量が10,000~70,000であることが好ましい。
また、上記有機溶剤として環境に配慮した溶剤への溶解性、基材に対する接着性の点から、上記塩化ビニル・アクリル系共重合体は、50~200mgKOH/gとなるように水酸基を有していることが好ましい。
【0045】
ラミネート用印刷インキ組成物は、ポリウレタン樹脂と(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)とを、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)=95/5~45/55(質量比)で含有することができ、好ましくは92/8~70/30である。
なお、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体)では90/10~75/25の範囲としても良く、ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・アクリル系共重合体)では95/5~85/15の範囲としても良い。
そして、95/5~45/55の割合で、ポリウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体とを含有することで、ラミネート用印刷インキ組成物は、フィルムに対する更に優れた印刷適性及び接着性を有することとなる。更に、ラミネート加工が行われる場合、より優れたラミネート適性を有することとなる。
上記ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)が95/5を超える場合、(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)の割合が少なくなる可能性があり、また、上記フィルムに対する接着性が不十分となる。
一方、上記ポリウレタン樹脂/(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)が45/55を下回る場合、(塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体)の割合が多くなり、印刷インキ組成物を用いて形成する印刷物が硬くなり、やはり上記フィルムに対する接着性が不十分となる可能性がある。
【0046】
また、ラミネート用印刷インキ組成物中の、上記ポリウレタン樹脂及び塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体及び/又は塩化ビニル・アクリル系共重合体を合わせた含有量は、5~30質量%が好適である。
また、ラミネート用印刷インキ組成物には、本発明の目的とする性能を低下させない範囲で、密着性向上剤及びブロッキング防止剤から選ばれる1種以上を含有でき、好ましくは、密着性向上剤とブロッキング防止剤を併用することが好ましい。
【0047】
(密着性向上剤)
ラミネート用印刷インキ組成物に配合できる密着性向上剤としては、ロジン及びその誘導体、塩素化ポリプロピレン、ダンマル樹脂等が例示でき、ロジン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種以上、より好ましくは2種以上を含有させることが望ましい。
【0048】
(ロジン及びその誘導体)
ロジンとしては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジンと定義する。
ロジン誘導体は、上記のロジンを変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族へ、もう一方は単独二重結合の分子へとなる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理のものよりは耐候性が向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることがある。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリン等の水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
更に、ロジン及びそのロジン誘導体の酸価は120mgKOH/g以上であることが好ましい。酸価が120mgKOH/g以上であると、ラミネート強度が向上する。更に好ましくは酸価が160mgKOH/g以上である。また、ロジン及びその誘導体を配合する際の合計使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物の固形分質量%で、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0049】
(塩素化ポリプロピレン)
塩素化ポリプロピレンとしては、塩素化度が20~50のものが使用できる。塩素化度が20未満の塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤との相溶性が低下する傾向がある。一方、塩素化度が50を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、フィルムに対する接着性が低下する傾向がある。なお、本発明において、塩素化度は、塩素化ポリプロピレン樹脂中の塩素原子の質量%で定義される。また、塩素化ポリプロピレンは、質量平均分子量が5,000~200,000の変性された又は未変性の塩素化ポリプロピレンであることが好ましい。質量平均分子量が5,000未満の場合、塩素化ポリプロピレンは、接着性が低下する傾向がある。一方、質量平均分子量が200,000を超える場合、塩素化ポリプロピレンは、有機溶剤への溶解性が低下する傾向がある。また、塩素化ポリプロピレンを配合する際の使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物の固形分質量%で、0.1~3.0質量%が好ましい。
【0050】
(ダンマル樹脂)
ダンマル樹脂は、ダマール、ダンマーとも表記され、植物由来の天然樹脂の一種である。詳細には、マレーシア、インドネシア等東南アジアに生育するフタバガキ科又はカンラン科植物から得られる天然樹脂の一種である。使用する際には適当な有機溶剤に溶解させてワニスとする。ダンマル樹脂は塩素を含有しないため、印刷インキ組成物に塩素化ポリプロピレンを使用する場合に比べ、塩素を排除・低減することができる。また、ダンマル樹脂を配合する際の使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物の固形分質量%で、3.0質量%以下が好ましい。
【0051】
(ブロッキング防止剤)
ブロッキング防止剤としては、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿等が例示でき、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドの1種以上、好ましくは2種以上を含有させることが好ましく、顔料の種類によって、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿を更に含有させることが好ましい。
【0052】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のもの等が挙げられる。シリカ粒子は、平均粒子径が1.0~5.0μmのものが好ましい(なおシリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる)。シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良いが、親水性のものが好ましく、親水性シリカ粒子を含む印刷インキ組成物は重ね印刷時の印刷インキ組成物の濡れ・広がりを促し、重ね印刷効果(以下「トラッピング性」と記載する場合がある)を向上させる効果も有する。シリカ粒子使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物中に3.0質量%以下が好ましく、更に好ましくは0.1~1.0質量%である。
【0053】
(ポリエチレンワックス)
ポリエチレンワックスとしては平均粒子径が1.0~3.0μmの範囲のもの(なお、平均粒子径は、Honeywell社 Microtrac UPAにて測定した粒径を意味する)を使用することが好ましい。ポリエチレンワックスの粒子径が1.0μmより小さいと、すべり性、ブロッキング性が低下し、粒子径が3.0μmより大きいとトラッピング性が低下する可能性がある。また、ポリエチレンワックスのラミネート用印刷インキ組成物中の含有量は、0.1~1.5質量%の範囲が好ましい。含有量が0.1質量%より少ないと目的とする効果が得られず、含有量が1.5質量%より多いと、光沢が低下する可能性がある。
【0054】
(硝化綿)
硝化綿としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている硝化綿を使用できる。硝化綿としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用される硝化綿としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC LTD社)等を挙げることができる。硝化綿の使用量は、顔料の種類により、ラミネート用印刷インキ組成物中に、0.1~2.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0055】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が0.6~2.5質量%、プロピオニル化が42~46質量%、水酸基が1.8~5質量%である樹脂が市販されている。セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、顔料の種類により、ラミネート用印刷インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0056】
(セルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートブチレート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている樹脂が使用できる。
セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が2~30質量%、ブチリル化が17~53質量%、水酸基が1~5質量%の樹脂が市販されている。セルロースアセテートブチレート樹脂の使用量は、顔料の種類により、ラミネート用印刷インキ組成物中に、0.1~3.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0057】
(脂肪酸アミド)
脂肪酸アミドとしては、脂肪酸から酸基を除いた残基とアミド基を有するものであれば特に限定されない。脂肪酸アミドとしては、例えば、モノアミド、置換アミド、ビスアミド、メチロールアミド、及びエステルアミド等が挙げられ、耐ブロッキング性が向上するため、モノアミド、置換アミド、及びビスアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。脂肪酸アミドの使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物中に、0.01~1.0質量%の範囲であることが好ましい。
【0058】
モノアミド:モノアミドは下記一般式(1)で表される。
一般式(1) R1-CONH2
(式中、R1は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0059】
置換アミド:置換アミドは下記一般式(2)で表される。
一般式(2) R2-CONH-R3
(式中、R2及びR3は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良い。)
置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
【0060】
ビスアミド:ビスアミドは下記一般式(3)あるいは一般式(4)で表される。
一般式(3) R4-CONH-R5-HNCO-R6
一般式(4) R7-NHCO-R8-CONH-R9
(式中、R4、R6、R7、及びR9は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R5及びR8は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0061】
メチロールアミド:メチロールアミドは下記一般式(5)で表される。
一般式(5) R10-CONHCH2OH
(式中、R10は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表す。)
メチロールアミドの具体例としては、メチロールパルミチン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチロールヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールオレイン酸アミド、メチロールエルカ酸アミド等が挙げられる。
エステルアミド:エステルアミドは、下記一般式(6)で表される。
一般式(6) R11-CONH-R12-OCO-R13
(式中、R11及びR13は脂肪酸からCOOHを除いた残基を表し、同一でも異なっていても良く、R12は炭素数1~10のアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
エステルアミドの具体例としては、ステアリルアミドエチルステアレート、オレイルアミドエチルステアレート等が挙げられる。
脂肪酸アミドの融点は、50~150℃であることが好ましい。
また、脂肪酸アミドを構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16~25の不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16~18の飽和脂肪酸及び/又は炭素数18~22の不飽和脂肪酸がより好ましい。飽和脂肪酸として特に好ましくはラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ヒドロキシステアリン酸、不飽和脂肪酸として特に好ましくはオレイン酸、エルカ酸である。
【0062】
(有機溶剤)
印刷層を形成させるラミネート用印刷インキ組成物は油性のものである。使用する有機溶剤としては、表刷り用及びシュリンク用のインキ組成物と共通して、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤及びこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
環境問題の面からは、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤の混合溶剤、又は、より環境問題への対応を進めたエステル系有機溶剤、及びアルコール系有機溶剤の混合溶剤を使用することが好ましい。
更に、ラミネート用印刷インキ組成物には、濡れ広がり性を向上させるために有機溶剤100質量%中、グリコールエーテル系有機溶剤を0.1~20質量%含有させることもできる。グリコールエーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が例示できる。
【0063】
ラミネート用刷インキ組成物には、静電気による印刷不良の緩和、及び、版かぶりの防止やセル再現性の点より水を含有させることが好ましい。水の使用量は、ラミネート用印刷インキ組成物中に10質量%以下が好ましく、更に好ましくは、0.1~5.0質量%の範囲である。
【0064】
(その他の材料)
ラミネート用印刷インキ組成物には、更に顔料分散剤、帯電防止剤、可塑剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0065】
(ラミネート印刷インキ組成物の製造方法)
以上の構成材料を用いてラミネート用印刷インキ組成物を製造する方法としては、まず、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、及び必要に応じて顔料分散剤、界面活性剤等を撹拌混合した後、各種練肉機、例えば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を利用して練肉し、更に、所定の各種添加剤及び残りの材料を添加混合する方法が利用される。
また、金属のテトラアルコキシド及び/又はヒドロキシ酸を含有させても良く、含有させなくても良い。
【0066】
(ラミネート用印刷インキ組成物を用いた印刷方法、及びそれにより得た積層体)
次に、ラミネート用印刷インキ組成物を用いてラミネート積層体を得る方法について説明する。
本発明におけるラミネート積層体は、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、シーラント層を、この順に形成されるものであるが、各層の間にラミネート積層体に使用することが公知の任意の層、例えばアンカーコート剤層や接着剤層等を設けてもよく、設けなくてもよい。また、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層及びシーラント層は、それぞれ複数層から形成されていてもよい。さらに、例えば、樹脂基材、脱離用プライマー層、印刷層、脱離用プライマー層、印刷層、シーラント層の順で形成されていてもよい。
ラミネート積層体を得る方法には、少なくとも下記印刷方法を含む。
例えば、樹脂基材として、公知のラミネート用の基材となる樹脂フィルムに、本発明の脱離用プライマー組成物を塗布する。得られた脱離用プライマー組成物層上に、インライン又はオフラインで、ラミネート用印刷インキ組成物をグラビア印刷方式等の任意の印刷形式で1回以上印刷を行い、ドライヤーにより乾燥させる。
ラミネート用印刷インキ組成物による印刷速度及び乾燥温度は、公知の速度及び温度から適宜採用できる。
【0067】
[シーラント層]
シーラント層としては、ドライラミネート加工による積層手段を採用するときに使用する樹脂フィルム、又は、押出しラミネート積層手段を採用するときに使用する溶融された樹脂から形成される、樹脂フィルムとしては、無延伸プラスチックフィルム(例えば、無延伸ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム等の無延伸ポリオレフィン樹脂フィルム)が例示でき、溶融された樹脂としては、低密度ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が例示できる。
形成されたシーラント層は、樹脂フィルムに由来する場合と溶融した樹脂を積層してなる場合とにおいて、その積層された界面の性状が若干異なる。
【0068】
[脱離用プライマー層を有する積層体の作成方法]
次に、脱離用プライマー層を有する積層体を得る方法について説明する。
脱離用プライマー層を有する積層体を得る方法には、少なくとも下記(1)又は(2)方法を含む。
(1)上記の樹脂基材の一面に、上記の脱離用プライマー組成物を塗布し脱離用プライマー層を形成する。次いで脱離用プライマー層の表面に、上記のラミネート用印刷インキ組成物をグラビア印刷等の任意の印刷方式で1回以上印刷を行い、乾燥させて印刷層を形成する。
これらの工程とは別に、脱離用プライマー組成物を上記シーラント層用フィルムの一面に塗布、乾燥して脱離用プライマー層を有するシーラント層用フィルムを作成する。
上記の印刷層の表面に接着剤を塗工して接着剤層を形成した後、脱離用プライマー層を有するシーラント層の脱離用プライマー層側の面を、該接着剤層の表面に対向させて貼合させるドライラミネート法により、本発明の脱離用プライマー層を有する積層体を作成することができる。
なお、上記ドライラミネート法は、ラミネート印刷インキ組成物による印刷層の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工して接着剤層を形成した後、既知のドライラミネート機によって脱離用プライマー層を有するシーラント層を貼合する方法である。またこのようなドライラミネート法以外の公知の方法により脱離用プライマー層を有する積層体を得ることができる。
(2)上記の樹脂基材の一面に、上記の脱離用プライマー組成物を塗布し脱離用プライマー層を形成する。次いで脱離用プライマー層の表面に、上記のラミネート用印刷インキ組成物をグラビア印刷等の任意の印刷方式で1回以上印刷を行い乾燥させて印刷層を形成する。
次いで、印刷層上に、脱離用プライマー組成物を塗布し、乾燥後、形成された脱離用プライマー層上にアンカーコート剤を塗付、乾燥後、アンカーコート剤層の上に溶融したポリエチレン等の樹脂を積層・固化させる押出ラミネート法により、本発明の脱離用プライマー組成物層を有する積層体を作成することができる。
なお、上記押出しラミネート法は、脱離用プライマー層の表面にウレタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押出しラミネート機によって溶融ポリエチレンを積層する方法である。
脱離用プライマー層がポリエチレンイミン系化合物を使用する場合は、そのポリエチレンイミン系化合物アンカーコート層としても働くので、上記アンカーコート剤を使用してもしなくてもよい。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。実施例及び比較例にて使用した脱離用プライマー組成物は、溶媒の質量組成がエタノール8:水2の混合物である。なお、この混合物に限定されない。
【0070】
<実施例及び比較例>
まず、ラミネート構造について説明する。
ラミネート構造は、
(ドライラミネート)
ラミネート構造1
・OPP/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層
ラミネート構造2
・PET/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層
ラミネート構造3
・NY/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層
ラミネート構造4
・透明蒸着フィルム/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層
(押出ラミネート)
ラミネート構造5
・PET、NY、透明蒸着フィルム/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/各種脱離用プライマー組成物/アンカーコート剤/シーラント層
ラミネート構造6
・OPP/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/各種脱離用プライマー組成物接着剤(アンカーコート剤)/シーラント層
【0071】
<ポリウレタン樹脂ワニス1(バイオマスポリウレタン)の製造例>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、セバシン酸(ひまし油由来)/コハク酸(植物由来)=30/70(質量比)と1,3-プロパンジオール(植物由来)から得られる質量平均分子量2000のポリエステルジオールの200質量部、イソホロンジイソシアネートの17.6質量部、水添MDIの21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルの400質量部、イソプロピルアルコールの171質量部を加えた後、イソホロンジアミンの8.2質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミンの0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミンの1.3質量部、ジエチレントリアミンの0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニス1(固形分30質量%、アミン価6.4mgKOH/g)を得た。
【0072】
<ポリウレタン樹脂ワニス2(バイオマスポリウレタンでないもの)の製造例>
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール100質量部、質量平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネートの17.6質量部、水添MDIの21.0質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100~105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチルの400質量部、イソプロピルアルコールの171質量部を加えた後、イソホロンジアミンの8.2質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミンの0.35質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミンの1.3質量部、ジエチレントリアミンの0.6質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニス2(固形分30質量%、アミン価6.4mgKOH/g)を得た。
【0073】
<ポリアミン化合物のアミノ基がケトン化合物によりケチミン化された化合物を使用して得られるポリウレタン樹脂ワニス3の製造例>
(ケチミン溶液の製造方法)
イソホロンジアミン51部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン31.2部、及びアセトン174部を混合し、室温で1時間撹拌してケチミン溶液を得た。
(ポリウレタン樹脂の製造方法)
撹拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量4000の3-メチル-1,5-ペンチレンアジペートジオール400部、イソホロンジイソシアネート33.3部及びテトラブチルチタネート0.04部を仕込み、窒素ガスを導入しながら90~100℃で6時間反応させた。
次いで、酢酸プロピル812部、イソプロピルアルコール203部を加えた後、室温近くまで冷却し、上記ケチミン溶液を32.29部加えて20分間撹拌し、更に水を3部加えて15分間撹拌し、質量平均分子量35,000、アミン価6.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂ワニス3(固形分30%)を得た。
【0074】
<塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体>
ソルバインTA-3、日信化学工業社
<ロジン及びその誘導体>
重合ロジン:酸価160mgKOH/g
<塩素化ポリプロピレンワニス>
塩素化度40%、質量平均分子量100000の塩素化ポリプロピレン(固形分50%)40質量部とメチルシクロヘキサン60質量部を混合撹拌し、固形分20%の塩素化ポリプロピレンワニスを得た。
【0075】
<ラミネート用印刷インキ組成物の製造>
顔料(C.I.PB15:4)の10質量部、ポリウレタン樹脂1の30質量部、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体(ソルバインTA-3)3質量部を、レッドデビル社のペイントコンディショナーを用いて混練し、更に、上記塩素化ポリプロピレンワニス(固形分20%)2質量部、重合ロジン0.5質量部、平均粒子径:4.5μmのシリカ粒子0.5質量部、平均粒子径:2.11μmのポリエチレンワックス0.2質量部、エチレンビスステアリン酸アミド0.2質量部、溶剤51質量部、水2質量部を加えて、ラミネート用印刷インキ組成物1を得た。
さらに、上記ポリウレタン樹脂1に代えて、ポリウレタン樹脂2と3をそれぞれ採用したラミネート用印刷インキ組成物2及び3も得た。
【0076】
(樹脂基材)
コロナ放電した二軸延伸ポリプロピレンフィルム:、P-2161#25(東洋紡社)
ポリエステルフィルム:E-5102#12(東洋紡社)
ナイロンフィルム:ON-15#12(ユニチカ社)
透明蒸着ポリエステルフィルム:GL-ARH-F(凸版印刷)
透明蒸着ナイロンフィルム:GL-AEY-W(凸版印刷)
【0077】
(脱離用プライマー組成物1~7)
脱離用プライマー組成物1:ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))数平均分子量(Mn)70,000、質量平均分子量(Mw)350,000,アミン価18mmol/g、アミン比(1級、2級及び3級のアミノ基のモル比(%))が1級/2級/3級=25/50/25(下記表1)(上記数平均分子量(Mn)は粘度法により測定、質量平均分子量はGPCにより測定、アミン価は非水系による酸滴定で測定、アミン比はNMR(13C)により測定。(以下同様))
脱離用プライマー組成物2:ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-3000(日本触媒社))数平均分子量(Mn)100,000、質量平均分子量(Mw)450,000、アミン価18mmol/g、アミン比(1級、2級及び3級のアミノ基のモル比(%))が1級/2級/3級=30/40/30(下記表1)(上記数平均分子量(Mn)は粘度法により測定、アミン価は非水系による酸滴定で測定、アミン比はNMR(13C)により測定。)
脱離用プライマー組成物3:ポリエチレンイミン系化合物(商品名Lupasol P(BASF社製)、質量平均分子量(Mw)750,000、アミン価18mmol/g、アミン比(1級、2級及び3級のアミノ基のモル比(%))が1級/2級/3級=37/37/26(下記表1)(上記数平均分子量(Mn)は粘度法により測定、アミン価は非水系による酸滴定で測定、アミン比はNMR(13C)により測定。)
脱離用プライマー組成物4:ポリブタジエン系化合物(商品名:チタボンドT-180E、(NV10%)日本曹達社)
脱離用プライマー組成物5:ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))に3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含有させた組成物(固形分含量3.0質量%)(下記表1):上記ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))/3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(質量割合)=1/2、 表2中のポリエチレンイミン系化合物のアミノ基に対する、シランカップリング剤のグリシジル基の数の比は、上記の考えにより求められ、塗布された脱離用プライマー組成物中の、該グリシジル基の数を、該1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計数で割った値である。
脱離用プライマー組成物6:ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))にトリエトキシ(3-イソシアネートプロピル)シランを含有させた組成物(固形分含量3.0質量%)(下記表1):上記ポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))/トリエトキシ(3-イソシアネートプロピル)シラン(質量割合)=1/2、 表2中のポリエチレンイミン系化合物のアミノ基に対する、シランカップリング剤のイソシアネート基の数の比は、上記の考えにより求められ、塗布された脱離用プライマー組成物中の該イソシアネート基の数を、該1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計数で割った値である。
脱離用プライマー組成物7:トリメトキシシリルプロピル変性(ポリエチレンイミン)(シロキサン変性ポリエチレンイミン)(商品名:SSP-060、Gelest社)、分子量1,500~1,800、アミン価10mmol/g、アミン価は非水系による酸滴定で測定、アミン比はNMR(13C)により測定。)
【0078】
【0079】
【0080】
(接着剤)
タケラックA-969V/タケラックA-5 二液型ポリウレタン接着剤(三井化学社)
タケラックA-515/タケラックA-50 二液型ポリウレタン接着剤(三井化学社)
(アンカーコート剤)
タケラックA-3210/タケネートA-3072 (三井化学社)
ポリエチレンイミンP-1000(日本製紙社)、脱離用プライマー組成物としても働く
(ラミネートフィルム)
P-1128#25 無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社)
RXC-22 無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社)
(溶融ポリエチレン)
スミカセンL705(住友化学社)
【0081】
(ラミネート印刷、及び積層体、試験結果)
(ドライラミネートの場合)
下記のラミネート構造の積層体となるように、樹脂基材の片面に、各脱離用プライマー組成物を希釈した、上記表2に記載した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して脱離用プライマー層を得た。
なお、表2中の塗布量は、脱離用プライマー組成物層の固形分量である。この塗布量を脱離用プライマー組成物中の固形分の濃度により調整した。
ラミネート用印刷インキ組成物1に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加えて、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した希釈ラミネート用印刷インキ組成物1を、この各脱離用プライマー層の表面に、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷層を得た。
その上に樹脂基材がコロナ放電した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合は、接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5)を、樹脂基材がポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ナイロンフィルムの場合は、接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50 固形分30%)を塗布した。
次いで、上記脱離用プライマー層を片面に塗布してなるシーラント層の該脱離用プライマー層側を、ドライラミネート機により該印刷層に接着させて積層体を作成した。
【0082】
(押出しラミネートの場合)
下記のラミネート構造の積層体となるように、樹脂基材の片面に、各脱離用プライマー組成物を希釈した、上記表2に記載した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機で下記の条件で塗布・乾燥して脱離用プライマー層を得た。なお、表2中の塗布量は、脱離用プライマー組成物層の固形分量である。
この塗布量を脱離用プライマー組成物中の固形分の濃度により調整した。ラミネート用印刷インキ組成物1に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加えて、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した希釈ラミネート用印刷インキ組成物1を、この各脱離用プライマー層の表面に、グラビア印刷機を用いて下記条件で印刷、乾燥させて印刷層を得た。
その上に樹脂基材がコロナ放電した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合は、アンカーコート剤(P-1000)を、樹脂基材がポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、透明蒸着ポリエステルフィルム、透明蒸着ナイロンフィルムの場合は、各脱離用プライマー組成物を塗布、乾燥後、アンカーコート剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072 固形分7%)を塗布した。
次いで、アンカーコート剤(タケラックA-3210/タケラックA-3072 固形分7%)を塗布した場合は、アンダーコート剤面に溶融ポリエチレンを、押出ラミネート機により該アンカーコート剤層に接着させて積層体を作成した。但し、アンダーコート剤としてP-1000を使用する場合は、アンダーコート剤層に、溶融ポリエチレンを、押出ラミネート機により該アンカーコート剤層に接着させて積層体を作成した。
【0083】
(各脱離用プライマー組成物塗布条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch(130°)のベタ版
乾燥温度:70℃
(ラミネート用印刷インキ組成物1の印刷条件)
塗工機 :グラビア印刷機
塗工速度:100m/min
刷版 :ヘリオ175line/inch(130°)のベタ版
乾燥温度:55℃
【0084】
【0085】
<脱離(インキ脱離性)の評価>
上記の各積層体1.5gを、MD15mm×TD25mm程度の小片に細断して、インキ脱離性試験用サンプルを得た。
(アルカリ水溶液からなる脱離液の調製)
98.0質量部の水に水酸化ナトリウム2.0質量部を添加し、撹拌・溶解してアルカリ水溶液からなる脱離液を得た。
容量が200ccのHDPE(高密度ポリエチレン)製容器にアルカリ水溶液からなる脱離液を100g入れ、湯浴を用いて液温が70℃となるまで加熱した。
(脱離)
上記の加熱された各脱離液に、対応する上記各インキ脱離試験用サンプルを投入し、羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて30分間撹拌した。撹拌後、HDPE(高密度ポリエチレン)製容器を湯浴より取り出し、室温下で5分間静置した。脱離液と各種フィルム片を目開き約2mmのステンレススチール製網を用いて分離した。
(すすぎ)
脱離後の各種フィルムを200ccのHDPE製容器に移し、水100gを加えた。羽の直径が25mmのステンレススチール製撹拌羽を用いて5分間撹拌した。5分間静置後、ステンレススチール製網を用いて各種フィルム片と水を分離した。各種フィルム片を乾燥後、各種フィルムからのインキの剥離性を目視評価した。
(評価基準)
○:インキ被膜が被膜片として樹脂基材フィルム、シーラントフィルムから完全に剥離した
△:インキ被膜が被膜片として樹脂基材フィルムから完全に脱離するが、シーラントフィルムから脱離しないもの
×:樹脂基材フィルム、シーラントフィルムのどちらのフィルムも剥離しないもの
【0086】
(接着性印刷直後(ラミネート用印刷インキ組成物1を印刷、乾燥させた直後の接着性))
各種樹脂基材フィルムにグラビア印刷機を利用して、所定の塗布量にするため、上記表3となるように希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機を用い下記の条件で塗布・乾燥した。この各脱離用プライマー組成物層の表面に、各ラミネート用印刷インキ組成物に対して、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各ラミネート用印刷インキ組成物1を、グラビア印刷機を用い上記条件で印刷、乾燥させて各印刷物を得た。
得られた各印刷物のそれぞれの印刷面にセロハンテープを貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷被膜の剥離する度合いから、以下の評価基準に沿って接着性を評価した。
(評価基準)
〇:印刷被膜の面積比率として、樹脂基材フィルムからの剥離が5%未満であった。
△:印刷被膜の面積比率として、5%以上30未満が樹脂基材フィルムから剥離した。
×:印刷被膜の面積比率として、30%以上が樹脂基材フィルムから剥離した。
【0087】
(ラミネート強度)
各ラミネート印刷物を得た後に15mm幅に切断し、安田精機製作所社剥離試験機を用いて、T型剥離強度を測定した。
・接着剤として タケラックA-969V/タケラックA-5 二液型ポリウレタン接着剤(三井化学社)使用した系
(評価基準)
〇:剥離強度が1.2N/15mm以上のもの
△:剥離強度が0.7N/15mm以上、1.2N/15mm未満のもの
×:剥離強度が0.7N/15mm未満のもの
・タケラックA-515/タケラックA-50 二液型ポリウレタン接着剤(三井化学社)を使用した系
(評価基準)
〇:剥離強度が5N/15mm以上のもの
△:剥離強度が3N/15mm以上、5N/15mm未満のもの
×:剥離強度が3N/15mm未満のもの
【0088】
(耐ブロッキング性)
各種樹脂基材フィルムにグラビア印刷機を利用して、上記の表3となるように希釈した各脱離用プライマー組成物を、グラビア印刷機を用い下記の条件で塗布・乾燥した。この各脱離用プライマー組成物層の表面に、各ラミネート用印刷インキ組成物に、更に酢酸ノルマルプロピル/イソプロピルアルコール=80/20混合溶剤を加え、離合社ザーンカップNo.3にて16秒になるように希釈した各ラミネート用印刷インキ組成物を、グラビア印刷機を用い下記条件で印刷、乾燥させて各印刷物の印刷面と、各樹脂基材フィルム未処理面とを合わせ、400g/cm2の荷重をかけて40℃で12時間放置した後、各樹脂基材フィルムを剥がした時の様子から耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
〇:抵抗なくはがれインキ被膜の移行が全くないもの
△:抵抗はあるがインキ被膜の移行が全くないもの
×:インキ被膜の移行が認められたもの
上記ラミネート用印刷インキ組成物1だけではなく、上記ラミネート用印刷インキ組成物2及び3を使用しても下記評価は同じであった。そのため、上記ラミネート用印刷インキ組成物1だの結果を下記に示す。
【0089】
(ドライラミネート)
ラミネート構造1
・OPP/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層(P-1128#25)
<下記表4に示す実施例及び比較例>
表4に記載の各実施例は、樹脂基材としてP-2161#25を採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、接着剤(タケラックA-969V/タケラックA-5 固形分30%)、各種脱離用プライマー組成物及びP-1128#25により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例1~7は、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン化合物を含有するものを使用した例であり、実施例8はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例9は、ポリエチレンイミン化合物にグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例10は、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例11は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造1では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつ接着剤層とラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。
さらに、表4に記載の比較例1は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0090】
【0091】
ドライラミネート
ラミネート構造2
・PET/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層(RXC-22)
<下記表5に示す実施例及び比較例>
表5に記載の各実施例は、樹脂基材としてE-5102#12を採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50 固形分30%)、各種脱離用プライマー組成物及びRXC-22により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例12~18、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン化合物を含有するものを使用した例であり、実施例19はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例20は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例21、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例22は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造2では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつ接着剤層とラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。
さらに、表5に記載の比較例2は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0092】
【0093】
ドライラミネート
ラミネート構造3
・NY/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層(RXC-22)
<下記表6に示す実施例及び比較例>
表6に記載の各実施例は、樹脂基材としてON#15を採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50 固形分30%)、各種脱離用プライマー組成物及びRXC-22により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例23~29は、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン系化合物を含有するものを使用した例であり、実施例30はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例31は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例32は、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例33は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造3では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつ接着剤層とラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。
る。
さらに、表6に記載の比較例3は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0094】
【0095】
ドライラミネート
ラミネート構造4
・透明蒸着フィルム/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/接着剤/各種脱離用プライマー組成物/シーラント層(RXC-22)
表7に記載の各実施例は、樹脂基材としてGL-ARH-F、GL-AEY-Wを採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、接着剤(接着剤(タケラックA-515/タケラックA-50 固形分30%)、各種脱離用プライマー組成物及びRXC-22により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例34~40は、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン系化合物を含有するものを使用した例であり、実施例41はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例42は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例43は、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例44は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造4では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつ接着剤層とラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。GL-ARH-F、GL-AEY-Wのどちらの透明蒸着フィルムを用いた場合も評価は同じであり、表7は、GL-ARH-F、GL-AEY-Wの両方の評価結果を示す。
る。
さらに、表7に記載の比較例4は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0096】
【0097】
(押出ラミネート)
ラミネート構造5
・PET、NY、透明蒸着フィルム/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/各種脱離用プライマー組成物/アンダーコート剤/シーラント層(スミカセンL705)
表8に記載の各実施例は、樹脂基材としてE-5102#12、ON#15、GL-ARH-F、GL-AEY-Wを採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、各種脱離用プライマー組成物、アンカーコート剤(タケラックA-3210/タケネートA-3072 固形分7%)、及び押出しラミネートでスミカセンL705により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例45~50は、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン系化合物を含有するものを使用した例であり、実施例51はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例52は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例53は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例54は、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例55は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造5では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつアンカーコート層と押出しラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。E-5102#12、ON#15、GL-ARH-Fのどのフィルムを用いた場合も評価は同じであり、表8は、E-5102#12、ON#15、GL-ARH-Fのすべての評価結果を示す。
る。
さらに、表8に記載の比較例5は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0098】
【0099】
(押出ラミネート)
ラミネート構造6
・OPP/各脱離用プライマー組成物/各裏刷り用印刷インキ組成物/各種脱離用プライマー組成物(アンカーコート剤)/シーラント層(スミカセンL705)
表9に記載の各実施例は、樹脂基材としてP-2161#25を採用し、その上に順に各種脱離用プライマー組成物、ラミネート用印刷インキ組成物、各種脱離用プライマー組成物(アンカーコート剤としても働く)及び押出しラミネートでスミカセンL705により各層を形成させたものである。その結果、全ての評価結果が優れていた。
なお、実施例56~61は、脱離用プライマー組成物としてポリエチレンイミン系化合物を含有するものを使用した例であり、実施例62はポリブタジエン系化合物を使用した例であり、実施例63は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例64は、ポリエチレンイミンにグリシジル基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例65は、ポリエチレンイミン化合物にイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を含有させたものを使用した例であり、実施例66は、シロキサン変性ポリエチレンイミン化合物を含有させたものを使用した例である。ラミネート構造5では、「両側塗布」とは、脱離用プライマー組成物を樹脂基材に対して塗布し、かつ印刷層と押出しラミネート層との間に塗布により、脱離用プライマー層を形成することである。
さらに、表9に記載の比較例6は、上記実施例に対して、脱離用プライマー組成物による層を2層とも形成しない例である。その結果、脱離が十分ではなかった。
【0100】
【0101】
脱離プライマー組成物8
脱離用プライマー組成物5のポリエチレンイミン系化合物(商品名エポミンP-1000(日本触媒社))/3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(質量割合)=1/2を1/5とすること以外は、脱離用プライマー組成物5と同様にして脱離用プライマー組成物8(シランカップリング剤のグリシジル基の数)/(ポリエチレンイミン系化合物の1級アミノ基の数と2級アミノ基の数の合計)=1.55)を得た。
脱離用プライマー組成物8を使用したラミネート構造1~6については、脱離、接着性印刷直後、ラミネート強度、耐ブロッキング性は、全て〇であった。