(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】石英ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20241224BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241224BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
C03C15/00 B
H01L21/205
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2021562679
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044809
(87)【国際公開番号】W WO2021112113
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019219798
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大輝
(72)【発明者】
【氏名】丸子 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】會田 務
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 徹
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-001923(JP,A)
【文献】特開2017-154906(JP,A)
【文献】特開2001-210615(JP,A)
【文献】特開2005-191163(JP,A)
【文献】特開2016-145927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00
C23C 16/44
H01L 21/205
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理液を用いて石英ガラスの表面処理を行い、ガラス表面に凹凸を有する石英ガラスの製造方法において、上記表面処理液による表面処理に関与しない溶媒成分を、予め石英ガラスの表面に接触させておき、次いで、上記溶媒成分が乾燥しないうちに、
その直後に上記表面処理液による表面処理を行うことにより、ガラス表面に表面粗さ(Ra)が1.5~3.5μmである凹凸を形成することを特徴とする石英ガラスの製造方法。
【請求項2】
上記表面処理に関与しない溶媒成分が、水又は純水である請求項1記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項3】
上記表面処理に関与しない溶媒成分を石英ガラスの表面に接触させる方法が、溶媒成分を石英ガラス表面にかけ流す方法、霧吹きで溶媒成分を吹き付ける方法、または溶媒成分のミストを発生させて若しくは溶媒成分による湿度が70%以上の状態で石英ガラスの表面に接触させる方法である請求項1又は2記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項4】
石英ガラスの表面処理液の成分が、HF、NH4F、酢酸を含む混酸である請求項1~3のいずれか1項記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項5】
上記製造方法により製造される石英ガラスが、半導体製造における成膜プロセスで使用される石英ガラス治具である請求項1~4のいずれか1項記載の石英ガラスの製造方法。
【請求項6】
上記石英ガラス治具が、内径4.0~100.0mm及び外径8.0~106.0mmの石英細管である請求項5記載の石英ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石英ガラスの表面に所望の表面粗さ(Ra)を有する凹凸を形成した石英ガラスの製造方法に関するものであり、特に、半導体素子製造におけるCVD工程等の成膜プロセスで使用される石英細管等の石英ガラス治具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスは、高純度で、耐化学薬品性に優れているところから、従来から、半導体処理用、光学用、理化学機器用、装飾用等の材料として使用されている。これらの石英ガラス加工品は使用目的によりその表面に各種の凹凸加工が施されることがある。特に、半導体プロセスで使用する炉芯管の内面に凹凸を設けることにより、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)処理におけるポリシリコン膜等の剥離を防止し、ウェーハの熱処理時に発生するパーティクルを防止することである。
【0003】
上記の石英ガラス表面に凹凸加工を施す方法としては、サンドブラスト処理やHF/CH3COOH/NH4Fの混合液(表面処理液)による表面処理が知られている。上記のサンドブラスト処理は、表面に機械的破壊を伴う加工方法であり、このため石英ガラス表面にはマイクロクラックが存在し、そのマイクロクラックの存在がパーティクルなどの発生の要因となることもあり、必ずしも有効とはいえなかった。また、表面処理液による表面処理による表面凹凸加工では、上記のようなマイクロクラックは存在しないので半導体プロセスでの使用に適しているということで長く採用されてきた。また、半導体プロセスにおいて、石英ガラス表面からポリシリコン膜の剥離を防止(以下、「膜剥がれ防止」ともいう。)するためには、表面粗さの粗い方が、膜剥がれが起きに難いことが一般的に知られている。
【0004】
しかしながら、石英ガラスの表面処理液による表面処理方法では、サンドブラスト処理といった機械的破壊を伴う加工方法に比べて表面粗さのバラツキやコントロールが難しいといった問題がある。特に、半導体製造における成膜プロセスで使用する石英細管を表面処理液により表面処理を行う場合、その表面の凹凸表面粗さはRaが1μm前後という値である。また、半導体素子製造におけるCVD工程で使用する石英細管のように曲率の大きな表面の場合、凹凸形成の核となる微結晶が多く発生し、或いは微結晶同士の隙間が小さくなる傾向があると考えられる。このため半導体プロセスにおける膜剥がれ防止としての凹凸という観点からは表面粗さ(Ra)が1μm以内では膜の厚みに比べて凹凸が十分な機能とは言えず効果としては不十分である。従って、膜剥がれ防止のための凹凸の数値設定としては表面粗さ(Ra)が1.5~3.5μm程度であることが望ましい。
【0005】
また、特許文献1(特許第4455018号公報)に提案されているように、表面処理液の濃度を変化させることにより、石英ガラスの表面における表面粗さ(Ra)のコントロールを行うことは可能ではある。しかしながら、この方法では、その都度、表面処理液の濃度を変化させる必要があり、ランニングコストが増加し、リードタイムも長くなるといった問題があった。即ち、表面処理液による表面処理のたびに濃度変更のため表面処理液を交換しなければならず煩雑かつコスト高となってしまう。
【0006】
そのほか、石英ガラスの表面における表面粗さ(Ra)に関する技術については、下記の特許文献2~3などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4455018号公報
【文献】特許第4437365号公報
【文献】特開平10-36140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、石英ガラスを表面処理する表面処理液を用いて石英ガラス表面に凹凸を形成するに際して、比較的簡易な方法で上記ガラス表面の凹凸の表面粗さ(Ra)をコントロールすることができる石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、マイクロクラックの存在しない表面処理液による表面処理による凹凸形成において、特に半導体プロセスに使用する石英細管の表面凹凸の表面粗さ(Ra)を1.5~3.5μmの範囲に実現するための処理手段として、石英ガラスを表面処理液により表面処理する前に純水等の液処理に関与しない溶媒成分を上記石英ガラス表面に接触させておき、その溶媒が乾燥しないうちに、上記表面処理液による表面処理を行うことにより、表面粗さの比較的粗い凹凸を石英ガラス表面に形成することができることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
本発明の製造方法は、石英ガラスを表面処理液により表面処理する前に純水等の液処理に関与しない溶媒成分を上記石英ガラス表面に接触させるものであり、その後、表面処理液により表面処理が行われる。その際の石英ガラスの表面における作用或いはメカニズムについては定かではないが、概ね以下のことが推察される。
【0011】
例えば、表面処理液として、HFとNH4Fを含む混合液を用いた場合、通常、石英ガラスをエッチングすると石英ガラスと混合液との反応により珪フッ化アンモニウム(NH4)2SiF6(微結晶)が生成する。この珪フッ化アンモニウムが、石英ガラスの表面に微結晶が析出し成長すると言われている。石英ガラスの表面の微結晶が析出した部位は、フッ酸によるエッチングが妨害されるため、石英ガラスの表面の一部が、エッチングの進行が遅れることになり、不均一にエッチングが進むことで、石英ガラスの表面に凹凸が生じるものと推察される。また、一度、微結晶が析出すると、その後は新たに析出する微結晶もあるが、既に析出している微結晶が成長していくものと推察される。この微結晶が結晶に成長してガラス表面を覆うと、該ガラス表面全体が同じようにエッチングが妨害されるため、これ以降は、エッチングの差が生じない。これに対して、本発明の製造方法では、石英ガラスの表面の一部に水分(微小な水滴)が存在するものであり、その部位は表面処理液が直接ガラス表面に接触しないこととなり、従って、微結晶もこの段階では析出しないことになる。また、石英ガラスの表面に存在する水分は、表面処理液の量と比べると十分に少量であるため、水分は表面処理液と混合し、水分が存在していたガラス表面も、やがて表面処理液と接触することになる。しかし、水分の無いガラス表面においては、既に微結晶が析出している部位がある。既に微結晶が析出している部位に再結晶が進むので、水分が存在していたガラス表面では新たに微結晶が析出し難いものと推察され、HFによるエッチングだけが進行するようになる。従って、本発明では、水分が表面処理液と混合するまでの時間は、該水分の存在により表面処理液による凹凸形成を阻害すると考えられ、その結果、表面粗さの比較的粗い凹凸を石英ガラス表面に形成することができるものと考えられる。
【0012】
従って、本発明は、下記の石英ガラスの製造方法を提供する。
1.表面処理液を用いて石英ガラスの表面処理を行い、ガラス表面に凹凸を有する石英ガラスの製造方法において、上記表面処理液による表面処理に関与しない溶媒成分を、予め石英ガラスの表面に接触させておき、次いで、上記溶媒成分が乾燥しないうちに、その直後に上記表面処理液による表面処理を行うことにより、ガラス表面に表面粗さ(Ra)が1.5~3.5μmである凹凸を形成することを特徴とする石英ガラスの製造方法。
2.上記表面処理に関与しない溶媒成分が、水又は純水である上記1記載の石英ガラスの製造方法。
3.上記表面処理に関与しない溶媒成分を石英ガラスの表面に接触させる方法が、溶媒成分を石英ガラス表面にかけ流す方法、霧吹きで溶媒成分を吹き付ける方法、または溶媒成分のミストを発生させて若しくは溶媒成分による湿度が70%以上の状態で石英ガラスの表面に接触させる方法である上記1又は2記載の石英ガラスの製造方法。
4.石英ガラスの表面処理液の成分が、HF、NH4F、酢酸を含む混酸である上記1~3のいずれかに記載の石英ガラスの製造方法。
5.上記製造方法により製造される石英ガラスが、半導体製造における成膜プロセスで使用される石英ガラス治具である上記1~4のいずれかに記載の石英ガラスの製造方法。
6.上記石英ガラス治具が、内径4.0~100.0mm及び外径8.0~106.0mmの石英細管である上記5記載の石英ガラスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガラス表面の製造方法によれば、マイクロクラックの存在しない表面処理液による表面処理により凹凸を形成する工程において、表面粗さ(Ra)を1.5~3.5μmの範囲の凹凸を有する石英ガラスを製造することができ、表面処理液の濃度を変化させる必要がなく、比較的簡便で経済的な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1~7及び比較例1~7で表面処理した石英細管において、各例のガラス表面の表面粗さ(平均Ra)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明は、表面に所望の表面粗さ(Ra)の凹凸を有する石英ガラスの製造方法であり、表面処理液を用いて石英ガラスの表面処理を行うものである。
【0016】
表面に凹凸を形成の処理を行わない石英ガラスとしては、天然石英および合成石英が挙げられ、その使用目的等に応じて適宜市販品を用いることができ、特に、半導体製造プロセス用の天然石英ガラスが好適に採用される。例えば、「HERALUX-LA」(商品名、信越石英(株)製)及び「HERALUX-E-LA」(商品名、信越石英(株)製)を採用することができる。
【0017】
本発明では、表面処理液による表面処理に関与しない溶媒成分を、予め石英ガラスの表面に接触させる工程を含む。
【0018】
表面処理液による表面処理に関与しない溶媒成分としては、後述する表面処理液の各成分と化学反応して結晶が生成されない溶媒成分であり、特に制限されるものではなく、例えば、水、純水、エタノールなどが挙げられ、特に、水又は純水を採用することが好ましい。
【0019】
上記の溶媒成分を石英ガラスの表面に接触させる方法については、例えば、溶媒成分を石英ガラス表面にかけ流す方法、溶媒成分を霧吹きで吹き付ける方法、或いは溶媒成分のミストを発生させて若しくは溶媒成分による湿度が70%以上の状態で石英ガラスの表面に接触させる方法などが挙げられる。
【0020】
上記方法により上記の溶媒成分が対象となる石英ガラスの表面に存在すること、または該石英ガラスの表面が溶媒成分で濡れた状態となっていればよい。また、用いる溶媒成分の種類や特性に応じて該溶媒成分が乾燥しないように適宜温度や湿度等の環境条件を選定することもできるが、通常、温度は常温(15~25℃)であり、湿度は特に限定されない。上記溶媒成分を高湿度状態で石英ガラス表面に接触させる方法としては、湿度75%以上、且つ常温(15℃~25℃)の環境下で、30分以上保持させた後に行うことが好ましい。
【0021】
次に、対象となる石英ガラスの表面に対して、溶媒成分が乾燥しないうちに表面処理液による表面処理を行う。
【0022】
上記表面処理液としては、従来から使用されているものと用いることができ、具体的には、フッ化水素(HF)とフッ化アンモニウム(NH4F)を含む表面処理液(薬液)を好適に使用できる。特に、フッ化水素10~50質量%、フッ化アンモニウム6~30質量%及び有機酸30~60質量%を含有する水溶液が好適に用いられる。有機酸としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸等が好ましい。また、上記表面処理液を使用する際の液温は15~25℃であることが好適である。
【0023】
なお、上記表面処理液による手段は、フロスト法とよばれる化学的処理方法により、石英ガラスの表面を微細かつ滑らかな凹凸を有する面、即ち、マイクロクラックを伴わない微細な凹凸が形成された面に加工することで、従来から知られているものである。
【0024】
本発明では、上述した一連の工程を有することにより、ガラス表面に表面粗さ(Ra)が1.5~3.5μmである凹凸を形成した石英ガラスを得ることができる。ガラス表面の表面粗さ(Ra)の好ましい値は、使用目的に応じて適宜選定されるものであり、例えば、半導体製造において成膜プロセスで使用される石英細管では、ガラス表面粗さ(Ra)1.5~3.0μmが好適である。なお、上記の表面粗さ(Ra)は、JIS B0601(2001年)で定義する算術平均高さ(Ra)であり、表面粗さ測定機等の市販品の測定機器により測定することができる。
【0025】
上記製造方法により得られた特定の表面粗さ(Ra)を有する凹凸が形成された石英ガラスについては、例えば、半導体製造において成膜プロセスで使用される石英ガラス治具(チューブ、炉心管、ボート等)、特に、内径4.0~100.0mm及び外径8.0~106.0mmの石英細管に有用である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
〔実施例1〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径8mm,内径4mmの石英細管(市販品名「石英製ガス供給管」)(以下、同じ)を、純水にて内面及び外面をリンシングし、表面処理液(薬液)槽に入る直前まで、霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.9wt%、酢酸濃度48.3wt%、液温22.8℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行った。この表面処理された石英細管の表面粗さ(Ra)をミツトヨ社製の小型表面粗さ測定機「サーフテストSJ-310」(以下、同じ)により計測したところ、Ra最大が1.92μm、Ra最小1.56μm、およびRa平均が1.78μmとなり、比較例1の状態よりも、Raの平均値を約3.3倍高くすることが可能となった。
【0028】
〔実施例2〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径12.7mm,内径8.7mmの石英細管を、純水槽に浸漬し、表面処理液槽に入る直前まで霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度49.1wt%、液温24.4℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が2.13μm、Ra最小1.69μm、およびRa平均が2.01μmとなり、比較例2の状態よりも、Raの平均値を3.2倍高くすることが可能となった。
【0029】
〔実施例3〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径24.0mm,内径20.0mmの石英細管を、純水を貯めた超音波洗浄機に浸漬させ、表面処理液槽に入る直前まで霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度48.4wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が2.29μm、Ra最小1.62μm、およびRa平均が1.94μmとなり、比較例3の状態よりも、Raの平均値を約3.5倍高くすることが可能となった。
【0030】
〔実施例4〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径106.0mm,内径100.0mmの石英細管を、純水を貯めた純水槽に浸漬させ、表面処理液槽に入る直前まで、霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.9wt%、酢酸濃度48.3wt%、液温23.8℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が1.94μm、Ra最小1.50μmおよびRa平均が1.73μmとなり、比較例4の状態よりも、Raの平均値を約3.2倍高くすることが可能となった。
【0031】
〔実施例5〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径282.0mm,内径275.0mmの石英管を、純水にて、内面及び外面をリンシングし、表面処理液槽に入る直前まで、霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度48.4wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が2.86μm、Ra最小1.46μmおよびRa平均が2.12μmとなり、比較例5の状態よりも、Raの平均値を約1.6倍高くすることが可能となった。
【0032】
〔実施例6〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径434.0mm,内径422.0mmの石英管を、純水にて、内面及び外面をリンシングし、表面処理液槽に入る直前まで、霧吹きにて純水を吹きかけ、その直後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度48.4wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が3.54μm、Ra最小1.97μmおよびRa平均が2.47μmとなり、比較例6の状態よりも、Raの平均値を約1.5倍高くすることが可能となった。
【0033】
〔実施例7〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径12.7mm,内径8.7mmの石英細管を、加湿器を用いて純水で加湿した容器内に保管し、容器内の温度22.5℃、湿度70~75%(高湿度)の状態で30分保持した。高湿度容器から取り出し、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.5wt%、酢酸濃度48.8wt%、液温20.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が2.34μm、Ra最小2.01μmおよびRa平均が2.17μmとなり、比較例7の状態よりも、Raの平均値を約3.4倍高くすることが可能となった。
【0034】
〔比較例1〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径8mm,内径4mmの石英細管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.7wt%、酢酸濃度48.5wt%、液温22.0℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が0.69μm、Ra最小0.34μmおよびRa平均が0.54μmとなった。
【0035】
〔比較例2〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径12.7mm,内径8.7mmの石英細管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度48.3wt%、液温23.2℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が1.27μm、Ra最小0.38μmおよびRa平均が0.65μmとなった。
【0036】
〔比較例3〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径24.0mm,内径20.0mmの石英細管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.9wt%、酢酸濃度48.5wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が1.03μm、Ra最小0.38μmおよびRa平均が0.56μmとなった。
【0037】
〔比較例4〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径106.0mm,内径100.0mmの石英細管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.8wt%、酢酸濃度48.4wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が0.89μm、Ra最小0.35μmおよびRa平均が0.55μmとなった。
【0038】
〔比較例5〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径282.0mm,内径275.0mmの石英管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.9wt%、酢酸濃度48.5wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が1.96μm、Ra最小0.52μmおよびRa平均が1.30μmとなった。
【0039】
〔比較例6〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径434.0mm,内径422.0mmの石英管を、十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.9wt%、酢酸濃度48.5wt%、液温21.3℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が2.76μm、Ra最小0.50μmおよびRa平均が1.61μmとなった。
【0040】
〔比較例7〕
半導体製造において成膜プロセスで使用される外径12.7mm、内径8.7mmの石英細管を、室温21.3℃、湿度50~60%の環境下で十分に乾燥させた後に、表面処理液による表面処理を行った。この時の、表面処理液の濃度は、HF濃度14.5wt%、酢酸濃度48.7wt%、液温20.5℃である。この条件下で表面処理液による表面処理を行ったところ、Ra最大が1.31μm、Ra最小0.31μmおよびRa平均が0.63μmとなった。
【0041】
実施例1~7及び比較例1~7の各条件値をまとめると下記表1に示すとおりである。また、実施例1~7及び比較例1~7で表面処理した石英細管の表面粗さ(Ra)を示すグラフを
図1に示した。
【0042】