(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ交換装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B25J15/04 A
(21)【出願番号】P 2021072709
(22)【出願日】2021-04-22
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太平
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】カナダ国特許出願公開第03096208(CA,A1)
【文献】米国特許第10047908(US,B1)
【文献】中国実用新案第212601904(CN,U)
【文献】特開2020-131305(JP,A)
【文献】特開2016-159377(JP,A)
【文献】特開2016-080156(JP,A)
【文献】特開2010-105111(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0128263(KR,A)
【文献】特開2002-200585(JP,A)
【文献】特開平09-272091(JP,A)
【文献】特開平09-220674(JP,A)
【文献】特開2010-120140(JP,A)
【文献】特開2009-136942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アダプタと第2アダプタを含み、前記第1アダプタおよび前記第2アダプタの一方がロボットアーム等に取り付けられ、他方にエンドエフェクタが取り付けられるエンドエフェクタ交換装置であって、
前記第1アダプタのスライド部が前記第2アダプタのスロットに嵌合し、前記スライド部に設けられたカム部材と前記スロットを構成する開口縁部との間にボールが配置され、前記カム部材の移動によって前記ボールが前記開口縁部に設けられた係合溝に向けて進出し、または後退可能となり、前記カム部材と一体の解除ボタンの操作を行うとともに前記第1アダプタと前記第2アダプタを相対的にスライドさせることによって前記ボールが後退し、前記第1アダプタと前記第2アダプタが分離
し、
前記カム部材は、前記スライド部の長手方向に移動可能に支持されるガイドロッドに連結されるエンドエフェクタ交換装置。
【請求項2】
請求項1記載のエンドエフェクタ交換装置において、
断面T字形状の前記スライド部がT字形状の前記スロットに嵌合するエンドエフェクタ交換装置。
【請求項3】
請求項
1記載のエンドエフェクタ交換装置において、
前記カム部材には、カム部およびボール受容溝が形成され、前記カム部は、前記ガイドロッドの移動方向に対して傾斜する傾斜部と前記ガイドロッドの移動方向と平行な平行部とからなり、前記平行部は、前記傾斜部と前記ボール受容溝との間に形成されるエンドエフェクタ交換装置。
【請求項4】
請求項1記載のエンドエフェクタ交換装置において、
前記係合溝の壁面形状は、所定の中心角の範囲で切り取った二つの円筒面をそれらの母線同士で継ぎ合わせ、該継合線が谷線となるようにしたものであるエンドエフェクタ交換装置。
【請求項5】
請求項1記載のエンドエフェクタ交換装置において、
前記係合溝の壁面形状は、二つの平面を交差させ、その交差部にアールを施したものであるエンドエフェクタ交換装置。
【請求項6】
請求項
4または
5記載のエンドエフェクタ交換装置において、
前記係合溝の谷線は、前記ボールの進出・後退方向に対して傾斜しているエンドエフェクタ交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームや搬送装置(以下「ロボットアーム等」という)に取り付ける工具、治具、チャック、グリッパ等の部材(以下「エンドエフェクタ」という)を手動で交換するためのエンドエフェクタ交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業用ロボットが行う作業に応じてロボットアームの先端に種々のエンドエフェクタを取り付けることができるように、ロボットアームの先端にエンドエフェクタを着脱自在に取り付ける技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボットに連結される第1部分とグリッパに連結される第2部分とを分離可能なヒンジで連結し、第1部分と第2部分との係合を解除する押しボタンを設けたコネクタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなエンドエフェクタ交換に係る装置において、エンドエフェクタを手動でロボットアーム等から外す際に、エンドエフェクタが不意に離脱するおそれがある。特に、エンドエフェクタの重量が大きい場合は、作業者の安全性に配慮する必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エンドエフェクタの交換時にエンドエフェクタが不意に離脱するおそれがないエンドエフェクタ交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエンドエフェクタ交換装置は、第1アダプタと第2アダプタを含み、第1アダプタおよび第2アダプタの一方がロボットアーム等に取り付けられ、他方にエンドエフェクタが取り付けられ、第1アダプタのスライド部が第2アダプタのスロットに嵌合する。そして、スライド部に設けられたカム部材とスロットを構成する開口縁部との間にボールが配置され、カム部材の移動によってボールが開口縁部に設けられた係合溝に向けて進出し、または後退可能となり、カム部材と一体の解除ボタンの操作を行うとともに第1アダプタと第2アダプタを相対的にスライドさせることによってボールが後退し、第1アダプタと第2アダプタが分離する。
【0008】
上記エンドエフェクタ交換装置によれば、解除ボタンを操作してから第1アダプタと第2アダプタを相対的にスライドさせることで、第1アダプタと第2アダプタを分離することができ、解除ボタンを押しただけでは、第1アダプタと第2アダプタを分離することができない。したがって、エンドエフェクタが取り付けられたアダプタが不意に離脱することがなく、作業者の安全性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエンドエフェクタ交換装置は、解除ボタンの操作を行うとともに第1アダプタと第2アダプタを相対的にスライドさせることによって、第1アダプタと第2アダプタを分離できる構成となっているので、エンドエフェクタが取り付けられたアダプタが不意に離脱することがなく、作業者の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置の外観図である。
【
図2】
図1のエンドエフェクタ交換装置の使用例を示す図である。
【
図3】
図1のエンドエフェクタ交換装置の第1アダプタの外観図である。
【
図4】
図1のエンドエフェクタ交換装置の第2アダプタの外観図である。
【
図5】
図1のエンドエフェクタ交換装置の平面図である。
【
図8】
図7のIII-III線に沿う断面図である。
【
図12】解除ボタンを操作したときの
図8に対応する図である。
【
図13】
図2の使用例において第2アダプタを第1アダプタから分離した状態を示す図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置を説明するための
図8に対応する図である。
【
図15】
図14のエンドエフェクタ交換装置の係合溝について説明するための
図10に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るエンドエフェクタ交換装置について、複数の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、上下の方向に関する言葉を用いたときは、便宜上、図面上での方向をいうものであって、各部材の実際の配置等を限定するものではない。
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置10について、
図1~
図13を参照しながら説明する。
図1に示すように、エンドエフェクタ交換装置10は、平面視で同一の円盤形状を有する第1アダプタ12および第2アダプタ34を含む。
図2に示すように、エンドエフェクタ交換装置10は、例えば、所望のエンドエフェクタ48を取り付けた第2アダプタ34を、ロボットアーム46に取り付けた第1アダプタ12に連結して使用するものである。
【0013】
図3に示すように、第1アダプタ12は、円盤状の本体部14と、本体部14から下方に突出するスライド部18とを有する。断面T字形状のスライド部18は、本体部14の直径に沿う方向に延びている。
図6および
図8に示すように、スライド部18の内部にはガイドロッド20が配設されている。ガイドロッド20の一端部および他端部は、それぞれスライド部18の内部に設けられた第1ガイド溝18aおよび第2ガイド溝18bに配置され、ガイドロッド20は、スライド部18の長手方向(X方向)に移動可能に支持されている。
【0014】
ガイドロッド20の中央には、カム部材22が第1ねじ26aにより連結され、ガイドロッド20の端部には、解除ボタン24が第2ねじ26bにより連結されている。第1アダプタ12には、その外周の一部をスライド部18の長手方向と直交する向きに切り欠いた形状の凹面12aが設けられており、解除ボタン24は、この凹面12aから外部に露出する。
【0015】
カム部材22の端部には、上方に立ち上がり本体部14内に延びるスプリング受け部22cが一体に形成されている。本体部14の内部に設けられたスプリング受け30とカム部材22のスプリング受け部22cとの間にコイルスプリング28が配設される。相互に一体的に連結されたカム部材22、ガイドロッド20および解除ボタン24は、コイルスプリング28の付勢力を受け、解除ボタン24は、凹面12aから外部に突出する方向に付勢される。
【0016】
カム部材22の両側面には、カム部22aが形成されているほか、カム部22aよりも解除ボタン24寄りの位置にボール受容溝22bが形成されている。カム部22aは、ガイドロッド20の移動方向(X方向)に対して角度αをなして傾斜する傾斜部22a1と、ガイドロッド20の移動方向と平行な平行部22a2とからなり、平行部22a2は、傾斜部22a1とボール受容溝22bとの間に形成されている(
図9参照)。スライド部18には、カム部材22と隣接する位置に、一対のボール溝18cが設けられている。各ボール溝18cにボール(鋼球)32が配置される。
【0017】
本体部14の上部には、円形の嵌合部14aが突設されており、ガイドロッド20、カム部材22およびコイルスプリング28の上方を覆う円形のカバー部材16が嵌合部14aに装着されている。嵌合部14aは、第1アダプタ12をロボットアーム46に取り付ける際に、位置決めとしての役割を果たす。なお、参照符号14bで示されるのは、第1アダプタ12をロボットアーム46に取り付けるためのボルト挿通孔である。
【0018】
図4に示すように、第2アダプタ34は、開口部36aを有する上プレート部36と、円形の孔部38aを有する下プレート部38とを含む。上プレート部36のU字形状の開口縁部36bは、垂直壁部40を経て下プレート部38と繋がっている。これら開口縁部36b、垂直壁部40および下プレート部38は、T字形状のスロット42を構成している。
【0019】
第1アダプタ12のスライド部18が第2アダプタ34のスロット42に嵌合することで、第2アダプタ34は、第1アダプタ12に対して水平方向にスライド可能に支持される。このとき、第2アダプタ34の上プレート部36の上面は、第1アダプタ12の本体部14の下面と平行であり、両者は、僅かな隙間をもって対向するか、面同士で接触している。なお、参照符号34aで示されるのは、エンドエフェクタ48を第2アダプタ34に取り付けるためのボルト挿通孔である。
【0020】
第1アダプタ12のスライド部18が第2アダプタ34のスロット42の奥まで挿入されると、第2アダプタ34の中心軸が第1アダプタ12の中心軸と一致し、第2アダプタ34の側面が第1アダプタ12の側面と面一になる(
図2参照)。スライド部18がスロット42から完全に離脱したとき、第2アダプタ34が第1アダプタ12から分離する(
図13参照)。
【0021】
図8に示すように、第1アダプタ12のスライド部18のボール溝18cに配置されたボール32は、スライド部18に配設されたカム部材22と第2アダプタ34の上プレート部36の開口縁部36bとの間に位置する。開口縁部36bには、ボール32が当接可能な壁面を有する係合溝44が設けられている。第1アダプタ12のスライド部18が第2アダプタ34のスロット42の奥まで挿入されたとき、ボール32が係合溝44と向き合う。
【0022】
図7および
図10に示すように、係合溝44の最も深い地点を結ぶ線、すなわち谷線44aは、下方に向かうほど開口部36aから離れるように、カム部材22の移動方向に沿う方向から見て上プレート部36の上面に対して角度βだけ傾斜している。換言すれば、係合溝44の谷線44aは、ボール32の進出・後退方向(Y方向)に対して角度βだけ傾斜している。
【0023】
図11には、ボール32が係合溝44の壁面に当接した状態において、ボール32の中心を含み上記谷線44aに垂直な面で切断したときの係合溝44の外形線が示されている。この外形線は、ボール32の半径よりも大きい半径を有する二つの円弧44b、44cを対称的に組み合わせたものとなっている。
【0024】
具体的には、係合溝44の壁面形状は、90度より小さい中心角θの範囲で切り取った二つの同一の円筒面をそれらの母線同士で継ぎ合わせ、該継合線が係合溝44の谷線44aとなるようにしたものである。ボール32は、上記二つの円筒面からなる係合溝44の壁面に点P1および点P2の二点で当接する。なお、参照符号O1で示される点は、円弧44bを構成する円の中心であり、参照符号O2で示される点は、円弧44cを構成する円の中心である。
【0025】
本実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置10は、以上のように構成されるものであり、以下、その作用について説明する。第1アダプタ12のスライド部18が第2アダプタ34のスロット42の奥まで挿入され、解除ボタン24が第1アダプタ12の凹面12aから突出している状態を初期状態とする(
図8参照)。
【0026】
上記初期状態では、カム部材22は、コイルスプリング28の付勢力を受け、その傾斜部22a1によってボール32を押圧しており、ボール32は、スライド部18のボール溝18cから突出して係合溝44の壁面に当接している。このため、第2アダプタ34は、その係合溝44において、ボール32を介して第1アダプタ12のスライド部18に係合した状態にあり、第2アダプタ34を第1アダプタ12に対してスライドさせることができない。
【0027】
この場合、ボール32は、ボール32の進出・後退方向に対して角度βだけ傾斜した係合溝44の壁面に当接するので、第2アダプタ34の上面を第1アダプタ12の本体部14の下面に密着させる力が作用し、第2アダプタ34は、ガタツキなく第1アダプタ12に支持される。また、ボール32は、円筒面からなる係合溝44の壁面に点P1および点P2の二点で当接するので、平面からなる係合溝44の壁面に当接する場合と比べて面圧を緩和することができるほか、第2アダプタ34に大きな外力が加わってもガタつくことがない。
【0028】
また、カム部材22の傾斜部22a1は、平行部22a2を経てボール受容溝22bに繋がっているので、解除ボタン24が押圧されない状態で第2アダプタ34をスライドさせようとする外力が作用した場合、ボール32が移動しようとしても、ボール32は平行部22a2に留まり、ボール受容溝22bまで移動することがない。したがって、解除ボタン24を操作しない限り、第2アダプタ34をスライドさせることができない。
【0029】
作業者が解除ボタン24を押圧すると、解除ボタン24と一体のガイドロッド20およびカム部材22がコイルスプリング28の付勢力に抗して移動する。これにより、ボール32が係合溝44からボール受容溝22bに向けて後退できるようになる。そして、第1アダプタ12のスライド部18を第2アダプタ34のスロット42から抜出する方向に作業者が第2アダプタ34に力を加えると、ボール32がボール受容溝22bに落ちてスライド部18から突出しない位置まで後退する(
図12参照)。したがって、作業者は、第2アダプタ34をスライドさせて、第2アダプタ34を第1アダプタ12から分離することができる(
図13参照)。
【0030】
分離した第2アダプタ34に取り付けられたエンドエフェクタ48を別のエンドエフェクタに取り換えた後、第2アダプタ34を第1アダプタ12に連結するときは、例えば、以下の手順で行えばよい。
【0031】
まず、作業者は、第2アダプタ34を両手で支えながら第2アダプタ34のスロット42に第1アダプタ12のスライド部18を嵌合させ、スロット42の入口における開口縁部36bがスライド部18から突出しているボール32に突き当たるまで、第2アダプタ34を第1アダプタ12に対してスライドさせる。この状態になれば、スライド部18がスロット42に所定長さ嵌合しているので、作業者が第2アダプタ34から手を放しても、第2アダプタ34が落下することはない。
【0032】
次に、作業者は、一方の手で解除ボタン24を押しながら、第1アダプタ12のスライド部18が第2アダプタ34のスロット42の奥に挿入されるまで、他方の手で第2アダプタ34をスライドさせる。そして、解除ボタン24から手を放せば、ボール32がコイルスプリング28の付勢力により係合溝44の壁面に当接し、初期状態に戻る。
【0033】
本実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置10によれば、解除ボタン24の操作を行うとともに第1アダプタ12と第2アダプタ34を相対的にスライドさせることによって、第1アダプタ12と第2アダプタ34を分離できる構成となっているので、エンドエフェクタ48が取り付けられた第2アダプタ34が不意に離脱して落下することがなく、作業者の安全性が向上する。
【0034】
本実施形態では、第1アダプタ12をロボットアーム46に取り付け、第2アダプタ34にエンドエフェクタ48を取り付けて使用するものとして説明したが、第2アダプタ34をロボットアーム46に取り付け、第1アダプタ12にエンドエフェクタ48を取り付けて使用することもできる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るエンドエフェクタ交換装置50について、
図14~
図16を参照しながら説明する。第2実施形態は、係合溝の形状が第1実施形態と異なる。なお、上述したエンドエフェクタ交換装置10と同一の構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
図14に示すように、第1アダプタ12のスライド部18のボール溝18cに配置されたボール32は、スライド部18に配設されたカム部材22と第2アダプタ34の上プレート部36の開口縁部36bとの間に位置する。開口縁部36bには、ボール32が当接可能な壁面を有する係合溝52が設けられている。
図15に示すように、係合溝52の谷線52aは、下方に向かうほど開口部36aから離れるように、ボール32の進出・後退方向(Y方向)に対して角度βだけ傾斜している。
【0037】
図16には、ボール32が係合溝52の壁面に当接した状態において、ボール32の中心を含み上記谷線52aに垂直な面で切断したときの係合溝52の外形線が示されている。この外形線は、二つの直線部52b、52cを含むV字形状となっている。係合溝52の壁面形状は、二つの平面を略90度の角度で交差させ、その交差部にアールを施したものであり、係合溝52の谷線52aは、このアールにおいて最深部を通る線となる。ボール32は、上記二つの平面を含む係合溝52の壁面に点P3および点P4の二点で当接する。本実施形態では、係合溝52の壁面形状を構成する二つの平面を略90度の角度で交差させたが、90度より大きい角度で交差させてもよいし、90度より小さい角度で交差させてもよい。
【0038】
解除ボタン24が操作されないとき、カム部材22は、コイルスプリング28の付勢力を受け、その傾斜部22a1によってボール32を押圧しており、ボール32は係合溝52の壁面に当接している。このため、第2アダプタ34は、その係合溝52において、ボール32を介して第1アダプタ12のスライド部18に係合した状態にあり、第2アダプタ34を第1アダプタ12に対してスライドさせることができない。
【0039】
一方、作業者が解除ボタン24を押圧すると、カム部材22がコイルスプリング28の付勢力に抗して移動し、ボール32が係合溝52からボール受容溝22bに向けて後退できるようになる。そして、作業者が第2アダプタ34に所定方向の力を加えると、ボール32がスライド部18から突出しない位置まで後退するので、作業者は、第2アダプタ34をスライドさせて、第2アダプタ34を第1アダプタ12から分離することができる。したがって、エンドエフェクタ48が取り付けられた第2アダプタ34が不意に離脱して落下することがなく、作業者の安全性が向上する。
【0040】
ボール32は、ボール32の進出・後退方向に対して角度βだけ傾斜した係合溝52の壁面に当接するので、第2アダプタ34の上面を第1アダプタ12の本体部14の下面に密着させる力が作用し、第2アダプタ34は、ガタツキなく第1アダプタ12に支持される。また、ボール32は、二つの平面を含む係合溝52の壁面に点P3および点P4の二点で当接するので、第2アダプタ34に大きな外力が加わってもガタつくことがない。また、係合溝52の壁面形状を二つの平面を組み合わせたものとしているので、係合溝52の加工が容易である。
【0041】
本発明に係るエンドエフェクタ交換装置は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0042】
10、50…エンドエフェクタ交換装置
12…第1アダプタ 18…スライド部
20…ガイドロッド 22…カム部材
22a…カム部 22a1…傾斜部
22a2…平行部 22b…ボール受容溝
24…解除ボタン 32…ボール
34…第2アダプタ 36b…開口縁部
42…スロット 44、52…係合溝
44a、52a…谷線 46…ロボットアーム
48…エンドエフェクタ