(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20241224BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241224BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241224BHJP
【FI】
H01L21/56 T
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2020042606
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 才工
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-059885(JP,A)
【文献】特開昭53-095579(JP,A)
【文献】特開2010-232209(JP,A)
【文献】特開2012-227438(JP,A)
【文献】特開2004-165281(JP,A)
【文献】特開2005-123495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56
H01L23/28 -23/31
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H01L23/50
H01L25/00 -25/07
H01L25/10 -25/11
H01L25/16 -25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体チップと、ダイパッド部と前記ダイパッド部に一体的に接続された端子部とを含むリードフレームと、半硬化状態の絶縁シートとを用意する準備工程と、
前記ダイパッド部のおもて面に前記パワー半導体チップを実装し、配線する実装工程と、
封止用金型の底面上に、前記絶縁シート、前記ダイパッド部をこの順に配置する配置工程と、
前記絶縁シートの周縁部に対向する前記ダイパッド部の角部である外縁角部と前記絶縁シートの前記周縁部との
、前記絶縁シート上の間にある押圧箇所を押圧部で前記底面側にそれぞれ押圧しながら、前記封止用金型内に半硬化状態の封止原料を充填して、
前記封止用金型内に前記封止原料が充填された段階で、前記封止用金型内に前記封止原料を保持したまま前記押圧部による押圧を開放し、前記封止原料を押し入れながら、前記封止原料で前記パワー半導体チップと前記ダイパッド部とを封止して半硬化ユニットを形成する封止工程と、
前記半硬化ユニットを加熱して硬化する硬化工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記配置工程の前に、前記ダイパッド部の裏面に前記絶縁シートのおもて面を貼り付ける貼付工程を、
さらに有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記配置工程において、
前記封止用金型の前記底面に前記絶縁シートを前記絶縁シートの裏面が前記底面に接するように配置した後、前記絶縁シートのおもて面上に前記ダイパッド部を前記ダイパッド部の裏面が絶縁シートに接するように配置する、
請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記封止工程において、前記封止原料により封止して、前記端子部が突出され、前記絶縁シートの裏面が露出された前記半硬化ユニットを形成する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記押圧箇所は、前記絶縁シートの四隅と前記四隅に対向するダイパッド部の外縁角部との間にある、
請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記押圧箇所は、前記ダイパッド部の前記外縁角部に設けられた切り欠き部にある、
請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記封止工程において、前記押圧箇所を被覆部材を介してそれぞれ押圧する、
請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記被覆部材は、前記リードフレームにタイバーを介して一体的に接続され、前記タイバーから延伸して前記押圧箇所を被覆する、
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記封止原料は、半硬化状態の熱硬化性樹脂と無機物フィラーとを含み、
前記絶縁シートは、半硬化状態の熱硬化性樹脂と無機物フィラーとを含む、
請求項1乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記封止原料の前記熱硬化性樹脂及び前記絶縁シートの前記熱硬化性樹脂は、共にエポキシ樹脂を主成分とする、
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止原料の前記無機物フィラーは、酸化珪素を主成分とし、
前記絶縁シートの前記無機物フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素または窒化硼素を含む群から選択される少なくとも1つを主成分とする、
請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
パワー半導体チップと、
前記パワー半導体チップがおもて面に実装されたダイパッド部と前記ダイパッド部に一体的に接続された端子部とを含むリードフレームと、
前記ダイパッド部の裏面に張り付けられた絶縁シートと、
前記端子部を突出させ、前記絶縁シートの裏面を露出して、前記パワー半導体チップと前記リードフレームとを封止する封止部材と、
を有し、
前記絶縁シートの周縁部に対向する前記ダイパッド部の外縁角部と前記絶縁シートの
前記周縁部との
、前記絶縁シート上の間に対応する前記封止部材の表面に凹部が形成されている、
半導体装置。
【請求項13】
前記外縁角部のうち、前記絶縁シートの四隅と前記四隅に対向する前記外縁角部との間に対応する前記封止部材の表面に前記凹部が形成されている、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記ダイパッド部の前記外縁角部に切り欠き部が形成され、前記切り欠き部に対応する前記封止部材の表面に前記凹部が形成されている、
請求項12または13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記外縁角部と前記周縁部との間に被覆部材が設けられ、前記被覆部材に対応する前記封止部材の表面に前記凹部または凸部が形成されている、
請求項12乃至14のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項16】
前記被覆部材は、前記リードフレームと同じ材質により構成されている、
請求項15に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記被覆部材は、一端が前記外縁角部と前記周縁部との間に配置され、他端が前記封止部材から露出している、
請求項15または16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記封止工程は、
前記押圧箇所を前記押圧部で前記底面側にそれぞれ押圧しながら、前記封止用金型内に半硬化状態の前記封止原料を充填する工程と、
前記封止用金型内に前記封止原料が充填された段階で、前記封止用金型内に前記封止原料を保持したまま前記押圧部による前記押圧を開放する工程と、
前記押圧部が引き抜かれた状態にて前記封止原料を押し入れながら、前記封止原料で前記パワー半導体チップと前記ダイパッド部とを封止して半硬化ユニットを形成する工程と、
を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、パワー半導体チップ及び制御IC(Integrated Circuit)と当該半導体チップ及び制御ICが配置されたダイパッドとダイパッドの裏面に設けられた絶縁シートとを含み、封止部材で封止されている。パワー半導体チップは、パワーデバイスのスイッチング素子が用いられる。スイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。制御ICは、当該パワー半導体チップの駆動制御を行う。この半導体装置では、パワー半導体チップ及び制御ICから発せられた熱はダイパッドを介して絶縁シートから放熱される。
【0003】
このような半導体装置は、以下の工程を経て製造される。まず、ダイパッドにパワー半導体チップ及び制御ICを配置して、金型内に予めセットされた絶縁シート上に当該ダイパッドを配置する。押圧部でダイパッドを絶縁シート側に押圧しながら金型内に封止樹脂を充填して押圧部を抜き取り、金型内で封止樹脂を固化させる。金型を取り外すと半導体装置が得られる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の半導体装置の製造方法では、ダイパッドを絶縁シートに押圧するために、ダイパッドから遠ざかるに連れて、ダイパッドと絶縁シートとの間で捲れが生じてしまう。この状態で封止された半導体装置は放熱性が低下してしまうおそれがあり、信頼性が低下してしまう。また、金型内にセットされる絶縁シートは金型の仕様に応じて、その形状、大きさ等を変える必要がある。このため、金型ごとに絶縁シートの仕様も見直す必要がある。さらに、絶縁シートを金型内にセットするための搬送機構は複雑かつ高価となる。このように半導体装置を製造するための製造コストが増加してしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、製造コストの増加を抑制しつつ、放熱性の低下が防止された半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、パワー半導体チップと、ダイパッド部と前記ダイパッド部に一体的に接続された端子部とを含むリードフレームと、半硬化状態の絶縁シートとを用意する準備工程と、前記ダイパッド部のおもて面に前記パワー半導体チップを実装し、配線する実装工程と、封止用金型の底面上に、前記絶縁シート、前記ダイパッド部をこの順に配置する配置工程と、前記絶縁シートの周縁部に対向する前記ダイパッド部の角部である外縁角部と前記絶縁シートの前記周縁部との、前記絶縁シート上の間にある押圧箇所を押圧部で前記底面側にそれぞれ押圧しながら、前記封止用金型内に半硬化状態の封止原料を充填して、前記封止用金型内に前記封止原料が充填された段階で、前記封止用金型内に前記封止原料を保持したまま前記押圧部による押圧を開放し、前記封止原料を押し入れながら、前記封止原料で前記パワー半導体チップと前記ダイパッド部とを封止して半硬化ユニットを形成する封止工程と、前記半硬化ユニットを加熱して硬化する硬化工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明の一観点によれば、パワー半導体チップと、前記パワー半導体チップがおもて面に実装されたダイパッド部と前記ダイパッド部に一体的に接続された端子部とを含むリードフレームと、前記ダイパッド部の裏面に張り付けられた絶縁シートと、前記端子部を突出させ、前記絶縁シートの裏面を露出して、前記パワー半導体チップと前記リードフレームとを封止する封止部材と、を有し、前記絶縁シートの周縁部に対向する前記ダイパッド部の外縁角部と前記絶縁シートの前記周縁部との、前記絶縁シート上の間に対応する前記封止部材の表面に凹部が形成されている、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、製造コストの増加を抑制しつつ、放熱性の低下が防止され、半導体装置の信頼性の低下を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の外観図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体装置の横断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体装置の縦断面図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図である。
【
図5】第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図(変形例1)である。
【
図6】第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図(変形例2)である。
【
図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる実装工程を示す図である。
【
図9】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる配置工程及び封止工程を示す図である。
【
図10】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を示す横断面図である。
【
図11】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、
図1及び
図3の半導体装置10において、上側を向いた面を表す。同様に、「上」とは、
図1及び
図3の半導体装置10において、上側の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、
図1及び
図3の半導体装置10において、下側を向いた面を表す。同様に、「下」とは、
図1及び
図3の半導体装置10において、下側の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。
【0012】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態における半導体装置10について、
図1~
図6を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の外観図である。なお、
図1(A)は半導体装置10の(
図1(B)の上側または下側から見た)側面図であり、
図1(B)は半導体装置10の平面図である。
図2は、第1の実施の形態の半導体装置の横断面図であり、
図3は、第1の実施の形態の半導体装置の縦断面図である。また、
図4は、第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図である。なお、
図2は、
図1(A)の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
図3は、
図2の一点鎖線X-Xにおける断面図である。
図4は、
図2の絶縁シート70の下半部の拡大図である。なお、
図4では、絶縁シート70上のダイパッド部のみを表示して、他の構成は省略している。
【0013】
まず、半導体装置10は、
図1に示されるように、封止部材60により部品全体が封止されて立体形状を成している。なお、半導体装置10の封止部材60は、立方体状でありながら角部に曲率を持たせてもよい。半導体装置10は、おもて面が封止部材60で覆われている。すなわち、絶縁シート70の裏面は封止部材60の裏面から露出されており、絶縁シート70の裏面と封止部材60との裏面とは同一平面を成している。また、半導体装置10は、封止部材60の長辺の両側面から、複数の制御リードフレーム30及び複数の主電流リードフレーム40がそれぞれ延出している。なお、本実施の形態において、制御リードフレーム及び主電流リードフレームを特に区別しない場合には、制御リードフレーム30及び主電流リードフレーム40として説明する。また、半導体装置10は、封止部材60の長手方向の両端部に取り付け孔60aがそれぞれ形成されている。取り付け孔60aの位置は、封止部材60の長手方向に平行であって、中心部を通る中心線上の両端部の2か所であってよい。取り付け孔60aは、ボルト(図示を省略)が挿通される径である。取り付け孔60aは、封止部材60のおもて面と裏面との間を貫通している。取り付け孔60aは、平面視で絶縁シート70の外側に形成されている。取り付け孔60aにボルトを挿通させることで、ヒートシンク等の冷却ユニットに半導体装置10を取り付けることができる。また、封止部材60のおもて面には凹部60bが形成されている。なお、
図1では、凹部60bが4つ形成されている場合を示している。凹部60bは、
図2に示す絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dに対応する位置に形成されている。
【0014】
このような半導体装置10は、
図2及び
図3に示されるような部品が封止部材60により封止されている。すなわち、半導体装置10は、6組の第1,第2半導体チップ21a,21b(パワー半導体チップ)と制御リードフレーム30(制御リードフレーム31,32,33,34を含む)と主電流リードフレーム40(主電流リードフレーム41a,41b,41c,41dを含む)と制御IC50と絶縁シート70とを含む。また、半導体装置10では、制御リードフレーム30、制御IC50、第1,第2半導体チップ21a,21b、主電流リードフレーム40との間が適宜、ボンディングワイヤ22により電気的に接続されている。なお、
図2では、制御IC50と接続されるボンディングワイヤ22の図示が省略されている。そして、半導体装置10はこのような部品が封止部材60により封止されている。但し、絶縁シート70の裏面は封止部材60の裏面から露出され、封止部材60の裏面と同一平面を成している。
【0015】
第1,第2半導体チップ21a,21bは、シリコン、炭化シリコンまたは窒化ガリウムから構成されるパワー半導体チップである。第1半導体チップ21aは、スイッチング素子を含む。スイッチング素子は、パワーMOSFET、IGBT等である。このような第1半導体チップ21aは、例えば、裏面に主電極としてドレイン電極(正極電極、IGBTではコレクタ電極)を、おもて面に、制御電極としてゲート電極(制御電極)及び主電極としてソース電極(負極電極、IGBTではエミッタ電極)をそれぞれ備えている。また、第2半導体チップ21bは、ダイオード素子を含む。ダイオード素子は、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオード等のFWD(Free Wheeling Diode)である。このような第2半導体チップ21bは、裏面に主電極としてカソード電極を、おもて面に主電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。第1,第2半導体チップ21a,21bの厚さは、例えば、180μm以上、220μm以下であって、平均は、200μm程度である。また、
図2では、6組の第1,第2半導体チップ21a,21bが設けられている場合を示しているに過ぎない。6組に限らず、半導体装置10の仕様等に応じた組数を設けることができる。また、第1,第2半導体チップ21a,21bに代わり、IGBT及びFWDが1チップ内に構成されたRC(Reverse-Conducting)-IGBTのスイッチング素子を含む半導体チップを配置してもよい。
【0016】
第1,第2半導体チップ21a,21bは、その裏面側が所定の主電流リードフレーム40上にはんだ(図示を省略)により接合されている。なお、はんだは、所定の合金を主成分とする鉛フリーはんだにより構成される。所定の合金とは、例えば、錫-銀からなる合金、錫-亜鉛からなる合金、錫-アンチモンからなる合金のうち少なくともいずれかの合金である。はんだには、銅、ビスマス、インジウム、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコン等の添加物が含まれてもよい。なお、はんだに代わり、焼結材を用いた焼結により接合させてもよい。この場合の焼結材は、例えば、銀、金、銅の粉末である。
【0017】
第1,第2半導体チップ21a,21bは、そのおもて面側の主電極が主電流リードフレーム40の端子部(後述する)とボンディングワイヤ22により電気的に接続されている。また、第1,第2半導体チップ21a,21bは、そのおもて面側の制御電極が制御IC50とボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続されている。なお、ボンディングワイヤ22は、導電性に優れた材質により構成されている。当該材質として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金により構成されている。また、ボンディングワイヤ22の径は、例えば、100μm以上、1.00mm以下である。
【0018】
複数の主電流リードフレーム40は、半導体装置10の
図2中右側に設けられ、複数の主電流リードフレーム40の他端部は半導体装置10の
図2中右側の側面から外側に延伸している。複数の主電流リードフレーム40のうち主電流リードフレーム41b,41a,41c,41dは、それらのダイパッド部のおもて面に第1,第2半導体チップ21a,21bが配置されて封止されている。また、主電流リードフレーム41aは、ダイパッド部41a1と連係部41a2と端子部41a3とを備えている。ダイパッド部41a1はその裏面に絶縁シート70が張りつけられている。また、複数のダイパッド部の角部に切り欠き部が形成されている。当該角部の詳細については後述する。連係部41a2は、傾斜を成してダイパッド部41a1と端子部41a3とを一体的に接続している。連係部41a2は、封止部材60により周囲を封止されている。端子部41a3は、連係部41a2の傾斜に応じてダイパッド部41a1のおもて面から上方及び横方向に離間する。端子部41a3の一端は、連係部41a2を介してダイパッド部41a1と一体的に接続している。端子部41a3の封止部材60により周囲を封止されている部分には、第1,第2半導体チップ21a,21bと接続されているボンディングワイヤ22が接続されている。端子部41a3の他端は、封止部材60から外部に延伸している。端子部41a3は、封止部材60の側面から、ダイパッド部41a1のおもて面と平行に延伸していてよい。なお、図示を省略するものの、主電流リードフレーム41b,41c,41dについても主電流リードフレーム41aと同様にダイパッド部と連係部と端子部とを含んでいる。
【0019】
複数の制御リードフレーム30(制御リードフレーム31,32,33,34を含む)は、封止部材60の
図2中左側に設けられている。複数の制御リードフレーム30は、主電流リードフレーム40のダイパッド部よりも高位であって、主電流リードフレーム40の端子部と同じ高さに位置している。制御リードフレーム30は半導体装置10の
図2中左側の側面から外側に延伸している。複数の制御リードフレーム30のうち制御リードフレーム34は、制御ダイパッド部34a1と制御配線部34a2と制御端子部34a3とを含んでいる。制御ダイパッド部34a1は半導体装置10の長手方向に沿って延伸しており、制御ダイパッド部34a1に制御IC50がはんだ(図示を省略)を介して配置されている。制御配線部34a2は、制御ダイパッド部34a1と制御端子部34a3とを一体的に接続している。制御ダイパッド部34a1及び制御配線部34a2は、封止部材60により周囲を封止されている。制御端子部34a3の一端は、制御配線部34a2と一体的に接続されて、封止部材60により周囲を封止されている。制御配線部34a2の周囲を封止されている部分には、制御IC50等と接続されているボンディングワイヤ(図示を省略)が接続されている。制御端子部34a3の他端は、封止部材60から外部に延伸している。制御端子部34a3は、封止部材60の側面から、ダイパッド部41a1のおもて面と平行に延伸してよい。
【0020】
このような複数の主電流リードフレーム40及び複数の制御リードフレーム30は、導電性に優れた材質により構成されている。このような材質として、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの1種を含む合金等により構成されている。複数の主電流リードフレーム40及び複数の制御リードフレーム30の厚さは、好ましくは、0.10mm以上、1.00mm以下であり、より好ましくは、0.20mm以上、0.50mm以下である。また、複数の主電流リードフレーム40及び複数の制御リードフレーム30に対して、耐食性に優れた材質によりめっき処理を行うことも可能である。このような材質は、例えば、ニッケル、金、または、少なくともこれらの1種を含む合金等である。
【0021】
制御IC50は、第1半導体チップ21aのゲート電極にボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続されている。制御IC50は、所定のタイミングで第1半導体チップ21aに制御電圧を印加する。なお、半導体装置10では、所望の機能を果たすために、制御IC50に替えて、または、制御IC50と共に、サーミスタ、コンデンサ、抵抗、電流センサ、温度センサ等の電子部品を配置してもよい。
【0022】
封止部材60は、熱硬化性樹脂と当該熱硬化性樹脂に含有されている無機物フィラーとを含んでいる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする。好ましくは、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を主成分とする。また、無機物フィラーには、酸化珪素を主成分とする無機物が用いられる。酸化珪素を用いることで、離型剤としても機能する。また、ハロゲン系、アンチモン系、水酸化金属系等の難燃剤を配合することなく、高い難燃性を保つことができる。無機物フィラーは、封止原料全体の70vol%以上、90vol%以下である。
【0023】
絶縁シート70もまた、熱硬化性樹脂と当該樹脂に含有されている無機物フィラーとを含んでいる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする。好ましくは、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を主成分とする。無機物フィラーには、高絶縁で高熱伝導の酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする無機物が用いられる。また、封止部材60と絶縁シート70は、同じ熱硬化性樹脂を主成分とすることが好ましい。より好ましくは、封止部材60と絶縁シート70の熱硬化性樹脂は、共にエポキシ樹脂を主成分とする。
【0024】
絶縁シート70は、例えば、平面視で、矩形状を成している。絶縁シート70の厚さは、50μm以上、1.0mm以下である。絶縁シート70のおもて面には、複数の主電流リードフレーム40のダイパッド部が絶縁シート70の長手方向に沿って一列に配置されている。なお、絶縁シート70は、少なくとも、複数のダイパッド部が配置できる大きさを要する。このため、絶縁シート70は、
図2に示す場合よりも広くてもよい。ダイパッド部周囲の封止部材60の裏面も覆うことで、半導体装置10の変形が生じた場合でもより確実に絶縁性を確保できる。但し、絶縁シート70は、取り付け孔60aが形成される領域を避けて形成する必要がある。
【0025】
図4に示されるように、絶縁シート70には、ダイパッド部41d1,41c1,41a1,41b1が絶縁シート70の周縁部71a,71cに沿って形成されている。押圧箇所72c,72dは、平面視で、絶縁シート70の周縁部71a,71b,71cとダイパッド部41d1との間の絶縁シート70上に形成される。より具体的には、押圧箇所72cは、絶縁シート70の周縁部71a,71bに対向するダイパッド部41d1の角部である外縁角部42と絶縁シート70の周縁部71b,71cとの間にある。また、押圧箇所72dは、絶縁シート70の周縁部71b,71cに対向するダイパッド部41d1の角部である外縁角部42と絶縁シート70の周縁部71b,71cとの間にある。ダイパッド部41d1の外縁角部42には、切り欠き部が形成されてよい。この場合、押圧箇所72c,72dは、ダイパッド部の切り欠き部に対応する絶縁シート70の領域である。なお、
図4では、押圧箇所72c,72dが円形の場合を示している。押圧箇所72c,72dは、円形に限定されず、長円、楕円、矩形であってよい。
【0026】
図2(並びに
図4)では、外縁角部のうち、絶縁シート70の四隅の角部に対応する外縁角部42に切り欠き部が形成されている場合を示している。これに伴い、絶縁シート70に押圧箇所72a,72b,72c,72dは、絶縁シート70の四隅の角部に対応する外縁角部42と絶縁シート70の周縁部(
図4の周縁部71a,71b,71cを含む)との間にある。このように絶縁シート70の押圧箇所を設定するにあたり、ダイパッド部に切り欠き部を設けることで、押圧箇所の領域を確保することができる。したがって、絶縁シート70に領域が十分あれば、複数のダイパッド部に対して必ずしも切り欠き部を形成する必要はない。この場合には、単に、複数のダイパッド部の外縁角部42と外縁角部42に対向する絶縁シート70の周縁部(
図4の周縁部71a,71b,71cを含む)との間の、絶縁シート70上に押圧領域を設定できる。
【0027】
また、既述の通り、絶縁シート70の裏面は封止部材60の裏面から露出されており、封止部材60の裏面と同一平面を成している。このように、絶縁シート70がダイパッド部(
図3ではダイパッド部41a1)の裏面を覆うことで、ダイパッド部と外部との絶縁性を確保することができる。さらに、絶縁シート70は、ダイパッド部から伝導された第1,第2半導体チップ21a,21b等の発熱を半導体装置10の外部に放出して半導体装置10の放熱に寄与する。
【0028】
次に、このような半導体装置10の変形例1について
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図(変形例1)である。なお、
図5は、
図2並びに
図4の場合とは異なるダイパッド部の形状の場合を示している。
図5は、
図4と同様に、
図2の絶縁シート70の下半部に対応している。また、
図5も
図4と同様に、絶縁シート70上のダイパッド部のみを表示して、他の構成は省略している。
【0029】
図5に示す変形例1では、絶縁シート70上にダイパッド部41e1,41f1,41g1,41h1が形成されている。ダイパッド部41e1は、絶縁シート70の
図5中下側であって、周縁部71a,71bに沿ったL字状を成している。ダイパッド部41f1は、ダイパッド部41e1と同様に、周縁部71a,71bに沿ったL字状を成して、ダイパッド部41e1よりも内側の絶縁シート70に形成されている。ダイパッド部41g1は、平面視で矩形状を成している。ダイパッド部41g1は、絶縁シート70の周縁部71cに沿って、ダイパッド部41f1の内側に形成されている。ダイパッド部41h1は、絶縁シート70上に、ダイパッド部41e1,41f1,41g1に隣接して形成されている。
【0030】
このような変形例1でも、
図2と同様に、押圧箇所(
図5の押圧箇所72c,72dを含む)は、絶縁シート70の四隅の角部に対応する外縁角部42と絶縁シート70の周縁部(
図5の周縁部71a,71b,71cを含む)との間にある。さらに、変形例1では、絶縁シート70の四隅の角部に対応する外縁角部42以外にも、2つのダイパッド部の対向する外縁角部に押圧箇所を設けてもよい。例えば、ダイパッド部41e1,41h1の外縁角部42に押圧箇所72eが設けられている。また、ダイパッド部41g1,41h1の外縁角部42に押圧箇所72fが設けられている。この場合、押圧箇所72e,72fの領域を確保するために、各外縁角部42に切り欠き部を形成してもよい。このように、押圧箇所はダイパッド部の外縁角部に設けられるものであり、ダイパッド部の押圧角部以外の角部には設けられない。
【0031】
また、このような半導体装置10の変形例2について
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施の形態の半導体装置の横断面図の要部拡大図(変形例2)である。なお、
図6は、
図4の場合に対する変形例である。
図6は、
図4と同様に、
図2の絶縁シート70の下半部に対応している。また、
図6も
図4と同様に、絶縁シート70上のダイパッド部のみを表示して、他の構成は省略している。
【0032】
図6に示す実施例2では、
図4と同様に、絶縁シート70には、ダイパッド部41d1,41c1,41a1,41b1が絶縁シート70の周縁部71a,71cに沿って形成されている。なお、この場合のダイパッド部41d1の外縁角部42には切り欠き部が形成されていない。また、実施例2では、押圧箇所72gが、ダイパッド部41d1に隣接して、絶縁シート70の周縁部71bに沿った矩形状を成して設けられている(
図6の破線箇所)。また、このような押圧箇所72gは、後述するように、封止原料の充填方向に沿って設けられている。このため、後述する押圧部も押圧箇所72gに沿って絶縁シート70の短辺に沿って設けられる。
【0033】
次に、このような半導体装置10の製造方法について
図7~
図10を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図8は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる実装工程を示す図である。
図9は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる配置工程及び封止工程を示す図である。
図10は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を示す横断面図である。なお、
図8,9は、
図2の一点鎖線X-Xの断面位置に対応する断面図である。また、以下では、
図2及び
図4に示した場合を例に挙げて説明する。
【0034】
まず、半導体装置10の構成部品を用意する準備工程を行う(
図7のステップS1)。半導体装置10の構成部品には、第1,第2半導体チップ21a,21b、主電流リードフレーム40、制御リードフレーム30、半硬化状態の絶縁シート、封止原料等がある。
【0035】
主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30は、タイバー等で一体化した配線パターンを有する金属板である。このような金属板は、一枚の金属板に対して、例えば、エッチング、打ち抜きにより、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30が形成される。さらに、金型を用いたプレスにより段差加工が施される。このようにして、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30がタイバー等で一体化した配線パターンを有する金属板が得られる。
【0036】
絶縁シートは、半硬化(Bステージ)の熱硬化性樹脂と無機物フィラーとを含むシートである。例えば、次のようにして製造される。まず、熱硬化性樹脂である液状樹脂(Aステージ)と当該液状樹脂と混合する無機物フィラーとを用意する。ここで用いられる樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする。好ましくは、エポキシ樹脂を主成分とする。また、無機物フィラーには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする無機物が用いられる。次に、液状(Aステージ)の熱硬化性樹脂と無機物フィラーとを混合し、シート状に塗工して、加熱し半硬化(Bステージ)して製造される。または、無機物フィラーが混合された液状(Aステージ)の熱硬化性樹脂を、加熱し半硬化(Bステージ)した後に、シート状に成形して製造されてもよい。なお、この際の加熱、加温時間は、タクトタイムにより適宜設定し、樹脂の触媒種に依存する。例えば、加熱温度は、100℃以上、200℃以下である。
【0037】
封止原料は、半硬化(Bステージ)の熱硬化性樹脂と無機物フィラーとを含む粉末またはタブレットである。例えば、次のようにして製造される。まず、熱硬化性樹脂である液状樹脂(Aステージ)と当該液状樹脂と混合する無機物フィラーとを用意する。ここで用いられる樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂を含む群から選択される少なくとも1種を主成分とする。好ましくは、エポキシ樹脂を主成分とする。また、無機物フィラーには、酸化珪素を主成分する無機物が用いられる。次いで、この液状樹脂に無機物フィラーを混合する。無機物フィラーが混合された液状樹脂(Aステージ)を加熱し半硬化した半硬化原料(Bステージ)を生成する。なお、この際の加熱、加温時間は、タクトタイムにより適宜設定し、樹脂の触媒種に依存する。例えば、加熱温度は、100℃以上、200℃以下である。半硬化状態の半硬化原料を粉末化したものを、例えば、タブレット状に成形して封止原料が生成される。
【0038】
次いで、金属板に含まれる主電流リードフレーム40のダイパッド部に対応する領域の裏面に半硬化状態の絶縁シートを貼り付ける貼付工程を行う(
図7のステップS2)。この際、圧着装置で圧着により貼り付けてよい。圧着装置はプレス機を用いることができる。なお、この際、加熱して圧着してもよい。このような圧着装置は、加熱プレス機を用いることができる。半硬化状態の絶縁シート70を加熱させ、軟化させた状態で圧着することで、密着して設置することができる。そして、圧着装置から取り出すと、半硬化状態の絶縁シート70が圧着された主電流リードフレーム40が形成される。
【0039】
次いで、金属板に含まれる主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30に、半導体チップ21a,21b及び制御IC50を配置し、配線する実装工程を行う(
図7のステップS3)。ここでは、
図9に示されるように、まず、主電流リードフレーム40のダイパッド部に第1,第2半導体チップ21a,21bを、制御リードフレーム30の制御ダイパッド部に制御IC50をそれぞれはんだ付けする。例えば、主電流リードフレーム41aのダイパッド部41a1のおもて面に第1,第2半導体チップ21a,21bをはんだ付けする。また、制御リードフレーム34の制御ダイパッド部34a1に制御IC50をはんだ付けする。次いで、これらを、ワイヤボンディングを行う所定のボンディング装置に搬送し、ワイヤ配線する。例えば、第1,第2半導体チップ21a,21bが配置された主電流リードフレーム40及び制御IC50が配置された制御リードフレーム30との間を適宜、ボンディングワイヤ22により電気的に接続してワイヤ配線する。
【0040】
次いで、第1,第2半導体チップ21a,21b及び制御IC50が実装され、絶縁シートが貼り付けられた金属板を、例えば、
図9及び
図10に示されるように、封止用の成形金型80にセットする配置工程を行う(
図7のステップS4)。主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30を含む金属板90を、封止を行う封止装置に搬送し、封止装置の下部金型82に配置する。この時、下部金型82の底面上に、半硬化状態の絶縁シート70及びダイパッド部がこの順になるように配置する。次に、封止装置で、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30を成形金型80の上部金型81及び下部金型82で挟み込む。この際、成形金型80には流路83及びキャビティ84が形成されている。このようにして、上部金型81及び下部金型82で覆われて構成されるキャビティ84に、複数の主電流リードフレーム40(
図9では、主電流リードフレーム41a)及び複数の制御リードフレーム30(
図9では、制御リードフレーム34)がセットされる。
【0041】
なお、上記のステップS1~S4の製造工程において、ステップS3の実装工程は、ステップS2の貼付工程の前に行ってもよい。または、ステップS2の貼付工程は、ステップS3の実装工程中に行われてもよい。この場合、ステップS3の第1,第2半導体チップ21a,21b及び制御IC50のはんだ付け後に、ステップS2の貼付工程を行い、ステップS3の実装工程の残りのワイヤ配線を行ってもよい。
【0042】
または、上記のステップS1~S4の製造工程において、ステップS1の準備工程の後、ステップS2の貼付工程を行わず、ステップS3の実装工程を行う。そして、下部金型82に半硬化状態の絶縁シートを配置して、その上に半導体チップ21a,21b及び制御IC50を配置、配線した複数の主電流リードフレーム40(
図9では、主電流リードフレーム41a)及び複数の制御リードフレーム30を配置してもよい。具体的には、ステップS4の配置工程において、まず、下部金型82の底面に絶縁シート70を絶縁シート70の裏面が下部金型82の底面に接するように配置する。次に、絶縁シート70のおもて面上にダイパッド部をダイパッド部の裏面が絶縁シート70のおもて面に接するように配置する。こうすることで、ステップS4の配置工程でステップS2の貼付工程も同時に実行される。
【0043】
次いで、半硬化ユニットを形成する封止工程を行う(
図7のステップS5)。半硬化ユニットは、半硬化状態の封止原料で、主電流リードフレーム40の端子部と制御リードフレーム30の制御端子部とを突出させ、ダイパッド部の裏面を露出して、主電流リードフレーム40のダイパッド部、連係部、制御リードフレーム30の制御ダイパッド部、制御配線部及び第1,第2半導体チップ21a,21bを封止したものである。
【0044】
封止工程(
図7のステップS5)では、まず、
図9に示されるように、押圧部85a,85bにより半硬化状態の絶縁シート70を下部金型82の底面側に押圧して、この状態を保つ。この際、
図10に示されるように、押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)により、半硬化状態の絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dが押圧される。なお、上部金型81に設けられた押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)は、成形金型80の上部金型81に
図9中上下に移動可能に設けられ、下部金型82の表面に対して垂直に押圧してよい。押圧部は、円柱状、または、角柱状のピンであってよい。また、押圧部は、例えば、絶縁シートの短辺に沿った板状であってもよい。この場合は、
図6で示したように、絶縁シート70に押圧箇所72gが設けられる。後に説明するように、例えば、キャビティ84に封止原料を
図10中左右方向に沿って充填する場合に、押圧部が絶縁シートの短辺に沿った板状であって、押圧箇所72gに設けられる。これにより、封止原料の充填を妨げずに、絶縁シートを確実に押さえることができる。このように押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)は、封止原料の充填を妨げることなく、絶縁シートを確実に押さえることができれば他の形状でもよい。また、押圧部は、後述するようにキャビティ84内に充填される封止原料に対して離型性が高い材質で構成され、または、そのような材質が表面に塗布されていてよい。好ましくは、上部金型81と同じ材料を含む。
【0045】
次いで、タブレット状の半硬化(Bステージ)状態の封止原料を封止装置のポットにセットし加熱して軟化させる。軟化した半硬化封止原料を加圧して流路83からキャビティ84内に押し入れる。上部金型81および下部金型82は、あらかじめ加熱されており、軟化した半硬化封止原料は、キャビティ84内に充填される。そして、キャビティ84内に半硬化封止原料が充填された段階で、押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)を成形金型80の上方に移動させて、ダイパッド部(
図9ではダイパッド部41a1)に対する押圧を開放する。その際も、流路83から半硬化封止原料が加圧して押し入れられており、押圧部85a,85bがあった部分は、半硬化封止原料で埋められる。
【0046】
そして、流路83からの半硬化封止原料の充填を停止して、成形金型80を分離し、成形金型80から半硬化ユニットを取り出す。すると、第1,第2半導体チップ21a,21b、主電流リードフレーム40、制御リードフレーム30、半硬化状態の絶縁シート70等が半硬化状態の封止部材(半硬化樹脂)により封止された半硬化ユニットが成形される。この際、半硬化ユニットの裏面には半硬化状態の絶縁シート70の裏面が半硬化ユニットの裏面と同一平面となるように露出している。また、押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)は上方に引き抜いてしまうことで、半硬化樹脂のおもて面には押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)があった箇所に凹部60bが形成される(
図3を参照)。なお、半硬化樹脂のおもて面の押圧部(
図9の押圧部85a,85bを含む)があった箇所は、凸部であってもよい。
【0047】
次いで、硬化処理を行う(
図7のステップS6)。まず、封止装置から取り出した半硬化ユニットを加熱装置に搬送する。そして、加熱装置内に搬送された、半硬化ユニットを所定温度で加熱する。なお、この際の加熱温度は、120℃以上、180℃以下である。こうして、半硬化ユニットを硬化する。以上により、
図1~
図4に示した、硬化された封止部材60を含む半導体装置10が製造される。なお、硬化処理(
図7のステップS6)の前または後に、金属板90からタイバー91等の不要な部材を除去してよい。さらに、主電流リードフレーム40の端子部、制御リードフレーム30の制御端子部を曲げ加工してよい。
【0048】
上記の半導体装置10の製造方法では、第1,第2半導体チップ21a,21bと、ダイパッド部41a1とダイパッド部41a1に一体的に接続された端子部41a3とを含む主電流リードフレーム41aと、半硬化状態の絶縁シート70とを用意し(
図7のステップS1)、ダイパッド部41a1のおもて面に第1,第2半導体チップ21a,21bを実装し、配線する(
図7のステップS2,S3)。次いで、成形金型80の底面上に、絶縁シート70が裏面に張り付けられたダイパッド部41a1の裏面側が配置された状態で、ダイパッド部41a1の半硬化状態の絶縁シート70の周縁部に対向する外縁角部に対応する絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dを押圧部85a,85bで底面側にそれぞれ押圧しながら、成形金型80内に半硬化状態の封止原料を充填して、封止原料で第1,第2半導体チップ21a,21bとダイパッド部41a1とを封止して半硬化ユニットを形成する(
図7のステップS4,S5)。最後に、半硬化ユニットを加熱して硬化する(
図7のステップS6)。このように絶縁シート70は押圧部で押えられて封止原料で封止されるために、ダイパッド部41a1と絶縁シート70との間で捲れの発生が抑制される。特に、絶縁シート70の剥離が生じやすい四隅での捲れの発生が抑制される。したがって、絶縁シート70の裏面に形成される封止原料によるバリの発生が抑制される。バリの発生が抑制されることで、バリを起点とした半導体装置10のクラック等の発生の抑制を予防することができる。また、このようにして製造された半導体装置10は、放熱性の低下も抑制されて、信頼性の低下を抑制することができる。また、絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dに対応する複数のダイパッド部の外縁角部に切り欠き部が形成されて、押圧部で押圧箇所72a,72b,72c,72dを押圧している。このため、沿面距離が小さくなることはなく、また、ダイパッド部を大きくする必要もない。したがって、半導体装置10の小型化に寄与することができる。また、ダイパッド部が押圧されていないために、ダイパット部裏面の絶縁シート70の厚さが薄くなり、絶縁性の低下を及ぼす恐れがない。絶縁シート70に押圧領域を設けることで、ダイパット部裏面の絶縁シート70の厚さが確保され、絶縁性を確保することができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態の半導体装置の製造方法について、
図11を用いて説明する。
図11は、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を示す横断面図である。なお、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法もまた、第1の実施の形態の半導体装置10と同じ部品については同じ符号を付して、それらの説明は省略または簡略化する。第2の実施の形態の半導体装置の製造方法もまた、
図7の製造方法に沿って形成される。但し、第2の実施の形態では、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30を含む金属板90aに被覆部材が含まれている。
【0050】
図11では、被覆部材92a,92b,92c,92dは、制御リードフレーム30及び主電流リードフレーム40とタイバー91を介して一体的に接続されている。被覆部材92a,92b,92c,92dは、タイバー91から延伸して、押圧箇所72a,72b,72c,72dを被覆する。被覆部材92a,92b,92c,92dの先端が、押圧箇所72a,72b,72c,72dを被覆していてよい。
【0051】
金属板90aを利用して
図7の製造方法に沿って半導体装置が製造される。この際、
図7のステップS4の配置工程において、金属板90aを成形金型80にセットすると、
図11に示されるように、半硬化状態の絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dが金属板90aの被覆部材92a,92b,92c,92dの先端部に覆われている。そして、押圧部(
図9では押圧部85a,85bを含む)を半硬化状態の絶縁シート70側に移動させる。すると、押圧部(
図9では押圧部85a,85bを含む)は半硬化状態の絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dを被覆部材92a,92b,92c,92dを介して押圧する。そして、この状態を保持して、
図7のステップS5の封止工程、ステップS6の硬化工程を経て半導体装置が製造される。なお、硬化処理(
図7のステップS6)の前または後に、金属板90aからタイバー91等の不要な部材を除去してよい。さらに、主電流リードフレーム40の端子部、制御リードフレーム30の制御端子部を曲げ加工してよい。
【0052】
このようにして製造された半導体装置は、内部に主電流リードフレーム40、制御リードフレーム30並びに被覆部材92a,92b,92c,92dを含んでいる。主電流リードフレーム40は、ダイパッド部及び連係部が封止部材で封止され、端子部が封止部材60の一方の側面から外側に延出している。制御リードフレーム30は、制御ダイパッド部及び制御配線部、制御ダイパッド部が封止部材60で封止され、制御端子部が封止部材60の他方の側面から外側に延出している。被覆部材92a,92b,92c,92dは、押圧箇所72a,72b,72c,72dを被覆する一端が封止部材60で封止され、他端が封止部材60の側面から露出している。被覆部材92a,92b,92c,92dは、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30が延出している側面と異なる側面から露出していてよい。更に、平面矩形状の半導体装置10において、一方の長辺から主電流リードフレーム40の端子部が延出し、他方の長辺から制御リードフレーム30の制御端子部が延出し、短辺から被覆部材92a,92b,92c,92dの他端が露出してよい。
【0053】
このように、金属板90aを用いることで、ステップS4の配置工程では、半硬化状態の絶縁シート70は、被覆部材92a,92b,92c,92dを介して押圧される。このため、主電流リードフレーム40や制御リードフレーム30との間隔精度を高めて押圧することができる。したがって、ダイパッド部近傍で押圧することが可能になり、半導体装置を小型化することができる。また、このような被覆部材92a,92b,92c,92dは金属板90aに対して、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30とは別に形成することができる。さらに、被覆部材92a,92b,92c,92dは、電圧が印可されないアースパターンである場合は、露出部において沿面距離を取る必要がない。このため、被覆部材92a,92b,92c,92dは、絶縁シート70の押圧箇所72a,72b,72c,72dに対応さえすればよく、金属板90aにおいて、主電流リードフレーム40及び制御リードフレーム30から独立して自由に形成することができる。また、半硬化状態の絶縁シート70は、押圧箇所72a,72b,72c,72dに剥離や破れが生じやすいため、被覆部材92a,92b,92c,92dを介して確実に押圧され、剥離や破れの発生が抑制される。このため、半導体装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 半導体装置
21a 第1半導体チップ
21b 第2半導体チップ
22 ボンディングワイヤ
30,31,32,33,34 制御リードフレーム
34a1 制御ダイパッド部
34a2 制御配線部
34a3 制御端子部
40,41a,41b,41c,41d 主電流リードフレーム
41a1,41b1,41c1,41d1,41e1,41f1,41g1,41h1 ダイパッド部
41a2 連係部
41a3 端子部
42 外縁角部
50 制御IC
60 封止部材
60a 取り付け孔
60b 凹部
70 絶縁シート
71a,71b,71c 周縁部
72a,72b,72c,72d,72e,72f,72g 押圧箇所
80 成形金型
81 上部金型
82 下部金型
83 流路
84 キャビティ
85a,85b 押圧部
90,90a 金属板
91 タイバー
92a,92b,92c,92d 被覆部材