(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】エジェクタおよび冷却システム
(51)【国際特許分類】
F04F 5/44 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
F04F5/44 A
(21)【出願番号】P 2021045677
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】安嶋 賢哲
(72)【発明者】
【氏名】松原 健
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101648(JP,A)
【文献】特開2002-282911(JP,A)
【文献】特開2020-148175(JP,A)
【文献】特開2015-045493(JP,A)
【文献】実公昭48-033043(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0159677(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0183448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04F 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴射される駆動流体と、前記駆動流体の噴射に伴って吸引される吸引流体とが合流する合流部と、
可変機構を有し、前記合流部から出力される前記駆動流体と前記吸引流体とが混合された混合流体を出力する混合部と、
前記混合部から出力される前記混合流体を昇圧して吐出するデフューザ部と、を備え、
前記可変機構は、
前記ノズルから前記駆動流体が噴射される方向に沿う回転軸と、
体積が互いに相違する第1個別流路と第2個別流路とを有し、前記回転軸に軸支される回転体と、を有し、
前記可変機構は、前記回転体の回転により、
前記合流部と前記第1個別流路と前記デフューザ部とが連通する第1連通状態と、
前記合流部と前記第2個別流路と前記デフューザ部とが連通する第2連通状態と
が切替わる
エジェクタ。
【請求項2】
前記合流部は、前記回転体と前記合流部との第1境界に位置する流出口を有し、
前記デフューザ部は、前記回転体と前記デフューザ部との第2境界に位置する流入口を有し、
前記第1
個別流路は、第1開口と第2開口と有し、
前記第2
個別流路は、第3開口と第4開口と有し、
前記第1連通状態において、前記流出口の周縁と前記第1開口の周縁とが重なり、且つ、前記流入口の周縁と前記第2開口の周縁とが重なり、
前記第2連通状態において、前記流出口の周縁と前記第3開口の周縁とが重なり、且つ、前記流入口の周縁と前記第4開口の周縁とが重なる
請求項
1に記載のエジェクタ。
【請求項3】
駆動流体と、前記駆動流体の噴射に伴って吸引される吸引流体とが合流する合流部と、
可変機構を有し、前記合流部から出力される前記駆動流体と前記吸引流体とが混合された混合流体を出力する混合部と、
前記混合部から出力される前記混合流体を昇圧して吐出するデフューザ部と
を備えるエジェクタと、
熱源との熱交換により冷媒を蒸発させることによって前記駆動流体を発生させる蒸気発生器と、
前記エジェクタから吐出された前記混合流体と冷却用流体との間の熱交換によって、凝縮させることにより、前記混合流体を液相の冷媒に変換する凝縮器と、
前記液相の冷媒の一部を前記蒸気発生器に送出するポンプと、
前記液相の冷媒の他の一部を減圧する膨張器と、
前記膨張器により減圧された冷媒と被冷却媒体との間の熱交換により、前記減圧された冷媒を蒸発させることによって前記吸引流体を生成し、当該吸引流体を前記エジェクタに供給する蒸発器と
を具備し、
前記可変機構は、
前記駆動流体が噴射される方向に沿う回転軸と、
体積が互いに相違する第1個別流路と第2個別流路とを有し、前記回転軸に軸支される回転体と、を有し、
前記可変機構は、前記回転体の回転により、
前記合流部と前記第1個別流路と前記デフューザ部とが連通する第1連通状態と、
前記合流部と前記第2個別流路と前記デフューザ部とが連通する第2連通状態と
が切替わる
冷却システム。
【請求項4】
前記冷却用流体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部が検出した温度に応じて前記可変機構を制御する制御部と
をさらに具備する請求項
3に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エジェクタおよび冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動流体により発生する吸引流体を当該駆動流体と混合して吐出するエジェクタが、従来から提案されている。例えば、特許文献1には、駆動流体である高圧蒸気を噴出させることによって吸引流体である低圧蒸気を吸引し、これらの蒸気を混合して吐出するエジェクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エジェクタは、工場の製造機械などを冷却する冷却システムに適用される場合がある。このような冷却システムにおいては、冷媒を凝縮させる凝縮器において、例えば冷却水または空気などの冷却用流体が利用される。ここで、例えば夏季などの高温の環境において冷却用流体の温度が上昇すると、エジェクタから吐出された冷媒と冷却用流体との温度差が小さくなり、当該冷媒から冷却用流体に伝わる熱量が小さくなる。このため、エジェクタから吐出された冷媒が凝縮器により凝縮されにくくなり、エジェクタと凝縮器とを接続する流路内の圧力が上昇する。当該圧力が上昇すると、エジェクタから冷媒が吐出されにくくなり、エジェクタに吸引される冷媒である吸引流体の流量が減少する。このため、吸引流体と被冷却媒体との熱交換により吸引流体が被冷却媒体を冷却する熱交換器において、被冷却媒体を冷却する吸引流体の流量が減少することで、被冷却媒体を継続的に冷却する能力(以下、運転能力という)が低下するという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明のひとつの態様は、高温の環境における運転能力の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のひとつの態様に係るエジェクタは、ノズルから噴射される駆動流体と、前記駆動流体の噴射に伴って吸引される吸引流体とが合流する合流部と、可変機構を有し、前記合流部から出力される前記駆動流体と前記吸引流体とが混合された混合流体を出力する混合部と、前記混合部から出力される前記混合流体を昇圧して吐出するデフューザ部と、を備え、前記可変機構は、前記混合流体が流れる流路を有し、前記流路の体積を可変する。
【0006】
本発明のひとつの態様に係る冷却システムは、駆動流体と、前記駆動流体の噴射に伴って吸引される吸引流体とが合流する合流部と、可変機構を有し、前記合流部から出力される前記駆動流体と前記吸引流体とが混合された混合流体を出力する混合部と、前記混合部から出力される前記混合流体を昇圧して吐出するデフューザ部とを備えるエジェクタと、熱源との熱交換により冷媒を蒸発させることによって前記駆動流体を発生させる蒸気発生器と、前記エジェクタから吐出された前記混合流体と冷却用流体との間の熱交換によって、凝縮させることにより、前記混合流体を液相の冷媒に変換する凝縮器と、前記液相の冷媒の一部を前記蒸気発生器に送出するポンプと、前記液相の冷媒の他の一部を減圧する膨張器と、前記膨張器により減圧された冷媒と被冷却媒体との間の熱交換により、前記減圧された冷媒を蒸発させることによって前記吸引流体を生成し、当該吸引流体を前記エジェクタに供給する蒸発器と、を具備し、前記可変機構は、前記混合流体が流れる流路を有し、前記流路の体積を可変する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る冷却システムの構成例を示す図である。
【
図5】可変機構を制御するための構成を例示するブロック図である。
【
図6】冷却用流体の温度とエジェクタのエジェクタ効率との関係を表すグラフである。
【
図8】対比例に係るエジェクタの構成例を示す断面図である。
【
図9】変形例に係るエジェクタの構成例を示す斜視図である。
【
図10】変形例に係るエジェクタの断面斜視図である。
【
図12】変形例に係る可変機構の動作を説明する説明図である。
【
図13】変形例に係る可変機構の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は、実際と適宜に相違する。また、図面は、理解を容易にするために模式的に示すことがある。さらに、本発明の範囲は、本発明を特に限定する旨の記載がない限り、以下に例示する形態に限られない。
【0009】
1.実施形態
図1は、本発明の実施形態に係る冷却システム100の構成例を示す図である。冷却システム100は、被冷却媒体Q3を冷却するシステムである。被冷却媒体Q3は、冷却システム100による冷却の目的となる媒体であり、例えば水、油または空気などの流体である。
【0010】
本実施形態の冷却システム100は、
図1に示すように、循環流路11と、分岐流路12と、蒸気発生器21と、エジェクタ22と、凝縮器24と、ポンプ25と、膨張器31と、蒸発器32とを有する。
【0011】
循環流路11には、蒸気発生器21と、エジェクタ22と、凝縮器24と、ポンプ25とが、以上の順番で設置される。循環流路11内の冷媒は、蒸気発生器21→エジェクタ22→凝縮器24→ポンプ25→蒸気発生器21の順番で移動する。すなわち、循環流路11は、蒸気発生器21とエジェクタ22と凝縮器24とポンプ25とを環状に接続してなる。循環流路11内を移動する冷媒は、例えば、代替フロン、炭化水素、二酸化炭素またはアンモニアなどである。
【0012】
蒸気発生器21は、温水流路91に熱源として供給される温水Q1と、循環流路11内の冷媒との熱交換により冷媒を蒸発させることによって駆動流体X1を生成する熱交換器(回収器)である。温水流路91に供給される温水Q1は、例えば工場排水または使用済み冷却水などの排温水である。
【0013】
エジェクタ22は、流入口22aと、吸引口22bと、吐出口22cとを有する。蒸気発生器21から送出される気相の冷媒の一部は駆動流体X1として流入口22aに供給される。エジェクタ22は、駆動流体X1により発生する静圧低下により、分岐流路12内の冷媒を吸引流体Y1として吸引口22bから吸引する。流入口22aに供給される駆動流体X1と、吸引口22bに供給される吸引流体Y1とが混合され、混合後の気相の冷媒が後述するデフューザにより昇圧された上で吐出口22cから吐出される。以上の説明の通り、本実施形態のエジェクタ22は、蒸気発生器21で蒸発した冷媒を駆動流体X1として流入口22aから導入し、吸引口22bから導入された吸引流体Y1とを混合して吐出口22cから吐出する。エジェクタ22の詳細については、後述する。
【0014】
凝縮器24は、エジェクタ22から吐出された気相の冷媒(後述する混合流体)を凝縮させる。具体的には、凝縮器24は、放熱流路92に供給される冷却用流体Q2と、循環流路11内の気相の冷媒の間の熱交換によって当該冷媒を凝縮させることにより、当該冷媒を液相の冷媒に変換する。冷却用流体Q2は、例えば低温の工業用水または循環式の冷却塔から供給される冷却水である。循環流路11内の冷媒は、冷却用流体Q2に対して放熱することで凝縮する。例えば夏季などの高温の環境では、冷却用流体Q2の温度Tが上昇する場合がある。
【0015】
ポンプ25は、凝縮器24により凝縮された、液相の冷媒の一部を蒸気発生器21に送出する液相ポンプである。循環流路11内の冷媒の圧力は、ポンプ25によりエジェクタ22が吸引流体Y1を吸引可能な圧力にまで昇圧される。
【0016】
分岐流路12は、循環流路11から分岐する流路である。すなわち、凝縮器24により凝縮された、液相の冷媒の他の一部が分岐流路12に供給される。具体的には、分岐流路12は、循環流路11のうち凝縮器24とポンプ25との間の部分N1と、エジェクタ22の吸引口22bとを接続する。すなわち、分岐流路12は、吸引流体Y1となる冷媒をエジェクタ22に供給する流路である。部分N1は、循環流路11と分岐流路12との分岐点に相当する。分岐流路12は、膨張器31と蒸発器32とを有する流路である。蒸発器32は、膨張器31とエジェクタ22の吸引口22bとの間に位置する。
【0017】
膨張器31には、凝縮器24により凝縮された、液相の冷媒の他の一部が供給される。膨張器31は、当該冷媒を減圧することで膨張させる。膨張器31は、例えば、電子膨張弁、手動膨張弁、定圧膨張弁、オリフィスまたはキャピラリーなどの任意の形式の減圧機構である。
【0018】
蒸発器32は、被冷却流路93に供給される被冷却媒体Q3と、膨張器31により減圧された液相の媒体との間の熱交換により、当該減圧された冷媒を蒸発させることによって吸引流体Y1を生成する熱交換器である。蒸発器32は、膨張器31とエジェクタ22の吸引口22bとの間に位置する。蒸発器32は、吸引流体Y1をエジェクタ22の吸引口22bに供給する。エジェクタ22からの吸引により圧力が低下した冷媒が、被冷却媒体Q3を冷却する。
【0019】
次に、冷却システム100に適用されるエジェクタ22を詳細に説明する。
図2はエジェクタ22の構成例を示す断面図であり、
図3はエジェクタ22の断面斜視図である。以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸およびZ軸を想定する。X軸、Y軸およびZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通である。
図2および
図3に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向およびX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向およびY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向およびY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向およびZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向およびZ2方向の両方向を含む方向である。さらに、X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線である。
【0020】
エジェクタ22は、ノズル220と、第1ケース部221と、合流部222と、混合部223と、第1デフューザ部224と、第2デフューザ部225とを有する。エジェクタ22を構成するこれらの要素は、一体的に構成される。
【0021】
ノズル220は、駆動流体X1が流れる流路220aを有し、X軸方向に延びる筒状の構造体である。ノズル220は、テーパー面220sを有する。テーパー面220sは、X1方向に向かってノズル220の内径を漸少させる。ノズル220は、駆動流体X1を噴射する噴射口220bを有する。ノズル220のX1方向に位置する流入口220cは、循環流路11に接続される。
【0022】
第1ケース部221は、環状空間221aを有する筐体である。環状空間221aは、第1ケース部221の内周面とノズル220の外周面とで画定される空間である。環状空間221aは、エジェクタ22の軸心C1を中心としてX軸回りにノズル220を包囲する。第1ケース部221は、分岐流路12に接続される開口221bを有する。軸心C1は、X軸に平行なエジェクタ22の中心軸である。
【0023】
合流部222は、エジェクタ22のうち環状空間221aからX1方向に向かって内径が漸少する部分である。合流部222においては、ノズル220から噴射される駆動流体X1と、駆動流体X1の噴射に伴って吸引される吸引流体Y1とが合流する。合流部222は、流出口222aを有する。流出口222aは、駆動流体X1および吸引流体Y1が流れる合流部222の出口である。流出口222aは、合流部222と後述する回転体2230との境界B1上に位置する。合流部222は、ノズル220のX1方向に位置する端部を、軸心C1を中心としてX軸回りに包囲する。境界B1は「第1境界」の一例である。
【0024】
混合部223は、第2ケース部223aと、可変機構223bとを有する。第2ケース部223aは、合流部222と第1デフューザ部224との間に設けられ、これらと一体的に構成される。第2ケース部223aは、合流部222と第1デフューザ部224との間に可変機構223bが組み込まれるように、合流部222および第1デフューザ部224に対して着脱可能に設けられてもよい。第2ケース部223aは、後述する回転体2230を収容する筐体である。
【0025】
図4は、可変機構223bの断面斜視図である。可変機構223bは、回転軸2233b、回転体2230および流路2230bを有する。回転軸2233bは、回転体2230のX1方向に位置する側面からX1方向に突出し、X2方向に位置する側面からX2方向に突出する。回転軸2233bは、軸受222bおよび軸受224c(
図2参照)に入り込む。軸受222bは、合流部222のX1方向に位置する側面に設けられた凹部である。軸受224cは、第1デフューザ部224のX2方向に位置する側面に設けられた凹部である。回転軸2233bは、軸心C2上に位置する。軸心C2は、ノズル220から駆動流体X1が噴射される方向(X1方向)に沿う軸である。したがって、回転軸2233bは当該方向に沿うように構成される。
【0026】
回転体2230は、回転軸2233bに軸支される構造体である。「軸支される」とは、合流部222および第1デフューザ部224が回転軸2233bを介して回転体2230を支持すること意味する。回転体2230は、軸心C2を中心としてX軸回りに回転する。
【0027】
流路2230bは、合流部222から出力された、駆動流体X1と吸引流体Y1とを混合し、駆動流体X1と吸引流体Y1とが混合された流体(以下、混合流体という)を第1デフューザ部224に出力する流路である。流路2230bは、第1個別流路2231と第2個別流路2232とを含む。
【0028】
第1個別流路2231は、回転体2230に設けられ、X軸方向に延在する貫通孔である。第1個別流路2231は、第1開口2231aと第2開口2231bとを有する。第1開口2231aは、合流部222から駆動流体X1および吸引流体Y1が入力される第1個別流路2231の入口である。第1開口2231aは、境界B1上に位置する。第2開口2231bは、混合流体が出力される第1個別流路2231の出口である。第2開口2231bは、回転体2230と後述する第1デフューザ部224との境界B2上に位置する。第1個別流路2231の径は、第1開口2231aから第2開口2231bにかけて一定である。第1個別流路2231は「第1貫通孔」の一例であり、境界B2は「第2境界」の一例である。
【0029】
第2個別流路2232は、回転体2230に設けられ、X軸方向に延在する貫通孔である。第2個別流路2232は、第3開口2232aと第4開口2232bとを有する。第3開口2232aは、合流部222から駆動流体X1および吸引流体Y1が入力される第2個別流路2232の入口である。第3開口2232aは、境界B1上に位置する。第4開口2232bは、混合流体が出力される第2個別流路2232の出口である。第4開口2232bは、境界B2上に位置する。第2個別流路2232は、第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3とから構成される。第1部分P1は、第2個別流路2232のうち第3開口2232aから第4開口2232bに向かって径が漸少する部分である。第2部分P2は、第2個別流路2232のうち第1部分P1と第3部分P3との間において径が一定の部分である。第2部分P2の径は、第1個別流路2231の径よりも小さい。第3部分P3は、第2個別流路2232のうち第2部分P2から第4開口2232bに向かって径が漸増する部分である。第2個別流路2232は「第2貫通孔」の一例である。
【0030】
第1デフューザ部224は、エジェクタ22のうち、可変機構223b(流入口224a)からX1方向に向かって内径が単調に増加する部分である。第1デフューザ部224は、流入口224aと吐出口224bとを有する。流入口224aは、境界B2上に位置する。吐出口224bは、第1デフューザ部224と後述する第2デフューザ部225との境界B3上に位置する。本実施形態に係る第1デフューザ部224は、エジェクタ22のうち境界B2から境界B3に亘る部分である。第1デフューザ部224は「デフューザ部」の一例である。
【0031】
第2デフューザ部225は、流入口225aと吐出口225bとを有する。流入口225aは吐出口224bと同様に、境界B3上に位置する。吐出口225bは、循環流路11に接続される。第2デフューザ部225は、エジェクタ22のうち境界B3から吐出口225bに向かって内径が一定の部分であり、筒状に構成される。
【0032】
図5は、可変機構223bを制御するための構成を例示するブロック図である。
図5に例示される通り、冷却システム100は、温度検出部51と制御部52とを有する。温度検出部51は、放熱流路92に供給される冷却用流体Q2の温度Tを検出する。任意の形式の温度センサが温度検出部51として利用される。
【0033】
制御部52は、温度検出部51が検出した温度Tに応じて可変機構223bの状態を制御する。具体的には、制御部52は、可変機構223bを、温度Tに応じて第1連通状態および第2連通状態の何れかに制御する。
【0034】
「第1連通状態」とは、合流部222と第1個別流路2231と第1デフューザ部224とが連通する状態である。第1連通状態では、流出口222aの周縁と第1開口2231aの周縁とが境界B1上で重なり、流入口224aの周縁と第2開口2231bの周縁とが境界B2上で重なる。第1連通状態における「重なる」とは、流出口222aの周縁と第1開口2231aの周縁とが境界B1上で一致し、流入口224aの周縁と第2開口2231bの周縁とが境界B2上で一致することを意味する。
【0035】
「第2連通状態」とは、合流部222と第2個別流路2232と第1デフューザ部224とが連通する状態である。第2連通状態では、流出口222aの周縁と第3開口2232aの周縁とが境界B1上で重なり、流入口224aの周縁と第4開口2232bの周縁とが境界B2上で重なる。第2連通状態における「重なる」とは、流出口222aの周縁と第3開口2232aの周縁とが境界B1上で一致し、流入口224aの周縁と第4開口2232bの周縁とが境界B2上で一致することを意味する。なお、
図2および
図3に示す可変機構223bの状態は、第2連通状態である。
【0036】
本実施形態では、
図4に示すように、第1個別流路2231の径が一定であるのに対して、第2個別流路2232の径が一定でない(すなわち、第2個別流路2232が第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3とから構成される)ことから、第1個別流路2231の体積と第2個別流路2232の体積は互いに相違する。したがって、例えば可変機構223bが第1連通状態から第2連通状態に制御されると、合流部222と第1デフューザ部224との間における混合流体の体積は、第1個別流路2231の体積から第2個別流路2232の体積に変化する。具体的には、当該混合流体の体積が、第1個別流路2231の体積から第2個別流路2232の体積に減少する。
【0037】
制御部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの処理回路により実現される。
【0038】
制御部52は、冷却用流体Q2の温度Tが所定の閾値RHを下回る状態では、可変機構223bを第1連通状態に維持する。そして、温度Tが、閾値RHを下回る数値から当該閾値RHを上回る数値に変化した場合、制御部52は、回転体2230を、軸心C2を中心として回転させ、第1連通状態から第2連通状態に切替える。他方、冷却用流体Q2の温度Tが、所定の閾値RLを上回る数値から当該閾値RLを下回る数値に変化した場合、制御部52は、回転体2230を、軸心C2を中心として回転させ、第2連通状態から第1連通状態に切替える。閾値RLは、閾値RHと同等の数値(RL=RH)または当該閾値RHを下回る数値(RL<RH)である。閾値RLを閾値RHより下回る数値に設定することによって、第1連通状態と第2連通状態との間の状態遷移にヒステリシス特性を持たせることができる。状態遷移にヒステリシス特性を持たせることにより、温度Tが閾値RHの近傍で上下した場合、または、温度Tが閾値RLの近傍で上下した場合に、連通状態が第1連通状態と第2連通状態との間で頻繁に切り替わることが防止される。
【0039】
駆動流体X1がノズル220の噴射口220bから合流部222に噴射されると、合流部222内の圧力が下がることに伴って開口221bから吸引流体Y1が合流部222に吸引される。合流部222で合流した駆動流体X1と吸引流体Y1は、混合流体となった後、流入口224aから第1デフューザ部224に出力される。第1デフューザ部224に出力された混合流体は第1デフューザ部224により昇圧され、吐出口224bから吐出される。吐出口224bから吐出された混合流体は、第2デフューザ部225により昇圧され、吐出口225bから吐出される。
【0040】
前述の通り、高温の環境において冷却用流体Q2の温度Tが上昇すると、エジェクタ22から吐出された混合流体と冷却用流体Q2との温度差が小さくなり、当該混合流体から冷却用流体Q2に伝わる熱量が小さくなる。このため、エジェクタ22から吐出された混合流体が凝縮器24により凝縮されにくくなり、エジェクタ22と凝縮器24とを接続する循環流路11内の圧力が上昇する。当該圧力が上昇すると、エジェクタ22から混合流体が吐出されにくくなる。このため、エジェクタ22に吸引される吸引流体Y1の流量(すなわち分岐流路12を流通する冷媒の流量)が減少し、エジェクタ効率ηが低下することに伴って、冷却システム100が被冷却媒体Q3を継続的に冷却する能力(以下、運転能力という)が低下するという問題がある。
【0041】
エジェクタ効率ηは、冷却システム100の運転能力の指標となる値である。つまり、エジェクタ効率ηが高いと冷却システム100の運転能力が高く、エジェクタ効率ηが低いと冷却システム100の運転能力が低いとされる。エジェクタ効率ηは、エジェクタ22に流入する駆動流体X1の流量、エジェクタ22に吸引される吸引流体Y1の流量、ノズル220から噴射される駆動流体X1の圧力、エジェクタ22が吸引流体Y1を吸引する圧力、第1デフューザ部224の吐出口224bから混合流体が吐出される圧力を、それぞれ、Mm、Ms、Pm、Ps、Pdとすると、例えば、下記式(1)により表される。「ln」は、低がeである対数関数(自然対数)を表す。
【0042】
η=(Ms/Mm)・{ln(Pd/Ps)/ln(Pm/Pd)}・・・(1)
【0043】
なお、駆動流体X1の圧力を増加させれば吸引流体Y1の流量は増加する。しかし、駆動流体X1の圧力は、蒸気発生器21における温水Q1と循環流路11内の冷媒との温度差に依存するから、駆動流体X1の圧力を充分に増加させることは現実的には困難である。また、温水Q1の流量を増加させることで温水Q1の温度の低下を抑制し、冷媒の蒸発温度を上昇させることで駆動流体X1の圧力を増加させる方法も想定される。しかし、温水流路91に温水Q1を供給するポンプ25に必要な動力が増大するから、装置全体の規模または冷却に必要なコストが増大するという問題もある。
【0044】
以上の事情を考慮して、本実施形態の冷却システム100が具備するエジェクタ22は、可変機構223bが制御部52により第1連通状態から第2連通状態に制御される。ここで、前述のとおり、第2個別流路2232の第1部分P1は、第3開口2232aから第4開口2232bに向かって径が漸少するように構成される。このため、ノズル220から噴射された駆動流体X1の流速が第1部分P1から第2部分P2に流入する際に上昇し、ベンチュリ効果によって第1部分P1と第2部分P2との境界B4(
図2参照)近傍が減圧される。このため、開口221bから合流部222に吸引される吸引流体Y1の流量(すなわち、エジェクタ22に吸引される吸引流体Y1の流量)が第1連通状態と比較して上昇する。つまり、本実施形態のエジェクタ22によれば、冷却用流体Q2の温度Tが上昇することでエジェクタ22に吸引される吸引流体Y1の流量が低下したとしても、可変機構223bを第1連通状態から第2連通状態に切替えることで、当該吸引流体Y1の流量を一時的に上昇させ、エジェクタ効率ηの低下を抑制することができる。したがって、冷却システム100の運転能力が低下することが抑制される。
【0045】
図6は、冷却用流体Q2の温度Tとエジェクタ22のエジェクタ効率ηとの関係を表すグラフである。
図6においては、本実施形態の特性が実線で図示され、対比例の特性が破線で図示されている。対比例は、
図7に示すように、エジェクタ22の代わりにエジェクタ200が採用されることを除き、本実施形態の冷却システム100と同様の構成である。
図8は、対比例に係るエジェクタ200の構成例を示す断面図である。対比例のエジェクタ200は、混合部400の構成がエジェクタ22の混合部223と異なる点を除き、エジェクタ22と同様の構成である。エジェクタ200の混合部400は、エジェクタ200のうち合流部222から第1デフューザ部224に向かって内径が一定の部分であり、筒状に構成される。
【0046】
図6に例示される通り、エジェクタ22のエジェクタ効率ηは、冷却用流体Q2の温度Tに応じて変動する。具体的には、温度Tが高いほどエジェクタ効率ηは低下する。対比例においては、冷却用流体Q2の温度Tが所定の温度T1に到達し、温度T1を上回るとエジェクタ効率ηが急激に低下する。したがって、温度T1を上回る環境では目標の運転能力を達成できない。
【0047】
一方、本実施形態においては、エジェクタ効率ηが閾値RHに到達した段階で、可変機構223bを第1連通状態から第2連通状態に制御する。これにより、温度Tが閾値RHを上回る環境では、
図6に示すように、エジェクタ効率ηが対比例と比較して低下しにくくなる。したがって、本実施形態においては、冷却用流体Q2が閾値RHを上回る環境でも目標の運転能力が維持できる。すなわち、本実施形態によれば、対比例よりも冷却システム100の運転能力が低下することが抑制される。
【0048】
2.変形例
以上に例示した形態に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0049】
[変形例1]
図9は変形例に係るエジェクタ22Aの構成例を示す図であり、
図10はエジェクタ22Aの断面斜視図である。なお、以下に例示する各形態において機能および構成が前述の実施形態と同様である要素については、前述の実施形態で使用した符号を流用して各々の詳細な説明は省略する。
【0050】
エジェクタ22Aは、
図9および
図10に示すように、混合部300を有する。混合部300は、可変機構310を有する。可変機構310は、筒状部320と、複数の板状部330と、環状体340と、流路350とを有する。筒状部320は、X軸方向に延在する筒状の構造体である。筒状部320には、複数のスリットが設けられる。複数のスリットの各々はX軸方向に延在し、軸心C1を中心としてX軸回りに等間隔で筒状部320に設けられる。
【0051】
複数の板状部330の各々は、筒状部320の複数のスリットの各々に埋め込まれ、径外方および径内方に移動可能に構成される。「径外方」とは軸心C1から筒状部320側に向かう方向であり、「径内方」とは筒状部320側から軸心C1に向かう方向である。
【0052】
図11は、板状部330の構成例を示す斜視図である。板状部330は、X軸方向に延在する平板であり、本体部331と突出部332とを有する。本体部331は、
図11に示すように、平面331aと、テーパー面331bと、テーパー面331cとを有する平板である。平面331aは、エジェクタ22Aの軸心C1に平行であり、X軸方向に延在する面である。テーパー面331bは、平面331aよりもX2方向に位置し、平面331aから径外方に所定角度傾斜する面である。テーパー面331cは、平面331aよりもX1方向に位置し、平面331aから径外方に所定角度傾斜する面である。
【0053】
突出部332は、本体部331から径外方に突出する柱状体であり、掛止部333を有する。掛止部333は、突出部332からX2方向に突出し、後述する環状体340のスリット341を挿通する。
【0054】
環状体340は、
図9に示すように、筒状部320の外周面をX軸回りに包囲し、軸心C1を中心としてX軸回りに回転可能に構成される。環状体340には、複数のスリット341が設けられる。複数のスリット341の各々は、
図9に示すように、所定の間隔をあけて環状体340に設けられる。スリット341は、突出部332からX2方向に突出する掛止部333に挿通される。
【0055】
流路350は、複数の平面331aの各々により画定される空間である。流路350は、駆動流体X1と吸引流体Y1とを混合する、前述の形態の流路2230bと同様に機能する。流路350の体積は、複数の板状部330の各々が径内方および径外方に移動することにより変化する。流路350は、「流路」の一例である。
【0056】
エジェクタ22Aは、複数のテーパー面331bの各々により画定される空間(以下、合流空間という)を有する。合流空間は前述の形態の合流部222と同様に機能し、「合流部」の一例である。また、エジェクタ22Aは、複数のテーパー面331cの各々により画定される空間を有する。当該空間は、混合流体を昇圧して吐出する前述の形態の第1デフューザ部224と同様に機能し、「デフューザ部」の一例である。
【0057】
図12および
図13は、可変機構310の動作を説明する説明図である。
図12は、複数の板状部330の各々が最も径外方に位置する状態(以下、拡大状態という)のエジェクタ22をX2方向に見た図である。
図13は、複数の板状部330の各々が最も径内方に位置する状態(以下、絞り状態という)のエジェクタ22をX2方向に見た図である。なお、以降の動作の説明では、可変機構310の動作の一例として、拡大状態から絞り状態に移行する場合を説明する。
図12および
図13では、第1ケース部221の図示は省略する。
【0058】
拡大状態である可変機構310において、エジェクタ22をX2方向に見た場合に、環状体340が軸心C2を中心として反時計回りに回転すると、環状体340の回転に伴ってスリット341が掛止部333に対して摺動し、スリット341の縁部341aが掛止部333に当接する。縁部341aが掛止部333に当接している状態で、環状体340が軸心C2を中心として反時計回りにさらに回転すると、
図13に示すように、複数の板状部330の各々が径内方に移動することで流路350(
図12および
図13の太実線で囲まれる領域)の体積が小さくなり、可変機構310が絞り状態となる。このように、変形例1に係るエジェクタ22Aにおいては、可変機構310が拡大状態から絞り状態に移行することで、流路350の径が小さくなる。このため、ノズル220から噴射され、流路350に流入する駆動流体X1の流速が拡大状態よりも上昇し、流路350の流入口近傍が拡大状態よりも減圧される。これにより、開口221bから合流空間に吸引される吸引流体Y1の流量が拡大状態よりも上昇する。したがって、エジェクタ22Aにおいてもエジェクタ22と同様の効果が実現される。
【0059】
[変形例2]
前述の形態のエジェクタ22は、図面で例示した構成に限定されない。例えば、エジェクタ22は、可変機構223bが第1連通状態または第2連通状態であるときの回転体2230を位置決めする位置決め機構をさらに具備してもよい。
【0060】
[変形例3]
前述の形態の可変機構223bは、2つの個別流路を有する構成であるがこれに限られず、体積が互いに相違する個別流路を3つ以上有する構成でもよい。
【0061】
[変形例4]
前述の形態においては、制御部52が可変機構223bを制御したが、可変機構223bを制御する方法は以上の例示に限定されない。例えば、冷却システム100の管理者による手動の操作に応じて可変機構223bの状態が変更されてもよい。例えば、前述の形態においては、管理者が可変機構223bを手動により操作することで第1連通状態および第2連通状態の何れかに設定してもよい。なお、前述の形態のように、制御部52が可変機構223bの状態を制御する構成によれば、冷却システム100の管理者の負荷を低減できる。なお、可変機構223bを第1連通状態から第2連通状態に変更する処理と、可変機構223bを第2連通状態から第1連通状態に変更する処理との一方を制御部52が実行し、他方を管理者が実行してもよい。
【0062】
3.補足
本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0064】
4.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0065】
本開示のひとつの態様(態様1)に係るエジェクタ22は、ノズル220から噴射される駆動流体X1と、駆動流体X1の噴射に伴って吸引される吸引流体Y1とが合流する合流部222と、可変機構223bを有し、合流部222から出力される駆動流体X1と吸引流体Y1とが混合された混合流体を出力する混合部223と、混合部223から出力される混合流体を昇圧して吐出する第1デフューザ部224と、を備え、可変機構223bは、混合流体が流れる流路2230bを有し、流路2230bの体積を可変する。
【0066】
以上の態様においては、流路2230bの体積が流路2230bの径が変化することで変わる場合に、流路2230bの径が例えば小さく変化すると、当該流路2230bに流入する駆動流体X1の流速が流路2230bの径が小さく変化する前よりも上昇する。このため、駆動流体X1の噴射に伴って吸引される吸引流体Y1の流量は流路2230bの径が小さく変化する前よりも上昇する。したがって、エジェクタ22によれば、吸引流体Y1の流量が低下したとしても、流路2230bの体積を変化させる(具体的には、流路2230bの径を小さく変化させる)ことで、吸引流体Y1の流量を一時的に上昇させ、エジェクタ効率ηの低下を抑制することができる。よって、冷却システム100の運転能力が低下することが抑制される。
【0067】
態様1の具体例(態様2)によれば、流路2230bは、体積が互いに相違する第1個別流路2231と第2個別流路2232とを含み、可変機構223bは、合流部222と、第1デフューザ部224と、第1個別流路2231とが連通する第1連通状態と、合流部222と、第1デフューザ部224と、第2個別流路2232とが連通する第2連通状態とを切替える。以上の態様では、第2個別流路2232の径が第1個別流路2231の径よりも小さい場合に、可変機構223bを第1連通状態から第2連通状態に切替えることで、低下した吸引流体Y1の流量を一時的に上昇させ、エジェクタ効率ηの低下を抑制することができる。したがって、冷却システム100の運転能力が低下することが抑制される。
【0068】
態様2の具体例(態様3)によれば、可変機構223bは、ノズル220から駆動流体X1が噴射される方向に沿う回転軸2233bと、回転軸2233bに軸支される回転体2230と、を有し、回転体2230は、第1個別流路2231に対応する第1貫通孔と、第2個別流路2232に対応する第2貫通孔と、を有する。以上の態様では、回転体2230を回転させるだけで、第1連通状態と第2連通状態とを切替えることができる。このため、エジェクタ22の管理者が所望するタイミング(例えば、冷却用流体Q2の温度Tが閾値RHに到達した時刻)において第1連通状態と第2連通状態とを迅速に切替えることができ、エジェクタ22の利便性が向上する。
【0069】
態様3の具体例(態様4)によれば、合流部222は、回転体2230と合流部222との境界B1に位置する流出口222aを有し、第1デフューザ部224は、回転体2230と第1デフューザ部224との境界B2に位置する流入口224aを有し、第1貫通孔は、第1開口2231aと第2開口2231bと有し、第2貫通孔は、第3開口2232aと第4開口2232bと有し、第1連通状態において、流出口222aの周縁と第1開口2231aの周縁とが重なり、且つ、流入口224aの周縁と第2開口2231bの周縁とが重なり、第2連通状態において、流出口222aの周縁と第3開口2232aの周縁とが重なり、且つ、流入口224aの周縁と第4開口2232bの周縁とが重なる。この構成により、合流部222から第1貫通孔または第2貫通孔に駆動流体X1および吸引流体Y1が円滑に出力され、第1貫通孔または第2貫通孔から第1デフューザ部224に混合流体が円滑に出力される。
【0070】
本開示のひとつの態様(態様5)に係る冷却システム100は、駆動流体X1と、駆動流体X1の噴射に伴って吸引される吸引流体Y1とが合流する合流部222と、可変機構223bを有し、合流部222から出力される駆動流体X1と吸引流体Y1とが混合された混合流体を出力する混合部223と、混合部223から出力される混合流体を昇圧して吐出する第1デフューザ部224とを備えるエジェクタ22と、熱源との熱交換により冷媒を蒸発させることによって駆動流体X1を発生させる蒸気発生器21と、エジェクタ22から吐出された混合流体と冷却用流体Q2との間の熱交換によって、凝縮させることにより、混合流体を液相の冷媒に変換する凝縮器24と、液相の冷媒の一部を蒸気発生器21に送出するポンプ25と、液相の冷媒の他の一部を減圧する膨張器31と、膨張器31により減圧された冷媒と被冷却媒体Q3との間の熱交換により、減圧された冷媒を蒸発させることによって吸引流体Y1を生成し、当該吸引流体Y1をエジェクタ22に供給する蒸発器32と、を具備し、可変機構223bは、混合流体が流れる流路2230bを有し、流路2230bの体積を可変する。
【0071】
態様5の具体例(態様6)によれば、冷却用流体Q2の温度Tを検出する温度検出部51をさらに具備し、制御部52は、温度検出部51が検出した温度Tに応じて可変機構223bの状態を制御する。この態様では、制御部52が、冷却用流体Q2の温度Tに応じて可変機構223bの状態を制御するから、可変機構223bの状態を管理者が手動で変更する負荷が軽減される。
【符号の説明】
【0072】
220…ノズル、222…合流部、223,300,400…混合部、223b,310…可変機構、224…第1デフューザ部、225…第2デフューザ部、22a,220c,224a,225a…流入口、222a…流出口、2230b…流路、2231…第1個別流路、2232…第2個別流路、回転体…2230、回転軸…2233b、2231a…第1開口、2231b…第2開口、2232a…第3開口、2232b…第4開口、X1…駆動流体、Y1…吸引流体。