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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】多翼ファン及び室内機
(51)【国際特許分類】
   F04D 17/04 20060101AFI20241224BHJP
   F04D 29/30 20060101ALI20241224BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
F04D17/04 B
F04D29/30 C
F04D29/30 101
F04D29/66 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020215475
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101088
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 大貴
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013092(JP,A)
【文献】特開2009-293616(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114375(WO,A1)
【文献】特開2011-058450(JP,A)
【文献】特開2016-223352(JP,A)
【文献】特開平09-014182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/04
F04D 29/30
F04D 29/66
F24F 1/0025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸方向に沿って延ばされると共に、前記回転軸まわりに所定のピッチで配列された複数の翼を備える貫流ファンであって、
前記複数の翼は、前記翼の翼面である正圧面及び負圧面の少なくとも一方、かつ、前記翼の内周側部及び外周側部の少なくとも一方に、前記翼の厚み方向に対して窪む凹部が前記回転軸の軸方向に沿って形成された少なくとも2つの翼を含み、
前記複数の翼の配列方向に隣り合う翼同士は、前記回転軸上でいずれかの翼に前記凹部が形成された位置において、前記回転軸と直交する断面形状が異なると共に、翼弦長が異なるように前記凹部が形成され、
隣り合う前記少なくとも2つの翼は、前記回転軸の軸方向に対する前記凹部の長さが互いに異なっている、多翼ファン。
【請求項2】
前記2つの翼は、前記凹部を有し、
前記2つの翼の各凹部は、前記正圧面、前記負圧面、前記内周側部及び前記外周側部のいずれかの位置が互いに異なる、
請求項1に記載の多翼ファン。
【請求項3】
前記2つの翼は、前記回転軸の軸方向に直交する翼の断面において、前記凹部の個数が互いに異なる、
請求項1または2に記載の多翼ファン。
【請求項4】
前記2つの翼は、前記回転軸の軸方向に直交する翼の断面における前記凹部の断面形状が互いに異なる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項5】
前記2つの翼は、前記回転軸の軸方向に並ぶ前記凹部の個数が互いに異なる、
請求項1~4のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項6】
前記凹部は、前記回転軸の軸方向における翼の一部に形成され、
前記凹部の底面は、前記凹部が形成された翼面が湾曲する方向と同一方向に湾曲し、当該底面が、前記回転軸の軸方向に直交する翼の断面において、翼弦長の一端から、前記凹部が形成された前記翼面まで連続する1つの湾曲面として形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項7】
前記凹部は、前記正圧面と前記負圧面とに連続して、前記内周側部と前記外周側部のいずれかの先端を切り欠いて形成される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項8】
回転軸の軸方向に沿って延ばされると共に、前記回転軸まわりに所定のピッチで配列された複数の翼を備える貫流ファンであって、
前記複数の翼は、前記翼の翼面である正圧面及び負圧面の少なくとも一方に、前記翼の厚み方向に対して窪む凹部が、前記翼の内周側部の先端から外周側部の先端まで連続すると共に、前記回転軸の軸方向における前記翼の一部に前記軸方向に沿って形成された少なくとも2つの翼を含み、
前記複数の翼の配列方向に隣り合う翼同士は、前記回転軸上でいずれかの翼に前記凹部が形成された位置において、前記回転軸と直交する断面形状が異なり、
前記少なくとも2つの翼は、前記回転軸の軸方向に対する前記凹部の長さが互いに異なっている、多翼ファン。
【請求項9】
前記複数の翼は、前記回転軸の中心に対する翼の内接円の直径をA、翼の外接円の直径をBとしたとき、翼の内外径比(A/B)が0.720以上、0.800以下である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項10】
前記複数の翼は、前記回転軸の中心に対する翼の内接円の直径をA、外接円の直径をBとしたとき、翼の内外径比(A/B)が0.800を超える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の多翼ファン。
【請求項11】
熱交換器と、
前記熱交換器を通過した空気が流入する、請求項1~10のいずれか1項に記載の多翼ファンと、
を備える、室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多翼ファン及び室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸の軸方向に沿って延ばされると共に回転軸まわりに配列された複数の翼を備える多翼ファンが知られている。この種の多翼ファンとしては、遠心ファンや、例えば空気調和機が備えるクロスフローファン(貫流ファン)がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2014-190543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した多翼ファンでは、翼の回転時に翼間の気流の風切り音である翼ピッチ音(周期音)が発生し、回転時の騒音になる。この翼ピッチ音は、一般にNz音と呼ばれ、多翼ファンの回転数Nと翼の個数zの積(N×z)によって周波数が表される。翼ピッチ音は、翼の個数が多いほど周波数が高くなる。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、翼の回転時に生じる翼ピッチ音による騒音を抑えることができる多翼ファン及び室内機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する多翼ファンの一態様は、回転軸の軸方向に沿って延ばされると共に回転軸まわりに所定のピッチで配列された複数の翼を備える貫流ファンであって、複数の翼は、翼の翼面である正圧面及び負圧面の少なくとも一方、かつ、翼の内周側部及び外周側部の少なくとも一方に、翼の厚み方向に対して窪む凹部が回転軸の軸方向に沿って形成された少なくとも2つの翼を含み、複数の翼の配列方向に隣り合う翼同士は、回転軸上でいずれかの翼に凹部が形成された位置において、回転軸と直交する断面形状が異なると共に、翼弦長が異なるように凹部が形成され、隣り合う少なくとも2つの翼は、回転軸の軸方向に対する凹部の長さが互いに異なっている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する多翼ファンの一態様によれば、翼の回転時に生じる翼ピッチ音による騒音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例の室内機を示す断面図である。
図2図2は、実施例の多翼ファンを示す斜視図である。
図3図3は、実施例の多翼ファンを示す断面図である。
図4図4は、実施例の多翼ファンの翼の一例を説明するための模式図である。
図5図5は、実施例の多翼ファンの翼の一例を説明するための模式図である。
図6図6は、実施例の多翼ファンの翼の一例を説明するための模式図である。
図7図7は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼を示す断面図である。
図8図8は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例1を示す断面図である。
図9図9は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例2を示す断面図である。
図10図10は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例3を示す平面図である。
図11図11は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例4を示す斜視図である。
図12図12は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例5を示す平面図である。
図13図13は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例6を示す平面図である。
図14図14は、実施例の多翼ファンにおける翼の他の例を示す模式図である。
図15図15は、実施例の多翼ファンにおける複数の翼の変形例7を示す断面図である。
図16図16は、実施例の多翼ファンにおける騒音レベルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する多翼ファン及び室内機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する多翼ファン及び室内機が限定されるものではない。
【実施例
【0010】
(室内機の構成)
図1は、実施例の室内機を示す断面図である。図2は、実施例の多翼ファンを示す斜視図である。図1に示すように、実施例の室内機1は、冷凍サイクル装置、例えば、空気調和装置(図示せず)を構成する室内機であり、熱交換器5と、熱交換器5を通過した空気が流入する多翼ファン6と、多翼ファン6から送られる気流の流路を形成するファンケーシング7と、熱交換器5、多翼ファン6、ファンケーシング7を内部に収容する本体ケーシング8と、を備える。本体ケーシング8は、空気の吸い込み口8a及び吹き出し口8bを有する。
【0011】
多翼ファン6は、図2に示すように、複数の翼12が回転軸13まわりに配列された羽根車11を備える。羽根車11は、回転軸13の軸方向Xに複数配列されており、各羽根車11の間に仕切板14を挟んで連結されている。回転軸13の軸方向Xにおける両端には、回転軸13によって支持される端板15が設けられており、回転軸13によって多翼ファン6の両端が支持されている。
【0012】
また、各羽根車11は、回転軸13まわりの周方向、つまり複数の翼12の配列方向に対して互いにずらされて連結されている。これにより、各羽根車11は、回転軸13の軸方向Xに並ぶ羽根車11間で翼ピッチ音に位相差が生じるので、多翼ファン6の回転時の騒音を抑えられる。
【0013】
(多翼ファンの構成)
図3は、実施例の多翼ファン6を示す断面図である。実施例の多翼ファン6は、空気の流れが、回転軸13の軸方向Xと交差する方向に多翼ファン6を貫通する、いわゆる貫流ファンとして用いられている。
【0014】
多翼ファン6は、図2に示すように、回転軸13の軸方向Xに沿って延ばされると共に、図3に示すように、回転軸13まわりに所定のピッチPで配列された複数の翼12を備える。翼12の翼面17は、多翼ファン6の回転方向Rとは逆方向に向かって凸となるように湾曲されており、正圧面17aと負圧面17bを有する。翼12は、多翼ファン6の回転中心O側に位置する内周側部18aと、回転中心O側とは反対側に位置する外周側部18bと、を有する。
【0015】
図4図5及び図6は、実施例の多翼ファン6の翼12の一例を説明するための模式図である。図4に示すように、複数の翼12は、内周側部18aの正圧面17a、内周側部18aの負圧面17b、外周側部18bの正圧面17a、外周側部18bの負圧面17bの4箇所に、紙面奥側に見える翼の外径(図4における正圧面17a、負圧面17b)よりも翼12の厚み方向に対して窪む凹部20(20A~20D)が形成された翼12を含む。なお、当該4箇所のうち少なくとも1箇所に凹部20が形成された翼であっても良い。言い換えると、複数の翼12は、翼12の正圧面17a及び負圧面17bの少なくとも一方の翼面、かつ、翼12の内周側部18a及び外周側部18bの少なくとも一方の端部に、凹部20が形成された翼12を含み、凹部20が4箇所のうちの任意の箇所に形成される組み合わせにより、翼12の断面形状として15種類の形成パターンを有する。
【0016】
また、翼12は、翼12の厚みが最大になる最大肉厚部が、翼弦における中央よりも、内周側部18a側に位置するように形成されている。凹部20は、例えば、最大肉厚部(図4中の破線)に対して、内周側部18a側と外周側部18b側のいずれかに形成されている。
【0017】
図5に示すように、内周側部18aの負圧面17bに凹部20Aを形成すると共に、外周側部18bの負圧面17bに凹部20Cを形成する場合、凹部20A、20C同士が連続する1つの凹部20として形成されてもよい。このように内周側部18aの先端から外周側部18bの先端まで連続する凹部20(20A、20C)が形成される場合、凹部20(20A、20C)は回転軸18の軸方向Xにおける翼12の一部に形成されており、翼12の負圧面17bの外観から凹部20(20A、20C)の存在を視認できる。同様に、図6に示すように、内周側部18aの正圧面17aに凹部20Bを形成すると共に、外周側部18bの正圧面17aに凹部20Dを形成する場合、凹部20B、20D同士が連続する1つの凹部20として形成されてもよい。このように内周側部18aの先端から外周側部18bの先端まで連続する凹部20(20B、20D)が形成される場合、凹部20(20B、20D)は回転軸18の軸方向Xにおける翼12の一部に形成されており、翼12の正圧面17aの外観から凹部20(20B、20D)の存在を視認できる。
【0018】
本実施例の多翼ファン6では、例えば、複数の翼12の全てに凹部20がそれぞれ形成されるが、この構造に限定されず、複数の翼12のうちの少なくとも1つの翼12が凹部20を有する構造であればよい。そして、本実施例の多翼ファン6では、複数の翼12の配列方向に隣り合う翼同士は、回転軸13上でいずれかの翼に凹部20が形成された位置において、回転軸13と直交する断面形状が異なる。これにより、断面形状が異なる隣り合う翼12間で、翼ピッチ音の周波数を異ならせることができる。
【0019】
また、多翼ファン6によれば、隣り合う翼12同士において、凹部20の形成パターンを変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変化させることができる。
【0020】
図示しないが、多翼ファン6は、例えば、凹部20を有する翼12と、凹部20が無い翼12が隣り合って配置される構造であってもよい。この構造では、凹部20を有する翼12と、凹部20が無い翼12との間で、翼ピッチ音の周波数を分散させることによって多翼ファン6の騒音を抑える効果が得られる。
【0021】
上述のように、隣り合う翼12同士において翼12の断面形状が異なるとは、隣り合う各翼12の回転軸13の軸方向Xに直交する断面形状同士を、回転軸13の軸方向Xにおいていずれかの翼12の凹部20を通る位置で比較したときに、翼12の断面形状が互いに異なることを指す。このように異なる翼12の断面形状には、凹部20の形成パターンが異なる構造と、凹部20の断面形状が異なる構造と、翼弦に沿う方向における凹部20の位置が異なる構造が含まれる。
【0022】
図7は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12を示す断面図である。図3及び図7に示すように、例えば、多翼ファン6の複数の翼12の全ては、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、複数の翼12の配列方向に隣り合う翼12同士の凹部20(20A~20D)が設けられる位置が互いに異なっている。なお、多翼ファン6は、複数の翼12の配列方向において、少なくとも2つの翼12の凹部20が設けられる位置が互いに異なり、この2つの翼12が隣り合って配置されていればよく、凹部20が設けられる位置が異なる隣り合う翼12間で、翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0023】
各凹部20(20A~20D)は、断面が円弧形状の底面21aを有する。凹部20は、翼12における回転軸13の軸方向Xにわたって形成されるが、軸方向Xにおける翼12の一部に形成されてもよい。また、1つの翼12において、凹部20の断面形状が、回転軸13の軸方向Xにおいて同一形状に形成されているが、1つの翼12における凹部20の断面形状が回転軸13の軸方向Xに沿って変化するように形成されてもよい。
【0024】
(変形例1)
図8は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例1を示す断面図である。図8に示すように、変形例1の複数の翼12の全ては、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、複数の翼12のうち配列方向に隣り合う翼12同士の凹部20(20A~20D)の個数が互いに異なっている。これにより、隣り合う翼12間で、翼ピッチ音を分散させることができる。各翼12の凹部20の個数は、多翼ファン6の回転方向Rに沿って規則的に増減するが、この構造に限定にされず、不規則に変化していてもよい。
【0025】
(変形例2)
図9は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例2を示す断面図である。図9に示すように、変形例2の複数の翼12の全ては、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、複数の翼12のうち配列方向に隣り合う翼12同士の凹部20の断面形状が互いに異なっている。例えば、凹部20は、内周側部18aの先端面から外周側部18bに向かって延びており、負圧面17bに交差する凹部20の端面21bを有する。これにより、隣り合う翼12間で、翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。凹部20の断面形状としては、翼12の厚み方向に対する凹部20の深さ、翼弦に沿う方向に対する凹部20の長さ、回転軸13の軸方向Xに直交する断面における翼面17と端面21bがなす角等が異なっていればよい。また、多翼ファン6は、例えば、変形例1と変形例2が組み合わされてもよく、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を更に分散させることができる。
【0026】
(変形例3)
図10は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例3を示す平面図である。図10に示すように、変形例3では、複数の翼12の配列方向に隣り合う翼12同士において、翼弦に沿う方向における凹部20の断面形状が同一であり、回転軸13の軸方向Xに対する凹部20の長さHが異なる。変形例3では、隣り合う翼12同士において凹部20の長さHが異なるので、例えば、図10中のD-D断面において、隣り合う翼12同士の翼12の断面形状が異なることにより、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0027】
なお、図示しないが、変形例3においても、隣り合う翼12同士において、上述した実施例、変形例1、2の凹部20の構造と組み合わされて、凹部20の長さHが異なるように形成されてもよく、実施例の効果が更に高められる。
【0028】
(変形例4)
図11は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例4を示す斜視図である。変形例4は、上述した実施例と変形例3が組み合わされた一例であり、図11に示すように、複数の翼12の各々において、内周側部18aの正圧面17a、内周側部18aの負圧面17b、外周側部18bの正圧面17a、外周側部18bの負圧面17bの4箇所のうちのいずれか1箇所に凹部20が形成されており、隣り合う翼12間で凹部20の位置が互いに異なる。
【0029】
加えて、変形例4は、複数の翼12の各々において、回転軸13の軸方向Xに対する凹部20の長さHと、回転軸13の軸方向Xに直行する断面において翼面17に沿って延びる凹部20の幅が、隣り合う翼12間で凹部20の位置が互いに異なる。このように全ての翼12において、凹部20の位置、長さH、幅がそれぞれことなることにより、隣り合う翼12間での翼ピッチ音の周波数の変化を大きくし、翼ピッチ音の周波数を効果的に分散させることで、翼ピッチ音による騒音が更に抑えられる。
【0030】
(変形例5)
図12は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例5を示す平面図である。図12に示すように、複数の翼12の配列方向に隣り合う各翼12には、回転軸13の軸方向Xに直交する断面形状が同一の複数の凹部20が、回転軸13の軸方向Xに並んで形成されている。そして、複数の翼12の配列方向に隣り合う翼12同士において、回転軸13の軸方向Xに間隔をあけて並ぶ凹部20の個数が異なる。各翼12の凹部20の個数は、多翼ファン6の回転方向Rに沿って所定の周期で増減を繰り返すように変化するが、この構造に限定されず、不規則に変化していてもよい。変形例5では、隣り合う翼12同士において凹部20の個数が異なるので、例えば、図12中のE-E断面において、隣り合う翼12同士の翼12の断面形状が異なることにより、隣り合う翼12間で翼ピッチ音を分散させることができる。
【0031】
(変形例6)
図13は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例6を示す平面図である。図13に示すように、複数の翼12の配列方向に隣り合う翼12同士において、回転軸13の軸方向Xに直交する凹部20の断面形状、回転軸13の軸方向Xに並ぶ凹部20の個数がそれぞれ同一であり、回転軸13の軸方向Xにおける凹部20の位置が異なる。各翼12の凹部20の位置は、多翼ファン6の回転方向Rに沿って、回転軸13の軸方向Xにおける一方側へ向かって徐々にずれるが、この構造に限定されず、凹部20の位置が不規則に変化してもよい。変形例6では、隣り合う翼12同士において、回転軸13の軸方向Xに対する凹部20の位置が異なるので、例えば、図13中のG-G断面において、隣り合う翼12同士の翼12の断面形状が異なることにより、隣り合う翼12間で翼ピッチ音を分散させることができる。
【0032】
(変形例7)
図14は、実施例の多翼ファン6における翼12の他の例を示す模式図である。図15は、実施例の多翼ファン6における複数の翼12の変形例7を示す断面図である。図14に示すように、翼12は、内周側部18aと外周側部18bに、凹部20(20F、20G)がそれぞれ形成されている。凹部20(20F、20G)は、回転軸13の軸方向Xにおける翼12の一部に形成されている。
【0033】
内周側部18aの凹部20Fの底面21aは、凹部20Fが形成された翼面17としての負圧面17bが湾曲する方向と同一方向に湾曲している。この凹部20Fの底面21aは、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、翼弦長Lの一端としての内周側部18aの先端から、凹部20Fが形成された負圧面17bまで滑らかに連続する1つの湾曲面として形成されている。また、凹部20Fは、正圧面17aと負圧面17bとに連続して、内周側部18aの先端を切り欠いて形成されており、凹部20Fが形成されることによって翼弦長Lが短くされている。
【0034】
同様に、外周側部18bの凹部20Gの底面21aは、凹部20Gが形成された正圧面17aが湾曲する方向と同一方向に湾曲している。この凹部20Gの底面21aは、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、翼弦長Lの一端としての外周側部18bの先端から、凹部20Gが形成された正圧面17aまで滑らかに連続する1つの湾曲面として形成されている。また、凹部20Gは、正圧面17aと負圧面17bとに連続して、外周側部18bの先端を切り欠いて形成されており、凹部20Gが形成されることによって翼弦長Lが短くされている。
【0035】
上述のように1つの湾曲面として形成された底面21aは、凹部20(20F、20G)が回転軸18の軸方向Xにおける翼12の一部に形成されているので、翼12の負圧面17bの外観から凹部20(20F、20G)の存在を視認できる。
【0036】
また、凹部20Fの底面21aは、翼弦の中央よりも内周側部18a側の位置で負圧面17bに滑らかにつながっている。凹部20Gの底面21aは、翼弦の中央よりも外周側部18a側の位置で正圧面17aに滑らかにつながっている。なお、凹部20(20F、20G)の底面21aと翼面17がつながる位置は変形例7に限定されない。また、例えば、翼12の内周側部18aの先端面が円弧状の曲面を含むように形成される場合、凹部20Fの底面21aは、円弧状の曲面と交差するように形成されており、底面21aが翼面17と滑らかにつなげられている。
【0037】
このように凹部20Fの底面21aが負圧面17bに滑らかに連続するように形成され、凹部20Gの底面21aが正圧面17aに滑らかに連続するように形成されることにより、凹部20F、20Gの底面21aに沿って翼面17を流れる気流に生じる渦を小さくし、翼12の下流側に生じる乱流が抑えられるので、翼面17に沿う気流に生じる圧力損失が抑えられ、多翼ファン6を駆動するモータ(図示せず)の消費電力の低減を図れる。言い換えると、翼12の翼面17に沿う気流の圧力損失を減少させることにより、多翼ファン6の風量を増やすことができる。
【0038】
そして、図15に示すように、複数の翼12の配列方向に隣り合う2つの翼12同士は、上述のように形成される凹部20(20F、20G)の大きさである断面形状が異なることにより、翼弦長Lが互いに異なる。これにより、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を変化させて、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0039】
翼12は、図14に破線で示す内周側部18a及び外周側部18bのように、凹部20G、20Fが形成される前の翼12の翼弦長Lの20%程度まで小さくされてもよい。翼12は、翼弦長Lの20%よりも小さい場合、隣り合う翼12間に適正な流路を確保できなくなり、隣り合う翼12間で乱流が生じて、翼12間の気流に圧力損失が発生するので好ましくない。
【0040】
(凹部の作用)
以上のように多翼ファン6の隣り合う翼12同士は、実施例、変形例1~7における凹部20のいずれかを有することにより、各翼12の断面形状が異なるので、各翼12の翼ピッチ音の周波数が変化する。これにより、隣り合う翼12同士において、翼ピッチ音の周波数を分散させることが可能になり、翼12の回転時に生じる翼ピッチ音による騒音が抑えられる。
【0041】
図16は、実施例の多翼ファン6における騒音レベルを説明するための図である。図16において、縦軸が、騒音レベル[dB]を示し、横軸が騒音の周波数[Hz]を示す。図16において、実施例の多翼ファン6を破線で示し、比較例の多翼ファンを実線で示す。
【0042】
比較例の多翼ファンは、翼12が凹部20を有さず、複数の翼12の配列方向において翼12の断面形状が同一であり、翼12が等ピッチで配列される。図16に示すように、実施例の多翼ファン6は、凹部20を有する翼12の断面形状が、翼12の配列方向に隣り合う翼12同士で異なることで、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を変化させて、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を分散させることで、矢印F1で示す1次の周波数付近と、矢印F2で示す2次の周波数付近において、騒音レベルを低減できる。
【0043】
(翼の内外径比)
上述した多翼ファン6の複数の翼12は、図3に示すように、回転軸13の回転中心Oに対する翼12の内接円C1の直径(内径)をA、翼12の外接円C2の直径(外径)をBとしたとき、翼12の内外径比(A/B)が0.720以上、0.800以下である。このような翼12の内外径比(A/B)の場合に、実施例における凹部20によって、翼ピッチ音の周波数を制御することにより、凹部20が無い多翼ファンに比べて騒音を低減できる。
【0044】
また、多翼ファン6の風量を増やすために翼12の内外径比(A/B)を拡大し、翼12の内外径比(A/B)が0.800を超える場合には、多翼ファン6を貫通するように翼12間を通過する風速が増加するので、騒音の悪化を引き起こすおそれがある。このような場合であっても、凹部20によって翼ピッチ音の周波数を制御することにより、騒音の悪化を回避しつつ風量を増やすことができる。
【0045】
(効果)
上述したように多翼ファン6の複数の翼12は、翼12の正圧面17a及び負圧面17bの少なくとも一方、かつ、翼12の内周側部18a及び外周側部18bの少なくとも一方に、翼12の厚み方向に対して窪む凹部20が回転軸13の軸方向Xに沿って形成された少なくとも2つの翼12を含む。複数の翼12の配列方向に隣り合う翼12同士は、回転軸13上でいずれかの翼12に凹部20が形成された位置において、回転軸13の軸方向Xと直交する断面形状が異なる。上述の少なくとも2つの翼12は、回転軸13の軸方向Xに対する凹部20の長さが互いに異なっている。これにより、複数の翼12において、隣り合う翼12の翼ピッチ音の周波数を変化させることで、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させることが可能になり、翼12の回転時に生じる翼ピッチ音による騒音を抑えることができる。また、翼12の翼面17において凹部20を形成する位置を変えることにより、翼12の断面形状を容易に異ならせることができるので、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変化させることができる。
【0046】
また、隣り合う翼12同士において、凹部20の長さHを異ならせることにより、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数が変化するので、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させて翼ピッチ音による騒音を抑えることができる。
【0047】
また、多翼ファン6において、複数の翼12の配列方向に隣り合う2つの翼12の各凹部20は、正圧面17a、負圧面17b、内周側部18a及び外周側部18bのいずれかの位置(凹部20の形成パターン)が互いに異なる。このように、隣り合う翼12同士において、凹部20の形成パターンを変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変えて、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0048】
また、多翼ファン6において、複数の翼12の配列方向に隣り合う2つの翼12は、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、凹部20の個数が互いに異なる。このように、隣り合う翼12同士において、凹部20の個数を変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変えて、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0049】
また、多翼ファン6において、複数の翼12の配列方向に隣り合う2つの翼12は、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面における凹部20の断面形状が互いに異なる。このように、隣り合う翼12同士において、凹部20の断面形状を変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変えて、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0050】
また、多翼ファン6において、複数の翼12の配列方向に隣り合う2つの翼12は、回転軸13の軸方向Xに並ぶ凹部20の個数が互いに異なる。このように、隣り合う翼12同士において、回転軸13の軸方向Xに並ぶ凹部20の個数を変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変えて、隣り合う翼12間の翼ピッチ音の周波数を分散させることができる。
【0051】
また、多翼ファン6において、翼12の凹部20は、回転軸13の軸方向Xにおける翼12の一部に形成されている。凹部20(20F、20G)の底面21aは、凹部20(20F、20G)が形成された翼面17が湾曲する方向と同一方向に湾曲し、この底面21aが、回転軸13の軸方向Xに直交する翼12の断面において、翼弦長Lの一端から、凹部20(20F、20G)が形成された翼面17まで連続する1つの湾曲面として形成されている。これにより、凹部20F、20Gの底面21aに沿って翼面17を流れる気流に生じる渦を小さくし、翼12の下流側に生じる乱流が抑えられるので、翼面17に沿う気流に生じる圧力損失が抑えられ、多翼ファン6を駆動するモータ(図示せず)の消費電力の低減を図れる。このため、翼12の翼面17に沿う気流の圧力損失を減少させることにより、多翼ファン6の風量を増やすことができる。
【0052】
また、多翼ファン6において、翼12の凹部20は、正圧面17aと負圧面17bとに連続して、内周側部18aと外周側部18bのいずれかの先端を切り欠いて形成される。これにより、隣り合う翼12同士において、翼弦長Lを変えることで各翼12の断面形状を容易に異ならせることが可能である。したがって、隣り合う翼12間で翼ピッチ音の周波数を容易に変えることができる。
【0053】
また、多翼ファン6において、複数の翼12は、回転軸13の回転中心Oに対する翼12の内接円C1の直径をA、翼12の外接円C2の直径をBとしたとき、翼12の内外径比(A/B)が0.720以上、0.800以下である。これにより、このような翼12の内外径比(A/B)の場合に、凹部20によって翼ピッチ音の周波数を制御することにより、凹部20が無い多翼ファンに比べて騒音を低減できる。
【0054】
また、多翼ファン6において、複数の翼12は、回転軸13の回転中心Oに対する翼12の内接円C1の直径をA、外接円C2の直径をBとしたとき、翼12の内外径比(A/B)が0.800を超える。翼12の内外径比(A/B)が0.800を超える場合には、多翼ファン6を貫通するように翼12間を通過する風速が増加して騒音の悪化を引き起こすおそれがあるが、凹部20によって翼ピッチ音の周波数を制御することで、騒音の悪化を回避しつつ風量を増やすことができる。
【0055】
なお、本願の開示する多翼ファンは、実施例において貫流ファンとして用いられたが、貫流ファンに限定されない。多翼ファンは、例えば、シロッコファン等の遠心ファンに適用されてもよく、本実施例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
1 室内機
5 熱交換器
6 多翼ファン
12 翼
13 回転軸
17 翼面
17a 正圧面
17b 負圧面
18a 内周側部
18b 外周側部
20(20A~20G) 凹部
21a 底面
21b 端面
A、B 直径
(A/B) 内外径比
C1 内接円
C2 外接円
H 長さ
L 翼弦長
X 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16