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特許7609101制御装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20241224BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241224BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20241224BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G08G1/09 V
H04W28/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022039383
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023134050
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末廣 優樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝紘
(72)【発明者】
【氏名】金子 直矢
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090285(WO,A1)
【文献】特開2021-056783(JP,A)
【文献】特開2020-043557(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08G 1/09
H04W 28/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える移動体を制御する制御装置であって、
1又は複数のプロセッサを備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する処理と、
前記移動体から前記遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する処理と、
前記複数の映像データの1秒当たりの総データ量のデフォルト値の前記通信速度からのデータ超過量を算出する処理と、
前記データ超過量が正値である場合、前記複数の映像データの1秒当たりの前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理と
を実行するように構成され
前記データ超過量に関する複数のレベルは、
前記データ超過量が負の所定範囲内にあることを表すデフォルトレベルと、
前記データ超過量が正の第1範囲内にあることを表す第1レベルと、
前記データ超過量が前記第1範囲よりも大きい正の第2範囲内にあることを表す第2レベルと
を含み、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記データ超過量が前記複数のレベルのうちいずれに属するかを判定し、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第2レベルに遷移した場合、第2期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行し、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第1レベルに遷移した場合、前記第2期間よりも長い第1期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行する
ように構成された
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記複数のカメラの優先度の設定ポリシーを示す優先度ポリシー情報を格納する1又は複数の記憶装置を更に備え、
前記1又は複数のプロセッサは、前記優先度ポリシー情報に基づいて、前記優先度のより高いカメラによって得られる映像データの前記送信データ量がより多くなるように前記データ量調整処理を実行する
制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記複数のカメラは、第1カメラと、前記第1カメラよりも優先度の低い第2カメラとを含み、
前記複数の映像データは、前記第1カメラにより得られる第1映像データと、前記第2カメラにより得られる第2映像データとを含み、
前記データ量調整処理において、前記1又は複数のプロセッサは、前記第1映像データの前記送信データ量を低減することなく、前記第2映像データの解像度をデフォルト値よりも低下させる
制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記複数のカメラは、第1カメラと、前記第1カメラよりも優先度の低い第2カメラとを含み、
前記複数の映像データは、前記第1カメラにより得られる第1映像データと、前記第2カメラにより得られる第2映像データとを含み、
前記データ量調整処理において、前記1又は複数のプロセッサは、前記第1映像データを送信し、前記第2映像データの送信を停止する
制御装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記複数のカメラの前記優先度は、前記移動体の進行方向に依存し、
前記進行方向により近い視野方向を有するカメラの前記優先度は、前記進行方向からより遠い視野方向を有するカメラの前記優先度よりも高く、
前記データ量調整処理において、前記1又は複数のプロセッサは、前記移動体の前記進行方向を含む情報を取得し、前記進行方向と前記優先度ポリシー情報に基づいて前記複数のカメラの前記優先度を設定する
制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記1又は複数のプロセッサは、更に、
前記データ超過量が前記第2レベルから前記第1レベルに遷移した場合、第3期間内に前記総データ量を増加させ、
前記データ超過量が前記第1レベルから前記デフォルトレベルに遷移した場合、前記第3期間よりも長い第4期間内に前記総データ量を増加させる
ように構成された
制御装置。
【請求項7】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える移動体を制御する制御方法であって、
前記複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する処理と、
前記移動体から前記遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する処理と、
前記複数の映像データの1秒当たりの総データ量のデフォルト値の前記通信速度からのデータ超過量を算出する処理と、
前記データ超過量が正値である場合、前記複数の映像データの1秒当たりの前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理と
を含み、
前記データ超過量に関する複数のレベルは、
前記データ超過量が負の所定範囲内にあることを表すデフォルトレベルと、
前記データ超過量が正の第1範囲内にあることを表す第1レベルと、
前記データ超過量が前記第1範囲よりも大きい正の第2範囲内にあることを表す第2レベルと
を含み、
前記制御方法は、更に、
前記データ超過量が前記複数のレベルのうちいずれに属するかを判定することと、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第2レベルに遷移した場合、第2期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行することと、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第1レベルに遷移した場合、前記第2期間よりも長い第1期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行することと
を含む
制御方法。
【請求項8】
遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える移動体を制御する制御プログラムであって、
前記制御プログラムは、コンピュータによって実行され、
前記複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、前記遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する処理と、
前記移動体から前記遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する処理と、
前記複数の映像データの1秒当たりの総データ量のデフォルト値の前記通信速度からのデータ超過量を算出する処理と、
前記データ超過量が正値である場合、前記複数の映像データの1秒当たりの前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理と
を前記コンピュータに実行させ
前記データ超過量に関する複数のレベルは、
前記データ超過量が負の所定範囲内にあることを表すデフォルトレベルと、
前記データ超過量が正の第1範囲内にあることを表す第1レベルと、
前記データ超過量が前記第1範囲よりも大きい正の第2範囲内にあることを表す第2レベルと
を含み、
前記制御プログラムは、更に、
前記データ超過量が前記複数のレベルのうちいずれに属するかを判定することと、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第2レベルに遷移した場合、第2期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行することと、
前記データ超過量が前記デフォルトレベルから前記第1レベルに遷移した場合、前記第2期間よりも長い第1期間内に前記総データ量が前記通信速度以下に抑えられるように前記データ量調整処理を実行することと
を前記コンピュータに実行させる
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作に関する。特に、本開示は、遠隔操作の対象である移動体からの映像データの送信を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車載通信装置を開示している。車載通信装置は、移動通信方式及びWiFi通信方式の両方に対応している。車両の異常を検知した場合、車載通信装置は、車両走行状況を示す数値データ及び画像データを指定サーバに送信する。このとき、車載通信装置は、数値データを移動通信方式で送信し、画像データをWiFi通信方式で送信する。
【0003】
その他、カメラにより撮像された画像の通信に関連する技術として、特許文献2及び特許文献3が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-120443号公報
【文献】特開2005-222307号公報
【文献】特開平10-112861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔オペレータによる移動体(例:車両、ロボット)の遠隔操作について考える。移動体の遠隔操作では、移動体に搭載されたカメラによって得られる映像データが、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される。このとき、通信速度が低下すると、映像データの伝送遅延が増大するおそれがある。映像データの伝送遅延の増大は、遠隔オペレータによる判断や操作の遅れを招き、遠隔操作の精度低下の原因となり得る。
【0006】
本開示の1つの目的は、遠隔オペレータによる移動体の遠隔操作において、移動体から送信される映像データの伝送遅延を抑制することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の観点は、移動体を制御する制御装置に関連する。
移動体は、遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える。
制御装置は、1又は複数のプロセッサを備える。
1又は複数のプロセッサは、複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する。
1又は複数のプロセッサは、移動体から遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する。
1又は複数のプロセッサは、複数の映像データの1秒当たりの総データ量を通信速度以下に抑えるためにデータ削減が必要か否かを判定する。
データ削減が必要であると判定した場合、1又は複数のプロセッサは、総データ量が通信速度以下に抑えられるように複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理を実行する。
【0008】
第2の観点は、移動体を制御する制御方法に関連する。
移動体は、遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える。
制御方法は、
複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する処理と、
移動体から遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する処理と、
複数の映像データの1秒当たりの総データ量を通信速度以下に抑えるためにデータ削減が必要か否かを判定する処理と、
データ削減が必要であると判定した場合、総データ量が通信速度以下に抑えられるように複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理と
を含む。
【0009】
第3の観点は、コンピュータにより実行され、移動体を制御する制御プログラムに関連する。
移動体は、遠隔オペレータによる遠隔操作の対象であり、且つ、複数のカメラを備える。
制御プログラムは、
複数のカメラのそれぞれにより得られる複数の映像データを、遠隔オペレータ側の遠隔オペレータ端末に送信される送信対象データとして取得する処理と、
移動体から遠隔オペレータ端末への通信の通信速度の情報を取得する処理と、
複数の映像データの1秒当たりの総データ量を通信速度以下に抑えるためにデータ削減が必要か否かを判定する処理と、
データ削減が必要であると判定した場合、総データ量が通信速度以下に抑えられるように複数の映像データのうち少なくとも一つの送信データ量を低減するデータ量調整処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、移動体から遠隔オペレータ端末への通信の通信速度が考慮される。そして、複数の映像データの1秒当たりの総データ量が通信速度以下に抑えられるようにデータ量調整処理が行われる。このデータ量調整処理により、移動体から送信される映像データの伝送遅延を抑制することが可能となる。映像データの伝送遅延が抑制されるため、遠隔オペレータによる判断や操作の遅れも抑制される。すなわち、伝送遅延に起因する遠隔操作の精度低下を抑制することが可能となる。このことは、移動体の遠隔操作の安全性向上の観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係る遠隔操作システムの構成例を示す概略図である。
図2】本開示の実施の形態に係るデータ量調整処理に関連する機能構成例を示すブロック図である。
図3】本開示の実施の形態に係るデータ量調整処理に関連する処理を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施の形態に係るカメラ優先度を考慮したデータ量調整処理を説明するためのブロック図である。
図5】本開示の実施の形態に係るカメラ優先度の動的設定例を説明するための概念図である。
図6】本開示の実施の形態に係るカメラ優先度を考慮したデータ量調整処理の例を説明するための概念図である。
図7】本開示の実施の形態に係るカメラ優先度を考慮したデータ量調整処理の他の例を説明するための概念図である。
図8】本開示の実施の形態に係るFixレベルの設定例を説明するための概念図である。
図9】本開示の実施の形態に係るFixレベルに関連する機能構成例を示すブロック図である。
図10】本開示の実施の形態に係るFixレベルの遷移例を説明するための概念図である。
図11】本開示の実施の形態に係る車両の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0013】
1.遠隔操作システムの概要
移動体の遠隔操作(遠隔運転)について考える。遠隔操作の対象である移動体としては、車両、ロボット、飛翔体、等が例示される。車両は、自動運転車両であってもよいし、ドライバが運転する車両であってもよい。ロボットとしては、物流ロボット、作業ロボット、等が例示される。飛翔体としては、飛行機、ドローン、等が例示される。
【0014】
一例として、以下の説明においては、遠隔操作の対象である移動体が車両である場合について考える。一般化する場合には、以下の説明における「車両」を「移動体」で読み替えるものとする。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る遠隔操作システム1の構成例を示す概略図である。遠隔操作システム1は、車両100、遠隔オペレータ端末200、及び管理装置300を含んでいる。車両100は、遠隔操作の対象である。遠隔オペレータ端末200は、遠隔オペレータOが車両100を遠隔操作する際に使用する端末装置である。遠隔オペレータ端末200を遠隔操作HMI(Human Machine Interface)と言うこともできる。管理装置300は、遠隔操作システム1の管理を行う。遠隔操作システム1の管理は、例えば、遠隔操作が必要な車両100に対して遠隔オペレータOを割り当てることを含む。管理装置300は、通信ネットワークを介して車両100及び遠隔オペレータ端末200と通信可能である。典型的には、管理装置300は、クラウド上の管理サーバである。管理サーバは、分散処理を行う複数のサーバにより構成されていてもよい。
【0016】
車両100には、カメラCを含む各種センサが搭載されている。カメラCは、車両100の周囲の状況を撮像し、車両100の周囲の状況を示す画像IMGを取得する。車両情報VCLは、各種センサにより得られる情報であり、カメラCにより得られる画像IMGを含む。車両100は、管理装置300を介して、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。つまり、車両100は、車両情報VCLを管理装置300に送信し、管理装置300は、受け取った車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に転送する。
【0017】
遠隔オペレータ端末200は、車両100から送信された車両情報VCLを受け取る。遠隔オペレータ端末200は、車両情報VCLを遠隔オペレータOに提示する。具体的には、遠隔オペレータ端末200は、表示装置を備えており、画像IMG等を表示装置に表示する。遠隔オペレータOは、表示された情報をみて、車両100の周囲の状況を認識し、車両100の遠隔操作を行う。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。遠隔オペレータ端末200は、管理装置300を介して、遠隔操作情報OPEを車両100に送信する。つまり、遠隔オペレータ端末200は、遠隔操作情報OPEを管理装置300に送信し、管理装置300は、受け取った遠隔操作情報OPEを車両100に転送する。
【0018】
車両100は、遠隔オペレータ端末200から送信された遠隔操作情報OPEを受け取る。車両100は、受け取った遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。このようにして、車両100の遠隔操作が実現される。
【0019】
2.データ量調整処理の概要
以下、車両100に搭載されたカメラCにより撮像される画像IMGとして、映像データ(映像ストリームデータ)Sを考える。車両100が複数のカメラC1~Cn(nは2以上の整数)を備える場合、それら複数のカメラC1~Cnのそれぞれにより複数の映像データS1~Snが得られる。車両100は、複数の映像データS1~Snを並列的に遠隔オペレータ端末200に送信する。遠隔オペレータ端末200は、複数の映像データS1~Snを並列的に受信し、それら複数の映像データS1~Snを表示装置に表示する。遠隔オペレータOは、表示された映像データSをみて、車両100の周囲の状況を認識し、車両100の遠隔操作を行う。
【0020】
車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の通信速度(通信帯域)が低下すると、映像データS1~Snの伝送遅延が増大するおそれがある。映像データS1~Snの伝送遅延の増大は、遠隔オペレータOによる判断や操作の遅れを招き、遠隔操作の精度低下の原因となり得る。従って、車両100から送信される映像データS1~Snの伝送遅延を抑制することができる技術が望まれる。本実施の形態によれば、車両100から送信される映像データS1~Snの伝送遅延を抑制するために、以下に説明される「データ量調整処理」が必要に応じて行われる。
【0021】
図2は、本実施の形態に係るデータ量調整処理に関連する機能構成例を示すブロック図である。車両100は、機能ブロックとして、通信部101、映像データ取得部102、通信状態取得部103、判定部104、及びデータ量調整部105を含んでいる。
【0022】
通信部101は、管理装置300を介して遠隔オペレータ端末200と通信を行う。
【0023】
映像データ取得部102は、車両100に搭載された複数のカメラC1~Cnのそれぞれにより得られる複数の映像データ(映像ストリームデータ)S1~Snを取得する。複数の映像データS1~Snは、車両100から遠隔オペレータ端末200に並列的に送信される送信対象データである。
【0024】
通信状態取得部103は、通信部101による遠隔オペレータ端末200との通信を監視する。そして、通信状態取得部103は、通信部101による遠隔オペレータ端末200との通信結果に基づいて、遠隔オペレータ端末200との通信の通信速度(通信帯域)の情報を取得する。特に、通信状態取得部103は、車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の通信速度Zの情報を取得する。ここでの通信速度Zは、例えばスループットである。例えば、通信状態取得部103は、遠隔オペレータ端末200へ送信された送信データ量と遠隔オペレータ端末200からのフィードバックに基づいて、通信速度Z(スループット)を測定することができる。尚、通信速度やスループットの測定方法としては様々なものが提案されており、本実施の形態ではその推定方法は特に限定されない。
【0025】
通信速度Zは、時間的に変動する。通信速度Zが低下した状況では、映像データS1~Snの伝送遅延が増大するおそれがある。特に、通信速度Zが複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Ytを下回ると、伝送遅延が増大する。
【0026】
判定部104は、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yが通信速度Zを超過しているか否かを判定する。言い換えれば、判定部104は、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yを通信速度Z以下に抑えるためにデータ削減が必要か否かを判定する。
【0027】
例えば、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yのデフォルト値Y0が、既知情報として与えられる。各映像データSi(i=1~n)の1秒当たりのデータ量のデフォルト値Y0_iは、「1フレーム当たりのデータ量のデフォルト値F0_i」×「フレームレートのデフォルト値R0_i」で与えられる。複数の映像データS1~Snに関するデフォルト値Y0_1~Y0_nの総和が、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yのデフォルト値Y0である。その総データ量Yのデフォルト値Y0の通信速度Zからのデータ超過量Xは、次の式(1)で表される。
【0028】
式(1):X[bps]=Y0[bps]-Z[bps]
【0029】
判定部104は、総データ量Yのデフォルト値Y0を変動する通信速度Zと対比する。そして、総データ量Yのデフォルト値Y0が通信速度Zを超過している場合、判定部104は、データ削減が必要であると判定する。言い換えれば、変動する通信速度Zが総データ量Yのデフォルト値Y0を下回った場合、判定部104は、データ削減が必要であると判定する。更に言い換えれば、上記式(1)で表されるデータ超過量Xが正値である場合、判定部104は、データ削減が必要であると判定する。
【0030】
判定部104は、判定結果を示す判定結果情報RESを出力する。判定結果情報RESは、上記式(1)で表されるデータ超過量Xを含んでいてもよい。
【0031】
データ量調整部105は、複数の映像データS1~Snと判定結果情報RESを受け取る。判定結果情報RESがデータ削減が必要であることを示している場合、データ量調整部105は、データ量調整処理を行う。具体的には、データ量調整部105は、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yが通信速度Z以下に抑えられるように、複数の映像データS1~Snのうち少なくとも一つの送信データ量を低減する。このときの送信データ量の総低減量は、上記式(1)で表されるデータ超過量X以上である。
【0032】
ある映像データSj(j=1~nのいずれか)の送信データ量を低減する手法としては、様々なものが考えられる。例えば、映像データSjの1フレーム当たりのデータ量が、デフォルト値F0_jよりも小さい値に設定される。例えば、映像データSjの解像度(画素数)がデフォルト値よりも低い値に設定される。例えば、映像データSjの解像度のデフォルト値が1080pである場合、解像度が360pまで低下させられる。これにより、映像データSjの送信データ量は約1/9となる。
【0033】
映像データSjの送信データ量を更に低減するために、映像データSjの送信を停止させてもよい。つまり、映像データSjの送信データ量を0に設定してもよい。
【0034】
通信部101は、複数の映像データS1~Snを含む車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。尚、データ量調整処理が行われた場合、ある映像データSjの送信データ量が0となる可能性もある。
【0035】
図3は、データ量調整処理に関連する処理を要約的に示すフローチャートである。
【0036】
ステップS102において、車両100は、複数のカメラC1~Cnのそれぞれにより得られる複数の映像データS1~Snを送信対象データとして取得する。
【0037】
ステップS103において、車両100は、遠隔オペレータ端末200との通信結果に基づいて、車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の通信速度Zの情報を取得する。
【0038】
ステップS104において、車両100は、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yを通信速度Z以下に抑えるためにデータ削減が必要か否かを判定する。データ削減が必要である場合(ステップS104;Yes)、処理は、ステップS105に進む。一方、データ削減が不要である場合(ステップS104;No)、処理は、ステップS106に進む。
【0039】
ステップS105において、車両100は、データ量調整処理を実行する。具体的には、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yが通信速度Z以下に抑えられるように、複数の映像データS1~Snのうち少なくとも一つの送信データ量を低減する。
【0040】
ステップS106において、車両100は、複数の映像データS1~Snを含む車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。
【0041】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、車両100から遠隔オペレータ端末200への通信の通信速度Zが考慮される。そして、複数の映像データS1~Snの1秒当たりの総データ量Yが通信速度Z以下に抑えられるようにデータ量調整処理が行われる。このデータ量調整処理により、車両100から送信される映像データS1~Snの伝送遅延を抑制することが可能となる。映像データS1~Snの伝送遅延が抑制されるため、遠隔オペレータOによる判断や操作の遅れも抑制される。すなわち、本実施の形態によれば、伝送遅延に起因する遠隔操作の精度低下を抑制することが可能となる。このことは、車両100の遠隔操作の安全性向上の観点から好ましい。
【0042】
3.カメラ優先度を考慮したデータ量調整処理
データ量調整処理においてカメラC1~Cnの優先度が考慮されてもよい。具体的には、優先度のより高いカメラCによって得られる映像データSの送信データ量がより多くなるように、データ量調整処理が行われてもよい。
【0043】
図4は、カメラC1~Cnの優先度を考慮したデータ量調整処理を説明するためのブロック図である。データ量調整部105は、優先度設定部105Pを含んでいる。優先度設定部105Pは、複数のカメラC1~Cnの優先度を設定する。より詳細には、優先度設定部105Pは、複数のカメラC1~Cnの優先度の設定ポリシーを示す優先度ポリシー情報POLを保持している。優先度設定部105Pは、優先度ポリシー情報POLに基づいて、複数のカメラC1~Cnの優先度を設定する。そして、データ量調整部105は、優先度のより高いカメラCによって得られる映像データSの送信データ量がより多くなるように、データ量調整処理を実行する。つまり、データ量調整部105は、映像データS1~Snの総データ量Yを抑制しつつ、優先度の高いカメラCによって得られる映像データSについては可能な限り送信データ量を確保する。
【0044】
一般化すると次の通りである。第1カメラCiの優先度は第2カメラCjの優先度よりも高く、第2カメラCjの優先度は第1カメラCiの優先度より低い。第1映像データSiは、優先度の高い第1カメラCiにより得られる映像データSである。第2映像データSjは、優先度の低い第2カメラCjにより得られる映像データSである。データ量調整部105は、第1映像データSiの送信データ量が第2映像データSjの送信データ量よりも多くなるように、データ量調整処理を実行する。例えば、データ量調整部105は、第1映像データSiの送信データ量を低減することなく、第2映像データSjの解像度をデフォールト値よりも低下させる。他の例として、データ量調整部105は、第1映像データSiを送信し、第2映像データSjの送信を停止する。このように、データ量調整部105は、優先度の高い第1カメラCiによって得られる第1映像データSiの送信データ量がより多くなるように、データ量調整処理を実行する。
【0045】
複数のカメラC1~Cnの優先度は、固定されていてもよいし、動的に変更されてもよい。
【0046】
図5は、カメラC1~Cnの優先度の動的設定例を説明するための概念図である。図5に示される例では、車両100は、前方カメラC1、左前方カメラC2、右前方カメラC3、及び後方カメラC4を備えている。カメラC1~C4の優先度は、車両100の進行方向に依存する。つまり、進行方向に近い視野方向を有するカメラCの優先度は、進行方向からより遠い視野方向を有するカメラCの優先度よりも高く設定される。図5中の丸数字は優先度を表している。
【0047】
具体的には、車両100が直進する場合、車両100の進行方向は前方向である。この場合、前方カメラC1の優先度が最も高く、後方カメラC4の優先度が最も低い。左前方カメラC2及び右前方カメラC3の優先度は、前方カメラC1よりも低く、後方カメラC4よりも高い。
【0048】
車両100が左折する場合、車両100の進行方向は左方向である。この場合、左前方カメラC2の優先度は右前方カメラC3の優先度よりも高い。前方カメラC1の優先度は、左前方カメラC2よりも低く、右前方カメラC3よりも高い。後方カメラC4の優先度は最も低い。
【0049】
車両100が右折する場合、車両100の進行方向は右方向である。この場合、右前方カメラC3の優先度は左前方カメラC2の優先度よりも高い。前方カメラC1の優先度は、右前方カメラC3よりも低く、左前方カメラC2よりも高い。後方カメラC4の優先度は最も低い。
【0050】
図6は、カメラC1~C4の優先度を考慮したデータ量調整処理の例を説明するための概念図である。
【0051】
車両100が直進する場合、データ量調整部105は、優先度が最も高い前方カメラC1により得られる映像データS1の解像度をデフォルト値のまま維持する。つまり、データ量調整部105は、優先度が最も高い前方カメラC1により得られる映像データS1の送信データ量を低減することなく維持する。一方、データ量調整部105は、優先度が比較的低いカメラC2~C4により得られる映像データS2~S4の解像度をデフォルト値よりも低下させる。例えば、解像度は、デフォルト値である1080pから360pまで低下する。
【0052】
車両100が左折する場合、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C2により得られる映像データS1、S2の解像度をデフォルト値のまま維持する。つまり、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C2により得られる映像データS1、S2の送信データ量を低減することなく維持する。一方、データ量調整部105は、優先度が比較的低い右前方カメラC3により得られる映像データS3の解像度をデフォルト値よりも低下させる。更に、データ量調整部105は、優先度が最も低い後方カメラC4により得られる映像データS4の送信を停止する。
【0053】
車両100が右折する場合、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C3により得られる映像データS1、S3の解像度をデフォルト値のまま維持する。つまり、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C3により得られる映像データS1、S3の送信データ量を低減することなく維持する。一方、データ量調整部105は、優先度が比較的低い左前方カメラC2により得られる映像データS2の解像度をデフォルト値よりも低下させる。更に、データ量調整部105は、優先度が最も低い後方カメラC4により得られる映像データS4の送信を停止する。
【0054】
図7は、カメラC1~C4の優先度を考慮したデータ量調整処理の他の例を説明するための概念図である。図7に示される例では、データ削減量が図6で示された例の場合よりも多い。
【0055】
車両100が直進する場合、データ量調整部105は、優先度が最も高い前方カメラC1により得られる映像データS1の解像度をデフォルト値のまま維持する。つまり、データ量調整部105は、優先度が最も高い前方カメラC1により得られる映像データS1の送信データ量を低減することなく維持する。一方、データ量調整部105は、優先度が比較的低いカメラC2~C4により得られる映像データS2~S4の送信を停止する。
【0056】
車両100が左折する場合、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C2により得られる映像データS1、S2の解像度をデフォルト値よりも低下させる。更に、データ量調整部105は、優先度が比較的低いカメラC3、C4により得られる映像データS3、S4の送信を停止する。
【0057】
車両100が右折する場合、データ量調整部105は、優先度が比較的高いカメラC1、C3により得られる映像データS1、S3の解像度をデフォルト値よりも低下させる。更に、データ量調整部105は、優先度が比較的低いカメラC2、C4により得られる映像データS2、S4の送信を停止する。
【0058】
車両100の進行方向は、車両100の舵角、ウィンカー状態、シフト位置、等の車両状態情報から得られる。あるいは、車両100の進行方向は、車両100の目標ルートに基づいて取得されてもよい。進行方向情報DIRは、車両100の進行方向を示す情報である。優先度ポリシー情報POLは、図5で例示されたような優先度の動的設定ポリシーを示している。優先度設定部105Pは、進行方向情報DIRを取得し、進行方向情報DIRと優先度ポリシー情報POLに基づいて複数のカメラC1~Cnの優先度を設定する(図4参照)。そして、データ量調整部105は、設定された優先度を考慮してデータ量調整処理を実行する。
【0059】
このように、優先度のより高いカメラCによって得られる映像データSの送信データ量がより多くなるように、データ量調整処理が実行される。つまり、映像データS1~Snの総データ量Yを抑制しつつ、優先度の高いカメラCによって得られる映像データSについては可能な限り送信データ量を確保することが可能となる。すなわち、遠隔オペレータOによる車両100の遠隔操作の精度をなるべく確保しつつ、映像データS1~Snの伝送遅延を抑制することが可能となる。
【0060】
4.FIXレベルに基づくデータ量調整処理
上述の通り、複数の映像データS1~Snのデータ超過量Xは、式(1)で表される。判定部104は、式(1)に従ってデータ超過量Xを算出する。データ超過量Xが増加するほど、データ量調整処理において削減すべき送信データ量も増加する。ここで、削減すべき送信データ量、すなわち、データ量調整処理の内容は、段階的に切り替えられてもよい。そのために、「FixレベルFL」という概念が導入される。
【0061】
図8は、Fixレベルの設定例を説明するための概念図である。データ超過量Xが正値である場合、通信速度Zは低下しており、データ量調整処理の必要性が高い。一方、データ超過量Xが負値である場合、通信速度Zは高く、データ量調整処理の必要性は低い。このような観点から、データ超過量Xは複数のFixレベルFLに分類される。
【0062】
例えば、データ超過量Xに関する3つの閾値X0、XN、XPを考える。閾値XNは負値であり、閾値XPは正値である。閾値X0は、XNより大きく、XPより小さい(XP>X0>XN)。閾値X0はゼロであってもよい。データ超過量XがXN~X0の範囲にある場合、FixレベルFLはデフォルト値“0”に設定される。データ超過量XがX0~XPの範囲にある場合、FixレベルFLは“-1”に設定される。データ超過量XがXP以上である場合、FixレベルFLは“-2”に設定される。一方、データ超過量XがXN以下である場合、FixレベルFLは“+1”に設定される。
【0063】
FixレベルFLがデフォルト値“0”である場合、データ量調整処理は行われない。FixレベルFLが“-1”あるいは“-2”である場合、データ量調整処理が行われる。特に、FixレベルFLが“-2”である場合のデータ削減量は、FixレベルFLが“-1”である場合よりも多くなるように設定される。例えば、FixレベルFLが“-1”である場合には図6で示されたようなデータ量調整処理が行われ、FixレベルFLが“-2”である場合には図7で示されたようなデータ量調整処理が行われる。このように、データ量調整処理の内容が、FixレベルFLに応じて段階的に切り替えられる。
【0064】
図9は、FixレベルFLに関連する機能構成例を示すブロック図である。判定部104は、レベル判定部104Aを含んでいる。レベル判定部104Aは、データ超過量Xが複数のFixレベルFLのうちいずれに属するかを判定する。判定部104による判定結果を示す判定結果情報RESは、データ超過量Xが属するFixレベルFLを含んでいる。
【0065】
データ量調整部105は、データ超過量Xが属するFixレベルFLに応じてデータ量調整処理の内容を切り替える。例えば、FixレベルFLが“-1”である場合、データ量調整部105は、図6で示されたようなデータ量調整処理を行う。FixレベルFLが“-2”である場合、データ量調整部105は、図7で示されたようなデータ量調整処理が行う。
【0066】
尚、Fixレベルが“+1”である場合、通信速度Zにかなり余裕がある。従って、データ量調整部105は、複数の映像データS1~Snのうち少なくとも一つの解像度をデフォルト値よりも増加させてもよい。例えば、データ量調整部105は、優先度の最も高いカメラCによって得られた映像データSの解像度をデフォルト値よりも増加させる。これにより、映像データSの視認性が更に向上する。
【0067】
判定部104は、更に、レベル遷移調整部104Bを含んでいてもよい。レベル遷移調整部104Bは、データ超過量Xが属するFixレベルFLが遷移(変化)する際、FixレベルFLの傾き(変化率)を調整する。
【0068】
図10は、FixレベルFLの遷移例を説明するための概念図である。第1の例では、FixレベルFLが大きく減少する。この場合、安全性を考慮して、レベル遷移調整部104Bは、FixレベルFLを即座に減少させる。
【0069】
第2の例では、FixレベルFLの減少幅が比較的小さい。この場合、レベル遷移調整部104Bは、FixレベルFLをゆっくり減少させてもよい。FixレベルFLがゆっくり減少する場合、映像データSの解像度もゆっくり低下する。
【0070】
第3の例では、FixレベルFLが増加する。映像データSの解像度が急激に向上すると、遠隔オペレータOが違和感を感じる可能性もある。そこで、レベル遷移調整部104Bは、FixレベルFLをゆっくり増加させてもよい。FixレベルFLがゆっくり増加する場合、映像データSの解像度もゆっくり増加する。
【0071】
このように、データ量調整処理の内容は、FixレベルFLに応じて切り替えられる。データ量調整処理の内容が予め定められているため、データ量調整処理を効率的に行うことが可能となる。
【0072】
5.車両の例
5-1.構成例
図11は、車両100の構成例を示すブロック図である。車両100は、通信装置110、センサ群120、走行装置130、及び制御装置150を備えている。
【0073】
通信装置110は、車両100の外部と通信を行う。例えば、通信装置110は、遠隔オペレータ端末200や管理装置300と通信を行う。この通信装置110は、図2で示された通信部101に相当する。
【0074】
センサ群120は、認識センサ、車両状態センサ、位置センサ、等を含んでいる。認識センサは、車両100の周辺の状況を認識(検出)する。認識センサとしては、カメラC(C1~Cn)、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。車両状態センサは、車両100の状態を検出する。車両状態センサは、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等を含んでいる。位置センサは、車両100の位置及び方位を検出する。例えば、位置センサは、GNSS(Global Navigation Satellite System)を含んでいる。
【0075】
走行装置130は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0076】
制御装置150は、車両100を制御するコンピュータである。制御装置150は、1又は複数のプロセッサ160(以下、単にプロセッサ160と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置170(以下、単に記憶装置170と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ160は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ160は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置170は、プロセッサ160による処理に必要な各種情報を格納する。記憶装置170としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置150は、1又は複数のECU(Electronic Control Unit)を含んでいてもよい。
【0077】
車両制御プログラムPROG1は、プロセッサ160によって実行されるコンピュータプログラムである。プロセッサ160が車両制御プログラムPROG1を実行することにより、制御装置150の機能が実現される。車両制御プログラムPROG1は、記憶装置170に格納される。あるいは、車両制御プログラムPROG1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0078】
5-2.運転環境情報
制御装置150は、センサ群120を用いて、車両100の運転環境を示す運転環境情報ENVを取得する。運転環境情報ENVは、記憶装置170に格納される。
【0079】
運転環境情報ENVは、認識センサによる認識結果を示す周辺状況情報を含む。例えば、周辺状況情報は、カメラCによって撮像される画像IMG(映像データS1~Sn)を含む。周辺状況情報は、車両100の周辺の物体に関する物体情報を含んでいてもよい。車両100の周辺の物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、信号、標識、路側構造物、等が例示される。物体情報は、車両100に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。
【0080】
また、運転環境情報ENVは、車両状態センサによって検出される車両状態を示す車両状態情報を含む。
【0081】
更に、運転環境情報ENVは、車両100の位置及び方位を示す車両位置情報を含む。車両位置情報は、位置センサにより得られる。地図情報と周辺状況情報(物体情報)を用いた自己位置推定処理(Localization)により、高精度な車両位置情報が取得されてもよい。
【0082】
5-3.車両走行制御
制御装置150は、車両100の走行を制御する車両走行制御を実行する。車両走行制御は、操舵制御、駆動制御、及び制動制御を含む。制御装置150は、走行装置130(操舵装置、駆動装置、及び制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。
【0083】
制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて自動運転制御を行ってもよい。より詳細には、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100の走行プランを生成する。更に、制御装置150は、運転環境情報ENVに基づいて、車両100が走行プランに従って走行するために必要な目標トラジェクトリを生成する。目標トラジェクトリは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、制御装置150は、車両100が目標トラジェクトリに追従するように車両走行制御を行う。
【0084】
5-4.遠隔操作に関連する処理
以下、車両100の遠隔操作が行われる場合について説明する。制御装置150は、通信装置110を介して、遠隔オペレータ端末200と通信を行う。
【0085】
制御装置150は、車両情報VCLを遠隔オペレータ端末200に送信する。車両情報VCLは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に必要な情報であり、上述の運転環境情報ENVの少なくとも一部を含んでいる。例えば、車両情報VCLは、周辺状況情報(特に画像IMG)を含んでいる。車両情報VCLは、更に、車両状態情報や車両位置情報を含んでいてもよい。
【0086】
また、制御装置150は、遠隔操作情報OPEを遠隔オペレータ端末200から受信する。遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる遠隔操作に関する情報である。例えば、遠隔操作情報OPEは、遠隔オペレータOによる操作量を含む。制御装置150は、受信した遠隔操作情報OPEに従って車両走行制御を行う。
【0087】
更に、制御装置150は、上述の映像データ取得部102、通信状態取得部103、判定部104、及びデータ量調整部105の機能を備えている(図2図4図8参照)。優先度ポリシー情報POLは、予め生成され、記憶装置170に格納される。進行方向情報DIRは、車両状態情報(例:舵角、ウィンカー状態、シフト位置)から得られる。進行方向情報DIRは、車両100の目標ルートに基づいて取得されてもよい。制御装置150は、図3で示された処理を実行し、必要に応じてデータ量調整処理を実行する。
【符号の説明】
【0088】
1 遠隔操作システム
100 車両
101 通信部
102 映像データ取得部
103 通信状態取得部
104 判定部
104A レベル判定部
104B レベル遷移調整部
105 データ量調整部
105P 優先度設定部
110 通信装置
120 センサ群
130 走行装置
150 制御装置
160 プロセッサ
170 記憶装置
200 遠隔オペレータ端末
300 管理装置
C1~Cn カメラ
DIR 進行方向情報
FL Fixレベル
IMG 画像
OPE 遠隔操作情報
POL 優先度ポリシー情報
RES 判定結果情報
S1~Sn 映像データ
VCL 車両情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11