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特許7608732ナノ粒子製造装置、及び、ナノ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ナノ粒子製造装置、及び、ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20241224BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALN20241224BHJP
   C01G 11/00 20060101ALN20241224BHJP
【FI】
B01J19/00 N
B82Y30/00
C01G11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020097527
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186787
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八浪 竜一
(72)【発明者】
【氏名】金野 潤
(72)【発明者】
【氏名】日高 隆
【審査官】田名部 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508440(JP,A)
【文献】特開2006-159165(JP,A)
【文献】特開2008-221093(JP,A)
【文献】特開2011-183381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00 - 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料溶液を、導電性の反応管に供給し、量子ドットを製造するためのナノ粒子製造装置であって、
前記反応管は、連続する加熱区間としての予熱部と反応部とを有し、
前記予熱部及び前記反応部の各加熱区間が、夫々、前記反応管に直接通電して加熱され、
前記予熱部は、前記反応部よりも前記反応管の長さが短く、
各加熱区間に流れる電流量を個別に制御して、各加熱区間ごとに個別に温度制御可能とすることを特徴とするナノ粒子製造装置。
【請求項2】
前記加熱区間の両端に電極が設けられており、
隣り合う前記加熱区間の境に共通電極が設けられていることを特徴とする請求項に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項3】
前記加熱区間には、パルス状の電流が流れるように制御されることを特徴とする請求項1又は請求項に記載のナノ粒子製造装置。
【請求項4】
前記加熱区間に印加される電圧が交番電圧であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のナノ粒子製造装置。
【請求項5】
前記加熱区間には、夫々、前記加熱区間の電気抵抗よりも低い電気抵抗からなるシャントスイッチ回路が取り付けられており、前記シャントスイッチ回路の開閉動作により、前記加熱区間に流れる電流が増減されて前記加熱区間の温度制御が行われることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のナノ粒子製造装置。
【請求項6】
前記反応管の液接面に、ライニングが施されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のナノ粒子製造装置。
【請求項7】
前記予熱部の流路断面積が、前記反応部の流路断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載のナノ粒子製造装置。
【請求項8】
材料溶液を、導電性の反応管に供給し、量子ドットを製造するためのナノ粒子の製造方法であって、
前記反応管は、連続する加熱区間としての予熱部と反応部とを有し、
前記予熱部は、前記反応部よりも前記反応管の長さが短く、
前記予熱部及び前記反応部の各加熱区間の夫々を、前記反応管に直接通電して加熱し、このとき、各加熱区間に流れる電流量を個別に制御して、各加熱区間ごとに個別に温度制御した状態で、前記材料溶液を、前記反応管に供給することを特徴とするナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子製造装置、及び、ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、マイクロリアクタ装置により製造することができる。マイクロリアクタ装置を構成する加熱された反応管(反応チューブ、金属細管)に材料溶液を通すことで、ナノ粒子を製造することができる。例えば、特許文献1には、金属細管で形成された予熱部と反応部とが一体的或いは別体で構成されたマイクロリアクタ装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5137051号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のマイクロリアクタ装置では、高精度な温度制御を行うことができず、ナノ粒子の品質がばらつきやすかった。すなわち、予熱部は、材料溶液を供給する入り口側にあるため、加熱温度が十分に高くならず、核生成が不十分になりやすかった。また、予熱部の後段に位置する反応部では、全域において、温度を所定値に保持できるように温度制御する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、高精度な温度制御を行うことが可能なナノ粒子製造装置、及び、ナノ粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるナノ粒子製造装置は、材料溶液を、導電性の反応管に供給し、量子ドットを製造するためのナノ粒子製造装置であって、前記反応管は、連続する加熱区間としての予熱部と反応部とを有し、前記予熱部及び前記反応部の各加熱区間が、夫々、前記反応管に直接通電して加熱され、前記予熱部は、前記反応部よりも前記反応管の長さが短く、各加熱区間に流れる電流量を個別に制御して、各加熱区間ごとに個別に温度制御可能とすることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記反応管は、連続する複数の加熱区間に分かれており、前記予熱部、及び反応部の各加熱区間が、夫々、前記反応管に直接通電して加熱されることが好ましい。
本発明では、前記加熱区間の両端に電極が設けられており、隣り合う前記加熱区間の境に共通電極が設けられていることが好ましい。
【0008】
本発明では、前記加熱区間には、パルス状の電流が流れるように制御されることが好ましい。本発明では、例えば、前記加熱区間に印加される電圧が交番電圧である。
【0009】
本発明では、前記加熱区間には、夫々、前記加熱区間の電気抵抗よりも低い電気抵抗からなるシャントスイッチ回路が取り付けられており、前記シャントスイッチ回路の開閉動作により、前記加熱区間に流れる電流が増減されて前記加熱区間の温度制御が行われることが好ましい。
【0010】
本発明では、例えば、前記反応管の液接面に、ライニングが施されている。本発明では、前記予熱部の流路断面積が、前記反応部の流路断面積よりも小さいことが好ましい。
【0011】
本発明は、材料溶液を、導電性の反応管に供給し、量子ドットを製造するためのナノ粒子の製造方法であって、前記反応管は、連続する加熱区間としての予熱部と反応部とを有し、前記予熱部は、前記反応部よりも前記反応管の長さが短く、前記予熱部及び前記反応部の各加熱区間の夫々を、前記反応管に直接通電して加熱し、このとき、各加熱区間に流れる電流量を個別に制御して、各加熱区間ごとに個別に温度制御した状態で、前記材料溶液を、前記反応管に供給することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態のナノ粒子製造装置の一部を示す模式図である。
図2図2は、ナノ粒子製造装置に用いられる反応管の断面構造を示す模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態のナノ粒子製造装置に適用される温度制御方法を説明するための回路構成の一例である。
図4図4は、図3の回路に、電流制限手段を加えた図である。
図5図5は、図4の回路を有するナノ粒子製造装置において、温度制御の動作を示すフローチャート図である。
図6図6は、予熱部と反応部の管径を示す模式図である。
図7図7は、実験で使用した実施例の反応管に対する温度制御方法を示す模式図である。
図8図8は、実験で使用した比較例の反応管に対する温度制御方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
<ナノ粒子製造装置>
図1は、本実施形態におけるナノ粒子合成装置の一部を示す模式図である。本実施形態のナノ粒子合成装置は、フロー式連続ナノ粒子合成装置である。
【0015】
図1は、主に、ナノ粒子合成装置を構成する加熱反応部を示している。すなわち、ナノ粒子合成装置は、反応管(反応チューブ)1を備え、更に、反応管1の下流側に位置する下流側配管2、反応管1の上流側に位置する上流側配管3、反応管1の下流側に接続された背圧弁4、反応管1の上流側に接続された逆流防止弁(逆止弁)5を有して構成される。
【0016】
(反応管1)
図1に示す反応管1について説明する。反応管1は、例えば、ステンレス製の円筒であるが、ステンレスに限られるものではなく、少なくとも、図1に示す第1の接続点(電極)6から第3の接続点(電極)8まで連続する導電体で構成され、反応管1の内部に材料溶液が通過できる連続した空間が設けられているものであれば、材質を問うものではない。例えば、チタンで作られた反応管1は、高温高圧の過酷な反応条件であっても管壁の劣化が少なく、安定した反応の維持するに好ましいものである。
【0017】
また、反応管1の内部構造については、図2に示すように、反応管1の内壁面1aに、ライニングが施されていてもよい。図2に示す符号9は、ライニング層を示す。ライニング層9は、反応管1の内壁面1aに、化学的腐食や物理的摩耗を防ぐ目的で形成された塗膜であり、広くコーティングも含む。ライニング層9は、一般的には、ガラスライニング、テフロン(登録商標)ライニングなどを指すが、本実施形態では、反応管1である金属自体の表面を酸化、窒化するなどして反応管1の母材とは物性の異なる薄膜を、少なくとも材料溶液に接する反応管内面に形成せしめたものも含む。
【0018】
また、反応管1の大きさを限定するものでないが、反応管1の外径は、数mm、内径は、数百μmであり、全長(図1に示す第1の接続点6から第3の接続点8までの長さ)は、数千mm程度であり、このように、内部に細長い空間を持ち、両端が解放された金属細管を構成する。
【0019】
図1に示すように、反応管1には、上流側から、第1の接続点6、第2の接続点7、及び第3の接続点8が設けられている。なお、接続点は、4点以上であってもよいが、図1では、3点として説明する。
【0020】
図1に示すように、第1の接続点6には第1の配線10が接続され、第2の接続点7には第2の配線11が接続され、第3の接続点8には第3の配線12が接続されている。
【0021】
図1に示す第1の接続点6から第2の接続点7までの反応管1は、ナノ粒子の核生成を担う予熱部13であり、第2の接続点7から第3の接続点8までの反応管1は、ナノ粒子の核成長を担う反応部14である。
【0022】
例えば、各配線10、11、12は、図示しない電源に接続されている。これにより、反応管1を配線10、11、12を介して通電でき、予熱部13及び反応部14を、夫々、加熱するためのエネルギーを反応管1に供給することができる。上記したように、反応管1は、少なくとも、第1の接続点6から第3の接続点8まで連続する導電体を構成するため、通電で供給される電気エネルギーによって発熱する。すなわち、反応管1は、反応容器であると同時に、材料溶液の反応のための熱エネルギーを供給するヒータの役目も果たす。
【0023】
このとき、反応管1の予熱部13及び反応部14に印加される電圧は、交流であっても、直流であってもよい。また、交流が印加される場合、その周波数は制限されるものではない。例えば、交流が印加される場合、周波数は商用電源に近い60~200Hzであってもよく、また、1MHzを超えるような高い周波数であってもよい。
【0024】
反応管1に印加される周波数が増大するにつれて、反応管1を構成する導電体には表皮効果による電気抵抗の増大が表れる。例えば、肉厚で太いステンレスからなる反応管1を用いることで、反応管1の両端に位置する第1の接続点6と第3の接続点8間の電気抵抗が低くなりすぎるとき、高周波交流を印加することで、上記の表皮効果による電気抵抗の増大を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態の反応管1には、比較的大きい電流(限定するものではないが、10Aを超える電流)が流れるため、反応管1と各接続点6、7、8との間の接触抵抗をできる限り小さくする必要がある。接触抵抗が大きくなると、接触抵抗による発熱が生じ、発熱の均一性を損ねることになるためである。そこで本実施形態では、接続点6、7、8に、例えば、銅製の端子をカシメで固定し、さらにロウ付けを行うことで電気的な接触を確実なものにしている。
【0026】
(予熱部13と反応部14)
図1に示すように、反応管1は、連続する加熱区間としての予熱部13と反応部14とを有する。このように、予熱部13と反応部14との間に間隔が空いておらず、反応管1内を通る材料溶液は、予熱部13から即座に加熱された反応部14に移ることができる。
【0027】
図1では、第2の接続点7は、予熱部13及び反応部14の共通電極を構成する。これにより、第1の接続点6と第2の接続点7の間の反応管1を通電し、第2の接続点7と第3の接続点8の間の反応管1を通電することで、予熱部13と反応部14とを連続する加熱区間として構成することができる。
【0028】
このように、本実施形態では、予熱部13及び反応部14は、夫々、反応管1に直接通電して加熱されることを特徴とする。
【0029】
図1に示すように、予熱部13は、反応部14よりも反応管1の長さが短い。このため、予熱部13と反応部14とで、反応管1の肉厚及び管径が同じであるとすると、長さの短い予熱部13は、反応部14よりも電気抵抗が小さい。一例を示すと、第1の接続点6から第2の接続点7までの予熱部13の長さは、約200mmであるのに対して、第2の接続点7から第3の接続点8までの反応部14の長さは、約1000mmである。このように、予熱部13の長さは反応部14の長さの約1/5であり、したがって、反応管1の肉厚及び管径が同じであるとすると、予熱部13の電気抵抗は、反応部14の電気抵抗の約1/5である。本実施形態で用いているステンレスチューブの1000mm当たりの室温での電気抵抗は、例えば、実測で1.2Ωであるため、予熱部13の電気抵抗は、約0.24Ω、反応部14の電気抵抗は、約1.2Ωとなる。
【0030】
本実施形態では、予熱部13及び反応部14に、それぞれ別々に通電制御を行うことができる。通電は、図示しない温度検出手段により、予熱部13及び反応部14の温度を夫々測定し、各温度を基に、予熱部13及び反応部14が設定温度に保たれるように、PIDを用いたON/OFF制御を行うことができる。なお、本実施形態では、温度検出手段を限定するものではないが、例えば、熱電対や、サーミスタ、放射温度計などを適用することができる。
【0031】
本実施形態では、予熱部13の電気抵抗が反応部14より小さくなっても、予熱部13と反応部14を別々に通電制御することで、予熱部13を素早く所定温度にまで上昇させることができるとともに、所定温度に安定して保つことができる。
【0032】
また、本実施形態では、予熱部13と反応部14を連続した加熱区間とし、予熱部13と反応部14との間に間隔が空いていない。このため、予熱部13から反応部14にかけて所定温度に連続して制御された加熱領域を形成でき、核生成から核成長反応を安定且つ高精度に行うことができ、ナノ粒子の品質をばらつきを抑制することができる。
【0033】
また、上記では、予熱部13と反応部14の管径を同じとしたが、図6のように、予熱部13を反応部14よりも管径を小さくすることで、予熱部13の流路断面積を、反応部14の流路断面積よりも小さくし、予熱部13を所定温度まで加熱するのにかかる時間をより効果的に短くすることができる。なお、核生成を担う予熱部13での昇温時間が短いほど生成された量子ドットの蛍光半値幅(FWHM)を小さくすることができる。なお、反応部14は、予熱部13の流路断面積より大きい流路断面積を有することで、量産性の向上を図ることができる。
【0034】
(背圧弁4)
図1に示す背圧弁4は、反応管1内の圧力を一定値に保ち、試料溶液の流れを安定化すると共に、大気圧以上の圧力とすることによって試料溶液の沸騰を抑え、常圧では到達できない温度域での合成を可能とするものである。例えば、背圧弁4には、GLサイエンス社のバックプレッシャーレギュレータP-789を用いることができる。背圧値は、反応条件によって適切に選択することができる。
【0035】
(逆止弁5)
逆止弁5は、背圧弁4と共に反応管1内の圧力を維持するために取り付けられる。逆止弁5の接続により、反応管1内の圧力が加熱によって上昇しても、試料溶液の逆流は生じず、背圧弁4が規定する圧力が適切に維持される。例えば、逆止弁5には、GLサイエンス社製のインラインチェックバルブCV-3000を用いることができる。
【0036】
逆止弁5よりも上流側は、上流側配管3を介して、図示しない送液ポンプや流量計、試料溶液タンクなどが接続配置されている。また、背圧弁4よりも下流側には、下流側配管2を介して、合成物の検査や回収を行う図示しない機器類に接続されている。
【0037】
本実施形態では、図1に示す構造により、試料溶液は、上流側配管3から順次、反応管1に送り込まれ、反応しながら反応管1内を移動し、反応を終えて下流側配管2へと流れていく一方向の流れ(図1の矢印を参照)を形成する。
【0038】
<ナノ粒子製造装置を用いてナノ粒子を合成する際の動作について>
次に、図1に示すナノ粒子製造装置により、実際にナノ粒子の合成を行う際の動作を順に説明する。
【0039】
本実施形態のナノ粒子製造装置を起動後、送液ポンプ(図示せず)によって、試料溶液タンク(図示せず)から材料溶液が上流側配管3、及び逆止弁5を介して、反応管1内に満たされる。材料溶液は反応管1を満たした後も、さらに供給され、背圧弁4、下流側配管2を経て、合成装置全体の配管内を満たすように送り込まれる。
【0040】
次いで、図示しない電源により、各配線10、11、12に夫々電力が供給される。本実施形態では、図1に示すように、第2の配線11が接続される第2の接続点7を、予熱部13及び反応部14の共通電極とし、第1の配線10が接続される第1の接続点6及び、第3の配線12が接続される第3の接続点8を、第2の接続点7を挟んで互いに反対の位置に配置している。これにより、本実施形態では、電力供給に交流を使用した際、第1の接続点6と第3の接続点8の電圧が同位相で交番するように配線することができる。
【0041】
図1に示す予熱部13及び反応部14の各接続点6、7、8に直接、配線することにより、予熱部13及び反応部14を直接通電でき、且つ、互いに異なる電気抵抗を持つ予熱部13及び反応部14を別々に温度制御することが可能となる。
【0042】
例えば、交番電圧が変化する中で、第1の接続点6と第3の接続点8の電位が、第2の接続点7の電位より高くなる場合を考えると、第1の接続点6から流れ込んだ電流は、反応管1の予熱部13を加熱しながら共通電極である第2の接続点7に流れ込む。一方、第3の接続点8から流れ込んだ電流は、反応部14を加熱しながら第2の接続点7に流れ込む。この時、三つの接続点6、7、8のうち最も電位が低いのは共通電極である第2の接続点7であるため、第1の接続点6から予熱部13に流れ込んだ電流が第2の接続点7を超えて第3の接続点8にまで流れていくことはない。第3の接続点8から反応部14に流れ込んだ電流に関しても同様である。また、第1の接続点6と第3の接続点8の電圧が異なっていても同様である。そして、第2の接続点7に比べて、第1の接続点6及び第3の接続点8の電圧が低いような交番状態であっても、前述の説明の電流の流れる方向が逆転するだけで、予熱部13に流れた電流が反応部14にまで流れることはなく、また、反応部14に流れた電流が予熱部13に流れることはない。なお、上記した電流の流れは、直流電源を用いた通電においても同様に成立させることができ、直流を用いた制御を行うことも可能である。
【0043】
このように、第2の接続点7を、予熱部13及び反応部14の共通電極とすることで、連続する加熱区間としての予熱部13と反応部14を別々に通電制御することができる。これにより、予熱部13と反応部14とが同じ温度となるように、或いは別々の温度となるように制御することが可能である。
【0044】
このように、本実施形態では、予熱部13と反応部14とを別々に温度制御することができ、これにより、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0045】
本実施形態のフロー式連続ナノ粒子合成装置では、反応管1の加熱を開始するのに前後して、送液ポンプを駆動して材料溶液を逐次、反応管1に送り込み、フロー式の連続合成を行う。このとき、反応管1の予熱部13内では材料溶液は加熱され、反応を開始するが、第1の接続点6に近い位置は加熱前の材料溶液が連続的に流れ込むため、第1の接続点6より下流側に比べて温度が低くなりやすい。すなわち、反応管1の長さ方向への電気抵抗の分布が一様であるとすると、電流を流したことで生じる発熱もまた一様である。その結果、材料溶液の入り口である第1の接続点6付近は温度が低くなる。
【0046】
本実施形態では、この材料溶液の流入部分における温度低下を防ぐために、反応部14の前段に、予熱を行う加熱区間としての予熱部13を設け、反応部14と分けて独立した温度制御を行っている。予熱部13は、ナノ粒子の合成に先立つ核生成を促すための予熱の区間であり、予熱部13と反応部14とを同じ温度設定にしても、個別の温度制御が可能であるために、材料溶液を昇温するため単位長さあたりに投入されるエネルギーを、反応部14に比較して大きくすることが可能になる。この結果、予熱部13の第1の接続点6付近の温度低下を極力抑制でき、ナノ粒子を製造するうえで重要な核生成を、精度よく且つ安定して行うことができる。
【0047】
さて、反応管1を通過する過程で反応し合成されたナノ粒子は、下流側配管2を経て図示しない検査機器や生成物回収のためのタンク等に流れていくが、これら一連の流れは、図示しないポンプを一定の速度で動かし、送液量を一定にすることで連続的に進む。このとき、動作開始初期の反応管1内に滞留していた材料溶液が流れ去った後は、本実施形態のナノ粒子製造装置により、安定かつ均一な特性を持ったナノ粒子を含む生成物を連続的に生成することができる。
【0048】
なお、通電により反応管1を加熱するための回路構成は、上記で説明したものに限るものではない。例えば、隣り合う予熱部13と反応部14との一方の接続点を共通電極とせず、複数の加熱区間をスイッチで切り替えながら時分割で加熱制御をする構成とすることもできる。
【0049】
また、反応管1への通電時、反応管1の中には材料溶液が満たされているが、本実施形態における材料溶液は、導電性が極めて低い物質で構成されているため、材料溶液を取り巻く反応管1を流れる電流、あるいは各接続点6、7、8の間にかかる電圧の影響を無視することができる。
【0050】
また、図1に示す実施形態では、接続点の数を3とし、加熱区間の数を2としているが、接続点の数、及び加熱区間の数を限定するものではない。また、接続点間の距離や、各加熱区間の長さの比率、反応管1の長さや太さ、断面形状等についても、合成するナノ粒子の種類等に応じて種々変更することができる。
【0051】
また、フロー式にて製造されるナノ粒子として量子ドット(Quantum dot(QD))を例示することができる。量子ドットは、数百~数千個程度の原子から構成された、粒径が数nm~数十nm程度のナノ粒子である。量子ドットは、蛍光ナノ粒子、半導体ナノ粒子、または、ナノクリスタルとも呼ばれる。
【0052】
本実施形態のナノ粒子製造装置を用いることで、粒径及び蛍光半値幅のばらつきが小さく、量子効率が高い量子ドットを安定して製造することができる。
【0053】
<本実施形態のナノ粒子製造装置を用いた温度制御について>
図3を用いて、更に詳しく、本実施形態の温度制御について説明する。なお、図3の回路構成図は、温度制御の一例であって、これに限定されるものではない。図3に示す実施形態では、反応管1は、3つの加熱区間に分けられている。すなわち、反応管1には、4つの接続点B、C、D、Eが設けられており、第1の接続点Bと第2の接続点Cの間の第1の加熱区間15、第2の接続点Cと第3の接続点Dとの間の第2の加熱区間16、及び、第3の接続点Dと第4の接続点Eの間の第3の加熱区間17を備える。
【0054】
図3に示すように、各接続点B~Eに各配線21~24が接続されており、第1の接続点Bに接続された第1の配線21と、第4の接続点Eに接続された第4の配線24との間に、反応管1を加熱するためのエネルギーを与える電源25が接続されている。また、図3に示すように、第1の配線21と、第2の接続点Cに接続された第2の配線22との間(点A-X間)は、スイッチ26を介して接続されており、第1の温度制御回路31を構成している。また、第2の配線22と、第3の接続点Dに接続された第3の配線23との間(点X-Y間)は、スイッチ27を介して接続されており、第2の温度制御回路32を構成している。また、第3の配線23と、第4の接続点Eに接続された第4の配線24との間(点Y-D間)は、スイッチ28を介して接続されており、第3の温度制御回路33を構成している。また、図3に示す符号34~36は、温度検出手段を示す。
【0055】
図3に示す反応管1は、点Pから点Qにかけて電気的に連接された金属チューブであり、点P側に接続された図示しないポンプによって材料溶液が反応管1内に供給され、点Pから点Qの方向に流れていく。
【0056】
例えば、電源2は交流電源であり、限定するものではないが、電圧を実効値約2V、電流を最大で100A程度まで供給する。なお、電源2は、商用電源に電圧変換トランスを接続するなどして作製することが出来る。
【0057】
図3に示す各スイッチ26、27、28は、半導体スイッチである。各スイッチ26、27、28として、リレーや、その他の継電器を用いてもよい。
【0058】
本実施形態における温度検出手段34~36は、例えば、Kタイプの熱電対である。温度検出手段としては、熱電対に限定するものでなく、白金測温体、赤外線センサ、サーミスタ等を使用することが出来る。
【0059】
なお、各スイッチ26~28と、各温度検出手段34~36は、夫々、図示しない温度制御手段に接続されている。そして、温度制御手段は、温度検出手段34~36から得られる温度計数値を基に、予め設定された温度が維持されるように、後述する手順で各スイッチ26~28をON/OFF制御する。
【0060】
図3に示す矢印方向は、電流の流れる向きを示している。上記したように、電源25を交流電源とすると、回路を流れる電流の方向は交番するが、動作の説明を容易にするためにある瞬間について示すものとする。
【0061】
次に、一つの電源25で加熱される反応管1を、複数の加熱区間15~17に分割して、各加熱区間15~17を独立して温度制御する一例を説明する。
【0062】
まず、各スイッチ26~28が全てオフの状態(図3の状態)の電流の流れから説明する。スイッチ26~28が全てオフの状態では、電源25から流れる電流は、矢印の方向に進み、点Aに到達する。この時、第1のスイッチ26はオフであるため、電流は、第1の温度制御回路31に流れず、全て第1の接続点Bの方向に流れる。続いて、電流は第1の加熱区間15を流れ、第1の加熱区間15は加熱される。第2の接続点Cに到達した電流は、第2のスイッチ27がオフであるために、第2の温度制御回路32に流れることは無く、反応管1の第2の加熱区間16を流れ、第2の加熱区間16は加熱される。同様に、第3のスイッチ28がオフであるため、電流は、反応管1の第3の加熱区間17を流れ、第3の加熱区間17は加熱される。そして、電流は、第4の配線24の点Fに到達するが、第3のスイッチ28はオフであるため、そのまま全量が電源25に戻り、閉回路が形成される。
【0063】
このようにスイッチ26~28がすべてオフの場合は、全電流が反応管1のみを通り、その電流量は、第1の加熱区間15、第2の加熱区間16、及び第3の加熱区間17で同じとなる。このため、全ての加熱区間が同様に加熱される。このとき、各加熱区間15~17の温度が予め設定された温度に到達するまで、図示しない温度制御手段は、各スイッチ26~28をオフのまま保持する。
【0064】
一定時間が経過し、反応管1の温度が予め設定された温度に近づくと、温度制御手段は、設定温度を維持するために、適宜、各スイッチ26~28を制御し始める。このとき、図3に示す第1の加熱区間15の入口側には、常に温度が低い材料溶液が供給されるため、第1の加熱区間15は、第2の加熱区間16及び、第3の加熱区間17よりも温度が低くなりやすい。したがって、第1の加熱区間15よりも、第2の加熱区間16及び第3の加熱区間17のほうが先に設定温度に到達しやすい。そこで、第2の加熱区間16を例にして、温度制御の具体的な手順を説明する。
【0065】
温度制御手段は、第2の温度検出手段35からの信号に基づいて、第2の加熱区間16が設定温度に到達したことを検知すると、第2のスイッチ27をオンにする。このとき、第1のスイッチ26と第3のスイッチ28はオフの状態である。この状態では、電流は、電源25から第1の配線21及び反応管1の第1の加熱区間15を流れるが、ここで第2のスイッチ27がオンになっているために、第2の接続点Cから第3の接続点Dの間には、電流の流路が二種類、形成される。すなわち、第2の加熱区間16を通る流路と、第2の温度制御回路32を通る流路である。このとき、第2の温度制御回路32を通る流路の電気抵抗は、第2の加熱区間16の電気抵抗に比較して十分に低い。そのため、電流の大部分は、第2の温度制御回路32を流れ、第2の加熱区間16を流れる電流量は、その分少なくなる。限定されるものではないが、例えば、電流の流量比は、第2の温度制御回路32に80%、第2の加熱区間16に20%である。このように、第2の加熱区間16を流れる電流量が低下すると、それに伴い発熱量も減少するため、結果として、第2の加熱区間16の温度を低下させることができる。このように、第2の加熱区間16を流れる電流を分流させるような流路を作るスイッチは、一般にシャントスイッチと呼ばれ、シャントスイッチを含む回路(温度制御回路)は、シャント回路と呼ばれる。また、図3におけるシャント回路部分の抵抗は低いほど、多くの電流をシャント回路側に分流させることが出来る。このため、シャント回路の電気抵抗を、反応管1の電気抵抗より低くすることで、反応管1に対する温度制御効果を大きくすることができる。ただし、シャント回路の電気抵抗が反応管1の電気抵抗と同等か、それより高くても、電気抵抗に応じた一定の電流を、シャント回路側に分流することが可能であり、この場合、温度制御効率は低いが、温度制御を行うことが可能である。
【0066】
続いて、第2の接続点Cで2つの流路に分岐した電流は、第3の接続点Dで再び合流する。そのため、電流の全量が、第3の加熱区間17に流れ、通常通りの加熱が続けられる。
【0067】
このように、各スイッチ26~28のうち、第2のスイッチ27のみをオンの状態とした例では、第1の加熱区間15、第3の加熱区間17は、通常通りの加熱が維持され、第2の加熱区間16は、第1の加熱区間15及び第3の加熱区間17よりも加熱が弱まる。
【0068】
なお、上記では、第2のスイッチ27のみをオンにした構成で説明したが、第1のスイッチ26のみ、或いは、第3のスイッチ28のみがオンの状態では、第1の加熱区間15のみ、或いは、第3の加熱区間17のみ、加熱を弱めることができる。また、各スイッチ26~28のうち、複数のスイッチをオンにした場合でも、そのオンにされた温度制御回路に接続された加熱区間の加熱を弱めることができる。
【0069】
以上により、反応管1に対し、単一の電源25を接続した閉回路において、複数の加熱区間に夫々、温度制御回路を設けることで、各加熱区間に流れる電流量を制御でき、各加熱区間ごとに加熱制御を実現することができる。
【0070】
<電流制御手段について>
ところで、図3に示す回路構成では、シャントスイッチの動作状態によって、電流量が増減するために、接続する電源25の負荷変動に対する能力に注意が必要である。図3を参照しながら説明する。
【0071】
例えば、各スイッチ26~28が全てオンの状態であると、電源25から流れる電流は、そのほとんどが点Aから、第1のスイッチ26、点X、第2のスイッチ27、点Y、第3のスイッチ28、及び点Fを含む流路を流れるため、反応管1を流れる電流は少量となり、各加熱区間15~17の温度は低下する。この時、電源25側から見た点A-F間の電気抵抗は、各スイッチ26~28が全てオフの状態に比べて、流路が二本となるため、大きく低下する。更に、スイッチ26~28を含む流路部分、すなわち、温度制御回路31~33の電気抵抗は、より低く作られているため、電気抵抗の低下は極端な場合、ほぼ電源25の出力を短絡したに等しいものになる。
【0072】
このような状況下において、電源25は大電流を流す能力を求められるが、図3の回路構成では、場合によっては、非常に大きな電流が電源25に流れてしまい、電源25が破壊される可能性もある。
【0073】
そこで、図4では、図3の回路構成に、スイッチ26~28のオンオフ状況に応じて全体電流を制御する電流制限手段40を配置した。
【0074】
図4に示す電流制限手段40は、例えば、マイコンと、半導体スイッチを含む。なお、マイコンと半導体スイッチはいずれも図示していない。そして、温度制御手段(図示せず)と連携して、各スイッチ26~28の動作状態をモニタすることが出来る。電流制限手段40を構成する半導体スイッチは、電源25が供給する交番電流の周波数よりも十分に高速動作し、いわゆるPWM制御によって回路を流れる電流を細かく分割して、オンオフ時間を変更することで実効電力値を制御する。
【0075】
電流制限手段40を構成するマイコンの動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
例えば、今、各スイッチ26~28が全てオフの状態であり、電流の全量は反応管1を流れている。この時の電流量を電流量1とする。
【0077】
電流制限手段40では、温度制御手段と連携し、図5のステップST1では、オンしているスイッチ26~28の数を検知する。
【0078】
ステップST2では、オンしているスイッチ26~28がない場合、PWM1に設定する(ステップST3)。すなわち、全てのスイッチ26~28がオフの状態であり、反応管1に流れる電流は電流量1である。このときは、PWM制御のオンオフ比、すなわちデューティー比=100%(PWM1)に設定する。
【0079】
ステップST2で、オンしているスイッチがあることがわかると、次に、ステップST4では、オンしているスイッチの数を検知する。例えば、スイッチ26~28のうち、いずれか一つのスイッチ26~28がオンした場合、電流流路の1/3部分の電気抵抗が下がるため、電流制限を行わない場合、電流量が増える。スイッチ26~28のうち、いずれか一つのスイッチ26~28がオンした場合に、電源25へ流れる電流量を電流量2とする。以下、スイッチが2つ同時にオンしたとき、電源25に流れる電流量を電流量3、3つすべてのスイッチがオンした場合に、電源25に流れる電流量を電流量4とする。この時、それぞれの電流量の関係は、反応管1の電気抵抗が第1の接続点Bから第4の接続点Eまで一様であり、且つ各接続点が反応管1に等間隔に取り付けられ、更に、シャント回路部分の抵抗も同じとすると、オームの法則によって、電流量4>電流量3>電流量2>電流量1となる。
【0080】
このように、スイッチのオン/オフ状態にかかわらず、電源25に過大な負荷がかかることを防止するために、図4に示す電流制限手段40は、スイッチ26~28のオンオフ状況に応じて、PWM制御のオンオフ比、すなわちデューティー比を変更する。例えば、デューティー比を半分にすると、回路を流れる実効電流値も半分にすることができる。このように、デューティ比の変更により、加熱区間にはパルス状の電流が流れる。本実施形態では、パルス状の電圧(電流)を、間歇的に通電(間歇通電)してもよい。間歇通電により、よりきめ細かく電流制御を行うことができる。
【0081】
スイッチがオンする数に応じて、点A-点F間の電気抵抗がどのように変化するかは、予め少量の電流を流して測定をすることが可能であり、それによって回路を流れる実効電流が一定となるようにデューティー比を決定することが出来る。上記したように、ステップST3で電流量1の時に、デューティー比=100%(PWM1)とすると、例えば、1つのスイッチがオンであり電流量2の時は、デューティー比=80%(PWM2)(ステップST5)、2つのスイッチがオンであり電流量3のときは、デューティー比=60%(PWM3)(ステップST6)、3つのスイッチがオンであり電流量4のときは、デューティー=40%(PWM4)(ステップST7)となるように制御する。
【0082】
これらデューティー比をマイコンに記憶し、予め設定されるプログラムにより、オンのスイッチの数に応じて逐次、PMW制御を切り替えることで、あらゆるスイッチ状態において実効電流を一定に維持することが可能となる。
【0083】
スイッチのオンオフ状態の変化のタイミングは予測不可能であるが、マイコンは十分に高速であるため、スイッチ状態の変化に瞬間的に追従することが可能である。
【0084】
図3図4では、第1の加熱区間15が、予熱部(以下、予熱部15という)であり、第2の加熱区間16及び第3の加熱区間17が、反応部(以下、反応部16、17という)である。すなわち、図3図4に示す実施形態では、反応部16、17が、連続する複数の加熱区間に分けられている。図3図4においても、予熱部15、及び反応部16、17の各加熱区間が、夫々、反応管に直接通電して加熱される。
【0085】
図3図4では、反応部16、17を、2つの加熱区間に分けているが、3つ以上であってもよい。予熱部15を加えると加熱区間は3つ以上になるが、加熱区間が3つ以上のとき、電源25が1つで、各加熱区間を個別に温度制御するためには、各加熱区間の電気抵抗よりも低い電気抵抗からなるシャントスイッチ回路を設け、各シャントスイッチ回路の開閉動作により、各加熱区間に流れる電流を増減させて各加熱区間を温度制御することが好ましい。
【実施例
【0086】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0087】
(実施例)
図7に示すように、反応管に予熱部と反応部の複数の加熱区間を設け、各加熱区間を直接通電により加熱した。
【0088】
(比較例)
図8に示すように、反応管を複数の加熱区間に区切らず単一の加熱区間として加熱した。すなわち、比較例1では、実施例1と異なって、予熱部を設けなかった。
上記の実施例と比較例に使用した材料溶液は同じものであり、反応管を通して、ZnCdSeS粒子を生成した。
【0089】
以下の実験結果に示すように、実施例のほうが比較例に比べて、生成されたZnCdSeS粒子の半値幅(FWHM)を小さくでき、高い量子効率(QY)を得ることができるとわかった。
【0090】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明によれば、量子ドット等のナノ粒子を製造可能なナノ粒子製造装置及び、ナノ粒子の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 :反応管
2 :下流側配管
3 :上流側配管
4 :背圧弁
5 :逆止弁
6 :第1の接続点
7 :第2の接続点
8 :第3の接続点
9 :ライニング層
10 :第1の配線
11 :第2の配線
12 :第3の配線
13、15 :予熱部
14、16、17:反応部
15 :第1の加熱区間
16 :第2の加熱区間
17 :第3の加熱区間
21~24 :第1の配線
25 :電源
26 :第1のスイッチ
27 :第2のスイッチ
28 :第3のスイッチ
31 :第1の温度制御回路
32 :第2の温度制御回路
33 :第3の温度制御回路
34~36 :温度検出手段
40 :電流制限手段
B~E :接続点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8