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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】音声再生装置及びスピーカ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20241224BHJP
   H04R 5/02 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H04R1/34 310
H04R5/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020130493
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026838
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】尾形 知昭
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-079659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/46
H04R 5/00- 5/04
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットと、前記スピーカユニットが前面に取り付けられたエンクロージャと、垂線が前記スピーカユニットの軸線と非平行で前記スピーカユニットと対向する平面を有し前記エンクロージャの内部に配置された音声反射部材とを備え、前記スピーカユニットが第1の方向の一の向きを向くように前記第1の方向と直交する第2の方向に離隔配置された一対のスピーカ部と、
前記一対のスピーカ部の間に配置された本体部と、を含み、
前記スピーカユニットから前記エンクロージャ内の空間に放出された音声の一部は、前記平面で反射し反射音声として前記エンクロージャの前記前面を含む副振動部を振動させ、前記反射音声による前記副振動部の振動で生じ外部空間に放出された音声と、前記スピーカユニットから直接外部空間に放出された音声とが合成されて聴取され、
前記一対のスピーカ部それぞれの前記音声反射部材は、前記平面の前記垂線が前記一の向きに向かうに従って前記第2の方向に互いに離隔するよう配置されている音声再生装置。
【請求項2】
前記一対のスピーカ部それぞれの前記音声反射部材は、それぞれの前記平面の垂線が、前記第1の方向に対し、前記第1の方向及び前記第2の方向に直交する第3の方向の同じ向きに傾いていることを特徴とする請求項1記載の音声再生装置。
【請求項3】
前記一対のスピーカ部は、前記エンクロージャの内部に配置部材を有し、
前記平面は、前記スピーカユニットの軸線の方向において、前記配置部材よりも前記スピーカユニットに近い位置にあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の音声再生装置。
【請求項4】
前記音声反射部材は、横断面形状が三角形となる三角柱状を呈し、前記三角形の一つの斜辺が前記スピーカユニットと対向する前記平面であり、
前記平面は、前記三角形の他の斜辺になる面であって前記エンクロージャの底板の上面に密着して取り付けられる取付面に対し傾斜している面である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の音声再生装置。
【請求項5】
スピーカユニットと、
前記スピーカユニットが前面に取り付けられたエンクロージャと、
前記エンクロージャの内部に配置された配置部材と、
前記エンクロージャの内部に配置された、垂線が前記スピーカユニットの軸線と非平行で前記スピーカユニットと対向する平面を有する音声反射部材と、
を備え、
前記音声反射部材の前記平面は、前記スピーカユニットの軸線の方向において、前記配置部材よりも前記スピーカユニットに近い位置にあり、前記スピーカユニットから前記エンクロージャ内の空間に放出された音声の一部は、前記平面で反射し反射音声として前記エンクロージャの前記前面を含む副振動部を振動させ、前記反射音声による前記副振動部の振動で生じ外部空間に放出された音声と、前記スピーカユニットから直接外部空間に放出された音声とが合成されて聴取されるスピーカ装置。
【請求項6】
使用姿勢において、前記垂線は、前記スピーカユニットの軸線の方向から見たときに少なくとも左右方向に傾いていることを特徴とする請求項5記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生装置及びスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音声再生装置及びスピーカ装置の再生音は、リスナーに、より広い音場を認識させるものであることが望まれている。
特許文献1に、スピーカユニットの向きを回動により変える回動手段を備えたスピーカ装置が記載されている。特許文献1に記載されたスピーカ装置は、回動手段によってスピーカユニットの向きを外向きにして音場を広げることができる、とされている。
特許文献2に、正面を向いたスピーカアレイ及びスピーカアレイの左右それぞれにおいて外方向を向いたスピーカを備えたスピーカ装置が記載されている。特許文献2に記載されたスピーカ装置は、外方向を向いたスピーカによって左右に広い音場が得られる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2738401号公報
【文献】特許第5565044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたスピーカ装置は、回動手段を備えているので、コスト高である。特許文献2に記載されたスピーカ装置は、正面を向くスピーカユニットに加え、外方向を向くスピーカユニットを備える必要がある。そのため、スピーカ装置の小型化が難しく外観デザインの自由度が小さいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コストを抑制し小型化が容易で外観デザイン上の自由度が大きいながらも、広い音場が得られる音声再生装置及びスピーカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1),2)の構成を有する。
1) スピーカユニットと、前記スピーカユニットが前面に取り付けられたエンクロージャと、垂線が前記スピーカユニットの軸線と非平行で前記スピーカユニットと対向する平面を有し前記エンクロージャの内部に配置された音声反射部材とを備え、前記スピーカユニットが第1の方向の一の向き向くように前記第1の方向と直交する第2の方向に離隔配置された一対のスピーカ部と、
前記一対のスピーカ部の間に配置された本体部と、を含み、
前記スピーカユニットから前記エンクロージャ内の空間に放出された音声の一部は、前記平面で反射し反射音声として前記エンクロージャの前記前面を含む副振動部を振動させ、前記反射音声による前記副振動部の振動で生じ外部空間に放出された音声と、前記スピーカユニットから直接外部空間に放出された音声とが合成されて聴取され、
前記一対のスピーカ部それぞれの前記音声反射部材は、前記平面の前記垂線が前記一の向きに向かうに従って前記第2の方向に互いに離隔するよう配置されている音声再生装置である。
2) スピーカユニットと、
前記スピーカユニットが前面に取り付けられたエンクロージャと、
前記エンクロージャの内部に配置された、配置部材及び垂線が前記スピーカユニットの軸線と非平行で前記スピーカユニットと対向する平面を有する音声反射部材と、
を備え、
前記音声反射部材の前記平面は、前記スピーカユニットの軸線の方向において、前記配置部材よりも前記スピーカユニットに近い位置にあり、前記スピーカユニットから前記エンクロージャ内の空間に放出された音声の一部は、前記平面で反射し反射音声として前記エンクロージャの前記前面を含む副振動部を振動させ、前記反射音声による前記副振動部の振動で生じ外部空間に放出された音声と、前記スピーカユニットから直接外部空間に放出された音声とが合成されて聴取されるスピーカ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コストを抑制し小型化が容易で外観デザイン上の自由度が大きいながらも広い音場が得られる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る音声再生装置の実施例であるオーディオ装置91の外観斜視図である。
図2図2は、図1におけるS2-S2位置での断面図である。
図3図3は、図2におけるS3-S3位置での断面図である。
図4図4は、オーディオ装置91が備える音声反射部材7を示す図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が側面図である。
図5図5は、従来のスピーカ装置192の、水平面での縦断面図である。
図6図6は、スピーカ装置192の、鉛直面での縦断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の実施例であるスピーカ装置92の、水平面での縦断面図である。
図8図8は、スピーカ装置92の、鉛直面での縦断面図である。
図9図9は、オーディオ装置91の再生音でリスナーHが認識する音場を説明するための上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る音声再生装置及びスピーカ装置を、それぞれの実施例であるオーディオ装置91及びスピーカ装置92により説明する。
【0010】
まず、オーディオ装置91の構成を、図1図3を参照して説明する。
図1は、オーディオ装置91の外観斜視図である。図2図1におけるS2-S2位置での断面図であり、図3は、図2におけるS3-S3位置での断面図である。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を、図1に矢印で示す方向に規定する。また、この例において、前後方向を第1の方向、左右方向を第2の方向及びX軸方向、上下方向を第3の方向とする。
【0011】
オーディオ装置91は、いわゆるスピ―カ一体型のステレオ音声再生装置である。
図1及び図2に示されるように、オーディオ装置91は、キャビネット1と本体部2と左右一対のスピーカユニット3L,3Rとを有する。スピーカユニット3L,3Rには、それぞれスピーカネット4が着脱自在に取り付けられるようになっている。
キャビネット1は、例えば木製であって直方体の箱状に形成されている。詳しくは、キャビネット1は、前板11,天板12,左側板13,右側板14,後板15,及び底板16を有する。
【0012】
本体部2は、キャビネット1の中央部分の内部に収容され、前面パネル2aが前板11に形成された開口部11aから外部に露出している。本体部2は、CDプレーヤ部,チューナ部,及びアンプ部などを含んで構成されている。
【0013】
図2において、キャビネット1の前板11における開口部11aの左右方向側に、左右一対のスピーカ取付孔11b,11bが形成されている。
一対のスピーカ取付孔11b,11bには、それぞれスピーカユニット3L,3Rが、振動板3La,3Raが広く露出する出力面を前向き(第1の向き)にして取り付けられている。一対のスピーカユニット3L,3Rの軸線CL3L,CL3Rは、平行で前後方向に延びている。一対のスピーカユニット3L,3Rは、それぞれ本体部2と電気的に接続されている。
オーディオ装置91は、本体部2のCDプレーヤ部などで生成されアンプ部で増幅されたステレオ音声信号を、左右一対のスピーカユニット3L,3Rによってステレオ音声として前方に出力する。
【0014】
図2に示されるように、キャビネット1の内部において、左右方向の中央部位に配置された本体部2の左右両側には、キャビネット1の内部空間を左右に仕切る仕切り壁51,52が設けられている。
すなわち、オーディオ装置91は、本体部2の左側に、前板11,天板12,左側板13,後板15,底板16,及び仕切り壁51からなるエンクロージャ1Lとスピーカユニット3Lとを含むスピーカ部8Lを有する。
また、オーディオ装置91は、本体部2の右側に、前板11,天板12,右側板14,後板15,底板16,及び仕切り壁52からなるエンクロージャ1Rとスピーカユニット3Rとを含むスピーカ部8Rを有する。
【0015】
オーディオ装置91は、左右方向に離隔配置された一対のスピーカ部8L,8Rと、一対のスピーカ部8L,8Rの間に配置された本体部2とを含み構成されている。オーディオ装置91は、一対のスピーカ部8L,8Rそれぞれのスピーカユニット3L,3Rは、前後方向において、同じ前向きとなるよう配置されている。
【0016】
スピーカ部8Lの内部には、エンクロージャ1Lによって、スピーカユニット3Lのバックキャビティとしてほぼ密閉された空間VLが形成されている。
同様に、スピーカ部8Rの内部には、エンクロージャ1Rによって、スピーカユニット3Rのバックキャビティとしてほぼ密閉された空間VRが形成されている。
【0017】
次に、スピーカ部8L,8Rの内部構造について説明する。スピーカ部8Rは、スピーカ部8Lに対し左右対称に構成されている。そこで、代表としてスピーカ部8Lについて、図3及び図4も参照して説明する。図3は、図2におけるS3-S3位置での断面図である。図4は、スピーカ部8L,8Rが備える音声反射部材7の三面図であり、(a)が正面図、(b)が上面図、(c)が右側面図である。以下、スピーカ部8L,8Rそれぞれの音声反射部材7を区別する場合には、音声反射部材7L,7Rとして区別する。
【0018】
図2図4に示されるように、スピーカ部8Lは、エンクロージャ1L及びスピーカユニット3Lと、ダクト17,底補強板18,及び音声反射部材7Lとを有する。
ダクト17は、スピーカ部8Lをいわゆるリアバスレフ型とする共鳴管である。図3に示されるように、ダクト17の後方端部は開口部15aとされて後板15に固定されており、ダクト17の内部空間Vdは、開口部15aによってスピーカ部8Lの後方の外部空間Vgbと連通している。
【0019】
底補強板18は、上面視で前後方向に長い長方形の薄板状部材であり、底板16の上面に接着剤などによって取り付けられている。
底補強板18は、例えば木で形成され、木の繊維の配向方向が前後方向となる向きで取り付けられている。底補強板18は、繊維の配向方向を持たない集成材で形成されていてもよい。
ダクト17はスピーカ部8Lの再生音を整える機能を有し、底補強板18は、直接的にはエンクロージャ1Lの剛性を高めるものであり、間接的にエンクロージャ1Lを高剛性にすることでスピーカ部8Lの再生音を整える機能を有する。
ダクト17及び底補強板18を含め、スピーカユニット3Lを除いて、エンクロージャ1L内に突出するよう配置された部材を配置部材Kと称する。また、エンクロージャ1L内に収められた部材(例えば吸音材など)も配置部材Kに含まれる。
【0020】
音声反射部材7Lは、音声を反射する部材であってエンクロージャ1Lの内部に配置されている。音声反射部材7Lは、図4に示されるように、横断面形状が例えば直角三角形となる三角柱状を呈する。音声反射部材7Lは、例えば木で形成されている。
音声反射部材7Lの、横断面形状における直角三角形の一つの斜辺になる取付面7Lbは、平坦面であって、例えば、底板16の上面に密着して取り付けられる面である。
音声反射部材7は、横断面形状における直角三角形の斜辺となる平面である反射面7Laが、スピーカ部8Lにおいて前方を向き、スピーカユニット3Lと対向するように取り付けられる。反射面7Laは、スピーカユニット3Lから後方に放出された音声の一部を反射して屈折させる。反射面7Laは、取付面7Lbに対し角度θaで傾斜している。音声反射部材7Lの横断面形状は、直角三角形以外の三角形或いは四角形などでもよい。角度θaは、例えば35°以上90°未満とされる。
【0021】
図2に示されるように、音声反射部材7Lは、スピーカ部8Lにおいて、左右方向であるX軸方向に対し、右方側が前方側に角度θbLで傾く姿勢で底板16に取り付けられている。
これにより、反射面7Laは、垂線CL7Lがスピーカユニット3Lの軸線CL3Lと非平行であり、前方に向かうに従って左方向及び上方向に傾くものとなる。
エンクロージャ1L内の音声反射部材7Lの配置位置は、前後方向において、配置部材Kであるダクト17及び底補強板18の最前端位置P1よりも前方である。
【0022】
右側のスピーカ部8Rにおいても、ダクト17及び底補強板18は、スピーカ部8Lと同じ形状及び姿勢で同じ位置に取り付けられている。
ただし、音声反射部材7Rの取付姿勢が異なり、スピーカ部8Rにおいて、音声反射部材7Rは、左右方向であるX軸方向に対し、左方側が前方側に角度θbRで傾く姿勢で底板16に取り付けられている。
これにより、反射面7Raは、垂線CL7Rがスピーカユニット3Rの軸線CL3Rと非平行であり、前方に向かうに従って右方向及び上方向に傾くものとなる。
【0023】
角度θbL及び角度θbRは、それぞれ0°を超え45°以下の範囲で設定される。また、角度θbRは角度θbLと同じとされる。
これにより、一対のスピーカユニット3L,3Rそれぞれの音声反射部材7L,7Rにおいて、反射面7La,7Raは、それぞれの垂線CL7L,CL7Rが前方に向かうに従って左右方向に互いに離隔する面となっている。
音声反射部材7は、底板16に取り付けられることでエンクロージャ1Lの剛性を高めてスピーカ部8L,8Rによる再生音を整えると共に、オーディオ装置91に対しリスナーが認識する再生音の音場を拡張する機能を有する。
【0024】
スピーカ部8Lは、キャビネット1から独立させて、音声反射部材7として音声反射部材7Bを有しているスピーカ装置92とすることができる。このスピーカ装置92により、スピーカ部8Lの再生音について図7及び図8を参照して説明する。比較のため、スピーカ装置92から音声反射部材7Bを取り外した従来のスピーカ装置192の再生音についても図5及び図6を参照して説明する。
【0025】
図5は、音声反射部材7Bを有していないスピーカ装置192の水平面での縦断面図であり、図6は、スピーカ装置192の鉛直面での縦断面図である。また、図7は、スピーカ装置192に対し音声反射部材7Bを有しているスピーカ装置92の水平面での縦断面図であり、図8はスピーカ装置92の鉛直面での縦断面図である。
【0026】
図5及び図6に示されるように、スピーカ装置192は、エンクロージャ1Aとスピーカユニット3Aとを有する。エンクロージャ1Aは、例えば木製であって直方体の箱状に形成されている。詳しくは、エンクロージャ1Aは、前板11A,天板12A,左側板13A,右側板14A,後板15A,及び底板16Aを有する。
スピーカユニット3Aは、前板11Aに取り付けられており、エンクロージャ1Aの内部には、オーディオ装置91のスピーカ部8Lと同様に、ダクト17A及び底補強板18Aが取り付けられている。スピーカ装置192の内部には、エンクロージャ1Aによって、スピーカユニット3Aのバックキャビティとして、ダクト17A以外ほぼ密閉された空間VLAが形成されている。
【0027】
スピーカユニット3Aは、本体部2に相当する外部の音声出力装置に接続され、その音声出力装置から入来した音声信号を、振動板3Aaの振動により音声に変換して出力する。
スピーカユニット3Aからは、前方に音声F1が出力されると共に、後方のバックキャビティである空間VLA内に音声F1Bが出力される。
【0028】
音声F1Bは、スピーカユニット3Aの軸線CL3Aに概ね沿う後方に向け進行してエンクロージャ1Aの内面で反射し、空間VLAに左右方向及び上下方向に偏りのない音場を形成する。
そのため、エンクロージャ1Aは、左右方向及び上下方向に偏りがなく空間VLAの容積を増減させる方向の振動VR1で微小振動する。
これにより、スピーカ装置192の前方に位置するリスナーHには、スピーカユニット3Aから直接に外部空間Vgに放出された音声F1と、エンクロージャ1Aの振動VR1によって外部空間Vgに放出された音声との合成音声が試聴され、聴覚上の音場AR1が形成される。
【0029】
音場AR1は、スピーカ装置192が左右対称に構成されているので、スピーカユニット3Aの軸線CL3Aと中心に左右対称となる。
【0030】
一方、図7及び図8に示されるように、スピーカ装置92は、スピーカ装置192と同様のエンクロージャ1Bとスピーカユニット3Bとを有する。エンクロージャ1Bは、例えば木製であって直方体の箱状に形成されている。詳しくは、エンクロージャ1Bは、前板11B,天板12B,左側板13B,右側板14B,後板15B,及び底板16Bを有する。
スピーカユニット3Bは、前板11Bに取り付けられており、エンクロージャ1Bの内部には、オーディオ装置91のスピーカ部8Lと同様に、配置部材Kとしてダクト17B及び底補強板18Bが取り付けられている。
スピーカ装置92の内部には、エンクロージャ1Bによって、スピーカユニット3Bのバックキャビティとして、ダクト17Bの外部空間と連通した後端の開口部15Ba以外、ほぼ密閉された空間VLBが形成されている。
【0031】
スピーカユニット3Bは、本体部2に相当する音声出力装置に接続され、その音声出力装置から入来した音声信号を、振動板3Baの振動により音声に変換して出力する。
スピーカユニット3Bからは、前方の空間に音声F1が出力されると共に、後方の空間VLB内に音声F1Bが出力される。
【0032】
音声F1Bは、スピーカユニット3Bの軸線CL3Bに概ね沿う後方に向け進行し、エンクロージャ1Bの内面で反射して空間VLB内に左右方向及び上下方向に偏りのない音場を形成する。
そのため、エンクロージャ1Bは、左右方向及び上下方向に偏りがなく空間VLBの容積を増減させる方向の振動VR1で微小振動する。この振動VR1によって音声F3が生じる。
【0033】
さらに、スピーカ装置92は、スピーカ装置192とは異なり、音声反射部材7Bを有している。音声反射部材7Bは、図4に示されるように、音声反射部材7Lと同じ形状に形成されている。すなわち、音声反射部材7Lの反射面7Laに対応する平面として反射面7Baを有する。
【0034】
図7及び図8に示されるように、スピーカユニット3Bからエンクロージャ1B内の空間VLBに放出された音声F1Bの一部は、音声反射部材7Bの反射面7Baに反射して反射音声F2となる。
音声反射部材7Bは、図7に示されるように、右側が前方側となるようX軸方向に対し角度θbで傾いて取り付けられている。また、音声反射部材7Bの反射面7Baは、上方に向かうに従って後方側に傾く傾斜平面となっている。
すなわち、反射面7Baは、その垂線CL7Bがスピーカユニット3Bの軸線CL3Bと非平行であり、前方に向かうに従って左方向及び上方向に傾くものとなっている。換言するならば、スピーカ装置92は、反射面7Baが、その垂線CL7Bがスピーカユニット3Bの軸線CL3Bと非平行であり、軸線CL3Bの前方から見て、前方に向かうに従って左方向及び上方向に傾くようになる姿勢を、使用姿勢として規定される。
そのため、反射面7Baで反射した反射音声F2は、反射によって進行方向が変わり、左方及び上方に屈折し、主に左斜め上前方に向かって進行する。
【0035】
反射音声F2は、エンクロージャ1Bにおける音声反射部材7Bよりも前方の部分である副振動部1BHに到達する。副振動部1BHは、図7及び図8において一点鎖線で示され、主に、前板11B,左側板13Bの前部,及び天板12Bの前部が含まれる。
副振動部1BHは、反射音声F2によって、反射音声F2の進行方向に依存した、空間VLBの容積の増減となる左斜め上前方と右斜め下後方とを向く方向の振動VR2で振動し音声F4を発生する。
すなわち、エンクロージャ1Bの副振動部1BHは、振動VR1によって生じた音声F3と、振動VR2により生じた音声F4とを外部空間Vgに放出する。
【0036】
これにより、スピーカ装置92の前方に位置する再生音のリスナーHには、次の音が聴取される。すなわち、スピーカユニット3Bから直接に外部空間Vgに放出された音声F1と、エンクロージャ1B全体の振動VR1によって外部空間Vgに放出された音声F3と、エンクロージャ1Bの主として副振動部1BHの振動VR2によって外部空間Vgに放出された音声F4との合成音声である。リスナーHは、この音声F1,音声F3,及び音声Fの合成音声によって聴覚上の音場AR2が認識される。
【0037】
音場AR2は、音場AR1(図7及び図8において一点鎖線で図示)に対し、副振動部1BHの振動VR2によって生じる、左斜め上前方に向け偏って放出された音声F4が合成されている。これにより、リスナーHは、音場AR2を、音場AR1よりも左斜め上方向に拡張した音場として認識できる。
【0038】
一般に、ステレオ音声再生装置の再生音によりリスナーHが認識する音場は、左右方向及び上下方向により広い方がよい。そのため、左斜め上前方に拡張された音場が認識されるスピ―カ装置92は、左チャンネル用のスピーカとして好適である。
スピ-カ装置92は、音声反射部材7Bの設置の傾きを、左右反対にして、図2に示される音声反射部材7Rのように、左端部が前方側となる傾斜姿勢で取り付けることで、音場が右方及び上方へ拡張したスピーカ装置にできる。
すなわち、スピーカ装置92は、リスナーHに、聴覚上で音声反射部材7Bの反射面7Baの向きに応じて拡張した音場AR2を認識させることができる。
【0039】
オーディオ装置91のスピーカ部8Lは、スピーカ装置92と同様構造を有する。すなわち、図2に示されるように、音声反射部材7Lは、音声反射部材7Bと同様に、右端側が前方となるようX軸方向に対し角度θbLで傾いて、底板16に取り付けられている。
また、スピーカ部8Rは、音声反射部材7Rが、左端側が前方となるようX軸方向に対し角度θbRで傾いて、底板16に取り付けられている。
【0040】
これにより、図9に示されるように、音声反射部材7L,7Rを備えたオーディオ装置91は、前方に位置するリスナーHによって認識される音場AR2が、音声反射部材7L,7Rを備えていない場合の音場AR1に比べて左方向及び右方向にそれぞれ拡張した音場AR2となる。
また、音声反射部材7L,7Rが、上方側ほど後方側に傾斜した反射面7La,7Raを有するので、リスナーHが認識する音場AR2は、音場AR1と比べて上方にも拡張したものとなっている。
【0041】
スピーカ装置92は、使用姿勢において、反射面7Baの垂線が、リスナーHの位置から見て、すなわちスピーカユニット3Bの軸線CL3Bの前方側から見て、少なくとも左右方向に傾いている。これにより、リスナーHは、左右方向の少なくともいずれかに広い音場AR2を認識できる。
【0042】
オーディオ装置91のスピーカ部8L,8R及びスピーカ装置92は、音声反射部材7L,7R及び音声反射部材7Bの取付位置が、スピーカユニット3L,3R,及びスピーカユニット3Bの軸線CL3L,CL3R,及び軸線CL3B方向において、配置部材Kの最前端位置P1よりも近い位置にある。
換言するならば、反射面7La,7Ra,7Baの少なくとも一部が、軸線CL3L,CL3R,CL3Bの方向において、エンクロージャ1L,1R,及びエンクロージャ1Bの内部に取り付けられた配置部材Kの最前端位置P1よりも近い位置にある。
この場合の配置部材Kは、ダクト17,17B及び底補強板18,18Bである。
そのため、スピーカ装置92で説明するならば、音声反射部材7Bの反射面7Baで反射した反射音声F2は、配置部材Kに再反射することなく、直接的にエンクロージャ1Bの副振動部1BHを振動VR2で振動させて音声F4を発生させる。これは、スピーカ部8L,8Rにおいても同様である。
これにより、リスナーHは、拡張された音場AR2の拡張効果をより明確に認識できる。
【0043】
上述のように、音声再生装置であるオーディオ装置91及びスピーカ装置92は、スピーカユニット3L,3R及びスピーカユニット3Bを回動させることなく広い音場が得られる。そのため、オーディオ装置91及びスピーカ装置92は、コストが抑制され小型化が容易である。
また、オーディオ装置91及びスピーカ装置92は、スピーカユニット3L,3R及びスピーカユニット3Bを、エンクロージャ1L,1R及びエンクロージャ1Bに対し傾けることなく前面を向く姿勢で取り付けても、広い音場が得られる。
そのため、オーディオ装置91及びスピーカ装置92は、小型化が可能で外観デザインの自由度が大きい。
【0044】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0045】
音声再生装置であるオーディオ装置91は、スピーカ部8L,8Rと本体部2とがキャビネット1によって一体化されていなくてもよい。オーディオ装置91は、本体部2と、音声反射部材7Bの角度θbが左右対称となる一対のスピーカ装置92との組として構成されていてもよい。
【0046】
音声反射部材7Bの反射面7Baは、スピーカユニット3Bの軸線CL3B対し、直交しない平面を有していればよい。従って、反射面7Baは、垂線CL7が軸線CL3Bと非平行で、少なくとも左右方向に傾いていればよい。
スピーカ装置92において、配置部材Kは、ダクト17B及び底補強板18Bに限定されない。空間VLBにおいて、スピーカユニット3Bよりも後方側にあって、エンクロージャ1Bの内面から空間VLBに突出する部分又は部材、及び空間VLBに収容された部材は配置部材Kとなる。
【符号の説明】
【0047】
1 キャビネット
1L,1R,1A,1Bエンクロージャ
1BH 副振動部
11,11A,11B 前板
11a 開口部
11b スピーカ取付孔
12,12A,12B 天板
13,13A,13B 左側板
14,14A,14B 右側板
15,15A,15B 後板
15a,15Ba 開口部
16,16A,16B 底板
17,17A,17B ダクト
17a 前端面
18,18A,18B 底補強板
2 本体部
2a 前面パネル
3L,3R,3A,3B スピーカユニット
3Aa,3Ba 振動板
4 スピーカネット
51,52 仕切り壁
7,7B 音声反射部材
7La,7Ra,7Ba 反射面
7b 取付面
8L,8R スピーカ部
91 オーディオ装置(音声再生装置)
92,192 スピーカ装置
AR1,AR2 音場
CL3L,CL3R,CL3A,CL3B 軸線
CL7L,CL7R,CL7B 垂線
F1,F1B,F3,F4 音声
F2 反射音声
H リスナー
K 配置部材
P1 最前端位置
Vgb,Vg 外部空間
VL,VR,Vd,VLA,VLB 空間
Vgb 外部空間
VR1,VR2 振動
θa,θbL,θbR,θb 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9