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  • 特許-車両ドアの開閉機構 図1
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  • 特許-車両ドアの開閉機構 図4A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】車両ドアの開閉機構
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/652 20150101AFI20241224BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20241224BHJP
   E05F 15/649 20150101ALI20241224BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
E05F15/652
E05F15/655
E05F15/649
B60J5/04 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022015167
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2023113049
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】川島 睦
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-196084(JP,A)
【文献】特開2017-101537(JP,A)
【文献】特開2015-148075(JP,A)
【文献】特開2011-026856(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0254389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗降口を閉じている閉止位置と、ドアを開く開放位置間を移動可能にガイドされた車両ドアの開閉機構であって、
車両の車体側回転軸に一端が回転支持され、前記ドアのドア側回転軸に他端が回転支持され、前記他端側から駆動アームが延設されているヒンジアームと、
前記ドアの内部に配設され、その一端が前記ドアに固定された支持軸に回転支持されたユニットケースと、前記ユニットケースの他端にケース軸方向に沿って出入すると共に、その先端が前記駆動アームの先端に回動可能に固定されている伸縮可動部と、を有する伸縮駆動ユニットと、
を備え、
前記伸縮駆動ユニットは、
前記ユニットケース内に固定された駆動モータと、この駆動モータの駆動力で前記伸縮可動部を前記ユニットケースから出入駆動するように、前記駆動力に基づく回転方向の動力を、前記ケース軸に沿う方向の動力に変換する動力方向変換機構と、を有する、
車両ドアの開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両乗降口を閉じている閉止位置と、ドアを開く開放位置間を移動可能にガイドされた車両ドアの開閉機構に関し、特に、車両乗降口における乗降性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体に固定されたモータによって歯車装置を介して駆動されるリンク機構を備え、リンク機構の駆動リンクの回転によって車両ドアを開閉させるグライドドア装置(車両ドアの開閉機構)が記載されている。この装置では、モータと歯車装置とを含むモータ歯車装置が、車両乗降口付近に固定されている。モータが回転すると、歯車装置の出力軸に連結されたリンク機構の駆動リンクが、車体に固定の回転軸を中心に回転し、ドアが開閉動作する。車両ドアの開放時には、車両ドアが外側に押し出された後、車両前後方向一方側に平行移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-196084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両ドアを平行移動可能にガイドしながら車両乗降口を開閉させる場合に、特許文献1のような車体に固定されたモータ歯車装置を用いて、車体とドアとに回転支持された駆動リンクを回転させる場合がある。しかしながら、この場合には、ドアが開いた状態でも、ドアの開閉用動力源としての大型のモータ歯車装置が車両乗降口付近に配置される。これにより、モータ歯車装置が、車両に乗降する人の邪魔になる。
【0005】
本発明の目的は、車両乗降口を閉じている閉止位置と、ドアを開く開放位置間を移動可能にガイドされた車両ドアの開閉機構において、車両乗降口における乗降性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両ドアの開閉機構は、車両乗降口を閉じている閉止位置と、ドアを開く開放位置間を移動可能にガイドされた車両ドアの開閉機構であって、車両の車体側回転軸に一端が回転支持され、前記ドアのドア側回転軸に他端が回転支持され、前記他端側から駆動アームが延設されているヒンジアームと、前記ドアの内部に配設され、その一端が前記ドアに固定された支持軸に回転支持されたユニットケースと、前記ユニットケースの他端にケース軸に沿って出入すると共に、その先端が前記駆動アームの先端に回動可能に固定されている伸縮可動部と、を有する伸縮駆動ユニットと、を備え、前記伸縮駆動ユニットは、前記ユニットケース内に固定された駆動モータと、この駆動モータの駆動力で前記伸縮可動部を前記ユニットケースから出入駆動するように、前記駆動力に基づく回転方向の動力を、前記ケース軸に沿う方向の動力に変換する動力方向変換機構と、を有する、車両ドアの開閉機構である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両ドアの開閉機構によれば、ドアを開閉する動力源としての伸縮駆動ユニットがドアに設けられる。これにより、車両乗降口付近には、ドア開閉用の動力源を固定する必要がない。このため、ドアが開いた状態で車両乗降口付近に配置される動力源をなくせるので、車両乗降口における乗降性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態のドア開閉機構が適用される車両の1例を示す図である。
図2】実施形態において、ドア閉止時のドアと車両乗降口との位置関係を車両内側から視た模式図である。
図3】実施形態において、ドア開放時のドアと車両乗降口との位置関係を車両内側から視た模式図である。
図4A】実施形態において、ドア閉止時のドアと車体と、それらの連結部との関係を示す、図2のA-A断面相当図である。
図4B】実施形態において、ドア開放時のドアと車体と、それらの連結部との関係を示す、図3のB-B断面相当図である。
図5】実施形態において、ドア開閉機構を構成する伸縮駆動ユニットの1例を示す断面図である。
図6図5の伸縮駆動ユニットを構成する減速機構の1例を部分的に示す斜視図である。
図7】実施形態において、ドア開閉機構の動作を示す模式図である。
図8】ヒンジアームの別例を用いた実施形態を示す、図4Aに対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態の車両ドアの開閉機構を説明する。この説明において、具体的な形状、個数、配置位置、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、仕様に応じて適宜変更することができる。以下では、車両ドアの開閉機構がバス型の車両に適用される場合を説明するが、移動する車両ドアを取り付け可能な種々の形式の車両に適用可能である。また、各図に示す矢印F、矢印U、矢印Rは、車両の前方向、上方向、右方向をそれぞれ示している。また、各矢印F,矢印U,矢印Rの反対方向は、車両の後方向、下方向、左方向をそれぞれ意味する。
【0010】
図1は、実施形態のドア開閉機構が適用される車両1を示す。図2及び図3は、実施形態において、それぞれドア閉鎖時と、ドア開放時との、車両ドア3と車両乗降口4との位置関係を車両内側から視た模式図である。本実施形態の車両は右側通行車を示すが、左側通行車では左右が逆に成るのみで、基本構成は同じである。
【0011】
乗り合い自動車であるバス型の車両1において、車体2の一方側の側部には、人が乗降可能な車両乗降口4が設けられる。車両乗降口4は、車両ドア3によって開閉される。図2図3に示す車両ドアの開閉機構10は、車両ドア3を平行移動可能にガイドしながら、車両ドア3を開閉動作させる。
【0012】
車両ドア3は、開閉動作時に、開閉機構10により、図2のように車両乗降口4を閉じている閉止位置と、図3のように車両ドア3を開く開放位置間を平行移動可能にガイドされる。開閉機構10は、ヒンジアーム12と、補助リンク90と、伸縮駆動ユニット31とを含んで構成される。ヒンジアーム12は、後述のように、補助リンク90と共に平行リンクを形成する駆動リンクに相当する。伸縮駆動ユニット31は、後述のようにヒンジアーム12を回転させる。
【0013】
図2図3に示すように、ヒンジアーム12の一端は、車体2の下部に位置する車体側回転軸5に回転支持される。ヒンジアーム12の他端は、車両ドア3の下部に位置するドア側回転軸6に回転支持される。車体側回転軸5及びドア側回転軸6のそれぞれは、上下方向に沿っている。
【0014】
補助リンク90の一端は、車体の上部に位置する車体側回転軸7に回転支持される。補助リンク90の他端は、車両ドア3の上部に位置するドア側回転軸8に回転支持される。車体側回転軸7及びドア側回転軸8のそれぞれも、ヒンジアーム12の場合と同様に、上下方向に沿っている。
【0015】
図4A図4Bは、実施形態において、それぞれドア閉止時及びドア開放時の車両ドア3と車体2と、それらの連結部との関係を示す、図2のA-A断面相当図及び図3のB-B断面相当図である。図4A図4Bに示すように、ヒンジアーム12と補助リンク90とにおける、車体側回転軸5,7からドア側回転軸6,8までの直線方向長さL1,L2(図4A)は互いに同じである。これにより、ヒンジアーム12と補助リンク90とは、車両ドア3を平行移動可能にガイドする平行リンクを形成する。
【0016】
なお、図4A図4Bでは、二点鎖線で車両ドア3の上部及び補助リンク90の断面形状を示している。車両ドア3において、ヒンジアーム12を回転支持する高さ位置と補助リンク90を回転支持する高さ位置とは互いに異なると共に、それぞれの高さ位置での車両ドア3の車両幅方向における位置も互いに異なっている。具体的には、車両ドア3は、補助リンク90を支持する上側位置より、ヒンジアーム12を支持する下側位置が、車幅方向外側に張り出している。ヒンジアーム12と補助リンク90との上下配置関係は逆にしてもよい。
【0017】
ヒンジアーム12の他端側(図4Aの左端側、図4Bの上端側)からは駆動アーム13が一体に延設されている。駆動アーム13の先端には、後述の伸縮駆動ユニット31の伸縮可動軸40の先端が回動可能に固定される。これにより、伸縮可動軸40の移動によって、後で詳しく説明するように、ヒンジアーム12が車体側回転軸5を中心として回転する。
【0018】
図5は、伸縮駆動ユニット31を示す断面図である。伸縮駆動ユニット31は、車両ドア3の内部において、車両ドア3の略前後方向に沿って配設され、かつ一端(図5の右端)を中心として若干の回動を可能としたユニットケース32と、ユニットケース32から出入する伸縮可動軸40とを有する。伸縮可動軸40は伸縮駆動部に相当する。車両ドア3における前後方向は、車両ドア3が図4Aのように閉止位置にあるときの車両1の前後方向と一致する。
【0019】
ユニットケース32は、長尺で一端に底部33を有する円筒状であり、ケース軸方向の一端(図5の右端)に設けられた底部33の外端からケース軸方向に延び、先端に回転支持部35を有する一端側延出部34を有する。一端側延出部34の一端は、車両ドア3に固定された支持軸59(図4A図4B)に回転支持される。ユニットケース32のケース軸は、一端の回転支持部35の回転中心と、ユニットケース32内に配置された伸縮可動軸40の他端の後述の回転支持部43の回転中心とを通過する。
【0020】
伸縮可動軸40は、ユニットケース32の内側にケース軸に沿って移動可能に嵌合された、長尺で他端(図5の左端)に底部41aを有する筒部41と、筒部41の一端に固定されたナット部材45とを有する。底部41aの外端には軸方向に延出され、先端である他端に回転支持部43を有する他端側延出部42が形成される。伸縮可動軸40は、ユニットケース32の他端にケース軸に沿って出入すると共に、その他端が、駆動アーム13の先端に、この先端に設けた上下方向のアーム側回転軸60(図4A)を中心として回動可能に固定されている。
【0021】
ナット部材45は、内周に雌ネジ部46を有し、後述のネジ軸61の雄ネジ部62が雌ネジ部46と螺合する。伸縮可動軸40は、ユニットケース32に対する回転が阻止されている。後述のように、ネジ軸61が回転することにより、ナット部材45を含む伸縮可動軸40がケース軸方向に移動する。ナット部材45及びネジ軸61は、動力方向変換機構であるナットネジ移動機構63を形成する。
【0022】
伸縮駆動ユニット31は、さらに、ユニットケース32内の一端部に固定された駆動モータ64と、減速機構66とを有する。駆動モータ64は、ケース軸に沿うモータ軸(図示せず)が回転可能であり、車体2側に設けられたバッテリを含む電源部(図示せず)に対し電源線で接続され、バッテリから電力が供給されることでモータ軸を回転させる。駆動モータ64は、例えば三相交流モータまたはDCモータである。
【0023】
減速機構66は、駆動モータ64の駆動によって回転する入力軸と、歯車機構と、出力軸とを有し、入力軸の動力を歯車機構で減速して出力軸に出力する。減速機構66は、後述のように複数段の遊星歯車部を含んでおり、複数段階で減速される。これにより、減速機構66は、軸方向には長くなるが、減速度を高くしながら、各遊星歯車部の外径を小さくできるので、伸縮駆動ユニット31の外径が過度に大きくなることを防止できる。減速機構66は、後で詳しく説明する。
【0024】
減速機構66の出力軸の先端には、ネジ軸61が連結される。ネジ軸61は、この出力軸と中心軸が一致し、出力軸と同期して回転する。ネジ軸61は、ケース軸に沿っている。ネジ軸61の外周の雄ネジ部62には、ナット部材45の雌ネジ部46が螺合する。この構成により、ネジ軸61が駆動モータ64の駆動によって一方向または他方向に回転すると、ナット部材45を含む伸縮可動軸40がケース軸に沿って一方向または他方向に移動する。
【0025】
ナットネジ移動機構63は、駆動モータ64の駆動力で伸縮可動軸40をユニットケース32から出入駆動するように、駆動モータ64の駆動力に基づく、減速機構66の出力軸の回転方向の動力を、ケース軸に沿う方向の動力に変換する。そして、伸縮可動軸40がケース軸方向に沿って移動することにより、他端側延出部42の回転支持部43に回動可能に固定された駆動アーム13が、ドア側回転軸6を中心に回転駆動される。
【0026】
図6は、減速機構66を部分的に示す斜視図である。減速機構66は、駆動モータ64のモータ軸と中心軸が一致し、モータ軸と同期回転するように連結された入力軸67と、入力軸67の動力を減速して出力軸68に動力を出力する歯車機構69とを有する。減速機構66の入力軸67及び出力軸68も、駆動モータ64のモータ軸と同様に、ケース軸に沿っている。歯車機構69は、複数段の遊星歯車部70,71,72を含んでいる。
【0027】
入力軸67側端の第1段の遊星歯車部70は、入力軸67に固定されたサンギヤ73と、減速機構66のケースに固定されたリングギヤ74と、サンギヤ73及びリングギヤ74の間に噛み合う複数のピニオンギヤ75とを有する。複数のピニオンギヤ75は、入力軸67と反対側に配置され回転するキャリア76の周方向複数位置に回転可能に支持される。キャリア76の出力側には第1中間軸77が延出され、第1中間軸77に第2段のサンギヤ78が固定される。第1段の遊星歯車部70は、入力軸67の動力を減速して第1中間軸77に出力する。
【0028】
第2段の遊星歯車部71は、第1段と同様に、サンギヤ78、複数のピニオンギヤ79、リングギヤ80、キャリア81を有し、第2段のキャリア81の出力側に、第2中間軸82が延出される。第2中間軸82には第3段のサンギヤ83が固定される。第2段の遊星歯車部71は、第1中間軸77の動力を減速して第2中間軸82に出力する。
【0029】
第3段の遊星歯車部72は、第1段及び第2段と同様に、サンギヤ83、複数のピニオンギヤ84、リングギヤ85、キャリア86を有し、第3段のキャリア86の出力側に、出力軸68が延出される。各リングギヤ74、80,85は、減速機構66のケースに固定される。これにより、減速機構66では、入力軸67の動力が、3段階で減速されて出力軸68に出力される。入力軸67、各中間軸77,82、及び出力軸68は中心軸が一致する。
【0030】
このような複数段の遊星歯車部を有する減速機構66は、ケース軸に沿って長くなるが、減速度を高くしながら、各遊星歯車部70,71,72の外径を小さくできる。これにより、伸縮駆動ユニット31の外径が過度に大きくなることを防止しながら、駆動モータ64から取り出された回転力を、複数段の遊星歯車部70,71,72で大きく減速し、その分、高トルクを出力できる。上記では、減速機構66が3段の遊星歯車部を有する場合を説明したが、減速機構の遊星歯車部は、2段、または4段以上とすることができる。
【0031】
図7は、実施形態において、開閉機構10の動作を示す模式図である。図7(a)に示すように、伸縮可動軸40のユニットケース32からの突出長さが最大に長くなった状態で、車両ドア3は車両乗降口を閉止するドア閉止位置に配置される。そして、駆動モータ64の一方向の回転により、伸縮可動軸40の先端が矢印β方向に移動すると、ヒンジアーム12の車体側回転軸5からアーム側回転軸60までの長さは変わらないので、その長さを維持するように、アーム側回転軸60がドア側回転軸6より車体外側に移動するように矢印γ方向に移動しようとする。これにより、ヒンジアーム12が車体側回転軸5を中心として、矢印γ方向と同じ側の矢印δ方向に回転する。このとき、車体2と車両ドア3とは、平行リンクであるヒンジアーム12と補助リンク90(図4A)とで回転支持されている。これにより、車両ドア3が平行移動しながら車両外側の図7(b)のドア開放位置に移動する。このため、車両乗降口が開放される。車両ドア3がドア開放位置からドア閉止位置に戻る場合には、ドア閉止位置からドア開放位置に移動する場合と逆の動作を行う。これにより、車両乗降口が閉止される。
【0032】
上記の車両ドアの開閉機構10によれば、車両ドア3を開閉する動力源としての伸縮駆動ユニット31が車両ドア3に設けられる。これにより、車両乗降口4付近には、ドア開閉用の動力源を固定する必要がない。このため、車両ドア3が開いた状態で車両乗降口4付近に配置される動力源をなくせるので、車両乗降口4における乗降性を向上できる。
【0033】
さらに、減速機構66が、複数段の遊星歯車部を有する歯車機構69を含んで構成される。これにより、車両ドア3に上下方向または前後方向を軸として回転する大型の歯車を含む減速機構を設けたり、直径の大きい駆動モータを設ける必要がない。このため、車両ドア3の厚みが過度に大きくなることを防止しながら、伸縮可動軸40の伸縮方向の力を大きくできるので、ヒンジアーム12の回転力を大きくできる。したがって、車両ドア3の閉止状態でも車両乗降口付近の空間が狭くなることを抑制できると共に、車両ドア3の開閉動作をよりスムーズに行える。
【0034】
図8は、ヒンジアームの別例を用いた実施形態を示す、図4Aに対応する図である。別例の第1例の構成では、ヒンジアーム12aは、車両ドア3の閉止状態で、略前後方向に延びる第1延伸部48と、第1延伸部48の一端(図8の右端)から車幅方向内側に向かって略直角に屈曲し、上から見て車幅方向外側が開口するU字形の内側曲げ部49とを有する。ヒンジアーム12aの駆動アーム54以外は、斜線部で示している。内側曲げ部49は、U字形を形成する第1延伸部48側の車両幅方向に延びる脚部50に、半円部51の一端が連結されるが、半円部51の他端には車両幅方向に延びる脚部は形成されない。半円部51の他端には、内側曲げ部49の内側に向かって略前後方向に延びる第2延伸部52が連結される。第2延伸部52の先端は、車体側回転軸5に回転支持される。第1延伸部48の他端には、ドア閉止状態で車幅方向外側に向かって前側に傾斜して延び、その先端がドア側回転軸6に回転支持された傾斜部53が連結される。傾斜部53の他端側には、伸縮可動軸40の先端に回動可能に固定された駆動アーム54が一体に延設される。
【0035】
本例の構成によれば、車両ドア3の閉止状態で、ヒンジアーム12aの第1延伸部48が車体側回転軸5より、車幅方向外側に配置されるので、ヒンジアーム12aの主要部が車室内側に大きく入り込むことを抑制できる。
【0036】
図8では、一点鎖線により、別例の第2例のヒンジアーム12bを示している。このヒンジアーム12bは、別例の第1例のヒンジアーム12aと異なり、第1延伸部48aが、ドア閉止状態で車体側回転軸5より車幅方向内側に配置される。第1延伸部48aの一端(図8の右端)には、別例の第1例のヒンジアーム12aの半円部51の略半分である四分の一円弧部を介して第2延伸部52に連結される。第1延伸部48aの他端(図8の左端)には、別例の第1例より長い傾斜部53aが連結される。別例の第2例のその他の構成は、別例の第1例と同様である。
【0037】
この別例の第2例の構成では、ヒンジアーム12bの主要部は、別例の第1例よりもドア閉止状態で車室内側に大きく入り込んでしまう。このため、車室内空間を大きく確保する面からは別例の第1例のヒンジアーム12aが、別例の第2例より好ましい。
【0038】
さらに、別例の第1例のヒンジアーム12aでは、車体側回転軸5側の端部に半円部51を有する。このため、車体2の乗降口4付近において、端縁9aを有し図8に斜格子で一部の断面形状を示す側部パネル9の車室内側の近傍に車体側回転軸5を設けた場合に、その側部パネル9とヒンジアーム12aとの干渉を避けやすくなる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図7の構成と同様である。
【0039】
なお、上記の実施形態では伸縮駆動ユニットが、動力方向変換機構としてナットネジ移動機構を有する場合を説明した。一方、伸縮駆動ユニットが、動力方向変換機構として、他の機構、例えばラックギヤと、ラックギヤに噛み合うピニオンギヤとを有するラックピニオン機構を含む構成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車両、2 車体、3 車両ドア、4 車両乗降口、5 車体側回転軸、6 ドア側回転軸、7 車体側回転軸、8 ドア側回転軸、9 側部パネル、9a 端縁、10 開閉機構、12,12a,12b ヒンジアーム、13 駆動アーム、31,31a 伸縮駆動ユニット、32 ユニットケース、33 底部、34 一端側延出部、35 回転支持部、40 伸縮可動軸、41 筒部、41a 底部、42 他端側延出部、43 回転支持部、45 ナット部材、46 雌ネジ部、48,48a 第1延伸部、49 内側曲げ部、50 脚部、51 半円部、52 第2延伸部、53,53a 傾斜部、54 駆動アーム、59 支持軸、60 アーム側回転軸、61 ネジ軸、62 雄ネジ部、63 ナットネジ移動機構、64 駆動モータ、66 減速機構、67 入力軸、68 出力軸、69 歯車機構、70,71,72 遊星歯車部、73 サンギヤ、74 リングギヤ、75 ピニオンギヤ、76 キャリア、77 第1中間軸、78 サンギヤ、79 ピニオンギヤ、80 リングギヤ、81 キャリア、82 第2中間軸、83 サンギヤ、84 ピニオンギヤ、85 リングギヤ、86 キャリア。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8