(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20241224BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241224BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021006722
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 昌宏
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-144483(JP,A)
【文献】特開2020-064889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けた後、別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上であり、
前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させたときに接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度が、70℃以上であ
り、
エラストマー、鉱油、タッキファイヤー、及び酸化防止剤を含み、
前記エラストマーが、スチレンブロック共重合体を含み、
前記エラストマーの含有量は、ホットメルト接着剤の全質量に対し、30質量%以上50質量%以下であり、
前記鉱油の含有量は、ホットメルト接着剤の全質量に対し、10質量%以上20質量%以下であり、
前記タッキファイヤーの含有量は、ホットメルト接着剤の全質量に対し、30質量%以上55質量%以下であり、
前記酸化防止剤の含有量は、ホットメルト接着剤の全質量に対し、0.05質量%以上1質量%以下である、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
前記鉱油が、パラフィン系炭化水素化合物を含む、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記
スチレンブロック共重合体が、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含む
請求項1又は請求項2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
弾性変形可能な樹脂層及び可撓性を有する表面層からなる樹脂積層体を製造するためのホットメルト接着剤である請求項1
~請求項3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記スチレンブロック共重合体が、ラジアル型スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びリニア型スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より建築材料、電磁波吸収材、建築用パネル、自動車内装材、容器、断熱材、養生テープ、ホース、特殊被覆材料として、ホットメルト接着剤で接着積層させた樹脂積層体が多用されている。
従来のホットメルト接着剤の例としては、特許文献1に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、溶融粘度が500~100,000mPa・s/190℃の範囲であるアモルファス-ポリ(α-オレフィン)(A)、環球法による軟化点が110℃以上の粘着付与剤樹脂(B)および融点が120℃以上のポリプロピレン系ワックス(C)を必須成分し、(A)と(C)の重量比が100/50~100/100であるホットメルト接着剤が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
このようなホットメルト接着剤については、自動車用途及び建材用途に限らずその使用環境の厳しさから、ポリプロピレンのような被着材への接着力に優れ、かつ冷熱サイクル耐久性に優れることが強く求められる。
一方、ホットメルト接着剤は、一方の被着材に溶融した接着剤を塗布後、もう一方の被着材を貼り付け固定するまでの固化時間が短いという特徴を有するが、固化時間が極めて短いと接着面積の大きい部位全体に接着剤の塗布が完了する前にはじめに塗布した箇所の接着剤が固化し、接着できない。このような場合、感圧型と呼ばれる25℃下で圧力を掛けるだけで被着材の濡れ性を高め、もう一方の被着材と接着可能な粘着剤があるが、この粘着剤は一般に耐熱性が低く、また、線膨張係数の異なる被着材を貼り合せた場合、温度変化で発生する膨張・収縮の応力を粘着剤層が吸収できずに剥がれる、いわゆる冷熱サイクル耐久性が低いという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、特にポリプロピレン系被着材への接着力及び冷熱サイクル耐久性に優れ、かつ接着面積の大きい部位でも接着が可能なホットメルト接着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けた後、別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上であり、
前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させたときに接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度が、70℃以上である
ホットメルト接着剤。
<2> エラストマー、鉱油、及び、タッキファイヤーを含む<1>に記載のホットメルト接着剤。
<3> 前記エラストマーが、スチレン共重合体を含む<2>に記載のホットメルト接着剤。
<4> 前記エラストマーが、ブロック共重合体を含む<2>又は<3>に記載のホットメルト接着剤。
<5> 前記エラストマーが、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含む<2>~<4>のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
<6> 酸化防止剤を更に含む<2>~<5>のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
<7> 弾性変形可能な樹脂層及び可撓性を有する表面層からなる樹脂積層体を製造するためのホットメルト接着剤である<1>~<6>のいずれか1つに記載のホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、接着力及び冷熱サイクル耐久性に優れ、かつ接着面積の大きい部位でも接着が可能なホットメルト接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る樹脂積層体の一例における模式断面図である。
【
図2】本発明に係るホットメルト接着剤を用いて得られた試験片の接着力測定試験を示す概略図である。
【
図3】本発明に係るホットメルト接着剤を用いて得られた試験片の加熱破壊温度測定試験を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本願明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
【0011】
(ホットメルト接着剤)
本発明に係るホットメルト接着剤は、特にポリプロピレンへの接着性に優れたもので、厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けた後、別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上であり、前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させたときに接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度(以下「加熱破壊温度」ともいう。)が、70℃以上である。
また、本発明に係るホットメルト接着剤は、弾性変形可能な樹脂層及び可撓性を有する表面層からなる樹脂積層体を製造するためのホットメルト接着剤として好適に用いることができる。
【0012】
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、冷熱サイクル耐久性に優れるホットメルト接着剤を提供することができることを見出した。
前記接着力及び前記加熱破壊温度が前記範囲を満たすことにより、接着力に優れるとともに、低温(例えば、25℃以下)時及び高温(例えば、70℃以上)時における接着力維持性に優れ、冷熱サイクル耐久性に優れる。
なお、本発明における「冷熱サイクル耐久性」における「冷熱サイクル」とは、特に断りのない限り、高温保持(例えば60℃で2時間)後に低温保持(例えば-20℃で2時間)するサイクルを言い、「冷熱サイクル耐久性」はこのサイクルを繰り返したときの耐久性を言う。
【0013】
また、本発明に係るホットメルト接着剤を用いて樹脂積層体を製造した場合、冷熱サイクル耐久性に優れるだけでなく、適度な固化時間を有するため前記ホットメルト接着剤の塗布、接着等の操作が行いやすく、生産性にも優れる。
【0014】
以下、本発明に係る各構成要件の詳細について説明する。
【0015】
<接着力>
本開示に係るホットメルト接着剤は、厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けた後、別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上である。
前記接着力は、接着性及び冷熱サイクル耐久性の観点から、0.18MPa以上であることが好ましく、0.25MPa以上1.0MPa以下であることが特に好ましい。
【0016】
前記接着力は、具体的には、以下の方法で測定することができる。
テフロン(登録商標)シート2枚の間にホットメルト接着剤をはさみ、これを140℃に調整した加熱プレスで厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤に成形した後、このフィルム状ホットメルト接着剤を25mm幅、50mm長さ、2mm厚みのポリプロピレン板A上の端部から25mm×25mmの面積に転写した。
その後、ポリプロピレン板Aのフィルム状ホットメルト接着剤を転写した部位に、フィルム状ホットメルト接着剤を転写していない部分が重ならないように、同じ形状の別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm
2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850(1999)に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張り、せん断破壊が生じた力の大きさ(せん断接着強さ)を前記接着力(MPa)とする。
図2は、接着力測定試験における試験片及びおもりの概略図である。
図2では試験片の側面を示しており、長さ方向において端部から25mmの範囲に本発明に係るフィルム状ホットメルト接着剤が設けられ、ポリプロピレン板PA(前記ポリプロピレン板A)及びポリプロピレン板PB(前記ポリプロピレン板B)が接着されている。また、
図2における矢印は、引張り方向を示す。
【0017】
<加熱破壊温度>
本発明に係るホットメルト接着剤は、前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させたときに接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度(加熱破壊温度)が、70℃以上である。
前記加熱破壊温度は、冷熱サイクル耐久性及び接着容易性の観点から、75℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、82℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
【0018】
前記加熱破壊温度は、具体的には、以下の方法で測定することができる。
前記接着力の測定と同様な方法により得られた試験片を用い、前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、おもりをつけた部分を重量方向下部として、試験片が水平面に対して垂直となるように試験片の他方の端を固定して、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させ、前記試験片における接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度を測定する。
図3は、加熱破壊温度測定試験における試験片及びおもりの概略図である。
図3では
図2と同様に試験片の側面を示しており、下側のポリプロピレン板PBにはおもりWが取り付けられている。
【0019】
<接着可能時間>
本開示に係るホットメルト接着剤は、25℃下で圧力を掛けるだけで被着材の濡れ性を上げることができ、もう一方の被着材と接着可能な長い接着可能時間を有するものである。
具体的には、25℃環境で10分間放置した後でも接着できることが好ましく、より好ましくは20分以上であり、更に好ましくは30分以上である。この時間まで放置しても接着可能な場合、貼り合せの製造ラインで何らかの生産設備のトラブルで、一時的に設備や生産が停止する現象が発生しても、復旧後に接着剤を塗布した被着材を無駄にすることなく生産が再開できる。
【0020】
接着可能時間は、具体的には以下の方法で測定することができる。
厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設け、25℃の環境に所定時間放置した後に別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上である時間を接着可能時間とした。なお、接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けてから別のポリプロピレン板Bを重ね合わせるまでの時間は、10分ごとに最大30分まで評価した。
【0021】
<組成>
本発明に係るホットメルト接着剤は、前記接着力及び前記加熱破壊温度が前記範囲を満たすものであれば、その組成は特に制限はないが、冷熱サイクル耐久性、接着性及び取り扱い性の観点から、エラストマーを含むことが好ましく、エラストマー、鉱油、及び、タッキファイヤー(「粘着付与剤」ともいう。)を含むことがより好ましく、エラストマー、鉱油、タッキファイヤー、及び、酸化防止剤を含むことが更に好ましい。
【0022】
-エラストマー-
本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、接着性及び取り扱い性の観点から、エラストマーを含むことが好ましい。
なお、本発明における「エラストマー」とは、常温においてゴム弾性を有するポリマーである。
前記エラストマーとしては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
中でも、前記エラストマーは、冷熱サイクル耐久性及び接着性の観点から、スチレン共重合体を含むことが好ましく、スチレンブロック共重合体を含むことがより好ましく、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含むことが特に好ましい。
また、前記エラストマーは、冷熱サイクル耐久性及び接着性の観点から、ブロック共重合体であることが好ましい。
更に、本発明に係るホットメルト接着剤は、前記エラストマーを、1種単独で含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよいが、冷熱サイクル耐久性及び接着性の観点から、2種以上のエラストマーを含有することが好ましく、2種以上のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有することがより好ましい。また、本発明に係るホットメルト接着剤は、前記エラストマーを2種~4種含有することが好ましい。
【0023】
前記スチレンブロック共重合体としては、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソプレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-ブチレン/ブテン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)が好ましい。
本発明に用いられるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体は、リニア型(linear、直線状)であっても、ラジアル型(radial、放射状)のものであってもよい。
中でも、本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性及び接着性の観点から、前記エラストマーとして、リニア型のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、及び、ラジアル型のスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の両方を含むことが特に好ましい。
【0024】
前記エラストマーのMFR(メルトマスフローレイト)は、冷熱サイクル耐久性及び接着性の観点から、0.5g/10分~100g/10分であることが好ましく、1g/10分~50g/10分であることがより好ましく、2g/10分~30g/10分であることが更に好ましく、5g/10分~20g/10分であることが特に好ましい。
本発明におけるエラストマーのMFRは、JIS K7210(2014)に従って、試験温度200℃、試験荷重5kgの条件で測定する。
【0025】
前記エラストマーの含有量は、冷熱サイクル耐久性、接着性及び取り扱い性の観点から、ホットメルト接着剤の全質量に対し、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。前記エラストマーの含有量が30質量%以上では、接着剤の凝集力が十分で加熱破壊温度が高くなり、50質量%以下では接着剤を加熱塗布する際の溶融粘度が高くならず、塗布作業性が上がる。
【0026】
-鉱油-
本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、常温(例えば、25℃)における粘着性及び取り扱い性の観点から、鉱油を含むことが好ましい。
常温における粘着性は、被着材への濡れ性を上げ接着性の向上に関係する。
本発明における鉱油とは、炭化水素化合物のことをいい、石油、天然ガス、石炭等の地下資源由来の炭化水素化合物であることが好ましい。
また、前記鉱油は、25℃において、液状の化合物であることが好ましい。
更に、前記鉱油は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、前記エラストマー及び後述するタッキファイヤーと相溶する化合物であることが好ましい。
【0027】
前記鉱油としては、アロマ(芳香族)系炭化水素化合物、ナフテン(シクロ環)系炭化水素化合物、パラフィン(脂肪族)系炭化水素化合物、又は、これらの混合物が好ましく挙げられる。
中でも、前記鉱油としては、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、パラフィン系炭化水素化合物を含むことが好ましく、パラフィン系炭化水素化合物を、前記鉱油の全質量に対し、前記3種の炭化水素化合物のうち最も多く含むことがより好ましく、パラフィン系炭化水素化合物を、ホットメルト接着剤に含まれる前記鉱油の全質量に対し、50質量%以上含むことが特に好ましい。
また、前記鉱油としては、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、アロマ系炭化水素化合物の含有量が、ホットメルト接着剤に含まれる前記鉱油の全質量に対し、20質量%以下であることが好ましく、アロマ系炭化水素化合物の含有量が、ホットメルト接着剤に含まれる前記鉱油の全質量に対し、10質量%以下であることがより好ましく、アロマ系炭化水素化合物の含有量が、ホットメルト接着剤に含まれる前記鉱油の全質量に対し、1質量%以下であることが更に好ましく、アロマ系炭化水素化合物を含まないことが特に好ましい。
【0028】
前記鉱油としては、市販品を用いることもできる。
例えば、プロセスオイルPW90(出光興産(株)製)、サンピュアNX46、サンピュアNX90、サンピュアN90-A(以上、日本サン石油(株)製)等が挙げられる。
【0029】
前記鉱油は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記鉱油の含有量は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、ホットメルト接着剤の全質量に対し、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが特に好ましい。
本発明に係るホットメルト接着剤における前記鉱油の含有量と前記エラストマーの含有量との質量比は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、鉱油の含有量/エラストマーの含有量=0.05以上1.2以下であることが好ましく、0.1以上1.0以下であることがより好ましく、0.2以上0.8以下であることが更に好ましく、0.3以上0.5以下であることが特に好ましい。
【0030】
-タッキファイヤー-
本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含むことが好ましい。
前記タッキファイヤーとしては、例えば、石油樹脂;ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂;(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0031】
中でも、本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、接着性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、前記タッキファイヤーとして、石油樹脂、ロジン誘導体、及び、テルペン系樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、C5石油樹脂、ロジンエステル、及び、テルペンフェノール樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、C5石油樹脂を含むことが更に好ましく、C5石油樹脂及びロジンエステルを含むことが特に好ましく、C5石油樹脂、ロジンエステル及びテルペンフェノール樹脂を含むことが最も好ましい。
【0032】
なお、C5石油樹脂とは、ナフサを分解して生じるC5留分を重合して得られる炭化水素樹脂である。C5留分には、例えば、イソプレン、シクロペンテン、ピペリレン、及び、これらの多量化体等が含まれる。
また、C5石油樹脂は、イソプレン由来のモノマー単位を有するため、前記エラストマーとして、SISを用いた場合、SISのイソプレン由来のモノマー単位との相溶性に優れるため、本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、及び、25℃における粘着性の観点から、C5石油樹脂及びSISを含むことが特に好ましい。
ロジンエステルは、ロジンにおけるカルボキシ基の少なくとも一部をエステル化した誘導体である。
テルペンフェノール樹脂は、テルペン樹脂にフェノールを共重合した樹脂である。
また、テルペンフェノール樹脂は、フェノール構造を有するため、前記エラストマーとして、SISを用いた場合、SISのスチレン由来のモノマー単位との相溶性に優れるため、本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、及び、加熱破壊温度の観点から、テルペンフェノール樹脂及びSISを含むことが特に好ましい。
【0033】
前記タッキファイヤーは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、接着性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、タッキファイヤーを2種以上含むことが好ましく、2~4種含むことがより好ましく、3種含むことが特に好ましい。
前記タッキファイヤーの含有量は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、ホットメルト接着剤の全質量に対し、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上60質量%以下であることが更に好ましく、30質量%以上55質量%以下であることが特に好ましい。前記タッキファイヤーの含有量が30質量%以上では、接着性が十分発現し、55質量%以下では接着剤層が硬くならず冷熱サイクル時の被着材の寸法変化に十分追従できる。
本発明に係るホットメルト接着剤における前記タッキファイヤーの含有量と前記エラストマーの含有量との質量比は、冷熱サイクル耐久性、25℃における粘着性及び取り扱い性の観点から、タッキファイヤーの含有量/エラストマーの含有量=0.5以上5.0以下であることが好ましく、0.8以上4.0以下であることがより好ましく、1.0以上2.0以下であることが更に好ましく、1.0を超え1.5以下であることが特に好ましい。
【0034】
-酸化防止剤-
本発明に係るホットメルト接着剤は、冷熱サイクル耐久性、及び、保存安定性の観点から、酸化防止剤を含むことが好ましい。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ含有酸化防止剤、ヒドロキノン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤、ヒドラジン類、尿素系酸化防止剤が挙げられる。
これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0035】
前記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシルフェノール)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、ペンタエリスチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1-ビス(4-オキシフェニル)シクロヘキサン、ジアルキルフェノールスルフィド、アルキルフェノール縮合物、スチレン化フェノール等が挙げられる。
これらの中でも、フェノール性ヒドロキシ基が結合している炭素原子に対し芳香環上の隣の位置に1つ又は2つのt-ブチル基を有しているヒンダードフェノール系酸化防止剤であることが好ましく、ペンタエリスチルテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であることがより好ましい。
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、4,4’-ジメトキシジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、アルドール-α-ナフチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、アセトアルデヒドアニリン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応生成物等が挙げられる。
【0036】
前記酸化防止剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤の含有量は、冷熱サイクル耐久性、及び、保存安定性の観点から、ホットメルト接着剤の全質量に対し、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
-その他の成分-
本発明に係るホットメルト接着剤は、その他の成分を更に含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、充填剤、加工助剤、難燃性付与剤、流動調整剤、消臭剤、抗菌剤、接着向上剤、顔料等が挙げられる。
【0038】
充填剤としては、煙霧質シリカ、表面処理煙霧質シリカ、沈殿シリカ、珪藻土、石英粉、炭酸カルシウム、カーボンブラック等が用いられている。
充填剤を含有することにより、耐熱性、弾性率、耐ブロッキング性等を向上することが可能である。
加工助剤としては、末端にシラノール基やアルコキシシリル基を有する低粘度シリコーンオイル、レジン、シラン化合物等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、鉄オクトエート、酸化鉄、Mn系化合物、Ni系化合物、Cu系化合物、Zr系化合物、Ce系化合物、W系化合物、酸化チタン、煙霧質酸化チタン等が挙げられる。
また、難燃効果を更に高めるために、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、リン化合物、窒素化合物等を用いてもよい。
【0039】
前記その他の成分は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量は、特に制限はないが、ホットメルト接着剤の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
<軟化点>
本発明に係るホットメルト接着剤の軟化点は、耐熱性及び加工性の観点から、180℃未満であることが好ましく、70℃~160℃であることがより好ましく、90℃~140℃であることが特に好ましい。
上記ホットメルト接着剤の軟化点は、JIS K6863(1994)に従い測定することができる。
【0041】
(樹脂積層体)
本発明に係るホットメルト接着剤を使用して樹脂積層体を製造できる。樹脂積層体は、同一または異なる2つの樹脂層を有し、樹脂層の間に本発明に係るホットメルト接着剤からなる層を有する樹脂積層体である。
樹脂積層体はさらに樹脂層より弾性率の低いか又は剛性の支持層を有してもよく、樹脂層と支持層を接着するために、樹脂層と支持層との間に本発明に係るホットメルト接着剤からなる層を有してもよい。
ここで、支持層上に積層されている2つの樹脂層を区別するために、以降では支持層と接着される樹脂層を「樹脂層」と記載し、支持層とは接着されない樹脂層を「表面層」と記載する。
【0042】
<接着層>
樹脂積層体は、本発明に係るホットメルト接着剤からなる層(「接着層」ともいう。)を有し、冷熱サイクル耐久性の観点から、表面層と樹脂層との間、及び、樹脂層と支持層との双方の間に、本発明に係るホットメルト接着剤からなる層を有することが好ましい。
【0043】
前記接着層の厚さは、前述するいずれの位置の接着層であっても特に制限はないが、表面層、樹脂層及び支持層の寸法精度、冷熱サイクル耐久性、接着性及び取り扱い性の観点から、それぞれ独立に、50μm以上500μm以下であることが好ましく、100μm以上300μm以下であることがより好ましく、120μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
【0044】
<表面層>
表面層の材料としては、特に制限はないが、PVC(塩化ビニル)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン・ポリエステル・オレフィン・アクリル系の各種エラストマー、EVA、EPDM、シリコンゴム等のゴム(硬質)系、あるいはこれらを十分な耐久性が期待できる程度の硬さに調整したもの、あるいはこれらをベースに充填材や強化材を加えた複合材料等が挙げられる。
【0045】
当該表面層の厚さは、所望の形状、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性及び耐衝撃性等に応じ、適宜選択することができる。
また、当該表面層の厚さは、樹脂層の厚さよりも薄いことが好ましく、表面層は可撓性を有してもよい。当該表面層は、その用途に応じて表面に任意の形状を有していてもよく、表面に凹部及び/又は凸部や印刷を有していても良い。
前記凹部、及び、前記凸部の形状及び大きさは、特に制限はなく、所望に応じ、任意に選択することができる。
また、樹脂積層体を建築用パネル等に用いる場合は、前記当該表面層に撥水処理を施していてもよいし、また、表面にコーティング層を有していてもよい。
【0046】
<樹脂層>
樹脂層の材質としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びエチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらの中でも弾性変形可能な樹脂層が本発明のホットメルト接着剤に特に適する。
樹脂層の厚さは、特に制限はなく、所望の衝撃吸収性及び樹脂積層体全体の厚さ等に応じ、適宜選択することができる。
【0047】
<支持層>
支持層は、樹脂層の固定を主たる目的とするもので、このため当該樹脂層より弾性率が高いか又は剛性の層とすることが好ましい。支持層は、樹脂積層体に荷重がかかる場合はそれに耐えるための十分な強度を有し、かつ衝撃吸収性のあるものが好ましい。
前記支持層の材質としては、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂の板材や、樹脂層より弾性率の低いウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、又は、ゴム材等の樹脂が好ましく挙げられる。
前記支持層の厚さは、特に制限はなく、所望の強度、衝撃吸収性及び樹脂積層体全体の厚さ等に応じ、適宜選択することができる。
【0048】
本発明に係る樹脂積層体は、前述した以外の公知の層や公知の構造を有していてもよい。
【0049】
本開示に係る樹脂積層体の好ましい実施態様の一例を、
図1に示すが、これに限定されないことは、言うまでもない。
図1は、本開示に係る樹脂積層体の一例における模式断面図である。
図1における樹脂積層体10は、表面層16と、樹脂層14と、支持層12とをこの順で有し、樹脂層14と表面層16との間に、本発明に係るホットメルト接着剤からなる層(接着層)18aを有し、更に、支持層12と樹脂層14との間に、本発明に係るホットメルト接着剤からなる層(接着層)18bを有する。
【0050】
(樹脂積層体の製造方法)
本発明に係る樹脂積層体の製造方法は、特に制限はないが、樹脂層と、表面層と、をこの順で有する樹脂積層体の製造方法としては、本発明に係るホットメルト接着剤を加熱する工程、樹脂層形成用部材の表面層側の面に、加熱された前記ホットメルト接着剤を塗布する工程、塗布された前記ホットメルト接着剤と表面層形成用部材とを接触させて貼り合わせる工程を含む方法であることが好ましい。
また、支持層と、樹脂層と、表面層と、をこの順で有する樹脂積層体の製造方法は、本発明に係るホットメルト接着剤を加熱する工程、前記支持層に、加熱された前記ホットメルト接着剤を塗布し、塗布された前記ホットメルト接着剤と樹脂層形成用部材とを接触させて貼り合わせる工程、及び、樹脂層形成用部材の前記支持層側でない面に、加熱された前記ホットメルト接着剤を塗布し、塗布された前記ホットメルト接着剤と表面層形成用部材とを接触させて貼り合わせる工程を含む方法であることが好ましい。
【0051】
<加熱工程>
本発明に係る樹脂積層体の製造方法は、本発明に係るホットメルト接着剤を加熱する工程(「加熱工程」ともいう。)を含むことが好ましい。
前記加熱工程における加熱温度としては、本発明に係るホットメルト接着剤が流動性を十分有する温度であればよいが、100℃~240℃であることが好ましく、160℃~240℃であることがより好ましく、170℃~220℃であることが特に好ましい。
前記加熱工程に用いられる加熱手段としては、特に制限はなく、ヒーター、ホットメルト塗布機等、公知の手段を用いることができる。
【0052】
<接着工程A及びB>
表面層、樹脂層及び支持層からなる樹脂積層体の製造方法の好ましい態様は、前記支持層に、加熱された前記ホットメルト接着剤を塗布し、塗布された前記ホットメルト接着剤と樹脂層形成用部材とを接触させて貼り合わせる工程(「接着工程A」ともいう。)、及び、樹脂層形成用部材の前記支持層側でない面に、加熱された前記ホットメルト接着剤を塗布し、塗布された前記ホットメルト接着剤と表面層形成用部材とを接触させて貼り合わせる工程(「接着工程B」ともいう。)を含む方法であることが好ましい。
前記接着工程Aにおいては、支持層に加熱された本発明に係るホットメルト接着剤を塗布し、樹脂層形成用部材を貼り合わせ、接着層を形成する。
前記接着工程Bにおいては樹脂層形成用部材に加熱された本発明に係るホットメルト接着剤を塗布し、表面層形成部材を貼り合わせ、接着層を形成する。
前記接着工程A及びBを行う順番は、特に制限はなく、どちらを先に行ってもよい。
前記接着工程A及びBにおけるホットメルト接着剤の塗布量はそれぞれ独立に、所望の接着層の厚さに応じ適宜選択すればよい。前記接着工程A及びBにおいて形成する各接着層の好ましい厚さは、前述した前記接着層の好ましい厚さと同様である。
前記接着工程A及びBに用いられる塗布手段としては、特に制限はなく、ホットメルト塗布機等の公知の塗布手段を用いることができる。
中でも、前記接着工程A及びBにおける塗布は、生産性、及び、塗布容易性の観点から、スプレー塗布により行われることが好ましい。
【0053】
樹脂積層体の製造方法には、前述した以外の工程を有していてもよい。
例えば、防水性、気密性等の観点から、前記樹脂積層体外周部分に、コーキング剤を塗布する工程を有していてもよい。
コーキング剤としては、特に制限はなく、公知のコーキング剤を用いてもよいし、ホットメルト接着剤を用いてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り、「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
【0055】
(実施例1~4、及び、比較例1~3)
<ホットメルト接着剤の調製>
表1に記載の各成分を表1に記載の量で、230℃に設定したMSオープン型ニーダー((株)モリヤマ製)を用いて約30分掛けて、加熱混合し、実施例1~4、及び、比較例1~3のホットメルト接着剤をそれぞれ作製した。
【0056】
<樹脂積層体の作製>
得られたホットメルト接着剤を使用し、以下の様に樹脂積層体を作製した。
樹脂積層体は、支持層としてポリプロピレン(PP)(弾性率32MPa)、樹脂層として弾性変形可能なポリプロピレン(PP)フォーム(弾性率0.7MPa)、表面層として可撓性を有するポリプロピレン(PP)シートを使用した。
なお、弾性率の測定は、JIS K7161-1:2014に準拠して次のとおり25℃で測定した。まず、試験体を所定の厚み(樹脂層PPフォーム4mm、支持層PP10mm)で10mm幅に切出し試験片とした。当該試験片を引張試験機を使用して引張速度100mm/分で引張った際の弾性率を算出した。
ホットメルト接着剤は、次のように塗布した。
ホットメルトアプリケーター(株式会社サンツール製メルターVHシリーズ)のタンク温度を190℃に調整し、カーテンスプレーノズル(株式会社サンツール製)よりホットメルト接着剤をスプレー状に120g/m2の割合で支持層に塗布後、樹脂層をかぶせ、次に樹脂層の上に同様にホットメルト接着剤をスプレー状に120g/m2の割合で塗布後、表面層をかぶせ、平面プレスで加圧接着した。平面プレスの加圧条件は、0.5kgf/cm2で9秒間とした。
【0057】
<せん断接着強さの測定>
得られたホットメルト接着剤を使用し、以下の評価を行った。
テフロン(登録商標)シート2枚の間にホットメルト接着剤をはさみ、これを140℃に調整した加熱プレスで厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤に成形した後、このフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に転写した。
その後、別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張り、せん断破壊が生じた力の大きさ(せん断接着強さ)を前記接着力(MPa)とした。
測定結果を表1に示す。
【0058】
<加熱破壊温度の測定>
前記せん断接着強さの測定と同様な方法により得られた試験片を用い、前記試験片の一方の端に200gのおもりをつけ、おもりをつけた部分が重量方向下部となるように固定し、38℃で15分間静置した後、0.4℃/分の割合で昇温させ、前記試験片における接着部分がおもりの負荷に耐えられなくなり、おもりが落下したときの温度を測定した。
測定結果を表1に示す。
【0059】
<冷熱サイクル耐久性試験>
樹脂積層体を60℃の恒温槽中に2時間放置後、-20℃の恒温槽に2時間放置する冷熱サイクルを2回繰り返し、室温になるまで放置した。このときの樹脂積層体の外観を確認した。
【0060】
<作業性評価(接着可能時間測定)>
厚み120μmのフィルム状ホットメルト接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設け、25℃の環境に所定時間放置した後に別のポリプロピレン板Bを重ね合わせ、2kgf/cm2の圧力で10秒間圧締して得た試験片を25℃下で16時間静置後、JIS K6850に準拠して2つの前記ポリプロピレン板の面方向において、前記ポリプロピレン板Aと前記ポリプロピレン板Bとをそれぞれ逆方向へ25℃下で50mm/分の速度で引張った際の接着力が、0.15MPa以上である時間を接着可能時間とした。なお、接着剤をポリプロピレン板A上の25mm×25mmの面積に設けてから別のポリプロピレン板Bを重ね合わせるまでの時間は、10分ごとに最大30分まで評価した。
A:重ね合わせるまで10分経過の場合の接着力が0.15MPa以上
F:重ね合わせるまで10分経過の場合の接着力が0.15MPa未満
【0061】
【0062】
表1に記載の「*」はいずれも、前記ポリプロピレン板A上のホットメルト接着剤が固化して、ポリプロピレン板Bと接着できず、各測定値を測定できなかったことを示す。
以下に、表1に記載の略号の詳細を説明する。
-エラストマー-
SIS(1):ラジアル型スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、クインタック 3450、日本ゼオン(株)製、MFR=15g/10分(200℃,5kg)
SIS(2):リニア型スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、クインタック 3520、日本ゼオン(株)製、MFR=7g/10分(200℃,5kg)
SIS(3):リニア型スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、クレイトン D1161J、クレイトン社製、MFR=12g/10分(200℃,5kg)
SEBS:リニア型スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)クレイトン G1657、クレイトン社製、MFR=8g/10分(200℃,5kg)
EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体、EV220ETR、三井・テュポンケミカル(株)製、MFR=150g/10分(190℃,2.16kg)
【0063】
-タッキファイヤー-
TF(1):C5石油樹脂、T-REZ RB100、JXTGエネルギー(株)製、軟化点100℃
TF(2):ロジンエステル、スーパーエステルT-125、荒川化学工業(株)製、軟化点125℃
TF(3):テルペンフェノール樹脂、YSポリスターS145、ヤスハラケミカル(株)製、軟化点145℃
-鉱油-
鉱油:SUNPURE N90-A、日本サン石油(株)製、アロマ(芳香族)系炭化水素化合物Ca/ナフテン(シクロ環)系炭化水素化合物Cn/パラフィン(脂肪族)系炭化水素化合物Cp=5/43/52(質量比)、動粘度92mm2/s
-酸化防止剤-
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ソンノックス1010、Songwon Industrial社製
【0064】
表1の結果から明らかなように、本開示に係るホットメルト接着剤である実施例1~4のホットメルト接着剤、及び、本開示に係る樹脂積層体である実施例1~4の樹脂積層体は、比較例1~3のものに比べ、接着力に優れ、かつ冷熱サイクル耐久性に優れることが分かる。
また、本開示に係るホットメルト接着剤を用いることにより、従来の製造方法に比べ、接着剤の塗布、各層間の接着等の操作が行いやすく、作業性に優れるものであり、樹脂積層体等の生産性に優れるものであった。
【符号の説明】
【0065】
10:樹脂積層体、12:支持層、14:樹脂層、16:表面層、18a,18b:本発明に係るホットメルト接着剤からなる層(接着層)、PA:ポリエステル板A、PB:ポリエステル板B、W:おもり