(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/157 20060101AFI20241224BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
(21)【出願番号】P 2021112665
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 俊行
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-058161(JP,A)
【文献】実開平05-074739(JP,U)
【文献】特開2009-056546(JP,A)
【文献】特開2008-023661(JP,A)
【文献】特開昭61-044546(JP,A)
【文献】米国特許第06149561(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155、157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ
、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具を保持
し、前記窓を通過可能に構成された長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え
、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を保持した状態の前記長尺工具保持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置との間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具を保持した状態の前記長尺工具保持部材を、前記主軸頭の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動させる水平動装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、前記上下動装置により前記長尺工具保持部材を前記窓の下方位置に位置させた後に、前記水平動装置により前記長尺工具保持部材を前記主軸頭に接近する方向に移動することによって、前記長尺工具保持部材に保持された前記長尺工具を前記主軸頭に装着するように構成される、工作機械。
【請求項2】
前記長尺工具保持部材は、前記長尺工具を上面に載置する載置台により構成される、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記長尺工具保持部材は、前記載置台に設けられ前記載置台に前記長尺工具を載置した状態を維持するために前記長尺工具に係止可能なロック機構を備える、請求項
2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記長尺工具保持部材は、前記長尺工具を把持可能な把持部材により構成される、請求項
1に記載の工作機械。
【請求項5】
前記上下動装置は、前記水平動装置によって、前記長尺工具保持部材と一体的に水平方向に移動可能に構成される、請求項
1~4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記長尺工具交換装置は、前記長尺工具保持部材の下方に固定され、前記窓を開閉可能に構成され、前記長尺工具保持部材と一体的に移動可能に構成された蓋部材を備え、
前記蓋部材は、
前記長尺工具保持部材が前記窓の上方位置に位置する状態において前記窓を閉塞し、
前記窓を閉塞する位置から下方へ移動することによって前記窓を開口する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ
、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具
を上面に載置する載置台であり、前記長尺工具を保持する長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え
、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を把持可能な把持部材と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置の間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具保持部材の下方に固定され、前記上面カバーに対して水平方向に移動可能に設けられ、前記窓を開閉可能に構成され、前記長尺工具保持部材と一体的に移動可能に構成された蓋部材と、
前記長尺工具保持部材および前記蓋部材を、前記上面カバーに対して水平方向に移動させる窓開閉水平動装置と、を備える、工作機械。
【請求項8】
前記長尺工具交換装置は、さらに、前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記主軸頭の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動させる把持部材水平動装置を備え、
前記長尺工具交換装置は、前記上下動装置により前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を前記窓の下方位置に位置させた後に、前記把持部材水平動装置により前記把持部材を前記主軸頭に接近する方向に移動することによって、前記把持部材に把持された前記長尺工具を前記主軸頭に装着するように構成される、請求項
7に記載の工作機械。
【請求項9】
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ
、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具
を上面に載置する載置台であり、前記長尺工具を保持する長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え
、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を把持可能な把持部材と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置の間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記主軸頭の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動させる把持部材水平動装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、前記上下動装置により前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を前記窓の下方位置に位置させた後に、前記把持部材水平動装置により前記把持部材を前記主軸頭に接近する方向に移動することによって、前記把持部材に把持された前記長尺工具を前記主軸頭に装着するように構成される、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタなどの工作機械は、多数の工具を収容し、工具交換装置によって主軸に装着する工具を自動で交換することができるように構成されている。工作機械に使用される工具には、種々の工具長さを有する工具が存在する。例えば、エンドミル、ドリル、フライスカッタなどのように工具長さが短い短尺工具や、ボーリング工具などのように工具長さの長い長尺工具が存在する。
【0003】
そして、工作機械に設けられる工具マガジンには、収容可能な工具長さの上限が定められており、上限である所定の長さ以下の短尺工具であれば、工具マガジンに収容可能となる。しかし、所定の長さより長い長尺工具は、工具マガジンに収容することができない。
【0004】
そこで、特許文献1~4には、長尺工具を短尺工具マガジンとは別に設置して、長尺工具の工具交換が可能となるように構成された工作機械が記載されている。特許文献1に記載の工作機械においては、ベッド上に移動可能に設けられたテーブルの上面において、工作物と並列な位置に長尺工具を載置している。長尺工具の交換は、ガントリーローダによって行う。
【0005】
特許文献2に記載の工作機械においては、パレット交換装置の上面のうち、パレット交換装置における加工側パレットと待機側パレットとの間の角度領域に、長尺工具を載置している。長尺工具の工具交換は、回転工具の中心軸方向に移動可能なテーブルを用いて行われる。
【0006】
特許文献3に記載の工作機械においては、主軸の側方に、短尺工具マガジンが設置され、かつ、短尺工具マガジンに対して上下方向に並列に長尺工具マガジンが設置されている。特許文献4に記載の工作機械においては、主軸の回転中心の軸方向が縦方向に構成されており、であって、主軸頭およびコラムの後方に長尺工具を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-182138号公報
【文献】特開2015-186186号公報
【文献】特開2017-52023号公報
【文献】特開2018-58205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の工作機械においては、長尺工具をテーブル上に配置しており、テーブルが大型化する。特許文献2に記載の工作機械においては、隙間スペースに長尺工具を配置しているが、パレット交換装置の構造が複雑になってしまう。特許文献3に記載の工作機械においては、主軸の側方に、短尺工具マガジンおよび長尺工具マガジンが配置されているため、短尺工具マガジンの設置スペースが小さくなり、短尺工具の収容数が低減する可能性がある。特許文献4に記載の工作機械においては、主軸頭およびコラムの後方に配置しており、機械本体の設置スペースよりもさらに広いスペースが必要となり、工作機械全体が大型となる。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、工作機械の設置スペースを拡大することを抑制しつつ、簡易な構成により長尺工具を設置して工具交換可能となる工作機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具を保持し、前記窓を通過可能に構成された長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を保持した状態の前記長尺工具保持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置との間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具を保持した状態の前記長尺工具保持部材を、前記主軸頭の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動させる水平動装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、前記上下動装置により前記長尺工具保持部材を前記窓の下方位置に位置させた後に、前記水平動装置により前記長尺工具保持部材を前記主軸頭に接近する方向に移動することによって、前記長尺工具保持部材に保持された前記長尺工具を前記主軸頭に装着するように構成される、工作機械にある。
本発明の他の態様は、
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具を上面に載置する載置台であり、前記長尺工具を保持する長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を把持可能な把持部材と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置の間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具保持部材の下方に固定され、前記上面カバーに対して水平方向に移動可能に設けられ、前記窓を開閉可能に構成され、前記長尺工具保持部材と一体的に移動可能に構成された蓋部材と、
前記長尺工具保持部材および前記蓋部材を、前記上面カバーに対して水平方向に移動させる窓開閉水平動装置と、を備える、工作機械にある。
本発明の他の態様は、
コラムと、
前記コラムに上下方向に移動可能に支持されたサドルと、
前記サドルに設けられ、先端に工具を保持する主軸頭と、
前記サドルの側方に設けられた側面カバーと、
前記サドルの上方に設けられ、窓を有する上面カバーと、
前記側面カバーの外側の側方に隣接して設けられ、工具長さが所定長さ以下である短尺工具を収納する短尺工具マガジンと、
前記短尺工具マガジンと前記主軸頭との間で前記短尺工具の工具交換を行う短尺工具交換装置と、
前記上面カバーの上方に設けられ、前記短尺工具よりも工具長さの長い長尺工具を上面に載置する載置台であり、前記長尺工具を保持する長尺工具保持部材と、
前記長尺工具保持部材と前記主軸頭との間で前記長尺工具の工具交換を行う長尺工具交換装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、
前記長尺工具を把持可能な把持部材と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記窓の上方位置と前記窓の下方位置の間で移動させる上下動装置と、
前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を、前記主軸頭の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動させる把持部材水平動装置と、を備え、
前記長尺工具交換装置は、前記上下動装置により前記長尺工具を把持した状態の前記把持部材を前記窓の下方位置に位置させた後に、前記把持部材水平動装置により前記把持部材を前記主軸頭に接近する方向に移動することによって、前記把持部材に把持された前記長尺工具を前記主軸頭に装着するように構成される、工作機械にある。
【発明の効果】
【0011】
上記工作機械によれば、短尺工具マガジンは、側面カバーの外側の側方に隣接して設けられている。そして、短尺工具交換装置によって、短尺工具マガジンと主軸頭との間で、短尺工具の工具交換が行われる。一方、長尺工具は、上面カバーの上方に設けられた長尺工具保持部材に保持されている。そして、長尺工具交換装置によって、長尺工具保持部材と主軸頭との間で長尺工具の工具交換が行われる。
【0012】
長尺工具保持部材は、短尺工具マガジンとは独立した別の位置に設けられている。そして、上述したように、短尺工具マガジンは、側面カバーの外側の側方に設けられ、長尺工具保持部材は、上面カバーの上方に設けられる。そのため、長尺工具保持部材は、上面カバーの上方であるため、工作機械の設置スペースを大きくする必要がない。
【0013】
さらに、長尺工具保持部材を上面カバーの上方に設けることにより、長尺工具保持部材および長尺工具交換装置が、他の装置構成に影響を及ぼすことがなく設置可能となる。例えば、工作物を載置するテーブル、パレット交換装置、短尺工具マガジンなどとは無関係に、長尺工具保持部材および長尺工具交換装置が設けられている。従って、長尺工具保持部材および長尺工具交換装置の構成が簡易となる。そして、短尺工具マガジンへの影響がないことから、短尺工具マガジンの収容数を少なくすることも必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一実施形態の工作機械の側方(X軸方向)から見た断面図である。
【
図2】
図1における工作機械の紙面上方(Y軸方向)から見た断面図である。
【
図3】
図1における工作機械の紙面右側、すなわち工作機械の後方(Z軸方向)から見た部分断面図である。
【
図4】第一実施形態において長尺工具の交換動作のうち長尺工具保持部材を下降させた状態を示す図である。
【
図5】
図4の工作機械の紙面右側(工作機械の後方)から見た部分断面図である。
【
図6】第一実施形態において長尺工具の交換動作のうち長尺工具を主軸頭に装着させた状態を示す図である。
【
図7】第一実施形態において長尺工具の交換動作のうち長尺工具を長尺工具保持部材から離脱させた状態を示す図である。
【
図8】
図7の工作機械の紙面右側(工作機械の後方)から見た部分断面図である。
【
図9】第一実施形態において長尺工具の交換動作のうち交換完了状態を示す図である。
【
図10】第二実施形態の工作機械の後方(Z軸方向)から見た部分断面図であって、長尺工具保持部材を下降させた状態を示す図である。
【
図11】第三実施形態の工作機械の後方(Z軸方向)から見た部分断面図であって、長尺工具保持部材を下降させた状態を示す図である。
【
図12】第四実施形態の工作機械の側方(X軸方向)から見た断面図である。
【
図13】
図12の工作機械の紙面右側(工作機械の後方)から見た部分断面図である。
【
図14】第四実施形態において一方の長尺工具保持部材により長尺工具を保持した状態で、載置台および蓋部材を水平方向に移動させて、上面カバーの窓を開口させた状態を示す図である。
【
図15】第四実施形態において長尺工具保持部材を下降させた状態を示す図である。
【
図16】
図15の工作機械の紙面右側(工作機械の後方)から見た部分断面図である。
【
図17】第四実施形態において長尺工具の交換動作のうち長尺工具を主軸頭に装着させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.第一実施形態)
(1-1.工作機械1の構成)
工作機械1の構成について
図1~
図3を参照して説明する。
図1に示すように、工作機械1は、少なくとも工具T(回転工具T)の中心軸(主軸頭の回転中心軸)が水平方向となる位置に位置決め可能なマシニングセンタを例にあげる。
【0016】
従って、本形態においては、工作機械1は、工具Tの中心軸が水平方向に一致するように構成される場合を例にあげる。つまり、本形態における工作機械1は、水平方向の直交2軸のうち工具Tの中心軸に一致する方向をZ軸方向とし、水平方向の直交2軸の他方であってZ軸方向に直交する方向をX軸方向とし、鉛直方向をY軸方向とする。
【0017】
なお、工作機械1は、以下に説明する構成の他に、工具Tの中心軸が水平方向に一致する姿勢に加えて、工具Tの中心軸が水平方向とは異なる方向となるように、工具Tの姿勢を変更可能な構成とすることも可能である。この場合、工作機械1は、例えば、工具Tを保持する主軸頭5(後述する)の姿勢を変更するための旋回機構を備え、工具Tの中心軸が、水平方向と垂直方向との間で変化するようにされる。
【0018】
本形態における工作機械1は、ベッド2、コラム3、サドル4、主軸頭5、テーブル6、一対のパレット7a,7b、パレット交換装置8、全体カバー9を備える。ここで、本形態における工作機械1においては、工具Tを保持する主軸頭5が、ベッド2に対してX軸方向およびY軸方向に移動し、工作物Wa,Wbを保持するテーブル6がベッド2に対してZ軸方向に移動する構成を例にあげる。ただし、工作機械1は、少なくとも主軸頭5がY軸方向に移動する構成とし、主軸頭5およびテーブル6のいずれがX軸方向およびZ軸方向に移動する構成としても良い。
【0019】
ベッド2は、工作機械1の設置面上に設置される。本形態においては、ベッド2は、例えば、長方形状の上面を有する。ただし、ベッド2の形状は、任意の形状とすることができる。ベッド2の上面には、X軸方向(
図1の紙面垂直方向)に延在するX軸ガイド21、Z軸方向(
図1の左右方向)に延在するZ軸ガイド22が設けられている。
【0020】
コラム3は、ベッド2の上面に支持される。本形態においては、コラム3は、ベッド2におけるX軸ガイド21に支持されている。そして、コラム3は、ベッド2に対してX軸方向(水平方向)に移動可能に支持されている。コラム3は、ボールねじ装置やリニアモータなどのX軸駆動装置(図示せず)により直動駆動される。ただし、コラム3は、ベッド2に固定されるようにしても良いし、ベッド2に対してZ軸方向に移動可能に設けられるようにしても良い。また、コラム3は、
図1に示すように、Z軸方向(
図1の左右方向)を法線とする面に、Y軸方向に延在するY軸ガイド31を備える。
【0021】
サドル4は、コラム3におけるY軸ガイド31に支持されている。そして、サドル4は、コラム3に対してY軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。サドル4は、ボールねじ装置やリニアモータなどのY軸駆動装置(図示せず)により直動駆動される。主軸頭5は、サドル4に設けられ、先端に工具Tを保持する。主軸頭5は、工具Tを着脱可能である。従って、主軸頭5に装着される工具Tは、交換可能となる。主軸頭5は、主軸ハウジングと、主軸ハウジングに回転可能に支持された主軸とを備えており、主軸の先端に工具Tが保持される。
【0022】
ここで、主軸頭5に保持される工具Tには、短尺工具Taおよび長尺工具Tbが存在する。従って、主軸頭5には、短尺工具Taが装着されたり、長尺工具Tbが装着されたりする。
図1には、主軸頭5が短尺工具Taを保持する状態を示している。
【0023】
短尺工具Taは、工具長さが所定長さ以下の工具であって、長尺工具Tbは、工具長さが所定長さよりも長い工具である。本形態において、所定長さは、後述する短尺工具マガジン13に収容可能な工具長さの上限値に設定されている。短尺工具Taは、例えば、エンドミル、ドリル、フライスカッタ、ギヤスカイビングカッタ、ホブカッタなどの回転工具である。長尺工具Tbは、ボーリング工具などの回転工具である。
【0024】
テーブル6は、工作物Wa,Wbの一方を支持する。ただし、本形態においては、テーブル6は、後述するパレット7a,7bの一方を介して、工作物Wa,Wbの一方を支持する。
【0025】
テーブル6は、ベッド2におけるZ軸ガイド22に支持されている。そして、テーブル6は、ベッド2に対してZ軸方向に移動可能に支持されている。従って、テーブル6は、主軸頭5に対して、水平方向において相対的に接近したり離間したりする。ただし、テーブル6は、ベッド2に固定されるようにしても良いし、ベッド2に対してX軸方向に移動可能に設けられるようにしても良い。
【0026】
テーブル6は、テーブル本体41と、回転テーブル42とを備える。テーブル本体41は、Z軸ガイド22に支持され、ベッド2に対してZ軸方向に移動する。回転テーブル42は、テーブル本体41の上面に、鉛直軸線回り(B軸)に回転可能に支持されている。テーブル本体41は、ボールねじ装置やリニアモータなどのZ軸駆動装置(図示せず)により直動駆動される。回転テーブル42は、モータなどのB軸駆動装置(図示せず)により回転駆動される。
【0027】
パレット7a,7bは、工作物Wa,Wbを支持する。パレット7a,7bは、工作物取付用治具(図示せず)を介して、工作物Wa,Wbを固定しても良い。さらに、パレット7a,7bは、テーブル6の上面に対して着脱可能に設けられている。本形態においては、パレット7a,7bは、回転テーブル42の上面に対して着脱可能である。
【0028】
パレット交換装置8は、鉛直軸線回りに旋回可能な一対の旋回アーム8a,8bを有し、一対のパレット7a,7bを保持可能である。パレット交換装置8は、一対の旋回アーム8a,8bの鉛直軸線回りの180度の旋回動作によって、Z軸方向において主軸頭5側に位置するテーブル6への設置位置と、主軸頭5から遠い側に位置する段取位置の載置台8cとの間で、一対のパレット7a,7bを交換する。ただし、
図1は、パレット交換装置8が、一方のパレット7bを保持し、他方のパレット7aをテーブル6に引き渡した後の状態であって当該パレット7aを保持していない状態を示す。
【0029】
全体カバー9は、ベッド2に取り付けられており、工作機械1のベッド2上の要素を囲むカバーである。特に、全体カバー9は、加工領域MA、非加工領域UA、段取領域PAを囲む。本形態においては、全体カバー9は、左前面カバー51、右前面カバー52、左側面カバー53、右側面カバー54、背面カバー55、上面カバー56を備える。
【0030】
左前面カバー51および右前面カバー52は、工作機械1の前面(
図1の左側)の一部に設けられている。左前面カバー51と右前面カバー52との間は、パレット交換装置8における段取位置の載置台8cに位置するパレット7b上の工作物Wbを交換する作業場所となる。左前面カバー51と右前面カバー52との間には、前面扉(図示せず)が設けられている。
【0031】
左側面カバー53および右側面カバー54は、コラム3およびサドル4が配置されている非加工領域UAの側方、加工領域MAの側方、および、パレット交換装置8における段取領域PAの側方を覆うように設けられている。
【0032】
左側面カバー53には、加工領域MAに対応する位置に、短尺工具Taの工具交換用の窓53aを備える。右側面カバー54には、加工領域MAに対応する位置に、作業者による作業用窓54aを備える。作業用窓54aには、開閉するための作業用扉54bが設けられている。背面カバー55は、コラム3が配置されている非加工領域UAの背面を覆う。上面カバー56は、ベッド2の上方を全面に亘って覆う。上面カバー56には、長尺工具Tbの工具交換用の窓56aを備える。
【0033】
ここで、加工領域MAは、左側面カバー53および右側面カバー54に加えて、パレット交換装置8を構成する旋回カバー8dにより区画されている。さらに、工作機械1は、加工領域区画カバー11,12を備える。加工領域区画カバー11,12は、例えば、テレスコピックカバーや蛇腹カバーなどにより構成されている。加工領域区画カバー11,12は、加工領域MAと、コラム3およびサドル4が配置されている非加工領域UAとを区画する。さらに、加工領域区画カバー11,12は、主軸頭5のX軸方向およびY軸方向の移動に追従する。
【0034】
さらに、工作機械1は、短尺工具マガジン13、短尺工具交換装置14、長尺工具保持部材15、長尺工具交換装置16を備える。短尺工具マガジン13および短尺工具交換装置14は、工作機械1の側方に設けられ、長尺工具保持部材15および長尺工具交換装置16は、工作機械1の上方に設けられる。
【0035】
短尺工具マガジン13は、複数のツールポット(登録商標)61を有しており、複数のツールポット(登録商標)61に複数の短尺工具Taを収納する。短尺工具マガジン13は、左側面カバー53の外側の側方に隣接して設けられる。より詳細には、短尺工具マガジン13は、コラム3、サドル4および主軸頭5の側方に位置する。短尺工具マガジン13は、例えば、円盤のタレットタイプ、チェーンタイプ、マトリックスタイプなどを適用できる。
【0036】
短尺工具マガジン13は、複数の短尺工具Taを保持可能な複数のツールポット(登録商標)61を備えており、ツールポット(登録商標)61が移動可能に設けられている。短尺工具マガジン13は、例えば、短尺工具Taがツールポット(登録商標)61に保持された状態において、短尺工具Taの中心軸方向が側方(X軸方向)に向くように構成されている。従って、短尺工具マガジン13のX軸方向の幅は、短尺工具Taに分類される最大長さに対応する。また、短尺工具マガジン13は、外側を覆うマガジンカバー62を備える。
【0037】
短尺工具交換装置14は、短尺工具マガジン13と主軸頭5との間で短尺工具Taの工具交換を行う。短尺工具Taの工具交換とは、短尺工具マガジン13から搬出された短尺工具Taを主軸頭5に装着し、かつ、主軸頭5から取り外した短尺工具Taを短尺工具マガジン13に搬入することである。
【0038】
短尺工具交換装置14は、例えば、ターン装置71、交換アーム72およびシャッター73を備える。ターン装置71は、所定位置(交換アーム72に最も近い位置)に位置するツールポット(登録商標)61の姿勢を変更する。詳細には、ターン装置71は、所定位置に位置するツールポット(登録商標)61の中心軸をX軸方向に向いている状態から、
図Z軸方向に向く状態へ旋回させる。
【0039】
交換アーム72は、例えば、S字状に形成され、両端に短尺工具Taを保持可能に構成されている。交換アーム72の一端が、主軸頭5に保持された短尺工具Taを保持し、他端が、ターン装置71に保持された短尺工具Taを保持する。そして、交換アーム72が旋回することにより、主軸頭5とターン装置71との間で短尺工具Taを工具交換する。
【0040】
短尺工具交換装置14のシャッター73は、全体カバー9の左側面カバー53のうち、交換アーム72に近接する位置に設けられた窓を開閉可能に設けられている。シャッター73は、交換アーム72により短尺工具Taの工具交換を行うタイミングにて、窓を開口させる。一方、シャッター73は、工具交換を行わないときには、窓を閉塞している。
【0041】
長尺工具保持部材15は、長尺工具Tbを保持する。長尺工具Tbを上面に載置する載置台81により構成される。載置台81は、例えば、長尺工具Tbのホルダ部分と、長尺工具Tbの工具軸部分とを保持する。より詳細には、載置台81は、長尺工具Tbのホルダ部分のうち、係止溝部分(交換アーム72に係止される係止溝と同様の形状部分)や、主軸頭5に嵌合されるシャンク部分などを保持することができる。載置台81は、例えば、V字状、U字状、円弧凹状などに形成される。
【0042】
また、長尺工具保持部材15は、載置台81に設けられたロック機構82を備える。ロック機構82は、載置台81におけるV字状などの両先端部分に、載置台81に長尺工具Tbを載置した状態を維持するために長尺工具Tbに係止可能に構成されている。ロック機構82は、例えば、プランジャなどにより構成される。
【0043】
長尺工具保持部材15は、基準状態においては、上面カバー56の上方に設けられている。基準状態とは、長尺工具Tbの工具交換を行っていない状態である。詳細には、長尺工具保持部材15は、加工領域MAの上方に設けられている。また、本形態においては、工作機械1は、複数(2個)の長尺工具保持部材15を備える。複数の長尺工具保持部材15は、上面カバー56の上方において、長尺工具Tbの中心軸方向が主軸頭5の回転中心の軸方向に一致する姿勢で、長尺工具Tbを保持する。そして、複数の長尺工具保持部材15が、X軸方向に並列して設けられている。
【0044】
また、長尺工具保持部材15は、長尺工具Tbを保持した状態で、上面カバー56の窓56aを通過可能に構成されている。本形態においては、2個の長尺工具保持部材15が、同時に、上面カバー56の窓56aを通過可能に構成されている。
【0045】
長尺工具交換装置16は、長尺工具保持部材15と主軸頭5との間で長尺工具Tbの工具交換を行う。長尺工具Tbの工具交換とは、上面カバー56の上方において長尺工具保持部材15に保持された状態の長尺工具Tbを主軸頭5に装着し、かつ、主軸頭5から取り外した長尺工具Tbを、上面カバー56の上方において長尺工具保持部材15に保持された状態にすることである。
【0046】
長尺工具交換装置16は、基準状態においては、長尺工具保持部材15と同様に、上面カバー56の上方に設けられている。長尺工具交換装置16は、長尺工具Tbを保持した状態の長尺工具保持部材15を、上面カバー56の窓56aの上方位置と下方位置との間で上下方向に移動可能に構成されると共に、主軸頭5の回転中心の軸方向に一致する水平方向に移動可能に構成される。長尺工具交換装置16は、蓋部材91、水平動装置92、上下動装置93を備える。
【0047】
蓋部材91は、長尺工具保持部材15を構成する載置台81の下方に固定される。蓋部材91は、上面カバー56の窓56aよりも下方、すなわち加工領域MA側に位置する。そして、蓋部材91は、長尺工具保持部材15が窓56aの上方位置に位置する状態において上面カバー56の窓56aを閉塞する。
【0048】
蓋部材91は、窓56aを閉塞する状態から下方へ移動可能である。蓋部材91は、窓56aから下方へ離れることによって、窓56aを開口した状態にする。このように、蓋部材91は、窓56aを開閉可能に構成される。また、蓋部材91は、長尺工具保持部材15に固定されているため、長尺工具保持部材15と一体的に移動可能に構成されている。そのため、蓋部材91を移動させるための専用の駆動装置が不要となる。
【0049】
水平動装置92は、上面カバー56の上方に設けられ、長尺工具保持部材15を主軸頭5の回転中心の軸方向に平行な水平方向に移動可能に構成される。水平動装置92は、一対のフレーム101、一対の水平ガイド102、水平移動体103、駆動装置104を備える。
【0050】
一対のフレーム101は、上面カバー56の上面に支持されており、Z軸方向に延在するように設けられる。また、一対のフレーム101は、X軸方向に離間して設けられる。一対の水平ガイド102は、一対のフレーム101のそれぞれに、Z軸方向に延在するように設けられている。一対の水平ガイド102は、一対のフレーム101の上面に設けられるようにしても良いし、一対のフレーム101の側面に設けられるようにしても良い。
【0051】
水平移動体103は、一対の水平ガイド102に跨って支持されている。そして、水平移動体103は、Z軸方向に移動可能に支持されている。水平移動体103は、例えば、水平面上に平行な板状に形成されている場合を例にあげるが、任意の形状とすることができる。
【0052】
駆動装置104は、一対のフレーム101に設けられており、水平移動体103を一対のフレーム101に対して一対の水平ガイド102に沿って移動する。駆動装置104は、例えば、油圧や空圧のシリンダにより構成される。駆動装置104は、ボールねじ機構やリニアモータなどにより構成されるようにしても良い。駆動装置104は、制御装置の指令に基づいて駆動される。
【0053】
上下動装置93は、上面カバー56の上方に設けられ、長尺工具保持部材15を窓56aの上方位置と下方位置との間で上下方向に移動可能に構成される。上下動装置93は、水平動装置92によって、長尺工具保持部材15と一体的に水平方向に移動可能に構成される。上下動装置93は、上下動壁部材111、一対の上下動ガイド112、上下移動体113、支持軸部材114、駆動装置115を備える。
【0054】
上下動壁部材111は、水平移動体103に固定されており、上下方向に延在する壁状に設けられている。上下動壁部材111における壁面の法線方向がZ軸方向に一致するように設けられているが、当該構成に限定されるものではない。上下動壁部材111は、一対のフレーム101の間(X軸方向の間)に位置し、一対のフレーム101に対して上方位置から下方位置に亘って延在する。
【0055】
一対の上下動ガイド112は、上下動壁部材111の壁面に、上下方向に延在するように設けられている。上下移動体113は、一対の上下動ガイド112に跨って支持されている。そして、上下移動体113は、上下方向(Y軸方向)に移動可能に支持されている。
【0056】
支持軸部材114は、上下移動体113に固定されており、上下方向に延在する軸部材である。支持軸部材114の下端は、蓋部材91の上面に固定されており、蓋部材91を上下動させる。また、蓋部材91は、長尺工具保持部材15に固定されているため、支持軸部材114は、蓋部材91を介して長尺工具保持部材15に固定されており、長尺工具保持部材15を上下方向に移動させるように構成されている。
【0057】
駆動装置115は、上下動壁部材111に設けられおり、上下移動体113および支持軸部材114を上下動壁部材111に対して一対の上下動ガイド112に沿って移動する。駆動装置115は、例えば、ボールねじ機構やリニアモータなどにより構成される。駆動装置115は、油圧や空圧のシリンダにより構成されるようにしても良い。駆動装置115は、制御装置の指令に基づいて駆動される。
【0058】
(1-2.工作機械1の動作)
工作機械1の動作、特に、長尺工具Tbの交換に関する動作について、
図4~
図9を参照して説明する。まず、動作の開始状態としての基準状態では、蓋部材91が上面カバー56の窓56aを閉塞している。従って、長尺工具保持部材15は、上面カバー56の上方に位置し、かつ、水平動装置92および上下動装置93も上面カバー56の上方に位置する。
【0059】
さらに、
図4に示すように、主軸頭5およびサドル4を、Y軸方向に移動することによって、コラム3における上方位置に位置する長尺工具交換位置に移動する。さらに、テーブル6を、Z軸方向に移動することによって、主軸頭5およびサドル4から離間させた長尺工具交換位置、すなわちパレット交換位置に移動する。
【0060】
そして、
図4および
図5に示すように、上下動装置93により、長尺工具Tbを保持した状態の長尺工具保持部材15を、上面カバー56の窓56aの下方位置に下降させる。蓋部材91は、長尺工具保持部材15の載置台81の下面に固定されており、上下動装置93の支持軸部材114の下端に固定されている。従って、上下動装置93により、長尺工具保持部材15を下降させると、蓋部材91も一緒に下降して、上面カバー56の窓56aが開口する。そのため、長尺工具保持部材15は、開口した窓56aを通過することができる。そして、上下動装置93により、長尺工具保持部材15を、長尺工具保持部材15により保持された長尺工具Tbの中心軸が主軸頭5の中心軸に一致する位置に位置決めする。
【0061】
続いて、
図6に示すように、水平動装置92により、長尺工具Tbを保持した状態の長尺工具保持部材15を、主軸頭5の回転中心の軸方向のうち主軸頭5に接近する方向に水平移動させる。この動作によって、長尺工具保持部材15に保持された長尺工具Tbが、主軸頭5に装着される。なお、主軸頭5において、装着された長尺工具Tbは、図示しないクランプ機構などによってクランプされる。
【0062】
ここで、水平動装置92は、長尺工具保持部材15のみならず、蓋部材91および上下動装置93も水平移動させる。つまり、加工領域MAにおいて、長尺工具保持部材15に加えて、蓋部材91および上下動装置93の支持軸部材114も主軸頭5に接近する。ただし、長尺工具Tbが主軸頭5に装着されるまでの間において、蓋部材91および支持軸部材114は、主軸頭5や周囲の部材に干渉しないように構成されている。
【0063】
続いて、
図7および
図8に示すように、上下動装置93により、長尺工具保持部材15を少し下降させる。このとき、長尺工具Tbは主軸頭5に装着されている。長尺工具保持部材15は、載置台81の先端部分にロック機構82を備える。ロック機構82が長尺工具Tbに係止することによって、長尺工具Tbが載置台81に載置された状態が維持される。
【0064】
そして、長尺工具保持部材15の下降により、ロック機構82による長尺工具Tbに対する係止が解除されて、長尺工具保持部材15が、主軸頭5に装着された長尺工具Tbから離脱する。ロック機構82は、例えば、プランジャなどにより構成されるため、容易に係止状態を解除できる。
【0065】
続いて、
図9に示すように、水平動装置92および上下動装置93により、長尺工具保持部材15を元の位置、すなわち上面カバー56の上方位置に移動する。具体的には、まず、水平動装置92により、長尺工具保持部材15を、主軸頭5の回転中心の軸方向のうち主軸頭5から離間する方向に水平移動させる。
【0066】
続いて、上下動装置93により、長尺工具保持部材15を上昇させて、上面カバー56の窓56aを通過させて上面カバー56の上方位置に位置決めする。この状態において、長尺工具保持部材15の載置台81の下面に固定されている蓋部材91が、上面カバー56の窓56aを閉塞する。つまり、蓋部材91は、加工領域MAと上面カバー56の上方領域とを区画する。このようにして、長尺工具保持部材15および長尺工具交換装置16は、基準状態に戻る。そして、長尺工具Tbによる工作物Waに対する加工が開始される。
【0067】
主軸頭5に装着されている長尺工具Tbを取り外す場合には、上記の動作の逆の動作を行う。また、主軸頭5に長尺工具Tbが装着されている状態を初期状態として、主軸頭5に別の長尺工具Tbを装着する場合には、次のように行われる。
【0068】
まず、水平動装置92および上下動装置93を動作させることにより、長尺工具Tbを保持していない一方の長尺工具保持部材15に、主軸頭5に装着されている長尺工具Tbを載置して、主軸頭5から長尺工具Tbを取り外す。続いて、水平動装置92および上下動装置93を動作させることにより、他方の長尺工具保持部材15に保持されている交換用の長尺工具Tbを、主軸頭5に装着する。そして、長尺工具保持部材15を上面カバー56の上方位置に移動させる。
【0069】
(1-3.効果)
第一実施形態の工作機械1によれば、短尺工具マガジン13は、左側面カバー53の外側の側方に隣接して設けられている。そして、短尺工具交換装置14によって、短尺工具マガジン13と主軸頭5との間で、短尺工具Taの工具交換が行われる。一方、長尺工具Tbは、上面カバー56の上方に設けられた長尺工具保持部材15に保持されている。そして、長尺工具交換装置16によって、長尺工具保持部材15と主軸頭5との間で長尺工具Tbの工具交換が行われる。
【0070】
長尺工具保持部材15は、短尺工具マガジン13とは独立した別の位置に設けられている。そして、上述したように、短尺工具マガジン13は、左側面カバー53の外側の側方に設けられ、長尺工具保持部材15は、上面カバー56の上方に設けられる。そのため、長尺工具保持部材15は、上面カバー56の上方であるため、工作機械1の設置スペースを大きくする必要がない。
【0071】
さらに、長尺工具保持部材15を上面カバー56の上方に設けることにより、長尺工具保持部材15および長尺工具交換装置16が、他の装置構成に影響を及ぼすことがなく設置可能となる。例えば、工作物Wa,Wbを載置するテーブル6、パレット交換装置8、短尺工具マガジン13などとは無関係に、長尺工具保持部材15および長尺工具交換装置16が設けられている。従って、長尺工具保持部材15および長尺工具交換装置16の構成が簡易となる。そして、短尺工具マガジン13への影響がないことから、短尺工具マガジン13の収容数を少なくすることも必要ない。
【0072】
また、長尺工具保持部材15は、長尺工具Tbを上面に載置する載置台81により構成されている。従って、長尺工具保持部材15の構成が容易な構成となると共に、長尺工具Tbを長時間安定して保持することが可能となる。さらに、長尺工具保持部材15は、ロック機構82を備えることにより、長尺工具Tbを載置台81に載置した状態を確実に維持することができる。
【0073】
さらに、長尺工具交換装置16は、長尺工具保持部材15の下方に固定され、上面カバー56の窓56aを開閉可能に構成され、長尺工具保持部材15と一体的に移動可能に構成された蓋部材91を備える。従って、蓋部材91を駆動する機構が、長尺工具保持部材15を駆動する機構と兼用できる。
【0074】
さらに、長尺工具交換装置16は、上下動装置93に加えて、水平動装置92を備える。つまり、長尺工具交換装置16は、長尺工具保持部材15を上下方向かつ水平方向に移動することができる。このような構成により、長尺工具保持部材15と主軸頭5との間で、長尺工具Tbの工具交換を容易に行うことができる。
【0075】
(2.第二実施形態)
第二実施形態の工作機械200について
図10を参照して説明する。第二実施形態の工作機械200は、第一実施形態の工作機械1に対して、長尺工具保持部材210のみ相違する。他の共通する構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
長尺工具保持部材210は、上下動装置93の支持軸部材114に固定されたベース部211と、ベース部211の下方に設けられた複数の把持部材212とを備える。ベース部211は、例えば、水平方向に延在する平板により構成される。
【0077】
把持部材212は、長尺工具Tbを把持可能に構成される。把持部材212は、例えば、把持爪や把持アームなどにより構成される。把持部材212は、下端が開口するように設けられている。把持部材212は、長尺工具Tbを把持すると共に、把持状態を解放することができる。把持部材212は、ベース部211に対して揺動可能に設けても良いし、スライド可能に設けても良い。
【0078】
第二実施形態の工作機械200による長尺工具Tbの工具交換は、第一実施形態に対して、長尺工具保持部材210により長尺工具Tbを離脱する場合および把持する場合の動作が異なるのみで、他は同一である。長尺工具保持部材210による長尺工具Tbの離脱および把持の動作は、把持部材212の開閉動作により行われる。第二実施形態の工作機械200においても、第一実施形態の工作機械1と同様の効果を奏する。
【0079】
(3.第三実施形態)
第三実施形態の工作機械300について
図11を参照して説明する。第三実施形態の工作機械300は、第二実施形態の工作機械200に対して、蓋部材310のみ相違する。他の共通する構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0080】
第三実施形態の工作機械300において、蓋部材310は、長尺工具保持部材210を固定されていない。蓋部材310は、上面カバー56に沿ってスライド可能となるように、上面カバー56に設けられており、上面カバー56の窓56aを開閉可能に構成されている。本形態においては、長尺工具Tbの工具交換は、蓋部材310が水平方向にスライドして窓56aを開口した状態で行われ、工具交換が終了した場合に、蓋部材310がスライドして窓56aを閉塞する。
【0081】
(4.第四実施形態)
第四実施形態の工作機械400について
図12~
図17を参照して説明する。第四実施形態の工作機械400は、第一実施形態の工作機械1に対して、長尺工具保持部材410、蓋部材420、窓開閉水平動装置430、長尺工具交換装置16を構成する把持ユニット440が相違する。他の共通する構成は、同一符号を付して説明を省略する。
【0082】
図12および
図13に示すように、長尺工具保持部材410は、第一実施形態の長尺工具保持部材15と同様の形状に形成されている。つまり、長尺工具保持部材410は、載置台81(
図3に示す)およびロック機構82により構成される。長尺工具保持部材410は、上面カバー56の窓56aの上方に常に位置する。
【0083】
蓋部材420は、長尺工具保持部材410の下面に固定されている。蓋部材420は、上面カバー56の上方において、上面カバー56にスライド可能に設けられており、上面カバー56の窓56aを開閉可能に構成されている。本形態においては、長尺工具Tbの工具交換は、蓋部材310がスライドして窓56aを開口した状態で行われ、工具交換が終了した場合に、蓋部材310がスライドして窓56aを閉塞する。また、蓋部材420は、長尺工具保持部材410に固定されているため、蓋部材420のスライドに伴って、長尺工具保持部材410も上面カバー56に対してスライドする。
【0084】
窓開閉水平動装置430は、上面カバー56の上面に設けられ、上面カバー56に対して蓋部材420をスライドする。つまり、窓開閉水平動装置430によって、蓋部材420がスライドし、窓56aを開閉する。窓開閉水平動装置430は、シリンダ、ボールねじ、リニアモータなどを適用できる。
【0085】
把持ユニット440は、上下動装置93の支持軸部材114に固定されたベース部441と、ベース部441に設けられた複数の把持部材442とを備える。把持ユニット440のベース部441は、上下動装置93の支持軸部材114に固定されているため、把持ユニット440は、上下動装置93の支持軸部材114と一体的に移動する。
【0086】
ベース部441は、例えば、水平方向に延在する平板により構成される。把持部材442は、長尺工具Tbを把持可能に構成される。把持部材442は、例えば、把持爪や把持アームなどにより構成される。把持部材442は、長尺工具Tbを把持すると共に、把持状態を解放することができる。把持部材442は、ベース部441に対して揺動可能に設けても良いし、スライド可能に設けても良い。
【0087】
次に、第四実施形態の工作機械400において長尺工具Tbの交換に関する動作について説明する。
図14に示すように、把持ユニット440の把持部材442により、長尺工具保持部材410に保持されている1つの長尺工具Tbを把持する。続いて、上下動装置93(把持部材上下動装置)により、把持ユニット440を上昇させる。つまり、把持ユニット440が、1つの長尺工具Tbを把持した状態で持ち上げる。
【0088】
続いて、
図14に示すように、窓開閉水平動装置430により、蓋部材420を上面カバー56に対してスライドさせて、上面カバー56の窓56aを開口する。上述したように、把持ユニット440によって1つの長尺工具Tbが把持されているため、蓋部材420と一緒にスライドする1つの長尺工具保持部材410には、長尺工具Tbが保持されていない。
【0089】
続いて、
図15および
図16に示すように、上下動装置93により、長尺工具Tbを把持した状態の把持ユニット440を下降させる。把持ユニット440および把持ユニット440に把持されている長尺工具Tbは、上面カバー56の窓56aを通過して加工領域MAに進入する。そして、上下動装置93により、把持ユニット440を、把持ユニット440により把持された長尺工具Tbの中心軸が主軸頭5の中心軸に一致する位置に位置決めする。
【0090】
続いて、
図17に示すように、水平動装置92(把持部材水平動装置)により、長尺工具Tbを把持した状態の把持ユニット440を、主軸頭5の回転中心の軸方向のうち主軸頭5に接近する方向に水平移動させる。この動作によって、把持ユニット440に把持された長尺工具Tbが、主軸頭5に装着される。なお、主軸頭5において、装着された長尺工具Tbは、図示しないクランプ機構などによってクランプされる。
【0091】
続いて、把持ユニット440の把持部材442が長尺工具Tbを解放した状態にして、上記の逆の動作を行う。このようにして、長尺工具保持部材410に保持されていた長尺工具Tbが、主軸頭5に装着される。また、主軸頭5に装着されている長尺工具Tbを取り外す場合には、上記の動作の逆の動作を行う。第四実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0092】
1,200,300,400 工作機械
3 コラム
4 サドル
5 主軸頭
13 短尺工具マガジン
14 短尺工具交換装置
15,210,410 長尺工具保持部材
16 長尺工具交換装置
53 左側面カバー
53a 短尺工具交換用の窓
56 上面カバー
56a 長尺工具交換用の窓
Ta 短尺工具
Tb 長尺工具