(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-23
(45)【発行日】2025-01-07
(54)【発明の名称】運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241224BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241224BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022065904
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛引 有輝也
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247871(JP,A)
【文献】特開2002-150472(JP,A)
【文献】特開2014-081947(JP,A)
【文献】特開2007-276540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有し、前記プロセッサは、
車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、
前記車両操作情報
に含まれる前記ウインカー信号が検知され、かつ前記ヨーレートが予め定められた第1範囲の範囲外である場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、
前記イベントの期間における
操舵角の加速度を示すステア角加速度、及び前記ステア角加速度の閾値を導出し、前記ステア角加速度が前記閾値に従う第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更である旨の前記車両の運転操作の評価を行う
運転診断装置。
【請求項2】
前記車両操作情報は、前記車両の加速度をさらに含み、
前記加速度が予め定められた
第3範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更として評価する
請求項1に記載の運転診断装置。
【請求項3】
前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、
前記
第2範囲は、前記車速の平均値に応じて設定される
請求項
1に記載の運転診断装置。
【請求項4】
車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、
前記車両操作情報
に含まれる前記ウインカー信号が検知され、かつ前記ヨーレートが予め定められた第1範囲の範囲外である場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、
前記イベントの期間における
操舵角の加速度を示すステア角加速度、及び前記ステア角加速度の閾値を導出し、前記ステア角加速度が前記閾値に従う第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更である旨の前記車両の運転操作の評価を行う
処理をコンピュータが実行する運転診断方法。
【請求項5】
車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、
前記車両操作情報
に含まれる前記ウインカー信号が検知され、かつ前記ヨーレートが予め定められた第1範囲の範囲外である場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、
前記イベントの期間における
操舵角の加速度を示すステア角加速度、及び前記ステア角加速度の閾値を導出し、前記ステア角加速度が前記閾値に従う第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更である旨の前記車両の運転操作の評価を行う
処理をコンピュータに実行させる運転診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急な方向転換、及び急な加減速を伴う車線変更を行う運転を行っているか否かを診断する運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車線変更を行った際において、自車両、及び他の車両が急減速を行った場合の衝突リスクを計算する車線変更診断装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、自車両及び他の車両の衝突リスクを計算するのに留まるため、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができるとは限らなかった。
【0005】
本発明は、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる運転診断装置、運転診断方法、及び運転診断プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の運転診断装置は、プロセッサを有し、前記プロセッサは、車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、前記車両操作情報が予め定められた条件を満たした場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、前記イベントの期間における前記車両の運転操作の評価を行う。
【0007】
請求項1に記載の運転診断装置は、ウインカー信号、及び車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、当該車両操作情報を用いて、車線変更を示すイベントを検出して、当該イベント期間における運転操作を評価して運転診断を行う。つまり、当該運転診断装置によれば、車載器に接続されたセンサから取得した、現に行われている車両の操作を示す車両操作情報を用いて、運転操作の評価を行う。これにより、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【0008】
請求項2に記載の運転診断装置は、請求項1に記載の運転診断装置において、前記予め定められた条件は、前記ウインカー信号を検知した場合、かつ前記ヨーレートが予め定められた第1範囲の範囲外である場合である。
【0009】
請求項2に記載の運転診断装置によれば、明確に車線変更を行うイベントを検出することができる。
【0010】
請求項3に記載の運転診断装置は、請求項1に記載の運転診断装置において、前記車両操作情報は、前記車両の加速度をさらに含み、前記加速度が予め定められた第2範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更として評価する。
【0011】
請求項3に記載の運転診断装置によれば、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき車両操作を検出できる。
【0012】
請求項4に記載の運転診断装置は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の運転診断装置において、前記車両操作情報は、操舵角をさらに含み、前記プロセッサは、前記車両操作情報から前記操舵角の加速度を示すステア角加速度を導出し、前記ステア角加速度が予め定められた第3範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更として評価する。
【0013】
請求項4に記載の運転診断装置によれば、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき車両操作を検出できる。
【0014】
請求項5に記載の運転診断装置は、請求項4に記載の運転診断装置において、前記車両操作情報は、前記車両の加速度をさらに含み、前記加速度が予め定められた第2範囲の範囲外である場合、かつ前記ステア角加速度が予め定められた第3範囲の範囲外である場合、注意すべき車線変更として評価する。
【0015】
請求項5に記載の運転診断装置によれば、さらに注意すべき車両操作を検出できる。
【0016】
請求項6に記載の運転診断装置は、請求項4又は請求項5に記載の運転診断装置において、前記車両操作情報は、前記車両に係る車速をさらに含み、前記第3範囲は、前記車速の平均値に応じて設定される。
【0017】
請求項6に記載の運転診断装置によれば、車速に応じて評価が変動する場合であっても、明確に安全な運転に影響を及ぼす注意すべき車両操作を検出できる。
【0018】
請求項7に記載の運転診断方法は、車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、前記車両操作情報が予め定められた条件を満たした場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、前記イベントの期間における前記車両の運転操作の評価を行う。
【0019】
請求項7に記載の運転診断方法は、ウインカー信号、及び車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、当該車両操作情報を用いて、車線変更を示すイベントを検出して、当該イベント期間における運転操作を評価して運転診断を行う。つまり、当該運転診断方法によれば、車載器に接続されたセンサから取得した、現に行われている車両の操作を示す車両操作情報を用いて、運転操作の評価を行う。これにより、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【0020】
請求項8に記載の運転診断プログラムは、車両に搭載されたセンサから前記車両のウインカーの操作を示すウインカー信号、及び前記車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、前記車両操作情報が予め定められた条件を満たした場合、前記車両による車線変更を示すイベントと判定し、前記イベントの期間における前記車両の運転操作の評価を行う処理をコンピュータに実行させる。
【0021】
請求項8に記載の運転診断プログラムが実行されるコンピュータは、ウインカー信号、及び車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、当該車両操作情報を用いて、車線変更を示すイベントを検出して、当該イベント期間における運転操作を評価して運転診断を行う。つまり、当該コンピュータによれば、車載器に接続されたセンサから取得した、現に行われている車両の操作を示す車両操作情報を用いて、運転操作の評価を行う。これにより、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る運転診断システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態の車両のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の車載器の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態のセンタサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態のセンタサーバの機能構成を示すブロック図である。
【
図6】実施形態に係る車線変更の検出の説明に供するヨーレートの時系列データの一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るステア角加速度の導出の説明に供する平均車速度、及びステア角加速度の関係の一例を示す図である。
【
図8】実施形態のセンタサーバにおいて実行される運転診断の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態のセンタサーバにおいて実行される評価の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の運転診断装置を含む運転診断システムについて説明する。運転診断システムは、車両に搭載されている車載器から取得した車両の操作に係る情報(以下、「車両操作情報」という。)を用いて、当該車両の車線を変更するイベントを検出するシステムである。また、運転診断システムは、車両操作情報を用いて、車線変更時における車両の操作の評価を行う。
【0025】
(全体構成)
図1に示されるように、本発明の実施形態の運転診断システム10は、車両12と、運転診断装置としてのセンタサーバ30と、を含んで構成されている。また、車両12には車載器20が搭載されており、車載器20は、ネットワークNを通じて相互にセンタサーバ30に接続されている。
【0026】
なお、
図1には、1台のセンタサーバ30に対して、車載器20を含む1台の車両12が図示されているが、車両12、車載器20、及びセンタサーバ30の数はこの限りではない。
【0027】
車載器20は、車両12の操作に関する車両操作情報を取得して、センタサーバ30に送信する装置である。ここで、本実施形態に係る車両操作情報は、車両12に搭載されている各々の機器から検出された運転操作に係る特徴量である。例えば、本実施形態に係る車両操作情報は、車両の車速、加速度、ステアリングにおけるステア角(操舵角)、車両のヨーレート、及びウインカーの切り替えを示す信号等の車両12の操作に係る時系列データである。
【0028】
センタサーバ30は、例えば、車両12を製造する製造元や当該製造元系列のカーディーラーに設置されている。センタサーバ30は、車載器20から車両操作情報を取得して、車両の車線変更を示すイベントを検出し、イベント期間における車両操作の評価を行う。ここで、本実施形態に係るイベント期間は、例えば、5秒等の予め定められた期間である。
【0029】
(車両)
図2に示されるように、本実施形態に係る車両12は、車載器20と、複数のECU(Electronic Control Unit)22と、複数の車載機器24と、を含んで構成されている。
【0030】
車載器20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、車内通信I/F(Interface)20D、及び無線通信I/F20Eを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、車内通信I/F20D、及び無線通信I/F20Eは、内部バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20Bからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0032】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM20Bには、ECU22から車両12の運転操作に係る車両操作情報の収集を行う収集プログラム100が記憶されている。収集プログラム100の実行に伴い、車載器20は、車両操作情報をセンタサーバ30に送信する処理を実行する。また、ROM20Bには、車両操作情報のバックアップデータである履歴情報110が記憶されている。RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0033】
車内通信I/F20Dは、各ECU22と接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信規格が用いられる。車内通信I/F20Dは、外部バス20Fに対して接続されている。
【0034】
無線通信I/F20Eは、センタサーバ30と通信するための無線通信モジュールである。当該無線通信モジュールは、例えば、5G、LTE、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格が用いられる。無線通信I/F20Eは、ネットワークNに対して接続されている。
【0035】
ECU22は、ADAS(Advanced Driver Assistance System)-ECU22A、及びステアリングECU22Bを少なくとも含む。
【0036】
ADAS-ECU22Aは、先進運転支援システムを統括制御する。ADAS-ECU22Aには、車載機器24を構成する車速センサ24A、ヨーレートセンサ24B、加速度センサ24C、及び外部センサ24Dが接続されている。車速センサ24Aは、車両の速度を検出するセンサであり、ヨーレートセンサ24Bは、車両の旋回における角速度を検出するセンサであり、加速度センサ24Cは、車両の進行方向の加速度を検出するセンサである。外部センサ24Dは、車両12の周辺環境の検出に用いられるセンサ群とされている。この外部センサ24Dには、例えば、車両12の周囲を撮像するカメラ、探査波を送信し反射波を受信するミリ波レーダ、及び車両12の前方をスキャンするライダ(Laser Imaging Detection and Ranging)等が含まれる。
【0037】
ステアリングECU22Bは、パワーステアリングを制御する。ステアリングECU22Bには、車載機器24を構成するステア角センサ24E、及びウインカースイッチ24Fが接続されている。ステア角センサ24Eはステアリングホイールのステア角を検出するセンサであり、ウインカースイッチ24Fは、ウインカーの切り替えを操作するためのスイッチである。
【0038】
図3に示されるように、本実施形態の車載器20では、CPU20Aが、収集プログラム100を実行することで、収集部200、及び出力部210として機能する。
【0039】
収集部200は、車両12の各ECU22から車載機器24が検知した情報を取得し、車両操作情報を収集する機能を有している。
【0040】
出力部210は、収集部200が収集した車両操作情報をセンタサーバ30に向けて出力する機能を有している。
【0041】
(センタサーバ)
図4に示されるように、センタサーバ30は、CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eを含んで構成されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C、ストレージ30D及び通信I/F30Eは、内部バス30Fを介して相互に通信可能に接続されている。CPU30A、ROM30B、RAM30C及び通信I/F30Eの機能は、上述した車載器20のCPU20A、ROM20B、RAM20C及び無線通信I/F20Eと同じである。なお、通信I/F30Eは有線による通信を行ってもよい。
【0042】
メモリとしてのストレージ30Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ30Dには、運転診断プログラム120、及び車両操作情報データベース(以下、「車両操作情報DB」という。)130が記憶されている。なお、ROM30Bが運転診断プログラム120、及び車両操作情報DB130を記憶してもよい。
【0043】
プログラムとしての運転診断プログラム120は、センタサーバ30を制御するためのプログラムである。運転診断プログラム120の実行に伴い、センタサーバ30は、車両操作情報からイベントを検出する処理、及び車両の操作を評価する処理を含む各処理を実行する。
【0044】
車両操作情報DB130には、車載器20から受信した車両操作情報、及び車両操作情報を用いて評価した評価結果が記憶されている。
【0045】
図5に示されるように、本実施形態のセンタサーバ30では、CPU30Aが、運転診断プログラム120を実行することで、取得部300、判定部310、導出部320、設定部330、評価部340、及び記憶部350として機能する。
【0046】
取得部300は、車両12の車載器20から送信された車両操作情報を取得する機能を有している。ここで、本実施形態に係る取得部300は、車両操作情報として、車両の車速度、加速度、ヨーレート、ステア角、及びウインカー信号に係る時系列データを取得する。なお、本実施形態に係る加速度は、進行方向に加速する正の加速度、及び進行方向に減速する負の加速度である。また、本実施形態に係るヨーレートは、左旋回の方向を正の方向とし、右旋回の方向を負の方向とする。また、本実施形態に係るステア角は、車両が左旋回する方向を正の方向とし、車両が右旋回する方向を負の方向とする。
【0047】
判定部310は、取得した車両操作情報を用いて、車両が車線変更しているか否かの判定を行い、イベントを検出する。ここで、判定部310は、車両操作情報に含まれているヨーレート、車速度、及びウインカー信号を用いて、イベントを検出する。
【0048】
例えば、判定部310は、ヨーレートが予め定められた範囲(第1範囲)の範囲外であり、車速度が予め定められた速度以上であり、かつウインカー信号がONとなっている場合、車線変更が行われていると判定し、イベントを検出する。ここで、例えば、判定部310は、ヨーレートが-0.8deg/sから0.8deg/sの範囲外であり、車速度が20km/h以上である場合、車線変更と判定する。
【0049】
また、本実施形態に係る判定部310は、ウインカー信号を検知することによって、車線変更の判定を可能とする。例えば、車両のヨーレートのみの場合、判定部310は、車両12が道なりに旋回して走行している場合であっても車線変更として検出する場合がある。しかしながら、一例として
図6に示すように、ヨーレートを検出し、かつウインカー信号がONになっている場合、精度よく車線変更が検出可能となる。
【0050】
導出部320は、イベントを検出した場合、車両操作情報を用いて、イベント期間における車両の平均車速度、ステア角加速度、及びステア角加速度の閾値を導出する。例えば、導出部320は、車両操作情報に含まれる車速度を用いて、イベント期間における平均車速度を導出し、車両操作情報に含まれるステア角を用いて、ステア角加速度を導出する。ここで、ステア角加速度は、ステア角に係る時系列データを2階微分することによって導出される。
【0051】
設定部330は、導出した平均車速度に応じて、ステア角加速度の閾値の範囲(第3範囲)を設定する。一例として
図7に示すように、平均車速度が大きくなるほど、第3範囲が小さくなるようにステア角加速度の閾値が設定される。例えば、
図7に示すように、設定部330は、平均車速度が20km/h以上、かつ30km/h以下の場合、第3範囲を-150deg/s
2から150deg/s
2と設定し、平均車速度が30km/hを超え、かつ40km/h以下の場合、第3範囲を-100deg/s
2から100deg/s
2と設定する。また、設定部330は、平均車速度が40km/hを超え、かつ50km/h以下の場合、第3範囲を-60deg/s
2から60deg/s
2と設定し、平均車速度が50km/hを超え、かつ60km/h以下の場合、第3範囲を-40deg/s
2から40deg/s
2と設定する。また、設定部330は、平均車速度が60km/hを超える場合、第3範囲を-30deg/s
2から30deg/s
2と設定する。
【0052】
評価部340は、イベント期間における運転操作を評価する。例えば、評価部340は、車両操作情報に含まれる加速度が予め定められた第2範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作と評価する。また、評価部340は、車両操作情報に含まれるステア角から導出したステア角加速度が、第3範囲の範囲外である場合、注意すべき運転操作と評価する。ここで、第2範囲は、例えば、-2.5m/s2から2.5m/s2の範囲である。
【0053】
記憶部350は、取得部300が取得した車両操作情報、及び評価部340が評価した評価結果を車両操作情報DB130に記憶する。
【0054】
(制御の流れ)
本実施形態の運転診断システム10で実行される各処理の流れについて、
図8及び
図9のフローチャートを用いて説明する。センタサーバ30における各処理は、センタサーバ30のCPU30Aが、取得部300、判定部310、導出部320、設定部330、評価部340、及び記憶部350として機能することにより実行される。
図8に示すイベントを検出する処理は、例えば、イベントを検出する指示が入力された場合、実行される。
【0055】
ステップS100において、CPU30Aは、車両操作情報として、車両の車速度、ヨーレート、及びウインカー信号を取得する。
【0056】
ステップS101において、CPU30Aは、車両操作情報を用いて、車線変更を行うイベントを検出したか否かを判定する。イベントを検出した場合(ステップS101:YES)、CPU30Aは、ステップS102に移行する。一方、イベントを検出していない場合(ステップS101:NO)、CPU30Aは、ステップS103に移行する。ここで、CPU30Aは、取得した車両操作情報において、ヨーレートが予め定められた第1範囲の範囲外であり、車速度が予め定められた速度以上であり、かつウインカー信号がONとなっている場合、車線変更を行っているとして、イベントを検出する。
【0057】
ステップS102において、CPU30Aは、イベント期間における車両操作を評価する評価処理を行う。なお、評価処理は、後述する
図9において詳細に説明する。
【0058】
ステップS103において、CPU30Aは、車両操作情報を車両操作情報DB130に記憶する。なお、CPU30Aは、評価処理を行った場合、車両操作情報と共に評価結果を関連付けて記憶する。
【0059】
ステップS104において、CPU30Aは、イベントを検出する処理を終了するか否かの判定を行う。イベントを検出する処理を終了する場合(ステップS104:YES)、CPU30Aは、イベントを検出する処理を終了する。一方、イベントを検出する処理を終了しない場合(ステップS104:NO)、CPU30Aは、ステップS100に移行して、車両操作情報を取得する。
【0060】
次に、本実施形態の運転診断システム10で実行される車両操作を評価する処理について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
図9に示す評価処理は、例えば、車両操作を評価する処理を実行する指示が入力された場合、実行される。
【0061】
ステップS200において、CPU30Aは、車両操作情報として、車両の加速度、及びステア角を取得する。
【0062】
ステップS201において、CPU30Aは、取得した車両操作情報を用いて、平均車速度、ステア角加速度、及びステア角加速度の範囲(第3範囲)を導出する。
【0063】
ステップS202において、CPU30Aは、車両の加速度が第2範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。車両の加速度が第2範囲の範囲外である場合(ステップS202:YES)、ステップS203に移行する。一方、車両の加速度が第2範囲の範囲外ではない(車両の加速度が第2範囲の範囲内である)場合(ステップS202:NO)、CPU30Aは、ステップS204に移行する。
【0064】
ステップS203において、CPU30Aは、車両操作の評価として、注意すべき車線変更を検出する。
【0065】
ステップS204において、CPU30Aは、ステア角加速度が第3範囲の範囲外であるか否かの判定を行う。ステア角加速度が第3範囲の範囲外である場合(ステップS204:YES)、ステップS203に移行する。一方、ステア角加速度が第3範囲の範囲外ではない(ステア角加速度が第3範囲の範囲内である)場合(ステップS204:NO)、CPU30Aは、ステップS205に移行する。
【0066】
ステップS205において、CPU30Aは、イベント期間が経過したか否かの判定を行う。イベント期間が経過した場合(ステップS205:YES)、評価処理を終了する。一方、イベント期間が経過していない(イベント期間内である)場合(ステップS205:NO)、CPU30Aは、ステップS200に移行して、車両操作情報を取得する。
【0067】
以上、本実施形態によれば、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【0068】
(まとめ)
本実施形態の運転診断装置としてのセンタサーバ30は、ウインカー信号、及び車両のヨーレートを含む車両操作情報を取得し、当該車両操作情報を用いて、車線変更を示すイベントを検出して、当該イベント期間における運転操作を評価して運転診断を行う。つまり、当該運転診断装置によれば、車載器に接続されたセンサから取得した、現に行われている車両の操作を示す車両操作情報を用いて、運転操作の評価を行う。これにより、現に行われている自車両の運転を評価して、安全な運転に影響を及ぼす注意すべき運転を検出することができる。
【0069】
[備考]
なお、本実施形態では、センタサーバ30が運転診断装置を搭載している形態について説明した。しかし、これに限定されない。車両12に搭載されている車載器20が運転診断装置であってもよい。例えば、車載器20が、車載機器24から取得した車両操作情報を用いて、車線変更の検出、及び車両操作の評価を行い、評価結果をセンタサーバ30等に送信してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、第1範囲、第2範囲、及び第3範囲は、予め定められている形態について説明した。しかし、これに限定されない。第1範囲、第2範囲、及び第3範囲は、ユーザによって設定されてもよいし、ユーザから変更を受け付けてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、ヨーレート、車速度、及びウインカー信号を用いて、車線変更を行うイベントを検出する形態について説明した。しかし、これに限定されない。ヨーレート、及びウインカー信号を用いて、イベントを検出してもよいし、ヨーレート、及びウインカー信号が含まれていれば、如何なる組み合わせでイベントを検出してもよい。
【0072】
また、本実施形態では、ウインカー信号を用いて、車両12の車線変更を行うイベントを検出する形態について説明した。しかし、これに限定されない。例えば、カメラによって撮影された画像を用いて、道路に表示されている車線境界線を検出し、車両12が車線境界線を跨いだ場合、車線変更を行うイベントを検出してもよい。
【0073】
また、本実施形態では、車載器20が、ECU22を介して、センサ等の車載機器24から車両操作情報を収集する形態について説明した。しかし、これに限定されない。車載機器24が車載器20に接続されて、車載器20が車載機器24から車両操作情報を収集してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、評価処理によって評価された評価結果を車両操作情報と共に車両操作情報DB130に記憶する形態について説明した。しかし、これに限定されない。評価結果に応じて、車両を運転している運転者に通知を行ってもよい。例えば、センタサーバ30は、注意すべき車線変更を検出した場合、注意すべき車線変更であった旨の通知を車載器20に送信し、車載器20に接続されている図示しないモニタに通知を表示させてもよい。
【0075】
なお、上記実施形態でCPU20A、及びCPU30Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0076】
また、上記実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、車載器20における収集プログラム100はROM20Bに予め記憶され、センタサーバ30における運転診断プログラム130はストレージ30Dに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0077】
上記実施形態で説明した処理の流れは、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
12 車両
20 車載器
30 センタサーバ(運転診断装置)
30A CPU(プロセッサ)
120 運転診断プログラム
300 取得部
310 判定部
330 設定部
340 評価部