(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】調光シートの故障検出装置、および調光シートの故障検出方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20241224BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20241224BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20241224BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G01R31/26 F
(21)【出願番号】P 2021117868
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正則
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-76803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0341313(US,A1)
【文献】特開平2-198422(JP,A)
【文献】特開平2-301722(JP,A)
【文献】特開2012-027440(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/133
G02F 1/1334
G02F 1/15-1/163
G02F 1/01
G01R 31/26
B32B 17/10
B60J 3/04
E06B 9/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加する電圧印加部と、
前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を検知し、検知された前記電流に基づいて前記調光シートの故障を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記電流のピーク値が所定の第1閾値以下であることを第1故障として検出し、かつ
前記電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことを第2故障として検出する
調光シートの故障検出装置。
【請求項2】
前記電圧印加部は、前記透明電極層間に駆動信号を供給し、
前記駆動信号は、ピーク-ピーク値に前記駆動電圧を設定された交流電圧であり、
前記駆動信号の半周期よりも短い所定期間が、第1標本抽出期間であり、
前記駆動信号の半周期よりも短い所定期間が、第2標本抽出期間であり、
前記第1標本抽出期間の開始、および前記第2標本抽出期間の終了は、前記電圧印加部が前記駆動電圧の極性を反転させるときであり、
前記検出部は、
前記第1標本抽出期間に検知された前記電流を標本として当該標本のなかから前記ピーク値を検出し、
前記第2標本抽出期間に検知された前記電流を標本として当該標本のなかから前記収束値を検出する
請求項1に記載の調光シートの故障検出装置。
【請求項3】
1つの前記透明電極層に流れ込む電流がソース電流であり、
他の前記透明電極層から引き出される電流がシンク電流であり、
前記検出部は、
前記ソース電流と前記シンク電流との差分が所定の第3閾値以上であることを第3故障として検出する
請求項1または2に記載の調光シートの故障検出装置。
【請求項4】
前記電圧印加部は、
前記検出部が前記第1故障を検出したとき、前記透明電極層間の電圧印加を中止し、
前記検出部が前記第2故障を検出したとき、前記駆動電圧よりも高い補修電圧を前記透明電極層間に印加する
請求項1から3のいずれか一項に記載の調光シートの故障検出装置。
【請求項5】
透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加する電圧印加部と、
前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を、所定の標本抽出期間に抽出し、抽出された標本である電流波形に基づいて、前記調光シートの故障を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、
前記透明電極層と配線との接触抵抗値に由来した第1特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第1特性値が所定の正常範囲外であることを、前記接触抵抗値の増大である第1故障として検出し、
前記透明電極層間の抵抗値に由来した第2特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第2特性値が所定の正常範囲外であることを、前記透明電極層間における微小短絡の存在である第2故障として検出する
調光シートの故障検出装置。
【請求項6】
透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加することと、
前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を検知し、検知された前記電流に基づいて前記調光シートの故障を検出することと、を含み、
前記調光シートの故障を検出することは、
前記電流のピーク値が所定の第1閾値以下であることを第1故障として検出し、かつ
前記電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことを第2故障として検出する
調光シートの故障検出方法。
【請求項7】
透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加することと、
前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を、所定の標本抽出期間に抽出し、抽出された標本である電流波形に基づいて、前記調光シートの故障を検出することと、を含み、
前記調光シートの故障を検出することは、
前記透明電極層と配線との接触抵抗値に由来した第1特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第1特性値が所定の正常範囲外であることを、前記接触抵抗値の増大である第1故障として検出し、
前記透明電極層間の抵抗値に由来した第2特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第2特性値が所定の正常範囲外であることを、前記透明電極層間における微小短絡の存在である第2故障として検出する
調光シートの故障検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光シートの故障検出装置、および調光シートの故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子分散型の調光シートは、第1透明電極層と第2透明電極層との間に高分子化合物層を備える。高分子化合物層は、液晶化合物に埋められる空隙を区画する。液晶化合物の配向状態は、第1透明電極層と第2透明電極層との間の電圧変化に追従する。調光シートの駆動装置は、第1透明電極層と第2透明電極層との間の電圧の変更によって、調光シートを透明から不透明に、あるいは不透明から透明に変える(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
破断や割れなどの構造異常が透明電極層に発生したとき、抵抗値、電圧値、電流値などの電気的特性値が透明電極層において変化する。調光シートの故障検出装置は、透明電極の電気的特性値が正常値でないことを調光シートの故障として検知する(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-187775号公報
【文献】特開2018-41139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁異常や導通異常などの電気的な故障は、調光シートの製造時、施工時、使用時などの様々な場面で生じるおそれがある。故障した部位の特定を補助できる技術は、補修の負荷を軽減するのみならず、調光シートの活用場面を増やし、これにより調光シートの普及を一層に促進させる。
【0006】
例えば、調光シートを製造する場面において、調光シートの端面は、一連のシートを製品サイズに切断する工程によって形成される。あるいは、透明板に調光シートを貼り付ける場面において、調光シートの端面は、透明板に沿って調光シートの縁部を切断する工程によって形成される。この際、高分子化合物層の厚さが1mmにも満たないため、これらの切断工程は、透明電極層の微小部分で、第1透明電極層と第2透明電極層との短絡を引き起こすことがないように慎重に実施される。
【0007】
短絡の原因についてさらに検討する。例えば、調光シートを製造する場面において、調光シートの製造環境に存在する導電性微粒子は、高分子化合物層のなかに混入する。導電性微粒子の混入は、調光シートの面内における微小部分で、第1透明電極層と第2透明電極層との短絡を引き起こすといわれる。また、調光シートを利用する場面において、調光シートの利用環境に存在する水分は、調光シートの端面に付着する。水分の付着は、調光シートの端面における微小部分で、透明電極の地絡を引き起こすといわれる。
【0008】
例えば、調光シートに駆動回路を接続する場面において、透明電極層を駆動回路に接続する配線に機械的な負荷が加わると、透明電極層から端子を剥がす力や、端子と駆動回路との接続に歪みを与える力が発生する。透明電極層から端子を剥がす力は、透明電極層と端子との間の接触抵抗を増大させる。また、端子と駆動回路との接続に歪みを与える力は、端子と駆動回路との間の接続抵抗を増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための調光シートの故障検出装置は、透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加する電圧印加部と、前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を検知し、検知された前記電流に基づいて前記調光シートの故障を検出する検出部と、を備える。そして、前記検出部は、前記電流のピーク値が所定の第1閾値以下であることを第1故障として検出し、かつ前記電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことを第2故障として検出する。
【0010】
上記課題を解決するための調光シートの故障検出装置は、透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加することと、前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を検知し、検知された前記電流に基づいて前記調光シートの故障を検出することと、を含む。そして、前記調光シートの故障を検出することは、前記電流のピーク値が所定の第1閾値以下であることを第1故障として検出し、かつ前記電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことを第2故障として検出する。
【0011】
上記各構成によれば、透明電極層間に流れる電流のピーク値が所定の第1閾値以下であることが、第1故障として検出される。これにより、透明電極層間に流れる電流のピーク値が低いことに由来した故障、例えば透明電極層と配線との接触抵抗値の高抵抗化、あるいは液晶化合物の低容量化が、調光シートの故障として検出される。
【0012】
また、透明電極層間に流れる電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことが、第2故障として検出される。これにより、透明電極層間に流れる電流の収束値が高いことに由来した故障、例えば透明電極層間の微小短絡が、調光シートの故障として検出される。
【0013】
以上から、例えば透明電極層と配線との接触部位を故障の発生部位として特定したり、液晶化合物を故障の発生部位として特定したり、透明電極層間を故障の発生部位として特定したりすることが、容易となる。結果として、調光シートにおいて故障が発生している部位の特定を補助できる。
【0014】
上記調光シートの故障検出装置において、前記電圧印加部は、前記透明電極層間に駆動信号を供給し、前記駆動信号は、ピーク-ピーク値に前記駆動電圧を設定された交流電圧であり、前記駆動信号の半周期よりも短い所定期間が、第1標本抽出期間であり、前記駆動信号の半周期よりも短い所定期間が、第2標本抽出期間であり、前記第1標本抽出期間の開始、および前記第2標本抽出期間の終了は、前記電圧印加部が前記駆動電圧の極性を反転させるときでもよい。そして、前記検出部は、前記第1標本抽出期間に検知された前記電流を標本として当該標本のなかから前記ピーク値を検出し、前記第2標本抽出期間に検知された前記電流を標本として当該標本のなかから前記収束値を検出してもよい。
【0015】
容量として機能する液晶化合物は、駆動電圧の印加によって急峻に上昇するように電流を流し、その後、指数関数的に減衰するように電流を流す。上記構成によれば、ピーク値の検出に適した第1標本抽出期間が定められる。また、収束値の検出に適した第2標本抽出期間が定められる。そして、第1標本抽出期間の検知電流を対象としてピーク値が検出され、かつ第2標本抽出期間の検知電流を対象として収束値が検出される。これにより、ピーク値と収束値との両方が精度よく検出される。
【0016】
上記調光シートの故障検出装置において、1つの前記透明電極層に流れ込む電流がソース電流であり、他の前記透明電極層から引き出される電流がシンク電流である。そして、前記検出部は、前記ソース電流と前記シンク電流との差分が所定の第3閾値以上であることを第3故障として検出してもよい。この構成によれば、シンク電流とソース電流との差分が大きいことに由来した故障、すなわちシステム漏電を検出できる。
【0017】
上記調光シートの故障検出装置において、前記電圧印加部は、前記検出部が前記第1故障を検出したとき、前記透明電極層間の電圧印加を中止し、前記検出部が前記第2故障を検出したとき、前記駆動電圧よりも高い補修電圧を前記透明電極層間に印加してもよい。
【0018】
上述したように、透明電極層間に流れる電流のピーク値が低いことに由来した故障は、例えば透明電極層と配線との接触抵抗値の高抵抗化、あるいは液晶化合物の低容量化である。接触抵抗値の高抵抗化、あるいは液晶化合物の低容量化は、接続構造の補修、あるいは調光シートそのものの交換を要求する。この点、上記構成のように、検出部が第1故障を検出したとき、電圧印加部が電極層間の電圧印加を中止する構成であれば、接続構造の補修、あるいは調光シートそのものの交換を促すことが可能ともなる。
【0019】
一方、透明電極層間に流れる電流の収束値が所定の第2閾値よりも大きいことに由来した故障は、例えば透明電極層間の微小短絡である。透明電極層間の微小短絡は、駆動電圧よりも高い補修電圧の印加によって溶断される。この点、上記構成のように、高電圧である補修電圧が第2故障の検出時に印加される構成であれば、微小短絡を溶断するような、調光シートの故障に適した補修を行うことが可能ともなる。
【0020】
上記課題を解決するための調光シートの故障検出装置は、透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加する電圧印加部と、前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を、所定の標本抽出期間に抽出し、抽出された標本である電流波形に基づいて、前記調光シートの故障を検出する検出部と、を備える。そして、前記検出部は、前記透明電極層と配線との接触抵抗値に由来した第1特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第1特性値が所定の正常範囲外であることを、前記接触抵抗値の増大である第1故障として検出し、前記透明電極層間の抵抗値に由来した第2特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第2特性値が所定の正常範囲外であることを、前記透明電極層間における微小短絡の存在である第2故障として検出する。
【0021】
上記課題を解決するための調光シートの故障検出方法は、透明電極層間に液晶化合物を備えた調光シートの前記透明電極層間に、前記液晶化合物を駆動させる駆動電圧を印加することと、前記駆動電圧の印加によって前記透明電極層間に流れる電流を、所定の標本抽出期間に抽出し、抽出された標本である電流波形に基づいて、前記調光シートの故障を検出することと、を含む。そして、前記調光シートの故障を検出することは、前記透明電極層と配線との接触抵抗値に由来した第1特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第1特性値が所定の正常範囲外であることを、前記接触抵抗値の増大である第1故障として検出し、前記透明電極層間の抵抗値に由来した第2特性値を前記電流波形から特定し、特定された前記第2特性値が所定の正常範囲外であることを、前記透明電極層間における微小短絡の存在である第2故障として検出する。
【0022】
容量として機能する液晶化合物は、駆動電圧の印加によって急峻に上昇するように電流を流し、その後、指数関数的に減衰するように電流を流す。ここで、透明電極層と配線との接触抵抗値の増大は、電流の急峻な上昇後のピーク値を低めたり、ピークから減衰する速度を低めたりする。透明電極層間の微小短絡は、減衰の収束先である収束値を高める。
この点、上記各構成によれば、接触抵抗値に由来した第1特性値が、透明電極層間に流れる電流の波形から特定される。そして、特定された第1特性値が正常範囲外であることが、接触抵抗値の増大である第1故障として検出される。これにより、透明電極層と配線との接触部位を故障の発生部位に特定できる。また、透明電極層間の抵抗値に由来した第2特性値が、電流波形から特定される。そして、特定された第2特性値が正常範囲外であることが、微小短絡の存在である第2故障として検出される。これにより、透明電極層間に故障の発生部位が存在することを特定できる。
【0023】
以上から、例えば透明電極層と配線との接触部位を故障の発生部位として特定したり、透明電極層間を故障の発生部位として特定したりすることが、容易となる。結果として、調光シートにおいて故障が発生している部位の特定を補助できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、電源回路の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、駆動電圧発生回路の構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、電圧印加部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、故障検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、故障検出部の回路例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、故障検出部の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、電源回路の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、回路シミュレーションに用いた等価回路を示す回路図である。
【
図9】
図9は、検知電流の時間的な変化を示すグラフ。
【
図10】
図10は、ピーク値と接触抵抗との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、調光シートの故障検出装置、および調光シートの故障検出方法の一実施形態を説明する。
調光システムは、調光シートの故障検出装置を備える。調光シートの故障検出装置は、調光シートの故障検出方法を実行する。調光システムは、電源回路10、および調光シート20を備える。電源回路10は、調光シートの故障検出装置、および調光シートの駆動装置を構成する。
【0026】
[調光シートの構成]
調光シート20は、調光層21を備える。調光層21は、高分子化合物層と、高分子化合物層に保持された液晶化合物とを備える。調光層21による液晶化合物の保持形式は、高分子分散型、高分子ネットワーク型、あるいはカプセル型である。調光シート20は、第1透明電極層22と第2透明電極層23とを備える。調光層21は、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に位置する。
【0027】
駆動電圧は、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に印加される。液晶化合物の配向状態は、駆動電圧の印加によって第1状態を取る。液晶化合物の配向状態は、通電の停止によって第2状態を取る。
【0028】
補修電圧は、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に印加される。調光シート20に生じ得る微小短絡は、補修電圧の印加によって切断される。微小短絡の一例は、調光層21の内部、あるいは調光シート20の端面に生じ得る。微小短絡は、調光システムの保護回路のなかでヒューズが溶断しない程度に、調光システムの回路に電流を過剰に流す。微小短絡は、透過率やヘイズなどの光学特性値の差異が生じる程度に、調光層21のなかに電流を過剰に流す。
【0029】
調光シート20の駆動形式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか一方である。ノーマル型の調光シート20は、第1状態で透明である。ノーマル型の調光シート20は、第2状態で不透明である。これに対して、リバース型の調光シート20は、第1状態で不透明である。リバース型の調光シート20は、第2状態で調光シート20を透明である。透明の調光シート20は、不透明の調光シート20よりも高い光透過率を有する。
【0030】
ノーマル型の調光シート20が不透明であるとき、調光シート20の光透過率は、調光シート20の駆動範囲のなかで最も低い値を有する。リバース型の調光シート20が透明であるとき、調光シート20の光透過率は、調光シート20の駆動範囲のなかで最も高い値を有する。
【0031】
ノーマル型の調光シート20が透明であるとき、調光シート20の光透過率は、調光シート20の駆動範囲のなかで最も高い値でもよいし、調光シート20の駆動範囲のなかで中間値でもよい。リバース型の調光シート20が不透明であるとき、調光シート20の光透過率は、調光シート20の駆動範囲のなかで最も低い値でもよいし、調光シート20の駆動範囲のなかで中間値でもよい。
【0032】
[電源回路の機能的構成]
次に、電源回路10の機能的な構成を説明する。
電源回路10は、外部電源50に接続される。外部電源50は、電源電圧として交流電圧を出力する交流電源でもよいし、電源電圧として直流電圧を出力する直流電源でもよい。交流電源の一例は、商用電源である。直流電源の一例は、移動体に搭載される補機用電源である。
【0033】
電源回路10は、電源電圧を駆動電圧に変換し、駆動電圧から駆動信号を生成する。電源回路10は、電源電圧を補修電圧に変換し、補修電圧から補修信号を生成する。電源回路10は、調光シート20に駆動信号を供給する。電源回路10は、微小短絡の有無を判定し、微小短絡が存在すると判定したとき、駆動信号の供給を補修信号の供給に切り替える。電源回路10は、補修信号を所定時間だけ供給した後に、補修信号の供給を駆動信号の供給に切り替える。なお、電源回路10は、補修信号を所定時間だけ供給することを所定回数だけ実行した後に、補修信号の供給を駆動信号の供給に切り替えてもよい。
【0034】
電源回路10は、ソース電流、およびシンク電流の少なくとも一方を検知電流として検知する。ソース電流は、電源回路10から調光シート20に出る電流である。シンク電流は、調光シート20から電源回路10に戻る電流である。
【0035】
電源回路10は、検知電流の瞬時値に基づいて故障の有無を判定する。電源回路10は、検知電流の瞬時値に基づいて故障の種類を特定する。故障の種類は、下記[A]~[C]である。検知電流の瞬時値は、検知電流のピーク値、および検知電流の収束値の少なくとも一方である。ピーク値は、第1特性値の一例である。収束値は、第2特性値の一例である。
[A]システム漏電
[B]伝送路高抵抗化、もしくは液晶低容量化/反転時異常
[C]微小短絡/収束時異常
【0036】
(A:システム漏電)
周辺環境から調光システムを電気的に絶縁する部材の劣化は、調光システムの伝送路を周辺環境に短絡させる。例えば、周辺環境から各透明電極層22,23を絶縁する部材の劣化は、各透明電極層22,23そのものを周辺環境に短絡させる。例えば、電源回路10に各透明電極層22,23を接続する配線を周辺環境から絶縁する部材の劣化は、配線を周辺環境に短絡させる。このように、周辺環境に伝送路を短絡させる範囲は、調光システムの経時的な劣化と共に拡大し得る。
【0037】
調光システムにおける伝送路の短絡は、第1透明電極層22に入る電流の一部と、第1透明電極層22から出る電流の一部とを、調光システムから漏らし得る。調光システムにおける伝送路の短絡は、第2透明電極層23に入る電流の一部と、第1透明電極層22から出る電流の一部とを、調光システムから漏らし得る。
【0038】
このようなシステム漏電は第1透明電極層22と電源回路10との間、あるいは第2透明電極層23と電源回路10との間に、調光シート20が駆動される程度に、異常電流を流し得る。システム漏電に起因した事象は、ソース電流とシンク電流との差異として現れる。
【0039】
電源回路10は、ソース電流とシンク電流との差異に基づいてシステム漏電の有無を判断する。例えば、ソース電流とシンク電流との差異が所定の第3閾値以下であるとき、システム漏電が生じていないと電源回路10は判断する。一方、ソース電流とシンク電流との差異が第3閾値よりも大きいとき、第3故障の一例であるシステム漏電が生じていると電源回路10は判断する。
【0040】
(B:反転時異常/伝送路高抵抗化)
電源回路10に第1透明電極層22を電気的に接続するための伝送路は、伝送材料の劣化や電気的な接合の劣化などの各種の劣化によって、電気的な特性値を変化させる。電源回路10に第2透明電極層23を電気的に接続するための伝送路もまた、伝送材料の劣化や電気的な接合の劣化などの各種の劣化によって、電気的な特性値を変化させる。
【0041】
調光システムの伝送路における特性値の一例は、伝送部材そのものの電気的な抵抗値、および伝送部材間の接触抵抗値である。例えば、電源回路10に各透明電極層22,23を接続する配線の特性値は、配線そのものの抵抗値である。例えば、各透明電極層22,23と配線との間の特性値は、各透明電極層22,23と配線との接触抵抗値である。
【0042】
伝送部材における抵抗値の増大、あるいは伝送部材間の接触抵抗値の増大は、調光システムの消費電力を増大させたり、調光シート20の光透過率を本来の値から乖離させたりする。伝送部材の高抵抗化、あるいは伝送部材間の高抵抗化に起因した事象は、ソース電流においてピーク値の低下、あるいはシンク電流においてピーク値の低下として現れる。
【0043】
電源回路10は、ソース電流のピーク値、あるいはシンク電流のピーク値に基づいて高抵抗化の有無を判断する。例えば、ソース電流のピーク値が所定の閾値よりも大きいとき、ソース電流の伝送路に高抵抗化が生じていないと電源回路10は判断する。一方、ソース電流のピーク値が所定の閾値以下であるとき、ソース電流の伝送路に高抵抗化が生じていると電源回路10は判断する。また、例えば、シンク電流のピーク値が所定の閾値よりも大きいとき、シンク電流の伝送路に高抵抗化が生じていないと電源回路10は判断する。一方、シンク電流のピーク値が所定の閾値以下であるとき、シンク電流の伝送路に高抵抗化が生じていると電源回路10は判断する。
【0044】
(B:反転時異常/液晶低容量化)
液晶組成物の劣化は、液晶組成物による容量低下を調光層21に生じさせる。調光層21の容量低下は、調光システムの消費電力を増大させたり、調光シート20の光透過率を本来の値から乖離させたりする。液晶組成物による容量低下に起因した事象は、ソース電流におけるピーク値の低下、あるいはシンク電流におけるピーク値の低下として現れる。
【0045】
電源回路10は、ソース電流のピーク値、あるいはシンク電流のピーク値に基づいて低容量化の存否を判断する。例えば、ソース電流のピーク値、あるいはシンク電流のピーク値が所定の閾値よりも大きいとき、調光層21に低容量化が生じていないと電源回路10は判断する。一方、ソース電流のピーク値、あるいはシンク電流のピーク値が所定の閾値以下であるとき、調光層21に低容量化が生じていると電源回路10は判断する。
【0046】
(C:収束時異常/微小短絡)
第1透明電極層22が第2透明電極層23に短絡すると、過大な電流が調光シート20と電源回路10とに流れる。短絡電流が流れることを抑えるため、電源回路10はヒューズを備えてもよい。ヒューズは、短絡電流の供給によって溶断される。ただし、ヒューズの溶断電流は、リップル電流の供給によってヒューズが溶断しないように、大きく設定される。このように、電源回路10がヒューズを備えるとしても、ヒューズの溶断特性は、リップル電流の供給に耐えることを要求される。結果として、ヒューズを溶断しないような微小な短絡電流の発生は、ヒューズの有無に関わらず、依然として残存する。
【0047】
微小な短絡電流を発生させる事象は、調光シート20のなかの微小部分での短絡である。調光シート20のなかの微小部分での短絡は、第1透明電極層22の縁のなかの一部分と第2透明電極層23との短絡、第2透明電極層23の縁のなかの一部分と第1透明電極層22との短絡、異物である導電性微粒子を介した調光シート20の面内における短絡などである。微小な短絡電流の発生は、調光シート20の光透過率を本来の値から異ならせる。また、光透過率のずれが視認できる程度であれ、視認できない程度であれ、微小な短絡電流の発生が継続することは、調光シート20の消費電力を少なからず増大させる。
【0048】
こうした微小短絡は、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に、調光シート20が駆動される程度に、異常電流を流し得る。微小短絡に起因した事象は、ソース電流の収束値である漏れ電流値、あるいはシンク電流の収束値である漏れ電流値として現れる。
【0049】
電源回路10は、ソース電流の収束値、あるいはシンク電流の収束値に基づいて微小短絡の有無を判断する。例えば、ソース電流の収束値、あるいはシンク電流の収束値が所定の閾値以下であるとき、微小短絡が生じていないと電源回路10は判断する。一方、ソース電流の収束値、あるいはシンク電流の収束値が所定の閾値よりも大きいとき、微小短絡が生じていると電源回路10は判断する。
【0050】
[電源回路の電気的構成]
次に、電源回路10の一例について、詳細な電気的構成を説明する。
電源回路10は、変圧回路11、第1昇圧回路12、第2昇圧回路13、制御用電源作成回路14、タイミング制御回路15、駆動電圧発生回路16、切り替え回路17、クロック発生回路18、および駆動回路31を備える。駆動回路31は、故障判定回路32、故障状態表示回路33、および電流検出回路35を備える。
【0051】
第1昇圧回路12、タイミング制御回路15、駆動電圧発生回路16、および電流検出回路35は、電圧印加部を構成する。タイミング制御回路15、およびクロック発生回路18は、タイミング制御部を構成する。タイミング制御部、故障判定回路32、および電流検出回路35は、故障検出部を構成する。第2昇圧回路13、切り替え回路17、タイミング制御回路15、駆動電圧発生回路16、および電流検出回路35は、電圧変更部を構成する。
【0052】
変圧回路11は、外部電源50の出力電圧を昇圧回路の入力電圧に変換する。変圧回路11は、外部電源50の出力電圧を制御用電源作成回路14の入力電圧に変換する。例えば、外部電源50の出力電圧が100Vの交流電圧である場合、変圧回路11は、100Vの交流電圧から、第1昇圧回路12、第2昇圧回路13、および制御用電源作成回路14の入力電圧を生成する。
【0053】
第1昇圧回路12は、変圧回路11の出力電圧から駆動電圧VLDを生成する。駆動電圧VLDは、故障を生じていない調光シート20の駆動に適した大きさである。駆動電圧VLDの一例は、50Vである。調光シート20の駆動は、第2状態から第1状態に調光シート20を遷移させる。
【0054】
第2昇圧回路13は、変圧回路11の出力電圧から補修電圧VLRを生成する。補修電圧VLRは、故障を生じている調光シート20の補修に適した大きさである。補修電圧VLRは、駆動電圧VLDよりも高い。調光シート20における微小短絡は、補修電圧VLRの電圧の印加によって切断される。補修電圧VLRの一例は、80Vである。
【0055】
制御用電源作成回路14は、変圧回路11の出力電圧から論理レベルの電圧を生成する。制御レベルは、タイミング制御回路15の演算に適した大きさである。また、制御レベルは、駆動回路31の演算に適した大きさである。論理レベルは、駆動レベルよりも低い。論理レベルの一例は、3.3Vである。
【0056】
タイミング制御回路15は、調光シート20に印加される電圧の極性を駆動電圧発生回路16に反転させる。調光シート20に印加される電圧の極性反転周波数は、1Hz以上60Hz以下の低周波数でもよいし、60Hzよりも高い周波数でもよい。なお、極性反転周波数が高まるほど、調光システムの消費電力量は高まる。調光シート20に印加される電圧の極性反転周波数は、調光システムに要求される消費電力量に基づいて適宜設定されてもよい。また、極性反転周波数が低まるほど、液晶組成物に含有される不純物の偏在を生じやすい。調光シート20に印加される電圧の極性反転周波数は、液晶組成物における各種の物性値に基づいて適宜設定されてもよい。
【0057】
タイミング制御回路15は、駆動電圧発生回路16の極性反転タイミングと、電流検出回路35による標本抽出期間とを整合させる。標本抽出期間の一例は、検知電流のピーク値を検出するための標本を抽出する期間を定める。標本抽出期間の他の例は、検知電流の収束値を検出するための標本を抽出する期間を定める。検知電流のピーク値、および収束値は、瞬時値の一例である。
【0058】
調光層21が容量素子であるため、検知電流のピーク値は、調光シート20に電圧が印加された直後に現れる。すなわち、検知電流のピーク値は、調光シート20に印加される電圧の極性反転直後に現れる。タイミング制御回路15は、調光シート20に印加される電圧の極性反転のタイミングを参照し、調光シート20に印加される電圧の極性反転直後と、ピーク値の標本抽出開始とを整合させる。
【0059】
調光層21が容量素子であるため、検知電流の収束値は、調光シート20に印加される電圧の極性反転直前に現れる。タイミング制御回路15は、調光シート20に印加される電圧の極性反転のタイミングを参照し、調光シート20に印加される電圧の極性反転直前と、収束値の標本抽出終了とを整合させる。
【0060】
タイミング制御回路15は、反転制御信号SIGRを生成するための内部クロック信号を生成する。タイミング制御回路15は、内部クロック信号から反転制御信号SIGRを生成する。タイミング制御回路15は、反転制御信号SIGRを駆動電圧発生回路16に出力する。駆動電圧発生回路16は、調光シート20に印加される電圧の極性を反転制御信号SIGRに基づいて反転する。
【0061】
駆動電圧発生回路16は、切り替え回路17の出力電圧から駆動信号SVDを生成する。駆動電圧発生回路16は、切り替え回路17の出力電圧から補修信号SVRを生成する。駆動信号SVDは、交流電圧信号である。駆動信号SVDは、ピーク-ピーク値に駆動電圧VLDを設定し、反転制御信号SIGRに基づいて駆動電圧VLDの極性反転を繰り返す。補修信号SVRは、交流電圧信号である。補修信号SVRは、ピーク-ピーク値に補修電圧VLRを設定し、反転制御信号SIGRに基づいて補修電圧VLRの極性反転を繰り返す。
【0062】
駆動電圧発生回路16は、電流検出回路35を通じて駆動信号SVDを調光シート20に供給する。駆動電圧発生回路16は、電流検出回路35を通じて補修信号SVRを調光シート20に供給する。
【0063】
切り替え回路17は、第1昇圧回路12の出力電圧と第2昇圧回路13の出力電圧とのいずれか一方を駆動電圧発生回路16に入力する。切り替え回路17は、駆動電圧VLDと補修電圧VLRとのいずれか一方を切り替え回路17の出力レベルVDに設定する。
【0064】
故障判定回路32は、切り替え回路17に補修要求信号SIGSを供給する。切り替え回路17は、補修要求信号SIGSの供給によって、駆動電圧VLDから補修電圧VLRに出力レベルVDを切り替える。切り替え回路17は、補修要求信号SIGSの供給停止によって、補修電圧VLRから駆動電圧VLDに出力レベルVDを切り替える。
【0065】
[電圧印加部の回路構成]
次に、電源回路10が備える電圧印加部の一例について回路構成を説明する。
図2が示すように、駆動電圧発生回路16は、Hブリッジ回路を備える。Hブリッジ回路は、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、および第4スイッチSW4を備える。Hブリッジ回路は、第1スイッチSW1と第3スイッチSW3とから構成される直列回路と、第2スイッチSW2と第4スイッチSW4とから構成される直列回路とから構成される並列回路である。
【0066】
Hブリッジ回路の入力端は、切り替え回路17の出力端に接続される。Hブリッジ回路の出力端は、電源回路10の接地端に接続される。第1スイッチSW1と第3スイッチSW3との接続点は、第2透明電極層23に接続される。第2スイッチSW2と第4スイッチSW4との接続点は、第1透明電極層22に接続される。
【0067】
図3が示すように、第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とは、同じタイミングにオン状態を取る。第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とは、同じタイミングにオフ状態を取る。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とは、同じタイミングにオン状態を取る。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とは、同じタイミングにオフ状態を取る。各スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の状態は、それぞれ極性反転信号によって定められる。第1スイッチSW1のオン状態と、第2スイッチSW2のオン状態とは、交互に繰り返される。
【0068】
例えば、タイミング制御回路15は、タイミングT1からタイミングT2まで、第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とがオン状態を取り、かつ第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とがオフ状態を取るように、反転制御信号SIGRを出力する。第1スイッチSW1と第4スイッチSW4がオン状態を取ることによって、第2透明電極層23が切り替え回路17の出力レベルVDに接続される。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3がオフ状態を取ることによって、第1透明電極層22が接地レベルGNDに接続される。
【0069】
例えば、タイミング制御回路15は、タイミングT3からタイミングT4まで、第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とがオフ状態を取り、かつ第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とがオン状態を取るように、反転制御信号SIGRを出力する。第1スイッチSW1と第4スイッチSW4がオフ状態を取ることによって、第2透明電極層23が接地レベルGNDに接続される。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3がオン状態を取ることによって、第1透明電極層22が切り替え回路17の出力レベルVDに接続される。
【0070】
第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とがオフ状態を取り、かつ第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とがオン状態を取るとき、第1透明電極層22は、切り替え回路17の出力レベルVDに接続され、かつ第2透明電極層23は、接地レベルGNDに接続される。第2スイッチSW2と第3スイッチSW3とがオフ状態を取り、かつ第1スイッチSW1と第4スイッチSW4とがオン状態を取るとき、第2透明電極層23は、切り替え回路17の出力レベルVDに接続され、かつ第1透明電極層22は、接地レベルGNDに接続される。
【0071】
タイミング制御回路15は、切り替え回路17の出力レベルVDが第2透明電極層23に接続される期間と、切り替え回路17の出力レベルVDが第1透明電極層22に接続される期間とが交互に繰り返されるように、反転制御信号SIGRを出力する。
【0072】
タイミング制御回路15は、反転制御信号SIGRの出力によって交流化された電圧を、電流検出回路35を通じて、調光シート20に駆動信号SVDとして印加する。また、タイミング制御回路15は、反転制御信号SIGRの出力によって交流化された電圧を、電流検出回路35を通じて、調光シート20に補修信号SVRとして印加する。
【0073】
[タイミング制御部の回路構成]
次に、電源回路10が備えるタイミング制御部の一例について回路構成を説明する。
図1に戻り、タイミング制御回路15は、反転クロック信号CLK1、および基準クロック信号CLK2をクロック発生回路18に出力する。反転クロック信号CLK1、および基準クロック信号CLK2は、反転制御信号SIGRを生成するための内部クロック信号である。
【0074】
クロック発生回路18は、反転クロック信号CLK1、および基準クロック信号CLK2から、第1検出クロック信号SMP1、および第2検出クロック信号SMP2を生成する。第1検出クロック信号SMP1は、検知電流のピーク値を検出するための標本抽出期間を定める。第2検出クロック信号SMP2は、検知電流の収束値を検出するための標本抽出期間を定める。
【0075】
図6が示すように、反転クロック信号CLK1は、反転制御信号SIGRの反転タイミングに、ハイレベルからローレベルに変わり、かつ次の反転タイミングに、ローレベルからハイレベルに変わる。基準クロック信号CLK2は、反転制御信号SIGRの反転周期よりも短い周期で、ハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す。例えば、反転制御信号SIGRは、基準クロック信号CLK2を1/4分周によって生成される。反転制御信号SIGRは、基準クロック信号CLK2の立ち下がりによって立ち上がる。また、反転制御信号SIGRは、基準クロック信号CLK2の立ち下がりによって立ち下がる。
【0076】
クロック発生回路18は、ラッチ出力信号LTS1、ラッチ出力反転信号LTS2、シフト信号RMP1、第1検出クロック信号SMP1、および第2検出クロック信号SMP2を生成する。
【0077】
クロック発生回路18は、反転クロック信号CLK1をデータ入力とし、基準クロック信号CLK2をクロック入力として、基準クロック信号CLK2による反転クロック信号CLK1のラッチによって、ラッチ出力信号LTS1を生成する。
【0078】
クロック発生回路18は、ラッチ出力信号LTS1の反転によって、ラッチ出力反転信号LTS2を生成する。クロック発生回路18は、反転クロック信号CLK1の1/2周期よりも短い所定時間だけ、ラッチ出力信号LTS1をシフトすることによって、シフト信号RMP1を生成する。ラッチ出力信号LTS1に対するシフト信号RMP1のシフト量は、例えば、基準クロック信号CLK2の3周期である。
【0079】
クロック発生回路18は、反転クロック信号CLK1とラッチ出力反転信号LTS2との論理積によって、第1検出クロック信号SMP1を生成する。第1検出クロック信号SMP1は、反転クロック信号CLK1の立ち上がりと共に立ち上がり、かつ反転クロック信号CLK1の半周期より短い、基準クロック信号CLK2の1周期分である第1標本抽出期間TSM1だけハイレベルを保つ。
【0080】
電流検出回路35は、第1検出クロック信号SMP1の立ち上がるタイミングを、ピーク値を検出するための標本抽出期間の開始とする。電流検出回路35は、第1検出クロック信号SMP1の立ち下がるタイミングを、ピーク値を検出するための標本抽出期間の終了とする。
【0081】
クロック発生回路18は、反転クロック信号CLK1とシフト信号RMP1との論理積によって、第2検出クロック信号SMP2を生成する。第2検出クロック信号SMP2は、反転クロック信号CLK1の立ち下がりに先駆けて、反転クロック信号CLK1の半周期より短い、基準クロック信号CLK2の1周期分である第2標本抽出期間TSM2だけハイレベルを保つ。
【0082】
電流検出回路35は、第2検出クロック信号SMP2の立ち上がるタイミングを、収束値を検出するための標本抽出期間の開始とする。電流検出回路35は、第2検出クロック信号SMP2の立ち下がるタイミングを、収束値を検出するための標本抽出期間の終了とする。
【0083】
そして、電流検出回路35は、第1検出クロック信号SMP1の立ち上がるタイミングから第1標本抽出期間TSM1の間に、検知電流IMA,IMB,IMCのピーク値を検出する。故障判定回路32は、第1判定用閾値Ith1よりも大きいピーク値を有する検知電流IMA,IMCについて、[B]反転時異常が存在しないと判定する。第1判定用閾値Ith1よりも大きい範囲は、正常範囲の一例である。一方、故障判定回路32は、第1判定用閾値Ith1以下のピーク値を有する検知電流IMBについて、[B]反転時異常が存在すると判定する。第1判定用閾値Ith1は、第1閾値の一例である。
【0084】
また、電流検出回路35は、第2検出クロック信号SMP2の立ち上がるタイミングから第2標本抽出期間TSM2の間に、検知電流IMA,IMB,IMCの収束値を検出する。故障判定回路32は、第2判定用閾値Ith2以下の収束値を有する検知電流IMA,IMBについて、[C]収束時異常が存在しないと判定する。第2判定用閾値Ith2以下の範囲は、正常範囲の一例である。一方、故障判定回路32は、第2判定用閾値Ith2よりも大きい収束値を有する検知電流IMCについて、[C]収束時異常が存在すると判定する。第2判定用閾値Ith2は、第2閾値の一例である。
【0085】
[故障検出部の機能的構成]
次に、電源回路10が備える故障検出部の一例について機能的構成を説明する。
図1に戻り、電流検出回路35は、ソース電流、およびシンク電流の少なくとも一方を検知電流として検出する。ソース電流は、電流検出回路35から調光シート20に出る電流である。シンク電流は、調光シート20から電流検出回路35に戻る電流である。
【0086】
故障判定回路32が[A]システム漏電の有無を判定するために、電流検出回路35は、ソース電流、およびシンク電流の一方に対する他方の差分を検出する。
故障判定回路32が[B]反転時異常の有無を判定するために、電流検出回路35は、第1検出クロック信号SMP1の立ち上がりから検知電流の標本抽出を開始する。そして、電流検出回路35は、第1標本抽出期間TSM1が経過するまで、検知電流を標本として抽出し、抽出された検知電流のなかでピーク値を検出する。
【0087】
故障判定回路32が[C]収束時異常の有無を判定するために、電流検出回路35は、第2検出クロック信号SMP2の立ち上がりから検知電流の標本抽出を開始する。そして、電流検出回路35は、第2標本抽出期間TSM2が経過するまで、検知電流を標本として抽出し、抽出された検知電流のなかで収束値を検出する。
【0088】
例えば、駆動電圧発生回路16がHブリッジ回路を備える場合、ソース電流は、Hブリッジ回路の入力端から、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との接続端に流れる。電流検出回路35は、Hブリッジ回路の入力端から、第1スイッチSW1と第2スイッチSW2との接続端に流れる電流を検出する。駆動電圧発生回路16がHブリッジ回路を備える場合、シンク電流は、第3スイッチSW3と第4スイッチSW4との接続端から、Hブリッジ回路の出力端に流れる。電流検出回路35は、第3スイッチSW3と第4スイッチSW4との接続端から、Hブリッジ回路の出力端に流れる電流を検出する。
【0089】
[A]電流検出回路35は、ソース電流、およびシンク電流を同時に検出すると共に、ソース電流、およびシンク電流のいずれか一方に対する他方の差分を検出する。故障判定回路32は、検出された差分が所定の第3閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0090】
[B]電流検出回路35は、ソース電流の標本抽出期間を、タイミング制御回路15が入力する第1検出クロック信号SMP1によって指定される。電流検出回路35は、第1検出クロック信号SMP1に指定された第1標本抽出期間TSM1に、当該期間のソース電流からピーク値を検出する。故障判定回路32は、検出されたピーク値が所定の第1判定用閾値Ith1(
図6を参照)よりも大きいか否かを判定する。
【0091】
[C]電流検出回路35は、ソース電流の標本抽出期間を、タイミング制御回路15が入力する第2検出クロック信号SMP2によって指定される。電流検出回路35は、第2検出クロック信号SMP2に指定された第2標本抽出期間TSM2に、当該期間のソース電流から収束値を検出する。故障判定回路32は、検出された収束値が所定の第2判定用閾値Ith2(
図6を参照)よりも大きいか否かを判定する。
【0092】
なお、交流化された電圧が調光シート20に印加される場合であっても、電流検出回路35は、ソース電流の流れる方向を変えることなく、ソース電流を検出できる。また、電流検出回路35は、シンク電流の流れる方向を変えることなく、シンク電流を検出できる。
【0093】
また、第1検出クロック信号SMP1が、反転クロック信号CLK1の立ち下がりと共に立ち上がり、かつ第1標本抽出期間TSM1だけハイレベルを保つように、クロック発生回路18は、別途、第1検出クロック信号SMP1を整形してもよい。電流検出回路35は、こうして整形された第1検出クロック信号SMP1の入力を受け、当該第1検出クロック信号SMP1に指定される標本抽出期間に、シンク電流のピーク値を検出してもよい。そして、故障判定回路32は、シンク電流のピーク値が第1判定用閾値Ith1よりも大きいか否かを判定してもよい。なお、電源回路10は、ソース電流のピーク値が所定の第1判定用閾値Ith1よりも大きいか否か、およびシンク電流のピーク値が第1判定用閾値Ith1よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0094】
また、第2検出クロック信号SMP2が、反転クロック信号CLK1の立ち上がりに先駆けて、第2標本抽出期間TSM2だけハイレベルを保つように、クロック発生回路18は、別途、第2検出クロック信号SMP2を整形してもよい。電流検出回路35は、こうして整形された第2検出クロック信号SMP2の入力を受け、当該第2検出クロック信号SMP2に指定される標本抽出期間に、シンク電流の収束値を検出してもよい。そして、故障判定回路32は、シンク電流の収束値が所定の第2判定用閾値Ith2よりも大きいか否かを判定してもよい。なお、電源回路10は、ソース電流の収束値が所定の第2判定用閾値Ith2よりも大きいか否か、およびシンク電流のピーク値が所定の第2判定用閾値Ith2よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0095】
[故障検出部の構成例]
次に、電源回路10が備える故障検出部の機能的構成例を説明する。
図4が示すように、電源回路10は、第1検出回路352、第2検出回路353、差分検出回路354、漏電検知回路355、第1標本抽出回路356、および第1判定回路357を備える。電源回路10は、第2標本抽出回路358、および第2判定回路359をさらに備えてもよい。
【0096】
第1検出回路352、第2検出回路353、差分検出回路354、第1標本抽出回路356、および第2標本抽出回路358は、電流検出回路35を構成する。漏電検知回路355は、第1判定回路357、および第2判定回路359は、故障判定回路32を構成する。
【0097】
第1検出回路352、第2検出回路353、差分検出回路354、および漏電検知回路355は、電源回路10が[A]システム漏電の有無を判定するために、ソース電流、およびシンク電流の一方に対する他方の差分を検出し、検出された差分が所定の閾値よりも大きいか否かを出力する。
【0098】
第1検出回路352は、第1透明電極層22に入るソース電流、および第1透明電極層22から出るシンク電流を検出する。第2検出回路353は、第2透明電極層23に入るソース電流、および第2透明電極層23から出るシンク電流を検出する。
【0099】
差分検出回路354は、第1透明電極層22に入るソース電流と、第2透明電極層23から出るシンク電流との差分を検出する。差分検出回路354は、第2透明電極層23に入るソース電流と、第1透明電極層22から出るシンク電流との差分を検出する。
【0100】
漏電検知回路355は、差分検出回路354の検出結果と所定の閾値との比較を行い、差分検出回路354の検出結果が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。漏電検知回路355は、差分検出回路354の検出結果が所定の閾値よりも大きいと判定したとき、[A]システム漏電が生じていることを出力する。反対に、漏電検知回路355は、差分検出回路354の検出結果が所定の閾値以下であると判定したとき、[A]システム漏電が生じていないことを出力する。
【0101】
第1検出回路352、および第1標本抽出回路356は、電源回路10が[B]反転時異常の有無を判定するために、検知電流の時間的変化からピーク値に相当するピーク電圧を検出する。第1標本抽出回路356は、例えば、クロック発生回路18の入力する第1検出クロック信号SMP1がハイレベルである期間に、第1検出回路352の検知電流から、当該期間のピーク電圧を検出する。
【0102】
第1判定回路357は、第1標本抽出回路356が検出したピーク値と第1判定用閾値Ith1との比較を行い、第1標本抽出回路356の検出したピーク値が第1判定用閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する。第1判定回路357は、第1標本抽出回路356の検出したピーク値が第1判定用閾値Ith1よりも大きいと判定したとき、[B]反転時異常が生じていることを出力する。反対に、第1判定回路357は、第1標本抽出回路356の検出したピーク値が第1判定用閾値Ith1以下であると判定したとき、[B]反転時異常が生じていないことを出力する。
【0103】
第1検出回路352、および第1標本抽出回路356は、電源回路10が[C]収束時異常の有無を判定するために、検知電流の時間的変化から収束値を検出する。第1標本抽出回路356は、例えば、クロック発生回路18の入力する第2検出クロック信号SMP2がハイレベルである期間に、第1検出回路352の検知電流から、当該期間の収束値を検出する。
【0104】
第1判定回路357は、第1標本抽出回路356が検出した収束値と第2判定用閾値Ith2との比較を行い、第1標本抽出回路356の検出した収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいか否かを判定する。第1判定回路357は、第1標本抽出回路356の検出した収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいと判定したとき、[C]収束時異常が生じていることを出力する。反対に、第1判定回路357は、第1標本抽出回路356の検出した収束値が第2判定用閾値Ith2以下であると判定したとき、[C]収束時異常が生じていないことを出力する。
【0105】
第2検出回路353、および第2標本抽出回路358もまた、電源回路10が[B]反転時異常の有無を判定するために、検知電流の時間的変化からピーク値を検出してもよい。第2判定回路359もまた、第2標本抽出回路358が検出したピーク値と第1判定用閾値Ith1との比較を行い、第2標本抽出回路358の検出したピーク値が第1判定用閾値Ith1よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0106】
第2標本抽出回路358、および第2判定回路359による[B]反転時異常の検出をさらに行う構成は、第1標本抽出回路356、および第1判定回路357による検出のみと比べて、検出された結果の確度を高める。
【0107】
第2検出回路353、および第2標本抽出回路358もまた、電源回路10が[C]収束時異常の有無を判定するために、検知電流の時間的変化から収束値を検出してもよい。第2判定回路359もまた、第2標本抽出回路358が検出した収束値と第2判定用閾値Ith2との比較を行い、第2標本抽出回路358の検出した収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいか否かを判定してもよい。
【0108】
第2標本抽出回路358、および第2判定回路359による[C]収束時異常の検出をさらに行う構成は、第2標本抽出回路358、および第2判定回路359による検出のみと比べて、[C]収束時異常に関わる検出された結果の確度を高める。
【0109】
[故障検出部の回路構成例]
次に、電源回路10が備える故障検出部の回路構成例を説明する。
なお、[B]反転時異常を検出する回路構成例は、[A]システム漏電を検出する回路構成例の差分検出回路354を、検知電流から標本を抽出する回路構成に変更することによって具体化できる。[C]収束時異常を検出する回路構成例もまた、[A]システム漏電を検出する回路構成例の差分検出回路354を、検知電流から標本を抽出する回路構成に変更することによって具体化できる。
【0110】
すなわち、第1標本抽出回路356、および第1判定回路357の一例は、差分検出回路354、および漏電検知回路355のうち、差分検出回路354を検知電流から標本を抽出する回路構成に変更することによって具体化できる。第2標本抽出回路358、および第2判定回路359もまた、差分検出回路354、および漏電検知回路355のうち、差分検出回路354を、検知電流から標本を抽出する回路構成に変更することによって具体化できる。
【0111】
そのため、以下では、第1検出回路352、第2検出回路353、差分検出回路354、および漏電検知回路355の一例について主に説明する。そして、第1標本抽出回路356、第1判定回路357、第2標本抽出回路358、および第2判定回路359については、差分検出回路354、および漏電検知回路355と相違する点を主に説明する。
【0112】
図5が示すように、第1検出回路352は、差動増幅回路である。第1検出回路352は、第1シャント抵抗器2R0、第1オペアンプ20P1と、抵抗器2R1、抵抗器2R2、抵抗器2R3、および抵抗器2R4を備える。
【0113】
第1オペアンプ20P1の反転入力端子は、第1シャント抵抗器2R0と抵抗器2R1とを介して、第1透明電極層22に接続される。第1オペアンプ20P1の反転入力端子は、抵抗器2R2を介して第1オペアンプ20P1の出力端子にも接続される。第1オペアンプ20P1の非反転入力端子は、抵抗器2R3を介して、第1透明電極層22に接続される。第1オペアンプ20P1の非反転入力端子は、抵抗器2R4を介して、基準電圧にも接続される。
【0114】
第1検出回路352は、第1シャント抵抗器2R0の電圧を所定の増幅率で第1出力電圧に増幅する。第1検出回路352は、第1出力電圧を差分検出回路354に出力する。第1検出回路352の出力端352Aは、差分検出回路354、および第1標本抽出回路356に接続される。
【0115】
第2検出回路353は、差動増幅回路である。第2検出回路353は、第2シャント抵抗器3R0、第2オペアンプ30P1と、抵抗器3R1、抵抗器3R2、抵抗器3R3、および抵抗器3R4を備える。
【0116】
第2オペアンプ30P1の反転入力端子は、第2シャント抵抗器3R0と抵抗器3R1とを介して、第2透明電極層23に接続される。第2オペアンプ30P1の反転入力端子は、抵抗器3R2を介して第2オペアンプ30P1の出力端子にも接続される。第2オペアンプ30P1の非反転入力端子は、抵抗器3R3を介して、第2透明電極層23に接続される。第2オペアンプ30P1の非反転入力端子は、抵抗器3R4を介して、基準電圧にも接続される。
【0117】
第2検出回路353は、第2シャント抵抗器3R0の電圧を所定の増幅率で第2出力電圧に増幅する。第2検出回路353は、第2出力電圧を差分検出回路354に出力する。第2検出回路353の出力端353Aは、差分検出回路354、および第2標本抽出回路358に接続される。
【0118】
差分検出回路354は、差動増幅回路である。差分検出回路354は、第3オペアンプ40P1と、抵抗器4R1、抵抗器4R2、抵抗器4R3、および抵抗器4R4を備える。
【0119】
第3オペアンプ40P1の反転入力端子は、抵抗器4R1を介して、第2検出回路353の出力端子に接続される。第3オペアンプ40P1の反転入力端子は、抵抗器4R2を介して第3オペアンプ40P1の出力端子にも接続される。第3オペアンプ40P1の非反転入力端子は、抵抗器4R3を介して、第1検出回路352の出力端子に接続される。第3オペアンプ40P1の非反転入力端子は、抵抗器3R4を介して、基準電圧にも接続される。
【0120】
差分検出回路354は、第1検出回路352の出力電圧と、第2検出回路353の出力電圧との差を所定の増幅率で差分電圧に増幅する。差分検出回路354は、差分電圧を漏電検知回路355に出力する。
【0121】
漏電検知回路355は、差分検出回路354の出力電圧と、所定の参照電圧である漏電参照電圧とを比較する比較回路である。漏電検知回路355は、第4オペアンプ50P1と、抵抗器5R1、抵抗器5R2、可変抵抗器5R3、および抵抗器5R4を備える。
【0122】
抵抗器5R2、可変抵抗器5R3、および抵抗器5R4は、直列の抵抗分圧回路を構成する。抵抗分圧回路の出力電圧は、可変抵抗器5R3の抵抗値によって変わる。抵抗分圧回路の出力電圧は、漏電参照電圧であり、[A]システム漏電の有無を判定するための閾値として機能する。
【0123】
第4オペアンプ50P1の反転入力端子は、抵抗器5R2と可変抵抗器5R3との接続端に接続される。第4オペアンプ50P1の非反転入力端子は、差分検出回路354の出力端に接続される。第4オペアンプ50P1の非反転入力端子は、抵抗器5R1を介して差分検出回路354の出力端に接続される。
【0124】
漏電検知回路355は、差分検出回路354の出力電圧と漏電参照電圧との差分を増幅する。漏電検知回路355は、差分検出回路354の出力電圧が漏電参照電圧よりも高い場合、ハイレベルの電圧を出力する。漏電検知回路355は、差分検出回路354の出力電圧が漏電参照電圧よりも低い場合、ローレベルの電圧を出力する。漏電検知回路355がハイレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[A]システム漏電が生じていると判定する。反対に、漏電検知回路355がローレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[A]システム漏電が生じていないと判定する。
【0125】
第1標本抽出回路356、および第2標本抽出回路358は、それぞれサンプルホールド回路を備える。サンプルホールド回路は、第1検出クロック信号SMP1、および第2検出クロック信号SMP2を、各別の入力クロックとする。サンプルホールド回路は、検知電流を保持するためのホールドキャパシタを備える。サンプルホールド回路は、第1検出クロック信号SMP1がハイレベルであるとき、第1検出クロック信号SMP1がハイレベルである期間の標本のなかのピーク値を、ピーク電圧として保持する。サンプルホールド回路は、第2検出クロック信号SMP2がハイレベルであるとき、第2検出クロック信号SMP2がハイレベルである期間の標本のなかの収束値を、収束電圧として保持する。
【0126】
第1判定回路357、および第2判定回路359は、それぞれ比較回路を備える。
第1判定回路357の比較回路は、第1標本抽出回路356の出力端に接続される。第1判定回路357の比較回路は、第1標本抽出回路356から、第1標本抽出回路356が保持するピーク電圧を入力される。第1判定回路357の比較回路は、第1標本抽出回路356から、第1標本抽出回路356が保持する収束電圧を入力される。
【0127】
第2判定回路359の比較回路は、第2標本抽出回路358の出力端に接続される。第2判定回路359の比較回路は、第2標本抽出回路358から、第2標本抽出回路358が保持するピーク電圧を入力される。第2判定回路359の比較回路は、第2標本抽出回路358から、第2標本抽出回路358が保持する収束電圧を入力される。
【0128】
比較回路は、次回の第1標本抽出期間TSM1がはじまるまで、今回の第1標本抽出期間TSM1に検出されたピーク電圧を保持する。比較回路は、今回の第1標本抽出期間TSM1が経過し、次回の第1標本抽出期間TSM1がはじまる前に、今回の第1標本抽出期間TSM1に検出されたピーク電圧と、所定の参照電圧である第1故障参照電圧との差分を増幅する。差分の生成に用いられる第1故障参照電圧は、[B]反転時異常を検出するための第1判定用閾値Ith1として機能する。
【0129】
比較回路は、収束電圧が第1故障参照電圧よりも高い場合、ハイレベルの電圧を出力する。比較回路は、ピーク電圧が第1故障参照電圧よりも低い場合、ローレベルの電圧を出力する。第1判定回路357の比較回路、および第2判定回路359の比較回路の両方が、ハイレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[B]反転時異常が生じていないと判定する。反対に、第1判定回路357の比較回路、あるいは第2判定回路359の比較回路が、ローレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[B]反転時異常が生じていると判定する。
【0130】
比較回路は、次回の第2標本抽出期間TSM2がはじまるまで、今回の第2標本抽出期間TSM2に検出された収束電圧を保持する。比較回路は、今回の第2標本抽出期間TSM2が経過し、次回の第2標本抽出期間TSM2がはじまる前に、今回の第2標本抽出期間TSM2に検出された収束値と、所定の参照電圧である第2故障参照電圧との差分を増幅する。差分の生成に用いられる第2故障参照電圧は、[C]収束時異常を検出するための第2判定用閾値Ith2として機能する。
【0131】
比較回路は、収束値が第2故障参照電圧よりも高い場合、ハイレベルの電圧を出力する。比較回路は、収束値が第2故障参照電圧よりも低い場合、ローレベルの電圧を出力する。第1判定回路357の比較回路、および第2判定回路359の比較回路の両方が、ハイレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[C]収束時異常が生じていると判定する。反対に、第1判定回路357の比較回路、あるいは第2判定回路359の比較回路が、ローレベルの電圧を出力するとき、故障判定回路32は、[C]収束時異常が生じていないと判定する。
【0132】
[電源回路10の動作]
電源回路10は、上述したピーク値を検出する処理、収束値を検出する処理、ピーク値と第1判定用閾値Ith1との比較に基づいて故障の有無を判定する処理、および収束値と第2判定用閾値Ith2との比較に基づいて故障の有無を判定する処理を行う。電源回路10は、各種の処理をソフトウェアによって処理するものを含む。電源回路10は、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)などの専用のハードウェアを備えてもよい。電源回路10は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路としても構成される。なお、以下では、電源回路10に備えられるプロセッサが、電源回路10に備えられる可読媒体の記憶した駆動プログラムを読み出して実行し、各種の処理を行う例を説明する。
【0133】
図7が示すように、電源回路10のプロセッサは、調光シート20を駆動させる操作指示を受け、第1昇圧回路12、制御用電源作成回路14、タイミング制御回路15、駆動電圧発生回路16、および駆動回路31を駆動させる。これにより、電源回路10のプロセッサは、反転制御信号SIGRに基づいて極性反転する駆動信号SVDを調光シート20に供給する(ステップS11)。
【0134】
電源回路10のプロセッサは、駆動信号SVDの供給と共に、第2昇圧回路13、切り替え回路17、およびクロック発生回路18を駆動させて、所定の制御周期で、故障判定回路32に故障の有無を判定させる(ステップS12)。すなわち、電源回路10のプロセッサは、[A]システム漏電、[B]反転時異常、および[C]収束時異常のいずれかが発生しているか否かを故障判定回路32に判定させる。電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32において故障が検出されるまで、駆動信号SVDの供給を続ける(ステップS12のNO)。
【0135】
電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32が[A]システム漏電を検出した場合、故障判定回路32の出力を通じ、[A]システム漏電が生じている旨を、故障状態表示回路33に外部へ表示させる。電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32が[B]反転時異常を検出した場合、故障判定回路32の出力を通じ、[B]反転異常が生じている旨を、故障状態表示回路33に外部へ表示させる(ステップS18)。
【0136】
次に、電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32が[A]システム漏電を検出した場合、駆動信号SVDの印加を停止するように、タイミング制御回路15、および駆動電圧発生回路16を制御する。電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32が[B]反転時異常を検出した場合、駆動信号SVDの印加を停止するように、タイミング制御回路15、および駆動電圧発生回路16を制御する(ステップS19)。
【0137】
これにより、電源回路10のプロセッサは、[A]システム漏電、および[B]反転異常の少なくとも一方が検出されたとき、調光シート20に対する駆動信号SVDの供給を停止する。
【0138】
一方、電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32が[C]収束時異常のみを検出した場合、[C]収束時異常が生じている旨を、故障状態表示回路33に外部へ表示させる(ステップS13)。また、電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給時間Taを計時するための内部タイマーをクリアする(ステップS14)。
【0139】
故障判定回路32は、調光シート20に供給される信号が駆動信号SVDから補修信号SVRに切り替わるように、補修要求信号SIGSを出力し、切り替え回路17を制御する(ステップS15)。また、電源回路10のプロセッサは、故障判定回路32による補修要求信号SIGSの出力と共に、補修信号SVRの供給時間Taを内部タイマーで計時しはじめる(ステップS16)。この際、上述した故障状態表示回路33による表示は、駆動電圧VLDよりも高電圧である補修電圧VLRの印加の報知として機能する。
【0140】
次に、電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給時間Taが設定時間Tpを経過するまで、故障判定回路32に補修信号SVRを供給させ続ける(ステップS17のNO)。一方、電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給時間Taが設定時間Tpに到達すると、故障判定回路32に補修要求信号SIGSの出力を停止させる。なお、設定時間Tpは、補修信号SVRの供給によって微小短絡を切断できる時間として、試験、あるいはシミュレーションによって得られる時間である。また、設定時間Tpは、電源回路10のプロセッサに予め設定された時間である。そして、電源回路10のプロセッサは、調光シート20に供給される信号を補修信号SVRから駆動信号SVDに切り換える(ステップS17のYES)。
これにより、電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRを供給し、調光シート20に生じた微小短絡を切断する。
【0141】
[判定用閾値]
次に、検知電流の時間的変化について回路シミュレーションの結果を用いて説明する。なお、
図8は、検知電流の時間的変化を得るための回路シミュレーションに用いられた負荷回路である。負荷回路は、調光シート20、および電源回路10に調光シート20を接続する伝送路の抵抗を含めた等価回路を示す。
【0142】
図8が示すように、負荷回路は、第1端子PaS、および第2端子PbSとを備える。第1端子PaSは、例えば、調光シート20を構成する端子であり、駆動回路31に第1透明電極層22を接続する端子である。第2端子PbSは、例えば、調光シート20を構成する端子であり、駆動回路31に第2透明電極層23を接続する端子である。
【0143】
負荷回路は、第1配線抵抗R1S、および第2配線抵抗R5Sを備える。第1配線抵抗R1Sは、駆動回路31に第1透明電極層22を接続する配線抵抗である。第2配線抵抗R5Sは、駆動回路31に第2透明電極層23を接続する配線抵抗である。
【0144】
負荷回路は、第1接地抵抗R12S、および第2接地抵抗R13Sを備える。第1接地抵抗R12Sは、第1透明電極層22を接地電位に接続する抵抗である。第2接地抵抗R13Sは、第2透明電極層23を接地電位に接続する抵抗である。第1接地抵抗R12S、および第2接地抵抗R13Sは、調光シート20が設置された周辺環境に透明電極層22,23を各別に接続する水分、あるいは異物によって生じる。
【0145】
負荷回路は、第1接触抵抗R2S、および第2接触抵抗R6Sを備える。第1接触抵抗R2Sは、第1配線抵抗R1Sに直列接続された抵抗であって、第1透明電極層22と配線との接触抵抗である。第2接触抵抗R6Sは、第2配線抵抗R5Sに直列接続された抵抗であって、第2透明電極層23と配線との接触抵抗である。
【0146】
負荷回路は、第1入力端電極抵抗R3S、および第1周辺電極抵抗R4Sを備える。第1入力端電極抵抗R3S、および第1周辺電極抵抗R4Sは、それぞれ第1透明電極層22の一部における抵抗である。第1入力端電極抵抗R3S、および第1周辺電極抵抗R4Sは、第1透明電極層22の等価回路である直列回路を構成する。
【0147】
負荷回路は、第2入力端電極抵抗R7S、および第2周辺電極抵抗R8Sを備える。第2入力端電極抵抗R7S、および第2周辺電極抵抗R8Sは、それぞれ第2透明電極層23の一部における抵抗である。第2入力端電極抵抗R7S、および第2周辺電極抵抗R8Sは、第2透明電極層23の等価回路である直列回路を構成する。
【0148】
負荷回路は、入力端液晶容量C1S、内部液晶容量C2S、および縁部液晶容量C3Sを備える。負荷回路は、入力端液晶抵抗R9S、内部液晶抵抗R10S、および縁部液晶抵抗R11Sを備える。
【0149】
入力端液晶容量C1Sと入力端液晶抵抗R9Sとは、第1透明電極層22と第2透明電極層23とを接続する並列回路であって、第1接触抵抗R2Sと第2接触抵抗R6Sとを接続する。内部液晶容量C2Sと内部液晶抵抗R10Sとは、第1透明電極層22と第2透明電極層23とを接続する並列回路であって、第1入力端電極抵抗R3Sと第2入力端電極抵抗R7Sとを接続する。縁部液晶容量C3Sと縁部液晶抵抗R11Sとは、第1透明電極層22と第2透明電極層23とを接続する並列回路であって、第1周辺電極抵抗R4Sと第2周辺電極抵抗R8Sとを接続する。
【0150】
上述した等価回路を用い、第1端子PaSと第2端子PbSとの間に方形波を入力し、かつ第1配線抵抗R1Sに流れる電流を検知電流として、回路シミュレーションによる検知電流の時間的な変化を得た。この際、方形波である駆動信号SVDとして、ローレベルに0V、ハイレベルに80V、周波数に50Hz(周期TS=20msec)を設定した。また、等価回路を構成する回路要素の特性値として、以下の基準値を用いた。
第1配線抵抗R1S :5Ω
第2配線抵抗R5S :5Ω
第1接地抵抗R12S :500kΩ
第2接地抵抗R13S :500kΩ
第1接触抵抗R2S :20Ω
第2接触抵抗R6S :20Ω
第1入力端電極抵抗R3S :10Ω
第1周辺電極抵抗R4S :10Ω
第2入力端電極抵抗R7S :10Ω
第2周辺電極抵抗R8S :10Ω
入力端液晶容量C1S :10μF
内部液晶容量C2S :10μF
縁部液晶容量C3S :10μF
入力端液晶抵抗R9S :500kΩ
内部液晶抵抗R10S :500kΩ
縁部液晶抵抗R11S :500kΩ
【0151】
図9は、第1接触抵抗R2Sの抵抗値を基準値から100Ωまで変化させた場合の検知電流の時間的な変化を示す。すなわち、
図9は、[B]伝送路高抵抗化が生じた場合の検知電流の時間的な変化を示す。
【0152】
図9の実線が示すように、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が基準値である場合、検知電流は、駆動信号SVDの反転直後にピーク電流値Ipkを有する。
図9の破線が示すように、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が、基準値よりも高い50Ωである場合、反転周期TSの検知電流は、駆動信号SVDの反転直後に、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が基準値である場合よりも低いピーク電流値を有する。また、
図9の二点鎖線が示すように、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が、さらに高い100Ωである場合、検知電流は、駆動信号SVDの反転直後に、さらに低いピーク電流値を有する。
【0153】
図10が示すように、検知電流のピーク電流値Ipkは、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が高いほど低い。言い換えれば、第1接触抵抗R2Sのように、伝送部材における抵抗値の増大、あるいは伝送部材間の接触抵抗値の増大は、ソース電流においてピーク値の低下、あるいはシンク電流においてピーク値の低下として現れるといえる。
【0154】
なお、入力端液晶容量C1Sの容量値を0μFから基準値まで変化させた場合の検知電流の時間的な変化においても、第1接触抵抗R2Sにおける抵抗値の変化と同様の傾向が認められた。すなわち、入力端液晶容量C1Sの容量値が低いほど、駆動信号SVDの反転直後における検知電流のピーク値が低いことが認められた。これにより、液晶の容量値に関しても、容量値の低下は、ソース電流においてピーク値の低下、あるいはシンク電流においてピーク値の低下として現れるといえる。
【0155】
以上から、伝送部材における抵抗値、伝送部材間の接触抵抗値、および液晶の容量値が正常であるときのピーク値の下限値が、第1判定用閾値Ith1に設定される構成であれば、[B]反転時異常が生じているか否かが検出されるといえる。
【0156】
図11は、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値を0Ωから基準値まで変化させた場合の検知電流の時間的な変化を示す。すなわち、
図11は、[C]微小短絡が生じた場合の検知電流の時間的な変化を示す。
【0157】
図11の実線が示すように、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が0Ωである場合、検知電流は、駆動信号SVDの反転直前に到達電流値Isaを有する。
図10の破線が示すように、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が、0Ωよりも高い50Ωである場合、検知電流は、駆動信号SVDの反転直前に、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が0Ωである場合よりも低い到達電流値を有する。また、
図11の二点鎖線が示すように、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が、さらに高い基準値である場合、検知電流は、駆動信号SVDの反転直前に、さらに低い到達電流値を有する。
【0158】
図12が示すように、検知電流の到達電流値Isaは、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が高いほど低い。言い換えれば、縁部液晶抵抗R11Sのように、微小短絡の存在は、ソース電流において収束値の上昇、あるいはシンク電流において収束値の上昇として現れるといえる。
【0159】
以上から、第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に微小短絡が認められるときの収束値の下限値が、第2判定用閾値Ith2に設定される構成であれば、[C]反転時異常が生じているか否かが検出されるといえる。
【0160】
図13は、第2接地抵抗R13Sの抵抗値を100Ωから基準値から100Ωまで変化させた場合の検知電流の時間的な変化を示す。すなわち、
図13は、透明電極層が地絡した場合の検知電流の時間的な変化を示す。
【0161】
図13が示すように、第2接地抵抗R13Sの抵抗値が100Ωである場合と、第2接地抵抗R13Sの抵抗値が基準値である場合とは、相互に等しいピーク電流値を示し、また相互に等しい到達電流値Isaを有する。
【0162】
以上から、第1透明電極層22が地絡する場合であれ、第2透明電極層23が地絡する場合であれ、各別に生じる地絡は、ピーク値に基づく故障の判定結果、および収束値に基づく故障の判定結果に関与しないといえる。
【0163】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に流れる検知電流のピーク値が第1判定用閾値Ith1以下であることが、[B]反転時異常として検出される。これにより、検知電流のピーク値が第1判定用閾値Ith1以下であることに由来した故障、すなわち[B]反転時異常として、各透明電極層22,23と配線との接触抵抗値の高抵抗化が、故障として検出される。あるいは、[B]反転時異常として、液晶化合物の低容量化が、故障として検出される。
【0164】
(2)第1透明電極層22と第2透明電極層23との間に流れる検知電流の収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいことが、[C]収束時異常として検出される。これにより、検知電流の収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいことに由来した故障、すなわち、[C]収束時異常として、透明電極層22,23間の微小短絡が、調光シートの故障として検出される。
【0165】
以上から、例えば透明電極層22,23と配線との接触部位を故障の発生部位として特定したり、液晶化合物を故障の発生部位として特定したり、透明電極層22,23の間隙を故障の発生部位として特定したりすることが、容易となる。結果として、調光シート20において故障が発生している部位の特定を補助できる。
【0166】
(3)容量として機能する調光層21は、駆動電圧VLDの印加によって急峻に上昇するように電流を流し、その後、指数関数的に減衰するように電流を流す。この点、第1標本抽出期間TSM1の開始は、駆動電圧VLDの極性反転に合わせられる。これにより、ピーク値の検出に適した第1標本抽出期間TSM1が定められる。また、第2標本抽出期間TSM2の終了も、駆動電圧VLDの極性反転に合わせられる。これにより、収束値の検出に適した第2標本抽出期間TSM2が定められる。そして、第1標本抽出期間の検知電流を対象としてピーク値が検出され、かつ第2標本抽出期間の検知電流を対象として収束値が検出される。これにより、ピーク値と収束値との両方が精度よく検出される。
【0167】
(4)上述したように、[B]反転時異常は、接触抵抗値の高抵抗化、あるいは液晶化合物の低容量化に由来する。接触抵抗値の高抵抗化、あるいは液晶化合物の低容量化は、接続構造の補修、あるいは調光シート20そのものの交換を要求する。この点、故障判定回路32が[B]反転時異常を検出すると、電源回路10は駆動信号SVDの供給を停止する。そのため、接続端子と配線との接続構造などの補修、あるいは調光シート20そのものの交換を促すことが容易となる。
【0168】
(5)上述したように、[C]収束時異常は、透明電極層22,23間の微小短絡に由来する。透明電極層22,23間の微小短絡は、駆動電圧VLDよりも高い補修電圧VLRを透明電極層22,23間に印加することによって溶断できる。この点、故障判定回路32が[C]収束時異常を検出すると、電源回路10は補修信号SVRの供給を開始する。これにより、微小短絡が溶断されるように、調光シートの故障に適した補修を行うことが可能ともなる。
【0169】
(6)容量素子として機能する調光層21は、駆動電圧VLDの印加によって急峻に上昇するように電流を流し、その後、指数関数的に減衰するように電流を流す。ここで、透明電極層22,23と配線との接触抵抗値の増大は、検知電流において、急峻な上昇後のピーク値を低めたり、ピークから減衰する速度を低めたりする。また、透明電極層22,23間の微小短絡は、減衰の収束先である収束値を高める。
【0170】
この点、接触抵抗値に由来したピーク値が、透明電極層22,23の間に流れる電流の波形から特定される。そして、特定されたピーク値が第1判定用閾値Ith1以下であるとき、接触抵抗値の増大として検出される。これにより、透明電極層22,23と配線との接触部位を故障の発生部位に特定できる。
【0171】
(7)また、透明電極層22,23の間の抵抗値に由来した収束値が、電流波形から特定される。そして、特定された収束値が第2判定用閾値Ith2よりも大きいことが、微小短絡の存在として検出される。これにより、透明電極層22,23の間に故障の発生部位が存在することを特定できる。
【0172】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[外部電源]
・外部電源50の供給電圧が24Vの直流電圧である場合、変圧回路11は、制御用電源作成回路14の入力レベルに直流電圧を変換する。変圧回路11は、第1昇圧回路12、第2昇圧回路13、および制御用電源作成回路14に、それぞれ変換後の直流電圧を出力する。なお、外部電源50の出力電圧が昇圧回路、および制御用電源作成回路14の入力レベルである場合、変圧回路11は省略され、第1昇圧回路12、第2昇圧回路13、および制御用電源作成回路14は、それぞれ外部電源50に接続されてもよい。
【0173】
[タイミング制御回路15]
・タイミング制御回路15は、駆動電圧発生回路16の極性反転タイミングと、第1標本抽出期間TSM1の開始との整合に、反転制御信号SIGRを生成するためクロック信号を用いる。一方、駆動電圧発生回路16の極性反転タイミングと、第1標本抽出期間TSM1の開始との整合は、クロック発生回路18による駆動信号SVDの監視に基づいて行うことも可能である。すなわち、クロック発生回路18は、駆動信号SVDにおけるゼロクロスのタイミングを検出し、検出されたタイミングと、第1標本抽出期間TSM1の開始とを整合させてもよい。
【0174】
・タイミング制御回路15は、駆動電圧発生回路16の極性反転タイミングと、第2標本抽出期間TSM2の終了との整合に、反転制御信号SIGRを生成するためクロック信号を用いる。一方、駆動電圧発生回路16の極性反転タイミングと、第2標本抽出期間TSM2の終了との整合は、クロック発生回路18による駆動信号SVDの監視に基づいて行うことも可能である。すなわち、クロック発生回路18は、駆動信号SVDにおけるゼロクロスのタイミングを検出し、検出されたタイミングと、第2標本抽出期間TSM2の終了とを整合させてもよい。
【0175】
[補修信号SVR]
・電源回路10は、補修信号SVRを直流電圧信号に変更してもよい。
例えば、故障判定回路32は、[C]収束時異常が検出されるごとに、タイミング制御回路15に所定時間だけ補修要求信号SIGSを入力してもよい。タイミング制御回路15は、補修要求信号SIGSを受けたとき、反転制御信号SIGRの出力を停止してもよい。駆動電圧発生回路16は、反転制御信号SIGRの入力の停止に伴い、補修信号SVRとして直流電圧信号を出力してもよい。電流検出回路35は、直流電圧信号の供給として、短絡した微小部分に補修電圧VLRを所定時間だけ印加し続ける。これによれば、極性反転が繰り返される補修信号SVRの供給と比べて、短絡した微小部分の絶縁化が短時間で行われる。
【0176】
例えば、故障判定回路32は、[C]収束時異常が検出されるごとに、駆動電圧発生回路16に所定時間だけ補修要求信号SIGSを入力してもよい。駆動電圧発生回路16は、補修要求信号SIGSを受けたとき、反転制御信号SIGRに基づく処理を停止し、補修要求信号SIGSに基づく処理を優先させてもよい。補修要求信号SIGSに基づく処理は、所定時間だけ補修電圧VLRを出力する。電流検出回路35は、直流電圧信号の供給として、短絡した微小部分に補修電圧VLRを所定時間だけ印加し続ける。これによれば、補修電圧VLRの反転が繰り返される補修信号SVRの供給と比べて、短絡した微小部分の絶縁化が短時間で行われる。
【0177】
[補修の可否判定]
・電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給による補修の可否を補修信号SVRの供給回数によって判定してもよい。電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給による補修が不可能であると判定したとき、補修信号SVRの供給による補修が不能である旨を故障状態表示回路33に表示させてもよい。
【0178】
これによれば、補修電圧VLRの印加による微小短絡の補修が不能であるとき、補修電圧VLRの印加では微小短絡の補修が不可能であることを利用者が把握できる。そのため、高電圧である補修電圧VLRの印加を利用者が不要に繰り返すことが抑えられる。
【0179】
例えば、電源回路10のプロセッサは、前回の補修要求信号SIGSと今回の補修要求信号SIGSとが故障の判定周期で連続するとき、補修要求信号SIGSの出力された回数をカウントアップしてもよい。すなわち、電源回路10のプロセッサは、ステップS12の実行ごとに故障が検出される場合、補修要求信号SIGSの出力された回数をカウントアップしてもよい。電源回路10のプロセッサは、補修要求信号SIGSの出力回数が所定回数に達するまで、補修信号SVRの供給による補修が可能であると判定してもよい。一方で、電源回路10のプロセッサは、補修要求信号SIGSの出力回数が所定回数に達したとき、補修信号SVRの供給による補修が不可能であると判定し、補修信号SVR、および駆動信号SVDの供給を停止してもよい。
【0180】
これにより、補修電圧VLRの印加による微小短絡の補修が不能であるとき、透明電極層22,23間の電圧印加が中止されるため、微小短絡が存在する状態で透明電極層22,23間に電圧が印加され続けることが抑えられる。
【0181】
・電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給による補修の可否を補修電圧VLRの供給時間によって判定してもよい。電源回路10のプロセッサは、補修信号の供給による補修が不可能であると判定したとき、補修信号SVRの供給による補修が不可能である旨を故障状態表示回路33に表示させてもよい。
【0182】
これによれば、補修電圧VLRの印加による微小短絡の補修が不能であるとき、補修電圧VLRの印加では微小短絡の補修が不可能であることを利用者が把握できる。そのため、高電圧である補修電圧VLRの印加を利用者が不要に繰り返すことが抑えられる。
【0183】
例えば、電源回路10のプロセッサは、前回の補修要求信号SIGSと今回の補修要求信号SIGSとが故障の判定周期で連続するとき、補修信号SVRの供給された総時間を算出してもよい。すなわち、電源回路10のプロセッサは、ステップS12の実行ごとに故障が検出される場合、補修信号SVRの総供給時間を算出してもよい。電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの総供給時間が所定時間に達するまで、補修信号SVRの供給による補修が可能であると判定してもよい。一方で、電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの総供給時間が所定時間に達したとき、補修信号SVRの供給による補修が不可能であると判定し、補修信号SVR、および駆動信号SVDの供給を停止してもよい。
【0184】
これによっても、補修電圧VLRの印加による微小短絡の補修が不能であるとき、透明電極層22,23間の電圧印加が中止されるため、微小短絡が存在する状態で透明電極層22,23間に電圧が印加され続けることが抑えられる。
【0185】
・電源回路10のプロセッサは、補修信号SVRの供給時間Taが設定時間Tpに到達すると、故障判定回路32に補修要求信号SIGSの出力を停止させる。そして、電源回路10のプロセッサは、調光シート20に供給される信号を補修信号SVRから駆動信号SVDに切り換える。この際、電源回路10のプロセッサは、駆動信号SVDの供給後に故障判定回路32が故障を検出しなかった場合、[C]収束時異常が補修されたこと、すなわち微小短絡の補修が完了した旨を、故障状態表示回路33に外部へ表示させてもよい。
【0186】
これによれば、調光シート20の利用者は、微小短絡の補修が完了したことを把握できる。そして、調光シートの故障検出装置は、微小短絡の補修後における対応を利用者に促すことが可能ともなる。結果として、高電圧である補修電圧を印加する期間を、より適切な長さとすること、および、調光シートの駆動を補修のために停止させる期間を、より適切な長さとすることができる。
【0187】
[故障判定]
・電源回路10は、[A]システム漏電を検出する構成、および[C]収束時異常を検出する構成を備え、かつ[B]反転時異常を検出する構成が割愛されたる構成でもよい。また、電源回路10は、[B]反転時異常を検出する構成、および[C]収束時異常を検出する構成を備え、かつ[A]システム漏電を検出する構成が割愛された構成でもよい。また、電源回路10は、[C]収束時異常を検出する構成を備え、かつ[A]システム漏電を検出する構成、および[B]反転時異常を検出する構成が割愛された構成でもよい。
【0188】
・電源回路10は、検知電流の収束値以外の電気的特性値に基づいて微小短絡を検出してもよい。例えば、電源回路10は、第2特性値として、検知電流の時間的変化を採用してもよい。
【0189】
図11が示すように、縁部液晶抵抗R11Sの抵抗値が低いほど、検知電流の低下する期間は短い。そこで、電源回路10は、検知電流の単位時間あたりの低下が所定値以上であることを満たす期間の長さに閾値を設定し、閾値よりも長い期間にわたり所定値以上の電流低下が検出されるとき、微小短絡が存在しないと判定してもよい。また、電源回路10は、所定値以上の電流低下が閾値以下の期間で収まるとき、微小短絡が存在すると判定してもよい。
【0190】
なお、
図11が示すように、検知電流の収束値に差異が認められる期間は、検知電流の単位時間あたりの低下に差異が認められる期間よりも長い。そのため、上述した検知電流の収束値が閾値よりも大きいことに基づいて微小短絡を検出する構成であれば、微小短絡の存在が精度よく検知される。
【0191】
・電源回路10は、検知電流のピーク値以外の電気的特性値に基づいて伝送路高抵抗化を検出してもよい。例えば、電源回路10は、第1特性値として、検知電流の時間的変化を採用してもよい。
【0192】
図9が示すように、第1接触抵抗R2Sの抵抗値が低いほど、検知電流はピークから大きく低下する。そこで、電源回路10は、検知電流の単位時間あたりの低下に閾値を設定し、単位時間あたりの低下が閾値よりも大きいとき、微小短絡が存在しないと判定してもよい。また、電源回路10は、単位時間あたりの低下が閾値以下であるとき、微小短絡が存在すると判定してもよい。
【0193】
・故障状態表示回路33は、報知部の一例であり、故障が生じている旨を表示と音声とによって報知してもよいし、音声のみによって報知してもよい。
[故障検出装置]
・調光シート20は、透明体に貼り付けられた状態でもよいし、透明体に貼り付けられる前の状態でもよいし、調光シート20の製造過程のなかで検査されている状態でもよい。透明体は、例えば、ガラス板、または樹脂板である。調光シートの故障検出装置は、調光シートの駆動装置に適用されてもよいし、調光シートの検査装置に適用されてもよい。調光シートの故障検出方法は。調光シートの駆動方法に適用されてもよいし、調光シートの検査方法に適用されてもよい。
【0194】
なお、平面状を有した調光シート20が曲面状の透明体に貼り付けられる場合、調光シート20において透明電極層22,23の間隔を狭めるような張力が調光シート20に作用する。こうした張力は、透明電極層22,23の間隙に存在する導電性の異物による微小短絡を生じさせやすい。そのため、調光シートの故障検出装置、および調光シートの故障検出方法が、曲面状の透明体に貼り付けられた調光シート20を対象とすることは、微小短絡を切断する効果をより顕著なものとする。
【符号の説明】
【0195】
SVD…駆動信号
TSM1…第1標本抽出期間
TSM2…第2標本抽出期間
VLD…駆動電圧
VLR…補修電圧
10…電源回路
11…変圧回路
12…第1昇圧回路
13…第2昇圧回路
14…制御用電源作成回路
15…タイミング制御回路
16…駆動電圧発生回路
17…切り替え回路
18…クロック発生回路
20…調光シート
21…調光層
22…第1透明電極層
23…第2透明電極層
31…駆動回路
32…故障判定回路
33…故障状態表示回路
35…電流検出回路