(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】管理装置、及び、材料試験機の管理システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/34 20060101AFI20241224BHJP
G01N 3/06 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
G01N3/34 A
G01N3/06
(21)【出願番号】P 2021117695
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西村 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】松浦 融
(72)【発明者】
【氏名】牧 翔太
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-121065(JP,A)
【文献】特開2013-229053(JP,A)
【文献】特開2008-210275(JP,A)
【文献】特開2013-065188(JP,A)
【文献】特開2017-173083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料試験機のパラメータを取得する取得部と、
前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定し、
前記判定部は、前記状態遷移図を構成する有限オートマトンを、前記パラメータの値に基づき状態遷移させ、状態遷移後の前記有限オートマトンの状態をもとに前記材料試験機の状態を判定する、管理装置。
【請求項2】
前記有限オートマトンは、遷移条件を満たす値が入力された場合に状態遷移し、
前記判定部は、前記パラメータを入力用の値に変換し、変換後の値を前記有限オートマトンに入力する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記材料試験機を識別する識別情報に対応づけて、前記判定部によって判定された前記材料試験機の状態をディスプレイに表示する表示制御部を備える、請求項1又は請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記取得部は、複数の前記材料試験機の前記パラメータを取得し、
前記判定部は、前記複数の材料試験機の各々について状態を判定する、請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記複数の材料試験機の各々について、前記判定部によって判定した前記材料試験機の状態と前記識別情報とを対応づけて前記ディスプレイに表示する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記複数の材料試験機は第1材料試験機及び第2材料試験機を含み、
前記管理装置は、前記第1材料試験機の動作を制御する試験制御部を備え、
前記管理装置は、前記第2材料試験機を制御する制御装置に接続され、
前記取得部は、前記第1材料試験機及び前記第2材料試験機の前記パラメータを取得する、請求項
4又は請求項5
に記載の管理装置。
【請求項7】
前記複数の材料試験機の各々に接続され、
前記取得部は、前記複数の材料試験機の各々と通信を実行することによって前記パラメータを取得する、請求項
4又は請求項5
に記載の管理装置。
【請求項8】
材料試験機と、前記材料試験機の状態を管理する管理装置と、を備える、材料試験機の管理システムであって、
前記管理装置は、
材料試験機のパラメータを取得する取得部と、
前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定し、
前記判定部は、前記状態遷移図を構成する有限オートマトンを、前記パラメータの値に基づき状態遷移させ、状態遷移後の前記有限オートマトンの状態をもとに前記材料試験機の状態を判定する、材料試験機の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、及び、材料試験機の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、材料試験機の動作状態は、材料試験機のユーザによって管理されている。例えば、特許文献1に記載の疲労試験機は、試験を制御する制御装置が表示器を備え、試験条件等を表示器に表示する。ユーザは、表示器の表示を目視することによって、疲労試験機の動作状態を把握し、管理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
材料試験機を管理するユーザは、管理対象の材料試験機の表示を目視して、材料試験機の動作状態を確認していた。このため、ユーザが材料試験機の設置場所に出向く必要があり、ユーザの負担を軽減することが望まれていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ユーザが材料試験機の状態を容易に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る管理装置は、材料試験機のパラメータを取得する取得部と、前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定する。
【0007】
本発明の第2態様に係る管理システムは、材料試験機と、前記材料試験機の状態を管理する管理装置と、を備える、材料試験機の管理システムであって、前記管理装置は、材料試験機のパラメータを取得する取得部と、前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係る管理装置、及び本発明の第2態様に係る材料試験機の管理システムは、パラメータに基づいて材料試験機の状態を遷移させることによって、材料試験機の状態を適切に判定できる。したがって、ユーザが直接、材料試験機の状態を目視して確認する手間を省くことができ、材料試験機の管理に係るユーザの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る管理システムの構成の一例を示す図である。
【
図3】第1制御装置及び第2制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】有限オートマトンの構成の一例を示す状態遷移図である。
【
図5】有限オートマトンの入力値と動作状態との対応の一例を示す図表である。
【
図6】疲労試験機の状態を表示する状態表示画面の一例を示す図である。
【
図7】第2制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る管理システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本実施形態について説明する。
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.管理システムの構成]
図1は、第1実施形態に係る管理システム100の構成の一例を示す図である。
管理システム100は、疲労試験機1、及び、疲労試験機3を備える。管理システム100は、複数の疲労試験機1A、1B、1Cを含む。疲労試験機1A、1B、1Cは、互いに略同一の構成を有する。そこで、本実施形態では、疲労試験機1A、1B、1Cを区別しない場合に疲労試験機1と記載する。
図1には、管理システム100が3台の疲労試験機1を備える構成を例示するが、疲労試験機1の数に制限はない。
管理システム100は、材料試験機の管理システムの一例に対応する。疲労試験機1は材料試験機の一例に対応する。
【0012】
疲労試験機1は、試験機本体10、及び、第1制御装置20を備える。疲労試験機1は、試験機本体10を第1制御装置20によって制御することにより、試験片SPの疲労試験を行う。例えば、疲労試験機1は、試験片SPに引張応力σを繰り返し印加する。引張応力σ及び繰り返し回数は、予め設定される。繰り返し回数は、例えば、102回~108回である。
【0013】
疲労試験機3は、試験機本体10、及び、第2制御装置40を備える。疲労試験機3が備える試験機本体10は、疲労試験機1が備える試験機本体10と同一の構成を有する。疲労試験機3は、試験機本体10を第2制御装置40によって制御することにより、疲労試験機1と同様に、試験片SPの疲労試験を行う。
【0014】
疲労試験機3は、ネットワークNWを介して、疲労試験機1A、1B、1Cの各々と通信可能に接続される。疲労試験機3は、疲労試験機1A、1B、1Cの各々の動作状態を管理する。
疲労試験機1、及び疲労試験機3の構成については
図3を参照して後述する。
【0015】
ネットワークNWは、本実施形態では、LAN(Local Area Network)である。また、ネットワークNWは、例えば、Ethernet(登録商標)規格のケーブル等で構成される。ネットワークNWは、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信回線により構成されてもよい。また、本実施形態では、ネットワークNWがLANである場合について説明するが、ネットワークNWはWAN(Wide Area Network)であってもよいし、インターネットであってもよい。
【0016】
[1-2.疲労試験機の構成]
図2は、疲労試験機1の構成の一例を示す図である。
試験機本体10は、第1制御装置20からの指示に従って、試験片SPの疲労試験を実行する。第1制御装置20は、試験機本体10の動作を制御する。
【0017】
図2に示すように、試験機本体10は、基台11上に、一対の支柱12a,12bと、ヨーク13と、によって負荷枠を形成し、支柱12a,12bに、クロスヘッド14を固定して構成される。
【0018】
基台11には、油圧アクチュエータ15が配置され、油圧アクチュエータ15のピストンロッド15aには、試験片SPの下端を固定する下部治具16aが取り付けられる。また、クロスヘッド14には、ロードセル17を介して、試験片SPの上端を固定する上部治具16bが取り付けられる。下部治具16a、及び、上部治具16bは、それぞれ、試験片SPを把持するチャック機構を備える。
ロードセル17は、試験片SPに作用する試験力を検出する。
【0019】
油圧アクチュエータ15は、サーボ弁18によって、圧油方向と圧油量とが制御されて、ピストンロッド15aが伸縮する。その結果、上部治具16bと下部治具16aとの間に固定された試験片SPに試験力が印加される。油圧アクチュエータ15のストローク、すなわち試験片SPの変位は、油圧アクチュエータ15に取り付けられた差動トランス19によって検出される。
【0020】
試験機本体10には、不図示の電力源及び油圧源が設けられる。電力源は、試験機本体10の各部に電力を供給する。電力源は、例えば各種モータに電力を供給し、駆動する。油圧源は、試験機本体10を構成する油圧装置に油圧を供給する。油圧源は、例えば、油圧アクチュエータ15に油圧を供給し、油圧アクチュエータ15を駆動する。すなわち、油圧アクチュエータ15は、油圧源から供給される油圧によって駆動され、ピストンロッド15aが伸縮される。油圧源は、例えば、油圧ポンプ及び油圧制御弁を備え、油圧ポンプを駆動することによって油圧を発生する。油圧制御弁は、油圧源から出力する油圧を調整する。油圧ポンプ及び油圧制御弁には、電力源から電力が供給される。
【0021】
第1制御装置20は、ロードセル17から出力される試験力信号FSを取得し、試験力信号FSをA/D変換して試験力情報を生成する。第1制御装置20は、差動トランス19から出力される変位信号DSを取得し、変位信号DSをA/D変換して変位情報を生成する。第1制御装置20は、試験力情報、及び、変位情報に基づいて、指令情報を生成する。第1制御装置20は、指令情報をD/A変換することによって指令信号CSを生成し、生成した指令信号CSをサーボ弁18に出力する。
【0022】
サーボ弁18は、第1制御装置20から出力される指令信号CSに従って、油圧アクチュエータ15に対して、圧油方向と圧油量とを制御する。
【0023】
図2の構成において、試験機本体10と第1制御装置20の間に、試験力信号FS、変位信号DS、及び指令信号CSをそれぞれ増幅する増幅器を配置してもよい。
図2に示す試験機本体10の構成は疲労試験機3においても同様である。上述のように、疲労試験機3は、第1制御装置20に代えて第2制御装置40を試験機本体10に接続して構成される。第2制御装置40は、第1制御装置20と同様に、試験機本体10が出力する試験力信号FS及び変位信号DSに基づいて、指令信号CSを試験機本体10に出力することにより、試験片SPの疲労試験を実行する。
【0024】
[1-3.制御装置の構成]
第1制御装置20は、ユーザからの操作に基づき試験機本体10の動作を制御し、試験機本体10に試験片SPの試験を実行させる。第2制御装置40は、第1制御装置20と同様に、試験機本体10の動作を制御して試験片SPの試験を実行させる。ユーザは、疲労試験機1、3を操作する作業者を含む。
【0025】
図3は、第1制御装置20及び第2制御装置40の構成の一例を示す図である。
第1制御装置20は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等のストレージ装置と、各種の電子回路と、を有するコンピュータを備える。なお、第1制御装置20は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
【0026】
第1制御装置20は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。第1制御装置20は、第1プロセッサ21、第1メモリ22、入力部23、表示部24、通信インターフェース25、及び、試験機インターフェース26を備える。
【0027】
第1プロセッサ21は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等で構成される。
第1メモリ22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0028】
なお、第1制御装置20は、パーソナルコンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、第1制御装置20は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォン等で構成されてもよい。
また、第1制御装置20は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等、プログラムされたハードウェアを備えてもよい。また、第1制御装置20は、SoC(System-on-a-Chip)-FPGAを備えてもよい。
【0029】
図3に示すように、第1制御装置20は、試験制御部211及び通信制御部212を備える。具体的には、第1制御装置20の第1プロセッサ21が、第1メモリ22に記憶された制御プログラム221を実行することによって、試験制御部211及び通信制御部212として機能する。
【0030】
入力部23は、ユーザが使用する各種スイッチやキーを備える。表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)表示パネル等を備えるディスプレイである。表示部24は、試験制御部211の制御に従って、疲労試験機1が実行する試験の試験条件、試験力情報、及び変位情報等を表示する。入力部23は、表示部24の表示面に重畳配置されたタッチセンサであってもよい。
【0031】
通信インターフェース25は、ネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して第2制御装置40と通信を実行する。通信インターフェース25は、例えば、通信ケーブルを接続可能なコネクタ、及び、通信回路を備える。通信インターフェース25は、無線通信インターフェースを備え、無線通信を実行する構成であってもよい。
【0032】
試験機インターフェース26は、試験機本体10に接続される。試験機インターフェース26は、例えば、試験機本体10に繋がるケーブルを接続可能なコネクタ、及び、通信回路を備える。試験機インターフェース26は、例えば、アナログ信号をA/D変換するA/Dコンバータ、及び、デジタルデータをアナログ信号に変換するD/Aコンバータを備える。試験機インターフェース26は、試験機本体10が出力する試験力信号FS及び変位信号DSを受信し、試験力情報および変位情報を生成して、試験制御部211に出力する。また、試験機インターフェース26は、試験制御部211が生成する指令情報を指令信号CSに変換し、試験機本体10に送信する。
【0033】
試験制御部211は、入力部23を用いて入力された情報、または、不図示の外部装置から入力された情報に基づき、試験片SPの試験に関する設定を行う。試験制御部211は、設定された条件等に基づき、試験機インターフェース26に接続された試験機本体10を制御する。具体的には、試験制御部211は、試験機インターフェース26によって試験力情報、及び、変位情報を取得し、取得した試験力情報及び変位情報に基づいて、指令情報を生成する。試験制御部211は、指令情報を試験機インターフェース26によって試験機本体10に出力させることにより、試験機本体10を、設定された条件等に従って動作させる。
【0034】
通信制御部212は、通信インターフェース25を制御して、第2制御装置40との間の通信を実行させる。通信制御部212は、第2制御装置40によってパラメータが要求された場合に、疲労試験機1の動作状態に関するパラメータを通信インターフェース25によって送信する。
【0035】
第2制御装置40は、第1制御装置20と同様に、HDDやSSD等のストレージ装置と、各種の電子回路と、を有するコンピュータを備える。なお、第2制御装置40は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。
【0036】
第2制御装置40は、例えば、パーソナルコンピュータで構成される。第2制御装置40は、第2プロセッサ41、第2メモリ42、入力部43、表示部44、通信インターフェース45、及び、試験機インターフェース46を備える。
【0037】
第2プロセッサ41は、CPUやMPU等で構成される。第2メモリ42は、ROMやRAM等で構成される。
【0038】
なお、第2制御装置40は、パーソナルコンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、第2制御装置40は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォン等で構成されてもよい。また、第2制御装置40は、DSP等、プログラムされたハードウェアを備えてもよい。また、第2制御装置40は、SoC-FPGAを備えてもよい。
【0039】
第2制御装置40は、試験制御部411、取得部412、判定部413、及び、表示制御部415を備える。判定部413は、入力値生成部414を有する。具体的には、第2制御装置40の第2プロセッサ41が、第2メモリ42に記憶された制御プログラム421を実行することによって、試験制御部411、取得部412、判定部413、入力値生成部414、及び、表示制御部415として機能する。
【0040】
第2メモリ42は、制御プログラム421、及び、設定データ422を記憶する。また、第2メモリ42は、有限オートマトンを記憶するオートマトン記憶部423を有する。詳細には、第2プロセッサ41が制御プログラム421を実行することによって、第2メモリ42を、オートマトン記憶部423として機能させる。
【0041】
入力部43は、ユーザが使用する各種スイッチやキーを備える。表示部44は、LCD表示パネル等を備えるディスプレイである。表示部44は、試験制御部411の制御に従って、疲労試験機3が実行する試験の試験条件、試験力情報、及び、変位情報等を表示する。入力部43は、表示部44の表示面に重畳配置されたタッチセンサであってもよい。
【0042】
通信インターフェース45は、ネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して第1制御装置20と通信を実行する。通信インターフェース45は、例えば、通信ケーブルを接続可能なコネクタ、及び、通信回路を備える。通信インターフェース45は、無線通信インターフェースを備え、ネットワークNWと無線通信を実行する構成であってもよい。
【0043】
試験機インターフェース46は、試験機本体10に接続される。試験機インターフェース46は、例えば、試験機本体10に繋がるケーブルを接続可能なコネクタ、及び、通信回路を備える。試験機インターフェース46は、例えば、アナログ信号をA/D変換するA/Dコンバータ、及び、デジタルデータをアナログ信号に変換するD/Aコンバータを備える。試験機インターフェース46は、試験機本体10が出力する試験力信号FS及び変位信号DSを受信し、試験力情報および変位情報を生成して、試験制御部411に出力する。また、試験機インターフェース46は、試験制御部411が生成する指令情報を指令信号CSに変換し、試験機本体10に送信する。
【0044】
試験制御部411は、入力部43を用いて入力された情報、または、不図示の外部装置から入力された情報に基づき、試験片SPの試験に関する設定を行う。試験制御部411は、設定された条件等に基づき、試験機インターフェース46に接続された試験機本体10を制御する。具体的には、試験制御部411は、試験機インターフェース46によって試験力情報、及び、変位情報を取得し、取得した試験力情報及び変位情報に基づいて、指令情報を生成する。試験制御部411は、指令情報を試験機インターフェース46によって試験機本体10に出力させることにより、試験機本体10を、設定された条件等に従って動作させる。
【0045】
取得部412は、通信インターフェース45によって第1制御装置20との間で通信を実行させ、第1制御装置20から疲労試験機1の動作に関するパラメータを取得する。第2制御装置40は、
図1に示した構成例において疲労試験機1A、1B、1Cに接続される。この場合、取得部412は、疲労試験機1Aの動作に関するパラメータ、疲労試験機1Bの動作に関するパラメータ、及び、疲労試験機1Cの動作に関するパラメータを、それぞれ取得する。
【0046】
判定部413は、取得部412が取得したパラメータに基づき、疲労試験機1の動作状態を判定する。判定部413は、疲労試験機1の動作状態を判定する処理において、疲労試験機1の状態の遷移を規定する状態遷移図を利用する。この状態遷移図の一つの実現形態として、判定部413は状態遷移モデルを使用する。状態遷移モデルは、疲労試験機1の動作状態を模倣する仮想マシンであり、制御プログラム421を第2プロセッサ41が実行することによって動作する。状態遷移モデルは、複数の状態を有し、状態遷移モデルの各状態には遷移条件が予め設定されている。状態遷移モデルは、遷移条件を満たす入力値が与えられた場合に、遷移条件に対応する状態に遷移する。本実施形態では、状態遷移モデルの一例として、オートマトン記憶部423が記憶する有限オートマトンを使用する。
【0047】
図4は、有限オートマトンの構成の一例を示す状態遷移図である。
図4の有限オートマトンは、オフライン状態S1、動力源オフ状態S2、準備中状態S3、試験中状態S4、試験完了状態S5、及び、アラーム状態S6の6つの状態を取り得る。
【0048】
オフライン状態S1は疲労試験機1がオフラインの状態に対応する。具体的には、疲労試験機1が電源オフ、或いは、疲労試験機1がネットワークNWに接続されていない状態である。動力源オフ状態S2は、疲労試験機1の動力源が動作していない状態に対応する。例えば、試験機本体10に接続された油圧源から油圧アクチュエータ15に対し、必要な油圧が与えられていない状態である。準備中状態S3は、疲労試験機1が試験準備中である状態に対応する。詳細には、試験片SPの試験を実行可能な状態であって、試験片SPの試験を開始していない状態である。試験中状態S4は、疲労試験機1が、試験片SPの疲労試験を実行している状態に対応する。試験完了状態S5は、疲労試験機1が試験片SPの疲労試験を完了した状態に対応する。アラーム状態S6は、疲労試験機1の動作状態にアラームが発生した状態に対応する。
【0049】
上述のように、オフライン状態S1、動力源オフ状態S2、準備中状態S3、試験中状態S4、試験完了状態S5、及び、アラーム状態S6の各々には、遷移条件が設定されている。遷移条件を満たす入力値が入力された場合の遷移先は、遷移条件毎に異なる。
【0050】
例えば、
図4の有限オートマトンは、準備中状態S3において、試験開始を示す入力値が入力された場合に、試験中状態S4に遷移する。また、準備中状態S3において、アラーム発生を示す入力値が入力された場合に、アラーム状態S6に遷移する。準備中状態S3から試験中状態S4に遷移するための遷移条件と、準備中状態S3からアラーム状態S6に遷移するための遷移条件とは異なる。また、有限オートマトンは、入力値が遷移条件を満たさない場合は、状態遷移せず、入力値が入力される前の状態を維持する。
【0051】
判定部413は、入力値生成部414を備える。入力値生成部414は、取得部412が疲労試験機1から取得したパラメータをもとに、有限オートマトンの入力値を生成する。入力値生成部414が生成する入力値は、取得部412が取得したパラメータと同一であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0052】
第2制御装置40が疲労試験機1から取得するパラメータは、疲労試験機1の仕様や機種によって異なることがある。また、パラメータの種類が、有限オートマトンの遷移条件の種類に比べて多いことがある。これらの場合、パラメータの種類に対応させて有限オートマトンの遷移条件を定めると、遷移条件が複雑になってしまう。
【0053】
判定部413は、入力値生成部414によって、多様な種類のパラメータから、より少ない種類の入力値を生成する。これにより、様々な仕様の疲労試験機1に対応し、かつ、有限オートマトンの入力値の種類を抑えることが可能となる。
【0054】
本実施形態において、入力値生成部414は、インターロック、電源、動力源、試験中、アラーム中の5項目の入力値を生成する。これら5項目の入力値の値は、例えば、「0」と「1」である。インターロックは、疲労試験機1が備えるロック機構のロック状態を示す入力値である。インターロックの値は、ロックがされている場合は「1」、ロックがされていない場合は「0」である。入力値生成部414は、例えば、疲労試験機1の飛散防止カバーの開閉状態を示すパラメータ、下部治具16a及び上部治具16bのチャック機構の状態を示すパラメータ、及び、油圧アクチュエータ15の発熱を示すパラメータをもとに、インターロックの入力値を生成する。入力値生成部414の動作は、取得部412が取得したパラメータを、有限オートマトンに規定された入力値に変換する処理ということもできる。
【0055】
入力値生成部414は、複数のパラメータから1つの入力値を生成してもよい。例えば、入力値生成部414は、飛散防止カバーの開閉状態を示すパラメータ、チャック機構の状態を示すパラメータ、及び、油圧アクチュエータ15の発熱を示すパラメータの全てをもとに、インターロックの入力値を生成してもよい。
【0056】
電源の入力値は、疲労試験機1の電源の状態を示す。その値は、疲労試験機1の電源がオンの場合は「1」、電源がオフの場合は「0」である。
動力源の入力値は、試験機本体10に接続された動力源の動作状態を示す。その値は、動力源が動作している場合は「1」、動作していない場合は「0」である。動力源は、例えば油圧源である。
試験中の入力値は、疲労試験機1が試験片SPの試験を実行中か否かを示す。その値は、疲労試験機1が試験中であれば「1」、試験中でなければ「0」である。
アラーム中の入力値は、疲労試験機1のアラームが出力されているか否かを示す。その値は、アラームが出力されている場合は「1」、出力されていない場合は「0」である。
【0057】
入力値生成部414は、例えば、疲労試験機1の駆動部がリミットに達したことを示すパラメータ、動力源の異常が検知されたことを示すパラメータ、疲労試験機1が非常停止したことを示すパラメータ、及び、疲労試験機1に接続された外部装置からアラームが入力されたことを示すパラメータをもとに、アラーム中の入力値を生成する。疲労試験機1の駆動部がリミットに達した場合とは、例えば、ピストンロッド15aの動作量や試験片SPの試験時間が、疲労試験機1の定格範囲の上限に達した場合である。
【0058】
パラメータの種類と入力値の種類との対応、及び、パラメータの値と入力値の対応は、例えば、第2メモリ42に記憶される設定データ422によって規定される。なお、本実施形態で説明する入力値は一例であって、入力値の種類は5種類に制限されない。また、入力値の値は「0」と「1」に限定されず、3以上の値を取り得る構成であってもよい。
【0059】
判定部413は、入力値生成部414により生成された入力値を有限オートマトンに入力することによって、有限オートマトンの状態を遷移させ、遷移後の有限オートマトンの状態をもとに疲労試験機1の動作状態を判定する。これにより、疲労試験機1の動作状態を適切に判定できる。
【0060】
有限オートマトンの状態は、疲労試験機1の動作状態と完全に一致していなくてもよい。
図4に例示した有限オートマトンは6つの状態を取り得るが、この有限オートマトンに対応づけられる疲労試験機1は、6を超える数の動作状態を有していてもよい。すなわち、疲労試験機1の複数の動作状態を、有限オートマトンの1つの状態として表現してもよい。換言すれば、疲労試験機1の動作状態を規定する状態遷移図は、疲労試験機1の動作状態とは異なる数の状態間の遷移を示すものであってもよい。
【0061】
取得部412は、ネットワークNWを介して複数の疲労試験機1と第2制御装置40が通信可能な場合、各々の疲労試験機1からパラメータを取得する。入力値生成部414は、疲労試験機1毎にパラメータから入力値を生成する。入力値生成部414は、各々の疲労試験機1に対応する有限オートマトンを使用し、各々の有限オートマトンに入力値を入力することによって、各々の疲労試験機1の動作状態を個別に判定する。例えば、入力値生成部414は、疲労試験機1Aから取得されたパラメータに基づき疲労試験機1Aに対応する入力値を生成する。疲労試験機1B、1Cについても同様である。判定部413は、疲労試験機1Aに対応する有限オートマトンに、疲労試験機1Aに対応する入力値を入力して状態遷移させることによって、疲労試験機1Aの動作状態を判定する。
【0062】
さらに、取得部412は、試験機インターフェース46に接続された試験機本体10を試験制御部411が制御する場合、試験制御部411から、疲労試験機3の動作に関するパラメータを取得する。判定部413は、疲労試験機3の動作に関するパラメータをもとに、入力値を有限オートマトンに入力することによって、疲労試験機3の動作状態を判定する。従って、疲労試験機3は、ネットワークNWにより接続された疲労試験機1の動作状態を判定する機能と、疲労試験機3そのものの動作状態を判定する機能とを、同様に実行できる。
【0063】
図5は、有限オートマトンの入力値と動作状態との対応の一例を示す図表である。
本実施形態では、判定部413がインターロック、電源、動力源、試験中、アラーム中の5項目の入力値の組合せを有限オートマトンに入力する例を説明する。
図5の入力1~入力12のそれぞれは、1回に有限オートマトンに入力される入力値の組合せを示す。
【0064】
入力1,入力2,入力7,入力8はいずれも、疲労試験機1がオフライン状態であることを示す。すなわち、第2制御装置40は、入力1,入力2,入力7,入力8のそれぞれに対応して、疲労試験機1がオフライン状態であることを一義的に判定できる。
【0065】
これに対し、入力4は、疲労試験機1の準備中の状態、及び、疲労試験機1が試験終了した状態の両方に対応する。従って、入力4のみに基づいて疲労試験機1の状態を一意に決定することはできない。入力10も同様である。
【0066】
判定部413が有限オートマトンに入力4を入力するときの状態が試験中状態S4であれば、入力4がトリガとなって、有限オートマトンは試験完了状態S5に遷移する。この場合、遷移後の有限オートマトンは試験完了状態S5である。判定部413は、疲労試験機1が試験完了状態であると判定する。
【0067】
これに対し、判定部413が有限オートマトンに入力4を入力するときの状態が動力源オフ状態S2またはアラーム状態S6であれば、入力4がトリガとなって、有限オートマトンは準備中状態S3に遷移する。この場合、遷移後の有限オートマトンは準備中状態S3である。判定部413は、疲労試験機1が試験完了状態であると判定する。
【0068】
このように、判定部413は、有限オートマトンを状態遷移させることによって、1つの入力4に基づき、疲労試験機1の動作状態が準備中状態S3であるか試験完了状態S5であるかを特定できる。つまり、判定部413は、疲労試験機1の動作状態のいずれかに一意に対応していない入力値に基づいて、疲労試験機1の動作状態を正確に判定できる。
【0069】
表示制御部415は、判定部413が判定した疲労試験機1の動作状態を、表示部44によって表示させる。
【0070】
図6は、疲労試験機1の状態を表示する状態表示画面441の一例を示す図である。
状態表示画面441は、判定部413によって判定された疲労試験機1の動作状態を表示する。第2制御装置40が複数の疲労試験機1のパラメータを取得可能な場合、状態表示画面441には、複数の疲労試験機1の動作状態が、疲労試験機1ごとに表示される。
【0071】
状態表示画面441は、試験機状態表示部442を含む。試験機状態表示部442は、1つの疲労試験機1または疲労試験機3の動作状態を表示する表示領域である。
図1の例では、第2制御装置40は3つの疲労試験機1A、1B、1Cに接続されている。この場合、状態表示画面441には、疲労試験機1A、1B、1C、及び疲労試験機3の各々に対応する4つの試験機状態表示部442が配置される。
【0072】
試験機状態表示部442には、識別情報443、及び、アイコン444が配置される。識別情報443は、動作状態を表示する対象の疲労試験機1または疲労試験機3を識別する情報である。すなわち、疲労試験機1及び疲労試験機3に個別に与えられた識別情報であり、識別情報443をもとに1台の疲労試験機1または疲労試験機3を特定可能である。
【0073】
アイコン444は、判定部413が判定した動作状態を示す画像である。アイコン444を表示することにより、ユーザが状態表示画面441を見て、各々の疲労試験機1または疲労試験機3の動作状態を容易に認識できるという利点がある。アイコン444に代えて、或いは、アイコン444に加えて、判定部413が判定した動作状態を示す文字列が試験機状態表示部442に配置されてもよい。
【0074】
このように、第2制御装置40は、表示部44に、複数の疲労試験機1及び疲労試験機3の動作状態を表示する。これによって、ユーザは、表示部44を見ることによって複数の疲労試験機1や疲労試験機3の動作状態を容易に知ることができる。従って、複数の疲労試験機1及び疲労試験機3をユーザが管理する負担を軽減できる。また、第2制御装置40によって管理される疲労試験機1が、第2制御装置40から離れた場所に設置されていても支障なく、動作状態を管理できる。この場合、ユーザは、疲労試験機1が設置された場所に常駐したり、疲労試験機1の設置場所まで出向いたりすることなく、疲労試験機1の動作状態を認識できるので、ユーザの負担を軽減できる。
【0075】
[1-4.管理システムの動作]
図7は、第2制御装置40の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップST11において、取得部412は、第2制御装置40によって管理する対象の疲労試験機1及び疲労試験機3の識別情報を取得する。これらの識別情報は、取得部412が第1制御装置20及び試験制御部411と通信を実行することによって取得してもよい。また、これらの識別情報は予め設定データ422に含まれ、第2メモリ42に記憶されていてもよい。
【0076】
ステップST12において、判定部413は、取得部412が取得した識別情報と、オートマトン記憶部423に記憶された有限オートマトンとを、1対1で対応づける。次に、ステップST13において、表示制御部415は、管理対象の疲労試験機1及び疲労試験機3の動作状態の初期値を、識別情報に対応づけて、状態表示画面441に表示させる。
【0077】
そして、ステップST14において、取得部412は、ステップST11で識別情報を取得した疲労試験機1及び疲労試験機3のうち、更新対象とする疲労試験機1または疲労試験機3を選択する。
【0078】
次に、ステップST15において、取得部412は、ステップST12で選択された疲労試験機1または疲労試験機3からパラメータを取得する。
ステップST16において、入力値生成部414は、取得部412によって取得されたパラメータから入力値を生成する。次に、ステップST17において、判定部413は、入力値生成部414によって生成された入力値を、ステップST12で選択された疲労試験機1または疲労試験機3に対応する有限オートマトンに入力する。
【0079】
次に、ステップST18において、判定部413は、入力値が入力された後の有限オートマトンの状態を判定する。ここで、判定部413は、入力値がトリガとなって有限オートマトンの状態が遷移した場合、遷移後の有限オートマトンの状態を判定する。ステップST19において、表示制御部415は、判定部413によって判定された有限オートマトンの状態に基づいて、状態表示画面441の表示を更新する。
【0080】
ここで、ステップST20において、判定部413は、状態表示画面441の表示を終了することを指示する入力が、入力部43によって行われたか否かを判定する。表示を終了することの指示が入力された場合(ステップST20;YES)、表示制御部415は、ステップST22に移行して、状態表示画面441の表示を停止し、本処理を終了する。
【0081】
表示を終了することの指示が入力されていない場合(ステップST20;NO)、ステップST21において、取得部412は、管理対象の疲労試験機1及び疲労試験機3のうちのいずれかについて、動作状態の更新タイミングに到達したか否かを判定する。更新タイミングは、予め取得部412に対して設定されている。具体的には、設定データ422に含まれて第2メモリ42に記憶されている。
【0082】
管理対象の疲労試験機1及び疲労試験機3のうちのいずれも、動作状態の更新タイミングに到達していない場合(ステップST21;NO)、取得部412はステップST20に戻る。また、管理対象の疲労試験機1及び疲労試験機3のうちのいずれかについて、動作状態の更新タイミングに到達した場合(ステップST21;YES)、取得部412はステップST14に移行する。
【0083】
このように、疲労試験機3は、第2制御装置40によって、疲労試験機1の動作状態および疲労試験機3の動作状態を、予め設定された更新タイミングに従って周期的に判定し、状態表示画面441の表示を更新する。従って、ユーザは、状態表示画面441を見ることにより、最新の疲労試験機1及び疲労試験機3の動作状態を確認できる。
【0084】
[2.第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る管理システム101の構成の一例を示す図である。
図9は、第2実施形態の管理装置60の構成の一例を示す図である。
管理システム101は、第1実施形態で説明した管理システム100の疲労試験機3に代えて、管理装置60を備える。第2実施形態において第1実施形態と共通する構成については、同符号を付して説明を省略する。
【0085】
管理装置60は、管理システム101が備える疲労試験機1A、1B、1Cの各々が備える第1制御装置20と、ネットワークNWを介して接続される。
管理装置60は、
図9に示すように、第3プロセッサ61、第3メモリ62、入力部63、表示部64、及び、通信インターフェース65を備える。
【0086】
管理装置60は、第1制御装置20や第2制御装置40と同様に、HDDやSSD等のストレージ装置と、各種の電子回路と、を有するコンピュータを備える。なお、管理装置60は、コンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。ネットワークNWが、インターネットである場合には、管理装置60は、例えば、サーバ装置として構成される。
【0087】
管理装置60は、第3プロセッサ61、第3メモリ62、入力部63、表示部64、及び、通信インターフェース65を備える。
【0088】
第3プロセッサ61は、CPUやMPU等で構成される。第3メモリ62は、ROMやRAM等で構成される。
【0089】
なお、管理装置60は、パーソナルコンピュータに限らず、ICチップやLSIなどの集積回路といった1つ又は複数の適宜の回路によって構成されてもよい。また、管理装置60は、例えば、タブレット端末、又はスマートフォン等で構成されてもよい。また、管理装置60は、DSP等、プログラムされたハードウェアを備えてもよい。また、管理装置60は、SoC-FPGAを備えてもよい。
【0090】
管理装置60は、取得部612、判定部613、及び、表示制御部615を備える。判定部613は入力値生成部614を有する。具体的には、管理装置60の第3プロセッサ61が、第3メモリ62に記憶された制御プログラム621を実行することによって、取得部612、判定部613、入力値生成部614、及び、表示制御部615として機能する。
【0091】
第3メモリ62は、制御プログラム621、及び、設定データ622を記憶する。また、第3メモリ62は、有限オートマトンを記憶するオートマトン記憶部623を有する。詳細には、第3プロセッサ61が制御プログラム621を実行することによって、第3メモリ62を、オートマトン記憶部623として機能させる。
【0092】
入力部63及び表示部64は、それぞれ、入力部43及び表示部44と同様に構成される。表示部44は、ディスプレイの一例に対応する。通信インターフェース65は、通信インターフェース45と同様に構成される。通信インターフェース65は、ネットワークNWに接続され、ネットワークNWを介して第1制御装置20と通信を実行する。
【0093】
取得部612、判定部613、入力値生成部614、及び、表示制御部615は、それぞれ、取得部412、判定部413、入力値生成部414及び表示制御部415と同様に機能する。
【0094】
取得部612は、通信インターフェース65によって第1制御装置20との間で通信を実行させ、第1制御装置20から疲労試験機1の動作に関するパラメータを取得する。管理装置60は、
図8に示した構成例において、疲労試験機1A、1B、1Cに接続される。この場合、取得部612は、疲労試験機1Aの動作に関するパラメータ、疲労試験機1Bの動作に関するパラメータ、及び、疲労試験機1Cの動作に関するパラメータを、それぞれ取得する。
【0095】
判定部613は、取得部612が取得したパラメータに基づき、疲労試験機1の動作状態を判定する。判定部613は、疲労試験機1の動作状態を判定する処理において、判定部413と同様に状態遷移モデルを使用する。状態遷移モデルは、疲労試験機1の動作状態を模倣する仮想マシンであり、本実施形態では、状態遷移モデルの一例としてオートマトン記憶部623が記憶する有限オートマトンを使用する。有限オートマトンは第1実施形態で説明した通りである。
【0096】
判定部613は、入力値生成部614を備える。入力値生成部614は、取得部612が疲労試験機1から取得したパラメータをもとに、有限オートマトンの入力値を生成する。入力値生成部614が生成する入力値は、取得部612が取得したパラメータと同一であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、判定部613は、入力値生成部614によって、多様な種類のパラメータから、より少ない種類の入力値を生成する。これにより、様々な仕様の疲労試験機1に対応し、かつ、有限オートマトンの入力値の種類を抑えることが可能となる。
【0097】
判定部613は、入力値生成部614により生成された入力値を有限オートマトンに入力することによって、有限オートマトンの状態を遷移させ、遷移後の有限オートマトンの状態をもとに疲労試験機1の動作状態を判定する。これにより、疲労試験機1の動作状態を適切に判定できる。
【0098】
取得部612は、ネットワークNWを介して複数の疲労試験機1と管理装置60とが通信可能な場合、各々の疲労試験機1からパラメータを取得する。入力値生成部614は、疲労試験機1毎にパラメータから入力値を生成する。入力値生成部614は、各々の疲労試験機1に対応する有限オートマトンを使用し、各々の有限オートマトンに入力値を入力することによって、各々の疲労試験機1の動作状態を個別に判定する。例えば、入力値生成部614は、疲労試験機1Aから取得されたパラメータに基づき疲労試験機1Aに対応する入力値を生成する。疲労試験機1B、1Cについても同様である。判定部613は、疲労試験機1Aに対応する有限オートマトンに、疲労試験機1Aに対応する入力値を入力して状態遷移させることによって、疲労試験機1Aの動作状態を判定する。
【0099】
表示制御部615は、判定部613が判定した疲労試験機1の動作状態を、表示部64によって表示させる。例えば、表示制御部615は、
図6の状態表示画面441を表示部64に表示させる。
【0100】
管理装置60は、第1実施形態で説明した第2制御装置40と同様に、
図7を参照して説明した動作を実行する。この構成によれば、管理装置60は、第2制御装置40と同様に、疲労試験機1の動作状態を管理できる。すなわち、試験機本体10を制御する機能を有しない管理装置60が、疲労試験機1のパラメータを取得する。管理装置60は、パラメータに基づき有限オートマトンを状態遷移させることによって、疲労試験機1の動作状態を判定し、判定した動作状態を表示部64に表示させる。従って、ユーザは、表示部64が表示する画面を見ることにより、疲労試験機1の動作状態を確認できる。
【0101】
管理装置60は、試験機本体10を有しない装置であり、例えばパーソナルコンピュータで構成される。このため、管理装置60の設置場所に関する制約はほぼ解消される。具体的には、1つの企業が複数の疲労試験機1を使用する場合に、これら複数の疲労試験機1に1台の管理装置60を接続する利用形態が想定される。この場合、管理装置60は、例えば、疲労試験機1が設置された材料試験用の室内とは別の部屋や別の建物に設置できる。また、ネットワークNWが公衆回線網やモバイル通信ネットワークを含んでよい場合には、管理装置60を、可搬型のコンピュータによって実現してもよい。
【0102】
さらに、別の利用形態として、複数の企業が使用する複数の疲労試験機1を、1または複数の管理装置60に接続することが想定される。この場合、管理装置60は、インターネット等の広域通信ネットワークを含むネットワークNWによって、複数のユーザ企業内に設置された多数の疲労試験機1に接続される。
【0103】
この利用形態において、パーソナルコンピュータ等で構成される端末装置が管理装置60にアクセスし、状態表示画面441を端末装置によって表示する構成としてもよい。端末装置は、ユーザ企業が管理する装置が挙げられる。この場合、端末装置は、管理装置60に接続される複数の疲労試験機1のうち端末装置と同じユーザ企業が管理する疲労試験機1に対応づけられる。この構成において、管理装置60は、端末装置から状態表示画面441のデータが要求された場合に、要求を行った端末装置に対応づけられた疲労試験機1の動作状態を表示する状態表示画面441のデータを、端末装置に送信する。これにより、ユーザ企業が使用する疲労試験機1の動作状態を示す状態表示画面441を、ユーザ企業が使用する端末装置によって表示できる。また、ユーザ企業が使用する疲労試験機1の動作状態に関する情報が、他のユーザ企業に送られることがない。このため、ユーザ企業の疲労試験機1に関する情報を保護しながら、複数のユーザ企業が使用する疲労試験機1を、ユーザ企業とは異なる企業や団体が運用する管理装置60によって管理できる。
【0104】
[3.態様と効果]
上述した本実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0105】
(第1項)
第1態様に関わる管理装置は、材料試験機(1,3)のパラメータを取得する取得部(412)と、前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部(413、613)と、を備え、前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定する。
【0106】
第1項に記載の管理装置によれば、パラメータに基づいて材料試験機の状態を遷移させることによって、材料試験機の状態を適切に判定できる。したがって、ユーザが直接、材料試験機の状態を目視して確認する手間を省くことができ、材料試験機の管理に係るユーザの負担を軽減できる。
【0107】
(第2項)
第1項に記載の管理装置において、前記判定部は、前記状態遷移図を構成する有限オートマトンを、前記パラメータの値に基づき状態遷移させ、状態遷移後の前記有限オートマトンの状態をもとに前記材料試験機の状態を判定する。
【0108】
第2項に記載の管理装置によれば、有限オートマトンを利用して材料試験機の状態を判定するので、材料試験機の状態とパラメータとの関係が複雑な場合であっても、材料試験機の状態を適切に判定できる。
【0109】
(第3項)
第2項に記載の管理装置において、前記有限オートマトンは、遷移条件を満たす値が入力された場合に状態遷移し、前記判定部は、前記パラメータを入力用の値に変換し、変換後の値を前記有限オートマトンに入力する。
【0110】
第3項に記載の管理装置によれば、パラメータから得られる入力用の値を有限オートマトンに入力して、有限オートマトンを状態遷移させる。これにより、有限オートマトンの状態遷移のルールを簡素化できるので、材料試験機の状態が遷移する条件とパラメータとの関係が複雑な場合であっても、容易に、材料試験機の状態を判定できる。
【0111】
(第4項)
第1項から第3項のいずれか1項に記載の管理装置において、前記材料試験機を識別する識別情報に対応づけて、前記判定部によって判定された前記材料試験機の状態をディスプレイ(44、64)に表示する表示制御部(415,615)を備える。
【0112】
第4項に記載の管理装置によれば、材料試験機の状態を、ユーザが目視によって容易に知ることができる。
【0113】
(第5項)
第4項に記載の管理装置において、前記取得部は、複数の前記材料試験機の前記パラメータを取得し、前記判定部は、前記複数の材料試験機の各々について状態を判定する。
【0114】
第5項に記載の管理装置によれば、複数の材料試験機の状態をそれぞれ判定して表示するので、ユーザは、複数の材料試験機の状態を目視によって容易に知ることができる。
【0115】
(第6項)
第5項に記載の管理装置において、前記表示制御部は、前記複数の材料試験機の各々について、前記判定部によって判定した前記材料試験機の状態と前記識別情報とを対応づけて前記ディスプレイに表示する。
【0116】
第6項に記載の管理装置によれば、ユーザは、ディスプレイの表示を見ることによって、各々の材料試験機の状態を容易に理解できる。
【0117】
(第7項)
第1項から第6項のいずれか1項に記載の管理装置において、前記複数の材料試験機は第1材料試験機(3)及び第2材料試験機(1)を含み、前記管理装置は、前記第1材料試験機の動作を制御する試験制御部(411)を備え、前記管理装置は、前記第2材料試験機を制御する制御装置(20)に接続され、前記取得部は、前記第1材料試験機及び前記第2材料試験機の前記パラメータを取得する。
【0118】
第7項に記載の管理装置によれば、複数の材料試験機のうちのいずれかが、他の材料試験機の状態を判定する機能を有する。これにより、材料試験機の状態を判定する装置を、材料試験機とは別に設置する必要がない。従って、材料試験機の状態の管理を実現する装置を容易に導入できる。
【0119】
(第8項)
第1項から第6項のいずれか1項に記載の管理装置において、前記複数の材料試験機(1)の各々に接続され、前記取得部(612)は、前記複数の材料試験機(1)の各々と通信を実行することによって前記パラメータを取得する。
【0120】
第8項に記載の管理装置によれば、材料試験機とは別の管理装置を材料試験機に接続することによって、材料試験機の状態の管理を行うことができる。
【0121】
(第9項)
第2態様に関わる材料試験機の管理システムは、材料試験機(1,3)と、前記材料試験機の状態を管理する管理装置(3,6)と、を備える、材料試験機の管理システム(100、101)であって、前記管理装置は、材料試験機のパラメータを取得する取得部(412,612)と、前記材料試験機が、複数の状態のうちのどの状態にあるかを判定する判定部(413、613)と、を備え、前記判定部は、前記材料試験機の状態の遷移を規定する状態遷移図において、前記材料試験機の遷移前の状態と、前記パラメータの値とに基づき、前記材料試験機の状態を遷移させることによって、前記材料試験機の遷移後の状態を判定する。
【0122】
第9項に記載の材料試験機の管理システムによれば、第1項に記載の管理装置と同様の作用効果を奏する。
【0123】
[4.その他の実施形態]
なお、本実施形態に係る管理システム100、101は、あくまでも本発明に係る材料試験機の管理システムの態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。例えば、疲労試験機3或いは管理装置60と複数の疲労試験機1とを通信可能に接続するネットワークNWは、LANであってもよいし、WANでもよいし、インターネットでもよい。
【0124】
例えば、管理システム100、101が備える疲労試験機は、材料試験機の一つの例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形および応用が可能である。例えば、疲労試験機に代えて、或いは、疲労試験機に加えて、万能試験機、引張試験機、圧縮試験機、曲げ試験機、ねじり試験機、クリープ試験機、ばね試験機、衝撃試験機、摩擦試験機、摩耗試験機、発熱試験機等を管理対象とすることができる。
【0125】
また、
図3及び
図9に示した各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現される機能の一部をハードウェアで実現してもよく、或いは、ハードウェアで実現される機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【0126】
また、
図7に示すフローチャートの処理単位は、第2制御装置40による処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。
図7のフローチャートに示す処理単位の分割の仕方や名称によって制限されることはなく、処理内容に応じて、さらに多くの処理単位に分割することもできるし、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。また、上記のフローチャートの処理順序も、図示した例に限られるものではない。
【0127】
また、第2制御装置40は、第2プロセッサ41に、制御プログラム221を実行させる。また、制御プログラム221は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。同様に、管理装置60が第3プロセッサ61に実行させる制御プログラム621は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、記録媒体は、疲労試験機3あるいは管理装置60が備える内部記憶装置であるRAM、ROM、HDD等の不揮発性記憶装置であってもよい。また、制御プログラム221、621をサーバ装置等に記憶させておき、サーバ装置から第2制御装置40或いは管理装置60に、制御プログラム221、621をダウンロードしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1A、1B、1C 疲労試験機(材料試験機)
3 疲労試験機(管理装置)
10 試験機本体
11 基台
12a、12b 支柱
13 ヨーク
14 クロスヘッド
15 油圧アクチュエータ
15a ピストンロッド
16a 下部治具
16b 上部治具
17 ロードセル
18 サーボ弁
19 差動トランス
20 第1制御装置
21 第1プロセッサ
22 第1メモリ
23 入力部
24 表示部
25 通信インターフェース
26 試験機インターフェース
40 第2制御装置
41 第2プロセッサ
42 第2メモリ
43、63 入力部
44、64 表示部(ディスプレイ)
45、65 通信インターフェース
60 管理装置
61 第3プロセッサ
62 第3メモリ
100、101 管理システム
211 試験制御部
212 通信制御部
221、621 制御プログラム
411 試験制御部
412、612 取得部
413、613 判定部
414、614 入力値生成部
421、621 制御プログラム
422、622 設定データ
423、623 オートマトン記憶部
441 状態表示画面
442 試験機状態表示部
443 識別情報
444 アイコン