(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物、及びそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20241224BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241224BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20241224BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08K3/40
C08K7/14
(21)【出願番号】P 2021517736
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033324
(87)【国際公開番号】W WO2021045124
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】P 2019161931
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鮎澤 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】堀口 悟
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0368458(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101787183(CN,A)
【文献】特開2010-024312(JP,A)
【文献】特開2013-001772(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008831(WO,A1)
【文献】特開2013-159732(JP,A)
【文献】特開2007-269890(JP,A)
【文献】特開2006-111693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂20~60質量%、(B)非晶性樹脂
10~20質量%、(C)無機強化材30~60質量%、(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体0.5~10質量%、及び(E)エステル交換防止剤0.05~2質量%を含み、
前記(C)無機強化材がガラス繊維、及び鱗片状ガラスを含有し、265℃、せん断速度10sec
-1での溶融粘度が0.5kPa・s以上1.5kPa・s以下であることを特徴とする無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、及びポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
該無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の、示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温時結晶化温度が180℃超であることを特徴とする、請求項1または2に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル樹脂とガラス繊維等の無機強化材を含有する無機強化ポリエステル樹脂組成物に関する。詳しくは、薄肉・長尺な成形品においても、高剛性、高強度を保持しながら成形品の無機強化材の浮き等による外観不良が少なく表面光沢が良好で、ソリ変形が少なく、かつバリの極めて少ない成形品を得ることができる無機強化ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、自動車部品、電気・電子部品、家庭雑貨品等に幅広く使用されている。なかでもガラス繊維等の無機強化材で強化されたポリエステル樹脂組成物は、剛性、強度および耐熱性が飛躍的に向上し、特に剛性に関しては無機強化材の添加量に応じて向上することが知られている。
【0003】
しかしながら、ガラス繊維等の無機強化材の添加量が多くなると、ガラス繊維等の無機強化材が成形品の表面に浮き出し、外観、特に表面光沢が著しく低下し、商品価値が損なわれる場合がある。
【0004】
そこで、成形品外観を向上させる方法として、成形時の金型温度を極端に高く、例えば120℃以上に設定して成形することが提案されている。しかし、この方法では金型温度を高くするために特別な装置が必要となり、汎用的にどの成形機でも成形することができないばかりか、金型温度を高温にあげた場合でも金型内でゲートから遠く離れている成形品の末端部分等で、ガラス繊維等の浮きが発生し、良好な成形外観が得られない場合や、成形品のソリが大きくなり、不具合が発生する場合があった。
【0005】
また、近年、種々のガラス繊維等の無機強化材料において高光沢性の成形品が得られるように、金型を改良することが提案されている(特許文献1、2)。この金型改良は金型のキャビティー部分に断熱性の高いセラミックス、例えばジルコニアセラミックス等を入れ子として装入し、溶融樹脂がキャビティーに充填された直後に急冷されるのを制御し、キャビティー内の樹脂を高温で保持して、表面性の優れた成形品を得ることを目的としている。しかしながら、これらの方法は金型製造が高価になるとともに、平板等の単純な成形品形状では有効であるが、複雑な成形品の場合ではセラミックスの加工が困難で、精度の高い金型製造が出来にくいという問題があった。
【0006】
そこで、金型の特別な改良や高温設定等を必要とせず、樹脂組成物の特性を改良することで、ガラス繊維等の無機強化材を配合した樹脂組成であっても成形品の外観やソリ変形を抑制させることができるポリエステル樹脂組成物が提案されている(特許文献3~6)。
【0007】
上記文献の組成物によれば、各種非晶性樹脂や共重合ポリエステル等を配合し樹脂組成物の結晶化挙動をコントロールすることによって、金型温度が100℃以下であっても、ガラス繊維等を添加した樹脂組成物において、良好な表面外観が得られ、かつソリ変形も抑制させることが可能である。
【0008】
一方、上記外観やソリ変形のほか、特にポリエステル樹脂等の結晶性樹脂を成形する場合、成形品のバリが問題となる場合がある。バリが発生すると、バリ除去工程等が必要となるため、時間、コストがかかってしまう。特に近年、軽量化等の目的のため、成形品の肉厚が薄く、成形品の大きさが小さくなる傾向にあるため、バリの問題が比較的多くなる。バリ発生は金型老朽化に伴い隙間ができることによる金型要因もあるが、一般的には樹脂要因の影響が大きい。非晶性樹脂を用いる場合は、その粘度特性によりバリは少なくなる傾向にあることは知られているが、結晶性樹脂では、非晶性樹脂と類似の挙動を示すオレフィン系樹脂以外では、バリに関する検討例はあまりない。もちろん、これまで説明してきた先行文献等には、バリに関する記載はなく、またポリエステル樹脂において、組成面でバリを抑制させようとする試みは、あまり実施されていないのが現状である。一般的に、流動性が良すぎる場合にバリが発生しやすい傾向にあるため、樹脂の粘度を高くする方法が容易に想像できる。しかし、単に粘度を高くすると成形品全体に樹脂を充填させるために非常に高圧が必要となるため、圧力に耐え切れず金型が開いてしまってバリとなることがある。この傾向は製品の肉厚が薄いときにより顕著となる。この課題を解決するポリエステル樹脂組成物は、既に提案されている(特許文献7)。
【0009】
近年では、成形品の長尺化もますます進んでおり、さらなる高剛性化(曲げ弾性率が17GPaを超える)が求められている。そのため、樹脂の充填圧力はさらに高くなる傾向にあり、バリが発生しやすい成形品形状となることが多い。薄肉・長尺な成形品においても、高剛性・高強度を達成しながら、良外観を有し、かつバリの発生を抑制した材料が求められており、これらの品質バランスを達成することが非常に重要な課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許3421188号公報
【文献】特許3549341号公報
【文献】特開2008-214558号公報
【文献】特許3390539号公報
【文献】特開2008-120925号公報
【文献】特許4696476号公報
【文献】特開2013-159732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリエステル樹脂としての特性を失うことなく、またガラス繊維等の無機強化材を配合した組成において高強度、高剛性(曲げ弾性率が17GPaを超える)でありながら良好な表面外観を維持し、かつソリ変形が少なく、薄肉・長尺の成形品であってもバリ発生の極めて少ないポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らのこれまでの検討によれば、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物において、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂以外の少なくとも一種のポリエステル樹脂、その他成分の配合比率の調整により、特にハイサイクル性を要求される成形の場合でも、良好な成形性とバリの抑制効果を両立できることを見出した。しかし、材料に求められる剛性要求が高くなり(曲げ弾性率が17GPaを超える)、かつ成形品がより薄肉・長尺形状になると、先の発明における材料では、バリの抑制効果を維持することが困難であった。ゆえに材料の剛性、成形品の形状を鑑み、新たに組成を設計することが必須であった。
鋭意検討を重ねた結果、該無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物において、非晶性樹脂を含み、かつ各成分の配合比を再調整することで、特に高剛性が求められる薄肉・長尺な成形品でも、バリを効果的に抑制することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂20~60質量%、(B)非晶性樹脂5~20質量%、(C)無機強化材30~60質量%、(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体0.5~10質量%、及び(E)エステル交換防止剤0.05~2質量%を含み、265℃、せん断速度10sec-1での溶融粘度が0.5kPa・s以上1.5kPa・s以下であることを特徴とする無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[2] 前記(B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、及びポリアリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[3] 該無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の、示差走査型熱量計(DSC)で求められる降温時結晶化温度が180℃超であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記(C)無機強化材がガラス繊維、及び鱗片状ガラスを含有する[1]~[3]のいずれかに記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無機強化材が多量に配合された樹脂組成物においても、各成分の配合比の調整により、成形品表面の無機強化材の浮き出しを抑制できるため、成形品の外観は大きく改善させることができ、高強度・高剛性でありながら良好な外観かつ低ソリの成形品を得ることができる。さらに、特に薄肉・長尺の成形品等においても、成形時の圧力に対してバリの発生を大きく抑制させることができるため、成形後のバリ取り工程等を削除することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ソリ変形を評価するために成形した成形品の例を模式的に示す(a)概略上面図及び(b)概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。以下に説明する各成分の配合量は、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を100質量%とした時の量(質量%)を表す。各成分は配合された量が、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中の含有量となるので、配合量と含有量は一致する。
【0017】
本発明における(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物中の全樹脂中で最も含有量の多い主要成分の樹脂である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂としては特に制限されないが、主としてテレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなる単独重合体が用いられる。また、成形性、結晶性、表面光沢等を損なわない範囲内において、他の成分を5モル%程度まで共重合することができる。共重合量は、酸成分を100モル%、グリコール成分を100モル%とした時の量である。他の成分としては、下記で説明する成分を上げることができる。
【0018】
共重合される成分としては、テレフタル酸以外の酸成分としてイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸等の芳香族もしくは脂肪族多塩基酸またはそれらのエステル等が挙げられ、1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分としては、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0019】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量の尺度としては、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定;dl/g)が、0.4~1.2dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.5~0.8dl/gの範囲である。還元粘度が0.4dl/g未満の場合は樹脂のタフネス性の低下、および流動性が高すぎることによるバリが発生しやすくなり、1.2dl/gを超えると流動性が大きく低下する影響で、こちらもバリが発生しやすくなる傾向がある。
【0020】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量は、20~60質量%であり、好ましくは22~50質量%であり、より好ましくは24~40質量%であり、さらに好ましくは24~35質量%である。この範囲内にポリブチレンテレフタレート樹脂を配合することにより、各種特性を満足させることが可能となる。
【0021】
本発明における(B)非晶性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルニトリル-スチレン共重合体等、公知のものを用いることができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性、バリ抑制効果を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。
【0022】
(B)非晶性樹脂の配合量は、5~20質量%であり、好ましくは6~20質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。5質量%未満であると、バリの抑制効果が少なく、20質量%を超えると結晶性の低下による成形サイクルの悪化や、流動性の低下による外観不良等が発生しやすくなるため、好ましくない。
【0023】
ポリカーボネート樹脂は、溶剤法、すなわち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応、または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、好ましく用いられる二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、つまりビスフェノールAがある。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の二価フェノールで置換したものであっても良い。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンのような化合物やビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類をあげることができる。ポリカーボネートは、二価フェノールを1種用いたホモポリマーまたは2種以上用いたコポリマーであっても良く、本発明の効果を損なわない範囲(20質量%以下)でポリカーボネート以外の成分(例えばポリエステル成分)を共重合した樹脂であっても良い。
【0024】
ポリカーボネート樹脂は、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームレート(単位:cm3/10min)が1~100のものが好ましく用いられ、メルトボリュームレートは、より好ましくは2~80、さらに好ましくは3~40である。この範囲のものを用いることで、成形性を損なわず、バリを効果的に抑制できる。メルトボリュームレートが1未満のものを用いると流動性の大幅な低下を招き、成形性が悪化したりする場合がある。メルトボリュームレートが100超では、分子量が低すぎることにより物性低下を招いたり、分解によるガス発生等の問題が起こりやすくなる。
【0025】
ポリアリレート樹脂は、公知の方法で製造されたものを用いることができる。ポリアリレート樹脂は、360℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームレート(単位:cm3/10min)が1~100のものが好ましく用いられ、メルトボリュームレートは、より好ましくは2~80、さらに好ましくは3~40である。この範囲のものを用いることで、成形性を損なわず、バリを効果的に抑制できる。メルトボリュームレートが1未満のものを用いると流動性の大幅な低下を招き、成形性が悪化したりする場合がある。メルトボリュームレートが100超では、分子量が低すぎることにより物性低下を招いたり、分解によるガス発生等の問題が起こりやすくなる。
【0026】
本発明における(C)無機強化材とは、板状晶のタルク、マイカ、未焼成クレー類、不特定あるいは球状を有する炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、ガラスビーズ、一般的に使用されているワラストナイトおよび針状ワラストナイト、ガラス繊維、鱗片状ガラス、炭素繊維、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等のウィスカー類、平均粒径4~20μm程度でカット長は35~150μm程度のガラス短繊維であるミルドファイバー、等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。成形品外観の面ではタルクやワラストナイト、強度・剛性の面ではガラス繊維が最も優れている。これらの無機強化材は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良いが、主として剛性等の面よりガラス繊維を用いることが好ましい。
【0027】
(C)無機強化材の中でガラス繊維としては、繊維長1~20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。円形断面形状のガラス繊維としては、平均繊維径が4~20μm程度、カット長が3~6mm程度であり、ごく一般的なものを使用することができる。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円系、略長円系、略繭形系であるものをも含み、偏平度が1.5~8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1~20μm、長径が2~100μm程度のものを使用できる。
【0028】
これらのガラス繊維は、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ系化合物等の、従来公知のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく使用することが出来る。
【0029】
本発明における(C)無機強化材の配合量は30~60質量%であり、好ましくは35~60質量%であり、より好ましくは35~57質量%である。この範囲内に無機強化材を配合することにより、各種特性を満足させることが可能となる。
【0030】
(C)無機強化材としてタルクを用いる場合、その配合量は、(C)成分として併用する場合でも、樹脂組成物中、1質量%以下の範囲で用いることが重要である。タルクは結晶核剤として作用するため、この配合量を超えて用いると、結晶化速度が速くなり、ガラス浮き等の外観不良が生じやすくなるため、好ましくない。
【0031】
本発明における(C)無機強化材として2種類以上を併用する場合、流動特性と低ソリ性の点からガラス繊維と鱗片状ガラスの併用を好適に選択することができる。鱗片状ガラスを併用することで、反りの抑制のみならず流動性も向上させることができる。
【0032】
(C)無機強化材としてガラス繊維と鱗片状ガラスを併用する場合、ガラス繊維と鱗片状ガラスの質量比は40:60~90:10であることが好ましく、45:55~80:20であることがより好ましい。
【0033】
本発明の無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物は、(C)無機強化材を50~60質量%含有するとき、無機強化熱可塑性ポリステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形品の曲げ弾性率が17GPaを超えることが可能である。
【0034】
本発明で用いられる(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体は、エチレン、グリシジル(メタ)アクリレートの他、さらに酢酸ビニルやアクリル酸エステル等が共重合された三元共重合体、および四元以上の共重合体も使用することができる。グリシジル(メタ)アクリレートとは、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタアクリレートのいずれかを指す。また、直鎖状共重合体(ランダム共重合体またはブロック共重合体)、グラフト共重合体、コアシェル型ポリマー等も使用することができる。(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体は、グラフト化する際、グリシジル(メタ)アクリレート中のエポキシ基が反応してエポキシ基残存グリシジル(メタ)クリレート成分が0質量%となっているものも使用可能である。
【0035】
(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体に使用できるアクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の炭素数が1~22のアルキル基(アルキル基は直鎖、分岐鎖でもよい)を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミドも使用可能である。これらは、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0036】
(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体の配合量は、0.5~10質量%である。バリに対しては、(D)成分を多く添加する方が樹脂組成物全体の粘度が向上し、保圧工程でのバリ発生を抑制できるが、逆に薄肉の成形品等ではかなりの圧力がかかることとなるため、金型が開いてバリになりやすく、また流動性が著しく低下するため成形品外観が悪化する可能性が高くなる。配合量は、0.7~8質量%が好ましく、0.8~5質量%がより好ましい。
【0037】
さらに(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体は、エポキシ基の残存するグリシジル(メタ)アクリレート成分が、共重合体全体の3~12質量%を有する共重合体を好適に使用できる。さらに好ましくは、3~6質量%を有する共重合体である。上記範囲にすることで、バリ抑制効果を向上させるとともに、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の靭性も高めることができる。
【0038】
本発明で用いられる(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体の例として、ボンドファースト(住友化学社製)、ロタダー(アルケマ社製)、エルバロイ(三井デュポンポリケミカル社製)、メタブレン(三菱ケミカル社製)、モディパー(日本油脂社製)などが市販品として挙げられる。
【0039】
本発明で用いられる(E)エステル交換防止剤とは、ポリエステル樹脂等のエステル交換反応を防止する安定剤である。ポリエステル系樹脂同士のアロイ等では、製造時の条件をどれほど適正化しようとしても、熱履歴が加わることによりエステル交換反応は少なからず発生する。その反応の程度が非常に大きくなると、アロイにより期待する特性が得られなくなってくる。特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリカーボネート樹脂のエステル交換反応はよく起こるため、これらを単純にアロイするとポリブチレンテレフタレートの結晶性が大きく低下してしまうので好ましくない。本発明では、(E)成分を添加することにより、特に(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)非晶性樹脂(ポリカーボネート樹脂やポリアリレート樹脂等)とのエステル交換反応が防止され、これにより適切な結晶性を保持することができる。
【0040】
(E)エステル交換防止剤としては、ポリエステル系樹脂の触媒失活効果を有するリン系化合物を好ましく用いることができ、例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブAX-71」が使用可能である。
【0041】
(E)エステル交換防止剤の配合量は、0.05~2質量%であり、0.1~1質量%がより好ましい。0.05質量%未満の場合は求めるエステル交換反応防止性能が発揮されない場合が多く、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の結晶性の低下により、機械特性の低下や射出成形時の離型不良等を生じる場合がある。逆に2質量%を超えて添加してもその効果の向上はあまり認められないばかりか、逆にガス等を増やす要因となる場合がある。
【0042】
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、シリンダー温度275℃、金型温度110℃にて、150mm×20mm×3mmt(厚み)の長尺の成形品の成形において、充填0.5秒かつ75MPaの保圧をかけた際の流動末端部のバリ発生量の最大値を、0.20mm未満とすることが可能である。バリに関しては通常、保圧工程において圧力に対し樹脂が金型からはみ出て発生することがもっとも多い。保圧力を調整することで改善可能であるが、その場合他の不良(例えばヒケ、外観不良)等につながる可能性がある。樹脂面においては、保圧時の圧力がかかっても耐えうる樹脂粘度を有するように調整することで改善が可能である。しかしながら、樹脂全体の粘度をあげる方法は保圧工程でのバリには有効であっても、今度は樹脂を充填する際に多大な圧力が必要となるため、射出時に金型が開いてバリとなってしまう。この傾向は、特に薄肉成形品において顕著に現れる。
【0043】
したがって、薄肉成形品においてバリの発生のない良好な成形品を得るためには、射出時(高せん断時)は良好な流動性を有し、保圧工程(低せん断時)においては樹脂の粘度があがってくるような溶融粘度挙動を有する樹脂が理想である。このような挙動を示す樹脂としては、ポリエチレンのようなオレフィン樹脂、もしくはアクリル系樹脂のような非晶性樹脂が挙げられる。そのため、これらの樹脂をポリエステル樹脂に添加することが容易に想像できる。
【0044】
しかし、単にオレフィン樹脂やアクリル系樹脂を添加する場合、理想の挙動を示すためには比較的多量の添加を必要とするため、樹脂組成物としての特性が変化したり、前述のように系全体の粘度が上昇してしまう。しかしながら、上記のように各成分を配合することにより、樹脂組成物としての特性を低下させることなく理想とする溶融粘度挙動を発現できることを発見し、バリ発生を抑制できることを見出した点が本発明のポイントである。
【0045】
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、示差走査熱量計(DSC)で求められる降温時結晶化温度が180℃超であることが好ましい。なお、降温時結晶化温度とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素気流下で20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、その温度で5分間保持したあと、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度である。降温時結晶化温度が180℃以下になると、結晶化速度が遅いために、金型への張り付き等による離型不良が発生したり、突き出し時に変形が起こったりすることがある。降温時結晶化温度は、195℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましい。
【0046】
特に無機強化材を多く含む組成において、降温時結晶化温度が180℃超の場合、一般的にはガラス繊維等の無機強化材が成形品表面で目立つ、いわゆるガラス浮き等が発生しやすい。これは、ポリエステル樹脂組成物の結晶化速度が速くなるために、射出圧力の伝播速度が低下する傾向になり、ガラス繊維等の無機強化材の一部が成形品表面に露出することが原因である。しかし、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、180℃超でも良好な外観を得られるように、各成分の配合量を調整しており、良成形性・良外観の両立が可能である。
【0047】
その他、本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料等の着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料等が挙げられる。これら各種添加剤は、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を100質量%とした時、合計で5質量%まで含有させることができる。つまり、無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物100質量%中、前記(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計は95~100質量%であることが好ましい。
【0048】
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
【0049】
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の265℃、せん断速度10sec-1での溶融粘度は0.5kPa・s以上1.5kPa・s以下であり、好ましくは0.6kPa・s以上1.4kPa・s以下、より好ましくは0.7kPa・s以上1.3kPa・s以下である。0.5kPa・s未満であると射出成形が困難になる。一方、1.5kPa・sよりも大きいと成形品にバリが発生しやすくなる。
【0050】
本発明の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を製造する方法としては、上述した各成分および必要に応じて各種安定剤や顔料等を混合し、溶融混練することによって製造できる。溶融混練方法は当業者に公知のいずれの方法を用いることが可能であり、単軸押し出し機、二軸押出し機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等を使用することができる。なかでも二軸押出し機を使用することが好ましい。一般的な溶融混練条件としては、二軸押出し機ではシリンダー温度は230~300℃、混練時間は2~15分である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
【0052】
(1)ポリブチレンテレフタレート樹脂の還元粘度
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
【0053】
(2)バリ発生量
バリ発生量は、シリンダー温度275℃、金型温度110℃にて、150mm×20mm×3mmt(厚み)の長尺の成形品を射出成形により成形する際、充填時間0.5秒となる射出速度で、かつ保圧を75MPaかけた際の成形品に発生する流動末端部のバリの最大値を顕微鏡を用いて測定した。
【0054】
(3)成形品外観(ガラス繊維等の浮き)
上記(2)の条件で成形した成形品の外観を、目視により観察した。
○:表面にガラス繊維等の浮きによる外観不良がなく、良好
△:特に成形品の末端部分等に、若干の外観不良が発生している
×:成形品全体に外観不良が発生している
【0055】
(4)成形品外観(シボムラ)
上記(2)の条件で成形した成形品の外観を、目視により観察した。シボは深さ15μmのナシ地状にシボ仕上げされた金型を用いた。「○」、「△」であれば、特に問題の無いレベルである。
○:表面にシボのずれによる外観不良が全くなく、良好
△:成形品のごく一部にシボのずれによる外観不良が発生しており、角度を変えて観察すると白く見えたりする部分が存在する
×:成形品に全体的にシボのずれによる外観不良が発生しており、角度を変えて観察すると白く見えたりする
【0056】
(5)成形性
上記(2)の条件で成形を実施する際、射出工程終了後の冷却時間を12秒に設定したときの離型性で判定を実施した。
◎:スプルー取られ等はなく、連続成形が容易に可能で、押出しピン痕も残らない
○:スプルー取られ等はなく、連続成形が容易に可能だが、押出しピン痕は残る
×:毎ショットもしくは数ショットに一回離型不良が発生し、スプルー取られ等により連続成形が不可能
【0057】
(6)溶融粘度
ペレット状の樹脂組成物について、東洋精機製作所社製キャピログラフ1Bを用いて、ISO11443に準拠して、炉体温度265℃、キャピラリー[1mm(内径φ)×30mm(長さL)]を用い、剪断速度10sec-1にて溶融粘度を測定した。
【0058】
(7)反り
片側リブ付きの100mm×100mm×2mmt(厚み)のフィルムゲートの金型を用い、射出成形機で樹脂温度265~270℃、金型温度80℃、100℃および120℃で、樹脂の流れ方向に対して垂直方向に長さ100mm、高さ1mmで厚み1mmのリブを5本有する成形品を成形し、そのソリ変形量を測定した(
図1でAの値、3枚の成形品の平均値)。下記の基準で評価した。
× : ソリ変形量>3mm
△ : 3mm≧ソリ変形量≧2mm
○ : 1.5mm≦ソリ変形量<2mm
◎ : ソリ変形量<1.5mm
【0059】
(8)降温時結晶化温度
示差走査型熱量計(DSC)を用い、各サンプルは水分率0.03質量%以下の乾燥状態でDSC装置に封入し、水分による変動を防止して測定した。すなわち、窒素気流下で20℃/分の昇温速度にて300℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の速度で100℃まで降温させることにより得られるサーモグラムの結晶化ピークのトップ温度を求めた。
【0060】
実施例、比較例において使用した原料は以下のようになる。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
(A)ポリブチレンテレフタレート:東洋紡社製 還元粘度0.65dl/g
(B)非晶性樹脂
(B-1)ポリカーボネート樹脂:住化スタイロンポリカーボネート社製、「カリバー301-6」、メルトボリュームレート(300℃、荷重1.2kg)6cm3/10min
(B-2)ポリカーボネート樹脂:住化スタイロンポリカーボネート社製、「カリバー200-80」、メルトボリュームレート(300℃、荷重1.2kg)80cm3/10min
(B-3)ポリアリレート樹脂:ユニチカ社製、「Uポリマー」、メルトボリュームレート(360℃、荷重2.16kg)4.0cm3/10min
(C)無機強化材
(C-1)ガラス繊維:日本電気硝子社製、「T-120H」
(C-2)鱗片状ガラス:日本板硝子社製、「REFG-101」
(D)エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体
(D-1):エチレン-グリシジルメタクリレート-メチルアクリレート三元共重合体(エポキシ基残存グリシジルメタクリレート成分:6質量%)、住友化学株式会社製、「ボンドファースト7M」
(D-2):エチレン-エチルアクリレート共重合体(主鎖)とメチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体(側鎖)のグラフト共重合体(主鎖のエポキシ基残存グリシジルメタクリレート成分:0質量%)、日本油脂社製、「モディパーA5300」
(E)エステル交換防止剤
(E):ADEKA社製、「アデカスタブAX-71」
【0061】
実施例、比較例の無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は、上記原料を表1に示した配合比率(質量%)に従い計量して、35φの二軸押出し機(東芝機械株式会社製)でシリンダー温度270℃、スクリュー回転数100rpmにて溶融混練した。(C)成分以外の原料はホッパーから二軸押出機へ投入し、(C)成分はベント口からサイドフィードで投入した。得られた無機強化熱可塑性ポリエステル樹脂組成物のペレットは、乾燥後、射出成形機にて各種評価用サンプルを成形した。成形条件は、シリンダー温度275℃、金型温度110℃で実施した。評価結果は表1に示した。
【0062】
【0063】
表1から明らかなように、実施例1~6では、本発明で規定する範囲を満たすことにより、成形品外観、および成形性を維持したまま、バリの発生量を大幅に抑制できていることがわかる。さらに、ガラス繊維と鱗片状ガラスを併用した実施例4、5では反りの抑制効果が大きくなった。一方、比較例2、3では、(D)成分を含んでいないもしくは所定範囲未満のため、バリの抑制効果が小さい。比較例1では、(B)成分を含んでいないため、外観、反り、成形性すべてに劣り、比較例4では、(B)成分が所定範囲を超えるため、成形性(離型性)が悪化した。また、比較例5では、(E)成分を含まないため、エステル交換反応が著しく進行し、結晶性が低下したため、成形性(離型性)が悪化した。さらに比較例6では、溶融粘度が所定範囲を超えて高いため、流動性が不足し、無機強化材の浮き、シボムラによる外観不良が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、無機強化材が多量に配合された樹脂組成物においても、各成分の配合比の調整により、成形品表面の無機強化材の浮き出しを抑制できるため、成形品の外観は大きく改善させることができ、高強度・高剛性でありながら良好な外観かつ低ソリの成形品を得ることができる。さらに、特に薄肉・長尺の成形品等においても、成形時の圧力に対してバリの発生を大きく抑制させることができるため、成形後のバリ取り工程等を削除することが可能である。したがって、産業界に寄与すること大である。
【符号の説明】
【0065】
L:樹脂組成物の流れ方向
W:樹脂組成物の流れの直角方向
1:成形品
2:フィルムゲート
3:リブ
A:ソリ変形量