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特許7608929入力受付装置、入力受付方法、入力受付プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】入力受付装置、入力受付方法、入力受付プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01H 36/00 20060101AFI20241224BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20241224BHJP
   B62D 1/08 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H01H36/00 D
B60R16/027 T
B62D1/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021054313
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022151304
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小園 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 周
(72)【発明者】
【氏名】名和田 毅
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056460(JP,A)
【文献】特開2022-122093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 36/00
B60R 16/027
B62D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付手段と、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定手段と、
前記接触判定手段によって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定手段と、
を備え、
前記設定手段は、2以上の候補閾値の中から1の候補閾値を前記第1閾値として設定し、
前記静電センサによって検出された検出値よりも小さく、かつ前記2以上の候補閾値のうち前記検出値に近い候補閾値を前記第1閾値として設定する、
入力受付装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記静電センサによって検出された検出値が、前記2以上の候補閾値のうち最も小さい候補閾値よりも大きい場合は、前記検出値よりも小さく、かつ前記2以上の候補閾値のうち前記検出値に近い候補閾値を前記第1閾値として設定し、
前記検出値が、前記2以上の候補閾値のうち最も小さい候補閾値以下の場合は、最も小さい候補閾値を前記第1閾値として設定する、
請求項に記載の入力受付装置。
【請求項3】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付手段と、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定手段と、
前記接触判定手段によって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定手段と、
を備え、
前記設定手段は、前記第1閾値を設定してから第2時間経過しない間は、前記接触判定手段によって操作者によって接触されたと判定されたとしても前記第1閾値を設定せず、第2時間以上経過したのちに前記接触判定手段によって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記第1閾値を改めて設定する、
入力受付装置。
【請求項4】
前記静電センサは、車両のステアリングホイールに設けられ、
前記第2時間は前記車両の走行状態に基づき変更される、請求項に記載の入力受付装置。
【請求項5】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付手段と、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定手段と、
前記接触判定手段によって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値よりも大きい値に前記第1閾値を設定する設定手段と、
を備える入力受付装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記接触判定手段によって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記第1時間の間に前記静電センサによって検出された検出値の平均値に基づき前記第1閾値を設定する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の入力受付装置。
【請求項7】
前記入力受付装置は、車両が第1状態以外の状態から前記1状態に遷移した場合に、停止状態から動作状態へと遷移する車載装置であって、前記設定手段は、前記入力受付装置が前記停止状態から前記動作状態へと遷移した場合に、前回の動作状態における前記第1閾値の設定によらず、前記第1閾値を初期値に設定する請求項1乃至のいずれか1項に記載の入力受付装置。
【請求項8】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を備え、
前記設定ステップでは、2以上の候補閾値の中から1の候補閾値を前記第1閾値として設定し、前記静電センサによって検出された検出値よりも小さく、かつ前記2以上の候補閾値のうち前記検出値に近い候補閾値を前記第1閾値として設定する、
力受付方法。
【請求項9】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を備え、
前記設定ステップでは、前記第1閾値を設定してから第2時間経過しない間は、前記接触判定ステップによって操作者によって接触されたと判定されたとしても前記第1閾値を設定せず、第2時間以上経過したのちに前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記第1閾値を改めて設定する、
力受付方法。
【請求項10】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値よりも大きい値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を備える入力受付方法。
【請求項11】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を情報処理装置に実行させる入力受付プログラムであって、
前記設定ステップでは、前記情報処理装置に、2以上の候補閾値の中から1の候補閾値を前記第1閾値として設定させ、前記静電センサによって検出された検出値よりも小さく、かつ前記2以上の候補閾値のうち前記検出値に近い候補閾値を前記第1閾値として設定させる、
力受付プログラム。
【請求項12】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を情報処理装置に実行させる入力受付プログラムであって、
前記設定ステップでは、前記情報処理装置に、前記第1閾値を設定してから第2時間経過しない間は、前記接触判定ステップによって操作者によって接触されたと判定されたとしても前記第1閾値を設定させず、第2時間以上経過したのちに前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記第1閾値を改めて設定させる、
入力受付プログラム。
【請求項13】
静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、前記操作者によって接触されたと判定する接触判定ステップと、
前記接触判定ステップによって前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づき、前記第2閾値よりも大きい値に前記第1閾値を設定する設定ステップと、
を情報処理装置に実行させる入力受付プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力受付装置、入力受付方法、入力受付プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作面に静電センサが設けられ、静電センサによって検出された静電容量に基づいて操作者による入力操作を受け付ける静電スイッチが知られている。静電センサの検出値は、操作面に対して操作者の指などが近接、あるいは接触されることによって増加する。静電スイッチは、検出された静電容量が所定の閾値を超えたことによって、操作者によって接触されたと判定する。
【0003】
ところで操作者の手袋の装着有無や個人差、指先の状態によっては検出される静電容量が異なる。そのため、固定の閾値によって操作者による接触有無を判定すると、正確な判定が行えない虞がある。例えば、操作者が手袋を装着している場合の検出値は、操作者が素手の場合の検出値よりも低くなる。手袋を着用している場合に合わせた所定の閾値を設定した場合、素手の場合には近接しただけで接触したと判定してしまう虞がある。一方で、素手の場合のみ接触を判定できるように所定の閾値を設定した場合、手袋を着用して接触操作した場合に接触操作がされたと判定できない。
【0004】
これに対して特許文献1では、操作者による接触判定を行う閾値を調整する入力装置を開示している。具体的には、機械式スイッチの表面または土台に静電センサを設け、機械式スイッチの操作が検知されたときに検出された静電容量の検出値に基づいて静電センサの接触判定の閾値を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-167868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の入力装置では、操作者によって機械式スイッチが押下されることで静電センサの接触判定の閾値の調整を開始するため、機械式スイッチが押下されない限り閾値を変更することができない。したがって操作者が接触操作による入力をしたくても、機械式スイッチを押下する入力を行うまで、入力装置が接触操作を受け付けない場合がある。
【0007】
本発明は、静電センサを入力装置として用いる際の接触判定の閾値を、機械式スイッチを押下することなく調整可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る入力受付制御装置は、静電センサによって検出された静電容量の検出値が第1閾値以上である場合に、操作者の接触による操作を受け付ける操作受付手段と、静電センサによって検出された静電容量の検出値が第2閾値以上である状態が第1時間続いた場合に、操作者によって接触されたと判定する接触判定手段と、接触判定手段によって操作者によって接触されたと判定された場合に、静電センサによって検出された検出値に基づき、第2閾値以上の値に前記第1閾値を設定する設定手段と、を備える。
【0009】
請求項2に係る入力受付制御装置は、設定手段は、接触判定手段によって操作者によって接触されたと判定された場合に、第1時間の間に静電センサによって検出された検出値の平均値に基づき第1閾値を設定する、
【0010】
請求項3に係る入力受付制御装置は、設定手段は、2以上の候補閾値の中から1の候補閾値を第1閾値として設定し、静電センサによって検出された検出値よりも小さく、かつ2以上の候補閾値のうち前記検出値に近い候補閾値を第1閾値として設定する。
【0011】
請求項4に係る入力受付制御装置は、設定手段は、静電センサによって検出された検出値が、2以上の候補閾値のうち最も小さい候補閾値よりも大きい場合は、検出値よりも小さく、かつ2以上の候補閾値のうち検出値に近い候補閾値を第1閾値として設定し、検出値が、2以上の候補閾値のうち最も小さい候補閾値以下の場合は、最も小さい候補閾値を第1閾値として設定する。
【0012】
請求項5に係る入力受付制御装置は、車両が第1状態から第2状態に遷移する場合に、停止状態から動作状態へと遷移する車載装置であって、設定手段は、入力受付制御装置が停止状態から動作状態へと遷移した場合に、前回の動作状態における前記第1閾値の設定によらず、前記第1閾値を初期値に設定する。
【0013】
請求項6に係る入力受付制御装置は、設定手段は、第1閾値を設定してから第2時間経過しない間は、接触判定手段によって操作者によって接触されたと判定されたとしても第1閾値を設定せず、第2時間以上経過したのちに接触判定手段によって操作者によって接触されたと判定された場合に、第1閾値を改めて設定する。
【0014】
請求項7に係る入力受付制御装置は、制御装置は、車両のステアリングホイールに設けられ、第2時間は車両の走行状態に基づき変更される。
【0015】
本発明の別の側面は、請求項8に係る入力受付方法である。静電センサによって検出された静電容量の検出値に基づいて、操作者によって接触されたかを判定する接触判定ステップと、前記接触判定ステップにおいて前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づいて第1閾値を設定する設定ステップと、前記静電センサによって検出された検出値が前記設定手段によって設定された第1閾値以上である場合に、前記操作者によって接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、を備える入力受付方法。
である。
【0016】
本発明の別の側面は、請求項9に係る入力受付プログラムである。静電センサによって検出された静電容量の検出値に基づいて、操作者によって接触されたかを判定する接触判定ステップと、前記接触判定ステップにおいて前記操作者によって接触されたと判定された場合に、前記静電センサによって検出された検出値に基づいて第1閾値を設定する設定ステップと、前記静電センサによって検出された検出値が前記設定手段によって設定された第1閾値以上である場合に、前記操作者によって接触による操作を受け付ける操作受付ステップと、を情報処理装置に実行させる入力受付プログラム。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る入力受付装置、入力受付方法、入力受付プログラムによれば、静電センサを入力装置として用いる際の接触判定の閾値を簡易な機械構成で調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る車載装置群のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る入力受付装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る静電センサによる検出値の時間変化の一例を示すグラフである。
図4】実施形態に係る入力受付装置による設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る入力受付装置による受付処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る入力受付装置による検出値と第1閾値の対応関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
<実施例>
本開示を、車両のステアリングホイールに設けられた静電スイッチ2000に適用した場合を例に挙げて説明する。静電スイッチ2000は、ステアリングホイールのスポーク部など、運転者(操作者)が操作可能な任意の位置に取り付けられる。本開示は、車両のステアリングホイール以外の静電センサを利用した入力受付装置にも適用することができる。
【0021】
図1は、実施形態に係る車載装置群のハードウェア構成例を示すブロック図である。車両は、入力受付装置100の構成を実現するECU1000および静電スイッチ2000と、複数のECU301~303からなる制御対象機器とが通信路を介して通信可能に接続された、車載装置群を備える。
【0022】
入力受付装置100のECU1000は、例えば、CPU(Central Processing Unit)1002を中心としてRAM(Random Access Memory)1004やROM(Read Only Memory)1005、HDD(Hard Disk Drive)1003などの記憶媒体、不図示のタイマー、I/F( Inter face)1001を備える。また、これらがCAN(Controller Area Network)ドライバなどの通信インターフェースがバスを介して接続された構成となっている。ECU1000は、静電センサ201付近に設けられていても、静電センサ201と別体で設けられていてもよい。ECU1000は、静電センサ201によって検出された静電容量を取得可能に構成されている。ECU1000は、静電センサ201から取得された静電容量の検出値に基づいて、制御対象機器300へ制御信号を送る。
【0023】
静電センサ201は静電容量を検出し、検出値をECU1000へ出力する。静電センサ201の構造については、周知であるため詳細な説明を省略する。静電センサ201の静電容量の検出面は、カバー部材202に覆われ静電スイッチ2000の操作面に設けられる。検出面に人の指などの接触や近接することで、静電容量の検出値が増加する。静電センサ201は、検出面における静電容量の分布や、分布の時間変化を検出してもよい。これにより、複数指のタッチ操作やなぞり操作などを検出することができる。
【0024】
ECU1000は、静電センサ201から入力される検出値に基づいて静電スイッチ2000に操作入力が行われたかを判定する。また、入力受付装置100のECU1000は、静電スイッチ2000への操作入力に対応する制御信号を制御対象機器300に出力する。
【0025】
制御対象機器300は、入力受付装置100から制御信号を取得し、取得した制御信号に基づいて制御を実行する。車両に搭載される制御対象機器300としては、例えば、空調装置としての機能を実現するECU301、オーディオ装置としての機能を実現するECU302、ナビゲーション装置としての機能を実現するECU303、その他の装置としての機能を実現するECU304が挙げられる。静電スイッチ1の操作面にタッチ操作がされた場合、例えば「決定」操作が入力されたものとして制御対象機器300が制御される。また静電スイッチ1の操作面になぞり操作がされた場合、スクロール操作、機能選択、ボリュームや設定室温の上下操作などが入力されたものとして制御対象機器300が制御されてもよい。
【0026】
図2を用いて本実施形態における入力受付装置100の機能構成について説明する。各機能構成は、記憶媒体1003~1005に格納されたプログラムをCPU1002が実行することにより実現される。入力受付装置100は機能ブロックとして、静電容量取得部11と、電源状態遷移部12、接触判定部13と、設定部14と、操作受付部15と、を備える。
【0027】
静電容量取得部11は、静電センサ201によって検出された検出値を取得し、接触判定部と、操作受付部へ出力可能に構成されている。
【0028】
電源状態遷移部12は、車両状態に基づいて入力受付制御装置の電源状態を停止状態と動作状態とに遷移させる。電源状態遷移部12は、車両状態が第1状態から第2状態へと変化した場合に入力受付制御装置の電源状態を停止状態から動作状態へ遷移させる。第1状態とは、一例として車両の動力状態が停止状態であって、かつ乗員が乗車していない場合の状態である。また、第2状態とは、一例として車両の動力状態が停止状態であって、乗員が乗車している場合の状態を指す。電源状態遷移部12は、不図示の他の制御装置から、車両状態が第1の状態から第2の状態へ遷移したことを通知されることで、停止状態から動作状態へ遷移する。あるいは、車両状態が第1の状態から第2の状態へ遷移したことに伴って、不図示の電力供給装置が、入力受付制御装置へ電力供給を開始することで、電源状態遷移部12が入力受付制御装置の電源状態を停止状態から動作状態へ遷移させてもよい。ここで、第1状態と第2状態の定義として上述の一例を記載したが、第1状態を車両の動力装置が停止している状態とし、第2状態を車両の動力装置が動作している状態としてもよい。
【0029】
操作受付部15は、静電容量取得部11によって取得された静電容量の検出値に基づいて操作者の接触による操作を受け付ける(以下、受付処理と称する)。操作受付部15は、検出値が、予め設定部14によって設定された第1閾値Z1以上である場合に、操作者の接触による操作入力を受け付ける。操作受付部15によって操作が受け付けられた場合、不図示の出力部によって操作対象である制御対象機器300へ操作入力に対応した制御信号が出力される。
【0030】
接触判定部13は、静電センサ201によって検出された静電容量の検出値に基づいて、操作者によって接触されたかを判定する。一例として、接触判定部13は、静電センサ201によって検出された検出値が第2閾値Z2以上である状態が第1時間t1続いた場合に、操作者によって接触されたと判定する。第2閾値は、例えば人の指等が接触していないにも関わらず検出される静電容量よりも大きい値が設定され、具体的には1pF以下のオーダーの値が設定される。本実施例のように、静電スイッチ1が車両のステアリングホイールに設けられる場合、車載機器の発するノイズによって静電センサ201が静電容量を検出してしまう。第2閾値Z2を上述のような値に設定することで、ノイズによって接触されたと誤判定してしまう虞を低減できる。第2閾値Z2は、例えば操作者が手袋を装着している場合にも検出できるような値が設定される。これにより、操作者は手袋を装着している場合にも接触されたと判定することができ、後述の第1閾値Z1の設定を行うことができる。第2閾値Z2は、後述するYnと同じ値が設定されてもよい。第1時間t1は、例えば100msである。
【0031】
設定部14は、接触判定部13によって操作者によって接触されたと判定された場合に、静電センサによって検出された検出値Xに基づいて第1閾値Z1を設定する(以降、設定処理と称する)。検出値Xは、第1時間の間に静電センサ201によって検出された検出値の平均値であってもよいし、第1時間における検出値の最大値であってもよい。検出値Xの取り方は本開示の実施可能な範囲で自由に選択できる。
【0032】
図6は、静電センサ201による検出値と第1閾値の対応関係の一例を示す表である。一例として、第1閾値Z1は2以上の候補閾値群Y={Y1、Y2、…Yn}の中から1の候補閾値を選択し第1閾値Z1として設定される。nは2以上の整数である。候補閾値Y1~Ynは、Y1が最も大きく、Ynが最も小さい。候補閾値Y1~Ynの各値は、例えば実験によって、手袋を着用時の静電容量検出量や、手袋を非着用時の静電容量検出量を測定し、それに基づき設定されるとよい。図6に検出値と設定される第1閾値Z1の関係を示す。設定部14は、検出値Xよりも小さく、かつ候補閾値群Yのうち検出値Xに近い候補閾値Ymを前記第1閾値Z1として設定する。なお、mは1以上n以内の整数である。これにより、操作者の指の状態に対応した第1閾値となるよう、第1閾値を調整することができる。操作者の手袋の装着有無や個人差、指先の状態によらず、操作者が操作したことを検出することができる。例えば、操作者が手袋を装着している場合には検出値Xは比較的低い値が取得されるため、第1閾値も検出値Xに合わせた閾値が設定される。これにより、手袋を装着したまま静電スイッチが操作された場合にも、操作を検出することができる。また、操作者が手袋を装着していない場合には検出値Xは比較的高い値が取得され、第1閾値も検出値Xに合わせた閾値が設定される。
【0033】
検出値Xが、候補閾値群Yのうち最も小さい候補閾値Yn以下の場合は、候補閾値Ynを第1閾値Z1として設定する。Ynは、人の指等が接触していないにも関わらず検出される静電容量より大きい値が設定される。本実施例のように、静電スイッチ1が車両のステアリングホイールに設けられる場合、静電センサ201が車載機器の発するノイズによって静電容量を検出してしまう。第1閾値を少なくともYn以上の閾値と設定することで、ノイズによって操作を誤検出してしまう虞を低減できる。
【0034】
設定部14は、電源状態遷移部12によって入力受付制御装置の電源状態が停止状態から動作状態へ遷移した場合に、前回の動作状態における第1閾値の設定によらず、初期値を設定してもよい。これにより、前回の動作状態における第1閾値の設定によらず、初期値を設定することができる。例えば、前回の動作状態において乗員が手袋をせずに静電スイッチ2000を操作し、次の動作状態において乗員が手袋をして静電スイッチ2000を操作した場合においても、第1閾値は初期値に設定されるため、静電スイッチ2000の操作を検出できる可能性が向上する。第1閾値の初期値は好ましくは候補閾値Ynに設定されるとよい。あるいは、過去の設定部14によって設定された第1閾値の履歴を記憶しておき、第1閾値として設定される頻度の高い候補閾値を第1閾値として設定してもよい。
【0035】
上述では設定部14が第1閾値Z1を設定する処理(設定処理)を開始するタイミングとして、操作者によって接触されたと接触判定部13によって判定された場合(第1条件とする)とした。これにより、車両の始動から停止までの間に手袋の装着状態が変化したとしても、閾値を更新することができる。
【0036】
また、設定処理は、操作受付処理と並行して開始されてもよい。1つの接触によって設定された第1閾値は、次の接触のときの操作受付処理のための第1閾値とすればよい。閾値を設定してから改めて接触操作をする必要がなく、わずらわしさを低減することができる。
【0037】
設定処理を開始するタイミングとして、第1条件に加えて他の条件を組み合わせてもよい。以下、設定部14による設定処理の開始条件の一例を説明する。
【0038】
(開始条件の第1例)
開始条件の第1例では、上述の第1条件に加えて、入力受付制御装置が停止状態から動作状態へ遷移したことを、設定処理の開始条件とする。すなわち、設定部は、第1条件が満たされ、入力受付制御装置が停止状態から動作状態へ遷移した場合に設定処理を開始する。これにより、入力受付装置が起動してから停止するまでの間に1度だけ第1閾値Z1を更新することができる。入力受付制御装置の停止状態と、動作状態と遷移は、上述した通り、車両の動力状態と乗員の乗車状態と関連する。換言すれば、開始条件の第1例は、上述の第1条件が満たされ、車両の動力状態が停止状態であって、乗員が乗車していない状態から乗員が乗り込んだ場合に設定処理を開始する。すなわち、乗員が乗車してから降車するまでの間に1度だけ第1閾値Z1を更新することができる。これにより、静電スイッチへの接触の度に第1閾値Z1が更新されることによるわずらわしさを低減しつつ、操作者が異なる人物に変わった場合や、手袋の装着状態が変化した場合にも第1閾値Z1を更新することができる。
【0039】
(開始条件の第2例)
設定部14による設定処理の開始条件の他の例を説明する。開始条件の第2例では、上述の第1条件に加えて、前の設定処理から第2時間経過したことを、設定処理の開始条件とする。これにより、少なくとも第2時間ごとに第1閾値Z1が更新される。静電スイッチへの接触の度に閾値が更新されることによるわずらわしさを低減しつつ、車両の走行途中で手袋を外した場合などにも第1閾値Z1を更新することができる。
【0040】
第2時間は、車両の走行状態によって変更されてもよい。一例として、第2時間を交差点の右折または左折する場合に長くする。車両が交差点を右折または左折している間は、乗員が手袋をつけたり外したりなどをする可能性が低く、第1閾値Z1を変更する必要性が低い。一方で、操舵のために静電スイッチ2000に指が触れる可能性が高い。このような場合には第2時間を長くしておくことで不要に第1閾値Z1の設定処理が実行されることを低減することができる。走行状態の一例として右左折時を上げたが、停車時、カーブ走行時、など種々の走行状態によって第2時間を変更させることができる。
【0041】
本開示に係る入力受付装置100の処理は、設定処理と、受付処理とを備える。まず、設定処理を、図3および図4を用いて説明する。図3は、実施形態に係る(a)静電センサ201による検出値の時間変化と、(b)接触判定部13による判定の時間変化と、(c)設定部14によって設定される第1閾値Z1の時間変化の一例を示すグラフである。図4は、実施形態に係る入力受付装置100による設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示す受付処理および設定処理が実行されることで、第1閾値Z1の調整が図られる。この設定処理は、ECU1000において所定の制御プログラムが実行されることによって所定間隔で繰り返し実行される制御である。この処理は、一例として車両の始動によって開始される。
【0042】
図4に示すように、一連の処理が開始すると、S101において設定部14は、第1閾値Z1をYnに設定する。
【0043】
つづいて、設定処理に進む。設定処理では、S102において静電容量取得部11は、静電センサ201から静電容量の検出値を取得する。S103において、接触判定部13は取得された検出値に基づいて操作者によって接触されたかを判定する。一例として、接触判定部13は検出値が時間t1以上、第2閾値Z2以上であるかを判定し、肯定された場合に接触されたと判定する。S103において接触されたと判定された場合、S104へ進む。S104では、設定部14によって、第1閾値Z1が設定される。S103において、接触されたと判定されなかった場合、設定処理を終了する。
【0044】
本制御は、一例として車両の動力の動作状態が停止することによって終了する(S105のYes)。
【0045】
図3を用いて、図4のフローチャートを適用することによる、(a)静電センサ201による検出値の時間変化と、(b)接触判定部13による判定の時間変化と、(c)設定部14によって設定される第1閾値Z1の時間変化ssの一例を説明する。図3において、車両が始動した時刻を0とする。
【0046】
図3(c)に示す通り、時刻t0において、第1閾値Z1はYnである。続いて時刻taにおいて、図3に示すように、静電センサ201によって検出される静電容量が増加し、Yn以上になる。第1閾値Z1はYnであることから、操作受付部は静電センサ201への入力操作を受け付け、操作に対応して制御対象装置300へ制御信号を出力する。
【0047】
また、本実施例において、接触判定部13による接触されたかの判定に用いられる第2閾値Z2はYnに設定される。検出値がYn(=第2閾値Z2)以上になってからt1時間が経過することで、図3(b)に示すように、接触判定部13は、接触されたと判定する。これにより、設定部14は、検出値に基づいて第1閾値Z1を設定する。本実施例では、検出値が候補閾値Y1よりも小さく、候補閾値Y2よりも大きいことから、第1閾値Z1はY2に設定される。これにより、静電スイッチ2000への操作入力を受け付けるための第1閾値Z1を適切な値に調整することができる。
【0048】
受付処理について、図5を用いて説明する。図5は、実施形態に係る入力受付装置100による受付処理の流れの一例を示すフローチャートである。図5に示す受付処理が実行されることで、操作者による入力操作の受付が図られる。この受付処理は、ECU1000において所定の制御プログラムが実行されることによって所定間隔で繰り返し実行される制御である。この処理は、一例として車両の始動によって開始される。
【0049】
図5に示すように、一連の処理が開始すると、S201において設定部14は、第1閾値Z1を設定する。前述の設定処理が行われる前では、設定部14は第1閾値Z1をYnに設定する。設定処理が行われた場合には、設定部14は静電センサ201によって検出された検出値に基づいて第1閾値Z1を設定する。
【0050】
つづいて、受付処理に進む。S202において、静電容量取得部11は、静電センサ201から静電容量の検出値を取得する。取得された検出値は、接触判定部13および操作受付部15に出力される。受付処理では、S203において、操作受付部15によって検出値が第1閾値Z1以上であるかを判定する。検出値が第1閾値Z1以上である場合(S203のYes)、S204において、操作受付部15は操作を受け付け、入力された操作に対応して制御対象装置300へ信号を出力する。検出値がZ1以上でない場合、操作を受け付けずに受付処理を終了する。
【0051】
なお、設定処理と受付処理とを別々に記載したが、受付処理は、設定処理よりも前に行っても、同時に行ってもよい。また、静電容量取得部による取得ステップをS102とS202とが異なるように記載したが、同じ静電容量の検出値を用いてもよい。
【0052】
なお、以上に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 入力受付装置
201 静電センサ
300 制御対象機器
2000 静電スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6