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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20241224BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20241224BHJP
【FI】
H01M50/262 Z
H01M50/264
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022017448
(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公開番号】P2023114879
(43)【公開日】2023-08-18
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 巌
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-114752(JP,A)
【文献】特開2008-282582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01M 50/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のエンドプレートの間に複数の電池セルが積層配置された積層体に、前記一対のエンドプレートを互いに接続するバンド材を位置決めするための治具であって、
前記積層体をその積層方向に沿って圧縮しながら保持する一対のプレスブロックと、
前記一対のプレスブロックの少なくとも一方に設けられ、前記一対のプレスブロックに保持された前記積層体に沿って配置された前記バンド材を、前記積層体に対して位置決めするクランプ部材と、
前記積層方向に垂直な軸を回転軸として、前記クランプ部材を前記プレスブロックに対して使用位置と退避位置との間で回転可能に接続するヒンジ機構と、
前記ヒンジ機構に設けられ、前記クランプ部材の回転位置に応じて前記クランプ部材を前記回転軸に沿って変位させるカム機構と、
を備え、
前記クランプ部材が前記使用位置にあるときは、前記回転軸に平行な方向において前記バンド材が前記クランプ部材と前記積層体との間に挟持され、
前記カム機構は、前記クランプ部材が前記退避位置から前記使用位置へ移動する間に、前記クランプ部材を前記積層体から離間する方向へ変位させ、前記クランプ部材が前記使用位置に到達したときに、前記クランプ部材を前記積層体に向けて変位させる、
治具。
【請求項2】
前記クランプ部材は、前記使用位置において前記バンド材に当接する当接面を有し、
前記クランプ部材が前記使用位置にあるときは、前記当接面が前記プレスブロックに対して前記積層体と同じ側に位置し、
前記クランプ部材が前記退避位置にあるときは、前記当接面が前記プレスブロックに対して前記積層体の反対側に位置する、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記クランプ部材は、前記当接面を一端に有するとともに、他端において前記ヒンジ機構に接続されている、請求項2に記載の治具。
【請求項4】
前記カム機構は、前記ヒンジ機構に設けられた一対のカム突起と、前記クランプ部材を前記回転軸に沿って付勢する付勢部材と、を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の治具。
【請求項5】
前記ヒンジ機構は、
前記プレスブロックに固定された第1軸部と、
前記クランプ部材に固定されているとともに、前記第1軸部と前記回転軸に沿って同軸に配置された第2軸部とを有し、
前記一対のカム突起は、前記第1軸部と前記第2軸部との間に設けられており、
前記付勢部材は、前記第1軸部と前記第2軸部との一方に設けられている、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記一対のプレスブロックの少なくとも一方を他方に向けて進退させるアクチュエータをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の治具。
【請求項7】
前記一対のプレスブロックの少なくとも一方は、互いに並列に配置された複数の弾性部材によって支持されており、前記積層体との当接によって受動的に揺動可能である、請求項1から6のいずれか一項に記載の治具。
【請求項8】
前記一対のプレスブロックの間に配置された前記積層体に、前記積層方向に対して垂直な方向から当接することによって、前記積層体を位置決めする位置決め部材をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、治具に関し、特に、電池スタックの製造に用いられる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電池スタックが記載されている。電池スタックは、一対のエンドプレートの間に、複数の電池セルが積層配置されている。一対のエンドプレートは、複数のバンド材によって互いに接続されており、複数の電池セルを圧縮しながら保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-120963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池スタックの製造では、先ず、一対のエンドプレートの間に、複数の電池セルが積層配置された積層体を用意する。次いで、積層体を所定の荷重で圧縮しながら、積層体に対してバンド材を位置決めして、バンド材と各エンドプレートとの間をそれぞれ接合する。これにより、一対の各エンドプレートがバンド材を介して互いに接続される。バンド材とエンドプレートとの間を接合するときに、バンド材に位置ずれが生じていると、それらの間を十分な強度で接合することができないおそれがある。本明細書は、電池セルの積層体に対して、バンド材を正しく位置決めするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、一対のエンドプレートの間に複数の電池セルが積層配置された積層体に、一対のエンドプレートを互いに接続するバンド材を位置決めするための治具を開示する。治具は、積層体をその積層方向に沿って圧縮しながら保持する一対のプレスブロックと、一対のプレスブロックの少なくとも一方に設けられ、一対のプレスブロックに保持された積層体に沿って配置されたバンド材を、積層体に対して位置決めするクランプ部材と、積層方向に垂直な軸を回転軸として、クランプ部材をプレスブロックに対して使用位置と退避位置との間で回転可能に接続するヒンジ機構と、ヒンジ機構に設けられ、クランプ部材の回転位置に応じてクランプ部材を回転軸に沿って変位させるカム機構とを備え、クランプ部材が使用位置にあるときは、回転軸に平行な方向においてバンド材がクランプ部材と積層体との間に挟持され、カム機構は、クランプ部材が退避位置から使用位置へ移動する間に、クランプ部材を積層体から離間する方向へ変位させ、クランプ部材が使用位置に到達したときに、クランプ部材を積層体に向けて変位させる。
【0006】
上記した治具では、一対のエンドプレート及び複数の電池セルを有する積層体が、一対のプレスブロックによって圧縮しながら保持される。各々のプレスブロックには、積層体に沿って配置されたバンド材を、積層体に対して位置決めするクランプ部材が設けられている。クランプ部材は、ヒンジ機構を介してプレスブロックに接続されており、使用位置と退避位置との間で回転可能に構成されている。クランプ部材が退避位置から使用位置へ回転すると、ヒンジ機構の回転軸と平行な方向において、バンド材はクランプ部材と積層体との間に挟持される。これにより、バンド材が積層体に対して位置決めされる。
【0007】
ヒンジ機構には、カム機構が設けられている。カム機構は、クランプ部材の回転位置に応じて、クランプ部材を回転軸に沿って変位させる。カム機構により、退避位置から使用位置へ移動する間、クランプ部材は積層体から離間する方向へ変位し、使用位置に到達したときに、クランプ部材は積層体に向けて変位する。これにより、クランプ部材が使用位置まで回転する間は、クランプ部材がバンド材と無用に接触することがなく、バンド材の意図しない位置ずれが回避される。さらに、クランプ部材が使用位置に到達したときは、クランプ部材が積層体に向けて移動することで、バンド材がクランプ部材と積層体との間に挟持される。このとき、クランプ部材はヒンジ機構の回転軸に沿って移動するので、クランプ部材がバンド材に接触するときでも、バンド材の意図しない位置ずれが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】治具10と電池スタック20とを模式的に示す正面図であって、可動ブロック26は圧縮位置にあり、クランプ部材38は使用位置にある。図1図3では、電池スタック20の構成を明瞭にするために、エンドプレート14が、ハッチングされている。
図2】治具10と電池スタック20とを模式的に示す正面図であって、可動ブロック26は開放位置であり、クランプ部材38は退避位置にある。
図3】治具10と電池スタック20とを模式的に示す平面図であって、可動ブロック26は圧縮位置にあり、クランプ部材38は使用位置にある。
図4図4(a)~(c)は、クランプ部材38の斜視図をそれぞれ示す。図4(a)では、クランプ部材38が退避位置にあり、ヒンジ機構40の回転角度は180度である。図4(b)では、クランプ部材38が退避位置にあり、ヒンジ機構40の回転角度は90度である。図4(c)では、クランプ部材38が使用位置にあり、ヒンジ機構40の回転角度は0度である。
図5図5(a)~(c)は、ヒンジ機構40の回転軸Rに垂直な平面視において、ヒンジ機構40に設けられたカム機構42をそれぞれ示す。図5(a)は、図4(a)に対応しており、ヒンジ機構40の回転角度が180度の状態を示す。図5(b)は、図4(b)に対応しており、ヒンジ機構40の回転角度が90度の状態を示す。図5(c)は、図4(c)に対応しており、ヒンジ機構40の回転角度が0度の状態を示す。
図6】クランプ部材38の回転位置に応じて変位する第1軸部44と第2軸部46との間の距離Dを示すグラフである。
図7】積層体Sを治具10にセットする工程を示す。
図8】積層体Sをプレスする工程を示す。
図9】積層体Sにバンド材16を取り付けて位置決めする工程を示す。
図10】一対のエンドプレート14に対してバンド材16を接合する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、クランプ部材は、使用位置においてバンド材に当接する当接面を有してもよい。この場合、クランプ部材が使用位置にあるときは、当接面がプレスブロックに対して積層体と同じ側に位置してもよく、クランプ部材が退避位置にあるときは、当接面がプレスブロックに対して積層体の反対側に位置してもよい。このような構成によると、治具に積層体を配置するときには、積層体の配置を妨げることのない位置まで、クランプ部材を退避させることができる。
【0010】
上記したクランプ部材の構成に加えて、クランプ部材は、当接面を一端に有するとともに、他端においてヒンジ機構に接続されていてもよい。このような構成によると、クランプ部材の回転によって、クランプ部材の当接面を大きく移動させることができる。
【0011】
本技術の一実施形態において、カム機構は、ヒンジ機構に設けられた一対のカム突起と、クランプ部材を回転軸に沿って付勢する付勢部材とを有してもよい。このような構成によると、一対のカム突起は付勢部材によって、常に互いに当接し合う。これにより、クランプ部材をカム突起の形状に沿ってスムーズに変位させることができる。
【0012】
上記したカム機構の構成に加え、ヒンジ機構は、プレスブロックに固定された第1軸部と、クランプ部材に固定されているとともに、第1軸部と回転軸に沿って同軸に配置された第2軸部とを有してもよい。この場合、一対のカム突起は、第1軸部と第2軸部との間に設けられており、付勢部材は、第1軸部と第2軸部との一方に設けられていてもよい。
【0013】
本技術の一実施形態において、治具は、一対のプレスブロックの少なくとも一方を他方に向けて進退させるアクチュエータをさらに備えてもよい。これにより、アクチュエータによって電池セルの積層体をプレスすることができる。アクチュエータは、例えば、電動モータであってもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、一対のプレスブロックの少なくとも一方は、互いに並列に配置された複数の弾性部材によって支持されてもよい。この場合、一対のプレスブロックの少なくとも一方は、積層体との当接によって受動的に揺動可能であってもよい。このような構成によると、一対のプレスブロックの少なくとも一方は、積層体に対して広い面で当接することができ、積層体に対して局所的な荷重が作用することが抑制される。
【0015】
本技術の一実施形態において、一対のプレスブロックの間に配置された積層体に、積層方向に対して垂直な方向から当接することによって、積層体を位置決めする位置決め部材をさらに備えてもよい。このような構成によると、積層体Sを治具10に配置するときに、積層体Sを位置決め部材へ向けて移動させることで、積層体Sの積層方向に対して垂直な方向における位置を決定することができる。
【0016】
(実施例)図面を参照して、実施例の治具10について説明する。治具10は、電池スタック20の製造に用いられる。ここで、本明細書では、図中のx軸正方向を左右方向の右方とし、x軸負方向を左右方向の左方とする。また、図中のy軸正方向を前後方向の後方とし、y軸負方向を前後方向の前方とする。そして、図中のz軸正方向を上下方向の上方と称し、z軸負方向を上下方向の下方と称する。
【0017】
図1図3に示すように、電池スタック20は、積層体Sと、積層体Sを拘束する複数のバンド材16とを備える。積層体Sは、複数の電池セル12と一対のエンドプレート14とを有し、一対のエンドプレート14の間に複数の電池セル12が積層配置されている。複数の電池セル12の積層方向は、左右方向(即ち、x軸)に平行である。一対のエンドプレート14は、複数のバンド材16によって互いに接続され、複数の電池セル12を圧縮しながら保持する。本実施例の治具10は、電池スタック20の製造において使用される治具であって、積層体Sに対して複数のバンド材16を位置決めするための治具である。複数のバンド材16の数は特に限定されない。一例ではあるが、本実施例における電池スタック20は、4個のバンド材16を備える。
【0018】
電池スタック20では、複数の電池セル12が直列に接続されている。電池セル12は、二次電池セルであって、例えばリチウムイオン電池セルである。但し、電池セル12は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池セルといった他の二次電池セルであってもよい。また、電池セル12の数についても特に限定されない。一例ではあるが、本実施例における電池スタック20は、13個の電池セル12を備えており、その定格電圧は48ボルトである。電池スタック20は、例えば電気自動車や燃料電池車といった、各種の電動車両に採用することができる。
【0019】
各々のエンドプレート14は、本体プレート14aとブラケット14bとを有する。本体プレート14aは、概して平板状の部材である。一対の本体プレート14aは、積層方向に対して垂直に配置され、複数の電池セル12を挟んで対向する。ブラケット14bは、曲げ加工された板部材によって形成されている。ブラケット14bは、上側部分14b1及び下側部分14b2と、上側部分14b1と下側部分14b2との間に位置する中間部分14b3とを有する。上側部分14b1及び下側部分14b2は、積層方向に沿って延びている。中間部分14b3は、上下方向(即ちz軸)に沿って延びており、本体プレート14aに取り付けられている。一対のエンドプレート14では、各ブラケット14bの上側部分14b1が、バンド材16によって互いに接続されているとともに、各ブラケット14bの下側部分14b2が、他のバンド材16によって互いに接続されている。
【0020】
複数のバンド材16の各々は、バンド状の長尺な部材である。複数のバンド材16は、積層体Sに隣接しており、複数の電池セル12の積層方向(即ち、左右方向)に沿って延びている。バンド材16の両端部分は、一対のエンドプレート14にそれぞれ接合されており、詳しくは、一対のブラケット14bに接合部18で接合されている。接合部18は、バンド材16とブラケット14bとを、かしめることによって形成される。
【0021】
治具10は、基台22と、一対のプレスブロック24,26と、複数のクランプ部材38と、複数のヒンジ機構40と、複数のカム機構42と、電動モータ28と、直動機構30を備える。基台22は、底壁22aと、底壁22aの両端に立設する左壁22b及び右壁22cを有する。左壁22b及び右壁22cは、互いに対向する。底壁22aは、その上面において積層体Sを載置可能である。一例であるが、図3に示すように、底壁22a上には、位置決め壁22dが立設している。位置決め壁22dは、底壁22aにおける前部に位置している。位置決め壁22dは左右方向に沿って延びている。これにより、後方から基台22の位置決め壁22dに向けて移動させるときに、積層体Sの前後方向における位置を決定することができる。
【0022】
一対のプレスブロック24,26は、積層体Sをその積層方向に沿って圧縮しながら保持可能に構成されている。一対のプレスブロック24,26は、固定ブロック24と可動ブロック26とを有する。固定ブロック24は、基台22の左壁22b上に設けられている。可動ブロック26は、基台22の右壁22cの近傍に位置しており、複数の直動ガイド32を介して、右壁22cに取り付けられている。これにより、可動ブロック26は、左右方向に沿って移動可能であって、固定ブロック24に対して進退可能に構成されている。直動ガイド32の数については特に限定されない。一例ではあるが、本実施例の治具10は、4つの直動ガイド32を備える。
【0023】
電動モータ28は、直動機構30を介して、可動ブロック26に接続されている。直動機構30は、電動モータ28の回転運動を、可動ブロック26の直線運動に変換する。これにより、電動モータ28は、可動ブロック26を固定ブロック24に向けて進退させることができる。可動ブロック26は、図2に示す開放位置と、図1に示す圧縮位置との間を移動することができる。治具10に対して積層体Sがセットされるときは、可動ブロック26が開放位置に配置され、その後に積層体Sに対してバンド材16を組み付けるときは、可動ブロック26が圧縮位置に配置される。可動ブロック26が圧縮位置に移動すると、積層体Sは一対のプレスブロック24,26によって圧縮保持される。なお、電動モータ28は、本明細書が開示する技術における「アクチュエータ」の一例である。
【0024】
直動機構30と可動ブロック26との間には、複数の弾性部材34が設けられている。可動ブロック26は、複数の弾性部材34によって支持されている。複数の弾性部材34は互いに並列に配置されている。複数の弾性部材34は、例えばばね部材といった、弾性を有する部材である。このような構成によると、可動ブロック26が積層体Sと当接したときに、例えば積層体Sの寸法誤差に応じて、可動ブロック26は受動的に揺動することができる。これにより、可動ブロック26は、積層体Sに対して広い面で当接することができ、積層体Sに対して局所的な荷重が作用することが抑制される。本実施例では、4個の弾性部材34が採用されているが、弾性部材34の数は、2個又は3個であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0025】
可動ブロック26と直動機構30との間には、荷重センサ36が設けられている。荷重センサ36は、可動ブロック26が積層体Sに対して負荷する荷重を測定する。これにより、所定の荷重が積層体Sに作用するように、可動ブロック26の移動を制御することができる。本実施例では、荷重センサ36には、ロードセルが採用されている。
【0026】
一例ではあるが、可動ブロック26の位置は、上下方向及び前後方向において、固定ブロック24の位置と略等しい。固定ブロック24と可動ブロック26には、同一の構造を採用することができる。但し、一対のプレスブロック24、26の構成は、特に限定されない。一対のプレスブロック24,26は、積層体Sを圧縮保持可能に構成されていればよい。固定ブロック24は、本実施例のように基台22の左壁22bとは別体の部材であってもよいし、基台22の左壁22bと一体に形成されていてもよい。あるいは、他の実施形態として、一対のプレスブロック24,26は、その両者が可動ブロックであってもよい。
【0027】
一対のプレスブロック24,26の各々には、複数のクランプ部材38が設けられている。一例ではあるが、固定ブロック24は、前後方向において一対の側面24sを有しており、各側面24sの上端部及び下端部において、クランプ部材38がそれぞれ取り付けられている。同様に、可動ブロック26は、前後方向において一対の側面26sを有しており、各側面26sの上端部及び下端部において、クランプ部材38がそれぞれ取り付けられている。クランプ部材38は、一対のプレスブロック24,26に保持された積層体Sに対して、バンド材16を位置決めする。
【0028】
図4(a)~図4(c)及び図5(a)~図5(c)を参照して、ヒンジ機構40とカム機構42について説明する。図4(a)~図4(c)に示すように、ヒンジ機構40は、積層方向に垂直な軸を回転軸Rとして、クランプ部材38をプレスブロック24,26に対して回転可能に接続する。これにより、クランプ部材38は、図1図3に示す使用位置と、図2に示す退避位置との間で、回転することができる。クランプ部材38が使用位置にあるときは、クランプ部材38が積層体Sに近接して、バンド材16がクランプ部材38と積層体Sとの間に保持される。これにより、バンド材16が積層体Sに対して位置決めされる。一方、クランプ部材38が退避位置にあるときは、クランプ部材38が積層体Sに対して離間して、治具10に対する積層体Sの出し入れが許容される。
【0029】
クランプ部材38は、使用位置においてバンド材16に当接する当接面38aを有する。クランプ部材38が使用位置にあるときは、当接面38aがプレスブロック24,26に対して積層体Sと同じ側に位置する(図1参照)。クランプ部材38が退避位置にあるときは、当接面38aがプレスブロック24,26に対して積層体Sの反対側に位置する(図2参照)。このような構成によると、治具10に積層体Sを配置するとき及び治具10から積層体Sを取り外すときには、積層体Sの配置及び取り外しを妨げることのない位置まで、クランプ部材38を退避させることができる。
【0030】
クランプ部材38は、当接面38aを一端に有するとともに、他端においてヒンジ機構40に接続されている。このような構成によると、クランプ部材38の回転によって、クランプ部材38の当接面38aを大きく移動させることができる。ヒンジ機構40は、0度~180度までの範囲で回転可能に構成されている。ここで、クランプ部材38の回転位置が図4(c)の位置(使用位置)のときは、ヒンジ機構40の回転角度が0度であり、クランプ部材38の回転位置が図4(b)の位置のときは、ヒンジ機構40の回転角度が90度であり、クランプ部材38の回転位置が図4(a)の位置のときは、ヒンジ機構40の回転角度が180度である。なお、ヒンジ機構40の回転角度は、これに限定されず、180度以上の範囲で回転可能であってもよい。
【0031】
ヒンジ機構40は、第1軸部44と第2軸部46とを有する。第1軸部44は、プレスブロック24,26に固定されている。第2軸部46は、クランプ部材38に固定されており、第1軸部44と回転軸Rに沿って同軸に配置されている。ヒンジ機構40の第1軸部44と第2軸部46の間には、カム機構42が設けられている。カム機構42は、クランプ部材38の回転位置に応じて、クランプ部材38を回転軸Rに沿って変位させる。
【0032】
カム機構42の構成は特に限定されない。一例ではあるが、本実施例におけるカム機構42は、ヒンジ機構40に設けられた一対のカム突起48a,48bと、一対のカム突起48a,48bの一方を他方に向けて付勢する付勢部材50を有する。一対のカム突起48a,48bは、第1軸部44に設けられた第1カム突起48aと、第2軸部46に設けられた第2カム突起48bとを含む。第1カム突起48aは、第1軸部44から第2軸部46に向けて、回転軸Rと平行な方向に突出しており、第2カム突起48bは、第2軸部46から第1軸部44に向けて、回転軸Rと平行な方向に突出している。付勢部材50は、第2軸部46に設けられている。但し、付勢部材50の数や位置は、特に限定されず、第1軸部44と第2軸部46との一方に設けられていればよい。
【0033】
図5(a)に示すように、クランプ部材38が退避位置にあるときは、一対のカム突起48a,48bが互いに離間して位置している。このとき、第1軸部44と第2軸部46との間の距離Dは比較的に小さい。これに対して、図5(b)に示すように、クランプ部材38が退避位置から使用位置へ移動する間は、一対のカム突起48a,48bが互いに当接することで、第1軸部44と第2軸部46との間の距離Dが拡大する。これにより、クランプ部材38は、積層体Sから離間する方向へ変位して、クランプ部材38がバンド材16に接触することが回避される。その後、図5(c)に示すように、クランプ部材38が使用位置まで移動すると、一対のカム突起48a,48bが完全に擦れ違うことで、第1軸部44と第2軸部46との間の距離Dが急速に減少する。これにより、クランプ部材38は、回転軸Rに沿って積層体Sに向けて鋭く変位して、積層体Sとの間にバンド材16を保持する。即ち、図6に示すように、第1軸部44と第2軸部46との間の距離Dは、クランプ部材38の回転位置(ヒンジ機構40の回転角度)に応じて変化し、その変化に応じて、クランプ部材38は回転軸Rに沿って変位する。
【0034】
図7図10を参照して、治具10を用いた電池スタック20の製造方法について説明する。先ず、一対のエンドプレート14の間に複数の電池セル12が積層配置された積層体Sを用意する。本実施例における製造方法は、特に、その用意した積層体Sに対して複数のバンド材16を位置決めし、一対のエンドプレート14に各バンド材16をそれぞれ接合する方法について説明する。
【0035】
図7に示すように、積層体Sを治具10にセットする。このとき、可動ブロック26は開放位置に移動させておくとともに、クランプ部材38は、退避位置に移動させておく。積層体Sは、一対のプレスブロック24,26が互いに対向する方向に、積層体Sの積層方向が一致するように配置される。積層体Sは、後方から前方に向けて基台22上にスライド移動させ、図3に図示する位置決め壁12dに積層体Sの側面を当接させて、積層体Sを基台22上の所定位置に位置決めする。
【0036】
次いで、図8に示すように、治具10によって積層体Sをプレスする。具体的には、可動ブロック26を開放位置から圧縮位置に移動させる。これにより、積層体Sは、一対のプレスブロック24,26によって、圧縮保持される。
【0037】
次いで、図9に示すように、治具10によって積層体Sに複数のバンド材16の各々を配置する。各バンド材16は、一対のエンドプレート14のブラケット14b上に、配置される。バンド材16が配置された後、クランプ部材38を回転させて、退避位置から使用位置に移動させる。クランプ部材38が使用位置に到達すると、バンド材16はクランプ部材38と積層体Sとの間で挟持される。これにより、バンド材16が積層体Sに対して位置決めされる。
【0038】
次いで、図10に示すように、バンド材16を一対のエンドプレート14に接続する。具体的には、バンド材16と、エンドプレート14のブラケット14bとが接合部18によって接続されている。接合部18は、バンド材16及びブラケット14bといった二つの板部材14、16の重なっている部分をバンド材16の上からかしめることによって形成される。このとき、先のバンド材16の位置決め工程で、バンド材16が、クランプ部材38によって積層体Sに対して固定されているため、バンド材16の意図しない位置ずれが抑制される。従って、バンド材16を十分な強度で接合することができる。
【0039】
以上により、積層体Sに対して、バンド材16が正しく位置決めされた電池スタック20が完成する。治具10から電池スタック20を取り外すときは、クランプ部材38を使用位置(図1のクランプ部材38の回転位置)から退避位置(図2のクランプ部材38の回転位置)に回転移動させた後、可動ブロック26を圧縮位置(図1の可動ブロック26の位置)から開放位置(図2の可動ブロック26の位置)へと移動させる。
【0040】
電池スタック20の製造では、上述したように、一対のエンドプレート14の間に、複数の電池セル12が積層配置された積層体Sを用意する。次いで、積層体Sを所定の荷重で圧縮しながら、積層体Sに対してバンド材16を位置決めして、バンド材16と各エンドプレート14との間をそれぞれ接合する。これにより、一対の各エンドプレート14がバンド材16を介して互いに接続される。バンド材16とエンドプレート14との間を接合するときに、バンド材16に位置ずれが生じていると、それらの間を十分な強度で接合することができないおそれがある。
【0041】
上記課題を解決するために、本実施例の治具10では、一対のエンドプレート14及び複数の電池セル12を有する積層体Sが、一対のプレスブロック24,26によって圧縮しながら保持される。各々のプレスブロック24,26には、積層体Sに沿って配置されたバンド材を、積層体Sに対して位置決めする複数のクランプ部材38が設けられている。各クランプ部材38は、ヒンジ機構40を介してプレスブロック24,26に接続されており、使用位置と退避位置との間で回転可能に構成されている。クランプ部材38が退避位置から使用位置へ回転すると、ヒンジ機構40の回転軸Rと平行な方向において、バンド材16はクランプ部材38と積層体Sとの間に挟持される。これにより、バンド材16が積層体Sに対して位置決めされる。
【0042】
さらに、ヒンジ機構40には、カム機構42が設けられている。カム機構42は、クランプ部材38の回転位置に応じて、クランプ部材38を回転軸Rに沿って変位させる。カム機構42により、退避位置から使用位置へ移動する間は、クランプ部材38が積層体Sから離間する方向へ変位し、使用位置に到達したときは、クランプ部材38が積層体Sに向けて変位する。これにより、クランプ部材38が使用位置まで回転する間は、クランプ部38材がバンド材16と無用に接触することがなく、バンド材16の意図しない位置ずれが回避される。さらに、クランプ部材38が使用位置に到達したときは、クランプ部材38が積層体Sに向けて移動することで、バンド材16がクランプ部材38と積層体Sとの間に挟持される。このとき、クランプ部材38はヒンジ機構40の回転軸Rに沿って移動するので、クランプ部材38がバンド材16に接触するときでも、バンド材16の意図しない位置ずれが抑制される。
【0043】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0044】
10:治具
12:電池セル
14:エンドプレート
14a:プレート部
14b:ブラケット部
16:バンド材
18:接合箇所
20:電池スタック
22:基台
24,26:プレスブロック
28:モータ
30:直動機構
32:直動ガイド
34:弾性部材
36:荷重センサ
38:クランプ部材
38a:当接面
40:ヒンジ機構
42:カム機構
44:第1軸部
46:第2軸部
48a,48b:カム突起
50:付勢部材
R:回転軸
S:積層体
D:距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10