(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】コンピュータ、車両、サーバ、及びモバイル端末
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20241224BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241224BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241224BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W60/00
B60W50/14
G08B21/00 U
(21)【出願番号】P 2022019533
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】眞屋 朋和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 強志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏光
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0052463(US,A1)
【文献】特開2019-46273(JP,A)
【文献】特開2021-123144(JP,A)
【文献】特開2018-14045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった車両について、その場で前記車両を復旧させることができるか否か、及び、前記車両が手動運転で走行できるか否かを判断する診断部と、
前記診断部による判断結果に応じて所定の処理を実行する対処部とを備
え、
前記対処部は、前記診断部によりその場で前記車両を復旧させることができると判断された場合に、復旧手順を示すマニュアルを、前記車両に搭載された端末と前記車両を利用中のユーザの端末との少なくとも一方に表示させる、コンピュータ。
【請求項2】
前記対処部は、前記診断部により、その場で前記車両を復旧させることができず、かつ、前記車両が手動運転で走行できないと判断された場合に、前記車両をレッカー移動させるためのレッカー手配を行なうように構成され、
前記対処部は、前記診断部によりその場で前記車両を復旧させることができると判断された場合と、前記診断部により前記車両が手動運転で走行できると判断された場合との各々において、前記レッカー手配を行なわない、請求項1に記載のコンピュータ。
【請求項3】
前記診断部は、前記マニュアルを表示した前記端末に対してユーザから作業中止を示す入力がなされると、異常が生じた前記車両をその場で復旧させることができるとした前記判断を撤回して、異常が生じた前記車両をその場で復旧させることができないと判断する、請求項
1又は2に記載のコンピュータ。
【請求項4】
前記診断部は、前記車両を手動運転に切替え可能か否か、及び、前記車両を手動運転可能な人が前記車両に乗っているか否かを判断するように構成され、
前記診断部は、前記車両を手動運転に切替え可能であり、かつ、前記車両を手動運転可能な人が前記車両に乗っている場合に、前記車両が手動運転で走行できると判断する、請求項1~
3のいずれか一項に記載のコンピュータ。
【請求項5】
前記診断部は、前記車両の中に人が存在するか否かを検出するセンサの出力と、前記車両を利用中のユーザに関するユーザ情報とを用いて、前記車両を手動運転可能な人が前記車両に乗っているか否かを判断するように構成される、請求項
4に記載のコンピュータ。
【請求項6】
異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった車両について、その場で前記車両を復旧させることができるか否か、及び、前記車両が手動運転で走行できるか否かを判断する診断部と、
前記診断部による判断結果に応じて所定の処理を実行する対処部とを備え、
前記対処部は、異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった前記車両が手動運転で走行できる場合に運転支援処理を実行する
、コンピュータ。
【請求項7】
制御装置を備える車両であって、
前記車両は、
自動運転キットと、
前記制御装置と前記自動運転キットとの間での信号のやり取りを仲介する車両制御インターフェースとをさらに備え、
前記自動運転キットは、自動運転のための指令を、前記車両制御インターフェースを介して前記制御装置へ送るように構成され、
前記制御装置は、前記自動運転キットからの前記指令に従って前記車両を制御するように構成され、
前記制御装置は、前記車両の状態を示す信号を、前記車両制御インターフェースを介して前記自動運転キットへ送るように構成され、
前記制御装置又は前記自動運転キットが、請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、車両。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、サーバ。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のコンピュータを含む、モバイル端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータ、車両、サーバ、モバイル端末、及び車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-074169号公報(特許文献1)には、自動運転車両を配車する車両システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後、自動運転技術が向上するにつれて、運転に不慣れなユーザ(運転スキルを有していないユーザ)、あるいはクルマに詳しくないユーザが、管理者不在で走行する自動運転車両を交通手段として利用するケースが増加すると考えられる。こうしたユーザが自動運転車両を利用しているときに車両に異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなると、ユーザは自身では対処できずに途方に暮れる可能性がある。仮にユーザが携帯電話によってサポートセンタに助けを求めることができたとしても、ユーザが状況を的確に説明できず、ユーザが救済されるまでに時間がかかる可能性がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことができるコンピュータ、車両、サーバ、モバイル端末、及び車両管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係るコンピュータは、異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった車両について、その場で車両を復旧させることができるか否か、及び、車両が手動運転で走行できるか否かを判断する診断部と、診断部による判断結果に応じて所定の処理を実行する対処部とを備える。
【0007】
上記コンピュータでは、車両の状況判断が自動的に行なわれる。そして、判断結果に応じて所定の処理が実行される。このため、運転に不慣れなユーザ(運転スキルを有していないユーザ)、あるいはクルマに詳しくないユーザが利用する車両に異常が生じた場合にも、当該車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことが可能になる。
【0008】
対処部は、診断部により、その場で車両を復旧させることができず、かつ、車両が手動運転で走行できないと判断された場合に、車両をレッカー移動させるためのレッカー手配を行なうように構成されてもよい。対処部は、診断部によりその場で車両を復旧させることができると判断された場合と、診断部により車両が手動運転で走行できると判断された場合との各々において、レッカー手配を行なわないように構成されてもよい。
【0009】
上記コンピュータは、レッカー移動の要否を自動的に判断する。レッカー手配が自動的に行なわれるため、運転に不慣れなユーザ、あるいはクルマに詳しくないユーザが利用する車両に異常が生じた場合にも、レッカー手配を早期かつ適切に行なうことができる。また、レッカー移動が不要と判断された場合には、レッカー手配が行なわれないことで、不要なレッカー手配によるコスト増加が抑制される。
【0010】
対処部は、診断部によりその場で車両を復旧させることができると判断された場合に、復旧手順を示すマニュアルを、車両に搭載された端末と車両を利用中のユーザの端末との少なくとも一方に表示させるように構成されてもよい。
【0011】
上記構成によれば、ユーザが、マニュアルに従って復旧作業を進めることで、ユーザが短時間で復旧作業を完了させやすくなる。車両に搭載された端末は、カーナビゲーションシステムであってもよい。車両を利用中のユーザの端末は、モバイル端末(たとえば、スマートフォン又はウェアラブルデバイス)であってもよい。
【0012】
上記のコンピュータにおいて、診断部は、マニュアルを表示した端末に対してユーザから作業中止を示す入力がなされると、異常が生じた車両をその場で復旧させることができるとした上記判断を撤回して、異常が生じた車両をその場で復旧させることができないと判断するように構成されてもよい。
【0013】
上記構成によれば、自動運転車両に発生した異常についてその場で自動運転車両を復旧させることができるか否かを的確に判断しやすくなる。詳しくは、コンピュータによって誤った判断がなされたときに、ユーザの判断を優先して、判断の誤りを正すことが可能になる。
【0014】
診断部は、異常の対処方法が自明か否か、及び、異常が生じた車両を所定時間以内に復旧させることが可能か否かを判断するように構成されてもよい。診断部は、異常の対処方法が自明であり、かつ、異常が生じた車両を所定時間以内に復旧させることが可能である場合に、異常が生じた車両をその場で復旧させることができると判断するように構成されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、異常が生じた自動運転車両をその場で復旧させることができるか否かを的確に判断しやすくなる。
【0016】
上記のコンピュータにおいて、診断部は、車両を利用中のユーザに関するユーザ情報を用いて、異常が生じた車両を所定時間以内に復旧させることが可能か否かを判断するように構成されてもよい。
【0017】
上記構成によれば、異常が生じた自動運転車両を所定時間以内に復旧させることが可能か否かを、その車両を利用中のユーザに関するユーザ情報を用いて的確に判断しやすくなる。
【0018】
診断部は、車両を手動運転に切替え可能か否か、及び、車両を手動運転可能な人が車両に乗っているか否かを判断するように構成されてもよい。診断部は、車両を手動運転に切替え可能であり、かつ、車両を手動運転可能な人が車両に乗っている場合に、車両が手動運転で走行できると判断するように構成されてもよい。
【0019】
上記構成によれば、異常が発生した自動運転車両が手動運転で走行可能か否かを的確に判断しやすくなる。診断部は、車両に発生した異常が手動運転に支障をきたすものでない場合に、車両を手動運転に切替え可能であると判断してもよい。
【0020】
診断部は、車両の中に人が存在するか否かを検出するセンサの出力と、車両を利用中のユーザに関するユーザ情報とを用いて、車両を手動運転可能な人が車両に乗っているか否かを判断するように構成されてもよい。こうした構成によれば、車両を手動運転可能な人が車両に乗っているか否かを的確に判断しやすくなる。
【0021】
対処部は、異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった車両が手動運転で走行できる場合に、運転支援処理を実行するように構成されてもよい。こうした構成によれば、手動運転による車両の走行が適切に行なわれやすくなる。運転支援処理は、目的地の表示であってもよいし、ADAS(先進運転支援システム)による運転支援であってもよい。
【0022】
本開示の第2の観点に係る車両は、制御装置を備える。車両は、自動運転キットと、制御装置と自動運転キットとの間での信号のやり取りを仲介する車両制御インターフェースとをさらに備える。自動運転キットは、自動運転のための指令を、車両制御インターフェースを介して制御装置へ送るように構成される。制御装置は、自動運転キットからの指令に従って車両を制御するように構成される。制御装置は、車両の状態を示す信号を、車両制御インターフェースを介して自動運転キットへ送るように構成される。そして、制御装置又は自動運転キットが、上述したいずれかのコンピュータを含む。
【0023】
上記車両は、前述したコンピュータを含むため、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことができる。
【0024】
本開示の第3の観点に係るサーバは、上述したいずれかのコンピュータを含む。
上記サーバは、前述したコンピュータを含むため、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことができる。
【0025】
本開示の第4の観点に係るモバイル端末は、上述したいずれかのコンピュータを含む。
上記モバイル端末は、前述したコンピュータを含むため、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことができる。
【0026】
本開示の第5の観点に係る車両管理方法は、次に示す第1判断、第2判断、第3判断、及びレッカー手配を含む。
【0027】
第1判断では、コンピュータが、自動運転中の車両に自動運転による走行を継続できない異常が生じたか否かを判断する。第2判断では、コンピュータが、異常が発生した車両をその場で復旧させることができるか否かを判断する。第3判断では、コンピュータが、異常が発生した車両が手動運転で走行できるか否かを判断する。レッカー手配では、異常が発生した車両をその場で復旧させることができず、かつ、異常が発生した車両が手動運転で走行できない場合に、コンピュータが車両をレッカー移動させるためのレッカー手配を行なう。
【0028】
上記車両管理方法によっても、前述したコンピュータと同様、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示した車両の制御システムの詳細を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る自動運転制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図1に示した車両が備える制御装置及び各種システムの詳細について説明するための図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る車両管理方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した車両管理方法において、異常が生じた車両を復旧させるための処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】
図6に示した復旧処理において、その場での復旧対応(車両の移動を伴わない復旧対応)の詳細を示すフローチャートである。
【
図8】
図6に示した復旧処理において、車両の移動を伴う復旧対応の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図5に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。
【
図10】
図5に示した処理の第2変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0032】
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の概略構成を示す図である。
図1を参照して、車両1は、自動運転キット(以下、「ADK(Autonomous Driving Kit)」と表記する)200と、車両プラットフォーム(以下、「VP(Vehicle Platform)」と表記する)2とを備える。
【0033】
VP2は、ベース車両100の制御システムと、ベース車両100内に設けられた車両制御インターフェースボックス(以下、「VCIB(Vehicle Control Interface Box)」と表記する)111とを含む。VCIB111は、CAN(Controller Area Network)のような車内ネットワークを通じてADK200と通信してもよい。なお、
図1では、ベース車両100とADK200とが離れた位置に示されているが、ADK200は、実際にはベース車両100に取り付けられている。この実施の形態では、ベース車両100のルーフトップにADK200が取り付けられる。ただし、ADK200の取り付け位置は適宜変更可能である。
【0034】
ベース車両100は、たとえば市販されるxEV(電動車)である。xEVは、電力を動力源の全て又は一部として利用する車両である。この実施の形態では、ベース車両100としてBEV(電気自動車)を採用する。ただしこれに限られず、ベース車両100は、BEV以外のxEV(HEV、PHEV、FCEVなど)であってもよい。ベース車両100が備える車輪の数は、たとえば4輪である。ただしこれに限られず、ベース車両100が備える車輪の数は、3輪であってもよいし、5輪以上であってもよい。
【0035】
ベース車両100の制御システムは、統合制御マネージャ115に加えて、ベース車両100を制御するための各種システムおよび各種センサを含む。統合制御マネージャ115は、ベース車両100に含まれる各種センサからの信号(センサ検出信号)に基づいて、ベース車両100の動作に関わる各種システムを統合して制御する。
【0036】
この実施の形態では、統合制御マネージャ115が制御装置150を含む。制御装置150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、及び記憶装置153を含む。プロセッサ151としては、たとえばCPU(Central Processing Unit)を採用できる。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、各種の車両制御(たとえば、ADK200からの指示に従う自動運転制御)が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアではなく、専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。なお、制御装置150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0037】
ベース車両100は、ブレーキシステム121と、ステアリングシステム122と、パワートレーンシステム123と、アクティブセーフティシステム125と、ボディシステム126とを含む。これらのシステムは、統合制御マネージャ115によって統合制御される。この実施の形態では、各システムがコンピュータを備える。そして、システムごとのコンピュータが車内ネットワーク(たとえば、CAN)を通じて統合制御マネージャ115と通信する。以下では、各システムが備えるコンピュータを、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する。
【0038】
ブレーキシステム121は、ベース車両100の各車輪に設けられた制動装置と、制動装置を制御するECUとを含む。この実施の形態では、制動装置として油圧式ディスクブレーキ装置が採用される。ベース車両100は、車輪速センサ127A,127Bを備える。車輪速センサ127Aは、ベース車両100の前輪に設けられ、前輪の回転速度を検出する。車輪速センサ127Bは、ベース車両100の後輪に設けられ、後輪の回転速度を検出する。ブレーキシステム121のECUは、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を統合制御マネージャ115へ出力する。
【0039】
ステアリングシステム122は、ベース車両100の操舵装置と、操舵装置を制御するECUとを含む。操舵装置は、たとえば、アクチュエータにより操舵角の調整が可能なラック&ピニオン式のEPS(Electric Power Steering)を含む。ベース車両100は、ピニオン角センサ128を備える。ピニオン角センサ128は、操舵装置を構成するアクチュエータの回転軸に連結されたピニオンギヤの回転角(ピニオン角)を検出する。ステアリングシステム122のECUは、ピニオン角センサ128で検出されたピニオン角を統合制御マネージャ115へ出力する。
【0040】
パワートレーンシステム123は、ベース車両100が備える車輪の少なくとも1つに設けられたEPB(Electric Parking Brake)と、ベース車両100のトラッスミッションに設けられたP-Lock装置と、シフトレンジを選択可能に構成されるシフト装置と、ベース車両100の駆動源と、パワートレーンシステム123に含まれる各装置を制御するECUとを含む。EPBは、前述の制動装置とは別に設けられ、電動アクチュエータによって車輪を固定状態にする。P-Lock装置は、たとえば、アクチュエータにより駆動可能なパーキングロックポールによってトランスミッションの出力軸の回転位置を固定状態にする。詳細は後述するが、この実施の形態では、ベース車両100の駆動源として、バッテリから電力の供給を受けるモータを採用する。パワートレーンシステム123のECUは、EPBとP-Lock装置との各々による固定化の有無、シフト装置によって選択されたシフトレンジ、並びにバッテリ及びモータ(後述する
図4参照)の各々の状態を、統合制御マネージャ115へ出力する。
【0041】
アクティブセーフティシステム125は、走行中の車両1について衝突の可能性を判定するECUを含む。ベース車両100は、車両1の前方及び後方を含む周辺状況を検出するカメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cを備える。アクティブセーフティシステム125のECUは、カメラ129A及びレーダセンサ129B,129Cから受信した信号を用いて、衝突の可能性があるか否かを判定する。アクティブセーフティシステム125によって衝突の可能性があると判定された場合には、統合制御マネージャ115が、ブレーキシステム121に制動指令を出力して、車両1の制動力を増加させる。この実施の形態に係るベース車両100が初期(出荷時)からアクティブセーフティシステム125を備える。しかしこれに限られず、ベース車両に対して後付け可能なアクティブセーフティシステムが採用されてもよい。
【0042】
ボディシステム126は、ボディ系部品(たとえば、方向指示器、ホーン、及びワイパー)と、ボディ系部品を制御するECUとを備える。ボディシステム126のECUは、マニュアルモードでは、ユーザ操作に従ってボディ系部品を制御し、自律モードでは、ADK200からVCIB111及び統合制御マネージャ115を経て受信する指令に従ってボディ系部品を制御する。
【0043】
車両1は自動運転可能に構成される。VCIB111は、車両制御インターフェースとして機能する。車両1が自動運転で走行するときには、統合制御マネージャ115とADK200とがVCIB111を介して相互に信号のやり取りを行ない、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が自律モード(Autonomous Mode)による走行制御(すなわち、自動運転制御)を実行する。なお、ADK200は、ベース車両100から取り外すことも可能である。ベース車両100は、ADK200が取り外された状態でも、ユーザの運転によりベース車両100単体で走行することができる。ベース車両100単体で走行する場合には、ベース車両100の制御システムが、マニュアルモードによる走行制御(すなわち、ユーザ操作に応じた走行制御)を実行する。
【0044】
この実施の形態では、ADK200が、通信される各信号を定義するAPI(Application Program Interface)に従ってVCIB111との間で信号のやり取りを行なう。ADK200は、上記APIで定義された各種信号を処理するように構成される。ADK200は、たとえば、車両1の走行計画を作成し、作成された走行計画に従って車両1を走行させるための制御を要求する各種コマンドを、上記APIに従ってVCIB111へ出力する。以下、ADK200からVCIB111へ出力される上記各種コマンドの各々を、「APIコマンド」とも称する。また、ADK200は、ベース車両100の状態を示す各種信号を上記APIに従ってVCIB111から受信し、受信したベース車両100の状態を走行計画の作成に反映する。以下、ADK200がVCIB111から受信する上記各種信号の各々を、「APIシグナル」とも称する。APIコマンド及びAPIシグナルはどちらも、上記APIで定義された信号に相当する。ADK200の構成の詳細については後述する(
図2参照)。
【0045】
VCIB111は、ADK200から各種APIコマンドを受信する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドを、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換する。以下、統合制御マネージャ115が処理可能な信号の形式に変換されたAPIコマンドを、「制御コマンド」とも称する。VCIB111は、ADK200からAPIコマンドを受信すると、そのAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ出力する。
【0046】
統合制御マネージャ115の制御装置150は、ベース車両100の制御システムにおいて検出されたベース車両100の状態を示す各種信号(たとえば、センサ信号、又はステータス信号)を、VCIB111を介してADK200へ送る。VCIB111は、ベース車両100の状態を示す信号を統合制御マネージャ115から逐次受信する。VCIB111は、統合制御マネージャ115から受信した信号に基づいてAPIシグナルの値を決定する。また、VCIB111は、必要に応じて、統合制御マネージャ115から受信した信号をAPIシグナルの形式に変換する。そして、VCIB111は、得られたAPIシグナルをADK200へ出力する。VCIB111からADK200へは、ベース車両100の状態を示すAPIシグナルがリアルタイムで逐次出力される。
【0047】
この実施の形態において、統合制御マネージャ115とVCIB111との間では、たとえば自動車メーカーによって定義された汎用性の低い信号がやり取りされ、ADK200とVCIB111との間では、より汎用性の高い信号(たとえば、公開されたAPI(Open API)で定義された信号)がやり取りされる。VCIB111は、ADK200と統合制御マネージャ115との間で信号の変換を行なうことにより、ADK200からの指令に従って統合制御マネージャ115が車両制御を行なうことを可能にする。ただし、VCIB111の機能は、上記信号の変換を行なう機能のみには限定されない。たとえば、VCIB111は、所定の判断を行ない、その判断結果に基づく信号(たとえば、通知、指示、又は要求を行なう信号)を、統合制御マネージャ115とADK200との少なくとも一方へ送ってもよい。VCIB111の構成の詳細については後述する(
図2参照)。
【0048】
ベース車両100は、通信装置130をさらに備える。通信装置130は、各種通信I/F(インターフェース)を含む。制御装置150は、通信装置130を通じて車両1の外部の装置(たとえば、後述するモバイル端末UT及びサーバ500)と通信を行なうように構成される。通信装置130は、移動体通信網(テレマティクス)にアクセス可能な無線通信機(たとえば、DCM(Data Communication Module))を含む。通信装置130は移動体通信網を介してサーバ500と通信する。無線通信機は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。また、通信装置130は、車内又は車両周辺の範囲内に存在するモバイル端末UTと直接通信するための通信I/Fを含む。通信装置130とモバイル端末UTとは、無線LAN(Local Area Network)、NFC(Near Field Communication)、又はBluetooth(登録商標)のような近距離通信を行なってもよい。
【0049】
モバイル端末UTは、車両1を利用するユーザによって携帯される端末である。この実施の形態では、モバイル端末UTとして、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、モバイル端末UTとしては、任意のモバイル端末を採用可能であり、ラップトップ、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ又はスマートグラス)、又は電子キーなども採用可能である。
【0050】
上述の車両1は、MaaS(Mobility as a Service)システムの構成要素の1つとして採用され得る。MaaSシステムは、たとえばMSPF(Mobility Service Platform)を含む。MSPFは、各種モビリティサービス(たとえば、ライドシェア事業者、カーシェア事業者、保険会社、レンタカー事業者、タクシー事業者等により提供される各種モビリティサービス)が接続される統一プラットフォームである。サーバ500は、MSPFにおいてモビリティサービスのための情報の管理及び公開を行なうコンピュータである。サーバ500は、各種モビリティの情報を管理し、事業者からの要求に応じて情報(たとえば、API、及び、モビリティ間の連携に関する情報)を提供する。サービスを提供する事業者は、MSPF上で公開されたAPIを用いて、MSPFが提供する様々な機能を利用することができる。たとえば、ADKの開発に必要なAPIは、MSPF上に公開されている。
【0051】
サーバ500は、プロセッサ501、RAM502、記憶装置503、及びHMI(Human Machine Interface)504を含む。記憶装置503は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置503には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。HMI(Human Machine Interface)504は入力装置及び表示装置を含む。HMI504は、タッチパネルディスプレイであってもよい。HMI504は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0052】
図2は、車両1の制御システムの詳細を示す図である。
図1とともに
図2を参照して、ADK200は、車両1の自動運転を行なうための自動運転システム(以下、「ADS(Autonomous Driving System)」と表記する)202を含む。ADS202は、コンピュータ210と、HMI(Human Machine Interface)230と、認識用センサ260と、姿勢用センサ270と、センサクリーナ290とを含む。
【0053】
コンピュータ210は、プロセッサと、APIを利用した自動運転ソフトウェアを記憶する記憶装置とを備え、プロセッサによって自動運転ソフトウェアを実行可能に構成される。自動運転ソフトウェアにより、自動運転に関する制御(後述する
図3参照)が実行される。自動運転ソフトウェアは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。コンピュータ210は、通信モジュール210A及び210Bをさらに備える。
【0054】
HMI230は、ユーザとコンピュータ210とが情報をやり取りするための装置である。HMI230は、入力装置及び報知装置を含む。ユーザは、HMI230を通じて、コンピュータ210に指示又は要求を行なったり、自動運転ソフトウェアで使用されるパラメータ(ただし、変更が許可されているものに限る)の値を変更したりすることができる。HMI230は、入力装置及び報知装置の両方の機能を兼ね備えるタッチパネルディスプレイであってもよい。
【0055】
認識用センサ260は、車両1の外部環境を認識するための情報(以下、「環境情報」とも称する)を取得する各種センサを含む。認識用センサ260は、車両1の環境情報を取得し、コンピュータ210へ出力する。環境情報は、自動運転制御に用いられる。この実施の形態では、認識用センサ260が、車両1の周囲(前方及び後方を含む)を撮像するカメラと、電磁波又は音波によって障害物を検知する障害物検知器(たとえば、ミリ波レーダ及び/又はライダー)とを含む。コンピュータ210は、たとえば、認識用センサ260から受信する環境情報を用いて、車両1から認識可能な範囲に存在する人、物体(他の車両、柱、ガードレールなど)、及び道路上のライン(たとえば、センターライン)を認識できる。認識のために、人工知能(AI)又は画像処理用プロセッサが用いられてもよい。
【0056】
姿勢用センサ270は、車両1の姿勢に関する情報(以下、「姿勢情報」とも称する)を取得し、コンピュータ210へ出力する。姿勢用センサ270は、車両1の加速度、角速度、及び位置を検出する各種センサを含む。この実施の形態では、姿勢用センサ270が、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサを含む。IMUは、車両1の前後方向、左右方向、及び上下方向の各々の加速度、並びに車両1のロール方向、ピッチ方向、及びヨー方向の各々の角速度を検出する。GPSセンサは、複数のGPS衛星から受信する信号を用いて車両1の位置を検出する。自動車及び航空機の分野においてIMUとGPSとを組み合わせて高い精度で姿勢を計測する技術が公知である。コンピュータ210は、たとえば、こうした公知の技術を利用して、上記姿勢情報から車両1の姿勢を計測してもよい。
【0057】
センサクリーナ290は、車外で外気にさらされるセンサ(たとえば、認識用センサ260)の汚れを除去する装置である。たとえば、センサクリーナ290は、洗浄液及びワイパーを用いて、カメラのレンズ及び障害物検知器の出射口をクリーニングするように構成されてもよい。
【0058】
車両1においては、安全性を向上させるため、所定の機能(たとえば、ブレーキ、ステアリング、及び車両固定)に冗長性を持たせている。ベース車両100の制御システム102は、同等の機能を実現するシステムを複数備える。具体的には、ブレーキシステム121はブレーキシステム121A及び121Bを含む。ステアリングシステム122はステアリングシステム122A及び122Bを含む。パワートレーンシステム123は、EPBシステム123AとP-Lockシステム123Bとを含む。各システムがECUを備える。同等の機能を実現する複数のシステムのうち、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、車両1において当該機能は正常に働く。
【0059】
VCIB111は、VCIB111AとVCIB111Bとを含む。VCIB111A及び111Bの各々はコンピュータを含む。コンピュータ210の通信モジュール210A、210Bは、それぞれVCIB111A、111Bのコンピュータと通信可能に構成される。VCIB111とVCIB111Bとは、相互に通信可能に接続されている。VCIB111A及び111Bの各々は、単独で動作可能であり、一方に異常が生じても、他方が正常に動作することで、VCIB111は正常に動作する。VCIB111A及び111Bはどちらも統合制御マネージャ115を介して上記各システムに接続されている。ただし、
図2に示すように、VCIB111AとVCIB111Bとでは接続先が一部異なっている。
【0060】
この実施の形態では、車両1を加速させる機能については、冗長性を持たせていない。パワートレーンシステム123は、車両1を加速させるためのシステムとして、推進システム123Cを含む。
【0061】
車両1は、自律モードとマニュアルモードとを切替え可能に構成される。ADK200がVCIB111から受信するAPIシグナルには、車両1が自律モードとマニュアルモードとのいずれの状態かを示す信号(以下、「自律ステート」と表記する)が含まれる。ユーザは、所定の入力装置(たとえば、HMI230又はモバイル端末UT)を通じて、自律モードとマニュアルモードとのいずれかを選択できる。ユーザによっていずれかの運転モードが選択されると、選択された運転モードに車両1がなり、選択結果が自律ステートに反映される。ただし、車両1が自動運転可能な状態になっていなければ、ユーザが自律モードを選択しても自律モードに移行しない。車両1の運転モードの切替えは、統合制御マネージャ115によって行なわれてもよい。統合制御マネージャ115は、車両1の状況に応じて自律モードとマニュアルモードとを切り替えてもよい。
【0062】
車両1が自律モードであるときには、コンピュータ210が、VP2から車両1の状態を取得して、車両1の次の動作(たとえば、加速、減速、及び曲がる)を設定する。そして、コンピュータ210は、設定された車両1の次の動作を実現するための各種指令を出力する。コンピュータ210がAPIソフトウェア(すなわち、APIを利用した自動運転ソフトウェア)を実行することにより、自動運転制御に関する指令がADK200からVCIB111を通じて統合制御マネージャ115へ送信される。
【0063】
図3は、この実施の形態に係る自動運転制御においてADK200が実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、車両1が自律モードであるときに、APIに対応する周期(API周期)で繰り返し実行される。車両1の運転モードがマニュアルモードから自律モードに切り替わると、自動運転開始を示す開始信号が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信された後、以下に説明する
図3に示す一連の処理が開始される。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0064】
図1及び
図2とともに
図3を参照して、S101では、コンピュータ210が現在の車両1の情報を取得する。たとえば、コンピュータ210は、認識用センサ260及び姿勢用センサ270から車両1の環境情報及び姿勢情報を取得する。さらに、コンピュータ210はAPIシグナルを取得する。この実施の形態では、車両1が自律モード及びマニュアルモードのいずれである場合にも、車両1の状態を示すAPIシグナルがVCIB111からADK200へリアルタイムで逐次出力されている。自動運転制御の精度を向上させるために、自律モードにおいてはマニュアルモードよりも短い周期で統合制御マネージャ115からADK200に向けて車両1の状態が逐次送信されてもよい。コンピュータ210が取得するAPIシグナルには、前述の自律ステートのほか、車輪速センサ127A,127Bで検出された各車輪の回転方向及び回転速度を示す信号などが含まれる。
【0065】
S102では、コンピュータ210が、S101で取得した車両1の情報に基づいて走行計画を作成する。たとえば、コンピュータ210が、車両1の挙動(たとえば、車両1の姿勢)を計算し、車両1の状態及び外部環境に適した走行計画を作成する。走行計画は、所定期間における車両1の挙動を示すデータである。すでに走行計画が存在する場合には、S102においてその走行計画が修正されてもよい。
【0066】
S103では、コンピュータ210が、S102で作成された走行計画から制御的な物理量(加速度、タイヤ切れ角など)を抽出する。S104では、コンピュータ210が、S103で抽出された物理量をAPI周期ごとに分割する。S105では、コンピュータ210が、S104で分割された物理量を用いてAPIソフトウェアを実行する。このようにAPIソフトウェアが実行されることにより、走行計画に従う物理量を実現するための制御を要求するAPIコマンド(推進方向コマンド、推進コマンド、制動コマンド、車両固定コマンドなど)がADK200からVCIB111へ送信される。VCIB111は、受信したAPIコマンドに対応する制御コマンドを統合制御マネージャ115へ送信し、統合制御マネージャ115は、その制御コマンドに従って車両1の自動運転制御を行なう。
【0067】
続くS106では、車両1が自律モードであるか否かを、コンピュータ210が判断する。自律モードが継続している間は(S106にてYES)、上記S101~S105の処理が繰り返し実行されることにより、車両1の自動運転が実行される。他方、車両1がマニュアルモードになると(S106にてNO)、S107において、自動運転終了を示す終了信号が車両1の識別情報とともに車両1(通信装置130)からサーバ500へ送信された後、
図3に示す一連の処理は終了する。この実施の形態では、コンピュータ210とVCIB111と統合制御マネージャ115とが協働して車両1を自動運転で走行させるための制御を実行する。車両1は、有人/無人のいずれの状態においても自動運転を行なうことができる。なお、自動運転制御は、
図3に示した制御に限られず、他の制御(公知の自動運転制御)が採用されてもよい。
【0068】
図4は、車両1が備える制御装置150及び各種システムの詳細について説明するための図である。
図1及び
図2とともに
図4を参照して、車両1は、MG(Motor Generator)20と、ECU21と、PCU(Power Control Unit)22と、制動装置30と、ブレーキセンサ30aと、空気圧センサ30bと、有人センサ40と、バッテリ160と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」とも称する)170と、リーダ180と、駆動輪Wとを備える。MG20、ECU21、及びPCU22は、推進システム123Cに含まれる。制動装置30及びブレーキセンサ30aは、ブレーキシステム121(
図1)に含まれる。
【0069】
バッテリ160は、推進システム123Cに電力を供給する。バッテリ160としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。バッテリ160は、接触充電(プラグイン充電)可能に構成される。
【0070】
バッテリ160には、監視モジュール160aが設けられている。監視モジュール160aは、バッテリ160の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果を統合制御マネージャ115へ出力する。監視モジュール160aは、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。制御装置150は、監視モジュール160aの出力に基づいてバッテリ160の状態(たとえば、温度、電流、電圧、及びSOC)を取得することができる。SOCは、蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0071】
推進システム123Cは、バッテリ160に蓄えられた電力を用いて車両1の走行駆動力を発生させる。MG20は、たとえば三相交流モータジェネレータである。PCU22は、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)とを含む。PCU22は、ECU21によって制御される。SMRは、バッテリ160からMG20までの電路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両1の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0072】
MG20は、PCU22によって駆動され、車両1の駆動輪Wを回転させる。また、MG20は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ160に供給する。PCU22は、バッテリ160から供給される電力を用いてMG20を駆動する。車両1が備える走行用のモータ(MG20)の数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行用のモータはインホイールモータであってもよい。
図4には、1つの駆動輪Wのみを模式的に示しているが、車両1における駆動輪Wの数及び駆動方式は任意である。車両1の駆動方式は、前輪駆動、後輪駆動、4輪駆動のいずれであってもよい。
【0073】
車両1が備える各車輪(駆動輪Wを含む)には、制動装置30と、制動装置30によって車輪に付与される制動力を検出するブレーキセンサ30aと、タイヤの空気圧を検出する空気圧センサ30bとが設けられている。ブレーキセンサ30aは、ブレーキパッド(又は、ホイールシリンダ)に加わる油圧を検出する油圧センサであってもよい。4つのブレーキセンサ30aによってそれぞれ検出された車輪ごとの制動力(たとえば、制動力に対応する油圧)は統合制御マネージャ115へ出力される。また、空気圧センサ30bの検出結果も、統合制御マネージャ115へ出力される。
【0074】
有人センサ40は、車両1の中に人が存在するか否かを検出するように構成される。より詳しくは、有人センサ40は、車両1の車内環境を認識するための情報を取得し、取得した情報を統合制御マネージャ115へ出力する。有人センサ40は、車内に向けたカメラ及び赤外線センサの少なくとも一方を含む。有人センサ40は、着座センサ及びシートベルトセンサの少なくとも一方をさらに含んでもよい。制御装置150は、有人センサ40の出力に基づいて、車両1が有人/無人のいずれの状態かを判別することができる。
【0075】
NAVI170は、タッチパネルディスプレイと、GPSモジュールと、記憶装置と(いずれも図示せず)を含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。タッチパネルディスプレイは、車内のユーザからの入力を受け付けたり、地図及びその他の情報を表示したりする。GPSモジュールは、図示しないGPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI170は、GPS信号を用いて車両1の位置を特定することができる。NAVI170は、地図上に車両1の位置をリアルタイムで表示するように構成される。NAVI170は、地図情報を参照して、車両1の現在位置から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なうように構成される。NAVI170は、OTAによって地図情報を逐次更新してもよい。
【0076】
リーダ180は、画像から所定の識別情報を読み取るように構成される。より詳しくは、リーダ180は、画像を撮像し、画像から所定のコードを抽出し、デコード処理を行なう。画像から抽出されたコードは、上記デコード処理により所定の識別情報に変換される。そして、リーダ180は、画像から読み取った識別情報を統合制御マネージャ115へ出力する。ただし、リーダ180の読み取り方式は、上記に限られず任意である。たとえば、リーダ180は、RFID(Radio Frequency Identification)リーダであってもよい。
【0077】
車両管理者は、サーバ500を用いて車両1を管理する。この実施の形態では、車両1についてのみ言及するが、車両管理者は、サーバ500を用いて多数の車両を管理してもよい。車両管理者は、旅客輸送サービスを提供してもよいし、配車サービスを提供してもよい。サーバ500は、ユーザごとのサービス利用料金を管理してもよい。
【0078】
車両1は、運転者不在の状態で自動運転によってサービスを提供する。すなわち、車両1の中には車両管理者が存在しない。基本的にはサービス利用者のみが車両1に乗車し、サービス利用者が全員降車すると、車両1は無人状態になる。車両1は、たとえば路線バスのように、運行領域内に予め決められた経路を自動運転で巡回走行してもよい。また、車両1は、都度の要求に応じて経路を決定し、決定された経路(オンデマンド経路)に従って自動運転による走行を実行してもよい。車両1の自動運転中は、
図3に示した処理が実行され、制御装置150がADK200からの指令に従って車両1の各種システム(たとえば、
図2に示したブレーキシステム121、ステアリングシステム122、パワートレーンシステム123、アクティブセーフティシステム125、及びボディシステム126)を制御する。
【0079】
サーバ500は、車両1を利用中のユーザを特定し、そのユーザに関する情報を車両管理者に報知することができる。サーバ500は、記憶装置503に登録された各ユーザに関する情報(ユーザ情報)を管理する。ユーザを識別するための識別情報(ユーザID)がユーザごとに付与されており、サーバ500はユーザ情報をユーザIDで区別して管理している。この実施の形態では、サーバ500に登録された各ユーザがモバイル端末UTを携帯する。ユーザ情報は、たとえば、ユーザの車両整備スキルの程度を示す車両整備スキル情報と、ユーザの運転スキルの程度を示す運転スキル情報と、ユーザが携帯するモバイル端末UTのアドレスとを含む。運転スキル情報は、車両1を手動運転するための免許の有無、及び、運転熟練度を示す。
【0080】
モバイル端末UTには、車両1を利用するためのアプリケーションソフトウェア(以下、「モバイルアプリ」と称する)がインストールされている。ユーザが車両1を利用するときには、当該ユーザの識別情報(ユーザID)を含む画像をモバイル端末UTが表示する。そして、画像を表示したモバイル端末UTをユーザが車両1のリーダ180にかざすと、リーダ180が読み取ったユーザIDが車両1からサーバ500へ送信される。サーバ500は、受信したユーザIDに基づいて、車両1を利用中のユーザを特定する。サーバ500は、車両管理者からの要求に応じて、ユーザIDに対応するユーザ情報を記憶装置503から取得し、HMI504に表示する。また、サーバ500は、車両1からの要求に応じて、車両1を利用中のユーザに関する情報を車両1へ送信する。なお、車両1の不正な利用を抑制するため、車両1の出入口(乗降車口)にゲート(改札)を設けてもよい。そして、リーダ180がユーザIDの読取りに成功したときにゲートが開き、ユーザがゲートを通過すると再びゲートが閉じるようにしてもよい。
【0081】
制御装置150は、診断部51及び対処部52を含む。制御装置150においては、たとえば、プロセッサ151と、プロセッサ151により実行されるプログラムとによって、これら各部が具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0082】
車両1の自動運転中において、診断部51は、車両1に異常が生じたか否かを判断する。診断部51は、たとえば車両1に搭載された各種センサのいずれかの検出値が異常値を示したときに、車両1に異常が生じたと判断してもよい。また、診断部51は、車両1に搭載された異常検知器(たとえば、図示しない漏電検知器、断線検知器、又は脱落検知器)によって異常が検知された場合に、車両1に異常が生じたと判断してもよい。
【0083】
さらに、診断部51は、異常が生じた車両1について自動運転による走行を継続できるか否かを判断する。そして、診断部51は、異常が生じて自動運転による走行を継続できなくなった車両1について、その場で車両1を復旧させることができるか否か、及び、車両1が手動運転で走行できるか否かを判断する。対処部52は、診断部51による判断結果に応じて所定の処理を実行するように構成される。
【0084】
制御装置150は、自動運転中の車両1に異常が検出された場合に、以下に説明する
図5に示す一連の処理を実行する。
図5は、自動運転中の車両1に異常が生じたときに制御装置150によって実行される処理を示すフローチャートである。なお、フローチャート中の判断処理(S11,S13)は診断部51によって実行され、その判断結果に基づく処理(S12,S131,S132,S15)は対処部52によって実行される。
【0085】
図1~
図4とともに
図5を参照して、S11では、制御装置150が、異常が生じた車両1について自動運転による走行を継続できるか否かを判断する。車両1が自動運転による走行を継続できる場合には(S11にてYES)、車両1は、S15において、自動運転のまま所定の場所へ移動する。制御装置150は、ADK200と協働して自動運転制御(
図3参照)を実行する。所定の場所としては、車両1を復旧させるための作業(車両1から異常の要因を取り除くための作業)が行なわれる場所が設定される。所定の場所は、車両1の販売店であってもよいし、自動車整備工場であってもよい。車両1が上記所定の場所に到着すると、車両1を復旧させるための作業が行なわれる。これにより、車両1は正常な状態(異常がない状態)に戻る。S15の処理が実行されると、
図5に示す一連の処理は終了する。
【0086】
車両1が自動運転による走行を継続できない場合には(S11にてNO)、制御装置150が、S12において、車両1に異常が生じた旨を知らせる第1報知処理と、車両1の手動停止を要求する第2報知処理とを、所定の報知装置(たとえば、NAVI170及びHMI230の少なくとも一方)に行なわせる。制御装置150は、第1報知処理によって警報を鳴らしてもよい。上記所定の報知装置は、音声及び表示の少なくとも一方により、第2報知処理を行なってもよい。
【0087】
続けて、制御装置150は、S13において、S12の要求(第2報知処理)に応じて車両1に手動運転操作がなされたか否かを判断する。車両1に手動運転操作がなされた場合には(S13にてYES)、S131において、車両1が自律モード(自動運転)からマニュアルモード(手動運転)に切り替わり(オーバーライド)、車内のユーザが手動運転によって車両1を停車させることが可能になる。この際、手動運転による車両1の加速は制限されてもよい。また、手動運転による車両1の走行中に衝突の可能性があると判定された場合には、アクティブセーフティシステム125によって車両1は停止する。手動運転による車両1の走行中は、制御装置150が、上記所定の報知装置を通じて、車内のユーザに手動運転による停車を要求する。そして、手動運転によって車両1が停車すると、処理がS14に進む。
【0088】
車両1に手動運転操作がなされない場合には(S13にてNO)、処理がS132に進む。たとえば、車両1が無人状態である場合には、S13においてNOと判断される。車両1が有人状態であっても、車両1に手動運転操作がなされない場合には、S13においてNOと判断される。制御装置150は、S12の要求(第2報知処理)から所定時間が経過しても車両1に手動運転操作がなされない場合に、S13においてNOと判断してもよい。
【0089】
S132では、制御装置150が、ブレーキシステム121によって車両1を停車させる。具体的には、制御装置150は、ブレーキシステム121に制動指令を出力して車両1の制動力を増加させることにより、車両1を停止させる。こうした自動ブレーキによって車両1が停車すると、処理がS14に進む。
【0090】
S14では、車両1を復旧させるための処理、詳しくは以下に説明する
図6に示す一連の処理が実行される。
図6は、S14の詳細を示すフローチャートである。なお、フローチャート中の判断処理(S21,S22)は診断部51によって実行され、その判断結果に基づく処理(S24,S25)は対処部52によって実行される。
【0091】
図1~
図4とともに
図6を参照して、S21では、車両1に生じた異常の対処方法が自明か否かを、制御装置150が判断する。記憶装置153には、事前に想定された異常の項目及びその対処方法がエラーコードと紐付けられて記憶されている。車両1に生じた異常がいずれかの項目に該当する場合には、制御装置150は、S21においてYESと判断し、所定の報知装置(たとえば、NAVI170及びHMI230の少なくとも一方)にエラーコード及び対処方法を表示させる。エラーコードは異常の種類を示す。その後、S22において、次の診断が行なわれる。
【0092】
S22では、異常が生じた車両1を所定時間以内に復旧させることが可能か否かを、制御装置150が判断する。具体的には、制御装置150は、車両1を利用中のユーザに関する情報(ユーザ情報)をサーバ500に要求し、サーバ500から受信したユーザ情報を用いてS22の判断を行なう。制御装置150は、エラーコードが示す復旧作業の難易度と、ユーザ情報が示す車両整備スキルとに基づいてS22の判断を行なってもよい。制御装置150は、復旧作業の難易度が所定の第1水準を超える場合に、S22においてNOと判断してもよい。制御装置150は、ユーザの車両整備スキルが所定の第2水準を下回る場合に、S22においてNOと判断してもよい。制御装置150は、復旧作業の難易度が第1水準を超えず、かつ、ユーザの車両整備スキルが第2水準に達している場合に、S22においてYESと判断してもよい。なお、車両1が無人状態である場合には、S22においてNOと判断される。
【0093】
異常が生じた車両1を所定時間以内に復旧させることができると判断された場合には(S22にてYES)、S23において、その場で車両1の復旧対応が行なわれる。S21及びS22の両方でYESと判断されたことは、その場(停車位置)で車両1を復旧させることができると診断部51が判断したことを意味する。
図7は、S23の詳細を示すフローチャートである。なお、フローチャート中の判断処理(S33,S35,S36)は診断部51によって実行され、その判断結果に基づく処理(S34,S37,S38)は対処部52によって実行される。
【0094】
図1~
図4とともに
図7を参照して、S31では、制御装置150が車両1の状態(たとえば、
図6のS21で特定されたエラーコード及び異常項目)を所定の報知装置に表示させる。この実施の形態では、S31における所定の報知装置を、車両1を利用中のユーザが携帯するモバイル端末UTとする。モバイル端末UTはモバイルアプリに従って動作してもよい。ただしこれに限られず、モバイル端末UTに代えて又は加えて、車両1に搭載された端末(たとえば、NAVI170又はHMI230)が採用されてもよい。
【0095】
続くS32では、制御装置150が、復旧手順を示すマニュアルをモバイル端末UTに表示させる。エラーコードごとのマニュアルが予め記憶装置153に記憶されてもよい。また、制御装置150は、サーバ500からマニュアルを取得してもよい。この実施の形態では、S32において、
図7に示す画面D1がモバイル端末UTに表示される。画面D1は、車両1の状態と、マニュアルと、中止ボタンB1と、ヘルプボタンB2と、完了ボタンB3とを表示する。
【0096】
続くS33では、ユーザによってヘルプボタンB2が操作されたか否かを、制御装置150が判断する。ヘルプボタンB2が操作された場合には(S33にてYES)、制御装置150は、S34において音声ガイドをユーザに行なう。たとえば、AI(人工知能)による音声ガイドが行なわれてもよい。音声ガイド用のAIが予め記憶装置153に記憶されてもよい。たとえばユーザがモバイル端末UTを通じてマニュアル番号及びステップ番号をAIに伝えることで、該当する作業に関する説明(助言)がAIによって行なわれる。ただしこれに限られず、AI(人工知能)による音声ガイドに代えて、オペレータ(人間)との通話が行なわれてもよい。
【0097】
上記音声ガイド(S34)が終了すると、処理はS35に進む。また、画面D1中のヘルプボタンB2が操作されていない場合には(S33にてNO)、音声ガイド(S34)が行なわれることなく、処理がS35に進む。S35では、作業中止条件が成立するか否かを、制御装置150が判断する。作業中止条件が成立しない場合には(S35にてNO)、制御装置150が、S36において、復旧作業が完了したか否かを判断する。
【0098】
この実施の形態では、ユーザが画面D1中の中止ボタンB1を操作すると、作業中止条件が成立する。モバイル端末UTに対して中止ボタンB1を操作することは、作業中止を示す入力に相当する。また、車両1に異常が発生してから、復旧作業が完了する前に所定時間が経過した場合にも、作業中止条件が成立する。たとえば、
図7に示す一連の処理が開始されたタイミングを、車両1に異常が発生したタイミングとみなしてもよい。作業中止条件が成立すると(S35にてYES)、
図6のS22においてNOと判断された場合と同じ処理(すなわち、後述する
図6のS25及びS26と同じ処理)が、S38及びS39において実行された後、
図7に示す一連の処理が終了する。すなわち、診断部51は、作業中止条件が成立すると、異常が生じた車両1をその場で復旧させることができるとした判断を撤回して、異常が生じた車両1をその場で復旧させることができないと判断する。
【0099】
この実施の形態では、ユーザが画面D1中の完了ボタンB3を操作すると、車両1が正常な状態になったか(車両1から異常の要因を取り除かれたか)否かのチェックが、制御装置150によって実行される。そして、車両1が正常な状態になった(復旧した)と制御装置150が判断した場合には、S36においてYESと判断される。他方、車両1が正常な状態になっていない(復旧していない)と制御装置150が判断した場合には、S36においてNOと判断される。また、ユーザが完了ボタンB3を押していない場合も、S36においてNOと判断される。S36においてNOと判断されると、処理がS32に戻る。
【0100】
復旧作業が完了した場合には(S36にてYES)、S37において制御装置150が車両1の自動運転を再開した後、
図7に示す一連の処理(ひいては、
図6のS23)が終了する。これにより、
図5のS14が終了し、
図5に示した一連の処理が終了する。
【0101】
再び
図1~
図4とともに
図6を参照して、S21とS22とのいずれかにおいてNOと判断されたことは、その場(停車位置)で車両1を復旧させることができないと診断部51が判断したことを意味する。この場合、交通の妨げにならないように、車両1を作業場に移動させてから車両1の復旧作業が行なわれる。車両1の移動方法については後述する。以下に説明するS24及びS25の各々では、作業場が決定される。
【0102】
車両1に生じた異常が事前に想定された異常ではない(記憶装置153に記憶されたいずれの異常項目にも該当しない)場合には、制御装置150は、S21においてNOと判断し、処理はS24に進む。S24では、制御装置150が、作業場として車両1の販売店(ディーラ)を設定する。対処方法が自明でない異常については販売店で対処することが望ましいケースが多い。復旧作業を販売店で行なうことで、対処方法が自明でない異常にも適切に対処しやすくなる。
【0103】
異常が生じた車両1を所定時間以内に復旧させることができないと判断された場合には(S22にてNO)、処理はS25に進む。S25では、制御装置150が、作業場としてバックヤードを設定する。バックヤードは、車両1の現在位置の周辺で交通の妨げにならない場所(たとえば、休憩所又は駐車場)である。
【0104】
S24とS25とのいずれかにおいて作業場が設定されると、S26において、車両1の移動及び復旧対応が行なわれる。
図8は、S26の詳細を示すフローチャートである。なお、フローチャート中の判断処理(S41,S42)は診断部51によって実行され、その判断結果に基づく処理(S43~S46)は対処部52によって実行される。
【0105】
図1~
図4とともに
図8を参照して、S41では、車両1を手動運転に切替え可能か否かを、制御装置150が判断する。制御装置150は、車両1に発生した異常が手動運転に支障をきたさないか否かに基づいて、車両1を手動運転に切替え可能か否かを判断してもよい。手動運転に支障をきたさない異常の例としては、自動運転制御に係る異常、ランフラットタイヤのパンクが挙げられる。手動運転に支障をきたす異常の例としては、ブレーキ油圧の低下が挙げられる。
【0106】
続くS42では、車両1を手動運転可能な人が車両1に乗っているか否かを、制御装置150が判断する。具体的には、制御装置150は、有人センサ40の出力を用いて、車両1に人が乗っているか否かを判断する。車両1が無人状態である場合には、S42においてNOと判断される。車両1が有人状態である場合には、制御装置150は、車両1を利用中のユーザに関する情報(ユーザ情報)をサーバ500に要求する。そして、制御装置150は、サーバ500から受信したユーザ情報を用いて、車内の人が車両1を手動運転できるか否かを判断する。この実施の形態では、車内の人が車両1を手動運転するための免許を有していない場合には、S42においてNOと判断される。また、車内の人の運転熟練度が所定水準を下回る場合(たとえば、車内の人がペーパードライバーである場合)にも、S42においてNOと判断される。制御装置150は、車内の人の運転熟練度が所定水準に達している場合に、S42においてYESと判断してもよい。S41及びS42の両方でYESと判断されたことは、車両1が手動運転で走行できると診断部51が判断したことを意味する。
【0107】
S41及びS42の両方でYESと判断されると、制御装置150は、S43において、車両1を手動運転で制御可能な状態にして、運転支援処理を実行する。具体的には、制御装置150は、車両1が手動運転で向かう目的地(
図6のS24,S25、
図7のS38のいずれかで設定された作業場)を、周辺地図とともにNAVI170に表示させてもよい。また、車両1で利用可能なADAS(先進運転支援システム)を作動させてもよい。
【0108】
S43の処理が実行された後のS45では、手動運転によって車両1が作業場(目的地)に向かって移動する。制御装置150は、S45においてユーザの運転操作に従う車両1の走行制御を行なう。ユーザは、運転支援を受けながら手動運転を行なってもよい。そして、車両1が作業場に到着すると、制御装置150は、S46において、復旧対応のための処理を実行する。作業場がバックヤードである場合には、制御装置150は、車両1の販売店(ディーラ)に作業者の派遣を要請する。この派遣要請は、車両1が作業場(バックヤード)に到着する前に行なわれてもよい。車両1が作業場に到着した後、制御装置150は、S46において、車両1の状態を所定の報知装置(たとえば、NAVI170及びHMI230の少なくとも一方)に表示させてもよい。
【0109】
S41、S42のいずれかでNOと判断されたことは、車両1が手動運転で走行できないと診断部51が判断したことを意味する。S41、S42のいずれかでNOと判断されると、制御装置150は、S44において、車両1をレッカー移動させるためのレッカー手配を行なう。具体的には、制御装置150は、レッカーサービス業者の端末に、レッカー移動を依頼する信号(以下、「レッカー依頼信号」とも称する)を送信する。レッカー依頼信号は、車両1の現在位置(停車位置)と、目的地(この実施の形態では、
図6のS24,S25、
図7のS38のいずれかで設定された作業場)とを含む。レッカーサービス業者は、レッカー移動の依頼を受けると、たとえば
図8に示すレッカー車300を車両1に向かわせる。そして、車両1は、レッカー車300によって牽引され、作業場(目的地)に運ばれる。
【0110】
S44の処理が実行された後のS45では、レッカー車300が車両1を作業場(目的地)に向かって牽引する。制御装置150は、S45において、車両1を牽引可能な状態(レッカーモード)に維持する。そして、車両1が作業場に到着すると、制御装置150は、S46において、復旧対応のための処理を実行する。S46の処理は、車両1が手動運転で移動する場合と同じである。
【0111】
上記S46の処理が実行されると、
図8に示す一連の処理(ひいては、
図6のS26又は
図7のS39)が終了する。これにより、
図5のS14が終了し、
図5に示した一連の処理が終了する。
【0112】
以上説明したように、この実施の形態に係る車両管理方法は、
図5~
図8に示した処理を含む。この実施の形態では、統合制御マネージャ115(制御装置150)が、本開示に係る「コンピュータ」の一例を含む。
【0113】
図5のS11では、制御装置150が、自動運転中の車両1に自動運転による走行を継続できない異常が生じたか否かを判断する。
図6のS21及びS22では、制御装置150が、異常が発生した車両1をその場で復旧させることができるか否かを判断する。
図8のS41及びS42では、制御装置150が、異常が発生した車両1が手動運転で走行できるか否かを判断する。そして、異常が発生した車両1をその場で復旧させることができず、かつ、異常が発生した車両1が手動運転で走行できない場合に(
図6のS21、S22のいずれかでNO、かつ、
図8のS41、S42のいずれかでNO)、制御装置150が、
図8のS44において、車両1をレッカー移動させるためのレッカー手配を行なう。こうした車両管理方法によれば、自動運転中の車両に異常が生じたときに、その車両に対する処置を早期かつ適切に行なうことが可能になる。
【0114】
上記実施の形態に係る制御装置150の機能(特に、
図4に示した診断部51及び対処部52の機能)は、ADK200のコンピュータ210に実装されてもよい。たとえば、コンピュータ210が、制御装置150の代わりに
図6に示した処理を実行してもよい。こうした形態では、
図6に示した処理に含まれる、
図7及び
図8の各々に示した処理も、コンピュータ210によって実行される。コンピュータ210は、必要な処理を制御装置150に指示してもよい。ベース車両100内に車両制御インターフェースが存在することで、ADK200の着脱は容易である。コンピュータ210に前述した診断部51及び対処部52の機能が実装されることで、これらの機能を車両に付与しやすくなる。こうした車両では、ADK200のコンピュータ210が、本開示に係る「コンピュータ」の一例に相当する。
【0115】
上記実施の形態に係る制御装置150の機能(特に、
図4に示した診断部51及び対処部52の機能)は、モバイル端末UTに実装されてもよい。たとえば、モバイルアプリによって診断部51及び対処部52が具現化されてもよい。
【0116】
車両1の制御装置150は、
図5に示した処理に代えて、
図9に示す処理を実行してもよい。
図9は、
図5に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、S14(
図5)に代えてS14Aが採用されたこと以外は、
図5に示した処理と同じである。
図9を参照して、S14Aでは、制御装置150が、車両1を利用中のユーザが携帯するモバイル端末UTに対して、車両1を復旧させるための処理を要求する。モバイル端末UTは、車両1(制御装置150)からの要求に応じて、
図6に示した処理を実行する。モバイル端末UTは、必要に応じて、車両1及びサーバ500の各々から情報を取得したり、車両1に車両制御を要求したりする。上記第1変形例では、モバイル端末UTが、本開示に係る「コンピュータ」の一例を含む。
【0117】
上記実施の形態に係る制御装置150の機能(特に、
図4に示した診断部51及び対処部52の機能)は、オンプレミスサーバ(サーバ500)に実装されてもよい。また、クラウドコンピューティングによってクラウド上に制御装置150の機能が実装されてもよい。
【0118】
車両1の制御装置150は、
図5に示した処理に代えて、
図10に示す処理を実行してもよい。
図10は、
図5に示した処理の第2変形例を示すフローチャートである。
図10に示す処理は、S14(
図5)に代えてS14Bが採用されたこと以外は、
図5に示した処理と同じである。
図10を参照して、S14Bでは、制御装置150が、サーバ500に対して、車両1を復旧させるための処理を要求する。サーバ500は、車両1(制御装置150)からの要求に応じて、
図6に示した処理を実行する。サーバ500は、必要に応じて、車両1及びモバイル端末UTの各々から情報を取得したり、車両1に車両制御を要求したりする。上記第2変形例では、サーバ500が、本開示に係る「コンピュータ」の一例を含む。
【0119】
図5~
図10の各々に示した処理は適宜変更可能である。たとえば、
図5、
図9、又は
図10のS11でNOと判断された場合に、手動停止要求が行なわれることなく、自動停止(S132)が実行されてもよい。
【0120】
車両の構成は、上記実施の形態で説明した構成(
図1、
図2、及び
図4参照)に限られない。ベース車両が後付けなしの状態で自動運転機能を有してもよい。車両は、ソーラーパネルを備えてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、走行中充電又は非接触充電のための充電器を備えてもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、ユーザの使用目的に応じてカスタマイズされる多目的車両であってもよい。車両は、移動店舗車両又は農業機械であってもよい。車両は、1人乗りの小型BEV(たとえば、マイクロパレット)であってもよい。
【0121】
上述した実施の形態及び各変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 車両、2 VP、20 MG、30 制動装置、30a ブレーキセンサ、30b 空気圧センサ、40 有人センサ、51 診断部、52 対処部、100 ベース車両、102 制御システム、115 統合制御マネージャ、130 通信装置、150 制御装置、160 バッテリ、170 NAVI、180 リーダ、200 ADK、202 ADS、210 コンピュータ、300 レッカー車、500 サーバ、UT モバイル端末。