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  • 特許-化粧シート及び化粧材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
   B32B 33/00 20060101AFI20241224BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241224BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241224BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20241224BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20241224BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20241224BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241224BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B27/18 Z
B32B27/00 E
C08L33/14
C08L33/08
C08L91/06
C08K3/36
E04F15/04 601Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020101178
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021194806
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 一喜
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047780(WO,A1)
【文献】特開2017-024201(JP,A)
【文献】特開2017-024202(JP,A)
【文献】特開2017-039222(JP,A)
【文献】特開2016-113834(JP,A)
【文献】特開2003-334091(JP,A)
【文献】特開2017-056606(JP,A)
【文献】特開2017-159583(JP,A)
【文献】特開2003-205589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 15/00-15/22
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの上に表面保護層を設けてなり、
前記表面保護層を構成する層のうち少なくとも最表面に位置する層にパラフィンを1重量%以上10重量%以下含み、
前記表面保護層は、JIS Z 8741に準拠する60度鏡面光沢が5以上35以下の範囲内であり、
前記パラフィンは、流動パラフィンであること
を特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記表面保護層における前記60度鏡面光沢が5以上20未満の範囲内であること
を特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層における前記60度鏡面光沢が20以上35以下の範囲内であること
を特徴とする請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記パラフィンを3重量%以上8重量%以下含むこと
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記パラフィンは、炭素数が15以上40以下の範囲であること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記表面保護層に多孔質フィラーを1重量%以下含有すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記最表面に位置する層は、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂のいずれか一方、又は前記電離放射線硬化型樹脂と前記熱硬化型樹脂との混合物を主成分とすること
を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
前記表面保護層は、前記基材シート側に位置する第1層及び前記最表面に位置する層である第2層で構成され、
前記パラフィンは、前記表面保護層の前記第1層及び前記第2層に含まれること
を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項9】
請求項1から請求項の少なくとも何れか1項に記載の化粧シートを用いたこと
を特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の化粧シート及び化粧材に関する。特に木質系など基材に貼り合わせて床材や、その周辺に用いることのできる、清掃性に優れる化粧シート及びその化粧材に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
化粧シートは住宅建築が産業として発展する過程で開発され、発展をしてきた。特に集合住宅であるアパートやマンション、個人住宅ではプレハブ建築がその牽引役を果たしてきたといえる。
【0003】
古来、住宅は木材や石材など地域の特性による材料を用い、また固有の文化に根ざした様式が人々の住まいであったが、住宅産業の発展とともに工業化が進み天然素材から人工素材への転換が行われてきた。あるいは近年では、高級な木材や石材を多用することが、森林破壊や環境問題に繋がる恐れがあることも、化粧シートの需要を拡大させる一要因となっている。
【0004】
例えば近年では合板やMDF(中質繊維版)あるいはパーティクルボード等の木質基材をはじめ、樹脂基材や無機不燃基材、金属基材といった基材の表面に化粧シートを貼り合わせた化粧材が広く用いられるようになっている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5045180号公報
【文献】特開2017-24201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、建材全体の根本的なニーズとして清掃の簡易化という点がある。例えば居住者が生活する中で発生する、食品や埃、汗などの汚れの清掃も簡易的に実行できる要望が高まっている。またアパートやマンション、個人住宅の室内内装工事完了後には、管理会社や美装業者による室内清掃があるが、床面に散り積もった石膏ボードやパテ等接着剤の屑、埃等を水や洗剤を用いて拭き取り清掃を行う。シートフローリング床材の拭き取り清掃を行う際、水拭き後の乾拭き性が重かったり、拭き取り時にムラになり易い場合は、清掃に手間が掛かるといった問題が発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、化粧材としての優れた清掃性を有する化粧シート及び当該化粧シートを用いた化粧材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である化粧シートは、基材シートの上に表面保護層を設けてなり、前記表面保護層を構成する層のうち少なくとも最表面に位置する層にパラフィンを1重量%以上10重量%以下含み、前記表面保護層は、JIS Z 8741に準拠する60度鏡面光沢が5以上35以下の範囲内であり、前記パラフィンは、流動パラフィンであることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の他の態様である化粧材は、上記化粧シートを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、化粧材としての優れた清掃性を有する化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づく一実施形態に係る化粧シートおよび当該化粧シートを用いた化粧材を説明する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明を行う。
本実施形態では、床用および建具用の化粧シート及び化粧材を例に挙げて説明するが、他の部位に使用する化粧シート及び化粧材であっても良い。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
本実施形態の化粧シート10は、図1に示すように、基材シート1の上に、絵柄模様層2、透明接着層3、透明熱可塑性樹脂層4、表面保護層7をこの順に積層して形成されている。本実施形態は、表面保護層7が、第1表面保護層5及び第2表面保護層6の2層からなる場合の例である。
また基材シート1における、絵柄模様層2とは反対側の面(裏面)には、樹脂層からなる裏面樹脂コート層8が設けられている。
化粧シート10は、少なくとも基材シート1上に表面保護層7を設けてなる構成であればよい。
【0014】
[化粧材]
図1に示すように化粧材20には、化粧シート10が用いられる。具体的には化粧材20は、化粧シート10を基材11に貼り合わせることで構成される。
【0015】
[基材11]
基材11としては、南洋材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(以後MDF)、日本農林規格に規定される普通合板等が使用可能である。また、木紛添加オレフィン系樹脂からなる基材も使用可能である。基材11の厚さは3mm以上25mm以下程度が好適である。基材11は、アルミなどの金属やプラスチックなどの樹脂、またはそれらの複合材料であっても良い。
【0016】
[基材シート1]
基材シート1は、材料としては紙でもプラスチックフィルムでもよく、例えばコート紙や熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂または電離放射線硬化型樹脂といった硬化性樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良い。熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。また、熱硬化型樹脂としては、1液又は2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、電離放射線の照射により架橋反応する性質を有する(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和結合を有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの少なくとも何れかを主成分とする組成物を用いることができる。電離放射線としては、例えば電子線、紫外線を用いることができる。樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。
【0017】
基材シート1を着色する場合には、化粧シート10を貼り合せる基材を隠蔽し、また絵柄模様層2の下地色として色相を適宜、選択することができる。例えば熱可塑性樹脂のシーティングに際して、顔料などの着色剤を混合、練りこむなどしておくことで着色ができる。あるいは絵柄模様層2を設ける前にベタインキ層として、コーティングあるいは印刷の手法を用いて絵柄模様層2の下に着色層を設けることもできる。
【0018】
[絵柄模様層2]
絵柄模様層2は、既知の印刷手法を用いて設けることが出来る。基材シート1が巻取りの状態で用意できる場合には、ロールツーロールの印刷装置で絵柄模様層2の形成のための印刷を行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
【0019】
絵柄模様は、床材としての意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよく、木質系の絵柄であれば各種木目が好んで用いられることが多く、木目以外にもコルクを絵柄模様とすることもできる。また、例えば大理石などの石材の床をイメージしたものであれば、大理石の石目などの絵柄模様として用いられることもある。また天然材料の絵柄模様以外にも、それらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様も用いることができる。
【0020】
印刷インキについては、特に限定するものではないが、印刷方式に対応したインキを適宜選ぶことができる。とくに基材シート1に対する密着性や印刷適性また床材としての耐候性を考慮して選択することが好ましい。
【0021】
[透明接着層3]
透明接着層3は、基材シート1および絵柄模様層2と透明熱可塑性樹脂層4の接着を強固にする目的で設けられる。この接着が強固であることによって、化粧シート10に対し、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。
【0022】
また必要な場合には、絵柄模様層2と透明接着層3との接着性、および透明接着層3と透明熱可塑性樹脂層4との接着性の向上を目的として、絵柄模様層2の上、または透明接着層3の上に接着層(不図示)を設けても良い。この接着層(不図示)に用いる樹脂は特に限定するものではないが、例えば2液硬化型ウレタン樹脂などを用いることができる。また接着層は、例えばコーティング装置やグラビア印刷装置などを用いて設けることができる。
【0023】
[透明熱可塑性樹脂層4]
透明熱可塑性樹脂層4は、例えば塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、またポリオレフィン系のポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂、などを用いることができる。なかでも環境適合性や加工性、価格の点でポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができる。
【0024】
樹脂のグレードや組成は、そのほかにシーティングの容易さや印刷適性、曲げ加工に対する適性を考慮して選択することができる。特に曲げ加工性においては曲げ部の白化や割れが発生しないことを考慮して選択することが重要である。
【0025】
透明接着層3および透明熱可塑性樹脂層4の形成は、例えば共押し出しで両者を同時に押し出して形成することができる。
【0026】
透明熱可塑性樹脂層4によって、化粧シート10は意匠的に厚みや深みが出る効果を有するほか、化粧シート10の耐候性、耐磨耗性能を向上させることができる。
【0027】
[表面保護層7]
透明熱可塑性樹脂層4の上には表面保護層7を設ける。表面保護層7は単層でも良く、また複数の層を重ねて表面保護層7としても良い。図1に示すように、本実施形態の化粧シート10では、表面保護層7として、第1表面保護層5および第2表面保護層6の2層が設けられている。表面保護層7が一層から構成される構造(単層構造)の場合、第2表面保護層6が表面保護層7となる。
【0028】
第1表面保護層5および第2表面保護層6からなる表面保護層7を設けるには、それぞれの層を、硬化型樹脂の種類に応じて、既知のコーティング装置、熱乾燥装置および紫外線照射装置を用いて塗布および塗膜の硬化を行うことができる。
【0029】
表面保護層7は、曲げ加工性、耐傷付性や清掃性に関してその優劣を左右する重要な役割をもつ。表面保護層7は、硬化型樹脂を主成分とする。すなわち樹脂成分が実質的に硬化型樹脂から構成されることが好ましい。実質的とは、例えば樹脂全体を100質量部とした場合に80質量部以上を指す。表面保護層7には、必要に応じて、耐侯剤、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0030】
表面保護層7の表面に、所与の意匠性を付与するために凹凸が形成されていてもよい。通常はエンボス加工によって凹凸模様を形成する。エンボス加工方法は特に限定されない。エンボス加工には、公知の枚葉式又は輪転式のエンボス機が用いられる。凹凸形状としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0031】
[第2表面保護層6]
第2表面保護層6は、表面保護層7を構成する層(第1表面保護層5、第2表面保護層6)のうち、最表面(最外面)に位置する層(最外層)である。第2表面保護層6を形成する材料としては、熱硬化型樹脂や電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。第2表面保護層6は、一般的に反応性樹脂を塗工することにより塗膜形成をし、その後加熱や電離放射線照射により塗膜を硬化させる方法で形成ことができる。第2表面保護層6においては、硬化方法の違いによる特性差もある。例えば、一般的に電離放射線硬化型樹脂で形成された第2表面保護層6は、硬化反応後の架橋度が高いことから硬度も高く、耐傷つき性に優れる傾向にある。一方で、熱硬化型樹脂で形成された第2表面保護層6は、比較的架橋度が低いために硬度が低く、折り曲げや基材への追従などの柔軟性に優れる傾向にある。
【0032】
第2表面保護層6は、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂のいずれか一方、又は電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物(混合材料)を主成分としてもよい。つまり、第2表面保護層6の主成分は、電離放射線硬化型樹脂単体であってもよいし、熱硬化型樹脂単体であってもよいし、これら(電離放射線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂)の混合物であってもよい。当該混合物を主成分とする場合、使用用途によって、第2表面保護層6における熱硬化型樹脂および電離放射線硬化型樹脂の比率をコントロールすることで、化粧シート10を各種用途の要求に応じて使い分けることができる。例えば、化粧シート10を床材として用いる場合は、耐傷付性が要求されることが多い。このため、例えば床材に用いる化粧シート10において、第2表面保護層6の主成分となる熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物は、熱硬化型樹脂よりも電離放射線硬化型樹脂を多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において電離放射線硬化型樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0033】
また化粧シート10を部材として複雑な形状が多い建具に用いる場合は、柔軟性が要求されることが多い。このため、例えば建具に用いる化粧シート10において、第2表面保護層6の主成分となる熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂との混合物は、電離放射線硬化型樹脂よりも熱硬化型樹脂を多く含有することが好ましい。具体的には、当該混合物において熱硬化型樹脂が50重量%を超えていればよく、70重量%以上を占めることが好ましく、75重量%以上を占めることがより好ましく、80重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0034】
このように、表面保護層7のうちの最外層に当たる第2表面保護層6の主成分が、電離放射線硬化型樹脂および熱硬化型樹脂の混合物とすることで、床に用いた場合の耐傷つき性を満足させると同時に曲げ加工においては表面保護層の白化や割れが発生し難くなる。耐傷つき性をあまり重視しない用途では第2表面保護層6において熱硬化型樹脂のみを主成分として用い、曲げ加工性を必要としない用途では電離放射線硬化型樹脂のみを主成分として用いることもそれぞれできる。
ただし、第2表面保護層6に用いる樹脂の硬化方法の違いのみで、上記のような耐傷付性や柔軟性といった化粧シート10の性能が決まるわけではない。化粧シート10の性能(ここでは耐傷付性や柔軟性)は、樹脂自体の材料設計やフィラーなどの添加剤の添加作用も性能に大きく寄与する。このため、第2表面保護層6全体としての設計が重要になってくる。
【0035】
また化粧シート10における第2表面保護層6の厚みは、2μm以上30μm以下の範囲内であればよい。第2表面保護層6の厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下することがある。また、耐候性や耐傷付性が低下し、バラつきが大きくなることがある。一方、第2表面保護層6の厚みが30μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなることがある。また、可撓性が低下することがある。このことを鑑みると、第2表面保護層6の厚みは10μm以下であることがより好ましい。
【0036】
[電離放射線硬化型樹脂]
ここで第2表面保護層6に用いる電離放射線硬化型樹脂としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。電離放射線硬化型樹脂における硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
【0037】
具体的には、上述のプレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
【0038】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
【0039】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。
【0041】
また、上述のプレポリマーとして、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
【0042】
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0043】
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常、190nm以上380nm以下の範囲が好ましい。
【0044】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100keV以上1000keV以下の範囲のエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましく、100keV以上300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものがより好ましい。
【0045】
[熱硬化型樹脂]
ここで第2表面保護層6に用いる熱硬化型樹脂としては、特に限定されないが、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂が挙げられる。2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。また熱硬化型樹脂としてはこれらに限られず、1液反応硬化型のポリウレタン系樹脂や、1液又は2液反応硬化型のエポキシ系樹脂などを用いてもよい。
【0046】
本実施形態による化粧シート10において表面保護層7のうち少なくとも第2表面保護層6は、1重量%以上10重量%以下のパラフィンを含有する。パラフィンを樹脂に混合すると、表面にブリードすることが広く知られている。化粧シート10はこの特徴を利用しており、第2表面保護層6にパラフィンを含有させることによって表面に付着した汚れをパラフィンと一緒に落とす効果を奏する。第2表面保護層6が含有するパラフィンが1重量%以上である場合、パラフィンが表面にブリードすることにより、化粧シート10の表面に付着した汚れの拭き取り清掃を行う際に水拭き後の乾拭き性が軽くなり、拭き取り時にムラになりづらいという効果がある。つまり、化粧シート10は拭き取り性の軽さを有し、優れた清掃性を発揮する。これに対し、第2表面保護層6が含有するパラフィンが1重量%未満の場合、表面にブリードするパラフィンの量が少なく、十分な清掃性が望めない。以上の理由により、第2表面保護層6におけるパラフィンの含有量は、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましい。
【0047】
一方、第2表面保護層6に含まれるパラフィンの含有量が10重量%を超えると、第2表面保護層6を形成する際の樹脂の硬化の過程において、パラフィンが硬化の阻害要因になり得る。パラフィン自体は硬度が低いため、樹脂の硬化が阻害されると、第2表面保護層6の表面硬度が下がり、傷付き易さの原因となる。また、化粧シート10を床材として用いる場合、表面の清掃を行う際にフローリングワックスを掛けることがある。その際に、第2表面保護層6におけるパラフィンの重量比が10%を超えていると、フローリングワックスが化粧シート10の表面において弾かれてしまう。これによって、フローリングワックスが均等に塗布されない、または後から剥がれてくるといったことが実用上の問題として発生する場合がある。以上の理由により、第2表面保護層6が含有するパラフィンは、10重量%以下が好ましく、9重量%以下がより好ましく、8重量%以下がさらに好ましい。また清掃性に加えて耐傷付性およびワックス密着性を考慮すると、第2表面保護層6におけるパラフィンの含有量は3重量%以上8重量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0048】
このように、化粧シート10は、表面保護層7の少なくとも第2表面保護層6にパラフィンを1重量%以上10重量%以下含んでいる。これにより、化粧シート10は、住宅居住者の生活の中での食品や埃、汗などの汚れや、室内施工時に堆積する石膏ボードや接着剤、パテ等の屑、埃などを拭き取り易くなる。このため、化粧シート10は、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、優れた清掃性を有する。
【0049】
[パラフィン]
第2表面保護層6が含有するパラフィンとしては、例えば、ノルマルパラフィンやイソパラフィン、シクロパラフィンといったものが挙げられる。第2表面保護層6において、ノルマルパラフィン、イソパラフィンはそれぞれ単体で用いられてもよいし、ノルマルパラフィンとイソパラフィンとを混合して用いてもよい。また、パラフィンは、固体パラフィン(パラフィンワックス)であってもよいし、流動パラフィンであってもよい。また、第2表面保護層6に用いるパラフィンは炭素数が15以上40以下の範囲であればよい。炭素数は小さくなるにつれて揮発性が高くなるため、炭素数が14以下になるとシート作製後にパラフィンが揮発してしまい効果が損なわれる恐れがある。一方で炭素数が大きくなるにつれて粘度が大きくなり動きにくくなるため、炭素数が41より大きくなると前述したようなパラフィンが表面の汚れとともに脱落することが起きにくくなる。
【0050】
またこれらのパラフィンのメーカーとしては、例えば日本精蝋(株)、カネダ(株)、(株)MORESCO、林純薬工業(株)などが挙げられる。
【0051】
また、第2表面保護層6には、表面の光沢を所望の光沢度に調整するために充填剤(フィラー)として艶消し剤が添加されていてもよい。艶消し剤の材料としては、例えば、アクリル系樹脂や粒状ゴム等の有機系艶消し剤、及びシリカ粉、マイカ粉、タルク、アルミナ、炭化ケイ素および炭酸カルシウム等の無機系艶消し剤が挙げられる。艶消し剤は、有機系及び無機系艶消し剤からなる群から選択される1種類の物質を単独で使用してもよいし、又はその群から選択される2種類以上の物質を組み合わせて使用してもよい。また艶消し剤の中でも多孔質材料による多孔質フィラーを艶消し剤として用いることが好ましい。多孔質フィラーの材質としては、例えばシリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マグネシア、ベーマイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの多孔質フィラーのうち、多孔質シリカはより艶消し効果が高いため、艶消し剤としてさらに好ましい。
【0052】
化粧シート10は、艶消し剤を第2表面保護層6内に1重量%以下含んでもよいし、第2表面保護層6内に艶消し剤を全く含まなくてもよい。第2表面保護層6に艶消し剤が1重量%以下含まれることで、化粧シート10は、表面の光沢を所望の光沢度に調整しつつ、十分な清掃性を発揮することができる。一方、第2表面保護層6内に含有される艶消し剤が1重量%を超えると、艶消し剤に汚れが付き易くなり、十分な清掃性が望めない場合がある。例えば化粧シート10は、第2表面保護層6に多孔質フィラーを1重量%以下含んでもよいし、多孔質フィラーを全く含まなくてもよい。
【0053】
また、艶消し剤の平均粒径としては、0.1μm以上20μm以下の範囲内が好ましく、特に艶消し外観の付与の点で、1μm以上10μm以下がより好ましい。
また、艶消し剤及びその量の配合を調整することで、第2表面保護層6のJIS Z 8741に準拠する60度鏡面光沢の値が、化粧シート10の目的に応じた所望の光沢度となるように調整する。本実施形態では、所望の60度鏡面光沢として、5以上20未満の範囲、若しくは20以上35以下の範囲とする。このように、第2表面保護層6のJIS Z 8741に準拠する60度鏡面光沢の値を、5以上35以下にすることにより、清掃時における拭き取り後のムラが目立たくなる。ここで、光沢度が高くなるほど、拭き取り性は向上するものの、意匠性がその分損なわれる。拭き取り性の向上と所要以上の意匠性の付与との兼ね合いから60度鏡面光沢の値を、5以上35以下としている。このとき、相対的に意匠性を重視する場合には、5以上20以下に調整し、相対的に拭き取り性の向上を重視する場合には、20以上35以下に調整すると良い。
【0054】
[第1表面保護層5]
第1表面保護層5については、最外層である第2表面保護層6と同様の組成の樹脂を用いてもよく、別個に樹脂の種類や組成、比率を変えたものを用いても構わない。また、例えば第1表面保護層5にパラフィンが含まれてもよい。パラフィンが第1表面保護層5から第2表面保護層6に移行することも期待でき、結果として、パラフィンを第2表面保護層6に含む場合と同様の効果を得られる。なおこの場合、第1表面保護層5とパラフィンとの相溶性などに基づいて、パラフィンが表面にブリードする時間を制御することとなる。
また、第1表面保護層5の厚みは、2μm以上50μm以下の範囲内であればよい。第1表面保護層5の厚みが2μmに満たない場合には、塗工方式が限定的になり、かつ安定した生産が難しくなるため生産性が低下する場合がある。また、耐候性や耐傷付性が低下し、バラつきが大きくなる場合がある。一方、第1表面保護層5の厚みが50μmを超える場合には、性能とコストのバランスが崩れ、コストが高くなる場合や、可撓性が低下する場合がある。このことを鑑みると、第1表面保護層5の厚みは20μm以下であることがより好ましい。
【0055】
[裏面樹脂コート層8]
化粧シート10における基材シート1の絵柄模様層2の側に関しては上述のとおりである。ここで、化粧シート10を例えば木質の基材11に貼り合わせて化粧材20として使用する場合、あるいは、化粧シート10をさらに部材として加工する場合に、樹脂製の基材シート1の一の面に裏面樹脂コート層8を設けてもよい。具体的には、基材シート1の表裏両面のうち絵柄模様層2の反対側の面に、裏面樹脂コート層8としてシリカ粉末を含む樹脂層を設けてもよい。これにより、基材11と化粧シート10との接着強度を向上させることができる。裏面樹脂コート層8の貼り合わせに用いる接着剤としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体のエマルジョン型接着剤などを用いることができる。
【0056】
以上のような材料構成の本実施形態による化粧シート10は、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、さらに優れた清掃性を有し、化粧シートとして好適なものである。なお、本実施形態の化粧シート10は、床材、階段の踏み板、建具、家具などの各種建材に使用される化粧シートとして適用可能である。
【0057】
(変形例)
なお、化粧シート10における表面保護層7の構成は、上記実施形態に限られない。例えば耐汚染性向上策として、化粧シート10の最表面(第2表面保護層6)にシリコーン樹脂やフッ素樹脂を設定してもよい。
[フッ素樹脂]
特にフッ素樹脂は最小レベルの表面張力を示すことが広く知られており、耐汚染材料として好適である。第2表面保護層6が含有するフッ素樹脂としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン―エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどが挙げられ、これら以外にも多くの誘導体を用いることができる。
【0058】
またこれらのフッ素樹脂のメーカーとしてはダイキン工業(株)、三井・デュポンフロロケミカル(株)などが挙げられる。第2表面保護層6が含有するフッ素樹脂の量は、10質量部以上100質量部以下が好ましい。より好ましくは20質量部以上である。ここで、フッ素樹脂自体が硬化型樹脂であっても良い。すなわち、フッ素樹脂の一部が、表面保護層7(第1表面保護層5、第2表面保護層6)の主成分である硬化型樹脂の一部を兼ねていても良い。このように、第2表面保護層6の樹脂成分全部がフッ素樹脂であっても良い。
また、フッ素樹脂を主成分とする第2表面保護層6に上述のパラフィンが含有されてもよい。これにより、化粧シート10は、優れた清掃性を有するとともに、耐汚染性が向上することとなる。
【0059】
本実施形態による化粧シート10は、基材シート1の上に表面保護層7を設けてなり、表面保護層7を構成する層のうち、少なくとも最表面に位置する第2表面保護層6にパラフィンを1重量%以上10重量%以下含む。これにより、化粧シート10は、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、化粧材としての優れた清掃性を有する。
また、化粧シート10は、第2表面保護層6にパラフィンを3重量%以上8重量%以下含んでもよい。これにより、化粧シート10は、耐傷付性と清掃性とを両立することができる。
【0060】
また、本実施形態による化粧シート10において第2表面保護層6に含まれるパラフィンとして、ノルマルパラフィンおよびイソパラフィンのうち少なくともいずれか一方を用いてもよい。
また、本実施形態による化粧シート10において第2表面保護層6に含まれるパラフィンは、炭素数が15以上40以下の範囲であってもよい。
【0061】
また、本実施形態による化粧シート10は、表面保護層7に多孔質フィラーを1重量%以下含有してもよいし、または含有しなくてもよい。
【0062】
また、表面保護層7を構成する層のうち少なくとも第2表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂のいずれか一方、又は電離放射線硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物を主成分としてもよい。
また、当該混合物は、熱硬化型樹脂よりも電離放射線硬化型樹脂を多く含有してもよい。
また、当該混合物は、電離放射線硬化型樹脂よりも熱硬化型樹脂を多く含有してもよい。
【0063】
また、本実施形態による化粧材20は、上述の化粧シート10を用いていればよい。これにより、化粧材20は、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、化粧材としての優れた清掃性を有する。
【実施例
【0064】
以下本発明を実施例によってさらに具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
<実施例1>
以下の材料構成および手順によって、図1に示す層構成の化粧シート10を作製した。
(1)基材シート1として、着色ポリエチレンフィルム(リケンテクノス社製FZ)を用いた。
(2)基材シート1の表面に、絵柄模様層2として、グラビアインキ(東洋インキ社製ラミスター(登録商標))を用いて木目柄をグラビア印刷機で印刷して設けた。
(3)また基材シート1の裏面に、裏面樹脂コート層8として、シリカ粉末を含有する2液ウレタン系樹脂を乾燥後の厚みが1μmとなるようにグラビア印刷によって層形成した。
(4)接着層(図1では不図示)として、絵柄模様層2の上に2液ウレタン樹脂接着剤を乾燥後の塗布量が2g/mになるよう塗工した。
【0066】
(5)透明接着層3(厚さ10μm)として、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を使用した。また、透明熱可塑性樹脂層4(厚さ80μm)として、主成分アイソタクチックペンタッド分率95%のポリプロピレン(プライムポリマー社製)を用いた。このとき、透明接着層3および透明熱可塑性樹脂層4は、押出し機を用いて共押し出しして、透明接着層3が絵柄模様層2側になるように両者を積層した。
【0067】
(6)第1表面保護層5として、透明熱可塑性樹脂層4の上に、シリカが内添された熱硬化型アクリルポリオール樹脂(東洋インキ社製)およびイソシアネート系硬化剤(東洋インキ社製)を混合した塗液を乾燥後の厚さ9μmで塗工した。
更に、第2表面保護層6として、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A:東洋インキ社製)、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B:東洋インキ社製)、イソシアネート系硬化剤(C:東洋インキ社製)、パラフィン(D:モレスコホワイト(登録商標)、MORESCO社製)および多孔質シリカ(E:CARPLEX(登録商標)、EVONIK社製)を混合した塗液を乾燥後の厚さ6μmで塗工した。
ここで、第2表面保護層6を形成する上述の各材料(A)~(E)の混合割合は、後述の表1に示すように設定した。すなわち、第2表面保護層6において、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を64重量%、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を25重量%、イソシアネート系硬化剤(C)を5重量%、パラフィン(D)を5重量%および多孔質シリカ(E)を1重量%で混合した。
【0068】
(7)続いて60℃で30秒加熱することにより熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)およびイソシアネート系硬化剤(C)を硬化させ、さらに紫外線源(高圧水銀灯、200mJ/cm)により紫外線照射を行って紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を硬化させ、実施例1の化粧シートを得た。
【0069】
<実施例2>
第2表面保護層6について、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を66重量%、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を27重量%、パラフィン(D)を1重量%とした以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シートを得た。
<実施例3>
第2表面保護層6について、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を62重量%、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を22重量%、パラフィン(D)を10重量%とした以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シートを得た。
<実施例4>
第2表面保護層6について、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を65重量%とし、多孔質シリカ(E)は添加しなかった以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シートを得た。
<実施例5>
第2表面保護層6を形成する各材料の混合割合について、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を24重量%とし、多孔質シリカ(E)を2重量%とした以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で実施例2の化粧シートを得た。
【0070】
<比較例1>
第2表面保護層6について、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を67重量%、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を27重量%とし、パラフィン(D)は添加しなかった以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で比較例1の化粧シートを得た。
<比較例2>
第2表面保護層6について、紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(A)を61重量%、熱硬化型アクリルポリオール樹脂(B)を21重量%、パラフィン(D)を12重量%とした以外は、各材料の混合割合を実施例1と同様とし、実施例1と同様の手順で比較例2の化粧シートを得た。
【0071】
<評価用化粧材の作製>
実施例1~5、比較例1および2の化粧シートのそれぞれを厚み3mmのMDF(広葉樹)の表面に貼り合わせて評価用の化粧材とした。
貼り合わせのための接着剤として、2液水性エマルジョン接着剤(中央理化工業社製リカボンド(登録商標)BA-10L/BA-11B=100:2.5)を用いて、ウエット状態で100g/mの塗工量で貼り合わせた。次いで24時間養生して評価用化粧材とした。
【0072】
<評価項目および評価方法>
実施例1~5、比較例1および2の材料構成、手順によって作成した化粧シートを用いた評価用化粧材を下記の評価項目および評価方法によって試験、評価した。
【0073】
[パテ拭き取り性試験(F)]
各化粧材に「タイガーパテ120(吉野石膏社製)」を各化粧材に手塗りし、1時間養生後、水を硬く絞ったモップで拭き取り、更に乾拭きにて拭き取った。
拭きムラの見え方について、10人の試験員に対し官能試験を実施した。
【0074】
評価の指標は次の通りである。
◎:良いとした人 7人~10人
○:良いとした人 1人~6人
×:良いとした人 0人
【0075】
[ボンド剥がし取り性試験(G)]
各化粧材に「ネダボンド(コニシ社製)」を各化粧材に付着させ、24時間後に金属製のヘラで剥がし取った。
剥がし取る際に要する力加減について、10人の試験員に対し官能試験を実施した。
【0076】
評価の指標は次の通りである。
◎:わずかな力で剥がれるとした人 7人~10人
○:わずかな力で剥がれるとした人 1人~6人
×:わずかな力で剥がれるとした人 0人
【0077】
[ワックス密着試験(H)]
化粧材にフローリングワックス「オール(リンレイ社製)」を塗布した際の弾き具合につて評価を実施した。塗布前にウエスで乾拭きをしない場合、した場合で行った。
【0078】
評価の指標は次の通りである。
◎:乾拭きをしてもしなくても弾きなし
○:乾拭きをしないと弾きあり、乾拭きをすると弾きなし
×:乾拭きをしてもしなくても弾きあり
【0079】
<評価結果>
上記試験(F)、(G)、(H)の評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1においては、上記試験(F)、(G)、(H)の全ての評価結果が◎評価となり、良好な結果を示した。
【0082】
一方、上記試験(F)および試験(G)について、実施例2の化粧シート(パラフィン(D)の含有量が1重量%)では評価結果が「○」となり、比較例1の化粧シート(パラフィン(D)の含有なし)では、評価結果が「×」となった。つまり、実施例1(パラフィン(D)の含有量が5重量%)に比べて、実施例2および比較例1の化粧シートは、上記試験(F)および試験(G)について低い評価結果となった。これは、パラフィン(D)がパテやボンドといった付着物を取れ易くしていることを示している。特に、比較例1の化粧シートでは試験(F)および試験(G)の評価結果が「×」であることから、第2表面保護層6にパラフィン(D)が含まれない場合、このような付着物に対する清掃性について効果がないことがわかる。
【0083】
また、上記試験(H)について、実施例3の化粧シート(パラフィン(D)の含有量が10重量%)では評価結果が「○」となり、比較例2の化粧シート(パラフィン(D)の含有量が12重量%)では評価結果が「×」となった。つまり、実施例1(パラフィン(D)の含有量が5重量%)の化粧シートに比べて、パラフィン(D)の含有量が適正範囲の上限(本例では10重量%)以上である実施例3および比較例2の化粧シートは上記試験(H)について低い評価結果となった。これは、パラフィン(D)がフローリングワックスを弾き易くしていることを示している。特に、パラフィン(D)が10重量%を超えて含まれる比較例2の化粧シートでは、化粧シートの表面でワックスが弾かれてしまい、ワックスを塗ることができないことがわかる。
【0084】
また、第2表面保護層6に多孔質シリカ(E)を含まない実施例4の化粧シートにおいては、上記試験(F)、(G)、(H)の全てにおいて評価結果が「◎」となり、実施例1の化粧シートと同様に良好な評価結果となった。一方、多孔質シリカ(E)が1重量%を超えて含まれる実施例5の化粧シート(多孔質シリカ(E)の含有量が2重量%)では、上記試験(F)および試験(G)について評価が「○」となり、実施例1および4と比較して低い評価結果となった。これは、多孔質シリカ(E)が形成する表面の凹凸によりパテの拭き残りやボンドの剥がし残しが発生したと考えられる。
【0085】
以上の結果から、本発明によれば、清掃時の拭き取り性の軽さを有し、清掃性を有する化粧シート及び当該化粧シートを用いた化粧材を提供することが可能であることを検証することができた。
【符号の説明】
【0086】
1 基材シート
2 絵柄模様層
3 透明接着層
4 透明熱可塑性樹脂層
5 第1表面保護層
6 第2表面保護層
7 表面保護層
8 裏面樹脂コート層
10 化粧シート
11 基材
20 化粧材
図1