IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図1
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図2
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図3
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図4
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図5
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図6
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図7
  • 特許-繊維構造体および繊維強化複合材 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】繊維構造体および繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20241224BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20241224BHJP
   D02G 3/38 20060101ALI20241224BHJP
   D03D 25/00 20060101ALI20241224BHJP
   D03D 1/00 20060101ALI20241224BHJP
   D03D 15/292 20210101ALI20241224BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20241224BHJP
   D03D 15/44 20210101ALI20241224BHJP
【FI】
B32B5/26
B32B5/28 A
D02G3/38
D03D25/00
D03D1/00 A
D03D15/292
D03D15/47
D03D15/44
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021127639
(22)【出願日】2021-08-03
(65)【公開番号】P2023022652
(43)【公開日】2023-02-15
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石本 弘樹
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-030478(JP,A)
【文献】国際公開第2021/033484(WO,A1)
【文献】特開2003-147653(JP,A)
【文献】特開2015-098166(JP,A)
【文献】特開2005-120514(JP,A)
【文献】特開2019-189987(JP,A)
【文献】国際公開第2019/208176(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0238775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
D03D 1/00-27/18
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1繊維束を配列した第1繊維層を複数積層した本体部と、
前記本体部から延出し、かつ積層された複数の前記第1繊維層が二股状に分岐された分岐部と、を備える第1繊維基材と、
第2繊維束を有する第2繊維基材と、を備え、
前記第2繊維基材は、前記分岐部を覆っており、
前記分岐部は、前記第2繊維基材から離間する曲面を備え、
前記第1繊維束は、非連続繊維の束にカバーリング糸を巻回して形成され、
前記第1繊維束では、前記非連続繊維の束の軸方向に隣り合う前記カバーリング糸の間から前記非連続繊維の一部が毛羽として突出しており、
前記曲面は、前記カバーリング糸が巻回される間隔を前記本体部よりも広くしたことにより前記毛羽の量が、前記本体部において前記非連続繊維の束の軸方向に隣り合う前記カバーリング糸の間から突出する前記毛羽の量より多い部位を含み、
前記分岐部と前記第2繊維基材とで画成される隙間には、前記曲面から突出する前記毛羽が位置していることを特徴とする繊維構造体。
【請求項2】
前記第1繊維層における前記第1繊維束の配列方向は、前記本体部および前記分岐部に沿う方向に直交することを特徴とする請求項1に記載の繊維構造体。
【請求項3】
前記第1繊維層における前記第1繊維束の配列方向は、前記本体部および前記分岐部に沿う方向に沿うことを特徴とする請求項1に記載の繊維構造体。
【請求項4】
繊維構造体にマトリックス材料を含浸させて構成される繊維強化複合材であって、前記繊維構造体は、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の繊維構造体である繊維強化複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、繊維構造体および繊維強化複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている繊維構造体および繊維強化複合材は、第1繊維基材と第2繊維基材と隙間充填部材とを備える。第1繊維基材は、繊維層を複数積層した本体部を有するとともに、本体部を繊維層の積層方向に沿って二股状に分岐させた分岐部を有する。第2繊維基材は、分岐部を覆って第1繊維基材に一体化されている。隙間充填部材は、分岐部と第2繊維基材とで画成される隙間に充填される。隙間に充填された隙間充填部材により、隙間が補強されている。特許文献1の隙間充填部材は、非連続繊維の繊維束であることから紐状である。このため、隙間充填部材を隙間に配置する作業が簡単になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-30478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の繊維構造体および繊維強化複合材は隙間充填部材を必要とするため、製造コストが嵩む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための繊維構造体は、複数の第1繊維束を配列した第1繊維層を複数積層した本体部と、前記本体部から延出し、かつ積層された複数の前記第1繊維層が二股状に分岐された分岐部と、を備える第1繊維基材と、第2繊維束を有する第2繊維基材と、を備え、前記第2繊維基材は、前記分岐部を覆っており、前記分岐部は、前記第2繊維基材から離間する曲面を備え、前記第1繊維束は、非連続繊維の束にカバーリング糸を巻回して形成され、前記曲面は、前記カバーリング糸が巻回される間隔を前記本体部よりも広くした部位を含むことを要旨とする。
【0006】
これにより、各第1繊維束では、間隔を空けて巻回されたカバーリング糸の間から非連続繊維が毛羽として突出している。繊維構造体では、分岐部が第2繊維基材によって覆われることにより、分岐部と第2繊維基材との間に隙間が画成される。この隙間には、分岐部の曲面が位置している。そして、隙間には、第1繊維束から突出する毛羽が配置される。曲面は、本体部を形成する部位に比べて、カバーリング糸の間隔の広い部位を含む。このため、曲面から隙間に突出する毛羽の量を、本体部から突出する毛羽の量より多くできる。その結果、繊維構造体にマトリックス材料を含浸させて形成される繊維強化複合材では、毛羽によって隙間を補強できる。したがって、隙間を補強するための作業の手間や部品コストを低減することができるため、繊維構造体のコストを低減できる。
【0007】
また、繊維構造体について、前記第1繊維層における前記第1繊維束の配列方向は、前記本体部および前記分岐部に沿う方向に直交してもよい。
これにより、本体部に比べて、分岐部の曲面から毛羽が生じやすくなる。
【0008】
また、繊維構造体について、前記第1繊維層における前記第1繊維束の配列方向は、前記本体部および前記分岐部に沿う方向に沿ってもよい。
これにより、分岐部の曲面に位置する第1繊維束については、本体部に位置する第1繊維束に比べてカバーリング糸の間隔を広くするが、非連続繊維の束の軸方向の全体に亘って間隔を広くすればよい。つまり、分岐部の曲面に位置する第1繊維束について、非連続繊維の束の軸方向の全体に亘って間隔を一定にできる。よって、分岐部の曲面に位置する第1繊維束について、非連続繊維の束の軸方向に沿ってカバーリング糸の間隔を変化させる必要がなくなる。
【0009】
上記課題を解決するための繊維強化複合材は、繊維構造体にマトリックス材料を含浸させて構成される繊維強化複合材であって、前記繊維構造体は、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の繊維構造体であることを要旨とする。
【0010】
これにより、各第1繊維束では、間隔を空けて巻回されたカバーリング糸の間から非連続繊維が毛羽として突出している。繊維構造体では、分岐部が第2繊維基材によって覆われることにより、分岐部と第2繊維基材との間に隙間が画成される。この隙間には、分岐部の曲面が位置している。そして、隙間には、第1繊維束から突出する毛羽が配置される。曲面は、本体部を形成する部位に比べて、カバーリング糸の間隔の広い部位を含む。このため、曲面から隙間に突出する毛羽の量を、本体部から突出する毛羽の量より多くできる。その結果、繊維構造体にマトリックス材料を含浸させて形成される繊維強化複合材では、毛羽によって隙間を補強できる。したがって、隙間を補強するための作業の手間や部品コストを低減することができるため、繊維強化複合材のコストを低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の繊維強化複合材を示す断面図。
図2】繊維構造体を示す図。
図3】第1繊維層を示す斜視図。
図4】曲り部を示す図。
図5】第1繊維束を示す平面図。
図6】第1繊維束を示す斜視図。
図7】繊維構造体の別例を示す図。
図8】第1繊維層の別例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、繊維構造体および繊維強化複合材を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。
<繊維強化複合材>
図1に示すように、繊維強化複合材100は、繊維構造体10に含浸させたマトリックス材料101を硬化させて形成されている。マトリックス材料101は、例えば、樹脂やセラミックである。
【0014】
<繊維構造体の全体>
図2に示すように、繊維構造体10は、第1繊維基材11と第2繊維基材80とを備えている。第1繊維基材11はT形である。第2繊維基材80は平板状である。第2繊維基材80は、第1繊維基材11の一部を覆うように第1繊維基材11に連結されている。
【0015】
<第1繊維基材>
図3に示すように、第1繊維基材11は、第1繊維層20を複数備える。第1繊維層20は、複数の第1繊維束12を配列して形成されている。第1繊維層20において複数の第1繊維束12が配列された方向を配列方向Xとする。第1繊維層20の複数の第1繊維束12は、連結糸15によって第1繊維束12の軸方向が揃うように配列方向Xに配列されて連結されている。
【0016】
図5及び図6に示すように、第1繊維束12は、強化繊維の非連続繊維13と、非連続繊維13に巻回されるカバーリング糸14を有する。非連続繊維13の長さは、例えば、30~40mmである。カバーリング糸14は、非連続繊維13の束の軸方向に隣り合うカバーリング糸14同士を離して、非連続繊維13の束に巻回されている。
【0017】
第1繊維束12では、束の軸方向に隣り合うカバーリング糸14同士の間から非連続繊維13が毛羽16となって突出している。
強化繊維は、有機繊維又は無機繊維を使用してもよいし、異なる種類の有機繊維、異なる種類の無機繊維、又は有機繊維と無機繊維を混繊した混繊繊維を使用してもよい。有機繊維としては、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等が挙げられ、無機繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等が挙げられる。本実施形態では、非連続繊維13は、炭素繊維で形成されている。カバーリング糸14は、複数の非連続繊維13を巻回できればよく、例えば、強化繊維によって構成されていてもよい。
【0018】
図1及び図2に示すように、第1繊維基材11は、T形である。第1繊維基材11は、平板状の本体部30と、本体部30における第1繊維束12の軸方向において、本体部30から延出する分岐部40と、を備えている。本体部30は、複数の第1繊維束12を配列した第1繊維層20を複数積層して形成されている。
【0019】
本体部30において、第1繊維層20の積層する方向を積層方向Y1とする。本体部30は、積層方向Y1の両面のうちの一方に第1面31を備えるとともに、他方に第2面32を備えている。
【0020】
分岐部40は、本体部30における第1繊維束12の軸方向において、本体部30から延出し、かつ積層された複数の第1繊維層20が二股状に分岐されて形成される。分岐部40は、2つの曲り部41と2つの水平部60を備えている。2つの曲り部41は、本体部30に対し曲げられた部位である。2つの曲り部41の各々は、第1曲面42および第2曲面43を備えている。2つの第1曲面42の各々は、本体部30から二股に分岐を開始する位置から延びる面である。2つの第1曲面42は、本体部30から離れるに従い互いに離間するように湾曲している。2つの第2曲面43の一方は、本体部30の第1面31に連続する面であるとともに、他方の第2曲面43は、本体部30の第2面32に連続する面である。第1曲面42は、第2曲面43よりも面積が大きい。
【0021】
2つの水平部60の各々は、平板状である。各水平部60は、各曲り部41から本体部30の積層方向Y1に延出している。水平部60において、第1繊維層20の積層する方向を積層方向Y2とする。水平部60は、水平部60での第1繊維層20の積層方向Y2の両面のうちの一方に第1面61を備えるとともに、他方に第2面62を備えている。
【0022】
各曲り部41の第1曲面42は、連続する水平部60の第1面61に繋がっている。各曲り部41の第2曲面43は、連続する水平部60の第2面62に繋がっている。
第1繊維基材11において、各第1繊維束12の軸方向は、第1繊維基材11の本体部30、曲り部41および水平部60に沿う方向に延びている。なお、本体部30、曲り部41および水平部60に沿う方向を延設方向Zと記載する。第1繊維層20での第1繊維束12の配列方向Xは、本体部30、曲り部41および水平部60に沿う方向、つまり延設方向Zに直交している。
【0023】
第1繊維基材11は、第1繊維束12の軸方向に沿って、本体部30、曲り部41および水平部60が連続して形成されている。言い換えると、本体部30、曲り部41および水平部60は、それぞれ第1繊維束12の一部によって形成される。
【0024】
<第2繊維基材>
第2繊維基材80は、第2繊維層90を複数積層して形成されている。第2繊維基材80において、第2繊維層90の積層する方向を積層方向Y3とする。第2繊維層90は、複数の第2繊維束81を配列して形成されている。第2繊維束81は、複数の強化繊維が束ねられてなる繊維束である。第2繊維束81を形成する強化繊維としては、第1繊維束12を形成する強化繊維と同様のものが使用される。第2繊維層90の複数の第2繊維束81は、図示しない連結糸によって第2繊維束81の軸方向が揃うように連結されている。第2繊維基材80は、第2繊維層90の積層方向Y3の両面のうちの一方に第1面82を備えるとともに、他方に第2面83を備えている。
【0025】
<繊維構造体の詳細>
繊維構造体10において、分岐部40は、本体部30とは反対側から第2繊維基材80によって覆われている。各曲り部41の第1曲面42および水平部60の第1面61は、第2繊維基材80の第2面83と対向する。2つの曲り部41の第1曲面42の各々は、第2繊維基材80の第2面83と離間している。
【0026】
図4に示すように、全ての第1繊維束12において、曲り部41を形成する部位を第1部位12aとする。また、全ての第1繊維束12において、本体部30及び水平部60を形成する部位を第2部位12bとする。第1部位12aは、第2部位12bに挟まれた部位である。曲り部41は、第1曲面42において、カバーリング糸14が巻回される間隔を本体部30及び水平部60よりも広くした部位として、第1部位12aを備える。本実施形態では、曲り部41の全てが第1部位12aによって形成されている。
【0027】
全ての第1繊維束12において、第1部位12aでのカバーリング糸14の間隔が、第2部位12bでのカバーリング糸14の間隔に比べて広い。このため、第1部位12aから突出する非連続繊維13の毛羽16の本数は、第2部位12bから突出する非連続繊維13の毛羽16の本数より多くなる。毛羽16の長さは、例えば、5~10mmである。なお、毛羽16の長さは、少なくとも第1繊維束12を構成する非連続繊維13の長さ未満であればよい。毛羽16の本数が多いことから、第1部位12aの太さは第2部位12bよりも細い。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
繊維構造体10において、2つの曲り部41それぞれの第1曲面42と、第2繊維基材80の第2面83とで画成される隙間44には、第1曲面42から突出した毛羽16が位置している。繊維強化複合材100では、隙間44に充填されたマトリックス材料101には毛羽16が含まれている。
【0029】
本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)各第1繊維束12では、間隔を空けて巻回されたカバーリング糸14の間から非連続繊維13が毛羽16として突出している。繊維構造体10の隙間44には、第1繊維束12から突出する毛羽16が配置される。第1曲面42を形成する第1部位12aは、本体部30及び水平部60を形成する第2部位12bに比べて、カバーリング糸14が巻回される間隔が広い。このため、第1曲面42から隙間44に突出する毛羽16の量を、本体部30及び水平部60から突出する毛羽16の量より多くできる。その結果、繊維構造体10にマトリックス材料101を含浸させて形成される繊維強化複合材100では、毛羽16によって隙間44を補強できる。したがって、隙間44を補強するための作業の手間や部品コストを低減することができるため、繊維構造体10及び繊維強化複合材100のコストを低減できる。
【0030】
(2)第1繊維層20での第1繊維束12の配列方向Xは、本体部30、曲り部41および水平部60が沿う延設方向Zに直交する。これにより、第1曲面42の毛羽16は、本体部30、および水平部60に比べて生じやすくなる。その結果、隙間44を補強するための作業の手間や部品コストの低減をすることができる。
【0031】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
図7及び図8に示すように、第1繊維層20での第1繊維束12の配列方向Xは、本体部30および分岐部40に沿う方向、つまり延設方向Zに沿っていてもよい。分岐部40は、本体部30の第1繊維束12の配列方向Xにおいて、本体部30から延出している。曲り部41を形成する第1繊維束12を曲り部用繊維束12cと記載する。また、本体部30を形成する第1繊維束12を本体部用繊維束12dと記載する。水平部60を形成する第1繊維束12を水平部用繊維束12eと記載する。
【0032】
曲り部用繊維束12c、本体部用繊維束12d及び水平部用繊維束12eのカバーリング糸14の間隔は、それらの軸方向の全体に亘って一定である。曲り部用繊維束12cでのカバーリング糸14の間隔は、本体部用繊維束12d及び水平部用繊維束12eでのカバーリング糸14の間隔より広い。
【0033】
そして、第1曲面42を形成する曲り部用繊維束12cは、本体部30を形成する本体部用繊維束12d及び水平部60を形成する水平部用繊維束12eに比べて、カバーリング糸14が巻回される間隔が広い。このため、第1曲面42から隙間44に突出する毛羽16の量を、本体部30及び水平部60から突出する毛羽16の量より多くできる。その結果、繊維構造体10にマトリックス材料101を含浸させて形成される繊維強化複合材100では、毛羽16によって隙間44を補強できる。したがって、隙間44を補強するための作業の手間や部品コストを低減することができるため、繊維構造体10及び繊維強化複合材100のコストを低減できる。
【0034】
曲り部用繊維束12cについては、本体部用繊維束12d及び水平部用繊維束12eに比べてカバーリング糸14の間隔を広くするが、非連続繊維13の束の軸方向の全体に亘って間隔を広くすればよい。つまり、曲り部用繊維束12cについて、非連続繊維13の束の軸方向の全体に亘って間隔を一定にできる。よって、曲り部用繊維束12cについて、非連続繊維13の束の軸方向に沿ってカバーリング糸14の間隔を変化させる必要がなくなる。そのため、曲り部用繊維束12cは、カバーリング糸14の間隔を変えるための作業の手間が低減される。
【0035】
○ 第1繊維基材11の全ての第1繊維層20のうち、第1曲面42を形成する第1繊維層20だけカバーリング糸14の間隔を広くしてもよい。
○ 第1繊維束12は、第1部位12a全体ではなく、第1部位12aの一部だけカバーリング糸14の間隔を広くしてもよい。
【0036】
○ 第1曲面42だけでなく、本体部30や水平部60にカバーリング糸14の間隔が広い部位があってもよい。
○ 第2繊維基材80の第2繊維束81も第1繊維束12と同じように非連続繊維13の束をカバーリング糸14で巻回して形成してもよい。そして、隙間44に向けて第2繊維基材80の第2繊維束81から毛羽16を突出させてもよい。
【0037】
○ 第2繊維基材80は、1枚の第2繊維層90によって形成されていてもよい。
○ 第2繊維層90は、複数の第2繊維束81によって形成された織物又は編み物でもよい。
【0038】
○ 第2繊維基材80は、複数の第2繊維層90を積層し、かつ積層方向Y3に層間結合糸によって結合されて形成されていてもよい。
○ 実施形態では、分岐部40は、本体部30における第1繊維束12の軸方向において本体部30から延出しているとしたが、これに限らない。例えば、分岐部40は、本体部30における、第1繊維束12の軸方向に沿う途中から延出していてもよい。この場合、分岐部40は、本体部30における第1繊維束12の軸方向に対して交差する方向に第1繊維層20が延出するとともに、本体部30の第1面31及び第2面32の少なくとも一方から延出する。また、分岐部40は、本体部30の1箇所から延出するだけでなく、複数箇所から延出していてもよい。
【0039】
○ 分岐部40は、水平部60を備えない曲り部41だけの構成であってもよい。この場合、延設方向Zは、本体部30および曲り部41に沿う方向となる。また、この場合、実施形態では、第1繊維層20での第1繊維束12の配列方向Xは、本体部30および曲り部41に沿う延設方向Zに直交することになる。また、図7及び図8に示す形態では、第1繊維層20での第1繊維束12の配列方向Xは、本体部30および曲り部41に沿う延設方向Zに沿うことになる。
【0040】
○ 第1繊維束12が有するカバーリング糸14は、複数本であってもよい。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
○ 前記第2繊維基材は、前記第2繊維層を複数積層して形成されている。
【符号の説明】
【0041】
X…配列方向、Z…本体部および分岐部に沿う方向としての延設方向、10…繊維構造体、11…第1繊維基材、12…第1繊維束、13…非連続繊維、14…カバーリング糸、20…第1繊維層、30…本体部、40…分岐部、42…第1曲面、80…第2繊維基材、81…第2繊維束、100…繊維強化複合材、101…マトリックス材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8