(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241224BHJP
B60W 50/12 20120101ALI20241224BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241224BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241224BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W50/12
B60W60/00
B60W40/08
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022061156
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/235470(WO,A1)
【文献】特開2016-064773(JP,A)
【文献】特開2017-154542(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196053(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転制御中の車両において、
前記自動運転制御を継続できなくなるときに前記車両の運転制御の主体をドライバに移管する
と判定する判定部と、
前記車両の運転制御の主体を前記ドライバに移管する場合に、前記車両に設けられた通知機器を介して前記ドライバに対して運転交代の要求を通知する通知処理部と、
前記運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると前記車両を減速制御し、
前記通知タイミングから所定期間が経過するまでに前記車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続
し、
前記通知タイミングから前記所定期間が経過するまでに前記車両の速度が前記所定の速度閾値を下回らず、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過した時点で前記車両の自動運転制御を停止するとともに、前記所定期間経過後において前記ドライバの異常に対応するための前記車両の制御を実行する制御部と、
を有
し、
前記所定の速度閾値は、クリープ現象により前記車両が加速する可能性が有る速度の上限に相当する値であり、
前記制御部は、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管するとの判定の原因、または、前記車両の周囲の状況に応じて、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管した後における前記車両の加速で前記車両が他の物体と衝突する危険が有るか否か判定し、当該危険が有ると判定した場合に限り、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記通知タイミングから前記所定期間が経過するまでは、前記ドライバによる前記車両のステアリング操作、または、前記ドライバによるステアリング保持とともにアクセルまたはブレーキの操作が検知されると、前記引き継ぎ操作が行われたと判定し、
一方、前記通知タイミングから前記所定期間が経過すると、前記ドライバによる前記車両のステアリング操作、または、前記ドライバによるステアリング保持を伴わな
くても、アクセ
ルまたはブレーキ
の操作が検知されると、前記引き継ぎ操作が行われたと判定する、請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両の速度が所定の速度閾値以下である場合、前記引き継ぎ操作としての前記ドライバによるアクセルまたはブレーキの操作が検知されない限り、前記車両の減速制御を継続し、一方、前記車両の速度が前記所定の速度閾値よりも高い場合、前記引き継ぎ操作としての前記ドライバによるステアリング操作、または、前記ドライバによるステアリング保持を含む所定の操作が検知されると前記車両の自動運転制御を停止する、請求項
1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両が走行中の道路の勾配に応じて、前記所定の速度閾値を調整する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
自動運転制御中の車両において、
前記自動運転制御を継続できなくなるときに前記車両の運転制御の主体をドライバに移管する
と判定し、
前記車両の運転制御の主体を前記ドライバに移管する場合に、前記車両に設けられた通知機器を介して前記ドライバに対して運転交代の要求を通知し、
前記運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると前記車両を減速制御し、
前記通知タイミングから所定期間が経過するまでに前記車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続
し、
前記通知タイミングから前記所定期間が経過するまでに前記車両の速度が前記所定の速度閾値を下回らず、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過した時点で前記車両の自動運転制御を停止するとともに、前記所定期間経過後において前記ドライバの異常に対応するための前記車両の制御を実行する
ことを含
み、
前記所定の速度閾値は、クリープ現象により前記車両が加速する可能性が有る速度の上限に相当する値であり、
前記車両の減速制御を継続することは、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管するとの判定の原因、または、前記車両の周囲の状況に応じて、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管した後における前記車両の加速で前記車両が他の物体と衝突する危険が有るか否か判定し、当該危険が有ると判定した場合に限り、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続することを含む、
車両制御方法。
【請求項6】
自動運転制御中の車両において、
前記自動運転制御を継続できなくなるときに前記車両の運転制御の主体をドライバに移管する
と判定し、
前記車両の運転制御の主体を前記ドライバに移管する場合に、前記車両に設けられた通知機器を介して前記ドライバに対して運転交代の要求を通知し、
前記運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると前記車両を減速制御し、
前記通知タイミングから所定期間が経過するまでに前記車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続
し、
前記通知タイミングから前記所定期間が経過するまでに前記車両の速度が前記所定の速度閾値を下回らず、かつ、前記ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、前記所定期間が経過した時点で前記車両の自動運転制御を停止するとともに、前記所定期間経過後において前記ドライバの異常に対応するための前記車両の制御を実行する
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させ
、
前記所定の速度閾値は、クリープ現象により前記車両が加速する可能性が有る速度の上限に相当する値であり、
前記車両の減速制御を継続することは、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管するとの判定の原因、または、前記車両の周囲の状況に応じて、前記車両の運転制御の主体をドライバに移管した後における前記車両の加速で前記車両が他の物体と衝突する危険が有るか否か判定し、当該危険が有ると判定した場合に限り、前記所定期間が経過しても前記車両の減速制御を継続することを含む、
車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する車両制御装置、車両制御方法及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転制御中において、何らかの理由でその自動運転制御を継続することが困難となったときに、車両の運転制御の主体が、車両の制御装置からドライバに移管されることがある。このような場合に、運転制御の主体の移管を円滑に遂行するための技術が提案されている(特許文献1~3を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車両制御装置は、自車両の走行環境に基づいて、走行制御を自動から手動に引き継ぐ際に、または引き継ぐことが予測される際に、自車両の状態を変更する状態変更制御を行う。そして車両制御装置は、その状態変更制御として、自車両の加速度または減速度を、状態変更制御が行われていない場合の加速制御または減速制御における設定値と比べて低く設定する。
【0004】
また、特許文献2に開示された自動運転車両の制御装置は、自動運転モードにおいて、車両を減速する第2ブレーキ装置による減速開始前までは、ステアリング操作部材と、ブレーキ操作部材と、アクセル操作部材の何れかの操作をきっかけとして、自動運転モードから手動運転モードに移行する。また、この制御装置は、自動運転モードにおいて、第2ブレーキ装置による減速開始後、車両の停止状態を維持する第1ブレーキ装置が自動的に作動するまでの期間、ステアリング操作部材とアクセル操作部材のうちの何れかの操作をきっかけとして自動運転モードから手動運転モードに移行する。
【0005】
特許文献3に開示された自動運転支援装置は、運転者の状態に基づいて、所定の切替区間において自動運転から手動運転へと切替可能な状態であるか否かを示すレベルを段階的に設定する。さらに、この自動運転支援装置は、設定されたレベルに応じて自動運転中における切替区間の全てまたは一部の行程における車両の走行速度を減速させる。そしてこの自動運転支援装置は、減速される走行速度が最低速度未満となる場合に、運転者に対して警告を発し、あるいは車両を自動的に退避区域に停車させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/109868号
【文献】特開2018-144740号公報
【文献】特開2017-97518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
車両の運転制御の主体を制御装置からドライバへ引き継ぐ際に、制御装置は、運転制御の主体を制御装置からドライバへ引き継ぐ運転交代要求をドライバに通知する。しかし、運転交代要求が通知されてから一定期間を経過しても、ドライバが車両の運転を引き継がない場合に、車両の安全が損ねられるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、車両の運転制御の主体を車両制御装置からドライバへ引き継ぐ際の安全性を向上することが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自動運転制御中の車両において、車両の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定する判定部と、車両の運転制御の主体をドライバに移管する場合に、車両に設けられた通知機器を介してドライバに対して運転交代の要求を通知する通知処理部と、運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると車両を減速制御し、通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、所定期間が経過しても車両の減速制御を継続する制御部と、を有する。
【0010】
この車両制御装置において、制御部は、通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値を下回らず、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、所定期間が経過した時点で車両の自動運転制御を停止することが好ましい。
【0011】
この場合において、制御部は、通知タイミングから所定期間が経過するまでは、ドライバによる車両のステアリング操作、または、ドライバによるステアリング保持とともにアクセルまたはブレーキの操作が検知されると、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が行われたと判定し、一方、通知タイミングから所定期間が経過すると、ドライバによる車両のステアリング操作、または、ドライバによるステアリング保持を伴わないアクセル操作またはブレーキ操作が検知されると、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が行われたと判定することが好ましい。
【0012】
あるいは、制御部は、車両の速度が所定の速度閾値以下である場合、ドライバによる運転の引き継ぎ操作としてのドライバによるアクセルまたはブレーキの操作が検知されない限り、車両の減速制御を継続し、一方、車両の速度が所定の速度閾値よりも高い場合、ドライバによる運転の引き継ぎ操作としてのドライバによるステアリング操作、または、ドライバによるステアリング保持を含む所定の操作が検知されると車両の自動運転制御を停止することが好ましい。
【0013】
さらに、制御部は、車両が走行中の道路の勾配に応じて、所定の速度閾値を調整することが好ましい。
【0014】
あるいはまた、制御部は、車両の運転制御の主体をドライバに移管するとの判定の原因、または、車両の周囲の状況に応じて、車両の運転制御の主体をドライバに移管した後における車両の加速で車両が他の物体と衝突する危険が有るか否か判定し、その危険が有ると判定した場合に限り、所定期間が経過しても車両の減速制御を継続することが好ましい。
【0015】
他の実施形態によれば、車両制御方法が提供される。この車両制御方法は、自動運転制御中の車両において、車両の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定し、車両の運転制御の主体をドライバに移管する場合に、車両に設けられた通知機器を介してドライバに対して運転交代の要求を通知し、運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると車両を減速制御し、通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、所定期間が経過しても車両の減速制御を継続する、ことを含む。
【0016】
さらに他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、自動運転制御中の車両において、車両の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定し、車両の運転制御の主体をドライバに移管する場合に、車両に設けられた通知機器を介してドライバに対して運転交代の要求を通知し、運転交代の要求が通知された通知タイミング以降の所定のタイミングになると車両を減速制御し、通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、所定期間が経過しても車両の減速制御を継続する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る車両制御装置は、車両の運転制御の主体を車両制御装置からドライバへ引き継ぐ際の安全性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
【
図3】車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図4】(a)は、通知タイミングから所定期間が経過するまでの間に車両の速度が所定の速度閾値を下回らない場合についての自動運転制御の継続期間を表す模式図である。(b)は、通知タイミングから所定期間が経過するまでの間に車両の速度が所定の速度閾値を下回る場合についての減速制御を含む自動運転制御の継続期間を表す模式図である。
【
図6】変形例による車両制御処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置、及び、車両制御装置上で実行される車両制御方法ならびに車両制御用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、何らかの理由で車両の運転制御の主体をドライバへ移管する際、所定のタイミングになると、車両を一定の減速度で減速する減速制御を実行する。ここで、車両制御装置が、運転交代要求(Transition Demand, TD)の通知がなされてから一定期間が経過することでドライバに運転制御の主体を移管するとともに減速制御を停止すると、車両の速度によっては、クリープ現象などで車両が加速してしまうことがある。また、エンジンブレーキによる減速が得られ難くなる。その結果として、車両の安全を損ねるおそれがある。
【0020】
そこで、この車両制御装置は、運転交代の要求の通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、その所定期間が経過しても車両の減速制御を継続する。一方、車両の速度が所定の速度閾値を下回らない場合、この車両制御装置は、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されなくても、運転交代の要求の通知タイミングから所定期間が経過した時点で車両の運転制御の主体をドライバに移管する。
【0021】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また
図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、カメラ3と、ストレージ装置4と、ユーザインターフェース5と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)11とを有する。GPS受信機2、カメラ3及びストレージ装置4とECU11とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。さらに、ECU11は、ステアリングを含む操舵装置6、ステアリングに設けられ、ドライバによるステアリングの接触を検知するタッチセンサ7、アクセルペダルを含むアクセル装置8及びブレーキペダルを含むブレーキ装置9と接続される。さらにまた、ECU11は、車両10の車速を測定する車速センサ(図示せず)と接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する距離センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。さらに、車両制御システム1は、他の機器と無線通信するための無線通信端末(図示せず)または目的地までの走行予定ルートを検索するナビゲーション装置(図示せず)といった他の車載機器を有していてもよい。
【0022】
GPS受信機2は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してECU11へ出力する。なお、車両制御システム1は、GPS受信機2の代わりに、他の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。
【0023】
カメラ3は、車外センサの一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ3は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ3は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ3により得られた画像は、車両の周囲の状況を表す車外センサ信号の一例である。カメラ3により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。例えば、車両10の後方へ向けられたカメラが設けられてもよい。
【0024】
カメラ3は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU11へ出力する。
【0025】
ストレージ装置4は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または、不揮発性の半導体メモリを有する。そしてストレージ装置4は、車両の自動運転制御において利用される高精度地図を記憶する。なお、高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域に含まれる各道路についての車線区画線または停止線といった道路標示を表す情報及び道路標識を表す情報が含まれる。高精度地図は、地図情報の一例である。
【0026】
さらに、ストレージ装置4は、高精度地図の更新処理、及び、ECU11からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置4は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信してもよい。また、ストレージ装置4は、地図サーバから無線通信端末を介して車両10の現在位置の周囲の所定の領域についての高精度地図を受信してもよい。また、ストレージ装置4は、ECU11からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図から、車両10の現在位置を含み、上記の所定の領域よりも相対的に狭い範囲を切り出して、車内ネットワークを介してECU11へ出力する。
【0027】
ユーザインターフェース5は、通知機器または通知部の一例であり、例えば、液晶ディスプレイといった表示装置またはタッチパネルディスプレイを有する。ユーザインターフェース5は、車両10の車室内、例えば、インスツルメンツパネルの近傍に、ドライバへ向けて設置される。そしてユーザインターフェース5は、ECU11から車内ネットワークを介して受信した所定の情報または運転交代の要求といった所定の通知を、アイコンにより、または文字情報として表示することで、その情報または通知をドライバへ報知する。ユーザインターフェース5は、インスツルメンツパネルに設けられる1以上の光源、車室内に設置されるスピーカ、または、ステアリングあるいはドライバシートに設けられる振動機器を有していてもよい。この場合、ユーザインターフェース5は、ECU11から車内ネットワークを介して受信した所定の情報または通知を音声信号として出力することで、その情報または通知をドライバへ報知する。あるいは、ユーザインターフェース5は、ECU11から車内ネットワークを介して受信した信号により振動機器を振動させることで、その振動によりドライバに所定の情報または通知を報知してもよい。あるいはまた、ユーザインターフェース5は、ECU11から車内ネットワークを介して受信した信号により光源を点灯または点滅させることで所定の情報または通知を報知してもよい。
【0028】
ECU11は、ユーザインターフェース5を介したドライバの操作指示などにより、車両10に対して自動運転モードが適用される場合、車両10を自動運転制御する。また、ECU11は、車両10が自動運転制御されている場合において、車両10の自動運転制御を継続できるか否か判定し、自動運転制御を継続できないと判定すると、車両10の制御主体をECU11からドライバへ移管するための処理を実行する。さらに、車両10の制御主体がドライバに移管されると、すなわち、車両10に対して手動運転モードが適用されると、ECU11は、レーンキープアシストあるいは衝突回避支援といったドライバによる車両10の運転を支援する機能を実行してもよい。
【0029】
図2に示されるように、ECU11は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0030】
通信インターフェース21は、ECU11を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から測位情報を受信する度に、その測位情報をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ3から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ストレージ装置4から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った、所定の情報または通知を表す信号を、車内ネットワークを介してユーザインターフェース5へ出力する。
【0031】
さらに、通信インターフェース21は、操舵装置6、タッチセンサ7、アクセル装置8及びブレーキ装置9と接続される。そして通信インターフェース21は、操舵装置6から、ステアリングに掛かったトルクを表すステアリングトルク検知信号を受け取ると、ステアリングトルク検知信号をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、タッチセンサ7から、ドライバがステアリングを保持したことを表す検知信号を受信すると、その検知信号をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、アクセル装置8から、アクセルペダルの踏み込み量を表すアクセル操作信号を受け取ると、そのアクセル操作信号をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ブレーキ装置9から、ブレーキペダルの踏み込み量を表すブレーキ操作信号を受け取ると、そのブレーキ操作信号をプロセッサ23へわたす。
【0032】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU11のプロセッサ23により実行される車両制御処理において使用される各種のアルゴリズム及び各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、速度閾値及び運転交代要求においてドライバに通知するためのメッセージなどを記憶する。また、メモリ22は、カメラ3の取り付け位置、撮影方向、焦点距離といったパラメータを記憶する。さらに、メモリ22は、物体検出用の識別器を特定するための各種パラメータ、ストレージ装置4から読み込んだ高精度地図、及び、ナビゲーション装置により生成された走行予定ルートなどを記憶する。さらに、メモリ22は、車両制御処理の途中でECU11が受け取った情報、及び、車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。なお、車両制御処理の途中でECU11が受け取った情報には、車両10の周囲の画像、測位情報、ステアリング保持の検知信号、ステアリングトルク検知信号、アクセル操作信号及びブレーキ操作信号が含まれる。
【0033】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0034】
図3は、車両制御処理に関する、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、判定部31と、通知処理部32と、制御部33とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0035】
判定部31は、車両10が自動運転制御されている間、車両10の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定する。例えば、判定部31は、最新の測位情報で示される車両10の現在位置から車両10が所定距離の区間だけ走行する間に、車両10の自動運転を継続できなくなる場合に、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定する。具体的に、車両10が現在位置から走行予定ルートに沿って、あるいは現在走行中の道路に沿って所定距離の区間だけ進むよりも前に、車両10が高精度地図で表された範囲から外れる場合、車両10は自動運転を継続できなくなる。そこで、判定部31は、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定する。例えば、高精度地図に高速道路に関する情報は表されているものの、一般道路に関する情報は表されていないとする。この場合、例えば、高速道路のインターチェンジが、高精度地図から外れる地点となる。
【0036】
また、判定部31は、車両10の周囲の状況に応じて、車両10の自動運転を継続できるか否か判定してもよい。そして判定部31は、車両10の自動運転を継続できないと判定した場合、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定してもよい。例えば、判定部31は、車両10が走行中の自車線において、車両10の前方に他の車両が割り込んできたときに、車両10の自動運転を継続できないとして、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定してもよい。また、無線通信端末(図示せず)を介して受信した交通情報により、車両10が現在走行中の道路または走行予定ルートに沿って車両10の現在位置から所定距離の区間内において、道路工事、車線規制または渋滞が発生していることが通知されることがある。このような場合、判定部31は、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定してもよい。あるいは、カメラ3あるいは距離センサ(図示せず)から故障したしたことを表す信号をECU11が受信すると、ECU11は車両10の自動運転制御を継続できないとして、判定部31は、車両10の制御主体をドライバに移管すると判定する。
【0037】
自車線への他の車両の割り込みにより制御主体を移管する場合、判定部31は、例えば、カメラ3により生成された、車両10の周囲を表す画像を、識別器に入力することで、その画像上で他の車両が表された領域及び車線区画線が表された領域を検出する。判定部31は、そのような識別器として、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を利用することができる。あるいは、判定部31は、そのような識別器として、Vision transformerといった、Self-attention network(SAN)型のアーキテクチャを持つDNNを利用してもよい。あるいは、判定部31は、そのような識別器として、Fully Convolutional NetworkあるいはU-Netといった、画素ごとにその画素に表された物体の種別を識別するセマンティックセグメンテーション用のDNNを利用してもよい。さらにまた、判定部31は、AdaBoost識別器といった他の機械学習手法に基づく識別器を利用してもよい。このような識別器は、車両あるいは車線区画線が表された多数の教師画像を用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って、画像から他の車両及び車線区画線を検出するように予め学習される。
【0038】
判定部31は、検出された車線区画線のうち、水平方向における画像の中心線の左側及び右側のそれぞれにおいて、その中心線に最も近い車線区画線を、自車線を区画する車線区画線とする。そして判定部31は、画像上において、左右それぞれの自車線を区画する車線区画線で挟まれた領域を、自車線に相当する領域とする。さらに、判定部31は、検出された1以上の他の車両のうち、自車線に相当する領域に位置する他の車両を、自車線において車両10に先行する先行車両と判定する。判定部31は、カメラ3から時系列に得られる一連の画像のそれぞれに対して上記の処理を実行することで、各画像から他の車両及び車線区画線を検出し、その検出結果に基づいて自車線を走行する先行車両を特定する。さらに、判定部31は、最新の画像において先行車両が表された領域及び過去の画像で他の車両が表された領域に対して、KLT trackerといった追跡手法を適用することで、先行車両を過去に遡って追跡する。そして判定部31は、追跡の結果、最新の画像において検出された先行車両が、直前の所定期間内において自車線と異なる車線に位置する場合、その先行車両は、車両10の前方に割り込んだと判定すればよい。
【0039】
判定部31は、車両10の制御主体をドライバへ移管するとの判定結果が得られると、その判定結果を通知処理部32及び制御部33へ通知する。さらに、判定部31は、車両10の制御主体をドライバへ移管するとの判定の原因となった事象を表す信号を制御部33へ通知する。
【0040】
通知処理部32は、車両10の制御主体をドライバに移管することを判定部31から通知されると、ユーザインターフェース5を介してドライバに対して運転交代の要求を通知する。その際、通知処理部32は、運転交代の要求を表すメッセージまたはアイコンをユーザインターフェース5が有する表示装置に表示させ、あるいは、その要求に相当する光源を点灯または点滅させる。あるいは、通知処理部32は、その要求を表す音声信号を、ユーザインターフェース5が有するスピーカに出力させる。あるいはまた、通知処理部32は、ユーザインターフェース5が有する振動機器を、その要求に応じた振動の方式(振動周期または振動の強度)にしたがって振動させる。なお、ユーザインターフェース5が、上記の機器のうちの二つ以上を有している場合、通知処理部32は、二つ以上の機器のそれぞれまたは何れかを介して、運転交代の要求をドライバに通知してもよい。
【0041】
通知処理部32は、ユーザインターフェース5を介して運転交代の要求をドライバに通知した通知タイミングを制御部33へ通知する。
【0042】
制御部33は、車両10に自動運転モードが適用されている間、車両10を自動運転制御する。そして制御部33は、運転交代の要求が通知された通知タイミング以降における所定のタイミングになるか、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されるまで、自動運転制御を継続する。そしてその所定のタイミングになると、制御部33は、自動運転制御の一態様として、車両10を所定の減速度で減速させる減速制御の実行を開始する。また、制御部33は、通知タイミングからの経過時間を計時する。そして制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、所定期間が経過しても車両10の減速制御を継続する。一方、車両10の速度が所定の速度閾値を下回らず、かつ、通知タイミングから所定期間が経過するまでにドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、制御部33は、減速制御の実施の有無によらず、車両10の制御主体をドライバに移管する。
【0043】
制御部33は、車速センサ(図示せず)からECU11がうけとった、車両10の速度の測定値を、速度閾値と比較することで、車両10の速度が速度閾値を下回ったか否かを判定すればよい。
【0044】
なお、減速制御の実行を開始する所定のタイミングは、例えば、通知タイミング以降において車両10の速度が所定の速度閾値以下となったタイミングである。あるいは、その所定のタイミングは、運転交代の要求が通知された通知タイミングそのものであってもよい。あるいはまた、その所定のタイミングは、通知タイミングから所定の待機期間を経過したタイミングであってもよい。ただし、所定の待機期間は、上記の所定期間よりも短い期間、例えば、1~2秒間に設定される。また、所定期間は、例えば、3~5秒間とすることができる。さらに、所定の速度閾値は、例えば、クリープ現象により車両10が加速する可能性が有る速度の上限値、例えば、10km/h~20km/hに設定される。
【0045】
制御部33は、車両10を自動運転制御している間、所定の速度で車両10が走行するように、車両10の各部を制御する。所定の速度は、ドライバにより、ユーザインターフェース5を介して設定された速度、あるいは、高精度地図及び最新の測位情報で示される車両10の現在位置を参照することで特定される、車両10が走行中の道路の制限速度とすることができる。また、制御部33は、自車線を走行する先行車両が存在する場合、先行車両と車両10間の距離が一定距離に保たれるよう、車両10の速度を制御してもよい。なお、先行車両と車両10間の距離は、カメラ3により生成された画像上で車両10が表された領域に基づいて推定される。すなわち、画像上で車両10が表された領域の下端の位置は、先行車両と路面とが接している位置を表していると推定される。そして、画像上でのその領域の下端の位置は、カメラ3から見た先行車両と路面とが接している位置への方位を表している。したがって、制御部33は、画像上での車両10が表された領域の下端の位置に相当するカメラ3からの方位と、カメラ3の設置高さとに基づいて、車両10と先行車両間の距離を推定できる。また、車両10にLiDARセンサ等の距離センサが搭載されている場合、制御部33は、その距離センサにより測定される、車両10の前方方向に存在する物体までの距離を、車両10と先行車両間の距離としてもよい。
【0046】
制御部33は、車両10の速度が、上記のように定められた速度となるように、アクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして制御部33は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部33は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。さらに、制御部33は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号をブレーキ装置9へ出力する。
【0047】
また、制御部33は、減速制御が開始されると、減速制御を実行している間、車両10の減速度が所定の減速度(例えば、0.7m/s2)となるように、アクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして制御部33は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、制御部33は、設定されたアクセル開度に従ってモータへ供給される電力量を求め、その電力量がモータへ供給されるようにモータの駆動回路を制御する。さらに、制御部33は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号をブレーキ装置9へ出力する。
【0048】
さらに、制御部33は、減速制御が継続したまま、車両10の速度が0になると、車両10が停車した状態を継続するように、アクセル開度を0にし、あるいはブレーキ量を所定値よりも大きくしてもよい。
【0049】
制御部33は、ドライバによるステアリング操作、ステアリング保持、アクセル装置及びブレーキ操作の少なくとも何れかに基づいて、ドライバによる運転の引き継ぎ操作を検知する。そして制御部33は、ドライバによる運転の引き継ぎ操作を検知すると、それ以降、車両10の運転制御の主体をドライバに移管する。その後、ドライバの運転操作に従って車両10は運転制御される。
【0050】
例えば、通知タイミングから所定期間が経過するまでは、制御部33は、下記の(a)~(c)の何れかにより、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定する。
(a)操舵装置6から受信したステアリングトルク検知信号に表されるステアリングに掛かったトルクが所定のトルク値以上となるとき。すなわち、ドライバがステアリングの操作を行ったことが検知されたとき
(b)ECU11が、タッチセンサ7から、ドライバがステアリングを保持したことを表す検知信号を受信し、かつ、アクセル装置8から受信したアクセル操作信号に表されるアクセルの踏み込み量が所定量以上であるとき。すなわち、ドライバがステアリングを保持し、かつ、アクセル装置8を操作したことが検知されたとき
(c)ECU11が、タッチセンサ7から、ドライバがステアリングを保持したことを表す検知信号を受信し、かつ、ブレーキ装置9から受信したブレーキ操作信号に表されるブレーキペダルの踏み込み量が所定量以上であるとき。すなわち、ドライバがステアリングを保持し、かつ、ブレーキ装置9を操作したことが検知されたとき
【0051】
また、通知タイミングから所定期間が経過した後、制御部33は、ドライバがステアリングを保持していなくても、アクセル装置8またはブレーキ装置9を操作すれば、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定してもよい。すなわち、上記の(b)及び(c)の判定条件において、ECU11がタッチセンサ7からドライバがステアリングを保持したことを表す検知信号を受信したことが省略されてもよい。このように、通知タイミングから所定期間が経過した後における運転の引き継ぎの要件を緩和することで、制御部33は、制御主体がドライバに移管された後に車両10が意図しない加速を行うことを防止しつつ、ドライバの利便性を向上できる。
【0052】
また、車両10が停止した後について、制御部33は、ドライバがアクセルまたはブレーキを操作したことが検知されるか、シフトレバーをパーキングポジションにしたことが検知されると、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定してもよい。あるいは、車両10が停止した後について、制御部33は、電動パーキングブレーキがオンにされると、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定してもよい。
【0053】
図4(a)は、通知タイミングから所定期間が経過するまでの間に車両10の速度が所定の速度閾値を下回らない場合についての自動運転制御の継続期間を表す模式図である。
図4(b)は、通知タイミングから所定期間が経過するまでの間に車両10の速度が所定の速度閾値を下回る場合についての減速制御を含む自動運転制御の継続期間を表す模式図である。
図4(a)及び
図4(b)において、横軸は経過時間を表し、縦軸は車両10の速度を表す。また、
図4(a)において、グラフ401は、車両10の速度の時間変化を表す。同様に、
図4(b)において、グラフ402は、車両10の速度の時間変化を表す。
【0054】
図4(a)に示されるように、時刻t1になるまで、車両10の速度は一定に保たれている。そして時刻t1において、運転交代の要求がドライバに通知される。すなわち、時刻t1が通知タイミングとなる。通知タイミングt1の後も、車両10の自動運転制御は継続され、例えば先行車両との関係で車両10の速度は時間経過とともに変動するものの、通知タイミングt1から所定期間Pが経過するまでの間、車両10の速度は速度閾値Thvよりも高くなっている。また、通知タイミングt1から所定期間Pが経過するまでの間、ドライバによる運転の引き継ぎ操作も検知されていない。そのため、この例では、通知タイミングt1から所定期間Pが経過した時刻t2において制御主体がドライバに移管され、時刻t2以降、車両10の速度は、ドライバによる運転操作に基づくものとなる。この例では、制御主体がドライバに移管されたときに車両10の速度があまり低下していないので、ドライバが運転操作を行っていなければ、時刻t2以降においてもエンジンブレーキにより車両10の速度は減速する。
【0055】
一方、
図4(b)に示される例でも、時刻t1になるまで、車両10の速度は一定に保たれている。そして時刻t1において、運転交代の要求がドライバに通知される。この例では、通知タイミングt1の後の時刻t2において車両10の速度が速度閾値Thvを下回り、時刻t2以降、減速制御が実行される。そして車両10の速度は時間経過とともに低下する。この場合、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない限り、通知タイミングt1から所定期間Pが経過した時刻t3以降においても減速制御が継続される。そして車両10の速度が0になると、それ以降、車両10が停車した状態が維持される。
【0056】
図5は、プロセッサ23により実行される、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、以下の動作フローチャートに従って車両制御処理を実行すればよい。
【0057】
プロセッサ23の判定部31は、車両10の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定する(ステップS101)。そして車両10の運転制御の主体をドライバに移管すると判定された場合、プロセッサ23の通知処理部32は、ユーザインターフェース5を介してドライバに対して運転交代の要求を通知する(ステップS102)。
【0058】
ドライバに対して運転交代の要求が通知された通知タイミングの後、プロセッサ23の制御部33は、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されたか否か判定する(ステップS103)。ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知された場合(ステップS103-Yes)、制御部33は、車両10の自動運転制御を停止する(ステップS104)。その後、ドライバによる運転操作に従って車両10は制御され、ECU11は、車両制御処理を終了する。
【0059】
一方、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合(ステップS103-No)、制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値Thvよりも高いか否か判定する(ステップS105)。車両10の速度が所定の速度閾値Thvよりも高い場合(ステップS105-Yes)、制御部33は、通知タイミングから所定期間が経過したか否か判定する(ステップS106)。通知タイミングから所定期間が経過した場合(ステップS106-Yes)、制御部33は、車両10の自動運転制御を停止する(ステップS104)。その後、ドライバによる運転操作に従って車両10は制御され、ECU11は、車両制御処理を終了する。
【0060】
一方、通知タイミングから所定期間が経過していなければ(ステップS106-No)、制御部33は、運転交代の要求がドライバに通知された状態で、車両10の自動運転制御を継続する(ステップS107)。そして制御部33は、ステップS103以降の処理を繰り返す。
【0061】
また、ステップS105において、車両10の速度が所定の速度閾値Thv以下である場合(ステップS105-No)、制御部33は、運転交代の要求がドライバに通知された状態で、車両10の減速制御を継続する(ステップS108)。そして制御部33は、ステップS103以降の処理を繰り返す。
【0062】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、所定の理由で車両の自動運転制御を継続できなくなると判断すると、運転交代の要求をドライバに通知する。そして運転交代の要求の通知タイミングから所定期間が経過するまで車両が所定の速度閾値以上の速度を維持する場合、この車両制御装置は、ドライバによる運転の引き継ぎ操作を検知しなくても、所定期間の経過時点で運転制御の主体をドライバに移管する。これにより、この車両制御装置は、制御主体がドライバに移管された後において車両がドライバの意図によらずに加速することが想定されない場合に、車両の制御主体をドライバに確実に移管することができる。一方、運転交代の要求の通知タイミング以降の所定のタイミングになると、この車両制御装置は、減速制御を実行する。そしてその通知タイミングから所定期間が経過するまでに車両の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、この車両制御装置は、その所定期間が経過しても車両の減速制御を継続する。そのため、この車両制御装置は、クリープ現象による車両の意図しない加速を防止することができるので、車両の運転制御の主体を車両制御装置からドライバへ引き継ぐ際の安全性を向上することができる。
【0063】
変形例によれば、制御部33は、車両の速度に応じて、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定するための判定条件を切り替えてもよい。例えば、車両10の速度が所定の速度閾値以下である場合、制御部33は、ドライバによるアクセル操作またはブレーキ操作の何れかが行われた場合に限り、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定してもよい。すなわち、車両10の速度が所定の速度閾値以下である場合、上記の(b)または(c)の判定条件が満たされた場合に限り、制御部33は、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定する。なお、この変形例でも、通知タイミングから所定期間が経過した後では、上記の(b)及び(c)の判定条件において、ECU11が、タッチセンサ7から、ドライバがステアリングを保持したことを表す検知信号を受信したことが省略されてもよい。したがって、制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値以下である場合、ドライバによるアクセル操作またはブレーキ操作が検知されない限り、減速制御を継続する。
【0064】
一方、車両10の速度が所定の速度閾値よりも高い場合、制御部33は、上記の(a)~(c)の何れの判定条件が満たされても、すなわち、ステアリング保持を含む所定の操作が行われると、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定すればよい。あるいは、車両10の速度が所定の速度閾値よりも高い場合、制御部33は、ドライバがステアリングを操作または保持したことを検知しただけで、ドライバが運転の引き継ぎ操作を行ったと判定してもよい。すなわち、上記の(b)の判定条件において、ドライバによるアクセル装置8の操作の検知が省略されてもよい。また、上記の(c)の判定条件において、ドライバによるブレーキ装置9の操作の検知が省略されてもよい。
【0065】
図6は、この変形例による、車両制御処理の動作フローチャートである。プロセッサ23の判定部31は、車両10の運転制御の主体をドライバに移管するか否かを判定する(ステップS201)。そして車両10の運転制御の主体をドライバに移管すると判定された場合、プロセッサ23の通知処理部32は、ユーザインターフェース5を介してドライバに対して運転交代の要求を通知する(ステップS202)。そしてプロセッサ23の制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値Thvよりも高いか否か判定する(ステップS203)。
【0066】
車両10の速度が所定の速度閾値Thvよりも高い場合(ステップS203-Yes)、制御部33は、上記の(a)~(c)の何れかの判定条件が満たされたか否か判定する(ステップS204)。上記の(a)~(c)の何れかの判定条件が満たされた場合、すなわち、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知された場合(ステップS204-Yes)、制御部33は、車両10の自動運転制御を停止する(ステップS205)。その後、ドライバによる運転操作に従って車両10は制御され、ECU11は、車両制御処理を終了する。
【0067】
一方、上記の(a)~(c)の何れの判定条件も満たされない場合、すなわち、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合(ステップS204-No)、制御部33は、車両10の自動運転制御を継続する(ステップS206)。この場合、運転交代の要求がドライバに通知された状態が維持される。そして制御部33は、ステップS203以降の処理を繰り返す。
【0068】
一方、ステップS203において、車両10の速度が所定の速度閾値Thv以下である場合(ステップS203-No)、制御部33は、減速制御を開始する(ステップS207)。そして制御部33は、上記の(b)及び(c)の判定条件の何れかが満たされたか否か判定する(ステップS208)。なお、上記のように、(b)及び(c)の判定条件において、ドライバがステアリングを保持したことの検知は省略されてもよい。上記の(b)及び(c)の何れかの判定条件が満たされた場合、すなわち、アクセル操作またはブレーキ操作を含む、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知された場合(ステップS208-Yes)、制御部33は、自動運転制御を停止する(ステップS205)。その後、ドライバによる運転操作に従って車両10は制御され、ECU11は、車両制御処理を終了する。
【0069】
一方、上記の(b)及び(c)の何れの判定条件も満たされない場合、すなわち、アクセル操作及びブレーキ操作の何れも検知されない場合(ステップS208-No)、制御部33は、車両10の減速制御を継続する(ステップS209)。この場合、運転交代の要求がドライバに通知された状態が維持される。そして制御部33は、ステップS203以降の処理を繰り返す。
【0070】
なお、この変形例においても、制御部33は、減速制御が適用されない場合において、通知タイミングから所定の期間が経過してもドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、運転制御の主体をドライバに移管してもよい。
【0071】
この変形例によれば、車両制御装置は、車両の速度が低い場合において、ドライバによるアクセルまたはブレーキの操作を運転引き継ぎのための必須条件とすることで、ドライバが運転操作を引き継いだ時に意図しない車両の加速が生じることを防止できる。さらに、この車両制御装置は、車両の速度が高い場合にアクセル及びブレーキ以外の操作による運転引き継ぎを可能とすることで、ドライバの利便性が損なわれることを抑制できる。
【0072】
なお、上記の実施形態または変形例において、制御部33は、速度閾値を、車両10の周囲の環境に応じて動的に設定してもよい。例えば、制御部33は、車両10が走行中の道路の勾配に応じて速度閾値を調整してもよい。この場合、制御部33は、車両10が上り勾配となる道路を走行している場合の速度閾値を、車両10が平坦な道路を走行している場合の速度閾値よりも低くしてもよい。これは、車両10が上り勾配となる道路を走行している場合、自動運転制御の停止後において車両10が加速する可能性が低下するためである。逆に、制御部33は、車両10が下り勾配となる道路を走行している場合の速度閾値を、車両10が平坦な道路を走行している場合の速度閾値よりも高くしてもよい。これは、車両10が下り勾配となる道路を走行している場合、自動運転制御の停止後において車両10が加速する可能性が上昇するためである。なお、制御部33は、最新の測位情報で示される車両10の現在位置と高精度地図とを参照することで、車両10が走行中の道路の勾配をもとめればよい。この変形例によれば、制御部33は、速度閾値を適切な値に調整することができる。
【0073】
また、上記の実施形態または変形例において、制御部33は、運転制御の主体をドライバに移管した後における車両10の加速で車両10が他の物体と衝突する危険が有るか否か判定してもよい。その際、制御部33は、車両10の周囲の状況、あるいは、車両10の制御主体をドライバへ移管するとの判定の原因に応じて、その危険の有無を判定すればよい。そして、車両10が加速することで車両10が他の物体と衝突する危険性がある場合には、制御部33は、上記の実施形態と同様の処理を実行する。すなわち、制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値以下となり、かつ、運転交代の要求の通知タイミングから所定期間が経過した後も、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない限り、減速制御を継続する。例えば、車両10の前方に他の車両の割り込みが生じたことが制御主体のドライバへの移管判定の原因である場合、車両10が加速することで車両10が他の物体と衝突する危険性があるとして、制御部33は、上記の実施形態と同様の処理を実行すればよい。また、運転交代の要求の通知タイミングにおいて測位情報で表される車両10の位置及び高精度地図を参照することで、制御部33は、通知タイミングにおいて車両10がカーブを走行中か否かを判定してもよい。そして制御部33は、通知タイミングにおいて車両10がカーブを走行中である場合、上記の実施形態と同様の処理を実行すればよい。
【0074】
一方、高精度地図でカバーされる領域外へ車両10が退出することが運転交代要求の原因である場合のように、ドライバに制御主体が移管された後に車両10が他の物体と衝突するといった危険が直ちに生じないことが想定される場合がある。このような場合には、制御部33は、車両10の速度にかかわらず、通知タイミングから所定期間が経過すると、車両10の自動運転制御または減速制御を停止して、ドライバに制御主体を移管してもよい。また、制御部33は、運転交代の要求がドライバに通知された通知タイミングにおいて、自動運転制御において車両10に対して加速することが要求されている場合には、減速制御自体行わないようにしてもよい。
【0075】
さらに、制御部33は、車両10と先行車両間の距離、相対速度及び相対加速度に基づいて、通知タイミングからの所定期間経過後に制御主体を移管してもドライバが運転操作を行わない場合に車両10が先行車両と衝突する危険が有るか否かを判定してもよい。そしてそのような危険が有る場合には、制御部33は、上記の実施形態のように、車両10の速度が所定の速度閾値以下となり、通知タイミングから所定期間が経過した後も、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、減速制御を継続してもよい。逆に、そのような危険が無い場合には、制御部33は、車両10の速度にかかわらず、通知タイミングから所定期間が経過した時点で、ドライバに制御主体を移管してもよい。なお、制御部33は、カメラ3により生成された時系列の一連の画像のそれぞれから、判定部31と同様の処理を実行して先行車両を検出し、検出した先行車両を追跡することで、車両10と先行車両間の車間距離の経時変化をもとめればよい。そして制御部33は、その車間距離の経時変化に対して、Kalman Filterといった予測フィルタを適用することで、通知タイミングから所定期間経過した後の車間距離、相対速度及び相対加速度の時系列の変化を予測する。制御部33は、その予測結果に基づいて、車両10と先行車両とが所定の危険距離以下まで近づくことが予測される場合、車両10が先行車両と衝突する危険が有ると判定すればよい。
【0076】
あるいは、上記の実施形態のように通知タイミングから所定期間を経過した後も減速制御を継続することで、自車線において車両10の後方を走行する後続車両と車両10とが衝突する危険が生じることがある。このような場合、制御部33は、車両10の速度によらず、減速制御を行わないようにしてもよい。そして制御部33は、通知タイミングから所定期間を経過した時点で、ドライバに制御主体を移管してもよい。この場合、制御部33は、車両10の後方を撮影するように設けられたカメラ3により生成された時系列の一連の画像のそれぞれから、判定部31と同様の処理を実行して後続車両を検出する。そして制御部33は、検出した後続車両を追跡することで、車両10と後続車両間の車間距離の経時変化をもとめればよい。制御部33は、その車間距離の経時変化に対して、Kalman Filterといった予測フィルタを適用することで、通知タイミングから所定期間経過した後の車間距離、相対速度及び相対加速度の時系列の変化を予測する。制御部33は、その予測結果に基づいて、車両10と後続車両とが所定の危険距離以下まで近づくことが予測される場合、車両10が後続車両と衝突する危険が有ると判定すればよい。
【0077】
あるいはまた、制御部33は、通知タイミングから所定期間を経過した後に車両10が惰性走行をした場合に得られる減速度に応じて、制御を切り替えてもよい。この場合、制御部33は、車両10の速度と減速度との関係を表す参照テーブルを参照して、通知タイミングにおける車両10の速度に対応する減速度をもとめればよい。なお、そのような参照テーブルは、メモリ22に予め記憶されていればよい。また、車両10がモータにより駆動される場合、参照テーブルは、車両10の車速だけでなく、車両10のバッテリの残量と減速度との関係を表していてもよい。そして制御部33は、参照テーブルを参照して、通知タイミングにおける車両10の速度及びバッテリの残量に対応する減速度をもとめればよい。減速度が所定の減速度閾値未満となる場合、上記の実施形態と同様に、制御部33は、車両10の速度が所定の速度閾値以下となり、通知タイミングから所定期間が経過した後も、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合、減速制御を継続してもよい。逆に、減速度が所定の減速度閾値以上となる場合、制御部33は、車両10の速度によらず、減速制御を行わないようにしてもよい。
【0078】
このように、この変形例によれば、制御部33は、車両10の運転制御の主体をドライバに移管するとの判定の原因、または、車両10の周囲の状況に応じて、ドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合における減速制御の継続の有無を切り替える。これにより、制御部33は、車両10の安全を確保しつつ、運転制御のドライバへの引き継ぎのタイミングをより適したものとすることができる。
【0079】
さらに、上記の変形例のように、通知タイミングから所定期間を超えても自動運転制御を継続する場合には、制御部33は、通知タイミングから所定期間を超えると、ドライバに対しての運転交代の要求の通知を強めてもよい。その際、制御部33は、例えば、ユーザインターフェース5に表示される、運転交代の要求のメッセージまたはアイコンの輝度を強くし、そのメッセージまたはアイコンの色をより目立つ色に変更することで運転交代の要求の通知を強める。あるいは、制御部33は、ユーザインターフェース5が有するスピーカから発する運転交代の要求の音声を大きくし、あるいは、ユーザインターフェース5が有する振動機器の振動を強めることで、運転交代の要求の通知を強めてもよい。さらに、運転交代の要求の通知を強めてからさらに一定期間経過してもドライバによる運転の引き継ぎ操作が検知されない場合には、制御部33は、ドライバの異常時対応システムを作動させてもよい。すなわち、制御部33は、異常時対応システムの作動として、ホーンを吹鳴させ、ハザードランプを点灯させ、あるいは無線通信端末を介してヘルプネットへ接続して緊急事態を通知してもよい。
【0080】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 カメラ
4 ストレージ装置
5 ユーザインターフェース
6 操舵装置
7 タッチセンサ
8 アクセル装置
9 ブレーキ装置
11 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 判定部
32 通知処理部
33 制御部