(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/34 20060101AFI20241224BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241224BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
H01L23/34 A
H01L23/48 G
H01L23/50 N
(21)【出願番号】P 2021198300
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城地 雅史
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-283642(JP,A)
【文献】特開2002-305279(JP,A)
【文献】特開2012-209469(JP,A)
【文献】特開平11-307708(JP,A)
【文献】特開平06-085153(JP,A)
【文献】特開2019-062122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34
H01L 23/48
H01L 23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有し、
前記曲げ部の角度は鈍角であり、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出し前記制御端子の幅より太い主端子とを有し、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有し、
前記曲げ部の角度は鈍角であり、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出した主端子とを有し、前記制御端子の材質と前記主端子の材質は弾性率が異なり、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有し、
前記曲げ部の角度は鈍角であり、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出した主端子とを有し、前記制御端子と前記主端子は形状が異なり、」
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有し、
前記曲げ部の角度は鈍角であり、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記ヒートシンクには、前記半導体パッケージの前記端子に対向する箇所に溝が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記端子の先端部が固定された状態で前記封止樹脂の前記放熱面に下方向の応力が印加されると前記曲げ部は弾性変形することを特徴とする請求項1
~4の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項6】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、折り返し部を有し、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出し前記制御端子の幅より太い主端子とを有し、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、折り返し部を有し、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出した主端子とを有し、前記制御端子の材質と前記主端子の材質は弾性率が異なり、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、折り返し部を有し、
前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出した主端子とを有し、前記制御端子と前記主端子は形状が異なり、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、
基板と、
ヒートシンクとを備え、
前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、
前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、
各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、
各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、折り返し部を有し、
前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、
前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、
前記ヒートシンクには、前記半導体パッケージの前記端子に対向する箇所に溝が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記折り返し部はU字、S字、V字、又は凹の形状を持つことを特徴とする請求項
6~9の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項11】
前記端子の先端部が固定された状態で前記封止樹脂の前記放熱面に下方向の応力が印加されると前記折り返し部は弾性変形することを特徴とする請求項
6~10の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項12】
前記折り返し部は、前記封止樹脂から突出した前記端子の根本部分に設けられ、縦方向に折り返した形状を持つことを特徴とする請求項
6~11の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項13】
前記折り返し部はV字形状であり、前記V字形状を構成する2つの傾斜部のなす角度は30度以上であることを特徴とする請求項
6~12の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項14】
前記折り返し部は、前記端子が下方に延びた部分に設けられ、横方向に折り返した形状を持つことを特徴とする請求項
6~11の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項15】
前記端子の全体形状がS字状又は横向きのU字形状であることを特徴とする請求項
6~11の何れか1項に記載の
半導体装置。
【請求項16】
前記半導体チップはワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1~
15の何れか1項に記載の
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体パッケージ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家電、産業小容量のモーター駆動用の半導体パッケージはその発熱量に対して適切に放熱する必要性から一般的にはトランスファーモールドタイプかつ挿入実装型の外形を採用している。従来の表面実装型の半導体パッケージは、リード端子に屈曲角度が鋭角であるU字状屈曲部を形成していた(例えば、特許文献1(
図2)参照)。リード端子のU字状屈曲部が弾性変形することにより、リード端子の半田付け部に大きな応力が作用するのを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モーター駆動用の半導体パッケージを搭載するシステムの基板の小型化、コスト低減の要求がますます強くなっており、パッケージの外形サイズに対する出力能力増加が要求されている。その動きの中で、従来はファンモータなど小容量の用途にのみ使用されていた表面実装型の半導体パッケージの出力容量の増加とヒートシンクの取り付けが図られている。しかし、従来技術ではリード端子のU字屈曲部がパッケージ上面より高く配置されていた。このため、リード端子とヒートシンクが接触してパッケージ上面にヒートシンクを適切に接触させることができず、良好な放熱性を得ることができなかった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は良好な放熱性を得ることができる半導体パッケージ及び半導体装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップに接続された複数の端子と、前記半導体チップと前記複数の端子の一部を封止した絶縁性の封止樹脂とを有する半導体パッケージと、基板と、ヒートシンクとを備え、前記封止樹脂の上面は平坦な放熱面であり、前記複数の端子は、前記封止樹脂の対向する第1及び第2の側面からそれぞれ突出し、各端子の先端部は、前記封止樹脂の下面よりも下側に位置した基板接合面を有し、各端子は、前記放熱面よりも下側に存在し、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有し、前記曲げ部の角度は鈍角であり、前記複数の端子は、前記第1の側面から突出した制御端子と、前記第2の側面から突出し前記制御端子の幅より太い主端子とを有し、前記基板は前記半導体パッケージの前記基板接合面に接合材を介して接合され、前記ヒートシンクは前記半導体パッケージの前記放熱面に取り付けられ、前記制御端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔は、前記主端子の側における前記基板と前記ヒートシンクの間隔に比べて狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示では、各端子は、下側に向かって折り曲げられた曲げ部を少なくとも2つ有する。曲げ部の角度は鈍角である。ヒートシンクの取り付け時に、各端子の先端部が固定された状態で封止樹脂の放熱面に下方向の応力が印加されると曲げ部がそれぞれ弾性変形する。このため、端子に高さ方向の十分な弾性変形幅を持たせることができる。従って、封止樹脂の放熱面とヒートシンクの接触が適切に維持され、良好な放熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体パッケージの内部を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体パッケージを示す側面図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。
【
図4】比較例に係る半導体装置を示す側面図である。
【
図5】実施の形態1に係る半導体装置の変形例を示す側面図である。
【
図6】実施の形態2に係る半導体装置を示す側面図である。
【
図7】実施の形態2に係る半導体装置の変形例1を示す側面図である。
【
図8】実施の形態2に係る半導体装置の変形例1を示す側面図である。
【
図9】実施の形態2に係る半導体装置の変形例2を示す側面図である。
【
図10】実施の形態3に係る半導体装置の変形例3を示す側面図である。
【
図11】実施の形態3に係る半導体パッケージを示す上面図である。
【
図12】実施の形態3に係る半導体装置を示す側面図である。
【
図13】実施の形態4に係る半導体装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る半導体パッケージ及び半導体装置について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る半導体パッケージの内部を示す平面図である。この半導体パッケージ100はモーター駆動用の三相インバータであり、表面実装型である。半導体チップ1a~1fはIGBT、MOSFET、又はDiなどのパワー半導体チップである。
【0011】
駆動ICチップ2aがハイサイドの半導体チップ1a~1cの制御端子にワイヤ接続されている。駆動ICチップ2bがローサイドの半導体チップ1d~1fの制御端子にワイヤ接続されている。駆動ICチップ2a,2bは複数の制御端子3にワイヤ接続されている。駆動ICチップ2aはハイサイドの半導体チップ1a~1cを駆動する。駆動ICチップ2bはローサイドの半導体チップ1d~1fを駆動する。
【0012】
半導体チップ1a~1cはP相の主端子4の上に実装されている。半導体チップ1d~1fはそれぞれU,V,W相の主端子4の上に実装されている。半導体チップ1a~1fはそれぞれU,V,W,UP,VP,WP相の主端子4にワイヤ接続されている。
【0013】
エポキシ樹脂などの封止樹脂5が、半導体チップ1a~1f、駆動ICチップ2a,2b、制御端子3の一部、主端子4の一部をトランスファーモールドにより封止している。封止樹脂5の外形は平面視で長方形であり、長辺として、互いに対向する第1の側面5a及び第2の側面5bを有する。複数の制御端子3は第1の側面5aから突出する。複数の主端子4は第2の側面5bから突出する。封止樹脂5から突出した制御端子3及び主端子4により半導体チップ1a~1f及び駆動ICチップ2a,2bは外部との接続を行う。主端子4は、モーターへの電流出力又は高圧電源との接続を行う。制御端子3は、モーター駆動信号の入力、保護信号の入力、エラー信号の出力、IC駆動電源の供給などを行う。
【0014】
図2は、実施の形態1に係る半導体パッケージを示す側面図である。封止樹脂5の上面は平坦な放熱面である。主端子4及び制御端子3の先端部は、封止樹脂5の下面よりも下側に位置した基板接合面6を有する。複数の主端子4及び複数の制御端子3のそれぞれの基板接合面6は同じ高さに位置する。
【0015】
主端子4及び制御端子3は、放熱面5cよりも下側に存在する。主端子4及び制御端子3は、下側に向かって折り曲げられた曲げ部7a,7bを少なくとも2つ有する。曲げ部7a,7bのそれぞれの角度θ1,θ2は鈍角である。半導体パッケージの基板接合面6は、はんだなどの接合材8を介して基板101の電極に接合されている。
【0016】
図3は、実施の形態1に係る半導体装置を示す側面図である。半導体パッケージ100の放熱面5cにヒートシンク102を取り付ける。放熱面5cとヒートシンク102との間には熱伝達部材として放熱グリース10又は絶縁放熱樹脂シートなどを設ける。
【0017】
ヒートシンク102をネジ9で基板101に固定する。このネジ9の締め付けで封止樹脂5の外形が下に押されて半導体パッケージ100の主端子4及び制御端子3は弾性変形する。弾性変形した主端子4及び制御端子3の反発する力でヒートシンク102に封止樹脂5の放熱面5cを押さえつける。
【0018】
ネジ9の締め付け後に封止樹脂5の下面が基板101に接触しないように、ヒートシンク102と基板101との間には適切な高さのスペーサ11を挿入する。スペーサ11はネジ9の部分に設けられているが、これに限らず基板101とヒートシンク102を適切な間隔に保持できればネジ9を他の場所に設けてもよい。
【0019】
従来は各端子の曲げ部は1つだけであった。この1つの曲げ部だけが弾性変形するため、高さ方向の弾性変形幅が小さい。これに対して、本実施の形態では、主端子4及び制御端子3の各々は、下側に向かって折り曲げられた曲げ部7a,7bを少なくとも2つ有する。曲げ部7a,7bのそれぞれの角度θ1,θ2は鈍角である。ヒートシンク102の取り付け時に、各端子の先端部が固定された状態で封止樹脂5の放熱面5cに下方向の応力が印加されると2つの曲げ部7a,7bがそれぞれ弾性変形する。このため、主端子4及び制御端子3に高さ方向の十分な弾性変形幅を持たせることができる。従って、封止樹脂5の放熱面5cとヒートシンク102の接触が適切に維持され、良好な放熱性を得ることができる。
【0020】
また、主端子4及び制御端子3は、放熱面5cよりも下側に存在し、放熱面5cよりも上側に存在する部分を持たない。このため、主端子4及び制御端子3の一部がヒートシンク102に接触することはないため、ヒートシンク102を放熱面5cに適切に接触させることができる。
【0021】
また、従来技術では屈曲部が変形する方向が横方向に限られるため、縦方向の弾性が働かず高さが調整できなかった。これに対して、本実施の形態では少なくとも2つの曲げ部7a,7bが弾性変形することで縦方向の弾性が働き、高さを調整することができる。このため、高さの異なる半導体パッケージを同一のヒートシンク102に実装することができる。
【0022】
図4は、比較例に係る半導体装置を示す側面図である。出力容量を増加して発熱量が大きくなった表面実装型の半導体パッケージの放熱には大サイズのヒートシンクが必要である。従来のDIP形状の半導体装置では封止樹脂の外形をネジ止めしていた。しかし、ヒートシンクの重量を端子のはんだ付け部で支えることになり、システム稼働時の振動などによるはんだ部の劣化が問題となる。そこで、比較例ではヒートシンク102をネジ9で基板101に固定する。通常の高さで実装された場合は基板101の上面と封止樹脂5の下面の間隔が0.5mm程度と小さく、締め付けた際に両者が接触することになる。表面実装型の場合は一般的に封止樹脂の下面が基板から浮くように実装することで基板の曲げ発生時などにその応力が封止樹脂の外形に伝わらないようにしている。これに対して、本実施の形態では上記のように主端子4及び制御端子3が高さ方向の十分な弾性変形幅を持つため、放熱面5cの高さ及び封止樹脂5の下面の基板101からの高さが高くなるように半導体パッケージ100を実装することができる。ヒートシンク102をネジ9で基板101に固定した場合でも封止樹脂5の下面が基板101から浮いた状態で維持されるため、基板101から半導体パッケージ100への応力を緩和することができる。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る半導体装置の変形例を示す側面図である。本実施の形態の半導体パッケージ100だけでなく、ダイオードモジュールなどの放熱が必要な他の装置103を基板101に実装し、ヒートシンク102を共用してもよい。他の装置103はヒートシンク102にネジ9により固定されている。ヒートシンク102を取り付ける前の状態で、半導体パッケージ100の放熱面5cの高さが他の装置103の放熱面より高くなるようにする。これにより、半導体パッケージ100のためのネジ締めもスペーサも不要となるため、実装コストと部材コストの低減が可能となる。
【0024】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る半導体装置を示す側面図である。封止樹脂5の側面から横方向に突出した主端子4及び制御端子3の根本部分に折り返し部12が設けられている。折り返し部12は、縦方向に折り返したU字、S字、V字、又は凹などの形状を持つ。
【0025】
実施の形態1では、半導体パッケージの高さを確保しようとすると主端子4及び制御端子3が横に張り出すため、基板101上の実装面積が大きくなる。これに対して、本実施の形態では、主端子4及び制御端子3に折り返し部12が設けられている。折り返し部12を設けても主端子4及び制御端子3の横への張り出しは少ないため、実装面積があまり大きくならない。
【0026】
ヒートシンク102の取り付け時に、各端子の先端部が固定された状態で封止樹脂5の放熱面5cに下方向の応力が印加されると折り返し部12が弾性変形する。これにより、基板101上の実装面積を減らし、実装高さの調整しろを拡大することができる。また、基板101がたわんでいる場合など、封止樹脂5の外形表面が水平でない場合でもヒートシンク102を放熱面5cに適切に接触させることができる。その他の構成及び効果は実施の形態1と同様である。
【0027】
また、折り返し部12がV字形状の場合、V字形状を構成する2つの傾斜部のなす角度は30度以上であることが好ましい。このように角度を広くすることで主端子4及び制御端子3が弾性変形しやすくなる。
【0028】
図7及び
図8は、実施の形態2に係る半導体装置の変形例1を示す側面図である。折り返し部12は、主端子4及び制御端子3が下方に延びた部分に設けられ、横方向に折り返したU字、S字、V字、又は凹などの形状を持つ。これにより、高さを保って半導体パッケージを実装することができる。また、ヒートシンク102の取り付け時に印加される応力がはんだ付けのせん断方向(図中横方向)にかかりにくくなるため、はんだ付け部の信頼性が向上する。また、実装面積を更に減らすことができる。
【0029】
図8に示すように2つの半導体パッケージ100を並べて基板101に接合しヒートシンク102を共用することもできる。ヒートシンク102を2つの半導体パッケージ100の放熱面5cに押し付けて固定する際に、2つの半導体パッケージ100の主端子4及び制御端子3の折り返し部12がそれぞれ弾性変形し、2つの半導体パッケージ100の放熱面5cの高さが揃えられる。よって、基板101に接合する際に2つの半導体パッケージ100の放熱面5cの高さを揃える必要が無い。基板101とヒートシンク102の間隔が均一でなくても各端子の折り返し部12の弾性変形量が調整され、ヒートシンク102を2つの半導体パッケージ100の放熱面5cにそれぞれ適切に接触させることができる。
【0030】
図9は、実施の形態2に係る半導体装置の変形例2を示す側面図である。主端子4及び制御端子3の全体形状がS字状の折り返し部12である。
図10は、実施の形態3に係る半導体装置の変形例3を示す側面図である。主端子4及び制御端子3の全体形状が横向きのU字形状の折り返し部12である。このように主端子4及び制御端子3の形状が単純であれば、主端子4及び制御端子3の加工がしやすい。
【0031】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る半導体パッケージを示す上面図である。第2の側面5bから突出した主端子4の幅は、第1の側面5aから突出した制御端子3の幅より太い。従って、制御端子3は弾性率が低く、弾性変形しやすい。
【0032】
図12は、実施の形態3に係る半導体装置を示す側面図である。基板101の両端をスペーサ11を介してヒートシンク102に取り付けている。取付位置では基板101とヒートシンク102の間隔はスペーサ11により確保されている。一方、基板101が撓むことで基板101の中央部においてヒートシンク102との間隔が狭くなっている。この間隔が狭くなる方に制御端子3側が来るように半導体パッケージの実装方向を設定する。従って、制御端子3の側における基板101とヒートシンク102の間隔は、主端子4の側における基板とヒートシンク102の間隔に比べて狭くなる。
【0033】
一般的に基板101は撓んでいて平らではなく、基板101とヒートシンク102の取り付け平面が並行にならない場合が多い。基板101の撓みが大きいと、半導体パッケージの放熱面5cとヒートシンク102の接触が適切に維持できない可能性がある。そこで、基板101の撓みやすい方向をあらかじめ把握しておき、基板101とヒートシンク102の間隔が狭くなる方に制御端子3側が向くように半導体パッケージの実装方向を設定する。これにより、基板101とヒートシンク102の間隔差異に対応して主端子4及び制御端子3が弾性変形して半導体パッケージの放熱面5cとヒートシンク102の適切な接触を維持することができる。
【0034】
また、主端子4の材質と制御端子3の材質を弾性率が異なるものにしてもよい。例えば、主端子4の材質をFe(鉄)、制御端子3の材質をCu(銅)にする。この場合、主端子4の弾性率が制御端子3より大きくなる。この組み合わせに限らず、主端子4と制御端子3に異なる弾性率の材料を用いればよい。基板101とヒートシンク102の間隔が狭くなる方に弾性率の低い端子側が向くように半導体パッケージの実装方向を設定する。これにより、基板101が撓んでいる場合など、封止樹脂5の表面が水平でない場合でも半導体パッケージの放熱面5cとヒートシンク102の適切な接触を維持することができる。
【0035】
また、封止樹脂5の外形はネジ等で強固に固定されない。このため、システム動作中に振動が発生した際に封止樹脂5の外形が共振して、主端子4及び制御端子3の破損、はんだ付け部の剥離など不具合が生じうる。そこで、制御端子3と主端子4を異なる形状にする。これにより、それぞれの端子の共振周波数が異なるため、全体としての共振振動を抑えて不具合を防ぐことができる。
【0036】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4に係る半導体装置を示す側面図である。ヒートシンク102の取り付け時に主端子4及び制御端子3が弾性変形してヒートシンク102の表面に近づく。そこで、本実施の形態では、ヒートシンク102に、半導体パッケージ100の主端子4及び制御端子3に対向する箇所に溝13を設けている。これにより、弾性変形した制御端子3と主端子4と金属製のヒートシンク102との間に規定の絶縁距離を確保することができる。
【0037】
なお、半導体チップ1a~1fは、珪素によって形成されたものに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成されたものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドである。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成された半導体チップは、耐電圧性及び許容電流密度が高いため、小型化できる。この小型化された半導体チップを用いることで、この半導体チップを組み込んだ半導体装置も小型化・高集積化できる。また、半導体チップの耐熱性が高いため、ヒートシンクの放熱フィンを小型化でき、水冷部を空冷化できるので、半導体装置を更に小型化できる。また、半導体チップの電力損失が低く高効率であるため、半導体装置を高効率化できる。
【符号の説明】
【0038】
1a~1f 半導体チップ、3 制御端子、4 主端子、5 封止樹脂、5a 第1の側面、5b 第2の側面、5c 放熱面、6 基板接合面、7a,7b 曲げ部、12 折り返し部、13 溝、101 基板、102 ヒートシンク