IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

特許7609039情報処理装置、システム、方法、及びプログラム
<>
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図1
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図2
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図3
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図4
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図5
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図6
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図7
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図8
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図9
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図10
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図11
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図12
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図13
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図14
  • 特許-情報処理装置、システム、方法、及びプログラム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241224BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20241224BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20241224BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20241224BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G01C21/34
B60W20/00 900
B60W20/12 ZHV
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021179577
(22)【出願日】2021-11-02
(65)【公開番号】P2023068445
(43)【公開日】2023-05-17
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 克己
(72)【発明者】
【氏名】前田 智治
(72)【発明者】
【氏名】安田 武司
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-070101(JP,A)
【文献】特開2020-201796(JP,A)
【文献】特開2020-113086(JP,A)
【文献】特開2013-115863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0291671(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G01C 21/34
B60W 20/00
B60W 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として電動機及び内燃エンジンを備える2つ以上の車両の走行を制御する情報処理装置であって、
出発地点及び目的地点を同一とする複数の車両から、前記出発地点から前記目的地点までの自車両の予定走行経路と前記目的地点の到着時に目標とする車両に搭載された電池の蓄電率である目標蓄電率とを含む自車両の走行計画を、それぞれ取得する取得部と、
前記複数の車両のそれぞれについて、各車両の前記走行計画に基づいた走行において前記電動機の回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定する推定部と、
前記推定部で推定された複数の前記回生エネルギーの予想量を合算した合算値に基づいて、前記目的地点の到着時に前記合算値を全て消費することを想定して前記電動機を用いた走行を選択するための前記複数の車両に共通の閾値を導出し、前記導出した前記閾値に基づいて、前記電動機のみを駆動させて前記車両を走行させる第1区間と、少なくとも前記内燃エンジンを駆動させて前記車両を走行させる第2区間とを、複数の前記予定走行経路にそれぞれ設定する設定部と、
前記設定部で前記予定走行経路ごとに設定された前記第1区間及び前記第2区間の情報を、各前記予定走行経路を走行予定の車両にそれぞれ提供する通信部と、を備える、情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の車両が実際に走行すべき前記出発地点から前記目的地点までの実走行経路を示した配車パターンを作成する配車制御部をさらに備え、
前記通信部は、前記設定部が各車両の前記予定走行経路ごとに設定した前記第1区間及び前記第2区間の情報と、前記配車制御部が各車両について作成した前記配車パターンとを、車両に提供する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記配車制御部は、前記第1区間及び前記第2区間に基づいた走行が終了した時点における前記複数の車両それぞれの前記電池の蓄電率を推定し、各前記推定した蓄電率と各前記目標蓄電率との差分の合計値が最小となるように、前記複数の車両の前記実走行経路をそれぞれ決定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記配車制御部は、前記第1区間及び前記第2区間に基づいた走行が終了した時点における前記複数の車両それぞれの前記回生エネルギーの予想量を推定し、各前記推定した前記回生エネルギーの予想量の前記複数の車両間の差分が最小となるように、前記複数の車両の前記実走行経路をそれぞれ決定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記配車制御部は、前記複数の車両が前記目的地点に到着するまでの間に、2つ以上の車両について現在地点から前記目的地点までの前記実走行経路を入れ替えた前記配車パターンを再度作成する、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定部は、過去に出発地点から前記目的地点まで走行したときに前記動力源において生じたパワーの変化を時系列で示した情報を含む走行履歴に基づいて、前記回生エネルギーの予想量を推定する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記推定部は、前記走行履歴における前記動力源において生じたパワーが負である期間をエネルギーの回収が可能な期間とし、前記期間における前記動力源において生じたパワーの大きさの時間積分値を前記回生エネルギーの予想量として推定する、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記設定部は、前記複数の車両が前記目的地点に到着した時点における複数の前記回生エネルギーの予想量を合算した合算値が全て消費されるように、前記第1区間及び前記第2区間を設定する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
動力源として電動機及び内燃エンジンを備える2つ以上の車両と、前記2つ以上の車両の走行を制御する情報処理装置と、を備えたシステムであって、
前記情報処理装置は、
出発地点及び目的地点を同一とする複数の車両から、前記出発地点から前記目的地点までの自車両の予定走行経路と前記目的地点の到着時に目標とする車両に搭載された電池の蓄電率である目標蓄電率とを含む自車両の走行計画を、それぞれ取得する取得部と、
前記複数の車両のそれぞれについて、各車両の前記走行計画に基づいた走行において前記電動機の回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定する推定部と、
前記推定部で推定された複数の前記回生エネルギーの予想量を合算した合算値に基づいて、前記目的地点の到着時に前記合算値を全て消費することを想定して前記電動機を用いた走行を選択するための前記複数の車両に共通の閾値を導出し、前記導出した前記閾値に基づいて、前記電動機のみを駆動させて前記車両を走行させる第1区間と、少なくとも前記内燃エンジンを駆動させて前記車両を走行させる第2区間とを、複数の前記予定走行経路にそれぞれ設定する設定部と、
前記設定部で前記予定走行経路ごとに設定された前記第1区間及び前記第2区間の情報を、各前記予定走行経路を走行予定の車両にそれぞれ提供する通信部と、を備える、システム。
【請求項10】
動力源として電動機及び内燃エンジンを備える2つ以上の車両の走行を制御する情報処理装置が実行する方法であって、
出発地点及び目的地点を同一とする複数の車両から、前記出発地点から前記目的地点までの自車両の予定走行経路と前記目的地点の到着時に目標とする車両に搭載された電池の蓄電率である目標蓄電率とを含む自車両の走行計画を、それぞれ取得するステップと、
前記複数の車両のそれぞれについて、各車両の前記走行計画に基づいた走行において前記電動機の回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定するステップと、
前記推定した複数の前記回生エネルギーの予想量を合算した合算値に基づいて、前記目的地点の到着時に前記合算値を全て消費することを想定して前記電動機を用いた走行を選択するための前記複数の車両に共通の閾値を導出するステップと、
前記導出した前記閾値に基づいて、前記電動機のみを駆動させて前記車両を走行させる第1区間と、少なくとも前記内燃エンジンを駆動させて前記車両を走行させる第2区間とを、複数の前記予定走行経路にそれぞれ設定するステップと、
前記予定走行経路ごとに設定した前記第1区間及び前記第2区間の情報、各前記予定走行経路を走行予定の車両にそれぞれ提供するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
プロセッサとメモリとを備えており、動力源として電動機及び内燃エンジンを備える2つ以上の車両の走行を制御する情報処理装置のコンピューターに実行させるプログラムであって、
出発地点及び目的地点を同一とする複数の車両から、前記出発地点から前記目的地点までの自車両の予定走行経路と前記目的地点の到着時に目標とする車両に搭載された電池の蓄電率である目標蓄電率とを含む自車両の走行計画を、それぞれ取得するステップと、
前記複数の車両のそれぞれについて、各車両の前記走行計画に基づいた走行において前記電動機の回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定するステップと、
前記推定した複数の前記回生エネルギーの予想量を合算した合算値に基づいて、前記目的地点の到着時に前記合算値を全て消費することを想定して前記電動機を用いた走行を選択するための前記複数の車両に共通の閾値を導出するステップと、
前記導出した前記閾値に基づいて、前記電動機のみを駆動させて前記車両を走行させる第1区間と、少なくとも前記内燃エンジンを駆動させて前記車両を走行させる第2区間とを、複数の前記予定走行経路にそれぞれ設定するステップと、
前記予定走行経路ごとに設定した前記第1区間及び前記第2区間の情報、各前記予定走行経路を走行予定の車両にそれぞれ提供するステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行に関する情報を車両に提供する情報処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機と内燃エンジンとを備えたハイブリッド車両においては、電動機の駆動による走行と内燃エンジンの駆動による走行とを効率的に使い分けた制御を行う走行計画を生成することによって、車両が消費するエネルギーの量を低減させて燃費の向上を図ることができる。
【0003】
特許文献1は、走行環境を考慮して車両が消費するエネルギーを最適化させた走行計画を生成する装置を開示している。この特許文献1に記載された手法では、車両の走行経路に基づいて生成された速度パターンと、外部から取得した交通状況とに基づいて、走行計画を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-070101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の車両を同時に走行させるような場合、上述の特許文献1に記載された手法では、個々の車両について各々が消費するエネルギーを最適化させた走行計画を生成することは可能である。しかしながら、複数の車両が消費する全てのエネルギーを統括して複数の車両全体で消費する総エネルギーを最適化させた走行計画を生成することはできない。よって、複数の車両の全体で消費する総エネルギーを最適化させた走行制御について、さらなる検討の余地がある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、複数の車両の全体で消費する総エネルギーを最適化させた走行制御を行うことができる情報処理装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、動力源として電動機及び内燃エンジンを備える複数の車両の走行を制御する情報処理装置であって、出発地点から目的地点までの予定走行経路と目的地点の到着時に目標とする車両に搭載された電池の蓄電率である目標蓄電率とを含む走行計画を、複数の車両からそれぞれ取得する取得部と、複数の車両のそれぞれについて、走行計画に基づいた走行において電動機の回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定する推定部と、推定部で推定された複数の回生エネルギーの予想量を合算した合算値に基づいて電動機を用いた走行を選択するための複数の車両に共通の閾値を導出し、導出した閾値に基づいて、電動機のみを駆動させて車両を走行させる第1区間と少なくとも内燃エンジンを駆動させて車両を走行させる第2区間とを、予定走行経路にそれぞれ設定する設定部と、設定部で設定された第1区間及び第2区間を複数の車両に提供する通信部とを備える、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の情報処理装置などによれば、複数の車両の全体で消費する総エネルギーを最適化させた走行制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る情報処理装置を含むシステムの概略構成図
図2】車両の機能ブロック図
図3】走行制御装置が実行する走行制御処理の一例のフローチャート
図4】情報処理装置が実行する生成処理の一例のフローチャート
図5図4における運転シナリオ生成処理の一例のフローチャート
図6図5における閾値修正処理の一例のフローチャート
図7図4における配車パターン生成処理の一例のフローチャート
図8】走行パワープロファイルの一例を示す図
図9】走行パワープロファイルにおける回生エネルギーの領域を示す図
図10】電池の蓄電率の変化の一例を示す図
図11】閾値の決定手法の一例を示す図(許容上限値による制限)
図12】閾値の決定手法の一例を示す図(許容下限値による制限)
図13】車両の走行経路を小経路に細分化した例
図14】配車制御部が作成した複数の組み合わせパターンの一例
図15】配車制御部が選択した1つの組み合わせパターン(配車パターン)の一例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る情報処理装置は、複数の車両の出発地点から目的地点までの走行において予想される動力源で生じる走行パワーの変化を時系列で示した走行パワープロファイルを用いて、複数の車両の合計回生エネルギーの回収量を早期に定量的に推定する。そして、この合計回生エネルギーの消費状況に基づいて、複数の車両がそれぞれ走行する経路を適切に組み替える制御を行う。これにより、車載電池の目標とする蓄電率を考慮した好適な走行制御が可能となる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
[実施形態]
<構成>
図1は、本開示の一実施形態に係る情報処理装置10を含むシステムの構成を示す概略図である。図1に例示するシステムにおいて、情報処理装置10は、複数の車両20との間で無線通信が可能に構成されている。
【0012】
情報処理装置10は、複数の車両20がそれぞれ走行する経路を制御するための装置である。この情報処理装置10は、例えばサービスを提供する事業者や管理会社などが所有するサーバー内に構築される。
【0013】
図1に例示する情報処理装置10は、取得部110と、推定部120と、設定部130と、通信部140と、記憶部150と、配車制御部160と、を備える。
【0014】
取得部110は、複数の車両20から車両に関する情報(以下「車両情報」という)をそれぞれ取得する。この車両情報としては、車両20の出発地点から目的地点までの予定走行経路(初期設定されている経路など)と、目的地点の到着時における車載電池の目標蓄電率と、を含む走行計画を例示できる。また、この車両情報には、初期設定時であることの通知、及びパワー積算値の差分絶対値が基準値以上であることの通知、が含まれる。この通知に関わる車両情報については、後述する。推定部120は、取得部110が取得した車両情報に基づいて、複数の車両20において回生制動によって回収可能なエネルギーである回生エネルギーの予想量を推定する。設定部130は、推定部120が推定した複数の回生エネルギーの予想量の合算値と目標蓄電率とから導出した閾値に基づいて、複数の車両20の各走行経路において電動機を用いる区間と内燃エンジンを用いる区間とを設定する。通信部140は、設定部130が設定した区間の情報を複数の車両20に提供(送信)する。記憶部150は、車両20の出発地点から目的地点までの走行履歴を記憶している。この走行履歴は、車両20の記憶部から取得してもよい。配車制御部160は、複数の車両20が実際に走行すべき出発地点から目的地点までの実走行経路を示した配車パターンを作成する。配車パターンについては後述する。
【0015】
この情報処理装置10は、典型的には、メモリ、プロセッサ、及びインターフェイスを備えたコンピューターにより構成される。情報処理装置10のプロセッサは、例えば、非一時的なメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することで上述した各機能を実現する。
【0016】
車両20は、例えば荷物の宅配サービスや自動販売機の商品補充サービスなど、複数の車両で予め定められた複数の経路を走行するサービスに使用される配送車両である。本実施形態の車両20は、動力源として電動機(モーター)と内燃エンジンとを搭載した自動車であり、情報処理装置10から提供される情報に基づいて各車両20が走行する経路を効率的に制御する。
【0017】
図2に、車両20の機能ブロックの一例を示す。図2に例示する車両20は、走行制御装置210、内燃エンジンECU220、内燃エンジン221、変速機222、電動機ECU230、電動機231、電池ECU240、電池241、EPSECU250、EPS装置251、ブレーキECU260、ブレーキ装置261、走行制御ECU270、運転支援ECU280、自動運転ECU290、マネージャECU300、記憶部310、及び通信部320の各構成を搭載している。各構成は、CAN(Controller Area Network)やイーサネット(登録商標)などの車載ネットワーク400を介して通信可能に接続されている。
【0018】
車両20には、上述した構成の他にも、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、カメラや障害物センサ、車速センサ、ヨーレートセンサ、及びGPSセンサなどの各種センサや、ナビゲーションシステムなど、多様な機器が搭載され得るが、本開示では図示を省略する。
【0019】
内燃エンジン221及び電動機231は、車両20を駆動する動力源となるアクチュエータ(ACT)である。また、電動機231は、車両20の減速走行の時や下り坂走行の時などの回生制動によって発電を行う発電機及び制動力を発生させる制動装置でもある。
【0020】
内燃エンジンECU220は、内燃エンジン221と、入力と出力との間で回転数を変化させる変速機222とを制御して、駆動トルクを発生させたり、エンジンブレーキによる制動トルクを発生させたりする制御を行う、電子制御ユニット(ECU:Electric Control Unit)である。
【0021】
電動機ECU230は、電動機231を制御して駆動トルクを発生させたり、回生ブレーキによる制動トルクを発生させたりする制御を行う、電子制御ユニットである。
【0022】
電池241は、充放電可能に構成された二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池など)である。この電池241は、放電によって電動機231やその他の各機器に電力を供給したり、電動機231の回生制動によって得られた電力(回収したエネルギー)や内燃エンジン221を用いる力行動作によって得られた電力(発生させたエネルギー)を充電したり、することができる、電池ECU240は、電池241の電力の充放電を制御する電子制御ユニットである。
【0023】
EPS(電動パワーステアリング)装置251は、車輪の舵角を変化させて車両20の進行方向を変化させる操舵を行うアクチュエータである。EPSECU250は、EPS装置251を制御する電子制御ユニットである。
【0024】
ブレーキ装置(フットブレーキ装置)261は、車輪と共に回転する部材に対する摩擦力によって制動力を発生させるアクチュエータである。ブレーキECU260は、ブレーキ装置261を制御する電子制御ユニットである。
【0025】
走行制御ECU270は、後述する走行モードに応じて内燃エンジンECU220及び電動機ECU230を制御する電子制御ユニットである。
【0026】
運転支援ECU280は、衝突回避(PCS)、前車追従走行(ACC)、車線維持(LKA)、車線逸脱警報(LDW)などの車両20の運転を支援するための様々な機能を実行する電子制御ユニットである。この運転支援ECU280は、各種センサなどから取得する車両20の情報に基づいて、加減速や舵角など、車両20の運動を制御する指示を出力する。運転支援ECU280の機能や数は限定されない。
【0027】
自動運転ECU290は、自動運転の機能を実行する電子制御ユニットである。この自動運転ECU290は、各種センサなどから取得する車両20の情報に基づいて、自動運転の機能を実行するために、加減速や舵角など、車両20の運動を制御する指示を出力する。
【0028】
マネージャECU300は、運転支援ECU280や、自動運転ECU290などからの指示に基づいて、EPSECU250、ブレーキECU260、及び走行制御ECU270など(以下、これらのECUをまとめて「アクチュエータECU」と称する)に指示を行う電子制御ユニットである。例えば、マネージャECU300は、加速の指示は走行制御ECU270に対して行い、操舵の指示はEPSECU250に対して行い、減速の指示は走行制御ECU270及びブレーキECU260に対して行う。
【0029】
このマネージャECU300は、複数の運転支援ECU280などから指示を受け取った場合、いずれの指示に従って車両20を制御するかを決定する調停と呼ばれる処理を所定の規則に基づいて実施し、その調停の結果に基づいてアクチュエータECUに指示を行う。ドライバーなどが手動で行うステアリングホイール、ブレーキペダル、及びアクセルペダルなどへの運転操作内容は、マネージャECU300によって取得され、マネージャECU300による調停処理の対象とされてもよいし、アクチュエータECUによって取得され、アクチュエータECUが、ドライバーの手動運転操作とマネージャECU300からの指示とを個別に調停してもよい。
【0030】
記憶部310は、車両20に関する走行履歴を記憶する。走行履歴は、過去に車両20を走行させたときの履歴であって、車両20を運転した期間内の各時点における動力源(内燃エンジン221及び電動機231)において生じた走行パワーの情報である。走行パワーは、内燃エンジン221の駆動パワー、電動機231の駆動パワー、及び電動機231の吸収パワーからなる。この走行履歴は、例えば車両20の電源システム(図示せず)がオン状態である間に、車両20が備える各種センサなどに基づいて導出及び取得された走行パワーを定期的に記憶部310に記憶することで、生成することができる。記憶部310は、例えば車両20に搭載されるナビゲーションシステム(図示せず)の一部として設けられてもよい。
【0031】
通信部320は、情報処理装置10に加え、図示しない車外のサーバーや他の車両などと無線通信が可能であり、他の車両の走行結果に基づいて得られたドライバー以外の走行履歴を受信することができる。
【0032】
走行制御装置210は、車両20の走行を制御する電子制御ユニット(ECU)である。この走行制御装置210は、制御部211及び導出部212の各構成を含む。
【0033】
制御部211は、情報処理装置10から提供される運転シナリオ及び配車パターンに基づいて、車両20の走行を制御する。運転シナリオ及び配車パターンについては、後述する。導出部212は、走行履歴に基づく走行パワーと実走行に基づく走行パワーとの乖離を導出する。
【0034】
上述した車両20の各ECUは、典型的には、メモリ、プロセッサ、及びインターフェイスを備えたコンピューターにより構成される。各ECUのプロセッサは、例えば、非一時的なメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。これらのECUは、通信線によって互いに接続されており、互いに適宜通信することによって協調的に動作することができる。
【0035】
なお、以上説明した、車両20に搭載される機器の構成及び走行制御装置210の構成は一例であって、適宜、追加、置換、変更、省略が可能である。また、各機器の機能は、適宜1つの機器に統合したり複数の機器に分散したりして実装することが可能である。
【0036】
例えば、走行制御装置210は、独立したECUとして設けてもよいが、マネージャECU300あるいは走行制御ECU270などの一部として設けてもよいし、走行制御装置210の機能を、マネージャECU300あるいは走行制御ECU270などに分散して設けてもよい。
【0037】
また、例えば、走行制御装置210、走行制御ECU270、運転支援ECU280、自動運転ECU290、及びマネージャECU300などを、1つのECUとして設けてもよい。また、例えば、自動運転ECU290は、車両20に設けなくても構わない。
【0038】
<処理>
以下に、図3乃至図7をさらに参照して、本実施形態に係る情報処理装置10及び車両20が実行する制御及び処理の一例を詳細に説明する。
【0039】
(1)走行制御処理
図3は、各車両20の走行制御装置210が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。本走行制御処理は、例えば、ドライバーなどが車両20の電源システムをオン状態にしてトリップを開始すると開始され、車両20の電源システムをオフ状態にしてトリップを終了するまでの間、実行される。
【0040】
(ステップS301)
制御部211は、後述する運転シナリオに基づいた走行モードの制御をまだ開始していない初期設定時であるか否かを判断する。初期設定時である場合は(S301、はい)、ステップS304に処理が進み、初期設定時でない場合は(S301、いいえ)、ステップS302に処理が進む。
【0041】
(ステップS302)
導出部212は、出発地点(t=0)から現在地点(t=T)までのパワー積算値の差分絶対値E_d(t)を導出する。パワー積算値の差分絶対値E_d(t)とは、下記の式[1]で示されるように、車両20が実際に走行することによって得られた走行パワーの大きさの積算値ΣP_present(t)と、後述する走行パワープロファイルに基づいて算出される走行パワーの大きさの積算値ΣP_past(t)との、差分を絶対値で示した数値である。このパワー積算値の差分絶対値E_d(t)は、例えば、車両20が出発地点を立った後に一定の周期で導出される。パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が導出されると、ステップS303に処理が進む。
E_d(t)=|ΣP_past(t)-ΣP_present(t)| …[1]
【0042】
(ステップS303)
制御部211は、導出部212で導出されたパワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超えるか否かを判断する。この判断は、運転シナリオの見直しが必要であるか否かを再考するために行われる。従って、基準値Cは、例えば、出発地点で生成した運転シナリオに基づく走行パワーの変化推移が過去の走行履歴から設定した走行パワープロファイルから大きく乖離してゆき、運転シナリオの再生成が必要と判断できる適切な所定の値に設定される。パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える(E_d(t)>C)場合は(S303、はい)、運転シナリオを再生成するためにステップS304に処理が進む。一方、パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超えない(E_d(t)≦C)場合は(S303、いいえ)、今の運転シナリオによる走行モード制御を継続すべくステップS306に処理が進む。
【0043】
(ステップS304)
制御部211は、上記ステップS301において運転シナリオに基づいた走行モードの制御をまだ開始していない初期設定時であると判断した場合には、初期設定時である旨を車両情報として情報処理装置10に通知する。また、制御部211は、上記ステップS303においてパワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超えると判断した場合には、E_d(t)>Cである旨を車両情報として情報処理装置10に通知する。また、この通知の際、制御部211は、車両20が目的地点に到着した時点で目標とする電池241の蓄電率(SOC:State Of Charge)である目標蓄電率SOC_tgtを車両情報として情報処理装置10に通知する。この目標蓄電率SOC_tgtは、例えば、車両20のドライバーや車外の管理センターなどによって指定される。これら車両情報の通知は、車両20の通信部320を介して行われる。
【0044】
(ステップS305)
制御部211は、情報処理装置10から車両20の運転シナリオ及び配車パターン(後述する)を取得する。この運転シナリオ及び配車パターンの取得は、車両20の通信部320を介して行われる。上記ステップS304において通知を行った内容が反映された運転シナリオ及び配車パターンが取得できるように、ステップS304の処理から所定の時間を待機した後で本ステップS305の処理を行うようにしてもよい。運転シナリオ及び配車パターンが取得されると、ステップS306に処理が進む。
【0045】
(ステップS306)
制御部211は、運転シナリオ及び配車パターンに基づいて車両20の走行モードを制御する。より具体的には、制御部211は、配車パターンによって指示された経路において、走行パワーの大きさが運転シナリオの閾値以下である区間を「第1区間」と決定し、走行パワーの大きさが運転シナリオの閾値を超える区間を「第2区間」と決定する。第1区間では、制御部211は、走行モードに電動機231のみを駆動する「電動機モード」を選択し、走行制御ECU270に通知する。この通知に応じて走行制御ECU270は、電動機ECU230に電動機231による走行を制御させる。また、第2区間では、制御部211は、例えば走行モードに内燃エンジン221のみを駆動する「内燃エンジンモード」を選択し、走行制御ECU270に通知する。この通知に応じて走行制御ECU270は、内燃エンジンECU220に内燃エンジン221による走行を制御させる。
【0046】
電動機モードでは、電動機231による回生制動が行われて車両20の運動エネルギーが電力として回収される。ドライバーがブレーキペダルを大きく踏み込んだり、運転支援ECU280が衝突回避などのため優先度の高い急減速の指示を行ったりして、一定以上の減速度が要求されている場合は、十分な制動力を発生させるためマネージャECU300及びブレーキECU260によって、ブレーキ装置261による制動力を発生させる制御が行われる。
【0047】
なお、上記実施形態では、運転シナリオが第2区間の走行モードを、走行のために内燃エンジン21のみを駆動する内燃エンジンモードとする例を説明した。しかし、ハイブリッド走行では電池241の蓄電率がほぼ一定になるように制御されるため、内燃エンジンモードに代えて、走行のために少なくとも内燃エンジン21を駆動する「ハイブリッドモード」を第2区間の走行モードとして選択してもよい。
【0048】
(ステップS307)
制御部211は、車両20が目的地点に到着したか否かを判断する。車両20が目的地点に到着した場合は(S307、はい)、次の目的地点への運転シナリオ及び配車パターンの生成に向けてステップS301に処理が進む。一方、車両20が目的地点にまだ到着していない場合は(S307、いいえ)、今の運転シナリオ及び配車パターンの見直しが必要であるか否かを再考すべくステップS302に処理が進む。
【0049】
(2)情報生成処理
図4は、情報処理装置10が実行する情報生成処理の一例を示すフローチャートである。この情報生成処理は、例えば車両20から車両情報(初期設定時である旨の通知、パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える旨の通知、目的地点到着時の電池241の目標蓄電率SOC_tgtの通知を含む)があると開始される。
【0050】
(ステップS401)
通信部140は、複数の車両20について、車両20から初期設定時である旨の通知を受けたか否かを判断する。初期設定時である旨の通知を受けた車両20については(S401、はい)、ステップS403に処理が進む。一方、初期設定時である旨の通知を受けていない車両20については(S401、いいえ)、ステップS402に処理が進む。
【0051】
(ステップS402)
通信部140は、複数の車両20について、車両20からパワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える旨の通知を受けたか否かを判断する。パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える旨の通知を受けた車両20については(S402、はい)、ステップS407に処理が進む。一方、パワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える旨の通知を受けていない車両20については(S402、いいえ)、ステップS401に処理が進む。
【0052】
(ステップS403)
取得部110は、上記ステップS401で通知を受けた車両20の目的地点を取得する。目的地点は、例えば緯度/経度の情報で与えられる。この目的地点は、車両20がトリップとしての走行を終了する終着地点や、この終着地点までの経路途中に設定される任意の中間地点などである。取得部110は、典型的には車両20から目的地点を取得する。対象の車両20について目的地点が取得されると、ステップS404に処理が進む。
【0053】
(ステップS404)
取得部110は、上記ステップS403で目的地点を取得した車両20の走行パワープロファイルを取得する。走行パワープロファイルとは、車両20の出発地点(現在地点)から目的地点までの走行において予想される、各時点での動力源(内燃エンジン221及び電動機231)において生じる走行パワーの変化を時系列で示したパワー情報である。図8に走行パワープロファイルの一例を示す。この図8では、横軸に走行開始からの経過時間を取り、縦軸に走行パワーを取っている。この取得部110が取得する走行パワープロファイルは、例えば記憶部150や車両20の記憶部310に記憶されている情報、すなわち出発地点から目的地点までの同一経路による過去の走行履歴に基づいて生成(又は抽出)される。
【0054】
簡単な生成例を説明する。例えば、出発地点から目的地点までが、ほぼ同じ時間帯かつ経路で走行されるルートである場合、このルートに対応して記憶されている過去の複数の走行履歴では、動力源において生じる走行パワーの変化パターンがほぼ同じになると考えられる。この場合、複数の過去履歴のいずれか1つに基づいて走行パワープロファイルを生成すればよい。さらに走行履歴に走行した曜日や時間帯などの属性が付されている場合には、今回の走行と一致する属性の数が多い走行履歴に基づいて走行パワープロファイルを生成してもよい。
【0055】
なお、走行パワープロファイルの候補となる走行履歴が複数ある場合は、例えば、いずれか任意の1つを走行パワープロファイルとしてもよいし、複数の走行履歴を平均化したものを走行パワープロファイルとしてもよい。また、走行履歴が、走行時に動力源において生じた走行パワーの変化を時系列で示したパワー情報以外の車両情報(車速など)である場合には、車両情報に基づいて走行パワープロファイルを生成すればよい。走行パワープロファイルの生成方法は限定されず、上述した各方法を適宜組み合わせてもよい。対象の車両20について走行パワープロファイルが取得されると、ステップS405に処理が進む。
【0056】
(ステップS405)
推定部120は、上記ステップS403で目的地点を取得した車両20の出発地点から目的地点までの間に電動機231の回生制動によって得られるエネルギーである回生エネルギーE_estを推定する。この回生エネルギーE_estの推定は、走行パワープロファイルに基づいて行われる。具体的には、走行パワープロファイルにおいて走行パワーが負値(0未満)となる期間が回生エネルギーの回収が可能であると予想される期間であり、この期間における走行パワーの大きさの時間積分値、すなわち図9においてハッチングによって示す領域の面積が、推定される回生エネルギーE_estとして算出される。この回生エネルギーE_estの推定にあたっては、荷物積載などによる車両重量の増加や悪天候などの変動要因を考慮して、推定値を補正してもよい。対象の車両20について回生エネルギーE_estが推定されると、ステップS406に処理が進む。
【0057】
なお、上記過去の走行履歴として記憶部150や車両20の記憶部310に記憶される走行パワープロファイルが、記憶部150や車両20の記憶部310のメモリ量の制約などから実データではなく近似データとされることも考えられる。このような場合には、回生エネルギーE_estの推定精度向上のため、負値の走行パワーの積算値を走行パワープロファイルとは別個に走行履歴として記憶しておいてもよい。
【0058】
(ステップS406)
取得部110は、上記ステップS401で通知を受けた車両20の目標蓄電率SOC_tgtを取得する。この目標蓄電率SOC_tgtは、車両20から通知される。例えば、目的地点に充電設備があれば電池241を充電できるため、目標蓄電率SOC_tgtを標準値よりも低く設定することが考えられる。また、目的地点で多くの電力を使用する予定がある場合には、目標蓄電率SOC_tgtを標準値よりも高く設定することが考えられる。対象の車両20について目標蓄電率SOC_tgtが取得されると、ステップS407に処理が進む。
【0059】
(ステップS407)
取得部110は、上記ステップS401又はS402で通知を受けた車両20の初期蓄電率SOC_sttを取得する。初期蓄電率SOC_sttは、運転シナリオを生成しようとした時点での電池241の蓄電率である。この初期蓄電率SOC_sttは、上記ステップS401において初期設定時である旨を通知した車両20の場合には、初めて運転シナリオを生成する走行開始時点の電池241の蓄電率となり、上記ステップS402においてパワー積算値の差分絶対値E_d(t)が基準値Cを超える旨を通知した車両20の場合には、再び運転シナリオを生成する走行途中(中間地点)における電池241の蓄電率となる。取得部110は、車両20の電池ECU240などから電池241の初期蓄電率SOC_sttを取得することができる。対象の車両20について初期蓄電率SOC_sttが取得されると、ステップS408に処理が進む。
【0060】
(ステップS408)
設定部130は、複数の車両20について運転シナリオを生成する処理(運転シナリオ生成処理)を実施する。運転シナリオとは、現在地点から目的地点までの経路を、車両20を電動機231のみを用いて走行させる区間(以下「第1区間」という)と、車両20を少なくとも内燃エンジン221を用いて走行させる区間(以下「第2区間」という)とに分けるための閾値を、時系列に設定した情報である。この運転シナリオ生成処理については、後述する。運転シナリオが生成されると、ステップS409に処理が進む。
【0061】
(ステップS409)
設定部130は、複数の車両20について配車パターンを生成する処理(配車パターン生成処理)を実施する。配車パターンとは、複数の車両20のそれぞれについて、実際に走行すべき出発地点から目的地点までの経路(実走行経路)を示したものである。この配車パターン生成処理については、後述する。配車パターンが生成されると、ステップS410に処理が進む。
【0062】
(ステップS410)
通信部140は、上記ステップS408で生成した運転シナリオ及び上記ステップS409で生成した配車パターンを、複数の車両20にそれぞれ送信する。この配車パターンは、例えば、各車両20のドライバーのスマートフォンなどにそれぞれ送信される。これにより、複数の車両20において、複数の車両20の全体で消費する総エネルギーを最適化させた走行制御を実現することができる。
【0063】
(3)運転シナリオ生成処理
図5を参照して、図4のステップS408で示した運転シナリオ生成処理を説明する。図5は、情報処理装置10が実行する運転シナリオ生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0064】
(ステップS501)
設定部130は、合計必要電気エネルギーΣE_needを導出する。この合計必要電気エネルギーΣE_needは、各車両20が目的地点に到着した時点で電池241の蓄電率を目標蓄電率SOC_tgtにするために必要な電気エネルギーE_needを、複数の車両20について合算した値である。各車両20の必要電気エネルギーE_needは、推定された回生エネルギーE_est、初期蓄電率SOC_stt、及び電池241の満充電容量C_fに基づいて、下記の式[2]によって導出される。また、合計必要電気エネルギーΣE_needは、下記の式[3]によって導出される。変数xは、車両20の台数である。合計必要電気エネルギーΣE_needが導出されると、ステップS502に処理が進む。
E_need=E_est+(SOC_stt-SOC_tgt)×C_f …[2]
ΣE_need=E1_need+E2_need+…+Ex_need …[3]
【0065】
(ステップS502)
設定部130は、走行パワープロファイルに閾値P_swtを適用して、複数の車両20について現在地点から目的地点までに予想される電池241の蓄電率SOC_clcの変化を推定する。閾値P_swtは、上述した車両走行のために電動機231のみを駆動する第1区間と、車両走行のために少なくとも内燃エンジン221を駆動する第2区間とを、切り替えるタイミングを与える走行パワーの値であり、ゼロ値から車両20が出力可能な最大パワーまでの間の値を取り得る。この閾値P_swtとしては、複数の車両20に共通して適用する1つの値が用いられる。閾値P_swtには、内燃エンジン21の効率が悪くなる走行パワーの低い領域が第1区間となる初期値が予め設定されており、処理の内容に応じてこの初期値が適宜修正される。現在地点は、初期設定時に実施される運転シナリオ生成処理では出発地点となる。各車両20の電池241の蓄電率SOC_clcの変化が推定されると、ステップS503に処理が進む。
【0066】
推定された電池241の蓄電率SOC_clcの変化の一例を図10に示す。図10に例示するように、走行パワープロファイルにおいて、走行パワーがゼロ以上かつ閾値以下の第1区間(図中[1]の期間)では、電動機231の力行制御によって電力が消費されるため電池241の蓄電率SOC_clcは減少する。一方、走行パワーがゼロ未満の第1区間(図中[0]の期間)では、電動機231が回生制御を行うため電力が充電されて電池241の蓄電率SOC_clcは増加する。また、走行パワープロファイルにおける閾値を超える第2区間(図中[2]の期間)では、電動機231による電力消費がないため電池241の蓄電率SOC_clcは維持される。
【0067】
(ステップS503)
設定部130は、現在地点から目的地点までの変化が推定された電池241の蓄電率SOC_clcにおいて、蓄電率SOC_clcが電池241に許容される上限値又は下限値に達する中間地点が存在するか否かを、複数の車両20のそれぞれについて判断する。電池241の許容上限値とは、例えば過充電状態になる蓄電率である。電池241の許容下限値とは、例えば過放電状態になる蓄電率である。なお、電池241の蓄電率の許容上限値及び/又は許容下限値は、複数の車両20で共通の値とすることができる。蓄電率SOC_clcが許容上限値又は許容下限値に達する中間地点がある場合は(S503、はい)、ステップS507に処理が進む。一方、蓄電率SOC_clcが許容上限値又は許容下限値に達する中間地点がない場合は(S503、いいえ)、ステップS504に処理が進む。
【0068】
(ステップS504)
設定部130は、合計電動機走行エネルギーΣE_mgを算出する。この合計電動機走行エネルギーΣE_mgは、各車両20において変化が推定された電池241の蓄電率SOC_clcに基づいて算出される現在地点から目的地点までに電動機231で消費される電動機走行エネルギーE_mgの見積もり値を、複数の車両20について合算した値である。各車両20の電動機走行エネルギーE_mgは、現在の閾値P_swtを適用した走行パワープロファイルにおいて、走行パワーがゼロ以上の第1区間における走行パワーの積算値に基づいて算出される。なお、後述するステップS507において決定された閾値がある場合には、現在の閾値P_swtと決定された閾値とが該当期間に各々適用されて、電動機走行エネルギーE_mgが算出される。また、合計電動機走行エネルギーΣE_mgは、下記の式[4]によって導出される。変数xは、車両20の台数である。合計電動機走行エネルギーΣE_mgが算出されると、ステップS505に処理が進む。
ΣE_mg=E1_mg+E2_mg+…+Ex_mg …[4]
【0069】
(ステップS505)
設定部130は、合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needと等しい(ΣE_mg=ΣE_need)か否かを判断する。この判断は、現在の閾値P_swtにおいて、合計必要電気エネルギーΣE_needを過不足なく消費できているか否かを判断するために行われる。合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needと等しい場合は(S505、はい)、ステップS506に処理が進む。一方、合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needと等しくない場合は(S505、いいえ)、ステップS508に処理が進む。
【0070】
(ステップS506)
設定部130は、現在の閾値P_swtを、閾値の未決定地点から目的地点までに適用する正規の閾値として決定(確定)する。このステップにおける閾値の未決定地点は、各車両20において、蓄電率SOC_clcが電池241の蓄電率の許容上限値又は許容下限値に1度も達することなく変化する場合には現在地点となり、蓄電率SOC_clcが電池241の蓄電率の許容上限値又は許容下限値に少なくとも1度は達するのであれば、最後に許容上限値又は許容下限値に達した中間地点となる。未決定地点から目的地点までの閾値が決定されると、ステップS509に処理が進む。
【0071】
(ステップS507)
設定部130は、現在の閾値P_swtを、閾値の未決定地点から中間地点までに適用する正規の閾値として決定(確定)する。このステップにおける閾値の未決定地点は、各車両20において、この今回の中間地点が、蓄電率SOC_clcが電池241の蓄電率の許容上限値又は許容下限値に最初に達する中間地点である場合には現在地点となり、蓄電率SOC_clcが電池241の蓄電率の許容上限値又は許容下限値に2回以降に達する中間地点である場合には前回の中間地点となる。なお、中間地点の数には制限はない。未決定地点から中間地点までの閾値が決定されると、ステップS504に処理が進む。
【0072】
(ステップS508)
設定部130は、現在の閾値P_swtを修正する処理(閾値修正処理)を実施する。閾値修正処理については、後述する。閾値P_swtが修正されると、ステップS502に処理が進む。
【0073】
(ステップS509)
設定部130は、車両20ごとに上記ステップS506及びS507で決定した1つ以上の閾値を時系列に繋げたデータをそれぞれ生成し、この生成したデータを各車両20が現在地点から目的地点までの走行に適用する運転シナリオとして記憶部150に保存する。運転シナリオが保存されると、本運転シナリオ生成処理が終了する。
【0074】
(4)閾値修正処理
図6を参照して、図5のステップS508で示した閾値修正処理を説明する。図6は、情報処理装置10が実行する閾値修正処理の一例を示すフローチャートである。
【0075】
(ステップS601)
設定部130は、合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needよりも大きい(ΣE_mg>ΣE_need)か否かを判断する。この判断は、閾値P_swtをどのように修正すべきかを判断するために行われる。合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needよりも大きい場合は(S601、はい)、ステップS602に処理が進む。一方、合計電動機走行エネルギーΣE_mgが合計必要電気エネルギーΣE_needよりも大きくない場合は(S601、いいえ)、ステップS603に処理が進む。
【0076】
(ステップS602)
設定部130は、複数の車両20について推定された回生エネルギーE_estを全て消費しても電気エネルギーが不足するため、閾値P_swtを減少させる。具体的には、設定部130は、現状の閾値P_swtを少量のパワーΔPだけ低下させた値に変更する(P_swt←P_swt-ΔP)。少量のパワーΔPは、動力源の性能や合計電動機走行エネルギーΣE_mgと合計必要電気エネルギーΣE_needとの差分などに基づいて、任意に設定可能である。また、このステップS602における閾値P_swtの減少方法として、上述した固定値であるパワーΔP分を減少させる方法以外にも、現状の閾値P_swtと設定可能な最小の閾値である下限閾値P_swt_minとの中間値を、修正後の閾値として設定する方法(P_swt←(P_swt+P_swt_min)/2)を用いてもよい(2分探索手法)。閾値P_swtを減少させると、本閾値修正処理が終了する。
【0077】
(ステップS603)
設定部130は、複数の車両20について推定された回生エネルギーE_estを全て消費しきれないため、閾値P_swtを増加させる。具体的には、設定部130は、現状の閾値P_swtを少量のパワーΔPだけ上昇させた値に変更する(P_swt←P_swt+ΔP)。少量のパワーΔPは、動力源の性能や合計電動機走行エネルギーΣE_mgと合計必要電気エネルギーΣE_needとの差分などに基づいて、任意に設定可能である。また、このステップS603における閾値P_swtの増加方法として、上述した固定値であるパワーΔP分を増加させる方法以外にも、現状の閾値P_swtと設定可能な最大の閾値である上限閾値P_swt_maxとの中間値を、修正後の閾値として設定する方法(P_swt←(P_swt+P_swt_max)/2)を用いてもよい(2分探索手法)。閾値P_swtを増加させると、本閾値修正処理が終了する。
【0078】
なお、運転シナリオの生成の際、取得した走行パワープロファイル及び初期蓄電率SOC_sttによっては、複数の車両20について推定された回生エネルギーE_estの全ての消費と目的地点到着時における目標蓄電率SOC_tgtの獲得とを両立できない可能性もある。このような場合には、推定された回生エネルギーE_estの全ての消費及び目的地点到着時における目標蓄電率SOC_tgtの獲得のいずれか一方を優先して、運転シナリオを生成すればよい。また、蓄電率SOC_clcが許容上限値又は許容下限値に達しないことを優先して、運転シナリオを生成してもよい。
【0079】
図11及び図12に、運転シナリオとなる閾値P_swtの決定手法の一例を示す。図11は、蓄電率SOC_clcが電池241の許容上限値に達する中間地点が存在する例を説明するための図である。図12は、蓄電率SOC_clcが電池241の許容下限値に達する中間地点が存在する例を説明するための図である。
【0080】
図11では、まず、閾値P_swtの初期値である閾値(a)を走行パワープロファイルに適用して、電池241の蓄電率SOC_clcの変化(a)を推定する。しかし、この変化(a)では、目的地点到着時に目標蓄電率SOC_tgtを得られないため、閾値P_swtが閾値(b1)に下方修正される。この閾値(b1)でも目標蓄電率SOC_tgtを得られないが、蓄電率SOC_clcが許容上限値に達する中間地点P1が存在するので、出発地点から中間地点P1までの閾値が閾値(b1)に決定される。そして、最終的に、中間地点P1から目的地点までは、目的地点到着時に目標蓄電率SOC_tgtを得られる変化(c1)となる閾値(c1)が決定される。この手法により、出発地点から中間地点P1までの時間は閾値(b1)に基づいて走行モードの切り替え制御を行い、中間地点P1から目的地点までの時間は閾値(c1)に基づいて走行モードの切り替え制御を行う運転シナリオが生成される。
【0081】
図12では、まず、閾値P_swtの初期値である閾値(a)を走行パワープロファイルに適用して、電池241の蓄電率SOC_clcの変化(a)を推定する。しかし、この変化(a)では、目的地点到着時に目標蓄電率SOC_tgtを得られないため、閾値P_swtが閾値(b2)に上方修正される。この閾値(b)でも目標蓄電率SOC_tgtを得られないが、蓄電率SOC_clcが許容下限値に達する中間地点P2が存在するので、出発地点から中間地点P2までの閾値が閾値(b2)に決定される。そして、最終的に、中間地点P2から目的地点までは、目的地点到着時に目標蓄電率SOC_tgtを得られる変化(c2)となる閾値(c2)が決定される。この手法により、出発地点から中間地点P2までの時間は閾値(b2)に基づいて走行モードの切り替え制御を行い、中間地点P2から目的地点までの時間は閾値(c2)に基づいて走行モードの切り替え制御を行う運転シナリオが生成される。
【0082】
(5)配車パターン生成処理
図7を参照して、図4のステップS409で示した配車パターン生成処理を説明する。図7は、情報処理装置10が実行する配車パターン生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0083】
(ステップS701)
配車制御部160は、複数の車両20に走行させる経路について組み合わせパターンを複数生成する。この複数の組み合わせパターンとは、複数の車両20のそれぞれが走行する予定である出発地点から目的地点までの複数の経路をそれぞれ所定の条件に従って幾つかの小経路に細分化し、この各小経路を走行可能な順序で組み合わせた経路パターンを全て示したものである。所定の条件としては、全ての配送車両が午前と午後の間の休憩時間に営業所まで一度戻ってくるなど、複数の車両20の一部又は全部が任意の地点で集合又は合流するといった条件を例示できる。所定の条件の数は、限定されない。経路について複数の組み合わせパターンが生成されると、ステップS702に処理が進む。
【0084】
図13は、車両20aが走行予定である経路A、車両20bが走行予定である経路B、及び車両20cが走行予定である経路Cを、6つの小経路A-1、A-2、B-1、B-2、C-1、及びC-2に細分化した例を示している。図13に示す6つの小経路に基づいて配車制御部160が作成した複数の組み合わせパターンの一例を、図14に示す。図14のパターンNo.1は、図13に示した各車両20a、20b、及び20cが予定どおりの経路A、B、及びCをそれぞれ走行する組み合わせパターンである。なお、この図14の例では、出発地点、休憩地点、及び目的地点が全て同じ地点(営業所など)であることを想定しているため、後半の小経路A-2、B-2、及びC-2を前半の小経路A-1、B-1、及びC-1よりも先に走行する組み合わせパターン(パターンNo.14など)や、前半の小経路A-1、B-1、及びC-1だけを走行する車両がある組み合わせパターン(パターンNo.2など)、後半の小経路A-2、B-2、及びC-2だけを走行する車両がある組み合わせパターン(パターンNo.17など)も、存在している。
【0085】
(ステップS702)
配車制御部160は、上述した運転シナリオ生成処理で生成された複数の車両20の運転シナリオを記憶部150から取得する。運転シナリオが取得されると、ステップS703に処理が進む。
【0086】
(ステップS703)
配車制御部160は、複数の組み合わせパターンの中から1つの組み合わせパターンを選択する。この1つの組み合わせパターンは、複数の車両20が実際に走行すべき実走行経路を示すものであり、複数の車両20それぞれの目標蓄電率SOC_tgtを獲得するために各車両20の運転シナリオから導出される合計必要電気エネルギーΣE_needを効率的に消費できるか否かに基づいて選択される。
【0087】
より具体的には、各車両20が目的地点において異なる目標蓄電率SOC_tgtを設定している場合には、運転シナリオ(第1区間及び前記第2区間の切り替え)に基づいた走行が終了した時点における複数の車両20の電池241の蓄電率SOC_clcをそれぞれ推定し、各車両20について推定した蓄電率SOC_clcと目的地点に到着した時点での目標蓄電率SOC_tgtとの差分の合計値が最小となる組み合わせパターンを選択することができる。また、目的地点での目標蓄電率SOC_tgtを出発地点の電池241の蓄電率に可能な限り近付けさせる場合には、運転シナリオ(第1区間及び前記第2区間の切り替え)に基づいた走行が終了した時点における複数の車両20の回生エネルギーE_estの予想量をそれぞれ推定し、各車両20について推定した回生エネルギーE_estの予想量の複数の車両20間の差分が最小となる(ばらつきが最も小さい)組み合わせパターンを選択することができる。蓄電率SOC_clcや回生エネルギーE_estの予想量の推定、及び目標蓄電率SOC_tgtの取得については、上記運転シナリオ生成処理において用いた値を使用することができる。
【0088】
図15は、図13に示した6つの小経路A-1、A-2、B-1、B-2、C-1、及びC-2に基づいて選択された1つの組み合わせパターンの一例である。図15に示す1つの組み合わせパターンは、車両20aが小経路A-1及びC-2を走行し、車両20bが小経路B-1及びA-2走行し、車両20cが小経路C-1及びB-2を走行することを意味する(図14のパターンNo.11)。
【0089】
なお、上述した1つの組み合わせパターンの選択は、出発地点から目的地点までの走行経路を決定する初期の段階だけでなく、途中の地点から目的地点までの残りの走行経路を再度決定する段階でも実行される。例えば、初期段階で車両20aが小経路A-1及びA-2を走行し、車両20bが小経路B-1及びB-2走行し、車両20cが小経路C-1及びC-2を走行する組み合わせパターン(図14のパターンNo.1)が選択され、車両走行が開始された場合では、各車両20が小経路A-1、B-1、及びC-1の走行が終わった段階で、小経路A-2、B-2、及びC-2について1つの組み合わせパターンが新たに選択される。この再選択に際しては、各車両20が小経路A-1、B-1、及びC-1の走行を終えた時点における電池241の蓄電率SOC_clcに基づいて、その後小経路A-2、B-2、及びC-2を走行して目的地点に到着した時点で推定される蓄電率SOC_clcをそれぞれ算出し、各車両20について推定した蓄電率SOC_clcと目標蓄電率SOC_tgtとの差分の合計値が最小となる組み合わせパターンを再選択することができる。このように、走行の途中で経路を変更することで、電池241の蓄電率SOC_clcの実際の推移が推定値に対してズレを生じてきた場合に、目的地点に到着した時点での最終的な蓄電率SOC_clcと目標蓄電率SOC_tgtとの乖離を極力抑制することができる。
【0090】
このように選択された1つの組み合わせパターンは、複数の車両20に提供する配車パターンとして記憶部150に記憶される。1つの組み合わせパターン(配車パターン)が選択されると、本配車パターン生成処理が終了する。
【0091】
[作用・効果]
上述したように、本開示の一実施形態に係る情報処理装置10によれば、複数の車両20の過去の走行履歴に基づいた出発地点から目的地点までの車両走行において予想される動力源で生じる走行パワーの変化を時系列で示した走行パワープロファイルを用いて、複数の車両20で合計した回生エネルギーE_estの回収量を早期に定量的に推定する。また、従って、これらの推定結果を活用して、各車両20の電池241の目標蓄電率を考慮した好適な走行制御を行うことが可能となる。
【0092】
そして、本情報処理装置10は、エンジン効率が悪い走行条件では電動機231による走行とし、内燃エンジン221ができるだけ高効率の領域で駆動できるように、複数の車両20を制御する。また、本情報処理装置10は、下り坂など回生可能なエネルギーが大きいと推定できる場合は、予め車両20の電池241の蓄電率を低下させて未回収エネルギーを無くす又は低減させるように制御する。また、本情報処理装置10は、電池241の蓄電率が許容上限値を超えないように及び許容下限値を下回らないように第1区間及び第2区間を設定して複数の車両20の走行モードを制御するため、電池241の劣化進行を防止することができる。
【0093】
さらに、本情報処理装置10は、合計回生エネルギーΣE_estの消費状況に基づいて、複数の車両20がそれぞれ走行する経路を適切に組み替える制御を行う。この制御により、例えば、単独のエネルギー収支に基づく運転シナリオでは、回収できる回生エネルギーE_estが少ないため電動機231による走行期間が短くなる経路をこれまで走行していた車両20に対して、多くの回生エネルギーE_estを回収できる別の経路を走行させるように配車パターンを選択することによって、複数の車両20全体として効率的なエネルギー収支を実施できる走行を実現することができる。
【0094】
これらの制御により、推定された合計回生エネルギーΣE_estの全ての消費を含む合計必要電気エネルギーΣE_needの効率的な消費と、各車両20の目的地点到着時における目標蓄電率SOC_tgtの獲得との両立を図りつつ、好適に燃費を向上させることができる。
【0095】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、情報処理装置だけでなく、プロセッサとメモリとを備えた情報処理装置が実行する方法、プログラム、プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、情報処理装置と車両とを備えたシステムなどとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示の情報処理装置などは、車両に効率的な走行に関する情報を提供したい場合などに利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 情報処理装置
20、20a、20b、20c 車両
110 取得部
120 推定部
130 設定部
140 通信部
150 記憶部
160 配車制御部
210 走行制御装置
211 制御部
212 導出部
220 内燃エンジンECU
221 内燃エンジン
222 変速機
230 電動機ECU
231 電動機
240 電池ECU
241 電池
250 EPSECU
251 EPS装置
260 ブレーキECU
261 ブレーキ装置
270 走行制御ECU
280 運転支援ECU
290 自動運転ECU
300 マネージャECU
310 記憶部
320 通信部
400 車載ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15