(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241224BHJP
【FI】
H02M7/48 M ZHV
(21)【出願番号】P 2021209099
(22)【出願日】2021-12-23
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 真一
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 優月
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172985(JP,A)
【文献】特開2012-257415(JP,A)
【文献】特開2002-112576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
外部のバッテリから供給される電力内のノイズを低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路を構成するコンデンサと、
前記バッテリから前記フィルタ回路を介して供給される電力を直流から交流に変換して前記電動モータに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路から前記電動モータへの電力供給経路に接続され、前記インバータ回路の動作を制御するドライブ回路と、
前記バッテリから供給される電力を変圧して前記ドライブ回路に供給する電源回路と、
前記電源回路から前記ドライブ回路に電力を供給する電源経路を接続または遮断するスイッチと、
前記スイッチの動作を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記コンデンサと前記インバータ回路との間における電圧が前記電源回路と前記ドライブ回路との間における電圧よりも高い場合に前記電源経路を接続し、前記コンデンサと前記インバータ回路との間における電圧が前記電源回路と前記ドライブ回路との間における電圧よりも低い場合に前記電源経路を遮断する、電動圧縮機。
【請求項2】
前記制御回路は、前記電源経路の遮断中に、前記バッテリから前記インバータ回路への電力供給が開始し、前記コンデンサと前記インバータ回路との間における電圧が第1閾値以上になったときに、前記スイッチを制御して前記電源経路を接続する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記制御回路は、前記電源経路の接続中に、前記コンデンサと前記インバータ回路との間における電圧が第2閾値まで低下したときに、前記スイッチを制御して前記電源経路を遮断する、請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関し、特に、車両のバッテリからの直流電力を用いて動作可能な電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車、電気自動車、または燃料電池車などの車両においては、車両用エアコンなどに用いられる電動圧縮機が搭載されている。たとえば、特開2020-159320号公報(特許文献1)には、車両システムに搭載された高電圧バッテリからの直流電力を交流電力に変換して電動モータに供給する電動圧縮機が開示されている。特許文献1に開示された電動圧縮機は、制御コンピュータの制御に基づき高電圧バッテリからの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、高電圧バッテリからの電力よりも低い電力を制御コンピュータに供給する低電圧電源とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電動圧縮機は、制御コンピュータの制御に基づきインバータ回路を駆動することによって、車両システムの高電圧バッテリからの直流電力を交流電力に変換して電動モータに供給することができる。しかしながら、たとえば、車両システムが停止した場合において、高電圧バッテリ側の電圧が、低電圧電源から制御コンピュータに印可される電圧よりも低くなると、低電圧電源からの電力により電動圧縮機の内外にあるコンデンサ(キャパシタ)に電荷が貯まるおそれがある。このような場合、コンデンサ内に貯まった電荷により車両システム内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えるおそれがある。このような問題は、車両用エアコンに限らず、電動圧縮機を外部バッテリからの電力で動作するシステム全般に存在する。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電動圧縮機を制御するための電力が電動圧縮機を搭載するシステム内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えることを防止する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る電動圧縮機は、電動モータと、フィルタ回路と、コンデンサと、インバータ回路と、ドライブ回路と、電源回路と、スイッチと、制御回路とを備える。フィルタ回路は、外部のバッテリから供給される電力内のノイズを低減する。コンデンサは、フィルタ回路を構成する。インバータ回路は、バッテリからフィルタ回路を介して供給される電力を直流から交流に変換して電動モータに供給する。ドライブ回路は、インバータ回路から電動モータへの電力供給経路に接続され、インバータ回路の動作を制御する。電源回路は、バッテリから供給される電力を変圧してドライブ回路に供給する。スイッチは、電源回路からドライブ回路に電力を供給する電源経路を接続または遮断する。制御回路は、スイッチの動作を制御する。制御回路は、コンデンサとインバータ回路との間における電圧が電源回路とドライブ回路との間における電圧よりも高い場合に電源経路を接続し、コンデンサとインバータ回路との間における電圧が電源回路とドライブ回路との間における電圧よりも低い場合に電源経路を遮断する。
【0007】
上記の構成によれば、電動圧縮機は、電源回路からドライブ回路に電力が供給される電源経路を、スイッチによって接続または遮断することができる。これにより、電動圧縮機は、電源回路からドライブ回路に供給される電力により電動圧縮機内にあるコンデンサに電荷が貯まることを防止することができるため、電動圧縮機を制御するための電力が電動圧縮機を搭載するシステム内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えることを防止することができる。
【0008】
好ましくは、制御回路は、電源経路の遮断中に、バッテリからインバータ回路への電力供給が開始し、コンデンサとインバータ回路との間における電圧が第1閾値以上になったときに、スイッチを制御して電源経路を接続する。
【0009】
上記の構成によれば、電動圧縮機は、電源経路の遮断中に、バッテリからインバータ回路への電力供給が開始し、コンデンサとインバータ回路との間における電圧、言い換えるとバッテリからインバータ回路に供給される電力の電圧が第1閾値以上になったときに、スイッチによって電源経路を接続するため、電源回路からドライブ回路に供給される電力の電圧が、高圧側の電圧よりも高くなることを回避し、電源回路からドライブ回路に供給される電力により電動圧縮機内にあるコンデンサに電荷が貯まることを防止することができる。
【0010】
好ましくは、制御回路は、電源経路の接続中に、コンデンサとインバータ回路との間における電圧が第2閾値まで低下したときに、スイッチを制御して電源経路を遮断する。
【0011】
上記の構成によれば、電動圧縮機は、電源経路の接続中に、コンデンサとインバータ回路との間における電圧、言い換えるとバッテリからインバータ回路に供給される電力の電圧が第2閾値まで低下したときに、スイッチによって電源経路を遮断するため、電源回路からドライブ回路に供給される電力により電動圧縮機内にあるコンデンサに電荷が貯まることを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、電動圧縮機を制御するための電力が電動圧縮機を搭載するシステム内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る電動圧縮機の構成を示す回路図である。
【
図2】実施の形態に係る車両システムの構成を示す回路図である。
【
図3】実施の形態に係るドライブ回路の駆動部の構成を示す回路図である。
【
図4】残留電荷による車両システムへの影響の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る制御回路によるスイッチの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0015】
[電動圧縮機の構成]
図1を参照しながら、実施の形態に係る電動圧縮機1の構成を説明する。
図1は、実施の形態に係る電動圧縮機1の構成を示す回路図である。
【0016】
電動圧縮機1は、車両用エアコンなどに用いられる電動圧縮機である。
図1に示すように、電動圧縮機1は、接続点T1および接続点T2にケーブル35が接続されることによって、車両システム3に接続可能である。接続点T1および接続点T2は、図示しないコネクタとして電動圧縮機1のハウジングに取り付けられている。車両システム3は、スイッチ30と、バッテリ40と、駆動装置80と、ギヤ81と、駆動輪82とを備える。バッテリ40は、本開示における「外部のバッテリ」に相当する。
【0017】
駆動装置80は、バッテリ40から供給される電力を用いて、ギヤ81を介して駆動輪82を駆動させる。電動圧縮機1は、駆動装置80に用いられるバッテリ40からの直流電力を交流電力に変換して、後述する電動モータ11に供給する補機である。
【0018】
バッテリ40は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、または鉛蓄電池など、充放電可能な二次電池によって構成されている。ハイブリッド車、電気自動車、または燃料電池車などの車両においては、バッテリ40として、200V~400Vの二次電池が適用され得る。なお、
図1においては、バッテリ40から供給される電力の電圧が「HV」で示されている。バッテリ40の正極端子は、スイッチ30を介して接続点T1に接続されている。バッテリ40の負極端子は、接続点T2に接続されている。
【0019】
スイッチ30は、バッテリ40と電動圧縮機1との間の経路を電気的に接続または遮断する。スイッチ30の具体的な構成については、
図2を参照しながら後述する。
【0020】
電動圧縮機1は、正極線PLと、負極線NLと、電動モータ11と、インバータ回路12と、フィルタ回路13と、ドライブ回路14と、制御回路15と、電源回路16とを備える。
【0021】
正極線PLは、接続点T1を介してバッテリ40の正極端子に接続されている。負極線NLは、接続点T2を介してバッテリ40の負極端子に接続されている。また、負極線NLは、接地端子GNDに接続されている。
【0022】
電動モータ11は、いわゆる三相交流モータであり、U相のコイル11Uと、V相のコイル11Vと、W相のコイル11Wとを備える。コイル11U、コイル11V、およびコイル11Wは、たとえばY結線されている。電動モータ11は、各コイル11U,11V,11Wに電力が供給されることにより、図示しないロータおよびロータに接続された回転軸などを回転させる。
【0023】
インバータ回路12は、いわゆる三相インバータを構成する。インバータ回路12は、正極線PLと負極線NLとの間で直列に接続されたスイッチング素子TU1およびスイッチング素子TU2と、正極線PLと負極線NLとの間で直列に接続されたスイッチング素子TV1およびスイッチング素子TV2と、正極線PLと負極線NLとの間で直列に接続されたスイッチング素子TW1およびスイッチング素子TW2とを備える。なお、以下では、スイッチング素子TU1,TU2,TV1,TV2,TW1,TW2のいずれかまたは全部を、単に「スイッチング素子」とも称する。
【0024】
各スイッチング素子は、たとえば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)または電界効果トランジスタ(FET:Field effect transistor)などの半導体トランジスタによって構成されている。
図1においては、各スイッチング素子がIGBTによって構成された例が示されている。
【0025】
スイッチング素子TU1は、U相の上アームを構成する。スイッチング素子TU2は、U相の下アームを構成する。スイッチング素子TV1は、V相の上アームを構成する。スイッチング素子TV2は、V相の下アームを構成する。スイッチング素子TW1は、W相の上アームを構成する。スイッチング素子TW2は、W相の下アームを構成する。
【0026】
具体的には、スイッチング素子TU1のコレクタは、正極線PLに接続され、スイッチング素子TU1のエミッタは、スイッチング素子TU2のコレクタに接続されている。スイッチング素子TU2のエミッタは、負極線NLに接続されている。スイッチング素子TV1のコレクタは、正極線PLに接続され、スイッチング素子TV1のエミッタは、スイッチング素子TV2のコレクタに接続されている。スイッチング素子TV2のエミッタは、負極線NLに接続されている。スイッチング素子TW1のコレクタは、正極線PLに接続され、スイッチング素子TW1のエミッタは、スイッチング素子TW2のコレクタに接続されている。スイッチング素子TW2のエミッタは、負極線NLに接続されている。
【0027】
スイッチング素子TU1のエミッタとスイッチング素子TU2のコレクタとの間のノードN1は、コイル11Uに接続されている。スイッチング素子TV1のエミッタとスイッチング素子TV2のコレクタとの間のノードN2は、コイル11Vに接続されている。スイッチング素子TW1のエミッタとスイッチング素子TW2のコレクタとの間のノードN3は、コイル11Wに接続されている。
【0028】
さらに、インバータ回路12は、スイッチング素子TU1と並列に接続されたダイオードDU1と、スイッチング素子TU2と並列に接続されたダイオードDU2と、スイッチング素子TV1と並列に接続されたダイオードDV1と、スイッチング素子TV2と並列に接続されたダイオードDV2と、スイッチング素子TW1と並列に接続されたダイオードDW1と、スイッチング素子TW2と並列に接続されたダイオードDW2とを備える。
【0029】
ダイオードDU1のアノードは、スイッチング素子TU1のエミッタに接続され、ダイオードDU1のカソードは、スイッチング素子TU1のコレクタに接続されている。ダイオードDU2のアノードは、スイッチング素子TU2のエミッタに接続され、ダイオードDU2のカソードは、スイッチング素子TU2のコレクタに接続されている。ダイオードDV1のアノードは、スイッチング素子TV1のエミッタに接続され、ダイオードDV1のカソードは、スイッチング素子TV1のコレクタに接続されている。ダイオードDV2のアノードは、スイッチング素子TV2のエミッタに接続され、ダイオードDV2のカソードは、スイッチング素子TV2のコレクタに接続されている。ダイオードDW1のアノードは、スイッチング素子TW1のエミッタに接続され、ダイオードDW1のカソードは、スイッチング素子TW1のコレクタに接続されている。ダイオードDW2のアノードは、スイッチング素子TW2のエミッタに接続され、ダイオードDW2のカソードは、スイッチング素子TW2のコレクタに接続されている。
【0030】
フィルタ回路13は、電動圧縮機1の入力側に配置され、LCフィルタを構成する。フィルタ回路13は、バッテリ40からインバータ回路12に電力が供給された場合に、インバータ回路12に電力の高周波成分(ノイズ)が通過することを抑制する。フィルタ回路13は、正極線PL上に設けられたインダクタL13と、正極線PLと負極線NLとの間に接続されたコンデンサC13とを備える。
【0031】
ドライブ回路14は、インバータ回路12の各スイッチング素子のゲートおよびノードN1、N2、N3に接続されるとともに、制御回路15と通信可能に接続されている。ドライブ回路14は、各スイッチング素子を駆動する駆動部50を備える。駆動部50は、制御回路15からのPWM信号に基づき、各スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御する。これにより、バッテリ40から供給される直流電力は、インバータ回路12によって交流電力に変換され、電動モータ11に供給される。ドライブ回路14は、インバータ回路12から電動モータ11への電力供給経路にノードN1、N2、N3にて接続されている。電動モータ11とドライブ回路14は、インバータ回路12に対してノードN1、N2、N3から分岐するように接続されているとも言える。
【0032】
制御回路15は、CPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read-Only Memory)などのメモリとを備え、プロセッサがメモリに記憶されたデータに基づきドライブ回路14を制御するように構成されている。具体的には、制御回路15は、PWM信号によってドライブ回路14を制御することによって、インバータ回路12の各スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御する。これにより、制御回路15は、バッテリ40から供給される直流電力をインバータ回路12によって交流電力に変換して電動モータ11に供給し、電動モータ11を駆動させる。
【0033】
電源回路16は、電動圧縮機1の内部電源である。電源回路16は、車両システム3が備える12V系の低圧バッテリ90から供給される電力を、制御回路15およびドライブ回路14の各々に対して互いに異なる経路を介して供給する。たとえば、電源回路16は、低圧バッテリ90からの電力を図示しないレギュレータによって5Vまたは10Vの電力に変換して、電力経路26を介して制御回路15に供給する。また、電源回路16は、低圧バッテリ90からの電力を図示しないレギュレータによって15Vの電力に変換して、電力経路25を介してドライブ回路14に供給する。電力経路25は、本開示における「電源経路」に相当する。このように、電源回路16は、バッテリ40からインバータ回路12に供給される電力よりも低い電力を、制御回路15およびドライブ回路14の各々に対して互いに異なる経路を介して供給する。なお、
図1においては、低圧バッテリ90から供給される電力の電圧が「LV」で示されている。低圧バッテリ90は、バッテリ40と同様に、本開示における「外部のバッテリ」に相当する。バッテリ40と低圧バッテリ90は一つのバッテリに一体化されており、このバッテリからコンバータを介して減圧された後に電源回路16へと電力が供給されていてもよい。
【0034】
なお、制御回路15は、ドライブ回路14と同じ電源回路(この例では電源回路16)から電力を供給される必要はなく、たとえば、ドライブ回路14の電源回路16とは異なる電源回路から電力を供給されてもよい。
【0035】
[車両システムの構成]
図2を参照しながら、実施の形態に係る車両システム3の構成を説明する。
図2は、実施の形態に係る車両システム3の構成を示す回路図である。なお、
図3においては、電動圧縮機1が接続可能な車両システム3の一部の構成が示されている。
【0036】
図2に示すように、車両システム3は、バッテリ40と、スイッチ30と、レジスタR1と、コンデンサC1と、コンデンサC2とを備える。
【0037】
スイッチ30は、バッテリ40の正極端子と電動圧縮機1との間に設けられたスイッチ31およびスイッチ32と、バッテリ40の負極端子と電動圧縮機1との間に設けられたスイッチ33およびスイッチ34とを備える。各スイッチ31~34は、電磁接触器(コンタクタ)または電磁開閉器(マグネットスイッチ)などの開閉器によって構成され、バッテリ40と電動圧縮機1との間の経路を電気的に接続または遮断する。
【0038】
スイッチ31の一方端は、バッテリ40の正極端子に接続され、スイッチ31の他方端は、レジスタR1を介して電動圧縮機1の接続点T1に接続されている。スイッチ32の一方端は、バッテリ40の正極端子に接続され、スイッチ32の他方端は、電動圧縮機1の接続点T1に接続されている。
【0039】
スイッチ33の一方端は、バッテリ40の負極端子に接続され、スイッチ33の他方端は、コンデンサC1を介して電動圧縮機1の接続点T1に接続されている。スイッチ34の一方端は、バッテリ40の負極端子に接続され、スイッチ34の他方端は、電動圧縮機1の接続点T2に接続されている。
【0040】
レジスタR1は、スイッチ31と電動圧縮機1の接続点T1とに接続され、プリチャージ抵抗として機能する。
【0041】
コンデンサC1は、スイッチ33と電動圧縮機1の接続点T1とに接続され、平滑コンデンサとして機能する。
【0042】
コンデンサC2は、電動圧縮機1における接続点T1と接続点T2とに接続され、平滑コンデンサとして機能する。
【0043】
上記のように構成された車両システム3においては、システム起動時(たとえば、車両のイグニッションスイッチのオン時)に、スイッチ30がオン状態に制御されることにより、バッテリ40と電動圧縮機1とが電気的に接続される。具体的には、車両システム3が起動すると、スイッチ33がオフ状態からオン状態に切り替わるとともに、スイッチ34がオフ状態からオン状態に切り替わる。そして、スイッチ31がオフ状態からオン状態に切り替わった後に、スイッチ32がオフ状態からオン状態に切り替わる。その後、スイッチ31がオン状態からオフ状態に切り替わる。これにより、バッテリ40と電動圧縮機1とが電気的に接続された状態になり、バッテリ40から電動圧縮機1への電力供給が開始する。
【0044】
一方、車両システム3においては、システム停止時(たとえば、車両のイグニッションスイッチのオフ時)に、スイッチ30がオフ状態に制御されることにより、バッテリ40と電動圧縮機1とが電気的に遮断される。具体的には、車両システム3が停止すると、スイッチ32がオン状態からオフ状態に切り替わる。その後、スイッチ33がオン状態からオフ状態に切り替わるとともに、スイッチ34がオン状態からオフ状態に切り替わる。これにより、バッテリ40と電動圧縮機1とが電気的に遮断された状態になり、バッテリ40から電動圧縮機1への電力供給が停止する。
【0045】
[ドライブ回路の駆動部の構成]
図3を参照しながら、実施の形態に係るドライブ回路14の駆動部50の構成を説明する。
図3は、実施の形態に係るドライブ回路14の駆動部50の構成を示す回路図である。なお、
図3においては、インバータ回路12の複数のスイッチング素子のうち、スイッチング素子TU1およびスイッチング素子TU2のみが示されており、その他のスイッチング素子は省略されている。また、
図3においては、スイッチング素子TU1のゲートのみに駆動部50からの電力経路が接続されているが、実際は、その他のスイッチング素子のゲートに対しても駆動部50からの電力経路が接続されている。
【0046】
図3に示すように、駆動部50は、ドライバIC(Integrated Circuit)51と、コンデンサC51と、コンデンサC52と、レジスタR51と、レジスタR52と、レジスタR53と、ダイオードD51とを備える。
【0047】
ドライバIC51は、制御回路15からのPWM信号に基づき、インバータ回路12の各スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御するための集積回路である。ドライバIC51は、端子511~515と、スイッチング素子521と、スイッチング素子522とを備える。
【0048】
端子511は、電源回路16に接続されるとともに、コンデンサC51を介して接地端子GNDに接続されている。端子512は、接地端子GNDに接続されている。端子513は、レジスタR53およびダイオードD51を介して電源回路16に接続されるとともに、コンデンサC52を介して端子515に接続されている。ダイオードD51のアノードは、レジスタR53に接続され、ダイオードD51のカソードは、端子513およびコンデンサC52に接続されている。端子514は、レジスタR51を介してスイッチング素子TU1のゲートに接続されている。端子515は、レジスタR52を介してスイッチング素子TU1のエミッタおよびスイッチング素子TU2のコレクタに接続されている。
【0049】
スイッチング素子521およびスイッチング素子522は、たとえば、IGBTまたはFETなどの半導体トランジスタによって構成されている。
図3においては、スイッチング素子521およびスイッチング素子522がFETによって構成された例が示されている。ドライバIC51の内部において、スイッチング素子521のドレインは、端子513に接続され、スイッチング素子521のソースは、スイッチング素子522のドレインに接続されている。スイッチング素子522のソースは、端子515に接続されている。スイッチング素子521のソースおよびスイッチング素子522のドレインは、端子514に接続されている。
【0050】
上記のように構成されたドライブ回路14は、電源回路16から供給される電力を用いてドライバIC51が駆動することによって、制御回路15からのPWM信号に基づき、インバータ回路12の各スイッチング素子をオン状態またはオフ状態に制御する。
【0051】
[車両システムの停止時における現象]
上述したように、車両システム3においては、システム停止時(イグニッションスイッチのオフ時)に、スイッチ30がオフ状態に制御されることにより、バッテリ40から電動圧縮機1への電力供給が停止する。バッテリ40からの電力供給が停止した直後においては、高圧側のコンデンサC2,C13に電荷が蓄えられているが、駆動装置80の駆動によって、コンデンサC2,C13に蓄えられた残留電荷は徐々に放電する。これにより、車両システム3側である高圧側の電圧が徐々に低下する。このような状況において、電源回路16からドライブ回路14に供給される電力が維持されることによって、高圧側の電圧が、電源回路16からドライブ回路14に供給される電力の電圧よりも低くなると、電源回路16からの電力がインバータ回路12を介して高圧側に回り込むおそれがある。
【0052】
具体的には、
図3の矢印で示すように、電源回路16から供給される電力による電流は、レジスタR53およびダイオードD51を介してドライバIC51の端子513に入力され、スイッチング素子521およびスイッチング素子522を介してドライバIC51の端子515から出力される。具体的には、システム停止時(イグニッションスイッチのオフ時)においては、スイッチング素子521,522のゲート電圧が0Vになってスイッチング素子521,522がオン状態に制御される。これにより、電源回路16から供給される電力による電流は、スイッチング素子521およびスイッチング素子522を通過してドライバIC51の端子515から出力される。
【0053】
端子515から出力された電源回路16からの電流は、レジスタR52を介してインバータ回路12のノードN1に入力される。インバータ回路12においては、スイッチング素子TU1のゲート電圧が0Vになってスイッチング素子TU1がオフ状態に制御されるため、端子515から出力された電源回路16からの電流は、ダイオードDU1を介してインバータ回路12から車両システム3に出力される。インバータ回路12から出力された電源回路16からの電流は、コンデンサC13を通過する一方で、インダクタL13を介して車両システム3のコンデンサC2を通過する。同様に、ドライバIC51の図示しない別の端子から出力された電流はノードN2、N3に入力され最終的にコンデンサC13とコンデンサC2を通過する。
【0054】
上述のようにして電源回路16からの電流が高圧側のコンデンサC2,C13に回り込むことにより、コンデンサC2,C13に電荷(たとえば、約10Vに相当する電荷量)が蓄えられる。コンデンサC2,C13に残留した電荷は、車両システム3内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えるおそれがある。
【0055】
たとえば、
図4は、残留電荷による車両システム3への影響の一例を示す図である。
図4に示すように、コンデンサC2または図示しないコンデンサC13に残留電荷が蓄えられた状態で車両システム3が起動(イグニッションスイッチがオン)すると、スイッチ33がオフ状態からオン状態に切り替わるとともに、スイッチ34がオフ状態からオン状態に切り替わる。このとき、スイッチ33、コンデンサC1、コンデンサC2、およびスイッチ34を通る経路によって閉回路が形成されることによって、コンデンサC2に蓄えられた残留電荷が一気に放出されるため、スイッチ34においてスパークが生じ得る。これにより、スイッチ34の接点荒損によってスイッチ34の寿命が低下したり、スイッチ34の接点溶着によって不具合が生じたりするおそれがある。
【0056】
そこで、
図1に示すように、実施の形態に係る電動圧縮機1は、電源回路16からドライブ回路14に電力が供給される電力経路25を接続または遮断するスイッチ20を備えている。さらに、電動圧縮機1は、インバータ回路12を流れる電流を測定する電流センサ60と、インバータ回路12に印可される電圧を測定する電圧センサ70とを備える。電圧センサ70は、コンデンサC13とインバータ回路12との間における電圧を測定しているとも言える。制御回路15は、電圧センサ70によって測定された電圧値に基づきスイッチ20を制御する。もしくは、制御回路15は、電流センサ60によって測定された電流値と、電圧センサ70によって測定された電圧値とに基づき、バッテリ40からインバータ回路12に供給される電力を算出し、算出した電力に基づき、スイッチ20を制御してもよい。より具体的には、電圧センサ70は、コンデンサC13とインバータ回路12との間の電圧を測定する。
【0057】
スイッチ20は、リレーまたはトランジスタなど、電力経路25を接続または遮断するスイッチング回路によって構成されている。電動圧縮機1においては、たとえば、スイッチ20として、LDO(Low Drop Out)レギュレータが用いられている。
【0058】
また、上述したように、電源回路16は、電力経路26を介して制御回路15に電力を供給する一方で、電力経路25を介してドライブ回路14に電力を供給するように構成されている。このため、スイッチ20によって電力経路25が遮断されたとしても、電源回路16から制御回路15に電力が供給される電力経路26が遮断されることはない。
【0059】
[制御回路によるスイッチの制御処理]
図5を参照しながら、実施の形態に係る制御回路15によるスイッチ20の制御処理を説明する。
図5は、実施の形態に係る制御回路15によるスイッチ20の制御処理を示すフローチャートである。
図5のフローチャートは、予め定められた条件成立時にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて定期的に実行される。制御回路15の各ステップは、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することで実現される。以下、ステップをSと略す。
【0060】
図5に示すように、制御回路15は、電力経路25が遮断中であるか否かを判定する(S1)。制御回路15は、電力経路25が遮断中である場合(S1でYES)、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第1閾値以上であるか否かを判定する(S2)。「第1閾値」は、電源回路16からドライブ回路14に印可される電圧以上の値、より具体的には電源回路16とドライブ回路14との間における電圧以上の値であればよく、たとえば、電動圧縮機1の最低動作電圧であってもよい。
【0061】
制御回路15は、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第1閾値以上である場合(S2でYES)、スイッチ30をオン状態に制御して電力経路25を接続する(S3)。一方、制御回路15は、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第1閾値以上でない場合(S2でNO)、またはS3の処理の後、処理をメインルーチンに戻す。
【0062】
このように、電力経路25の遮断中に、車両システム3が起動(イグニッションスイッチがオン)することによって、インバータ回路12への電圧印可が開始して、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が徐々に上昇し、インバータ回路12に印可される電圧が第1閾値以上になったときに、スイッチ30によって電力経路25が接続される。これにより、制御回路15は、電源回路16からドライブ回路14に印可される電圧が、高圧側の電圧よりも高くなることを回避し、電源回路16からドライブ回路14に印可される電圧が高圧側に回り込むことを防止することができるため、電動圧縮機1を制御するための電力が車両システム3内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えることを防止することができる。
【0063】
制御回路15は、電力経路25が遮断中でない場合(S1でNO)、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第2閾値まで低下したか否かを判定する(S4)。「第2閾値」は、電源回路16からドライブ回路14に印可される電圧以上の値、より具体的には電源回路16とドライブ回路14との間における電圧以上の値であればよく、たとえば、電動圧縮機1の最低動作電圧であってもよい。なお、第1閾値は、第2閾値と同じ値であってもよいし、第2閾値と異なる値であってもよい。
【0064】
制御回路15は、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第2閾値まで低下した場合(S4でYES)、スイッチ30をオフ状態に制御して電力経路25を遮断する(S5)。一方、制御回路15は、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が第2閾値まで低下していない場合(S4でNO)、またはS5の処理の後、処理をメインルーチンに戻す。
【0065】
このように、電力経路25の接続中に、車両システム3が停止(イグニッションスイッチがオフ)することによって、インバータ回路12への電力供給が停止して、バッテリ40からインバータ回路12に印可される電圧が徐々に低下し、インバータ回路12に印可される電圧が第2閾値まで低下したときに、スイッチ30によって電力経路25が遮断される。すなわち、インバータ回路12に印可される電圧が第2閾値未満になる前には、スイッチ30によって電力経路25が遮断される。これにより、制御回路15は、電源回路16からドライブ回路14に印可される電圧が、高圧側の電圧よりも高くなることを回避し、電源回路16からドライブ回路14に供給される電力が高圧側に回り込むことを防止することができるため、電動圧縮機1を制御するための電力が車両システム3内の機器の損傷または寿命低下に影響を与えることを防止することができる。
【0066】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 電動圧縮機、3 車両システム、11 電動モータ、11U,11V,11W コイル、12 インバータ回路、13 フィルタ回路、14 ドライブ回路、15 制御回路、16 電源回路、20,30,31,32,33,34 スイッチ、25,26 電力経路、35 ケーブル、40 バッテリ、50 駆動部、51 ドライバIC、60 電流センサ、70 電圧センサ、80 駆動装置、81 ギヤ、82 駆動輪、90 低圧バッテリ、511,512,513,514,515 端子、521,522,TU1,TU2,TV1,TV2,TW1,TW2 スイッチング素子、C1,C2,C13,C51,C52 コンデンサ、D51,DU1,DU2,DV1,DV2,DW1,DW2 ダイオード、GND 接地端子、L13 インダクタ、N1,N2,N3 ノード、NL 負極線、PL 正極線、R1,R51,R52,R53 レジスタ、T1,T2 接続点。